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シナリオ詳細

<傾月の京>真実の、主の仇

完了

参加者 : 10 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●苛まれる老鬼人種
「……こんな夜に、一体誰が?」
 自宅の戸を叩く音に、獄人は訝しんだ。仕えた主を失い、一人静かに暮らす老いた獄人の元に、誰が何の用があるというのだろうか。
「亡くなった貴殿の主の、敵について――」
 外にいる来訪者の言葉を聞いて、獄人は思わず戸を開けた。獄人の主を殺したのは、肉腫と化した屋敷の蔦だ。そして獄人は蓄えを全て費やし、ローレットの助力を得て蔦から主人の遺骸を奪還し、敵を取ったのだ。
 だが、屋敷の蔦が自然に変貌するとは考えられず、また呪詛の流行からも、何者かが蔦を変貌させたのだろうとは獄人は薄々気付いていた。しかしその先を探る術はないため、獄人は直接の敵を討ったとして自身を納得させていたのだ。
 来訪者の言葉は、その獄人の精神に揺さぶりをかけるに十分なものだったのだ。
「……どうして貴殿は、本当の主の敵を討たないのです? わかっているのでしょう? 蔦が変容した裏に、本当の敵がいると。
 あの蔦は道具に過ぎませんよ。道具だけ滅ぼしても、敵を討ったとは言えないでしょう? それで、貴方を大事にしていた主が喜んでくれると思いますか?
 何、誰が本当の敵かわからない? ならば、疑わしきは全て殺せばよいのです! そうすれば、その中に本当の敵がいることでしょう!」
 獄人が戸を開けるや否や、黒装束の男は獄人の背後に片腕を回すと、もう一方の掌を開いて獄人の胸に押し当てる。そして、獄人の精神を侵食するように妖しく耳元で囁きかけた。
「あ……ア……疑ワシキハ、全テ……」
 獄人の目からは正気の光が消え、狂気が宿る。そして老いた肉体は瘴気に覆われていった。肉腫に感染したのだ。

「……さて、爺一人では大した混乱も起こせまい。此奴らを付けてやるから、精々高天京を混乱させるがよいわ」
 そうつぶやく黒装束の男の背後から、二頭の瘴気に覆われた猪と六頭の同じく瘴気に覆われた狼が現れる。猪と狼は、肉腫と化した獄人へと寄り添った。

●望まぬ再会
 高天御所で強大な呪詛が為される。『けがれの巫女』つづりのその感知に伴い、ローレットでは様々な依頼が出されていた。
 それらの依頼の一つを受けていた楊枝 茄子子(p3p008356)は、早めに豊穣に入り、時間までの間にかつての依頼人に会いに行くことにした。何しろその依頼人である老鬼人種は尽くしていた主人を失ったばかりで悲嘆に暮れており、茄子子はその後が気になっていたのだ。
 だが、茄子子は望まぬ形で老鬼人種と再会することになる。
「疑ワシキハ、殺ス……全テ……。主殿ノ、敵……」
「鬼……じい、ちゃん?」
 茄子子の眼前に現れたのは、肉腫に感染した老鬼人種と同じく肉腫に感染した獣。変わり果てた老鬼人種の姿に、茄子子は呆然とする。
「主殿……殺シタ、八百……万。許……サナイ……」
「……待ってよ、鬼じいちゃん! あの蔦はちゃんとやっつけて、主人の敵は取ったじゃないか!?」
 さらなる老鬼人種の言葉を否定するように、茄子子は叫ぶ。だが、茄子子が老鬼人種に話しかけられるのもそこまでだった。猪と狼が次々と襲いかかってきたからだ。
「鬼じいちゃん……そんな……」
 襲いかかる猪と狼の攻撃を辛うじて躱しながら、茄子子は肩を落とし、そして憤る。自分の説教を涙ながらに聞いていた老鬼人種を、肉腫に感染させてこう変えた者がいるのだ。
 その者の目論見を打ち砕くためにも、茄子子は老鬼人種達に負けるわけにはいかなかった――。

GMコメント

 こんにちは、緑城雄山です。
 今回は楊枝 茄子子(p3p008356)さんのアフターアクションから、全体依頼<傾月の京>の1本を用意しました。肉腫化した老鬼人種や獣を全滅させて、高天京が混乱させられるのを防いで下さい。

●成功条件
 敵の全滅

●情報精度
 このシナリオの情報精度はCです。
 情報精度は低めで、不測の事態が起きる可能性があります。

●ロケーション
 高天京郊外。平地で、家はまばらです。
 夜の早い時間帯であり、満月が明るく照っているために暗視がなくても戦闘にペナルティーは発生しません。
 茄子子さん以外の皆さんは茄子子さんと同道していてもいいですし、後から追いかけてきた形でも構いません。戦闘開始時には全員揃っています。理由はお任せします(簡単でわかりやすいのは、この後の依頼で一緒だからついでについてきたとかでしょうか)。
 なお、茄子子さんと老鬼人種の距離は5メートルほどであり、猪と狼は茄子子さんから5メートルの距離で茄子子さんを半包囲しています。
 他のイレギュラーズ達の初期配置は、茄子子さんより前に出なければ自由です。

●老鬼人種 ✕1
 拙作『主奪われし老鬼の願いたるは』の依頼人です。
 肉腫化した蔦に主人を殺され、イレギュラーズ達に依頼してその遺体を奪還し敵を討ちました。
 その後、OPに記述した経緯を経て肉腫に感染させられています。
 戦闘不能にすれば肉腫から元に戻れますが、【不殺】以外の攻撃で戦闘不能にした場合死亡します。
 能力は高くありません。瘴気を飛ばして攻撃してきます。

●猪 ✕2
 肉腫化した猪です。体格は大きく、体高は人間と同じくらいあります。
 生命力と攻撃力と防御技術に優れます。
 攻撃手段は牙と突進。特に突進は威力が高く危険です。

●狼 ✕6
 肉腫化した狼です。体格は普通の狼よりも一団と大きくなっています。
 命中と回避、機動力に優れます。
 攻撃手段は爪と牙です。

●黒装束の男
 老鬼人種を肉腫に感染させた男です。老鬼人種を使って、呪詛が行われる満月の夜の高天京を混乱させるのが目論見のようです。
 黒装束の男については、調査を行っても情報は一切出てきません。また、アフターアクションで調査を行おうとしても採用する予定はありません。

●Danger! 捕虜判定について
 このシナリオでは、結果によって敵味方が捕虜になることがあります。
 PCが捕虜になる場合は『巫女姫一派に拉致』される形で【不明】状態となり、味方NPCが捕虜になる場合は同様の状態となります。
 敵側を捕虜にとった場合は『中務省預かり』として処理されます。

 それでは、皆様のご参加をお待ちしております。

  • <傾月の京>真実の、主の仇完了
  • GM名緑城雄山
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2020年10月05日 22時50分
  • 参加人数10/10人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 10 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧 (10人)

セララ(p3p000273)
魔法騎士
ルウ・ジャガーノート(p3p000937)
暴風
楊枝 茄子子(p3p008356)
口達者な会長
カイン・レジスト(p3p008357)
数多異世界の冒険者
天目 錬(p3p008364)
魔剣鍛冶師
ボディ・ダクレ(p3p008384)
痛みを背負って
シューヴェルト・シェヴァリエ(p3p008387)
貴族騎士
イスナーン(p3p008498)
玄緯・玄丁(p3p008717)
蔵人
日向寺 三毒(p3p008777)
瞑目の墓守

リプレイ

●戦端は、開かれて
「鬼じいちゃん……!ㅤキミが誰かに誑かされたんだとしたら、会長は友達としてそれを止めるよ!ㅤ待っててね!」
 肉腫となった老鬼人種の姿に、『羽衣教会会長』楊枝 茄子子(p3p008356)は拳を握りしめながら告げる。
(……肉腫になってしまった獄人の方と、茄子子会長様はお知り合いなのですか。
 ならば、私もより一層の全力を振るいましょう。私は羽衣教会に属する者ですので。
 見知った方が悲しむ事は駄目であると判断します)
 その様子に、『痛みを知っている』ボディ・ダクレ(p3p008384)は茄子子と老鬼人種が知己であることを察しつつ――同時に、一撃、そして一撃と狼の一匹に俊足の蹴りを叩き込んでいた。
「ギャウッ!?」
 縮地を思わせるほどの速度がそのまま変換された破壊力は、何が起きたのか理解させないままに、連撃を受けた狼を瞬殺する。
「何やらきな臭いようですね。助太刀いたしましょう。さあ、このイスナーンが相手です」
 通りがかりに不穏な気配を感じたイスナーン(p3p008498)は、この場に現れると高らかに名乗りを上げ、肉腫達の注意を引き付けにかかる。茄子子を狙う様に取り囲んでいた肉腫達は、その狂気に濁った目をイスナーンの方へと向けた。
(鬼翁、一体何が起きたのか……)
 茄子子と共にかつて老鬼人種の依頼を受けた『魔剣鍛冶師』天目 錬(p3p008364)は、信じられないものを見たという表情で一瞬、硬直する。だが、すぐさま錬は気を取り直して動く。
 何が起きたなど見れば分かることであり、原因を探るのも後回しでいい。今はとにかく対処することだ。
「全く、京の何処も彼処も騒がしい月夜だ! 忠臣の決意を無駄にさせないで欲しいものだ」
 かつての依頼人を肉腫に変えられた憤りのままに叫びつつ、錬は茄子子の前に立つと、式符を取り出して陽光を放つ鏡へと変える。
「禍々しい月に乗じて襲って来るんだ。陽の光には弱いかね?」
 茄子子を中心として放たれた陽光は、肉腫を照らし、その身体を灼いていく。ジリジリと、肉腫を包む瘴気が陽光の中へと溶け去って行った。
「全く、これは嫌な小細工の匂いがぷんぷんするよ……!
 自らの手を汚さず他者を使って他者を陥れる。気に入らないやり方だね。
 同じギルドの誼として。いや、そうじゃなくても――その目論見、両方阻止させて貰おうかっ!」
 老鬼人種を肉腫に変えた者の所業に憤りを露わにしつつ、『数多異世界の冒険者』カイン・レジスト(p3p008357)は老鬼人種を中心として肉腫を神聖なる光で照らす。錬の陽光に続いて邪悪を裁く聖光に灼かれた肉腫は、身をよじらせて悶え苦しんだ。
「同じギルドの仲間と共に行動していたはいいが、まさかこんな厄介ごとに巻き込まれるとはな……。
 とはいえ、これを放置していては高天京にも被害が出るだろう。早めに片づけたいところだ」
 『貴族騎士』シューヴェルト・シェヴァリエ(p3p008387)は苦笑い交じりに老鬼人種へと駆け寄ると、刀の『桜花』を抜いて逆に握り、その峰を老鬼人種の肩に強かに打ち付けた。老鬼人種は顔を歪め、痛む肩を手で押さえて庇う。

「ウォーン!」
 狼の一匹の遠吠えが響く。それに合わせて、五匹の狼が一斉にイスナーンへと群がった。イスナーンは狼に爪や牙に傷つけられて、たちまちのうちに血を流し、生命力を削り取られていった。
 通りがかりでありながら、他の者のために敵を自らに引き付け盾たらんとした心意気自体は、大いに賞するべきものである。だが惜しむべきは、群がってくる敵の攻撃に耐える力をイスナーンが持ち合わせていないことであった。
 敵に攻撃に耐える力とは、大きく分けて敵の攻撃を回避する技量、敵の攻撃を受け止め自身を守る防御の技量、いくら敵に傷つけられても倒れることのない生命力である。このいずれかでもあればまた違った結果になったのだろうが、今のイスナーンにはいずれも不足していた。

「おじいちゃん! こんなことをしちゃダメだよ! 優しい主さんだったんでしょ!?
 天国の主さんだっておじいちゃんの幸せを祈ってるはずだよ!」
 茄子子から老鬼人種について聞かされていた『魔法騎士』セララ(p3p000273)は、老鬼人種の自我を取り戻させるべく呼びかける。
 同時に、イスナーンが危ないと見て猪達の側方に回り込むと、猪二体と老鬼人種を射線に捉えて、直線状に奔る剣閃を放つ。剣閃は猪と老鬼人種を斬り裂き、その敵意をセララへと向けさせた。
「どこにでも、人を誑かしてバケモンを生み出すヤツはいるもんだな!」
 吐き捨てる様に『暴風』ルウ・ジャガーノート(p3p000937)は叫ぶと、猪の一体へと猛然と突き進む。
(戦闘不能にすれば元に戻れるらしいが、それでも老いた体にはキツいもんがあると思うぜ。
 嫌な予感もしてきやがるし、何にせよさっさと元に戻してやらねえとな!)
 とは言え、自身が老鬼人種を攻撃しては、間違って殴り殺してしまいかねない。ならばと老鬼人種への対応は他の者に任せて、ルウは露払いに徹することにした。
 突進の勢いのまま、『巨獣の大剣』を大上段に振りかぶり、渾身の力を込めて振り下ろすルウ。その刀身は厚い皮膚や固い剛毛など存在しないかの様に、易々と猪の身体を叩き斬る。
「よくわからないけど、みんな肉腫に蝕まれたお爺さんを助ける気みたいだね?」
 偶然この場に居合わせ、状況をよくわかっていない様子でありながら、玄緯・玄丁(p3p008717)は、他のイレギュラーズ達が老鬼人種を救うつもりでいることは察した。
(肉腫に呑まれた獣に老人……どちらも、厄介なことには変わりないよね。
 獣は殺すのに……感情の差、かな? とりあえず、間違って殺さないようにはしないと)
 狼や猪を殺め、老鬼人種を救おうとすることを玄丁が疑問に感じたのは、長い間蔵の中に幽閉され人情の機微を知る機会が少なかった故だろうか。ともあれ、他のイレギュラーズ達が老鬼人種を救うのであれば、自身もそれに倣うまでである。
 セララと反対側の、猪や老鬼人種の側面に出た玄丁は、セララを巻き込まない様にしながら猪と老鬼人種を射線に捉え、全身の力を魔力へと変換し、奔流として放つ。放たれた魔力は、猪と老鬼人種に強かに命中していった。

 次いで動いたのは、猪と老鬼人種だった。猪はセララに向けて突進し、老鬼人種はセララに向けて瘴気を弾丸として放つ。セララは一体の猪の突進と老鬼人種の瘴気は躱して、二体目の猪の突進は聖盾『ラ・ピュセル』で受け止めた。ズン、と言う重い衝撃が、セララの身体に響く。

「助太刀してくれてありがとう。会長がすぐに、傷を治すからね!」
 後方に下がった茄子子はイスナーンを調和の力で包み、その傷を癒やしていく。イスナーンに刻まれた傷の半ば以上が、すっかりと消え去った。
「短期決戦で行くよ! 会長がサポートするから、どんどん攻めていって!」
 さらに茄子子は、戦況を確認すると、鋭く指示を飛ばしていく。それにイレギュラーズ達は勇気づけられ、奮い立っていく。
「コイツァ驚いた……本物を拝むのは初めてだが、成る程、弱り目に祟り目ってか。
 此処で死なせちゃ寝覚めも悪い……爺様は任せたぜ」 
 茄子子が主人の仇を討った老鬼人種に会いに行くと聞いて、自身が大切な人の仇を討つために村人を手にかけたことを思いだし耳の痛くなった『瞑目の墓守』日向寺 三毒(p3p008777)は、その心情は隠しつつ護衛として茄子子に同行していた。そして、初めて目にした肉腫に驚愕しつつも、イスナーンに集った狼を排除しに動く。
 三毒は狼の一体に体当たりを仕掛け、イスナーンの側から弾き飛ばした。

●肉腫より解放されし老鬼人種
「もう一体と行きましょう」
「やられっぱなしではいませんよ」
 速度を破壊力に乗せた一撃を、ボディとイスナーンが繰り出していく。一番弱っている狼を狙って叩き込まれたボディの脚は、瞬く間に狼の命を刈り取った。イスナーンの鉄爪『凶の爪』にザックリと皮と身を裂かれた狼は、倒れるまではいかないものの虫の息まで追い詰められる。
「悪いけど、暫く眠っていてもらうよ!」
「僕も行く! ノーギルティ!」
 既に軽くはない傷を負っている老鬼人種に、これ以上の長い戦闘は危険だと判断したカインとシューヴェルトは、老鬼人種を行動不能に追い込みにかかる。カインの聖光が老鬼人種を包み、老鬼人種に宿る瘴気をさらに溶かし、消滅させていく。その光の中で、シューヴェルトは『桜花』の峰を再度老鬼人種の肩に打ち込んで、昏倒に追い込む。変わり果てていた老鬼人種の姿は、茄子子や錬の知る本来の姿に戻っていった。

「回復もしてもらったのです。何とか、耐えてみせますよ」
 四匹の狼は再度イスナーンを襲う。再び狼の爪牙に傷付くイスナーンだったが、茄子子による回復が入ったことや先程よりも狼の数が減ったことから、辛うじて倒れずに耐えきった。

「鬼じいちゃん、もうちょっとだけ待ってて! 絶対に、死なせないから!
 セララくんは、そのまま猪の相手をお願いするよ!」
 茄子子は倒れた老鬼人種にすぐにでも駆け寄りたい気持ちを抑え込んで、イスナーンを調和の力で癒やす。
 今狼を引き付けているイスナーンが倒れたら、狼は次は老鬼人種を狙いかねない。何としても、イスナーンには倒れずに耐えてもらわねばならなかった。
 茄子子は一方でセララに老鬼人種を庇ってもらうことも考えたが、猪を引き付けている現状でセララが老鬼人種を庇いに入ると、一歩間違えば老鬼人種を猪との戦闘に巻き込んでしまいかねない。故に、セララにはその位置で猪の相手をする様に指示した。
「うん、了解だよ! この猪を早く倒す様にするね!」
「俺も手伝うぜ! とっとと仕留めたいからな!」
 セララはドーナツを取り出すと口にくわえつつ、聖剣ラグナロクを天に向けて掲げ、天より迸った雷鳴を刀身に宿す。一方のルウは『巨獣の大剣』を地面と水平に構えながら、猪へと駆け寄った。
「ひはへははふへいふっ!」
「オラアアッ!」
 セララは必殺技のギガセララブレイクを大上段から猪に叩き込み、ルウは駆け寄った勢いを横薙ぎの一閃に乗せて猪を叩き斬る。左右からの剣閃による挟撃はズドォン! と言う轟音と共に猪の左右に深い傷を刻み、多大なダメージを負わせたものの、まだ猪の生命力が尽きるには至らなかった。

 猪は二頭とも一度セララから距離を取り、再度突進するものの、セララはドーナツを加えたままこれを両方とも回避する。

「さて、お前たちも複製肉腫のせいで狂暴化しているのかもしれないが……。
 悪いな、急いでいるから手加減している暇はないぞ?」
 錬は陽光を放つ鏡を再度掲げ、イスナーンを中心に陽光で照らす。眩い浄化の光はイスナーンの周囲の狼を灼き、そのうちの一頭が力尽きてバタリと倒れ、動かなくなる。
「当たらなくても、邪魔するぐらいはできるはずだから……!」
「隙ありだ! 押していくぜ!」
 いざとなれば盾になれる様に、玄丁は老鬼人種の側へと駆け寄る。そして、魔力の弾丸を狼の一体に向けて立て続けに放つ。二発の弾丸は狼に命中すると、その肉を抉る様に深く食い込んだ。
 狼が弾丸が飛んできた方向を振り向こうとした隙を衝いて、三毒は肉薄して身体ごとぶつかっていく。弾丸に当たった上に巨体に衝突された狼は、ギャウンと悲鳴を上げた。

●肉腫は全て斃れたり
「疾く、速く――止まるまで、何度でも叩き込みますよ!」
「これで――倒れなさい!」
 瞬く間に繰り出されるボディの脚が、悲鳴を上げた狼を強かに蹴り飛ばす。吹き飛んで地面を滑った狼は、そのまま動かなくなった。勢いに乗ったボディは、次の瞬間にはもう一体の狼の横腹に強かに蹴りをめり込ませる。
 だが、苦痛がすぐに終わったのはその狼にとっては幸せかも知れなかった。イスナーンの『凶の爪』が深々と狼の身体を抉り、致命傷を与えたからだ。

 最後の一頭となった狼はイスナーンに飛びかかるが、その頬に掠り傷を付けるに留まる。

「狼もあと一匹だ。仕留めてしまおう!」
「そうだな。合わせよう」
 カインと錬は頷き合うと、邪悪を灼く光と不浄を清める陽光を同時に最後の狼に浴びせた。辺りを昼間の如く照らし出すほどの眩い光に、狼は苦しみのたうち回り、その身体からは瘴気が追い出される様に漏れ出していく。だが、狼の身体から追い出された瘴気に逃げ場はなく、外に出るやいなやすぐに灼かれ、清められていった。
「では、お別れだ」
 シューヴェルトは『桜花』の柄を握りしめ、光の中へと飛び込んだ。そして、華麗な剣筋で狼の身体に別れの文字を刻む。それがとどめとなり狼が倒れると、遺された身体は普通の狼と変わらないぐらいまでに小さくなっていた。

 猪はセララへと突進するも、一体は躱され一体は聖盾で受け止められる。

「もう一発、叩き込むぞ!」
「任せて! 行くよ!」
 ルウとセララは、再度猪に対して『巨獣の大剣』とギガセララブレイクでの挟撃を試みる。叩き付ける様な分厚い鋼と雷撃を帯びた斬撃が、轟音を響かせて猪の身体の左右に炸裂した。流石に今度はダメージが顕著に身体に表れて、ふらり、ふらりとその身体がよろめいていく。
「もう、倒れそうなんだけど……」
「こいつで……決まるか!?」
 猪にさらなるダメージを与え、出来れば倒してしまうべく、玄丁は魔力の弾丸を連続して放つ。弾丸はセララのギガセララブレイクで焼け爛れた肉を立て続けに抉り、苦痛に悶えさせる。その隙に三毒は猪に肉薄すると、弾丸が命中した部分に拳を何度も重ねていく。
 傷口を何度も殴りつけられた猪は体勢を崩し、横向きに倒れる。そしてしばらくの間ジタバタともがいたかと思うと、パタリと力無く脚を垂らして息絶えた。
「鬼じいちゃん!ㅤ無事だよね!ㅤね!?
 老体で無茶とかしてないよね!?ㅤしてたとしても会長が治すよ!」
 狼が全て倒れ、猪がセララに釘付けになっているのを確認した茄子子は、急いで老鬼人種の元へと駆け寄っていく。そして生きていることを願いながら、老鬼人種を調和の力で癒やし、その傷を癒やしていった。

 残る猪は一体となったが、そうなると戦闘の結末は見えたも同然だった。生命力の高さ故に多少の粘りを見せたものの、九人のイレギュラーズが相手では勝ち目はなく、ついには力尽きた。

●老鬼人種の、無事を喜ぶ
「……あ、れ? ここは、一体……」
 他のイレギュラーズが最後の猪と戦っている間中、老鬼人種の身体を癒やし続けていた茄子子だったが、老鬼人種が意識を取り戻すと歓喜し、事情を説明する。
「鬼じいちゃん、前にも言ったでしょ!ㅤキミは今世を真っ当する義務と権利があるんだよ!
 会長だったら何時でも助けに行くから、もう変なのに誑かされたらダメだよ!」
「こんな老いぼれでも、助けに来てくれるのかい。ありがとうね」
「ふふ、友達だからね!」
 とびっきりの笑顔を、茄子子は老鬼人種に向けた。

「鬼翁が無事でよかったよ」
「会長も悲しまずにすみましたしね」
「嫌な小細工も潰せたみたいだね」
「そうだな。高天京にも被害が出なくて何よりだ」
 茄子子と同じギルドの錬、ボディ、カイン、シューヴェルトは、その様子を見てこの結果を迎えられたことを喜び合っている。

「俺達は、とりあえずこいつを片付けておくか」
「おじいちゃんも元に戻ったみたいだし、そうだね」
「私も手伝いましょう」
「僕もそうするよ。一度関わったなら、最後までちゃんとやりたいしね」
「オレもそっちを手伝うかァ」
 ルウ、セララ、イスナーン、玄丁、三毒は、しばらくの間茄子子達の様子を眺めていたが、やがて肉腫となった獣達の死骸を処理することにした。放置しておけば、他の者が肉腫に感染する危険があったからだ。

 癒やしを施されたとは言え、肉腫への感染と、その時に受けた傷はやはり老鬼人種には大きな負担である。そのため、イレギュラーズ達の間での相談により、老鬼人種はしばらく高天京のある診療所で静養することになった。
 茄子子は、老鬼人種が診療所から出るまでの間、足繁く老鬼人種の元に通ったと言うことだ。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

イスナーン(p3p008498) [重傷]

あとがき

 シナリオへのご参加、ありがとうございました。肉腫に感染した老鬼人種は、皆様のおかげで無事に救出されました。お疲れ様でした。

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