シナリオ詳細
衝動、興奮、惨劇
オープニング
●実りの季節の――。
季節は秋、実りの季節だ。この世界にも秋の味覚というものは存在する。そう、キノコだ。
色んな色、味、大きさ。様々なものを持つキノコは秋の定番の食材と言えた。そのキノコの中に毒が入っていなければ。
この世界にはマヨイキノコというものが存在した。
大きな白いかさに特徴的な黄緑の斑点。それは刺激すれば不思議な胞子を周りに放つのだ。
気分を高揚させ、理性を壊してしまう。痛覚を無くして本能だけで生きるものに変えてしまう。
だが取り方を間違えなければ美味しく食べれるキノコだ。進んで近づかなければ、決して怖いものではない――。
そんなキノコがとある村の近くに群生していた。かつての村人はここには近づかないように、言い伝えを続けていた。
しかしそんな言い伝えも、年月経てば忘れられてしまう。このキノコの危険性も。
とある村人がマヨイキノコの群生地を見つけ、これは美味しそうなキノコだと、刺激した結果。
ここにある全てのマヨイキノコ達は大量の胞子を吐き出し、村人を襲った。そして胞子は近くの村を襲う。
――、それは、目も覆うような惨状だった。
理性が壊れた人々は、お互いを襲い、血を流し、死んでいったのだ。
しかし、村にはただ一人、生き残りが居た。マヨイキノコの胞子にやられ理性を壊しながらも、自分を守り、他の村人を殺した少女。
彼女が生き残ったのはたまたまだろう。この胞子の毒も、時間が経てば消える。
理性を取り戻した少女が見るのは、全てが死んだ村。理性が壊れている間も、したことは全て彼女は覚えているのだ。
村人が殺し合いをはじめ、自分も村人を殺した。その事実は彼女を蝕むだろう。
●
「…まぁ、そういうフォローをしてもらいたいんだけどね」
彼女を励ます、それとも発破をかけるか、反対に村人の後を追わせるのか。
ラビ・ミャウは小さくあくびをして言う。
「美味しいものには毒があるというけど、毒にもほどがあるよね。マヨイキノコは水を大量にかけてから収穫して焼いて食べたら美味しいらしいよ」
試してみるといいかも、とラビは頷いた。
- 衝動、興奮、惨劇完了
- NM名笹山ぱんだ
- 種別ライブノベル
- 難易度-
- 冒険終了日時2020年09月28日 22時15分
- 参加人数4/4人
- 相談5日
- 参加費100RC
参加者 : 4 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(4人)
リプレイ
●凄惨、悲鳴、慟哭
どうして、どうして。わからない。
真っ赤な手のひらは間違いなく、この村の人々のもの。もちろん自分のものも少し混じってはいるが。
顔を上げれば倒れている人々、毎日挨拶をし、言葉を交わしていた大切で、大好きなみんな。
思考が真っ赤になった瞬間、ネーヴの理性は刈り取られた。ただ、自分を殺すものを殺さなければ。身を護るために。そう思った。
近くにあった農作業用の鎌を振り回し、それが壊れてしまえば桑を振り回した。
その結果が、『これ』だ。ネーヴの周りにあるこれは、全て自分がしたことなのだ、と。それだけは理解できた。
「あ、ああああああああ、っ」
なんてことを、なんてことをしてしまったの。
ネーヴには、そのことの重さを受け入れることは出来なかった。ぎゅうっと握ったのは近くにあった包丁。きっと近くで倒れてる近所のおばさんのもの。
いつも優しくしてくれた人のもの。それを、瞳を閉じ自らの首元へ突き立てようとし、―――
「危ないっ」
包丁の刃先が貫いたのは黒髪の男…『キトゥン・ブルー』望月 凛太郎(p3p009109)の手だ。突然現れた人物にネーヴは混乱をした。そしてその刃でまた人を傷つけた、という事実もその事に拍車をかける。払拭するように金色の髪を持つ聖職者風の女性――、ノア・ザ・ミドルフィンガー(p3p009034)は微笑みながら言う。
「私たちは旅人なんだ。ここへは偶然訪れたんだけど…。まずは深呼吸をしようか」
ネーヴは引きつりながらも深呼吸を始める。大きく息を吐いて、ゆっくり息を吸い、それを何度も繰り返していれば多少は落ち着いた。深呼吸をしている間に凛太朗は危ない刃物を全て彼女の周りから遠ざけた。
(痛い――、でも彼女を止められたのならそれでいい)
根性だけはある。手は端切れでくるくると巻いて止血してしまおう。凛太朗はほっと息を吐いた。
「…何があったか、聞いてもいいかい?」
ノアの言葉にネーヴは記憶がフラッシュバックしぎゅっと目を瞑る。それでも必死に言葉を紡いだ。
「…判らないの。急に村の皆が襲ってきて、…でもそれを見たら…私も皆を殺さなきゃって思っちゃって…」
怖かった、だから殺した。理性を無くしたネーヴは本能のまま自衛をしたのだ。
「…この近くにマヨイキノコっていうキノコが生えているのは知ってる?…その胞子は生物の気分を高揚させて理性を壊してしまうんだ。君の起こしたことは…それのせいだろう」
その事実を聞きネーヴは驚いた顔をした。そんなものが生えているのなんて知らなかったから。それでも自分が行ったことに変わりはしない。
「自分が悪いのならさ、君の罪は背負っていくしかない物だ。その罪は罰されるべき物じゃない。生きて贖って、それでようやく終わる罪だよ」
凛太朗にはどう声をかけようか、どんな言葉をかけてあげればいいか、解らなかった。彼女の辛さは想像を絶するものだろうから。
でも、どんなに悲しくても辛くても、お腹は減るものだ。それを凛太朗は知っていた。
だからまずはネーヴがため込んだものをいっぱい吐き出せるように、たくさん泣けるようにご飯を作ってあげたい。そう思った。
その前にすることは――、村人の墓を作ること。ノアに彼女の傍に居る役目を任せ、凛太朗は墓を作ってるであろう仲間達の元へと向かった。
時間を少し戻して――。
ミーアイト村の近くにある林で調理に使える香草を探すのは『0℃の博愛』ブラッド・バートレット(p3p008661)だ。目当てのものを見つければ籠に優しく詰めていく。
そして暫く探索していればマヨイコノコの元へたどり着いた。特徴的な白い姿に、緑の斑点。成程と頷く。胞子を吸い込まぬよう気を付けながらも念のため用意していたバケツの水をかけて少しだけ採取をする。
食べるにしろ、食べないにしろ警戒するべきものなので皆知るべき必要があるものだからだ。
「おや、あれは…。とても生き生き咲くシオンの群生地ですね」
ふと、ブラッドの視界の端に映ったのは薄紫の可愛らしい花だ。
「……こういうのはガラではありませんが、死の気が充満しているのはあまり良くないので少しだけいただいていきましょう」
シオンの花も少しだけ採取をしておく。食卓への彩りくらいにはなるだろう。…彼女の食事が寂しい食事にならないように。
(俺では何を言っても経験しない者の綺麗事にしか聞こえないでしょうね)
小さく息を吐く、ネーヴの元に訪れた運命とやらはこれからも胸に残り続けるだろう。罪を忘れるな、そう訴えかけるはずだ。例えそれが胞子により理性を無くしていたことの結果だとしても。
ミーアイト村で村人を弔い、手厚く葬り簡易的な墓を作っていたのは『遺言代行』赤羽・大地(p3p004151)だ。
周りに存在している霊魂へと声をかけその声を聞いていく。どれもこれも、全て理性を壊してしまうそのキノコの力のせいだった。
なぜ、どうして、わたしはしんだの、わたしはどうしてころしてしまったの。
それすらも彼らは理解を出来ていなかった。そして、謝罪の言葉を聞いた。
ただ一人、この村の生き残りとなってしまった少女に対してのものだ。村の人々は多少嫌なことがあったとしても家族のようなもの。
娘をひとり、残酷な事実と共に残してしまうことを悔いていたのだ。
…恨んでいたのなら、彼女には聞かせないでおこう、そう思っていた大地は小さく頷く。彼女は確かに、想われていたのだ。
途中から手伝いにきた凛太朗とノアとネーヴ、香草やマヨイキノコを持ち帰ってきたブラッド、共に墓を作り終える。
少女一人ではここまでの墓は出来なかった。その前に死んでいただろう。イレギュラーズ達にぺこりと頭を下げた。
●料理、馳走、美味
イレギュラーズは綺麗に掃除をした村人の家を借りる。せめて食事をする場所だけでも血を落とし、綺麗に見せる。
死を連想するものに包まれたまま食事などできないと思ったブラッドの計らいだ。
作るものは村の野菜とキノコを使ったスープ。温かいもののほうが少しは気持ちも落ち着くだろう。野菜を切り千切り、キノコを切り刻む。
このキノコが村を、ネーヴをおかしくしたマヨイキノコなのだと聞くとネーヴは厭々と首を横に振る。
もう無毒化をしているのだ、その方法をノアはネーヴに詳しく伝える。この方法がずっとこの世界へと残るよう、伝えていってほしい。
そう伝えるとネーヴはこくりと頷いた。
野菜とキノコをスープで煮込みながら大地はネーヴへと話しかける。
「今回の事は、村の人も、誰も悪くないと思ってる。誰も、これとの正しい付き合い方を知らなかった。知らないなら、どうしようもなかった筈だ」
確かに知っていればこんなことにならなかった。IFの話は人が死んだ後は何の意味も持たないが。こうなってしまったものは、もう戻らない。
「それでも、罪の意識が消えないなら……他の村が、ここと同じ悲劇を繰り返さないよう、この事を伝えてほしい貴方と同じ思いをする人が、これ以上増えてはいけない」
キノコの特徴も、それを無力化する方法もネーヴは教えてもらった。迷いながらも小さく頷く。
大地はふと、思い出す。ネーヴのことを気にしてた霊魂の声の存在を。
「あァ、そうそウ。アンタに生きてほしイ、と願ってるのは俺達だけじゃなイ。これだけハ、覚えていて欲しイ」
「……?」
首を傾げながらももう一度、ネーヴは頷く。理解は出来ていないだろう。だが知っていることと、そうではないことは大きく違う。
凛太朗が初めて見た人の死体は酷いものだった。戦闘を知らない人々は効率的な人の殺し方を知らない。
その為酷く潰れていたり、原型を留めていないものもあった。とても怖くて、とても辛くて、とても悲しい。泣いてしまうことは情けないことかもしれない。
それでも……凛太朗は彼女、ネーヴには救われてほしいな、と思っている。
温かいスープを飲みながら、今まで気を張っていた気持ちが解され涙を流している姿を見ながら、改めてそう思った。
優しく背中を撫でるとネーヴは支離滅裂ながらも気持ちを連ねる。
痛い、悲しい、辛い、苦しい、殺したくなかった、と。
その気持ちを涙と一緒に、少しでも流してしまおう。食事が終わるまで、彼女の涙が止まるまで、凛太朗はその背を撫で続けた。
生きる為に食べる。無理強いは出来ないが食事をしてほしい。そうネーヴに伝えたのはブラッドだ。
村人が忘れて起きた悲劇なら生き残った者が伝えなければいけない。
「きっと死にたいとも思ったでしょう、今すぐ楽になりたいでしょう」
それにはネーヴは答えない。事実だから。
「けれど記憶ごと消し去ってはいけません、何を言っても綺麗事にしか聞こえないかもしれませんがそう感じただけです…」
「……ううん。…言ってることは、解る」
これからネーヴがすべきこと。前に進み続けること。罪を背負って、忘れずにいること。
「俺にはよく分かりませんが、死んだ後も想われるなら幸せな人生でしょう」
人は、忘れられたときにもう一度死ぬのだ、と誰かが言っていた。それならば忘れられない死は、生き続けることに繋がる。
ネーヴは忘れない。優しかったこの村の人達、家族たちの存在を。
イレギュラーズもいつまでもここにはいられない。ネーヴとの別れを告げる。
「元気で生きてなよ」
ノアの言葉に、くしゃりと泣きそうになりながらもネーヴは頷いた。
「…私、近くの村へ行くわ。この村の話をする。マヨイキノコのことを忘れないように、色々調べようと思うの」
調査をし、二度とこんなことにならないように、本にまとめるのだ。そう言って少女は、イレギュラーズ達を安心させるよう微笑んだのだった。
成否
成功
状態異常
なし
NMコメント
●こんにちは、笹山ぱんだです。秋ですね!キノコの季節です。
今回の目的は
●村の生き残りの少女への対応
●マヨイキノコを美味しく食べる
です。
●世界
人と獣人が暮らす異世界「ステライト」
少女は暮らすのは人族の村『ミーアイト』
所謂西洋ファンタジーの世界です。
●ミーアイト村
野菜を育てる農家が多いのんびりとした村。
今は至る所に血が流れ、死体が転がっている無法地帯と化している。
近くにも同じような村がいくつかあるようです。
●ネーヴ・エリオット
ミーアイト村の生き残り。15歳の少女。彼女の周りにも彼女が殺した死体がたくさん。
彼女が理性を取り戻した直後に、イレギュラーズ達は遭遇することになります。
大好きな村人を殺したことに、心が壊れるくらいにはショックを受けることになる。
彼女をどうするかは、イレギュラーズ達にお任せします。
●マヨイキノコ
村の近くの林に群生している。
大きな白いかさに特徴的な黄緑の斑点を持つキノコ。
その胞子は生物を気分を高揚させ、理性を壊して痛覚を無くし本能だけで生きるものに変えてしまうという劇物。
胞子を無毒化させるには収穫前に大量の水をぶっかけること。
焼いても美味しいですが、煮物に使っても味がしみこみ美味しいのだとか。
調理器具は村人の家に置いてあるでしょう。(生臭いかもしれませんが)
それでは、よろしくお願いします。
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