シナリオ詳細
お加減いかが、妖精さん。
完了
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オープニング
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木漏れ日が気持ちいい、新緑の過ぎようとしている夏。
野原には秋の花が咲こうとしている。涼やかな風。もうすぐ淡く色づいたとりどりの穂花がふわふわと手招きする季節だ。
まだ青い、ほぼ葉の上をよろよろとよろめくように青っぽい妖精が飛び、その脇をありえない無軌道で薄ピンクの妖精が飛んでいる。いつでも手を差し伸べられる距離に世話をしているメンテさんという幻想種。そして、様子を見に来たローレットの情報屋・『そこにいる』アラギタ メクレオ(p3n000084)が歩いている。
「何のお話をしていたのでしたっけ? ああ。ネームプレートとドントフォーゲットミーのお話でした。しばらくは新緑にいるのですよぅ」
「私がこんなだから、この子の面倒を見るメンテが必要なのよ。ものすごく感謝してる。せめて、お礼に鼻を利かせて魔よけの草摘みを手伝わせるわ」
「ドントフォーゲットミーは、おとなしくリハビリをするといいのですよぅ」
「なんでこういうことは、するするしゃべるのよ!」
「ドントフォーゲットミーのことは忘れないからですよぅ」
「自分のことも忘れるなっ!」
「ネームプレートとドントフォーゲットミーではドントフォーゲットミーを覚えてた方がいいでしょう?」
「ああいえばこういう~」
「――えっと、何の話をしていたんでしたっけ」
メクレオは声もなく笑った。
あかん。全然聴取にならん。なんか技能がないと。
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フェアリーシードから辛くも救出された妖精・ドントフォーゲットミーは現在諸般の事情により新緑に滞在している。
死のギリギリまで抽出された生命力を少しづつ回復しているのに合わせ、長らく石に封じられていたためすっかり低下した身体機能の機能訓練をしている。
それと、脳の回路が独特な相方の面倒を見るのを両立させるのは無理と判断されたのだ。賢明である。
「――という訳で。やっぱり特殊な状態だったから、未来のためにデータ取りたいんだよ。ドントフォーゲットミーの様子見てきてくれない? 専門職がくっついてるからドントフォーゲットミーの体調の心配とかはしなくていいよ。要はお見舞いしてきてくれないってことさ」
穏やかな新緑では外部刺激が少ないということだ。戦闘の残り香がするローレットイレギュラーズがもたらす少しのストレスと大いなる気晴らし。
「飛行訓練に付き合ってあげなよ。森のなか、妖精には危険なものもいるからね。後、ネームプレートとか」
見てないと、どっかに飛んでくから。
「えーと、その。なんだ。まあ、妖精との面識があるみんななら、大体わかるだろうけど。妖精と建設的な会話をするのめっちゃ難しい。ネームプレートは協力するのはどうにか覚えてくれたみたいだけど、そもそも何話してたかすぐ忘れて脱線するし、ドントフォーゲットミーだって、最大限協力する気でいてくれてるけど、気になるところは全部追求し切らないと次の会話を始めない!」
べしべしと机をたたいている。あまりに収穫がなくて焼き菓子が胸に詰まって、いつもの半分しか食べられない。
「もうね。聞けるとは思ってないから適当に連中にしゃべらせて気になるところを抽出しよう?」
話がヘムルダリオンを経由してアルヴィオンに吹っ飛んでいくところをどうにかして、ヒアリングしてきてくれ。もう、それだけでいい。マジで頼むぞ。ローレット・イレギュラーズ!
- お加減いかが、妖精さん。完了
- GM名田奈アガサ
- 種別ラリー
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2020年10月17日 20時54分
- 章数3章
- 総採用数13人
- 参加費50RC
第3章
第3章 第1節
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砂利道を前に歩みを止めた一同を見つめる剣呑な視線。
まだ視線の主の間合いには入っていないが、妖精二人に緊張感は全然ない。
勘がいいものがいれば対策できるだろう。
このわずかな時間で被害は大分抑えられるはずだ。
視線の主が動いた。
惨劇か、返り討ちか。
がさがさと、茂みを揺らす音が聞こえた。
第3章 第2節
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確かに気配がする。
「なにかいる!? 二人とも下がって!」
(人手があれば問題ないが戦えるのが俺だけだとハード依頼レベルだな……二人を庇っていると確実に攻勢に出れずに負ける……とにかく俺にヘイト集めて戦わないと!)
マギーが地面に据えた加護に二人が飛び込み、マギーが撤退するまでの間、サイズが体を張らなくてはいけない。
空気中の水分が靄から個体と変わって、サイズを包む球体となる。
『用途不明のユニットが接続されました、直ちに使用を中止してください』
規格違いによる誤作動を警告してくる音声をもはや聞き飽きた。今のところ問題なく使えているので、多分この先も大丈夫だ。と、サイズは考えている。というか、今使わないという選択肢はない。
めくらめっぽうのあてずっぽうで、音のした方向に魔法を打ち込む。
グギャアッという悲鳴が聞こえた。
のそりと現れたのは、体長一メートルほどの猫型の獣。
口から、がふりがふりと火の粉が飛び散っている。
(敵と鎌が斬れるほどに接敵したら剣魔双撃で攻撃する!)
虚ろな目をした妖精体を全力で操作しながら、妖精鎌は決意する。
(例え俺一人で戦う羽目になっても…あらゆるリソースを使ってでも二人を守る!)
成否
成功
第3章 第3節
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『小さな決意』マギー・クレスト(p3p008373)は、先ほどさんざんシミュレーションした通り、籠の開口部を二人に向けて、地面に降ろした。
「お二人とも、こちらへ…!」
妖精二人は、地面すれすれを飛んできた。浮き上がりすぎると、サイズより目立ってしまう。自然と重しになる鎖が幸いした。
「入りました? 蓋して大丈夫ですか?」
「大丈夫よっ」
ゼヒゼヒと切れている呼吸がちゃんと二つした。
「お二人とも、籠から落ちないようにしっかりと捕まっていてくださいね!」
マギーは、二人で迎撃するより退けるところまで退いた方が良さそうだと判断した。
青息吐息の妖精をかばいながら、すばしこくて小さい獣を相手取るのは骨が折れるし隙をつかれたら元も子もない。
籠を胸に抱くと、落とさないようにしっかり抱いて走り出した。
敵の気配のない方に集中し、聞こえすぎる耳を最大限に生かす。
「お待たせしました、サイズさん……! 撤退をお願いします」
マギーの声が聞こえたが、サイズは獣と対峙したまま、まんじりともしない。
獣の狙いは、サイズにうつっている。逃げた獲物より目の前から動かない獲物だ。
か弱げな獲物目掛けて炎の域をぶちまけようと獣が息を吸った刹那。
猫型の魔獣――ガンパウダーキャットの鼻面で高密度魔力がはじける。
魔力の軌跡を追って、『カースド妖精鎌』サイズ(p3p000319)が首を巡らせると、人にしては小柄な、角をはやした少女が腰に手を立てて仁王立ちしていた。
「……ふむ」
『異世界転移魔王』ルーチェ=B=アッロガーンス(p3p008156)は、着々と元の世界に戻るべく力を蓄えるため、各地を転戦しているのだ。
ゆえにたまたま行き会ったこの状況も、その、なんだ。魔王の気まぐれを起こすにやぶさかではない。
「……しばらく単独行動をしていたわけだが、偶然にも襲われているところを見たからには無視するわけにはいかんな。加勢しよう」
別によちよち歩いている妖精さんの行進を眺めていた訳ではない。ないんだったら。
ルーチェの健やかなほおに赤みがさす。血潮が戦いの気配に呼応して力を呼び覚ましているのだ。
ルーチェは、細い指が触れぬか触れないかの位置に召喚された暗黒魔眼をおもむろに名狩り占めるとそのままガンパウダーキャットにたたきつけた。パワーイズパワー。
(まあ、マークの必要が無くなったから戦闘難易度ノーマルくらいになるのかな……?)
つい先ほどまで、状況の厳しさに眉根を寄せていたサイズも少し楽に息ができるようになったのを感じていた。息をしているのは妖精体だが。
(まあ、一体くらいなら俺だけでも倒せるな……! 素早く全力だ!)
一気にガンパウダーキャットとの間合いを詰め、続けざまに斬撃を加える。
喉笛を掻っ切ると、喉笛から炎が逆流した。
これで一安心。
走り去ったマギーに運搬されている妖精たちと合流しようと踵を返したその時、サイズの遥か頭上の木の上から飛び掛かってくる黒い影。
伏兵か!
身構えたが、衝撃がいつまでたっても襲ってこない。
「先輩方、微力ながら私も手伝わせて頂きます……!」
サイズの大きさから行くと、ほぼ9倍から十倍。
巨大な建物並みの『天色に想い馳せ』隠岐奈 朝顔(p3p008750)がサイズをかばっていた。小柄なルーチェと比べても圧倒的に大きい。
「妖精さんって見た事ないから会うの楽しみだなぁ!…って」
遥か海の向こうから来た種族だ。確かに妖精とは縁がなさそうだ。
「そう言ってられる状況じゃないのはわかりました」
助けます! と、遥か頭上から声が降ってきた。戦士としての高揚に朝顔は意気軒昂だ。妖精さんが鎌を持って戦っている。
「いきます!」
妖精さんが大きな猫にもぐもぐされる最悪の結果を振り払うべく、全力の一撃だ。
ガードを突き破って徹る一撃は、朝顔へのリコイルを代償に命までは奪わない。
炎の代わりに泡を吹いたガンパウダーキャットがぼてりと地面に落ちた。
パワーイズパワー。
これで、どうやら窮地は乗り越えたようだ。思わぬ救援に気を張っていたサイズの妖精体から、意図しない弛緩による長い呼気がはかれた。
成否
成功
第3章 第4節
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『カースド妖精鎌』サイズ(p3p000319)は、先に避難した二人の妖精を追って全力で飛んでいる。逃げた方向は見えていたから、すぐに合流できるだろう。
魔物の始末は任せて。という言葉に素直に甘えた。せっかくのリハビリを邪魔した魔物にとどめを刺したかったが、仕留めたやつに生殺与奪を委ねるべきだとサイズは思ったし、それより二人の安否が気になる。
(……まさか他のイレギュラーズが二人も来るとはね)
まさかの現場に救けに来られるところが特異点。ローレット・イレギュラーズの真骨頂だ。
(まあ、助かったというやつだな……)
やけにキラキラした目でサイズの妖精体を見ていたが、異国から来たと言うから、ウォーカーが珍しかったのだろう。
「お~い」
声を上げながら飛ぶと、メンテがいち早く見つけて手を振ってくれた。籠を持ったマギーも振り返って手を振る。
「サイズ!」
加護のふたを押し開けて、中から二人がもぞもぞと出てきた。
「怪我はないー!?」
サイズが叫ぶ。
ぶんぶんと手を振る薄青とピンクの妖精。元気そう。どこも怪我がないようだ。
「そっちこそー!」
まったく無傷とは言えないが、まあケガというほどのことはない。
「大丈夫ー!」
手を振り返しながら、サイズは飛ぶ。
今日も、妖精を守れた。サイズは、そのために今日も自分を振り回させるのだ。
成否
成功
GMコメント
田奈です。
アフターアクションありがとうございました。
フェアリーシードから解放されて、お体ガッタガタの妖精「ドントフォーゲットミー」のお見舞いに行ってくれませんか?
リハビリしてる森もフラフラ飛んでる妖精にとっては危険な動物がいっぱい。
メクレオからリスニングも頼まれてますが、もう顔見るだけでもいいんじゃないかな!
*このシナリオはラリーシナリオです。
一つの章で4人~10人程度まで採用予定です。
二章以降の参加の場合、初めからいたという扱いになります。
描写の際、何人かまとめてする場合があります。
決まったグループで行動する場合は、【(統一グループ名)】を文頭にお願いします。
一人でアクションの場合は、【孤高】を文頭にお願いします。
一節
野原でリハビリ――まずは、ご機嫌をうかがおう――
*ドントフォーゲットミーとネームプレートが幻想種のメンテさんとリハビリしてます。ついつい遊んでしまって、あんまりはかどってはいないようです。
リハビリのお手伝いしましょう。
*ドントフォーゲットミーは現在色々枯渇している状態なので、通常の治癒スキルではかえって回復の妨げになる状態です。ギフトなどが受け入れられるかは、お世話をしているメンテさんの判断によります。
二節
野原でのんびりしましょう。警戒しながらのんびりしましょう。
三節
新緑の森も安全ではありません。なんか出ます。何が出るかは一節と二節での行動によります。注意していれば強力なものは去っているでしょう。
*妖精「ネームプレート」
身長30センチ。白からピンクに変わる髪とそれに合わせた装束。
男の子だ。
ミョウガの妖精。
首から名札を下げているが、字が擦り切れていて読めないし、本人も覚えていない。だから「ネームプレート」
丁寧にしゃべり、はきはきしているが、3秒後にさっきまで話していた内容を忘れる。
幸い根気よく話し続ければ、しばらくは覚えているし思い出せる。
多動気味。目を離すとどこかに行く。束縛されるのが嫌い。
覚えてないので反省できない。
ドントフォーゲットミーは大好きですよ?
*妖精「ドントフォーゲットミー」
身長30センチ。白い手、青い髪、黄色い瞳。抜けるような青い妖精。
丁寧にしゃべるが、これはツッコミだ。ネームプレートのことはあの子呼ばわり。
思いついたことは全部話さない時がすまない。大体、その間にネームプレートが本題を忘れる。
ネームプレートはほっといたら死ぬ。実際はそんなことはない。結構図太い。
メンテには深く感謝している。絶対この恩は返す。
*幻想種「メンテ」
ネームプレートとドントフォーゲットミーを自分の家に住まわせて、面倒見ている幻想種の女性。一切ストレスは感じていないようだ。メンタルがミスリル。
●情報精度
このシナリオの情報精度はAです。
想定外の事態は絶対に起こりません。
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