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シナリオ詳細

<FarbeReise>ストーンオペレーション

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●銃弾は撃つ前から当たっているものである
 広い砂漠の一角で、渇いた銃声が遠く遠くへと響いていく。
 顔に皺を深くした男――ラルグス・ジグリは立ったままライフルを構え、40メートル先に立てた板を左から順番に一枚ずつ、三秒間隔で、まるで歯車仕掛けのように正確に板中央を打ち抜いていった。
 目はスコープを覗いたまま、顎だけを動かして述べた。
「色宝(ファルグメント)の話は聞いているか」
「ああ、書面でなら」
 ラルグスのちょうど三秒後、ラダ・ジグリ(p3p000271)はライフルを構え、彼の破壊した板を右から順に一枚ずつ打ち抜いていく。
 板に開いた穴はラルグスのものから五~十センチほど離れていた。
「お前はどう思った」
 三枚目を打ち抜いたところで、ラダはレバーを操作し弾をリロード。
 ラルグスが今度は左から打ち抜いていく。
 その三秒刻みの間、ラダは思考しながらも手を動かしていた。
「価値は低いが新しいものは市場に広がりやすい。市場に広がったものは金の力で集めやすい。一つ一つは些細な力でも、集まれば大きく歪むのなら……売買を禁止するのは必要な処置だろう。父さんたちの判断は正しいと思う。
 ただ……ローレットを使う意味は、人材不足のせいか? そんなにファルグメントを確保したいなら、自分でいけばいい」
「おいおい」
 三発目を打ち終えて、ラルグスは苦笑した。
「老いた商人を危険なダンジョンに放り込む気か?」
 ライフルを構え直し、ラダは息をついた。
 ラルグスの弾は正確に板の中央。前回の自分と全く同じ穴を抜けていた。
「よくいう」

●願いの叶う宝物
 数々の古代遺跡の眠るラサ大砂漠。カノンの蘇らせた砂の都を例に取るまでもなく、この土地には大小様々な、そして数え切れないほどの古代遺跡が点在していた。
 そんな中に、『ファルベライズ』という区域がある。
 この区域にもまた沢山の遺跡が眠るが、その奥にはそれぞれ願いを叶える色宝(ファグルメント)が収められているという。
「といっても、せいぜい腱鞘炎を直したり二日酔いを覚ましたりする程度の力だ。
 ブラックマーケットで手に入る薬や武器とそうかわらない……いや、それに劣るかもしれないな。
 だがこれを大量に集めようとしている盗賊団の存在がある。連中に渡る前に確保してしまいたい。ひとまず色宝はお前が……ローレットが確保しておけ」
 ラサにあるオアシス街ゴールドサックスの酒場にて、ラルグスはラダの肩をぽんと叩いて言った。
 テーブルに集まっているのはこの二人を含めたローレット・イレギュラーズの面々である。
「要約すると、ファルベライズの遺跡を攻略して色宝をゲットしてこい」
「派手な仕入れだ。似たような仕事から帰ったばかりだが……最近はこういうのが多いな」
 ラダは了承の意味を込めて依頼書を自分の方へとひきよせた。
 対するラルグスはテーブルの端にコインを詰み、イレギュラーズたちの肩を叩いて酒場を出て行った。
「あとは若い連中に任せる。そのコインで好きなもんを食べてくれ」

●ウィンチェスト遺跡にて
 ラルグスが『仕入れた』情報によれば、今回トライする遺跡の名はウィンチェスト遺跡。
 遺跡内部は広く大きな地下空洞となっており、そこにはコボルト系モンスターが集落を作っているという。
「彼らは独自の魔道銃によって武装しているが、そもそもの外敵になれていないせいか防衛能力はそこまで高いとは言えないらしいな」
 石と土で作られたコボルトの集落を襲撃し、コボルトの王が所持しているという『王冠』を手に入れる。これが依頼内容だ。
「要はその王冠が?」
「ああ、色宝ということだろうな」
 ラダは仲間達とともに仮想の地図を描き始めた。
「『集落』『兵隊』『王』……この三つがあること以外に情報は無い。
 事前に偵察を行って建物や道の配置を確認できれば尚いいだろう。狙撃に適したポイントも把握しておきたい。
 まあ、何も考えずに銃を乱射しながら突入するのもアリかもしれないが……情報は多いに越したことはないだろう?」
 そこまで話すと、ラダはパチンと指を鳴らした。酒場のウェイターがやってくる。
「さて、何が出来るか話し合おう。そして折角だ、好きなものを注文することにしようか」
 父の置いていったコインを指さして、肩をすくめて見せた。

GMコメント

■今回の相談会場
・オアシス酒場『デイヴィッドMSO』
 ハンバーガーやフライドポテト、ピザやナポリタンといった庶民的な料理を出す酒場。
 『売れてるものは良いものだ』の精神で大衆が欲するものは大抵メニューに加わっているというのが特徴。
 ラルグスのおごりで懐は温かいので、挨拶ついでに好きな食べ物と飲み物を注文しよう。
(※当依頼では巡り会った仲間と街角感覚のロールプレイをはさんでの依頼相談をお楽しみ頂けます。互いのPCの癖や性格も把握しやすくなりますので、ぜひぜひお楽しみくださいませ)

■オーダー
 ウィンチェスト遺跡にて色宝『土塊犬の王冠』をゲットする。

 攻略方法は『自由』です。
 今回集められたメンバーのできることを組み合わせ、上手に集落を制圧する方法を組み立てましょう。
 偵察によってルートを探ったり、配置を広げて各所一斉に奇襲をかけて混乱させたり、陽動を使ってバックアタックを仕掛けたり、できることは無限大です。

 遺跡内には亜人系モンスターのゲヴェーアコボルトが集落があり、彼らは掘り出した鉱石で作った魔法の銃で武装しています。
 亜人属といっても言葉の通じないモンスターなうえ人間にたいして非常に敵対的です。
 彼らの防衛を突破、制圧し、お宝をゲットして撤収することになります。

・集落
 野球場ばりに広い空洞内に石煉瓦を積み上げたような四角い家屋を並べて集落としているようです。
 家屋や道の配置はわかっていませんが、とりあえず中央にそびえ立つ塔のような建物にコボルトキングがいるのは確かなようです。
 事前の偵察行動が成功するとこれらの細かい配置や敵の武装バランスが判明し、戦術的な有利をとれるほか最大で『命中+30、回避+30、CT+20』のボーナス効果を情報共有者全員が得ることが出来ます。

■オマケ解説
・色宝
 小さな願いが叶うお宝。といってもちょっとした傷を治したり悪い夢を見なくなったりと些細な力しかない。
 今回はこれらのうちひとつを確保するのが役目。

・FarbeReise
 ラサに存在する遺跡群とその土地。仲間達の探索によって攻略が可能となった。それぞれの遺跡に色宝が収められているという。

■■■アドリブ度■■■
 ロールプレイをよりお楽しみいただくため、リプレイにはキャラクターのアドリブ描写を用いることがございます。
 プレイングやステータスシートに『アドリブ歓迎』『アドリブなし』といった形でお書きくだされば、度合いに応じて対応いたします。ぜひぜひご利用ください。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

  • <FarbeReise>ストーンオペレーション完了
  • GM名黒筆墨汁
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2020年10月07日 22時50分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ラダ・ジグリ(p3p000271)
灼けつく太陽
オデット・ソレーユ・クリスタリア(p3p000282)
鏡花の矛
ヴァイス・ブルメホフナ・ストランド(p3p000921)
虹色
ジュルナット・ウィウスト(p3p007518)
風吹かす狩人
ゼファー(p3p007625)
祝福の風
カノン=S=クロイツ(p3p007912)
あなたの後ろに♪
三國・誠司(p3p008563)
一般人
フラーゴラ・トラモント(p3p008825)
星月を掬うひと

リプレイ

●オアシス酒場『デイヴィッドMSO』にて
 紙に包まれたケバブを両手で持ってはむはむとかじりつく『恋の炎に身を焦がし』フラーゴラ・トラモント(p3p008825)。
 ひとつ食べきって親指のさきをぺろりと舐めると、まだ暖かいチャイに手をつけた。
「ふふ、いい香りだね……」
「また気持ちよく食べるわねぇ」
 テーブルに顎肘をついて胸を台にのせる『never miss you』ゼファー(p3p007625)。
 フラーゴラの顔をのぞき込んで、自分の手前にあったピザ皿をスッと指でおしてやった。
「私のどうぞ? わけっこしましょ」
「いいね。シェアだ」
 一切れのサラミピザを細く畳んではむはむ先っぽから食べ始めるフラーゴラ。
 そうこうしている間にお手軽サイズの生ハム原木が運ばれてきて、場はワッと盛り上がった。
「話し合いっていうより、もうちょっとしたパーティーね」
 『1680万色に輝く』オデット・ソレーユ・クリスタリア(p3p000282)は苦笑しつつもそぎ落とした生ハムでレタスをまいて食べ始めた。
「あなたのお父さんには感謝しなくっちゃ。きっちり代わりをこなさないとね。あの人って、もう引退しちゃったの?」
「全然。まだ現役だ」
 『剣砕きの』ラダ・ジグリ(p3p000271)は肩をすくめて『よく言うよな』と笑ってかえした。
「ただまぁ本業もあるし、自由に動けないんだろう。前人未踏の遺跡探索なんていうのはな」
「そういうのを代行してあげるのが、本来のギルドローレットなんじゃないかしら?」
 フォークに丸めた生ハムを突き刺したものをかざして、ゼファーは頭をフォークと一緒に左右にチクタクと振って見せた。
「時は金なり。金を払えば暇が買えるのよ」
「それが商売の基本だ」
 小皿にわけられた生ハムをフォークでまきながら、ラダは眉を小さく上げた。
「けど、今回の案件はあーんまり良い予感がしてないのよねぇ。キャノンさんはどう思う」
「えっなにその呼び名は」
 フライドポテトの最後の数本をざらーって口に放り込んだはいいがちょっと多すぎて口の中が芋で一杯になっていた『1680万色に輝く』三國・誠司(p3p008563)がすべてを飲み込んでから振り返る。
「年上には敬意を払おうと思って」
「いや同い年だろ。むしろ同い年だと知って逆にショックだよ。ゼファーはずっと年上だと思ってた」
 なんていう冗談を交わしつつ、誠司は切り替えたように真面目な顔になった。
「今回の遺跡は全体的に不自然だ。前人未踏の空間っていう割に一定の文明が築かれてるし、魔道銃を運用するほど兵器が潤ってるにも関わらず居住エリアは遺跡の居抜きなんだろう?
 それに、色宝を王冠につけてるってことから価値を知っている可能性もある。
 人為的……っていうと語弊があるんだけど、このコボルト集落に干渉した存在を感じるんだよな」
「そんなことまで考えていたの? 真面目ねぇ」
 『白き寓話』ヴァイス・ブルメホフナ・ストランド(p3p000921)はピザに生ハムを飽きるほど敷いてからかじるという贅沢な遊びをしていた。
「ラサといえば遺跡ってイメージがあったけど、今回はその大口仕事ってことなんでしょう?」
 ヴァイスの言うように、ファルベライズ遺跡群の探索はラサ傭兵商人連合からローレットに任された大きな仕事だ。
 色宝が根本的にはどういうものなのか、この遺跡群がどうして生まれたのか。そんな歴史については未だ不明なままだが、それがかえってロマンを刺激しているようにも思えた。
「小さな願いを叶える財宝ネェ。一つでそんな力があるのなら、集めてしまえばどうなるのやラ」
 『風吹かす狩人』ジュルナット・ウィウスト(p3p007518)はバジルソースがたっぷりかかったピザのラストひとかけを口に放り込むとぱしぱしと手を払った。
「まあ、今回の依頼をこなすには必要ない知識かナ。おじいちゃんらは自分たちらしく、依頼を真面目に果たそうかネ!」
「そうそう。んふふー、お宝、お宝っ♪」
 大きなハンバーグをあーむと平らげ、フォークとナイフをお皿に置いた『あなたの後ろに♪』カノン=S=クロイツ(p3p007912)。
 口をなぷきんで拭うと、レモンスカッシュを飲み干して椅子から立ち上がった。
「お腹もいっぱい、元気いっぱい! がんばろっ♪ 早速現地へレッツゴー♪」

●ウィンチェスト遺跡にて
 小さく開かれた石の通路を進んでいくと、コボルトたちの集落へと出た。
「高所はとれるか。できれば見つからない場所に隠れて待機したい」
 ラダの要求に、誠司とジュルナットはそれぞれ分担して動き始めた。
「スナイプにむく場所を探してみるヨ。それまで待っててもらえるかナ?」
「任せる」
 ジュルナットに言われて、ラダはライフルを抱えるようにしてうずくまり、気配を薄れさせながら頷いた。
「しかし奴らも災難だな。友好的な相手なら代わりの宝を融通しようとも思えたのに」
「どうかしらね。王冠にするくらいだから、代えがたい意味があるのかもしれないわよ」
 同じく待機組のゼファーが壁により掛かって腕組みをする。
 こきりと首を傾けて鳴らすと、カノンに視線をやった。
 カノンはといえば、ライフルを丁寧に点検しながら会話に加わり始める。
「そういえば色宝って沢山あるみたいだけどー……なんでだろうね?
 なんで似たようなものがいくつもあるのかな。元は一つだったとか? なにか封印されてたとか?」
「散らばって小さな願い事になった、ってこと……?」
 フラーゴラがお持ち帰り用に貰ったロールケバブをぺろりと平らげて言った。
「だったら、元はどんなお宝だったのかな……」
「『ひとつなぎのお宝』ねぇ……そう考えると、この探索もロマンがあるかも」
 ゼファーたちはくすくすと笑って、仲間達の帰りを待った。

 オデットとヴァイスはそれぞれまた別の安全な場所へ隠れつつ、遺跡について別角度からの探索を行っていた。
「あなたはどうやって調べるつもりなの、オデット?」
 奇妙につるっとした石の壁によりかかり、格子状の穴からコボルとがやってこないか観察しているヴァイス。
 その隣でオデットは空中に指をくるくるとやっていた。
「いま、遺跡の中に住んでる精霊さんに話しかけてるの」
 目立たないようにか光の蝶羽をたたみ、妖精の言葉で語りかける。
 すると微細なクリオネめいた精霊が可視化されキュルキュルという鳴き声だけをかえしてきた。
 普通はこれで終わりというか、声を返してくる時点で希である。一般社会にふわふわしてるやつはタンポポの綿毛みたいにフワフワなだけで会話が会話もまるで通じないどころか相手に言葉や命令を理解させるだけでも困難だったりするのだが……。
 クリオネ型精霊たちはキュルキュルと互いに交信しあうことで仲間を集め、やがて手のひらにのる程度の小さな精霊が現れた。ぱっと見た限り、オデットににたシルエットをしている。
 どうしてそんな姿をと妖精語で問いかけると、あなたを摸したからよと言われた。
『この場所にコボコボ以外が入ってくるなんて、ほんとにこんなことってあるのね。あなた名前はある? 私はないんだけど』
 思いのほかバッチリ会話に応じてきたもんだからオデットは目をぱちくりしてから会話を続けた。
「えっとね、コボルトたちの様子を探って欲しいの。数とか、装備とか、どのあたりに集まってるかとか」
『うう~ん。どうしよっかなあ。コボコボって友達みたいなもんだし。長い付き合いだから裏切りたくないな~』
 そういいながら、ちょっとだけならいいよという雰囲気を出してくる妖精にオデットはポケットに入っていた生ハムロールを差し出した。
「おねがい」
 おっけーと言って飛んでいく妖精。
「この遺跡、ただの石の塊じゃあなさそうね」
 その様子を観察していたヴァイスは、自分のやり方で遺跡の建材や空気に対する呼びかけをはじめた。
 どうやら遺跡内の建造物はみな同じ石からできており、ものすごく巨大な岩の中を途方もないほど精霊たちが長い年月かけてくりぬいてくりぬいて作ったものであるらしい。
 元々は数体のコボルトが遺跡建造時に偶然入り込んでしまったが、見かねた高位の精霊が田畑や水の流れを作って自給自足ができるようにしてあげたのが文明の始まりだという。
 彼らは精霊と対話するすべを覚え、学ぶことでこの遺跡の意味を知ったという。
 そして彼らは……。

 ジュルナットと誠司は偵察に出ていた。
 臭いや音でコボルトの接近を警戒し、見張りにたつジュルナット。
 一方の誠司はこっそりと高所へと忍び込んで観察。
 熱源のようなものはいくつも見えたが、特別熱をもった建物は数カ所。
「見た限り、煙とかは出てないんだな。普通工房とかがあれば煙をだすものじゃないのか?」
「火を使ってないのかもネ?」
「まじか、オール電化か。いや発電なんてしてなさそうだし……なんのエネルギーで生きてるんだここの連中。となるとたいまつでの目くらましはあんまり意味なさそうだな。火薬も使わなさそうだし」
「忍び込みたかったかナ?」
「いや、そこまで贅沢はいわないけど……とりあえず見張り台は制圧しておきたいかな。協力してもらえる?」
「ん」
 ジュルナットは糸目ぎみに細めていた目をギラリと開き、弓を構えた。


「ふっふっふ、あなたたちもゲーミング化させてやるわ」
 懐から取り出したゲーミング林檎。ゲーミングリンゴ? この謎の果実をオデットは垂直離陸と同時に謎の妖精投法で発射した。
 空中で1680万色に輝いて爆発するリンゴに思わず注目するコボルトたち。
「な、なんだぁ!? 精霊炉が吹き飛んだのかぁ!?」
 ねじりハチマキをしたコボルトが工具片手に建物から飛び出してきたが、直後にオデットが空中から光の魔法を乱射したことで事態をやっと把握した。
 広げた光の蝶羽から無数の光球を発声させると、建物から飛び出してきたコボルトたちめがけて一斉にホーミングさせた。
 うっかり無防備になってしまったコボルトたちは光の爆発に巻き込まれ錯乱。
 その好きをつく形でゼファーが家々の屋根をとびとび、銃を装備した警備コボルトの頭上から飛びかかった。
 フォールテイクダウンで瞬殺すると、背負っていた槍のロックを外して投擲。
 横回転をかけながら飛んだ槍におもわず身を伏せたコボルトたちへさらなる接近をかけ、ニーキックをたたき込むゼファー。
 突き出した手にむけ、槍がひとりでに戻ってきた。
 それをキャッチし、ニヤリと笑ってみせる。
「月並みな台詞ですが、言わせて貰いましょう。死にてぇヤツからかかってらっしゃい!」
 一方。別の場所に潜伏していたジュルナットは――そう、先述した通りに見張り台に弓を引いていた。
 発射した矢が見張り台に刺さった途端に爆発。
 爆発に巻き込まれた見張りコボルトが転落し、その隙にカノンがライフルを担いで走り出した。
「もう一つの見張り台は任せたヨ」
 こちらに気づいたコボルトが射撃をしかけてくるが、ジュルナットは建物の壁に隠れる形で攻撃をやりすごし、素早く反撃の矢を放った。
 矢は見張りコボルトをそれて壁に刺さる。コボルトは『こいつめ外しやがった』と笑って今度はしっかりと狙いをつける……が、それが罠であることには気づかなかった。
 射撃可能地点にスライディングで入ったカノンが遮蔽物から頭を出し、ライフルのスコープごしに見張りコボルトの後頭部へとターゲットを定める。
「いただき!」
 射撃音からすぐ、転落していく見張りコボルト。
 カノンは片腕でガッツポーズをとると、次なる射撃地点へと走り出した。
 そのまた一方で誠司はストライカーユニットのスラスターからの急噴射によって見張り台めがけて突っ込んだ。
 窓を通り抜けられるほど身体を小さくできなかったが、物質透過能力を行使して無理矢理侵入。ガッと靴底で反対側の窓淵を抑えることでブレーキとし、すぐに大砲を窓から突き出した。
「活路を開く。突っ込め!」
 オデットや誠司たちの情報によって色宝のありかは分かっている。
 フラーゴラは先陣を切って飛び出した。
「ワタシを狙い撃ち出来るなんて、思わないことだよ……!」
 誠司の砲撃に気を取られたコボルトに跳び蹴りを入れると、その流れで素場やく跳躍。こちらに気づいたばかりのコボルトの頭を掴んで地面になぎ倒した。
 その横を豪快に駆け抜けるヴァイス。
「ごめんなさいね?でも、お仕事なの」
 道に立ち塞がるコボルト兵たちがやっと銃による反撃を仕掛けてきたが、ヴァイスは構わず『薔薇に茨の棘遂げる』を発動。
 どこからともなく沸き起こった暴風が渦となり、コボルトたちを突き飛ばしながらまっすぐに貫いていく。
 コボルトたちはあちこちに叩きつけられ地面に転がる。
 ヴァイスは『今よ』とラダにハンドサインを出した。
 頷いて走るラダ。
 見張り台やあちこちの良好ポイントに陣取ったカノン達の援護射撃を受けながら走り抜ける。
 途中で星夜ボンバーに火をつけ明後日の方向に放り投げてやると、コボルト兵の一部がそちらを警戒して身を伏せた。
「隙を見せるから悪い」
 ラダはそんな兵士達――ではなく、そのずっと先で頭を上げたコボルトキングをあろうことか窓から狙い撃ちにした。
 スコープの中で弾ける赤いなにか。
 ラダはそれを確認するとジェットパックを起動。勢いをつけて壁を駆け上がると、塔の石窓から内部へと侵入した。
 まさかそこから飛び込んでくると思わなかったコボルトたちが振り返るが、その隙にフラッシュグレネードを放り投げ、『LBL音響弾』と同種の爆発を起こした中で色宝の王冠をゲット。再び窓から飛び出して離脱する。
「色宝を確保したら撤退だ。止まるな、走れ走れ!」
 兵の多くを引きつけていたゼファーとフラーゴラが撤退を開始。
 それを支援する形で二つの塔からカノンと誠司が砲撃を仕掛け、高所にのぼったジュルナットが『走れ』の合図を出しながら矢を放った。
 ラダは王冠を走りながら思い切り放り投げ、空中へとびあがったオデットがキャッチ。ヴァイス大量の花をさかせてコボルトたちを妨害したヴァイスに守られる形で遺跡の出口へと走った。
 それでも浴びせられる無数のホーミング光弾。オデットは走り飛び込み前転の動きで扉を抜け――た、瞬間。
 銃声の一切が止んだ。
 ふりかれば、コボルトたちの姿はなかった。
 たったの、一人も。


 ここで、オデットやヴァイスたちの調べた遺跡の歴史について再び語ろう。
 精霊と対話するすべを覚え、遺跡を守る意味を知ったコボルトたち。
 その意味とは、この遺跡に収められた色宝を盗掘者から守ることである。
 彼らは生活基盤をくれた高位精霊に感謝を返す形で色宝を守護することを誓った。
 しかしコボルトの寿命など太古の歴史と比べれば一瞬のもの。彼らの数は徐々に減り、最後の一人になったところで精霊たちに最後の願いを託したのだった。
 自分たちの骨と毛皮とそのすべてを代償として、遺跡の守護者として永遠の兵隊にしてほしいというものだった。
 高位精霊はその願いを叶えた。彼らは死に絶え、死体は『精霊の入れ物』として遺跡の中でいつまでも終わらない生活を続けることになったのだった。
 だがそれも……。
『色宝が奪われればおしまい。コボコボたちもいくべきところに行かせてあげないと』
 状況を理解して遺跡から出てきたヴァイスたちへ振り返ってから、精霊はオデットにウィンクした。
『その王冠はあなたにあげる。悪い人じゃなさそうだしね。けど、悪い人に取られないように注意してね。最後のお願い』
 そう言うと、精霊は風に崩れる砂山のように消えていった。

成否

成功

MVP

オデット・ソレーユ・クリスタリア(p3p000282)
鏡花の矛

状態異常

なし

あとがき

 ――色宝『土塊犬の王冠』を手に入れました
 ――色宝はラサにて保管されます

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