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シナリオ詳細

再現性東京2010:長々し夜を一人歩めば

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


「肝試ししたいんだよね」と楊枝 茄子子(p3p008356)は言った。
 希望ヶ浜学園――再現性東京<アデプト・トーキョー>2010街に存在する希望ヶ浜地区の学校である。夜妖<ヨル>と呼ばれる怪異と日夜戦い続けるプロフェッショナルたる祓い屋の育成を行っているこの学校の全容を知る者は少ない……。
 そう、希望ヶ浜は『ファンタジー異世界』に適応できなかった者達が東京という日常で現実から目を背けるために存在する地域なのである。それ故に、学園の外に一歩でも出れば『怪異』も『神秘』も『異世界ファンタジー』も仮想の者であるかのように振舞う人間が闊歩している。
 そんな彼らであれば肝試し、という言葉はばっちり似合うだろう。

 ――然し、である。ローレットの、それも『夜妖』のプロフェッショナルからの言葉だ。
 チョコレート菓子を齧っていた音呂木・ひよのはぽり、と音を立てた後、はあと言った。
「会長は肝試しがしたい!」
「ええ、良いですよ。丁度いい仕事があります。
 希望ヶ浜地区にある小学校ですが最近校舎移転をしました。理由は校舎の老朽化ですが……まあ、そう言った所は夜妖の住処になりやすい。
 例えばオーソドックスな女子トイレの怪、音楽室の怪異やテケテケ……。まあ、そういう噂が染みついて、校舎自体がそうした夜妖の発生装置になって居るという方が分かり易いでしょうか」
「うんうん、どういう事かな?」
「簡単に言いますと、校舎が寂しすぎて遊び相手が欲しいと言っているわけです。
 怪異を盛り沢山に呼び出すので隈なく校舎を歩き回ってこれでもかと校舎を満足させてきて欲しい訳ですね。
 ああ、勿論、道中に夜妖は飛び出してきますから悪しからず。中で倒れてたら『ゆっくりお茶でもした後』に迎えに行きますから」
「ねえ、それって『死にはしないけど痛い目はみるよ』って言ってる?」
 さあ、とひよのはにっこりと笑った。嘘吐きを自称する彼女は「外で待っててあげますから」と微笑んだのだ。

 おさらいしよう。
 希望ヶ浜地区に存在するフツウ――詰まる所、怪異など知らぬ一般的な場所だ――の小学校の校舎が老朽化により移転となった。現在は廃墟同然のこの学校は夜妖を発生させる装置状態である。
 その理由が夜妖と化した校舎が『寂しい』『最期に校舎の中で遊んでほしい』という想いを抱いているかららしい。
 取り壊しを行おうとしても不審事件――夜妖によるものだ!――が発生するためにその作業も難航中。ならば肝試しついでに夜妖を満足させて来るのが良いだろう。
 勿論、相手は夜妖だ。遊びに行く気分で行けば忽ち攻撃を受けてノックダウンされてしまう可能性もある。
 詰まりは夜妖を退けながら校舎を隈なく肝試しとして楽しく歩き回ってこい、という事である。

「私は外で見張り役として待機していますから。『風紀委員』さん、頑張ってきてくださいね?」
 にんまりと微笑んだひよのは「肝試しの案内」と書いた依頼書を茄子子へと手渡した。

 さあ、秋の夜長に――肝試しを行おう。

GMコメント

 夏あかねです。アフターアクション! 秋のひんやりした廊下もどうでしょう。

●成功条件
『肝試し』を完遂する。

●ロケーション
 希望ヶ浜地区にある普通の『元小学校』、つまりは廃校です。
 老朽化により、校舎を移転し、取り壊し前だそうですが、不審事件が相次ぐ為、調査中です。
 今宵は調査もお休み。……つまり、絶好の肝試し日和です!

 ・3F建てです。
 ・真っ暗です。
 ・1F:西口から潜入し、東側の階段を上がって2Fへ向かってください。
 ・2F:東側から上がった後、廊下を進んで西側の階段を上がって3Fへ向かってください
 ・3F:西側から廊下を進んで東側の階段へ向かって1Fまで下りてください。
 ・ゴール:1Fの東口です。音呂木・ひよのが見張り代わりに待って居ます。

●可能性のある怪異
 そもそも校舎自体が夜妖です。夜妖発生装置となっており内部に入った者に夜妖を嗾けます。
 驚かせて楽しみたいのが本音のようですが、発生する夜妖もそれなりに攻撃してきますので退けつつ進んでください。

 例えば……こんな怪異が居るかも。
 ・女子トイレの怪異 ・天井に張り付く女 ・ピアノおばけ
 ・ずっと追いかけてくるテケテケ ・血が流れる蛇口
 ビックリ系怪異も盛りだくさん。勿論手出ししてこない夜妖(驚かせ役)も居るかもしれませんね。殴っても問題ありません。

●音呂木・ひよの
 見張り役でお外で待機してます。問題があればaPhoneで連絡してくだされば迎えに行きますがお迎えに言った時点で依頼は失敗です。
「電話してて///」には答えてくれます。あれ……でも電話って、本当にひよのに繋がってるのかな……。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、皆さんの想像力次第で出て来る夜妖が増えるかもしれません。

 ではでは、よろしくお願いします。

  • 再現性東京2010:長々し夜を一人歩めば完了
  • GM名夏あかね
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2020年10月13日 22時10分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

メイメイ・ルー(p3p004460)
約束の力
天之空・ミーナ(p3p005003)
貴女達の為に
アエク(p3p008220)
物語喰い人
楊枝 茄子子(p3p008356)
虚飾
ロト(p3p008480)
精霊教師
クレマァダ=コン=モスカ(p3p008547)
海淵の祭司
笹木 花丸(p3p008689)
堅牢彩華
越智内 定(p3p009033)
約束

リプレイ


 肝試ししたいんだよね、と告げた『羽衣教会会長』楊枝 茄子子(p3p008356)にうってつけの夜妖が居ると紹介され、訪れたは良いがとっぷりとした闇に包まれた校舎は日中帯に見るよりも恐ろしいものに見えた。
「ひ、ひえ……」
 ぴるるる、と羊の耳を揺らしたのは『さまようこひつじ』メイメイ・ルー(p3p004460)。『そういうもの』に遭遇するのはイレギュラーズとして当たり前ではあるが、雰囲気がホラーそのものでるとなれば、事情が違う。驚かされるのもとてもとても苦手だ。
「こ、校舎も寂しがっている、です、ね……。その思い、は見過ごす事が、出来なくて。
 が、が、がんばって、きもだめし、がんばります、よ」
 ぷるぷると震えるメイメイの傍らで茄子子にがしりと捕まれていた『海淵の祭司』クレマァダ=コン=モスカ(p3p008547)は「あああああ」と叫び声をあげていた。
「いやじゃああああ!!!!! もうやだ我おうち帰る!!!! 怖いのはいやじゃああああ!!!!」
「怖くないよ。肝試しだよ? 会長肝試し初めて! 楽しみ!」
 いやじゃああ、と叫ぶクレマァダを此処まで引きずってきたのだろうかにんまりと微笑む茄子子はマイペースである。ハッとしたようにイレギュラーズの顔ぶれを見たクレマァダは咳ばらいを一つ。
「――……はっ?! とまあ、こうならんように皆は気を付けんひぃっ?!」
『精霊教師』ロト(p3p008480)がひよのに渡そうと点灯させた懐中電灯でクレマァダの肩が跳ねた。
「……怖くないぞ?」
「何だかこうしているとオリエンテーションを思い出すねぇ、うん、興味深い。
 怪異を呼び出す校舎の夜妖か……迷い家の様なタイプかなぁ」
「オリエンテーション……うっ、頭が!?」
 私は幾度も死にましたの看板をぶら下げた『おかわり百杯』笹木 花丸(p3p008689)。夜の校舎で肝試し――死に戻り上等、一発即死の高難易度『オリエンテーション』を思い出して頭を抱える。
「前回は死んでも死ななかったけど死ぬほど痛くて、今回は死なないけど痛い目を見るかもしれない……なるほどね? うおおおおおお、花丸ちゃんは肝試しなんかに絶対に負けないからねっ!」
 ハッとしたように花丸は傍に立っていた音呂木・ひよのに詰め寄った。茄子子は「お外で一人で大丈夫? 怖くない?」と揶揄っているが彼女は石神駅に一人ぼっちで突っ立って居るくらいには肝が据わっている。
「大丈夫ですよ」
「あ、な、ならさ、ひよのさん電話してよ!? ほら、あれだよ、あれっ!
 花丸ちゃんの雄姿を見守って……じゃないや、聞いてて欲しい的な奴っ!」
「ああ。いいね。うんうん。肝試し。林間学校だとか、そういう所でメーンイベント張ってたよね。まあ、それも昔の話さ。危険だからね。仕事だっていうなら高校生には実入りも大きいし、チャッチャと終わらせて帰ってパルスちゃんのライブ映像が見たいんだ」
 やけに早口になった『綾敷さんのお友達』越智内 定(p3p009033)は花丸と同じようにaPhoneを握っていた。
「PINE交換しておこうよ。中で有事の際に外にいるひよのさんと連絡は常に取っていた方が良いだろうからさ。ぷるぷる分かる? そうそう、スマホ振って……ひよのさん振り過ぎじゃない? って、なんでそんな笑顔で振り続けるの? 逆に怖い、怖いって!」
『ひたひた』アエク(p3p008220)は「思いついたことがあるのだが」とそっと手を上げた。
「肝試し、肝試しである。肝試しと言えば決まっている。
 妙に画質の荒いホームビデオ映像! こんなこともあろうかと準備したのだ。練達製のホームビデオカメラを。最近のは小型化が進んでいるな」
「まあ、此処にその映像を送るモニターがないことが悔やまれます」
 見るのか、とアエクがひよのに問いかければ良き笑顔が帰って来る。因みにアエクは浴衣姿であった。その美しい髪と真白の浴衣姿で雑木林に立って居ればそれこそ心霊現象の出来上がりである。
「盛り上がってんなー」と『死神教官』天之空・ミーナ(p3p005003)は小さく笑った。
「肝試し……やるだけでいいの? これ、退治しなくていいのか?」
「やれば満足してこの夜妖自体は居なくなるでしょうけれど、中身は知りませんよ」
「へえ……。いやまぁ楽できる分にはいいんだが……私も下手すりゃ夜妖側の存在なんだよなぁ、死神なんだし」
「ふふ! 死神って混沌世界にはたくさんいるから大丈夫ですよ! ね? アエクさん」
 にこりと笑ったひよののアドバイス通りにちょっぴり離れた位置で頷く浴衣姿のアエク。そっちの方が怖いわとミーナは真顔になったのだった。


 ひた……ひた……。アエクの足音が近づいてくる。がばりと振り替えた花丸は「アエクさん光るのは良いけど怖い!」とぼんやりと輝くアエクを指さした。
 一向の背後で一番怖いのは自分だとでも言うように、ゆらりゆらりと歩き続ける。
「怪談でも話そうか。そうさな、フラグでも立って似たような者が呼び出せるかも知れぬ。
 鏡の中の自分が手を伸ばしてくるとか、そういうやつがな。
 ああ、怖かったら手をつないでもいいぞ? まあ我秘宝種だからひんやりしててビビるかもしれぬが」
「ギャッ! 冷たい!」
 びくっとした茄子子。興味があって触ったようなのであった。因みに柳のようにゆらりと揺れるアエクはどちらかと言えば肝試しで驚かせたい側である。夜妖が好奇心で人を驚かせているというならば彼にはうってつけの役割だろう。
「さて、道中の夜妖を的確に見ながら紹介していかないとね」
 此処では動物園のツアーガイドさんであるロト。肝試しなのだから思う存分に楽しんで貰いたいという気持ちがあるがクレマァダと定がトラウマにならないように注意しないと行けない。
「あっ、鏡だ、鏡といえば合わせ鏡の怪談が有名だよね……」
 アエクとロトの言うとおり、眼前には鏡が存在している。逸れないようにと後ろを吐いていくメイメイはaPhoneの撮影機能でチェックポイント敵に都度都度、校舎の中を記録し続ける。
「……ん? 今、あの、一人多くなかったですか?」
「やだな、メイメイさん。『今日はきちんとこのメンバーできた』よ」
 にっこりと微笑んだロトにメイメイは「そ、そうですか」と小さく頷いた。いきなり驚かしてくる夜妖や這いずってくる夜妖の前ではメイメイも「めえ」しか言えなくなりそうである。
「す、すみません、そこの角まででいいので、手をつないでいただけないでしょう、か……」
「ああ。いいぞ」
「ヒャッ」
 アエクの手は、冷たかった。そろそろと歩くメイメイの背後で長く生きてきたミーナは余り怖くは無いなと夜の学校を見回した。彼女自身も死神だ。それ故に『そうした霊魂』はビジネスパートナーのきらいがある。
「……血が出る水道って水道管錆びてるだけじゃね? って思うけど」
 きゅ、と音を立てて蛇口が閉まった途端に何かが見えた気がすると茄子子が前を見詰め――其処に居たのは「ああ、てけてけだよ」とミーナが淡々と解説する。
「あ、ああ。アレは電車で上半身と下半身が分断されて死んだ女の話だっけ。それ以来踏切のサイレンが聞こえると近くの家に出てくるって奴。だから下半身が欲しくて追いかけてくるとか言う逸話も――」
「うわぁああぁあ!!ㅤなんか追いかけてくるぅ!!」
 ミーナは耳を押さえた。スピーカーボムで声を響かせる茄子子が全力でダッシュし始める。声に誘われて更に夜妖が集まってきそうだが……それはそれだ。因みに茄子子はお化けは怖いから苦手でも楽しくって堪らないのだ。
「あれ、夜妖を避けないといけないんだっけ?ㅤまぁひよのくんが死なないって言ってたから大丈夫か!(?)ㅤその後なんか言ってた気がするけど忘れた!!」
 The適当である。その言葉を聞きながらへっぴり腰で花丸の腰元にひっついていたクレマァダは「大体じゃな」とぶつぶつと呟き始めた。
「どうして人間はッヒ、怖いものをわざわざ見ようとする。
 それによって何が得られるのかウォッ!! 得られるものなどウワッないじゃろう!!」
 コン=モスカの祭司長も此処ではお化けの怖い普通の女の子になっている。
 繕う気もまるで失せてたクレマァダさんの珍しい光景が此方です。
「だって、結果的に怖くなる普段の怖い依頼と違って、この依頼そもそも怖がらされるのが目的じゃからな! 我は仕事をピィ真面目にしておるだけじゃ!!
 夜妖の怖い演出には常に反応……っていうか、忙しすぎじゃろ!! どれだけ怖がらせたいのじゃ!!」
 大丈夫だよ、と場所を交代し、花丸がクレマァダの背中をぐいぐいと押し始める。
「ハゥッ……ウゥッ……オェッ」
「定さん……じゃないや、ジョーさんはさっきから大丈夫? 今にも吐きそ……」
 ただの吃逆だよ、と返す定「オエッ」と繰り返しながら懸命にひよのと電話して居た。先程、花丸から預かったaPhoneではこれでもかという程に笑うひよのの声が聞こえている。
「ひよのさん、外は何か変わった事は……? 何かあったら僕がすぐにそっちに行くからさ……何かない? ホント? ない? なんで? あるでしょ? ない? そ――、花丸さん……通話交代するyオオオオアアアアア!!!」
「ワキャアアアアアア?! 急に叫ばないでよジョーさんっ!」
「びっくりした……花丸さんじゃん……」
 自滅である。これもペタペタと足音を立てているアエクと淡々と『夜妖紹介』を行うロトに意識を取られていたからだろう。二人の突然の叫び声にびくっと肩を竦めたメイメイが「めえ」と小さく呟きクレマァダは「アアアアアア」とこの世のものでは無いような叫び声を上げている。
「それにしても……夜の校舎ってだけでも雰囲気あるよね。
 前は……ほら、怖がってたりする暇もなかったし? いや、怖かったのは確かだったかもだけどもアレは別の意味って言うか? ね? ……って、くぁwせdrftgyふじこlp!?!?」
 どっせーいと花丸が慌てたように拳を突き立てた。え、今、何が――
「今、何が居たんだ?」とミーナが問い掛ける。茄子子は「何かあたった?」と花丸に問い掛けるが「わ、わかんにゃい……」しか言葉が返らない。
「女子トイレは流石に入れないな……廃校だって言っても女子トイレは女子トイレだし」
 定が行ってらっしゃいと見送る中、ロトとミーナがトイレの怪談について女子陣に説明している。
 クレマァダは「そもそも我が何故お化けが怖い、違う、どうして忌避感を感じるのかを説明しよう」と小声でぶつぶつと祝詞の様に言い訳を呟いていた。
「仮にあの世とこの世というものがあったとする。あった場合、化けて出ても来ない我の姉は現世に名残もなく逝ったということであるが、それは本当に絶対か? 本当は悲嘆にくれて恨み言を言いたいのに/或いは満足はしていても仲間たちや我に何か言い残したいのに、それができなかったら? それはかわいそうで、なればあの世などない方がいいではないか。……そうでなくとも人の情念や想念というものは強すぎて、我にはいささか、辛い」
「うんうん。素晴らしい考えだよ。クレマァダさん」
 女子トイレがほっこりとする一方で定はaPhoneを握りながら苛立ちを感じていた。

「ちょっと」
 何も返事はない。ぺた。ぺた。ぺたぺたぺた。
「ちょっと?」
 ぺた。ぺたぺた。
「アエクさん!」
 ぺた。ぺた。
「他に誰も居ないからって後ろでペタペタするのやめ――誰も居ないじゃん!!!」
「コッチにいるが」
 女子トイレ側からひょこりとアエクが顔を出す。これでもかという程に顔をしおしおとさせた定は叫んだ。
「誰も!!! 居ないじゃん!!!!」
 ぺた――
「もうやだ……誰か家まで送ってってよね……」

 ――♪

 怯える定の握っていたaPhoneが音を立てた。ん、と小さく視線を動かしてみればひよのからのメッセージだ。
『もう少ししたら校舎から出るよ』とそろそろ仕事の終わりを予感して定は入力する――が、それに続くのは。

 ハイレタ

「……え?」
 ハイレタ、って入れただよな、と定は呟いた。校舎に態々入る意味も無いだろう。そもそも彼女は外で待っていてくれる筈なのだから。
「……ひよのさん?」
『はい?』
「ウワアアアアア」
「ギャアアアア。ジョーさんがひよのさんを呼ぶから受話器耳に当てただけじゃんんん!?」
 花丸がびくりと肩を跳ねさせる。ごめん、と蚊の鳴くような声で謝った定の傍でクレマァダは臨戦体勢であった。
「夜妖はどこじゃ!? 下刻時間というヤツを教え込まねばならん!!! どこじゃ!!!」
 混乱を来すコン=モスカの祭司長。おうちに帰りたい彼女を宥めるように笑ったロトは「それじゃ、そろそろ帰ろうか」と声を掛けた。
「えっ!? もう終わり!? ってあれ、ミーナさんどうしたの!?」
 ※大騒ぎになったときに冷静だったミーナさんは祭司長の暴走に巻き込まれました。
「ほらほら、起きて起きて!ㅤ帰るまでが肝試しだ!ㅤまだまだ楽しいこといっぱいだね!ㅤやったね! 死なないでー!?」
「し、死んでない」
 茄子子の叫び声にやれやれと起き上がったミーナ。その様子を眺めていたアエクは「そろそろ地点確認は出来たな?」とメイメイに問い掛けた。
「は、はい。あの……その、階段の段数が違っていて、あの、あの、あれ、あれ?」
「落ちないようにね」
「は、はい」
 ロトの手を借りて降りるメイメイはべしょべしょになっていた。もう涙もこれ以上は出ないという程にしょんぼり羊である。
 それでも、外の灯が――外の空気が流れ込めば皆、安堵したように駆け出すのだった。


「も、もうこれで、大丈夫ですよね、ね」
 満足してくれましたよねと恐る恐ると問い掛けるメイメイにアエクは「これが今回の情報だ」と差し出した。
「わ、わあ……あんなに怖かったのに、よく、撮影できました、ね」
「夜の校舎の肝試し? 我はそんなものに足を運んだ記憶はないのだが……そこに我がいたのか?」
「……めえ」
 アエクの言葉にメイメイの言葉は引っ込んだ。傍らで、ばたばたと走る足音がする。手をぶんぶんと振って瞳をきらりと輝かせるのは茄子子。
「やったーゴール!ㅤ会長死んでないよね!ㅤこれ夢じゃないよね!
ㅤひよのくんただいま!ㅤ怖くなかった?ㅤ一緒に回らないでよかった?」
「お帰りなさい」
「あれ? ひよのさん?」
 ぱちくりと瞬いた定にひよのは「はい?」と首を傾いだ。
「さっき校舎に入るってaPhoneで連絡してくれたよね。あれ?」
「え……? 連絡先ですか? 花丸さんと一台だけで電話していようって――え?」
「え? 連絡先の交換なんてしてない……?」
 定がPINEを見下ろした。「どうして?」と返したチャット履歴のトークルームには『――が退出しました』の文字が並んでいる。
「ひ、ひえ……」
 外で待っていたひよのが穏やかな笑みを浮かべ首を傾げる。その傍らに立っていたのはミーナだろうか。
 ……おかしい。
 一行の中で、ぴたりと最後尾で歩みを止めた者が居た。そういえば、先程最後尾に行ったロトは何処に行ったのだろうか。あれ程、生徒を護る為にと話していたのに――と考えて「ひよのさん、ロト先生知らない?」と花丸は問い掛ける。
「ロト先生? やだ、花丸さんったら。『ロト先生は今日は急用でこれなくなったっていってたじゃないですか』」
「……え?」
 ぴた、と定とクレマァダが足を止める。いや、確かに居たはずだ。最後尾を振り向けばロトとは思えない小さな影は存在している。
「そういえばさ、ドッペルゲンガーって居るだろ? もう一人の自分ってヤツ。自分を殺して誰かと入れ替わるとか、そういう曰く付き」
「え? どうしたの? ミーナさん? やだなあ、揶揄って……」
 振り返った花丸がぱちりと瞬いた。其処に誰かの影がある。そういえば――八人で固まって歩いてきたのに、どうしてひよのとミーナが話しているんだろうか? ミーナはずっと後ろにいたはずなのに……。
「そ、そういえば、今、あっちに走って行った茄子子さんを合わせて……? あれ?」
『あそこにミーナ』がいるならば、『ロトが居たのが勘違い』ならば一人多いはずなのに……まさか――
「あああああ!!! 驚かせよってからにいいいい!!!!! 誰じゃ!! 勝手に帰ったのは誰じゃああああ!」
 混乱するクレマァダを「ま、待って、待って」と混乱しながら定が宥め続けている。
「ひっ、ひよのさんんん!!! 花丸ちゃん成し遂げたよっ! ぎゅってして! 生きてるって言って!?」
「え? ええ……生きてますよ。大丈夫。仕事は終了です」
 宥めるひよのの声を聞きながら何が起ったんだとミーナがぱちりと瞬いた。
「ちょっと遅刻したら皆もういないし道なりに歩いたけど誰もいなかったんだよ。どこ行ってたんだ皆?」
「……めえ」
 頬を掻いたミーナに、メイメイはそうとしか言えなかった。

 ――一方でちょっぴり先に東口以外から出て皆を驚かそうとしていたロトはaPhoneを見下ろす。
「おや? aPhone10にメール? ……コイヨウ?」
 From : ―――――

成否

成功

MVP

越智内 定(p3p009033)
約束

状態異常

なし

あとがき

 時々思うんですよね。
 このプレイングって誰が書いたのかなあって。そもそも、リプレイだって……。
 顔が見えてるわけじゃ無いですもんね。ホントに、今まで見てた者を作った人って、実在してるのかなあ……。

 MVPはリアクション賞です。

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