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シナリオ詳細

再現性東京2010:二十三時二十三分二十三秒の娘

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング



 ――23:12:34

 足踏みをしていた。
 疲れに傾いだ視界の先に見える信号は赤。
「……遅っせえな」
 小さく吐き捨てる。

 ――23:13:11

 残業を終えた古曳雅史は、どうにか終電の三本前の列車に乗ることが出来た。
 疲労した身体を揺られ、最寄りの駅へ降りる。
 人の数は徐々に減ってゆき、五分程歩いた頃には誰も居なくなっていた。
 とにもかくにも、古曳はさっさと帰りたかったのだ。
 しかし信号が変わらない。

 車も居ない。人も居ない。
 なら……いっそ渡ってしまおうか。

 ――23:13:59

 そんなことをかんがえながら腕時計を見ると、秒針が足踏みしていた。
「あれ。壊れたかなあ。っちゃー……またオーバーホールかよ」
 古曳は幾度か腕時計を降り、大きく溜息を吐いた。

 ――23:13:59

「つか信号どうなってんだ。こんな長いか?」
 いらついた声音で、古曳はスマートフォンを取り出す。

 ――23:13:98

「……は?」
 表示された『秒』は進み続け、遂に百をカウントした。

 ――23:13:102

「おいおいおいおい。どうなってんだ」
 辺りを見回す。赤信号が一瞬暗くなり……そのまま全ての灯りが消えた。
 周囲の雑居も、民家やアパートの窓の明かりも、次々に黒く染まってゆく。
「お、おお、おい。まてやおい」

 ――23:13:121

 ネットワークも電話も圏外だ。
 どうする。どうすればいい。
 信号も、街灯も、家の窓も、なにもかも。全てが消え去って。
 それでも見上げるまるいまるい月は、不吉に赤かった。

 ――23:13:164

「あああああぁぁぁ……ッ!」
 古曳は走った。
 とにかく必至に走った。
 雄叫びとも悲鳴ともつかぬ奇声を放って、がむしゃらに走った。
 ふいに背中に何かがぶつかる。
 熱い。
 もんどりうって胸から倒れた古曳は口を押えて何度も咳き込み、ゆっくりと目をひらいた。
 ぬるぬるとした黒い液体がこぼれている。
 二度目の衝撃に身体が跳ね転がる。
 掠れる視界に見えたものは、赤い月を背負った可憐な少女だった。
 少女は手にもった赤くぬらりと光る刃物を、愛おしげに舐め。
「ばいばい」
 学校の友人に一日の別れを告げるような、ほんの少し寂しそうな表情で手を振った。

 ――23:23:23


 音呂木・ひよの(p3n000167)に呼び出されたイレギュラーズはカフェ・ローレットのテーブルについた。
 彼女が来ている赤いセーラー服は希望ヶ浜学園の制服。
 aPhotoを素早く操作しながらひよのはイレギュラーズに目配せする。
 希望ヶ浜学園はこの街の人達の『平和』を守る為に設立された夜妖退治専門の養成学校だ。
 この街の人達が怯える非日常や悪性怪異を秘密裏に消し去るのがローレットから派遣されてきたイレギュラーズの役目。

「連絡した通り、ここ最近連続通り魔事件が発生しているんです」
 希望ヶ浜市郊外の住宅地で発生した連続通り魔事件。ニュースで情報を仕入れているイレギュラーズもいるだろう。
「犯行時刻はずれも23時過ぎ頃と推測されています」
 これが普通の連続通り魔事件なら、カフェ・ローレットの出番ではないだろう。
 けれど、イレギュラーズがここに呼び出されたということは、夜妖の仕業なのだと推察できた。
「学園側で調査を行った結果、犯人は悪性怪異夜妖と判明しました」
 夜遅くに刃物を使って何人もの人を殺している。
「目的までは定かではありませんが、このまま放置するわけにはいきません」
 無闇に被害者を増やすわけにはいかない。
 住民の不安を煽れば、それだけ夜妖が発生しやすい土壌を作り出してしまう。
「皆さんには、現場に急行して夜妖を討伐して頂きたいです」
 よろしくお願いします、と頭を下げたひよのにイレギュラーズは「任せろ」と返事をした。


 ばいばい。さようなら。
 お友達と交すお別れの儀式。
 くるしくて、さびしくて、胸が締め付けられる。
 だから――大好きで愛おしい。

「ねえ、おわかれしよ?」

GMコメント

 桜田ポーチュラカです。よろしくお願いします。

■依頼達成条件
 夜妖を退治する

■フィールド
 夜の住宅街です。広いです。電灯がありますので、視界に特に問題は在りません。
 犯行時刻は23時過ぎ頃。

■夜妖『二十三時二十三分二十三秒の娘』
 少女の姿をした夜妖です。連続通り魔の正体です。
 サバイバルナイフを持っています。
 離別に執着しています。
・切りつけ:物至列の攻撃【出血】
・滅多差し:物至単の攻撃【失血】【弱点】強力な技です。
・終焉:体力が減ってくると血の涙を流します。触れるとダメージを受けます。

■夜妖『有象無象』10体
 定型を持たない有象無象です。何者でも無い思念の塊。
・しめつけ:物至単の攻撃
・叫び:神遠範の攻撃【呪い】

●再現性東京2010街『希望ヶ浜』
 練達には、再現性東京(アデプト・トーキョー)と呼ばれる地区がある。
 主に地球、日本地域出身の旅人や、彼らに興味を抱く者たちが作り上げた、練達内に存在する、日本の都市、『東京』を模した特殊地区。
 ここは『希望ヶ浜』。東京西部の小さな都市を模した地域だ。
 希望ヶ浜の人々は世界の在り方を受け入れていない。目を瞑り耳を塞ぎ、かつての世界を再現したつもりで生きている。
 練達はここに国内を脅かすモンスター(悪性怪異と呼ばれています)を討伐するための人材を育成する機関『希望ヶ浜学園』を設立した。
 そこでローレットのイレギュラーズが、モンスター退治の専門家として招かれたのである。
 それも『学園の生徒や職員』という形で……。

●希望ヶ浜学園
 再現性東京2010街『希望ヶ浜』に設立された学校。
 夜妖<ヨル>と呼ばれる存在と戦う学生を育成するマンモス校。
 幼稚舎から大学まで一貫した教育を行っており、希望ヶ浜地区では『由緒正しき学園』という認識をされいる裏側では怪異と戦う者達の育成を行っている。
 ローレットのイレギュラーズの皆さんは入学、編入、講師として参入することができます。
 入学/編入学年や講師としての受け持ち科目はご自分で決定していただくことが出来ます。
 ライトな学園伝奇をお楽しみいただけます。

●夜妖<ヨル>
 都市伝説やモンスターの総称。
 科学文明の中に生きる再現性東京の住民達にとって存在してはいけないファンタジー生物。
 関わりたくないものです。
 完全な人型で無い旅人や種族は再現性東京『希望ヶ浜地区』では恐れられる程度に、この地区では『非日常』は許容されません。(ただし、非日常を認めないため変わったファッションだなと思われる程度に済みます)

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

  • 再現性東京2010:二十三時二十三分二十三秒の娘完了
  • GM名桜田ポーチュラカ
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2020年10月07日 22時50分
  • 参加人数8/8人
  • 相談5日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

日向 葵(p3p000366)
紅眼のエースストライカー
マニエラ・マギサ・メーヴィン(p3p002906)
記憶に刻め
タツミ・ロック・ストレージ(p3p007185)
空気読め太郎
伊達 千尋(p3p007569)
Go To HeLL!
ブレンダ・スカーレット・アレクサンデル(p3p008017)
薄明を見る者
鏡禍・A・水月(p3p008354)
鏡花の盾
秋野 雪見(p3p008507)
エンターテイナー
ウロ ウロ(p3p008610)
虚虚実実

リプレイ



 ――22:06:45

 真っ暗な住宅地に小さな足音が聞こえてくる。
 家屋の外壁に跳ね返ってくる自分の靴の音に『空気読め太郎』タツミ・ロック・ストレージ(p3p007185)は後ろを振り返った。
「離別に執着する夜妖ねぇ、都市伝説といえば都市伝説っぽい話だよなあ、まあ、オカルトとかじゃなくて正直正体わかってるから一切怖くねーけどな!」
 早口でまくし立てるタツミは何だか怖気を感じてぷるぷると震える。
「……怖くねーけどな!大体出現するときの怪奇現象だってパニックになった奴の見間違いかもしれねーし! 現れる時間帯わかってるんだから覚悟しておけば怖くねーし!」
 そう、今日の依頼は23時過ぎ頃に現れる夜妖を倒すというもの。
 タツミはaPhoneを取り出して時間を確認する。まだ22時をすぎたところだ。
「情報収集は大切だからな。いやー今日は出てこないかもなー!」
 タツミの背後から『策士』リアナル・マギサ・メーヴィン(p3p002906)が肩を叩く。
「うわぁァァアア!?」
「え、何!?」
 タツミの悲鳴に肩を叩いたリアナルも驚いて周囲を警戒した。
「何なの」
「白い髪がお化けかと思って」
「誰がお化けだ。それにしても随分と早いな。……まあ、情報収集はしておくにこしたことはないか」
 この希望ヶ浜は歪で何処か変わっているとリアナルは思う。
「……殺人鬼まで夜妖か……種類が多いな……」
 何もかもを悪性怪異と呼び、自分達の視界から遠ざける人々。
 もし、異形のウォーカーが紛れ込んだら夜妖と言われてしまうのだろうかとリアナルは考えた。
「まぁ姿形は関係ないし雑魚がいくら増えてもどうせ全て殺すんだ」

 ――23:02:15

 時間が過ぎて23時を示す頃。
『ニャー!』秋野 雪見(p3p008507)と『鏡面の妖怪』水月・鏡禍(p3p008354)が現れる。
「やってきました夜妖退治! 今回の討滅対象は通り魔少女!
 それを撃退するのはイレギュラーズ! 私たちは無事に平和を取り戻すことができるのか!」
 続く! とビシッと決めた雪見は鏡禍に振り返り感想を求めた。
「うん。決まってます。それにしても時間は怪談のお約束ですが、また凝った演出をしますね。夜妖だからなのでしょうか? 僕も見習った方がいいのでしょうか……と考えている場合ではないですね」
 鏡禍は周囲を警戒しながら鏡を取り出す。背後の状況を確認するためだ。
「僕みたいに映らない可能性はありますが、警戒しないよりマシのはずです」
 鏡禍の鏡は屋根の上を映す。そこには『虚虚実実』ウロ ウロ(p3p008610)の姿があった。
 ゴーグルをつけて住宅の屋根の上から辺りを見回している。
「悪性怪異相変わらずバリエ~~ションに富んだ怪異で楽しくなっちゃうね。
 ま、退治しろって言われてるから別離だかなんだか知らないし事情はどうであれ撃つだけなんだけどね~」 サヨナラされるのはキミだよとウロはゆらゆらと身体を揺らす。
 屋根の上からなら視野も広く警戒出来るし、誰かの背後に怪しい者が近づいてきたら指す前に対処出来ると思ったのだ。
「ど~やって出現するかわからない通り魔相手に先手を取れるかわからないけど、通り魔の標的が一般人なら一応守らないとだし、交戦前から誰かが傷負うのは、ま~ぁ出来るなら避けたいところだよね」
 早速誰かが来たようだとウロは目を凝らす。ウロの視線に『紅眼のエースストライカー』日向 葵(p3p000366)が手を上げた。
「随分とまた怪談というかホラーというか、っスね。ヨルでも人でも連続通り魔殺人だってんなら、対処しなきゃいけねぇのは違いはねぇけどな」
 葵は手元のaPhoneを見る。
「……ヨルの仕業って考えると、何かしらルールはあると考えるべきっスか。とにかく、野放しにはできねぇんだ さっさと終わらせるっスよ」

 ――23:13:59

「別れ、か……そういえば私も元の世界の誰にも告げてきていないな」
『ミス・トワイライト』ブレンダ・スカーレット・アレクサンデル(p3p008017)は悲しげな目で街灯を見つめていた。
「まぁいづれ戻るのだからいいだろう。それはさておき別れとはいつかは必ず訪れるがそれを人の手で強制していいものではない。ましてやそれが自分自身の快楽ためなど言語道断」
 優雅に言葉を並べていくブレンダに『Go To HeLL!』伊達 千尋(p3p007569)はふうと息を吐いた。
 23時過ぎに現れる殺人鬼。
「うおおマジでこれ『ザ・怪談』って感じのヤツじゃん? は ?怖くなんかねえし?
 俺ガキの頃学校の怪談とかマジ平気だったし? これは武者震いなんだし? 俺は冷静なんだし?」
 自己肯定感を自分の言葉で高めていく千尋。
 見た目はドレッドヘアのヤンキーだが、洞察力はとても高い。
「予兆的には灯りが消える、電波が消える、月が赤くなるって感じか? スマホの時間は……」

 ――23:13:98

「はは、越えたな。時間通りに『出現』して不意打ちかますってのがこの手の怪談のお約束だろ?」
 しかも情報によると殺されたのは男で、更に背後から刺されている。千尋は背中に週刊漫画雑誌を仕込んで対策をしていた。

 ――23:13:121

 ネットワークは圏外だ。
 周りの住宅の明かりが一斉に消えて行く。
「後ろから突然刺されたワケだが、複数いた場合は誰を刺すんスかね。もし、後ろからしか刺せないとすれば誰かが背後を見張ればどうだろうな」
 葵も警戒を怠らない。じりじりと緊張感が高まっていく。
「通り魔という名目な以上、襲われる前に視認される正面からは姿を出さないはずっス」
 だから、敵にとっての背後を消すのだと葵は考えた。

 ――23:13:164

 見上げるまるいまるい月が不吉に赤い。
「ね、お別れしましょう?」
 可憐な声が千尋の耳元で響いた。


「―――今夜お別れするのは貴様だ」
 ブレンダの声が明かりの消えた住宅街に放たれる。
「敵の攻撃レンジが短いし、無理に近づく理由はねぇよな」
 距離の離れた場所から現れた夜妖を攻撃するのは葵だ。
 漆黒の禍々しい模様が刻まれた真紅のガントレットに力を込めてサッカーボールを叩きつける。
「アイツは何で生まれたか、確かに少し気になる所ではあるな。
 良くありそうな話なら、亡霊とか、悪意の塊とか……何にしろろくなもんじゃねぇけどな。
 もしくはただの、そういう行為を繰り返すシステム、とかっスか?」
 詳細は分からないが葵は攻撃の手を緩めない。
 他の有象無象を巻き込めるタイミングで推進力として込められた赤いエネルギーを纏ったボールを繰り出し夜妖もろとも強烈なシュートを決める。
 ブレンダが走り込み夜妖と共に現れた有象無象を相手取る。
 一刻も早く雑魚を倒し少女の夜妖に合流するのだ。
「有象無象が邪魔をするんじゃあない!!!」
 ブレンダが放つ先陣の刃は前へ進むモノを推し進める。振るわれる剣は嵐となり、周囲に存在する総てを斬り伏せるようだ。

「あなたたちの相手は僕ですよ。全部受け止めてみせます、来なさい!」
 鏡禍の名乗りが戦場に響いた。
 わらわらと鏡禍に引き寄せられていく有象無象たち。
「僕が倒れるより先に、他の方々を倒されるわけにはいきません!」
 自分は攻撃を受けても構わないと精一杯声を張り上げる。
 鏡禍の身体は沢山の傷に覆われた。たとえ、鏡禍の体力が潤沢にあろうとも集中攻撃を受ければ何れ尽きてしまう。しかし、鏡禍は全く怖くないのだ。
「鏡が割れるまで僕は倒れるわけにはいかないんです」
 鏡禍の決意にリアナルがそうだなと応える。
「さ、消費は気にせずに存分に暴れてくれ給え、弾はこちらが用意しよう」
 リアナルは的確に戦場を見据え指示を出した。
 仲間はリアナルの声を目安に戦場を駆け抜ける。
 今回は体力を回復する仲間が居ないから、最初から全力攻撃なのだ。
 そのための補助はリアナルが引き受ける。
「殲滅を優先するのだ」
 リアナルの放った連なる雷撃はうねり、のたうち、蛇のように対象を狙う。

 タツミは少女を前に「マジでいんの!」と震え上がった。
 ナイフを持ち震えながら夜妖の抑えに向かう。
 とにかく死なないとタツミは覚悟を決めて全身を使った引き絞るような拳の構えから、溜めた力を拳に一点集中させ放つ必殺攻撃を叩き込んだ。
「正直、なんでそんな離別に執着するかわからねえが、もし何か未練がそれをちょいと聞いてみたくはある。きっと、いくら離別を重ねても満足できないんだろうけどさ」
 悲しげにタツミは夜妖に言葉を投げる。

 ――23:13:341

「沢山の雑魚達は仲間に任せて、私は夜妖の相手にゃ!」
 複数に殴られればそれだけ避けづらくなるのだとぐっと雪見は拳を握った。
「タイマンなら私に攻撃が向かってきても避けやすいし他の人も攻撃しやすくなるからにゃ」
 夜妖の背後に忍び寄った雪見は死角から不意打ちのダメージを狙う。
「火力はお察しだけど、まーーーなんとかなるでしょ!
 ちまちまダメージを与えてなんとかするにゃ!」
 少女の背中に雪見の攻撃が刻まれた。ぐるりと反対を向いた敵のナイフを寸前の所で避けた雪見は距離を取って構え直す。
「倒れそうな時はしっかり逃げる! 死んじゃうのはいやにゃ」
 なにせこの戦場には回復手が居ないのだ。無理をせず行動しなければならなかった。

 鏡禍は卓越した防御技術で敵の勢いを破壊力に変える、防御攻勢で後の先を打つ。
 一体ずつ確実に仕留めて数を減らしていくのだ。
 攻撃を受とめるたびに鏡禍は息を吐いた。いくら防御に優れているとはいえ、痛いものは痛い。
 けれど、鏡禍がここで持ちこたえ、敵を引きつけたおかげで仲間の損害は少なくなっていた。
 痛む傷に「まだ、大丈夫」と言い聞かせて、鏡禍は攻撃の手をとめない。
 そこへブレンダの剣とウロの攻撃が猛威を振るう。
 しかし、数の多い有象無象である。カバーできない部分が出てくるものだ。
「そういうのを狙い撃ちするのがボクの役目。逆に言うとね~~孤立してる奴、群れから浮いた奴から狩られてくってね」
 ウロによる屋根の上からの遠距離射撃が有象無象を狙い撃つ。
「え~~~誤射怖いな、そんなヘマしないけど」
 的確に有象無象を一体ずつ捉えるウロの瞳はまばたきをしていなかった。
 その視線は戦場を屋根の上から見下ろしている。地上からでは見えない部分を見通す視野。
「ほら、はみでた~~~そういうのはさ、爪弾きにされちゃうんだよ~~」
 群れから孤立した有象無象の一体をウロが打ち抜く。
 ボロボロと崩れていく怪物はドサリと倒れて闇の中に消えて行った。

「しかし通り魔ちゃんよ、話はできるか? 俺の言葉わかる?」
 千尋は夜妖を抑えるために連撃を叩き込む。その間にも少女に対して問いかけた。
「なに?」
「お前何から生まれたんだ? 何かあるだろ、恨みとかつらみとか。だってお前そういうモンだろ?
 悲しい別れでもあったか? 男にこっぴどくフラれたか? 血の涙を流すくらいだもんな」
「死んじゃった。友達。バイバイって、言ったのに」
 幾つかの言葉からは悲しげな印象が伝わってくる。
「オメーは倒さなきゃならねーけど、話くらいなら聞いてやるよ。
 叫ぶだけ叫んで、スッキリ消えようや!」

 ――23:13:489

「言っただろう。貴様とはここでお別れだ」
 ブレンダの叫びが赤い月の住宅街に響いた。
「別れとは、別離とは確かに悲しいものかもしれない。だがそれは同時にその相手がどれだけ大事かを実感することでもある。だから―――貴様のソレは違う!」
 血の涙を流しながらブレンダの攻撃を受ける夜妖。
 夜妖のナイフに傷つく事を気にもせず、タツミは前に進んでいく。
「あんたを満たす離別なんざくれてやらねえ」
 そう言ったタツミはわざと夜妖のナイフを受けた。
 そして、少女を抱き留める。
「誰かとお別れするのは、これっきりにしようぜ。あんたが消えるまでは、その涙も全部受け止めてやる。オカルトは嫌いだが、女の子が泣くのがもっと嫌いなんでな。何よりその綺麗な顔を間近で見れる特等席、譲れねえからな!」
 少女の涙を拭いタツミは仲間へ合図を送った。
 嫌がる少女が逃げようとするのを感じ取ったウロが間髪を入れず白銀のライフルから魔弾を放つ。
「こ~~したら追い討ちしやすいでしょ、ね?」
 ウロの攻撃に続くように千尋と葵の攻撃が重なる。
「いくっすよ!」
「任せろや! 悪霊退散除霊パンチ!」
 迸るイレギュラーズの攻撃に夜妖の体力が奪われていった。

「貴様にさようならなどは言わん。これでお終いだ」
 ブレンダの二刀は少女の姿をした夜妖の首をはねた。
「バイば……」
 身勝手な別れを振りまくものに慈悲などなく。
 離別に固執した少女はにはもう別れは訪れない――

 ――23:23:23

「言ったろ? 学校の怪談とかマジ平気だってな」
 千尋の軽口に雪見とウロがくすりと微笑む。
「さようなら。二度と会わないことを願うよ」
 リアナルは少女の亡骸を見つめてお別れをした。

「――では、どこかでまた会おう」
 ブレンダの言葉に仲間は「ああ」と返事をする。
 別れとは再会を誓う儀式なのだから。

 ――23:23:24

成否

成功

MVP

鏡禍・A・水月(p3p008354)
鏡花の盾

状態異常

鏡禍・A・水月(p3p008354)[重傷]
鏡花の盾
秋野 雪見(p3p008507)[重傷]
エンターテイナー

あとがき

 イレギュラーズの皆さん、お疲れ様でした。
 楽しんで頂けたら幸いです。
 MVPは戦場を支えた方にお送りします。
 それでは、またのご縁をお待ちしております。

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