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シナリオ詳細

<Autumn food>松力茸ピザの配達と護衛の依頼

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●食欲の秋と松力茸ピザ
「食欲の秋」という現象が起こる理由には諸説がある。
 秋になると日照時間が減少するから糖質やたんぱく質の摂取量を増やして心身の均衡を安定させる為という説。
 秋は気温が低下する事で基礎代謝量の向上を図るから食事量を増やす為という説。
 夏バテで食欲が低下していた所に秋が始まり涼しくなる事で食欲が回復する為という説等……。
 時にリスのキャラバンでは以下の説を基本方針として採用している。

――食欲の秋が起こるのは美味しい秋の味覚が色々と出揃う為という説。

 という訳で、今年のリスのキャラバンは『鉄帝』南部で開催される紅葉狩りイベントにて「食欲の秋」を推進する。
 当名所では、美麗な秋の紅葉を鑑賞しつつも美味な秋の味覚を満喫するイベントが開催されるのである。
 しかし、当該イベントは行商や隊商の稼ぎ時でもある為、鎬を削る好敵手が多い。
 リスのキャラバンとしても生半可な商品では勝負にすらならない事だろう。
 今年のイベントで一際輝く為にも当キャラバンは秘蔵の逸品を準備していた。

――松力茸のピザ。松力茸は通常の松茸に比べて香りが強い上に逞しくて精が付く。『鉄帝』南部でしか採取できない貴重な松力茸が丸々一本ピザのスライスと共に食べられるのだ。勿論、ピザのパン生地もチーズも『鉄帝』のスチームパンク圧力釜で焼き上げた本場の味。

 上記のキャッチで売り出すリスのキャラバンだが、そのピザの実力は如何程か。
『リスの冒険家』リース・ウォルナッツ(p3n000114)が当キャラバン代表として試食した。
 彼女は、丸々一本の勇ましい松力茸に蕩ける濃厚チーズのピザを熱そうに頬張る。
 松力茸の芳醇な香りと確かな歯応えが頬の中で広がる。
 蕩ける濃厚チーズにもっちもちのパン生地も円やかな食感である。
 リースは、インタビューを受けると溢れる熱意で以下のように回答した。

――こ、これは……!? 食べないと人生が危うく損するレベルだよ!? 私、こんな美味しいキノコもピザも人生で初めて食べたよ!! ぜひ今年の紅葉狩りのお供には、リスのキャラバンの松力茸ピザをお勧めさせて頂くからね!!

●ピザの配達と護衛の依頼
「今日は皆にリスのキャラバンの方からお願いがあるよ。『鉄帝』南部のとある会場では、来る秋の行楽日和のイベントで紅葉狩りが開催されるんだけれどね。その会場に私がピザを配達する予定だから手伝ってくれないかな?」
 あなた方はリスのキャラバン『鉄帝』支部から配達の依頼を相談されている。
 依頼交渉の代表としてあなた方と相対しているのはリース・ウォルナッツである。

「紅葉狩りのピザ配達になぜ、イレギュラーズを頼るかって? それは、会場までの野山の経路で魔物が沢山出るからだよ! 私達のキャラバンの馬車には大量のピザを積むのだけれど。そのピザを狙った魔物からの護衛が必要なんだよね!」
 只のピザ配達ではなく、正確にはピザ配達とその護衛が依頼内容である。
 時に魔物が多いとの事だが、一体、如何なる魔物が出没するのだろうか。

「ピザを狙う魔物はアホウ・ガラスという魔鳥だね。その魔鳥は、丁度運悪く、配達経路に沢山居るんだよね。奴らは松力茸ピザみたいなのが大好きだから絶対に奪おうとしてくるよ! だから配達の護衛の際にはくれぐれも奴らに気を付けてね!」
 要するに今回は魔物討伐ではなく、魔物からピザを護り切れば良い依頼である。
 会場まで辿り着くと流石に人気が多く警備もいるので行きの配達こそが問題なのだ。

「大変な依頼になるかもしれないけれど、引き受けてくれるかな!? 勿論、私達の方からは通常の依頼料金以外に現物の松力茸ピザも提供するよ。無事に会場までピザの配達が出来たら、皆にもピザを渡せるように手配するからね!」
 となると、この依頼は配達完了後が真に美味しい依頼となる事だろう。
 さて、リスのキャラバンが誇る今秋の主力商品である松力茸ピザは如何なる味か。

GMコメント

●目標
 目的地の紅葉狩り会場まで松力茸ピザを配達する。
(配達完了後は現地の紅葉狩り会場でピザの食事も可)

●情報精度
 このシナリオの情報精度はAです。
 想定外の事態は絶対に起こりません。

●ロケーション
『鉄帝』南部のとある名所で紅葉狩りイベントが開催されます。
 その目的地に至るまでには野山の道を通行するのですが魔物が出ます。
 大量のピザを積むキャラバンの馬車で野山を通行する為に護衛が必要です。
 皆さんで馬車とピザを護衛しながら目的地まで無事にピザを届けましょう。

●敵
 目的地に至るまで魔物が松力茸ピザを狙って襲って来ます。
 魔物の追跡を回避したり撃退をしたりしてピザを守り抜きましょう。

 アホウ・ガラス(近接タイプ)×初期5体(増援の可能性あり)
 アホウドリと八咫烏が合体したような鳥の魔物です。
 雑食ですが松力茸のピザみたいな獲物は大好物です。
 戦闘方法は以下。
・嘴アタック(A):嘴による攻撃です。物近単ダメージ。BS痺れ。
・近接ピザ奇襲(A):ピザを奇襲攻撃で狙って奪います。物近単。
・飛行(P):空中戦を得意とします。ほぼ常時飛行しています。

 アホウ・ガラス(遠距離タイプ)×初期5体(増援の可能性あり)
 上記魔物の遠距離を得意とするタイプです。
 戦闘方法は以下。
・黒羽アタック(A):翼の黒羽を飛ばす攻撃です。物中単ダメージ。BS乱れ。
・遠方ピザ奇襲(A):ピザを奇襲攻撃で狙って奪います。物遠単。
・飛行(P):空中戦を得意とします。ほぼ常時飛行しています。

 アホウ・ガラス(特殊タイプ)×初期5体(増援の可能性あり)
 上記魔物の特殊攻撃を得意とするタイプです。
 戦闘方法は以下。
・鴉無双(A):斬撃嵐の踊り攻撃をします。物自域ダメージ。識別。
       BSブレイク、不吉、出血。
・特殊レンジピザ奇襲(A):ピザを奇襲攻撃で狙って奪います。物特レ。
・飛行(P):空中戦を得意とします。ほぼ常時飛行しています。

●NPC
 味方NPCでリスのキャラバンのリースが登場します。
 彼女の初期位置は馬車の御者ですが役割の交代も出来ます。
 戦闘では、リースは御者役あるいは回復アイテムでの支援役です。

●ピザ
「松力茸ピザ」が商品名です。
「松力茸」とは『鉄帝』南部で採れる貴重な松茸です。
「力」とその名称に付くのは食べると精が付く為です。

「松力茸」の外見は、傘が大きく、柄が太くて長く、弾力があり逞しいです。
 歯応えがしっかりとしていて、特有の強い香りがあります。

 ピザの大きさは、1枚で8スライス分に切れる大きめのピザです。
 1スライスごとに松力茸丸1本が乗っています。

 ピザのチーズ部分は、
 チェダーチーズ、クリームチーズ、カマンベールチーズです。
 とろとろであつあつで濃厚です。
 ピザのパン生地の部分は、もっちもちのふわふわパンです。

 なおピザは、キャラバン特製の魔法の紙箱に入っています。
 箱に入っている限り冷める心配はありません。

●GMより
 配達の護衛をすると最後に美味しいピザが食べられるお得な依頼です。
 なお今回の魔物ですが「アホなヤガ・ガラス」という意味ではありません。
 その点はお気を付け願います。

  • <Autumn food>松力茸ピザの配達と護衛の依頼完了
  • GM名ヤガ・ガラス
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2020年10月10日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

嶺渡・蘇芳(p3p000520)
お料理しましょ
藤野 蛍(p3p003861)
比翼連理・護
桜咲 珠緒(p3p004426)
比翼連理・攻
時任 零時(p3p007579)
老兵は死せず
ハルア・フィーン(p3p007983)
おもひで
浜地・庸介(p3p008438)
凡骨にして凡庸
シャノ・アラ・シタシディ(p3p008554)
魂の護り手
ルイビレット・スファニー(p3p009134)
湖面の月

リプレイ

●出発
 隊商の台所から松力茸ピザの芳醇な秋の香りが漂う。
『羽休め』嶺渡・蘇芳(p3p000520)が熟練の料理人の手付きで調理していた。
「リースちゃん? これでどうかしらー?」
 蘇芳に味見を求められて『リスの冒険家』リース・ウォルナッツ(p3n000114)が「松力茸ピザ」を頬張ると……。
「完璧だよ! 香りは間違いなく松力茸だよね? 味は……流石にデコイ」
 リースが述べる通り蘇芳が作成したのは「デコイピザ」である。
 松力茸の破棄する石づき等の部位を活用して「香り」を再現したのだ。
 なお、二人はデコイの紙箱には×印を付けて分別しておいた。
「美味しい物は誰だって食べたいわよねー。だけど、奪いに来るのは感心しないわー」
 蘇芳は依頼を全うしたい一方で、料理人としても正規品のピザを護りたい様だ。

「松力茸のピザ、香りがもうおいしいの。すっごく楽しみ! 会場までの護衛、はりきってこー!」
 ピザ箱を馬車に集荷する元気溌剌な美少女は『Remenber you』ハルア・フィーン(p3p007983)である。
 ×印のデコイピザにはタバスコ搭載済み、紙箱には丈夫な布で包みもう一工夫した。
「ハルア殿? 集荷はこれで全てですね? では、経路と作戦の確認もしましょう」
 ハルアと共に罠を強化したのは『アルドーのお墨付き』浜地・庸介(p3p008438)である。
 実は、庸介は今回が初依頼である為に丁寧な言動を心掛けている様だ。
 庸介は地図を広げると襲撃箇所の予想、休憩地点の復習、地形情報の確認をした。
「さて、何事も無ければ良いが……」

「ピザ美味しそう……。こんなに良い匂いがするんだから魔物が寄ってきても仕方ないよね。お仕事終われば食べられるんだから今は我慢するけどね!」
 荷台で集荷された箱の隣に『湖面の月』ルイビレット・スファニー(p3p009134)が居る。
 ワインレッドのドレスに身を包んだ美しい夜の華である彼女は目立つかもしれない。
 だが実際の所、存在感を消す技術も才能も持つ彼女が一発で発見されはしないだろう。
「ピザを狙ってるんじゃないからね!」
 勿論、真面目なルイビレットの迎撃作戦に期待しよう。

「配達完了の暁には極上ピザに紅葉狩り? 滾るわね……! 秋の味覚も紅葉も、全部まとめて無事届けてあげるわ!」
 馬車の先陣を切るのは心強い壁役の『二人でひとつ』藤野 蛍(p3p003861)である。
「リースさん? 『保護結界』を常時展開しておいてくれるかな? 山道や激しい移動でもピザが保全されるから、安心して御者に専念してほしいわ。せっかくの上物ピザだもの、万全の状態で皆に味わってもらいたいわよね!」
「ありがとう、蛍さん! 結界、使わせて貰うよ!」
 リースは蛍から結界札を受け取ると馬車周囲に丁寧に貼り付けておいた。

 結界作業が完了して行楽地までの護衛配達が開始される。
 蛍の付近で『二人でひとつ』桜咲 珠緒(p3p004426)が周辺に気を配りながら浮遊する。
「ピザは、季節の食材と熱々のチーズを合わせていただく、良い料理ですよね。紅葉狩りと合わせてともなれば、楽しさも引き立て合うことでしょう。しっかりとお仕事をこなして、負い目なくいただきたいですね」
 そんな思いで珠緒は道中に遺棄されたゴミ、罠、丸太を片付けていた。

 馬車は仲間達に囲まれる布陣で護衛されながら進行する。
 後衛の『特異運命座標』時任 零時(p3p007579)は窓や入口周辺を特に警戒していた。
「皆が楽しみにしているピザを魔物に奪わせるわけにはいかないね。気を引き締めてしっかり護衛していこう。それにしても松力茸をふんだんに使ったピザ……。一体どんな味なんだろうね。今から楽しみだなぁ」
 零時が険しい山道で視力と聴力を研ぎ澄まして注意していると……。
「むむ!? ……あの羽ばたきの音と風を切る音は……ついに来たね?」

 地上では零時が警戒する一方で、上空では『特異運命座標』シャノ・アラ・シタシディ(p3p008554)が飛行して偵察する。
「敵、無走。多目線、良」
 要するに、敵が走って来るとは思えないが、目線は多い方が良いとの事。
 シャノの偵察が功を奏したのか、遠方からアホウ・ガラスの大群が飛翔して現れる。
「魔烏相手、嫌。反、ピザ奪、困。大人」
 彼は、魔鳥の相手は嫌だが、ピザを奪われても困るので大人しくして欲しいと嘆く。
 シャノは着陸すると仲間達へ敵の襲来を速やかに告げた。

●襲撃
 魔鳥の大群が奇襲に成功する直前で珠緒が俊敏な速度を以って大技を叩き込む。
「ふふ、それで奇襲ですか? 奇襲はこうやるのですよ?」
 空中で群がる魔鳥が灼熱の砂嵐に絡まれると陣形が半壊した。
 手数に秀でた珠緒の連続技も入ると再度の熱砂が数多の魔鳥共を呑み込む。
 落下した魔鳥は即死、上空に残る魔鳥も機動が鈍り攻撃を躊躇っている様だ。
「では、続けて落していきましょうか?」
 初撃に成功した珠緒を皮切りにして友軍が続々と攻勢に出た。

 珠緒の初撃を受けて残存する魔鳥達とその増援が反撃態勢を取る。
「紅葉狩りの興廃、この一戦にあり!」
 対する友軍は盾役の蛍が先頭で立ち塞がりながら戦歌を声高らかに謳う。
 共にピザを守る壁たらんとする者達を鼓舞したその歌唱は仲間達の戦意を高揚させた。
「ちょっとカラス達、真面目に戦闘しなさいよ!」
 敵陣の初撃を受けた後、蛍は反撃として稲妻が迸る憤怒の桜吹雪を吹き荒す。
 桜技(おうぎ)が魔鳥に命中すると敵陣は血相を変えて蛍に集中攻撃を仕掛けた。
「リースさんにもピザにも、カラスには一指たりとも触れさせない!」

 前衛の蛍が盾として機能している中、後衛の零時も迎撃態勢に入る。
「ふむ、魔物には三種類のタイプがいるみたいだけど……」
 どうも三種類共に外見が同様で見分けづらい為、零時は随時対応していた。
 嘴を光らす魔鳥は氣の打撃で撃退して、黒羽を翳す魔鳥は氣勁砲撃で制圧した。
 暫し攻防を繰り返す内に零時は敵陣からとある発想を閃く。
「あ、そうか! 三種類いても役割と陣形が決まっているんだね?」
 近接型は前衛、特殊型は中衛、遠距離型は後衛と空中で配置に分かれている。
 零時は敵の位置関係で攻撃パターンが見分けられる事を即座に仲間達へ伝達した。

 蘇芳は馬車の屋根上にて隼鳥人の姿で迎撃していた。
 遠距離では斬撃を飛翔させ、中距離以内では魔鳥を乱切りにした。
 零時の伝達が届いた後は位置関係から攻撃パターンを予想して効率的に対処する。
 そこへ突如、怪しい挙動の特殊型が上空から屋根を目掛けてピザを奇襲しに来た!
「そうやって美味しい物を狙うなら、鳥さん達も美味しくなってそうねー。ワイン煮、ミートパイ、カレー……うふふふふー♪」
 料理人蘇芳からしてみればアホウ・ガラスの方こそ美味しそうな旬の食材である。
 嶺渡流料理術を駆使して鋭敏な包丁捌きで魔鳥の解体ショーが始まった。
「皆さーん! あくまで配達の完了が目的よー。あまり深追いし過ぎないようにねー」
 なお、この呼掛けは蘇芳がアホウ・ガラスの群衆本能にも詳しい故の作戦でもある。

 敵の数も次第に減る為、蘇芳からの移動再開が伝達される。
 ハルアは機動力と飛行能力を駆使して曲芸的な動作で敵を翻弄していた。
 中後衛やピザに敵の注意が向かない様に段階差のある牽制攻撃を繰り広げていた。
「そう? 殲滅にこだわらず増援を警戒し手早く倒して逃げきるって!?」
 ハルアが戦場を見渡すと馬車前方が特に狙われていた。
 壁役も善戦していたが敵の数が多い為にリースも馬も攻撃を免れなかった。
「リース、馬車を戦場から離すようお願い! 余り遠くだと新手に襲われるかもだから程々に!」
 ハルアが大声で叫びながらも迅速に空中移動して前衛の戦場に割り込む。
 華麗な空中殺法で問題の魔鳥に高火力を打ち込み撃退した。
「ハルアさん、ありがとう! さて、馬車を動かすよ!」

 庸介はハルア周辺で彼女の後方から援護をしていた。
 練達謹製のビーム銃DXを構えて時に曲芸射撃で翻弄して時に威嚇射撃で攪乱した。
「射撃は得手ではないが……御役目は果たさせていただこう」
 やがて蘇芳から伝達が来ると、ハルアがリースの援護へと回る。
 庸介の次の役目は、リースの援護をするハルアを狙う魔鳥の撃退である。
「ハルア殿から離れろ、そこの魔鳥!」
 庸介が後方から威嚇すると魔鳥は驚いて後退した。
 その後は友軍が馬車を再移動させるまで庸介が射撃で援護に入った。
「よし、俺も撤退して馬車に追い着くか……」

 シャノは陣形で最後尾に就いて友軍全体の支援をしていた。
「皆、頑張!」
 庸介を狙撃する魔鳥がいれば封印魔矢を放ち敵の攻撃を阻み。
 ハルアが出血していたら治癒術式で異常を取り除き。
 零時が行動力を消費して苦戦する所で賦活術にて活性化させた。
「ピザ、守護、確実!」
 シャノはピザを護りたい一心で虹色の奇跡を描きながら魔鳥を引き付ける。
 カラス鳥人がカラス魔物に追われる奇妙な図式が展開された。
「盾役、援護、必要!」
 流石に敵の数も増加するとシャノは蛍へ援護を求めた。
「大丈夫? ボクに代わって!」
 蛍が盾となり魔鳥を引き受けて珠緒が魔鳥を確実に落とす。
「嗚呼、感謝」
 シャノは危うく撃破されずに逃げ切れた。

 皆で必死にピザを護るがそれでも包囲網を抜ける魔鳥もいた。
 魔鳥が馬車の入口に侵入したと同時に強度の衝撃を受けて弾け飛ぶ。
「私がいるのを忘れないでよね?」
 皆さんは、ルイビレットが馬車の荷台に潜伏していた事を覚えているだろうか。
 存在感の薄い彼女の迎撃作戦が土壇場の奇襲時に役立ったのである。
「欲しいものはそう簡単に手に入らない、なんて燃えるだろう?」
 ルイビレットが白い指に嵌めている疾風の指輪を煌めかせて神秘撃を放つ。
 懲りずに強襲を続ける魔鳥に火炎玉が命中して鮮やかな花火が飛び散った。

●難所
 前半戦の襲撃で魔鳥達は大幅に数を減らされた上、隊商の馬車は逃げ切れた。
 しかし、目的地到着間際の所で魔鳥の群れによる最後の襲撃に遭遇した。

「この場が最後の一頑張りだからね! ピザも一人も欠けないで突き進むよ!」
 蛍が委員長らしい気配りで友軍の士気を保つ為に声を掛ける。
 道中で珠緒の献身的な援護回復もあり、蛍は未だに盾役として先頭に立てている。
 最後の一暴れ、恋慕の火炎に燃え盛る桜吹雪が戦場に舞い散る。
 逆上した魔鳥達が、鋭利な嘴で、機敏な黒羽で、奇抜な斬撃で蛍を強襲するが……。
「それでも、ボクは、一歩でも先に踏込む!」

 蛍が大半の魔鳥を引き受けているが、それでも敵は数に物を言わせて援軍も登場する。
 魔鳥の近接や特殊の型が馬車を狙って猛烈な強襲を仕掛けて来た。
「おのれぇ、魔鳥共! ピザを渡すものか!」
 後半戦になると庸介も後方から援護射撃ばかりしていられない局面もあった。
 皆の手が空かない場面では勇敢にも庸介が前に出て体を張って馬車を護る。
 魔鳥達が奇声を上げて鋭い嘴と無数の斬撃で庸介を襲撃すると運命の欠片が壊れた。
「ま、まだだ……。俺は、やれる……!」

 ハルアは月晶風舞の格闘術を構えて魔鳥を掌底打ちで撃破していた。
 ところが驚いた事に後方支援の庸介が走り出して馬車を庇い出したのだ。
「えっ、庸介? 今、助けるからっ!」
 馬車前で体を張った庸介が一度は倒されても再び立ち上がって馬車を庇う。
 既に彼は撃破寸前だが燃える闘志で魔鳥達と睨み合っていた。
 ハルアが空中から着地すると狩人の乱撃戦術で魔鳥共を鮮血に染めた。
 そして第二群が現れると今度はハルアが役目を代わり馬車の前で立ち塞がる。
「ピザは奪わせないよっ!」
 重戦車の少女と野性の魔鳥がピザの運命を賭けて最後の激突を交わす……。

 難所での対決となり外が騒乱としていた。
 ルイビレットも流石に荷台に居られずデコイピザを抱えて外に出る。
「ほら、私を捕まえられる?」
 彼女が抱えるのはデコイに過ぎないが、蘇芳が洗練させた本物紛いのデコイだ。
 松力茸の芳醇な香りが戦場に漂うと魔鳥達が目の色を変えてルイビレットに集る。
「私にばっかり構ってると、他の子に喰われちゃうよ?」
 彼女はデコイ箱を抱えて逃げ回るものの最後は運命の欠片を奪われてしまった。
 だが、デコイを利用した戦術が仲間の意識を感化したのである。

 敵の撃退に力を注いでいた蘇芳がルイビレットの作戦を目撃して閃く。
「そうよ、その手があるわねぇ?」
 蘇芳もデコイピザの箱を数箱抱えながら最前線に復帰する。
 早速、試しにデコイ箱を放り投げると五体もの魔鳥が群がった。
「これはいけるわねー」
 蘇芳は抱えていた箱を全て道中へ放り捨てると他の魔鳥達もデコイに集合した。
 蘇芳が予習した魔物知識の「アホウ・ガラスはジャンキーな物が好き」は実話だった。
「さあ、皆さーん! 先を急ぎましょうねー」

 シャノも蘇芳を見習ってデコイ箱の投擲に加勢する。
 デコイ箱が全て尽きる頃には追跡して来る魔鳥の数もかなり減少した。
 それでも欲張りな魔鳥の中には馬車ごと狙う不逞の輩もいた様だ。
「逃走、推奨。反……痛」
 最後のダメ押しとしてシャノが岩石を召喚して魔鳥の群れへ投擲する。
 要するに、さっさと逃げろ、さもないと痛い目見るぞ、という追撃である。

 ついに魔鳥との戦いも最後の局面を迎える。
 目的地寸前の所で残存する魔鳥達相手に後衛は熾烈な撃ち合いをしていた。
「僕の全力はそれなりに威力あると思うよ? 怖気付いて逃げてくれたりすると助かるんだけどな」
 零時も残す所僅かの氣勁砲撃を惜しみなく繰り出す。
 渾身の氣勁が精鋭である魔鳥共を貫いて敵陣の撤退を促した。
 一方の魔鳥も黒羽の猛攻射撃と死角からの斬撃嵐で零時から運命の欠片を割った。
「くっ、魔鳥もやるものだね? だが、鳳圏男子たる者、ピザは最後まで守るよ!」

 戦場に響き渡る天使の如き美少女の歌声が仲間達の傷を癒す。
 珠緒は盾役の蛍を最後まで立たせる一方で、戦場全体を駆け回り友軍の鼓舞をしていた。
「これで最後となります。このまま撃退を続ければ、ほどなく到着するでしょう」
 かく言う珠緒も戦場が最後の局面を迎えると攻勢にも手を貸す。
 魔花の神秘術が魔鳥に侵蝕すると桜花を咲かせて生命力を奪い取る。
 珠緒は強襲と回復を適度に繰り返して一度も倒れぬまま戦場を制していた。

●宴会
 行楽地の紅葉狩り会場は先程までの激戦が嘘みたいに秋を謳う楽園の様だ。
「到着、かしら? ここからはご褒美タイムね!」
 先頭で馬車を導く蛍が行楽地に安堵の表情で到着した。
 隊商の馬車も無傷とは言えないがピザを何とか護り切れたのだ。
「皆、本当にありがとう! お礼のピザを渡すね?」
 リースは荷台からピザ箱を下ろすと八人全員に報酬を手渡してくれた。

 八人は深紅色の紅葉が素晴らしく見渡せる特等席を陣取って宴会を楽しむ。
「お楽しみのピザをいただきながらの紅葉狩りなのです。紙箱では抑えきれなかった香りが、配達中もずっと感じられましたものね。蛍さん、一度に出してすぐ冷めないよう、半分こしましょう」
 珠緒がピザ箱を開封して芳醇な松力茸ピザを蛍にも切り分けてあげた。
「頑張って守ったピザがどれだけ美味しいのか、ボクの心が真っ赤に燃えるわ……! 楽しみね、珠緒さん!」
 蛍はピザを受け取ると微笑みながら秋の風情をじっくりと味わう。
 一方の珠緒も食事は勿論、手帳とハンカチで別の楽しみ方も用意していた様だ。
「押し葉にして、帰ったらお部屋に飾りましょう」

「護衛が成功したから僕達もピザを食べさせてもらえるんだったね。沢山食べさせてもらえると嬉しいんだけどな」
 食いしん坊の零時はリースから二箱もピザを頂いてしまった。
 年の功は伊達ではなくボリューム満点のピザをもりもりと完食してしまう。
「紅葉楽しみつつピザいただきまーす! 想像超えてた! おいしっ♪ 落ちそうなほっぺたもにもに」
 食いしん坊と言えばハルアもその二つ名を持つ健啖家だ。
 味わい深い松力茸と濃厚ピザを一瞬で平らげてしまう。
「ただでさえ大き目のピザ。それに御立派様なキノコ一本まんまに、トロトロ熱々たっぷりチーズが乗って。そんなに大きくない口に入れようとしたら……ねぇ?」
 蘇芳も料理人として以前から気になっていた本場の松力茸ピザであるが。
 少々、大き目のサイズであるので茸もパン部分も切り分けて美味を堪能した。

「今無食、何時食? 今!」
 今食べずにいつ食べるの? 今でしょ! と豪語するシャノの片手にはピザ箱。
 そしてもう片方の手にはホットドッグ、綿飴、フライドポテトを抱えている。
 彼は行楽地ならではの屋台巡りも満喫していた。
「無論、俺も食す時は今こそ、か」
 シャノに誘われて屋台巡りを共に回った庸介もピザ箱とジャンクを抱えて嬉しそうだ。
 そんな男子達の活発な姿を眺めながらもルイビレットは半ば苦悶している。
「お仕事の報酬がこれならいつでも引き受けたいくらいだね。あ、いや、いつでもは……!? まあ、また護衛依頼でカロリー消費するしかないよね!」
「何が」とは言うまいが、彼女はちょっとだけ気になるお年頃の女子でもある。
 それでも仕事を無事に終えた報酬として頂く秋ピザの味覚は格別であった。

 了

成否

成功

MVP

嶺渡・蘇芳(p3p000520)
お料理しましょ

状態異常

なし

あとがき

シナリオ参加ありがとうございました。
皆さんのご尽力によりピザは無事に護り切れました。
季節のピザを堪能できたPCさん達が羨ましい限りです。

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