PandoraPartyProject

シナリオ詳細

<Autumn food>黄身餡の還る場所

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●「自分」
 自分というものほど、あやふやなものはない。
 自分がなんなのか、なんのために生まれたのか……。
 その”ヨル”にはわからなかった。
 餡子の詰まった頭では、考える力は乏しい。
 たった一つ、残った思いは……。
(帰りタイ)
 帰りたい、どこかへ。
 そのヨルも、やはりは練達の生まれだったのだ。
 帰りたい。
 そのヨルが覚えていたのは、たったひとつ、”東京”ということばだけだった。

●希望ヶ浜学園・学食
「再現性東京にはなんか、ネズミの王国があるらしい」
 それはありとあらゆる方面で違うし、すれすれなのではないだろうか。
『お騒がせ』キータ・ペテルソン(p3n000049)の言動はそっとしておこう。
 そういえば学園祭が近いためか、妙な耳をつけている生徒たちも多い。浮かれてカップルが数多く誕生する時期だ。
 キータは色気より食い気らしい。
「秋って言ったら食欲の秋だよな。学食で東京うまいもんフェアをやってるらしいぜ! えーっと。東京ってよくわかんないけど……おいしいは全国共通だよな。というわけで、今日の目標は全メニューの制覇でどれが一番おいしいかを……」
 ずしん、ずしんと地を響かせる音がした。
「巨大なピヨコがでたぞーーーー!」
「え、何?」

 信じられない光景が広がっていた。
 学食では巨大な和菓子が、学園を蹂躙している。
「きゃーーーーーー!」
「なんか……なんかあれだぞ!!!」
「出し物か!?」
「え、ウケるんだけど」
 なんとSNS映えする光景だろうか。
「うわわわわ」
 自分を見失ったその生物は、何か……わからない何かを求めるように、浮き上がったずっしりとした体をぶつけている。
 それは、自分を食べてくれという祈り。
 そして、故郷に返してくれという悲痛な願いだったのだった。
「いやさすがにあの大きさはきついんじゃねぇかな?」

GMコメント

布川です。
秋なので暴れる東京銘菓(!)を落ち着かせてあげてください!

●目標
巨大ピヨコと鳩型のサブレを退治する。食べればなおよし。

●登場
東京銘菓ピヨコ
 かわいいフォルム。巨大。
 故郷への思い、東京へのあこがれの伝聞と推定と過程がまじりあってできた悲しきヨルです。
 黄身餡を皮でつつんでいます。
 どこか悟ったような不思議な風貌をしています。
 浮遊しています。実態があり、実際にかじることができます。
 かすかに残った記憶から、ここが故郷だと思っていますが、いまいちしっくりきていません。
 しかし故郷は遠く、ここ、再現性東京にはありません。
 優しい嘘で包み込むも、真実を伝えてあげるのもいいでしょう。

 攻撃手段は体当たり。
 食べられることこそが本懐です。食べると安らかに成仏します。
 二つに割った姿もかわいい。

鳩型のサブレ×8
 小さめの迷いサブレ。周囲をふわふわと浮いています。突進してきます。脆い。
 ピヨコに感化されて迷い込んだヨルですが、こちらはそんなに悩んでいません。食欲旺盛な人間の気配を感じてやってきました。思いが強すぎて突っ込んでくるので危険です。
 やっぱり食べられることこそが本懐です。

●その他のメニュー
学内では現在秋のスイーツフェアをやっています。
大学イモやスイートポテト、サツマイモチップスやモンブラン、栗風味のソフトクリームなどなど……秋の味覚がたっぷりです。
おいしいですよね!

●Dinner!
 当シナリオは、甘いものばかりで栄養が偏る可能性があります。
 予めご了承の上、参加するようにお願いいたします。
 学食なのでそれなりにほかの食べ物もあるとは思いますが、とはいえメインディッシュを平らげるくらいの余裕は欲しいですね。
 バランスよく食べましょう。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はAです。
 想定外の事態は絶対に起こりません。

  • <Autumn food>黄身餡の還る場所完了
  • GM名布川
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2020年10月10日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ミミ・エンクィスト(p3p000656)
もふもふバイト長
仙狸厄狩 汰磨羈(p3p002831)
陰陽式
ミルキィ・クレム・シフォン(p3p006098)
甘夢インテンディトーレ
御天道・タント(p3p006204)
きらめけ!ぼくらの
メイ=ルゥ(p3p007582)
シティガール
ドゥー・ウーヤー(p3p007913)
海を越えて
楊枝 茄子子(p3p008356)
虚飾
ビスコ(p3p008926)
軽快なネイキッド

リプレイ

●希望ヶ浜学園からお送りします
「うわー、大きいお菓子たちが暴れ回ってるねー」
 お菓子あるところに、パティシエあり。
『甘いかおり』ミルキィ・クレム・シフォン(p3p006098)は、魔法の国シュガーランドの見習いパティシエである。
 とはいえ暴れ回るような菓子を見たのは初めてだろう。
「シュガーランドで似たようなお菓子モンスターは見た事あるけど、ここまで大きいお菓子モンスターは初めてだよ! どんな味がするか今から楽しみだね☆」
 初めてではなかった。
 シュガーランドでは暴れる菓子に対処するのもパティシエのたしなみだ。だから、ミルキィも簡単な攻撃呪文の心得がある。

 水色のツインテールをきゅっと確認し、マイクの疎通を確認。
\躍進! ビスコちゃんねる~!!/
 タイトルコールとともに、『アデプト・ニューアイドル!』ビスコ(p3p008926)が画面に姿を現した。
「はい、今日は希望ヶ浜学園学食にやってきました! みなさんにはおなじみの光景ですね!
これからぴよことサブレを鎮圧していきたいと思いまーす!」
「あれなに!?」
「ビスちゃんビスちゃん! ほら、あのアイドルの!」
 ビスコは近年活動を開始した駆け出し新米練達アイドルである。
「うわ、実物やっばい。胸、でっかい!」
「髪の毛さらさらだぁ……」
 振り向いてウィンク。
「気に入ったらチャンネル登録よろしくね!」
 掴みは上々。
 知名度も、少しずつ上がってきたように思われる。
(ここでどーんと派手に決めたいんだけどな)
「ビスコ様、さてはきらめきをご所望ですわねー!?」
「あ、あれは! ちょうどいいところに!」
 ぱぱぱぱんと、フラッシュがまたたいた。
『きらめけ!ぼくらの』御天道・タント(p3p006204)がそこに仁王立ちしていた。
「オーッホッホッホッ!
お菓子の里帰り、メルヘンなお話ですわね!
良いでしょう! このわたくし!」
 パチン、と指を鳴らせば。
  \きらめけ!/
  \ぼくらの!/
\\\タント様!///
「が! 元気よくいただきますして差し上げますわー!」
 スウィートブライトアペタイトポーズを決め、しゅた、と、ちょうど良くあった空き箱の上から飛び降りる。
「今日はこのわたくしたち!」
「あ、カメラこっち!」
「わたくしたちが! 巨大なお菓子に挑みますわ!」
 ビスコと一緒に向き直るタント。
「はいはーい、挑むよー! 応援よろしくね!」
 暴れるぴよこにちょっと不安だった生徒たちは、その様子を見て理解する。
 そういう演出のイベントだ。応援してもいいやつだ。
「ビスちゃんっ! ビスちゃんっ!」
「きらめけ! ぼくらの! タント様ーーー!」
「きゃーーー!」
「会長! これで羽衣協会の会員数もうなぎのぼりです!! やりましょう!! 我々の手で!」
 なんかちょっとテンションが違う生徒もいるな。

 ずっしんずっしんと学食を進む巨大なぴよこは、積まれた荷物をなぎ倒していく。
「っと、まずは暴れてるお菓子を落ち着かせなくちゃだね!」
 ミルキィの言葉に、一同は頷く。
 お互いのために、なるべく傷つけずに倒したい。
 しかし……。
「あのぴよこ、可愛いのです……」
『もふもふバイト長』ミミ・エンクィスト(p3p000656)は丸っこいぴよこのフォルムに、きゅんとしたときめきを覚えていた。
「にしてもああいうお菓子系のパン、作ったらウチでも売れますかねえ……それともギリギリすぎますか? こう、権利的な奴とかで」
 幻想国内の評判のパン屋『くるみ亭』の看板娘にしてアルバイト長は、新作パンの研究にも余念がない。もちろん新商品が出た暁には、つまみ食いをする心づもりだ。
「お菓子は見た目も大事だよね☆」
「お菓子かー、なんか縁があるなあ……」
 ビスコの実家がお菓子屋さんだ。
 慣れた様子でコメントを返信しながら、ついでにググってみると。
「あ」
 不都合な真実を知ってしまった。
(ぴよこ、福岡発祥、東京進出みたいですね。故郷は東京ではなかった……!? この事実は胸にしまっておこう……)

「なんと……」
『流麗花月』仙狸厄狩 汰磨羈(p3p002831)は呆然としている。巨大な敵、おののくのも無理はない……ではなく。
「あの銘菓が、あのサイズでやってきた、だと!?」
 そっちのほうだ。
 食べられることこそ菓子の本懐。食べてくださいとその全身が訴えている。
「つまり、夢にまで見た大人食いが出来るという訳だな? ふふふ……これは腕ではなく腹が鳴るというもの!」
 汰磨羈はくわっと目を見開いた。
「とうきょう銘菓……懐かしいね!ㅤ会長も元の世界ではいっぱい食べたよ……!!」
『羽衣教会会長』楊枝 茄子子(p3p008356)の言葉に、ピヨ、とぴよこが巨体を旋回させた。
(知っているのかい?)
 そのまなざしが訴えている。
「うんうん、知ってるよー」
 秒で嘘をついた。
 ぴよこの目にハイライトが灯る。
 頭が餡子でなかったら、とりまきのサブレとともに「羽衣教会」に入信届を出していたに違いない。
「ぴよこさん! こっち、こっちですよ!」
『シティガール』メイ=ルゥ(p3p007582)が両手を振る。きょろきょろするが、その巨体で見失ってしまっているらしい。
 目印が必要か。
「待っててください……今、お皿を持ってくるですよ! ぴよこさんを乗せることができる、おっきなお皿!」
 きっと、練達にならばあるに違いない! わけのわからないものがたくさんあるのが練達だし!
「まずは落ち着かせないといけないね」
『鏡の誓い』ドゥー・ウーヤー(p3p007913)は杖を構え、一般生徒を振り返った。
「ここは俺たちに任せて、準備を頼む。……終わったら食事会をしよう。塩気のあるものもあるといいな」
「あ、いいですね! メイもほしいのです!」
 浮かれたぴよこが食器をなぎ倒す。
「ほっ」
 しゅたっと飛び立ち、頭で受け止める汰磨羈であった。
「ううむ、戦いは避けられんか?」
 きり、と伊達眼鏡を外して胸ポケットに入れる。ここからは課外授業の時間だ。
「中身が寄っちゃうかなあ。終わったら飾りなおさないとね☆」
 どうやっておいしく頂こうかと考えるミルキィ。
「うーん、これだけ大きいお菓子だと食べきる前に喉が渇いちゃうよね! ぴよこは紅茶よりほうじ茶か緑茶の方があいそうかな?」
「あ、ジュースも欲しいのですよ」
 ミミは手をあげてジュースを所望する。
「メイは……シティーガールです! ここは炭酸、を……!」
「結束を深めるために、定例会は大事だよねー。会長知ってるよ。タントくんは何飲むの?」
「ご心配なく、ですわー! 無論、用意しておりましてよー!」
 ばばん! とタントは懐から何か取り出した。
「お紅茶も緑茶も良いですがわたくしのおすすめはこれ! 牛乳! ですわーー!」
 さすがはぼくらのタント様。
「準備は万端! それでは、ぴよこを! ぜーんぶ! 食べ尽くす!」
「えいえいおー!」

●巨大ぴよこ、現実を知る
 次々に美味しいお茶請けと飲み物がそろっていく。
「さぁ来い!」
 構える汰磨羈。
「私達が、御主たちを美味しく食べてやるぞ!!」
「オーッホッホッホッ! さあ! 片っ端から食べて差し上げますわ!
よっといでーですわー!」
「ピピピー(でも、よく考えたら帰らなきゃ……)」
 ごめんね、とふわふわ逃げるぴよこ。
「お皿、ありましたですよ!」
 さすが練達。巨大な皿もなんともなしにあった。
「!」
 本能によってぴよこが寄ってくるが、つるんとお皿を滑ってしまう。
(おとなしくさせないとだめか)
 ドゥーのヘヴィーランカーが、ぴよこをぽよんとへこませる。
 お菓子達を倒してしまうのは目的じゃない。だから、ずいぶんと手加減している。
「可愛くてもヨルはヨル!ㅤしっかり成仏してもらうよ!ㅤ羽衣教会は鳥葬が主流だしぴったりだね!」
 みんなからついばまれるところを想像するぴよこ。
 なかなか良さそうだ。
「あ、これはなんかやばそうだ」と感じたのか鳩型のサブレが一斉に体当たりするが、べしべし程度である。
「だめだよー☆」
 ミルキィは聖光で驚かし、突っ込んできたサブレをひょいと捕まえて食べてみる。
「うん、おいしい! 大丈夫?」
「会長?ㅤ会長は大丈夫だよ!」
 サブレはぜえぜえとつかれてきた。それなのに会長はむしろつやつやしている気がするし。
「こらー、大人しく食べられるです! オヤツになるですよ!」
 ミミは轢かれないように距離をとりつつ、ぴよこたちに声をかける。平和的に説得できれば、と思ったのだが、それも無理そうだ。
「暴れるのは止めるですよー、いくら行っても東京とやらには帰れねーのです。だからここに再現され」
「ピ?」
 あっここはビスちゃんねるには流しちゃいけないやつだ。
「はいここでなんと!」
「シャキーン!! えいえい! メイが突撃なのですよ!」
 ロケッ都会羊を背負ったメイは、スラスターに点火する。イグニッション! ブルーコメット・TSでぴよこに突撃する。
 くるくるくると勢いのままきちんと着地を決めて、びしり。
「おおおおーーー!」

「もぐもぐ」
 喧噪の中、飛んできたぴよこの欠片をキャッチしたミミ。なかなかおいしい。
 一服してから、衝撃の事実の続きを告げる。
「で、ここに再現されたんですよ、アデプトトーキョー」
 衝撃を受けたぴよこは固まっている。
 サブレはとくになにも考えていない。
「俺達は君達を食べにきたんだ」
 ドゥーは、怖がらせないように優しく語りかける。
「……悲しい事実かもしれないけど、ここは君達の故郷じゃないんだ。ここは再現性東京。東京って場所によく似た別の世界なんだ」
(そんな……)
 ぴよこは現実を受け止めきれずに、わなわなと震えた。

●おかえり、ぴよこ
(こんな世界なんてっ……!)
 ぴかぴかと光る光。灯台だろうか。ずっと歩いて行けばきっと……海を越えて、東京に。あれ、近づいてくる。
「ごめんくださいませー!」
 そのきらめきはタントだった。スライディングして懐に潜り込んだタントは、思いっきりぴよこにかぶりついた。
「うおおお唸りなさいわたくしの!
LO(レジェンドオブ)ビューティフルタントパワーッッ!」
 太陽の系譜が、優しくぴよこをあたためる(あたためても美味しい)。
(明らかに身体の容量より大きくても食べきってみせますわーー!!)
 タントにもぐもぐされるぴよこ。ついでにミミも隙あらばと尻尾の部分を確保。
「もちろん、美味しいですわー!」
 太陽のような笑顔。
 くすぶっていたよろこびが燃え上がる。
「大丈夫だよピヨコくん!ㅤキミにとってここは第2の故郷!ㅤ会長もキミと一緒、日本から来たんだ!」
「ピ?(君も輸入だったのかい)」
 会長の産地偽装に騙されるぴよこ。純国産である。
「会長が大丈夫なんだからキミ達もきっと大丈夫!ㅤね!」
(そうかも……)
 大量の免罪符に、許されている気がしてきた。
「ピヨコ様! よく聞くのですわ!
ここは確かにあなた様の故郷ではございません!よく似た違う世界ですわ!
しかーーし!」
 ぐるりと振り返るタントにつられて、ぴよこは周りをみる。
 そこは、再現性東京。
「この街は、あなた様と同じく! 故郷に帰りたいと願う人々が作り上げた街!
場所は異なれど、住む者は同じ! そして、あなた様と心はひとつ!
すなわち! この街もまた! 第二のピヨコ様の故郷なのですわーー!」

(なるほど。銘菓達が流れ着いたのだから、同じように故郷の人たちが流れ着いていても可笑しくない――中々の名案だな)
 汰磨羈が頷いていると、横からぼふっと飛んでくる鳩サブレ。
「元気だな鳩型サブレッッ!」
 ぼふっぼふっと戯れるサブレを、全て受け止めるねこであった。
「ふ……問題ない。こんなこともあろうかと、パンドラ復活にはチェックを入れてある!」
 どどんと腹筋に力を込め、パンドラの力で起き上がる。
 元気になったところで、スローモーションのようにもう一体の鳩が。
「ぐはっ!」
「今助けるですよ」
 ミミが救急レスキューパッチDXをぺたぺた貼り付ける。
「む、これは良いものだな」
「ほんとによいものですヨ。ローレットの経費にしてやります、ふふん」
「う、うわーー」
 喜びを感じ取ったぴよこがなぎ倒していくのが見える。
「むむ、仕方ないですね」
 ミミが不思議なバスケットから取り出したのは、大量のポーションである。そおい、とめがけてまとめて回復。ぺろりとなめとる汰磨羈。
「フルーツジュース風味か」
(何本か残しておいて経費で落とすですよ……)

 ビスコがぽん、とぴよこの肩を叩く。
「真面目な話ですねー練達のお菓子職人さんは地球? という所からきて製菓技術を広めていったと。パパもママもお兄も伝説の師匠って人から教わったって言ってた!」
(職人さん……)
「その、なんていうんですかね、新しい故郷っていうんですかね、人類は混沌に居を移し、子を成し、そして死んでいった、みたいな。人類から紛争を根絶する! 俺が! 俺たちが! イレギュラーズだ!!」
 熱く拳を握るビスコに、ふんふんとうなずくぴよこ。
(ぴよこもイレギュラーズになりたい!)
「なれるですよ!」
 と、メイ。
(おなかの中でですけどー)
 と、内心思うミミ。
「でまあ、故郷ってなんなのかって言うと極論自分にとって居心地のいい場所、コンフォートゾーンなんです。帰れないという事実は抜きにしてその人が作った文化が根付いたらそれは伝統なんですよ。伝統という名の故郷」
「うんうん、君はここにいていいんだよ☆」
(ここが、故郷で良いのかな)
「いい! いいに決まってる!」
 ビスコは、強く頷く。
「そう。それだけじゃない。ここを作り上げたのは君達と同じ、東京を懐かしく思う人達。だからここはもう一つの東京だと俺は思う」
 ドゥーが優しく、ほころびた羽の部分をつくろってやる。そっと、皿を差し出した。
「ちょっと違うかもしれないけど……」
「みてくださいです! メイが頑張って用意したです」
 お皿の上には、スイーツフェアの秋の味覚が乗っている。可愛く飾り付けられて、まるで鳩の巣のようだ。
「おかえり、ここで君達を食べさせて欲しいんだ」
「ぴよこさんたちはその文化に帰還した新住民。ムーンレィス。東京はいいとこなんだぞー!」
(ここが、ぴよこの居場所で、故郷だったんだね)
 ぴよこは皿の上に降り立った。
(ありがとう、イレギュラーズさん。新しい故郷をくれて)
(なんて言ってたりして……?)
 ドゥーは威嚇術で割れないようにそっとぴよこを捕獲する。
 皿から、お尻がちょっとはみ出している。
「ぴよこ、……美味しくいただきたいが、ちと大きすぎる。いいか?」
 汰磨羈が太刀に手をかける。
(ウィンク)
「よさそうだな、うむ。その覚悟や良し、痛くはないぞ」
(せめて綺麗に切ってやりたい)
 ディスプレイに置いてある見本みたいに。この形を損なわないように。最高の状態で、おいしさを伝えたい。
 期待に胸を弾ませ、ぎゅっと目をつむるぴよこ。
「見切った!」
 餡と皮の境目を。その比率を。
 太極律道・劉境楔は、二つに分かつ。
 ぴよこに亀裂が走り、ぱっかんと可愛く二つに割れた。

●実食タイム
「これでおっけーだね!」
 茄子子がちょいちょいと回復してやると、割れた鳩サブレが治った。どういう仕組みかは企業秘密だ。もともと気を使って戦ったから、軽微なものだ。
「せっかくだから学園の人達とも一緒に食べたいよね」
 皆再現性東京の人達、新しい故郷のひとたちだ。
「ですです! 大勢でワイワイ楽しく食べればピヨコさん達もきっと幸せなのですよ!」
「みんなで食べた方が美味しいもんね!」
「みんなどっちのお茶がいいー?」
 ミルキィが手早く飲み物を用意していく。
「ほうじ茶を頼む」
「牛乳ですわー!」
「では、スイーツバイキングなのですー」
 ミミはぱたぱたちょっとだけ尻尾を振る。
「いえーい! メイは楽しみにしていましたよ!」
「堪能するですヨ」
 体重計のことは、今は考えないでおこう。
「ではでは、折角なので、皆さんコップを持って乾杯するですよ! 美味しい秋の味覚に乾杯ですよ!」
「それでは! お手手を合わせてー! いただきます!!」
「いただきますわー!」
 それぞれ、ぴよこに手を合わせたり、あるいは、おいしくいただいたり。
「うん、美味しい~!」
「しょっぱいのもあるよ」
 ドゥーに、微笑むタント様。
「おーっほっほっほ! ご安心くださいませ。学食からいただいて参りましたわーー!」
 どんどんとタッパーを並べるタント。
「甘味のお供、柴漬け! ほか諸々お漬物の類! 美味しく食べるためには必要ですわね!」
「渋いな……だが、そこが良し」
「塩系スイーツ、合うですよ」
「シュガーランド人は甘い物が主食だからね♪ 3食食べても全然いけるんだよ♪
とはいえ量が多いからねー、口直しにソフトクリームとかも食べちゃおうかな♪」
 ミルキィは甘味一辺倒でも平気そうだ。
「あ、ぴよこにソフトクリームのっけて食べるのも結構いけるかも!」
「ソフトクリーム? はんそく……では?」
「メイも! やりたいです!」
「はい、どうぞ!」
「んむ……中々の銘菓だったぞ。どうか、安らかに眠ってくれ」
 ぴよこたちは、汰磨羈とともに生きるだろう。イレギュラーズたちの血となり肉となり、というよりは糖となり、生きていくだろう。
「ふむ、いやしかし流石に食べ応えがあるな!」
「さっきまで戦ってた相手を食べるって変な感じだけど……うん、甘くて美味しい」
「うん、とっても美味しい!ㅤ会長の声、ちゃんとピヨコくんに届いてるかな……?」
(ありがとう、会長さん、故郷を思い出してね……)
「東京って場所は知らないけれど、この子達が目指していた場所なら素敵なところなんだろうね」
 本物の東京に思いを馳せながら、乾杯だ。

成否

成功

MVP

ビスコ(p3p008926)
軽快なネイキッド

状態異常

仙狸厄狩 汰磨羈(p3p002831)[重傷]
陰陽式

あとがき

秋の依頼、ごちそうさまでした。
おいしく食べてくださってありがとうございました!
ぴよこも満足していることと思います。

PAGETOPPAGEBOTTOM