シナリオ詳細
<傾月の京>素敵滅法グレイトフル也!
オープニング
●多勢に無勢/一騎当千
甲冑の金具がこすれる音が、こうも自然になじもうとは。
美しきラムレイの馬上より見渡すは、どこまでも続く武者の群れ。
ただの武者ではない。『鎧だけ』が意思を持ち、ゆらゆらと身体を左右にゆすりながら歩く群れ。
「亡霊騎馬兵団のつぎはさまよう鎧の群れとはね。あなたの国、随分バリエーションが豊かじゃない」
「それは皮肉か、童女(わっぱ)よ!」
隣に重馬を並べ、同じ景色に目を細める巨躯の鎧武者。
彼の名は梅久。刑部省に所属し長らくにて法の番人として犯罪者たちと戦ってきた鬼人種である。
だが鬼人種差別の横行する七扇のこと、梅久と彼の部下たちの仕事はもっぱら危険なテロリストへの鉄砲玉であり、保険はおろか補給すら満足に得られぬ毎日だ。
いや、それだけではない。梅久が元々霞帝派閥の人間であることから、天香家と天香派閥の最上級役人たちから露骨に疎まれているのだ。
それゆえに……か。
「あなたの騎兵隊、ずいぶん数が少ないようだけど?」
振り返ったイーリンに、三人の武者がぱたぱたと手を振り替えした。
三人。
三人である!
この前は50人規模はあったというのに!
しかもその三人は『後は任せた』とばかりに馬に飛び乗りどこかへ去って行くではないか。
「多くは巫女殿を守るべく別の地に配した。この地を守るのは童女と我――そしてイレギュラーズのもののふのみよ」
「増援は?」
イーリンの問いかけに、梅久は『ハッ!』と短く笑うだけで返した。
「まったく……人使いが荒いったらないわね。まあ、いいわ。乗りかかった船ならぬ馬。
どうせ今回もアレ、やるんでしょ?」
笑い、手綱を握りしめるイーリン。
同じく手綱を握り、梅久は重馬黒百段を走らせた。
高く振り回すは十文字槍。
「マイネィームイズ『鬼刑部』梅久ァ! 味方は九騎、敵は多勢。よいよい、良かろう――」
イーリンたちもまた、旗を掲げて突き進む。
そう、今こそ叫べ。
●急、此岸ノ辺!
豊穣郷各地に呪詛の流行が広まり、人々は目に見えぬ刃で殺し合い妖怪は暴れ狂い亡霊達はあふれ出る。イレギュラーズたちの活躍によって大幅な軽減ができたとはいえ都の被害はただならぬものであった。
人々が明日におびえ引きこもる中、それを許さぬとばかりにけがれの巫女つづりより急の知らせが舞い込んでくる。
曰く悍ましい魔の気配が巫女姫の御座す高天御所に集まり、これまでに無いほど強大な呪詛が発動しようとしているという。
だがそれだけではない。つづりを置いている此岸ノ辺にも魔の手が迫りつつあるという。
これを放置すれば直接間接問わず一体どれだけの被害が出るかわからない。清明たちと帝派閥の役人達は急ぎ兵を招集。深い信頼関係にあったローレットも、無論例外ではない。
巫女や清明たちが落とされればこの国の魔種支配は止まらない。
カムイグラという国の未来を賭けた戦いが、始まろうとしていた。
さて、そんな中でイーリンたちが配置されたのは此岸ノ辺へ続く平原地帯。
刑部省が大量に用意していたであろう量産型呪詛の妖怪が大挙して押し寄せる地。
個体ごとの力は弱くとも、ここまでの群れが押し寄せれば防衛どころではなくなるだろう。
いかに多く、いかに力強く、この命なき武者たちを屠れるか!
その力こそが、巫女たちを守る剣となるのだ。
さあ、今こそ共に叫べ。
「「素敵滅法グレイトフル也!!」」
- <傾月の京>素敵滅法グレイトフル也!完了
- GM名黒筆墨汁
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2020年10月03日 22時25分
- 参加人数8/8人
- 相談7日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
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参加者一覧(8人)
リプレイ
●
「グオオオォォォオオオオオウッ……!!」
満月にかかる雲。夜霧に紛れてゆれる無数の甲冑たちを前に、大岩のうえにたち登った『煌雷竜』アルペストゥス(p3p000029)が天空へと吠えた。
白い翼を大きく羽ばたかせ、白銀の電流を流しながらゆっくりと浮きあがる。
まるで戦いののろしを上げるかのように、竜の姿は敵軍の前に堂々と踊った。
そんな光景を見上げ、槍を杖のようにつく『鏖ヶ塚流槍術』鏖ヶ塚 孤屠(p3p008743)。
「私達九人しかいないのに亡霊は尋常じゃないぐらいいるんですね。数的不利……」
ごっふと咳き込むと、孤屠は冗談のように激しく吐血した。
慌てる仲間に手をかざし、『大丈夫大丈夫』と口角を上げてみせる。
「相手が数えられないというのなら数えられるまで叩けば良い話です! 実に単純! 獄人としての血が騒ぎま――えふっ!?」
ぴゅうと冗談のように血を吹き上げる孤屠。
『宵闇の調べ』シセラ・デュセス(p3p009105)が『本当に大丈夫なの?』といった具合に背中をさする一方、『夜に這う』バルガル・ミフィスト(p3p007978)は口だけで笑う独特の、非常に不吉そうな笑顔でバイクのアクセルをひねっていた。
エンジンが獣のごとくうなり、バルガルの口角はそのたびに上がっていく。
喜劇の仮面もかくやという笑顔を作ると、眼鏡のレンズを月光に照り返した。
「戦は数、とは言いますがそれを覆すというのもまた、面白いもの。
それにしてもよくもまぁ此処まで集めた物で……実に、滾ります」
「つどいしむれ、もうりょうのうねり、ふれればひんやり、もうしんどい。ふふ。
すてきめっぽーぐれーとふるなり! えいえい、おう!
ことだまに、ゆうきを、もらいました。さあ、せんじょうのかぜを、かんじにいきましょう」
シセラが振り返り、拳を突き上げてみせた。
岩の上にのぼり、波のごとく迫る亡霊武者の群れに手をかざす『咲々宮一刀流』咲々宮 幻介(p3p001387)。
「いやはや、壮観で御座るな……これが烏合の衆でなければで御座るがな。
数で押す戦い方は戦術の基本ではあるが……それが戦の全てでは無い事を教えてやると致そうか」
「このような合戦場に立つ姿など見たら、我が師は何と宣うでしょうね。
『これほどの軍の準備を許した時点で敗北』くらいは十分にあり得ます」
同じく岩の上から観察する『遺言代筆業』志屍 瑠璃(p3p000416)。
「とはいえ、人間以下の有象無象でござろう。他の連中と混ざられれば厄介でござるが、今ここで押し止めることができるのであれば……」
幻介の言葉に、瑠璃は小さく頷いた。
『戦いは数』というのは、あくまで数に数えられての話である。
塵芥がいかに積もろうと箒のひとなぎで除けられるように、未だ覆せぬ数ではない。
「ええ……今宵は我々九人で、血の大河を作り死の荒野を駆けましょう」
大きな馬の上から深く深く呼吸を整える、『鬼刑部』梅久。
その隣では、『天才になれなかった女』イーリン・ジョーンズ(p3p000854)がラムレイにまたがり振り返った。
「梅久、ひとつ聞いて良いかしら」
「どうした童女」
「……貴方は忠を尽くしている?」
「無論」
流れるように、そして迷うことなく答える梅久に、イーリンは囁くように重ねた。
「その忠は、『何に』尽くしているのかしら」
「…………」
ぴたりと、梅久の回答が止まる。
「国か、刑部省か、その長か、己の矜持か」
「……童女は何に尽くす」
「終わったら教えるわ。楽しみにしていてね」
「イーリン!」
優美な馬ラニオンを操ってイーリンの隣へと駆けつけた『私の航海誌』ウィズィ ニャ ラァム(p3p007371)。
「私が何に何を尽くすかなんて一目瞭然! さ、いこうイーリン! 敵がお待ちかねだ」
「うむ。語らいは後。今は武勇を尽くすのみ!」
梅久は十文字槍を放り投げると、鎖を持って強引に振り回し始めた。
「素敵滅法グレイトフル也!!」
「神がそれを素敵滅法グレイトフルに望まれる――!」
「さあ、素敵滅法グレイトフルStep on it!! 行こうぜ我が片翼!」
不揃いの戦士たちが、一糸乱れぬ亡霊の群れへと挑みかかる。
●
亡霊武者たちの様子は人でもなく獣でもなく、強いて述べるなら『虫』に印象が近かった。
彼らにあるのはそうあれかしと定められた式であり、低い知能なれど有機的に障害を排除しようと結託する。仮にこれが巨大なカブトムシやアリの群れであったとしても、戦場に流れ込めばどのような損害がおこるか検討もつかない。
しかしこれ『だけ』なら、知能の低さに漬け込んで勝利することが出来る。
たとえばそれは勇猛であり、例えばそれは戦術であり、たとえばそれは……。
「ウィズィ、突っ込むわよ!」
「マイネームイズ! ウィズィニャラァムッッ! 我が最愛、イーリンには指一本触れさせるか!」
横にぴったりと並んだイーリンとウィズィニャラァムの馬が亡霊武者たちの中央へと突っ込んでいく。
今まで幾度となく繰り返された戦術であり、もしかしたら『騎兵隊戦術』とすら呼ばれかねないこの手法は、『カリブルヌス・改』を起点にして始まる。
「梅久、往復の道は開く、敵陣を割って!」
イーリンが紫の燐光を解き放ち、亡霊武者たちを一直線に貫いていく。
対する亡霊武者はそれまでの隊列を崩し、まるで磁石に集まる砂鉄のごとくイーリンやウィズィニャラァムへと群がろうとした。
「よっし、見ていてよイーリン!」
ウィズィニャラァムはイーリンがこじ開けた穴を素早く駆け抜ける形で敵陣中央へと割り込みながら『ラカラビ』を発動。『ハーロヴィット・トゥユー』に淡い光を纏わせ敵陣中央にぶん投げると、そこめがけて馬で激しく飛び込んだのだ。
衝撃によって亡霊武者たちがポップコーンさながらに吹き飛んでいく。
梅久は若干の距離をとりながら十文字槍を振り回し、集まる亡霊武者たちを引き剥がしていく。
「むう……!」
イーリンの開いた道はすぐさま埋まり、三人はたちまちのうちに亡霊武者たちに取り囲まれ馬から引きずり下ろされた。
が、そんな彼女たちを援護するように空中から雷鳴が響き、アルペストゥスの砲撃が亡霊武者たちをなぎ払った。
(……たくさんいるけど、美味しくなさそう)
隊列を組んで規則正しく戦う人間達に比べ、純粋に敵へ群がっていく亡霊武者の戦術は円形を描きやすく、『貫』ないし『列』の直線攻撃を活用しづらい特徴があった。
そうはいっても刀、槍、弓によるレンジをそれぞれ選ぼうと三重の円を描くことから、全くできないということはない。梅久が調節してくれたように、数人一定の距離をとりながら並べば敵の密集地帯が重なるので砲撃が通しやすくなるのだ。
そこへ加わる形で『心法火界呪』を発動させる瑠璃。
毒の霧を作り出し、亡霊武者の槍および弓兵たちめがけて巻き込んでいく。更に空へ放った紫の光球が放物線を描き、亡霊武者たちへと着弾、爆発を繰り返した。
「全く以て、天香派は政には強かなので御座ろうが戦に関してはずぶの素人も良い所か……此方の力量を見誤ったで御座るな?」
幻介はそうしておこった爆発の中心へと助走をつけて跳躍。
亡霊武者たちのガードを文字通り飛び越えると空中で抜刀。
激しい縦回転をかけながら亡霊武者たちへと飛び込んだ。
「猿知恵を回したつもりであろうが……残念ながら、此処は通行止めに御座る」
着地。切り裂いた亡霊武者たちはガラガラと小さな割れた瓦となって落ち、そのなかには昆虫の死体が一個ずつ混じっていた。
「亡霊の正体見たり、でござるな。咲々宮一刀流――羽前椿」
横一文字に走る閃き。
そこへぴったりと重ねるように、シセラはバチバチとスパークした鮫尻尾のスイングによって亡霊武者たちを吹き飛ばした。
反撃に繰り出された槍を、瑠璃が割り込むようにつかみ取る。
シセラを自らの後ろにかばうと、至近距離から炎の術で焼き尽くした。
「早速囲まれたようですね。敵が多いとこうなる。私から離れないで」
シセラは頷き、反転。後方の敵めがけて新たなスパークスマッシュを放った。
そんな彼女たちの頭上を飛び越えていく一台のバイク。
バルガルのまたがるオフロードバイクである。
「ははははは。愉快爽快、絶景ですねえ」
バイクもろともの体当たりにまとめてなぎ倒される亡霊武者たち。
バルガルは素早くバイクの体勢をたてなおすと、五十センチほどのスティックをホルダーから取り出した。
取り囲み、槍を突きつけてくる亡霊武者たち。
飛び上がった無数の矢がバルガルへと殺到し、刀を振り上更に武者が殺到する。
「こういう状況は、大好物」
スティックのボタンを押し込むと前後がじゃきじゃきと展開し、三段ロッドの要領で槍型へと変化した。
バイクを傾け豪快にドリフトをかけながら回転。
槍を突き出し武者達をなぎ倒していく。
「さあ、どうぞ」
「素敵滅法グレイトフル也!」
梅久たちの名乗りを真似る形で飛び込んできた孤屠。
血煙を纏い、槍をぐるぐると頭上で振り回す。
「亡霊なんぞ木端! 貴方達の槍を幾ら束ねても、私の槍の前では脆すぎる!」
孤屠が槍で回転斬りを繰り出すと、伴った赤いオーラが巨大な刃となって亡霊武者たちを切り落としていった。
口の端からたれる血を手の甲で拭い、くすりと笑う孤屠。
「さあ、次はどなたです」
●
度重なる攻撃によってバラバラと崩れていく亡霊武者の群れ。
さながら虫の群れに殺虫剤をまくが如くの有様だったが、彼らにはひとつギミックが仕込まれていた。
群れが一定数を下回った時、その状況に問わず自らをコストとして新たな亡霊術を行使するというものである。
すべての亡霊武者が突如として分解され、空へと舞い上がる。
激しい渦を巻いて集合すると、新たに巨大な亡霊武者となって槍を振り上げた。
見上げるほどの巨人である。
アルペストゥスは顔の高さまで飛び上がり……。
「Ludere causam――Et aeque」
激しい電撃を纏って大量の電撃弾を発射。
マシンガンの如き砲撃を浴びせられた亡霊武者はわずかによろめくが、槍を振り回してアルペストゥスへと殴りかかった。
激しいダメージによって転落を始めるアルペストゥス。それを上手にキャッチすると、瑠璃とシセラはそれぞれ反撃に出た。
「いかに巨大であろうとも、それを支える力には限界があるものです」
「――」
シセラは砕けた亡霊武者たちに自前の死霊術を行使すると、新たに盾専門の亡霊武者を形成。叩きつけてくる巨大な槍の攻撃を防御した。
防御を彼女に任せ、瑠璃は限界まで練り上げた魔術を連続発射。
もてるかぎりのバッドステータスを亡霊武者へ蓄積させる考えである。
「巨大化しても得られるのは攻撃力と耐久力のみと見ました」
孤屠は血を固めて作った槍を構え、豪快に巨大亡霊武者めがけて投擲。
攻撃が比較的通りやすくなっていることに気づいた。
「あくまで緊急避難的な法術なのでしょう。こけおどしとも言える」
「ほう、それは良いことを聞きましたね」
アルペストゥスやシセラたちによる何度かの攻撃によって一旦膝を突く巨大亡霊武者。
彼らをなぎ払おうと腕を振り回すが、バルガルはそのタイミングに合わせて亡霊武者の腕をバイクで強引に駆け上がった。
咄嗟に振り払う亡霊武者。しかしバルガルはバイクを捨て、身一つで亡霊武者の肩まで駆け上がり喉元めがけて槍を突き立てた。
更に。
「数で押しても埒が明かんと踏んだ様で御座るが……的が大きくなって、楽になったで御座るな」
バルガルに気を取られている間に背中をがしがしとよじ登っていた幻介が、反対側から刀を叩きつけていた。
装甲に弾かれるも、連続技によって強引に装甲を破壊して内部へと刀をめり込ませる。
それによって今度こそ、亡霊武者の頭ががくんと垂れるように止まった。
一方。
「首を落としても止まらないパターンだ、あれ。イーリン、何かひらめかない?」
「そう都合よくいくなら今頃億万長者になれてるわよ」
イーリンはこめかみをトントンと叩いた。
「亡霊武者に関するデータが少なすぎるわ。梅久、何かないの」
「童女よ、いいことを教えてやろう!」
ハハッ! と大声で笑い飛ばして梅久は叫んだ。
「何者も、叩けば壊れる!」
「なんで私、あなたをアテにしたのかしらね」
が、ひらめくにはひらめいたらしい。
「亡霊武者は確か、施術された瓦と虫を媒体にした降霊術だったわよね。瓦は防御、虫は頭脳。だとしたらあの巨体に情報伝達をするために各所に虫をバラして配置してるはず。情報伝達を乱せば四肢の制御が乱れて転倒するはずよ」
「ええとつまり……いろんな所を狙えってことでいい!?」
ウィズィニャラァムはよっしゃあといって助走をつけると、イーリンと手を繋いで魔力を循環させはじめた。
「見ていてよ、イーリン! 私の必殺技ッ!」
魔力で作った巨大すぎるテーブルナイフを亡霊武者めがけて投擲。イーリンとウィズィニャラァム二人分の力が、亡霊武者の心臓へと突き刺さった。
と同時にハンマー投げの容量で振り回した十文字槍を梅久がぶんなげた。
更に仲間達の攻撃が合わさり、亡霊武者の四肢や頭が激しい爆発をおこす。
それが、最後だった。
ゴオウ、という咆哮にもにた音を最後に、巨大亡霊武者は瓦礫の山となって崩れていった。
●
死体のひとつも残らない平野にて、アルペストゥスとシセラはそれぞれの傷を手当てしていた。
他のエリアを防衛していた梅久騎兵隊の兵士たちが数名、伝達のためにやってくる。
「どうやら、防衛は上手くいったようですね」
「亡霊武者の群れが此岸ノ辺へ流れ込む自体は阻止できたようでござるな」
瑠璃と幻介が伝令役から受け取った書を梅久へと突き出した。
「それはなにより。いい体験をしました」
「ええ、全く……」
壊れたバイクのパーツをあつめて修理をはじめるバルガル。孤屠は槍によりかかってまた冗談みたいに吐血していた。
いや、よりかかるというかもう殆どぶっ倒れていたが。
「どう、ハニー。格好良かった?」
「ええ、格好良かった」
駆け寄ってくる笑顔のウィズィニャラァムを、イーリンがキャッチ。
「梅久。さっきの答えだけど。私は自分に忠を尽くす。もう半分はウィズィに」
そう述べるイーリンに対して、梅久は深く息をついた。
「梅久騎兵隊は、正しい呼び名ではない」
『ん?』と小首をかしげて振り向くイーリン。
「元の名は『死兵隊』。長などなく、集められた鬼人が凶悪な罪人や化物相手に死ぬまで戦い続けるための捨て駒部隊よ。
村を焼かれ攫われた者。家族を実質人質に取られた者。行き場もなく喰うに困った者。皆未来もなく捨て鉢であった。
我はその中で運良く生き延び、その次も生き延び。そのまた次も生き延びた。
そしていつの間にか……長となっていた」
槍を突き立て、満月をみやる。
「何に忠を尽くすか。考えたこともない。厳しい掟で隊をまとめ、敵となるものを屠り、夜には宴を開く。それがすべてであったが……。
いまいちど、考えるべき時がきたのやもしれん。
童女よ、この答え、預けておくぞ」
イーリンは彼の言葉に『ん』とだけ答えると仲間達のもとへと歩き始めた。
国を救うための戦いは、まだまだ始まったばかりなのだ。
成否
成功
MVP
状態異常
なし
あとがき
――依頼達成!
――亡霊武者の群れを撃退しました。
――此岸ノ辺への浸透攻撃リスクを回避しました。
GMコメント
■これまでのあらすじ
都で感知された強大な呪詛。それを止めるべく宮中へ攻め入る一方、巫女姫及び天香派閥も此岸ノ辺をめざし巨大な呪詛をぶつけてきました。
今回は帝派閥の刑部者、鬼刑部こと梅久より依頼を受けて防衛作戦に参加することになりました。
■オーダー:亡霊武者を可能な限り破壊滅殺ジェノサイドすること
この作戦に細かい注釈はいりません。
大群に名乗りをあげながら真正面から突っ込み力の限りぶちのめします。
極めてシンプルな作戦ですが、だからこそ策の活きる場面も多くあるでしょう。
■エネミーデータ
・亡霊武者
量産型呪詛によって一度に大量に送りつけられた下級亡霊兵たち。
個々の意思が弱く敵らしきものにとりあえず群がって攻撃するという単純な習性をもちます。
群がる際には『刀や槍による近接攻撃』『マークやブロックによる足止め』『離れて弓をうつ』などの行動をランダムにとり、考えてないなりに一定の連携行動がとれるようになっています。
数は『いっぱい』です。正直数えきれません。
個体ごとの戦闘力は低いので、味方と力を合わせて上手に大量に撃破していきましょう。
・亡霊武者(集合体)
群れがある程度減少すると残った武者が集合し、巨大武者となって作戦行動を続行するように組まれています。
見上げるほどに巨大な鎧武者をいかにして倒すか。
もちろん『かこんでぼうでたたく』作戦も有効ですが、ここはひとつ行動順や使用スキルを整えて最効率撃破を目指してみるのもよいでしょう。
■味方NPC
・『鬼刑部』梅久
タフネスが鎧着て歩いてるような武将。TOP画面左側で存在感を出している人です。
重馬黒百段にまたがって戦い、『超名乗り口上(範囲拡大版)』『超戦鬼暴風陣(範囲拡大版)』を使い派手に登場して派手に暴れるのを得意としています。
主な戦闘スタイルは例の名乗り口上を叫びながら十文字槍鎖大回転しながら走り回ることです。
HPや防御が非常に高い反面器用さという言葉を知らないのが欠点です。
■■■アドリブ度■■■
ロールプレイをよりお楽しみいただくため、リプレイにはキャラクターのアドリブ描写を用いることがございます。
プレイングやステータスシートに『アドリブ歓迎』『アドリブなし』といった形でお書きくだされば、度合いに応じて対応いたします。ぜひぜひご利用ください。
●Danger! 捕虜判定について
このシナリオでは、結果によって敵味方が捕虜になることがあります。
PCが捕虜になる場合は『巫女姫一派に拉致』される形で【不明】状態となり、味方NPCが捕虜になる場合は同様の状態となります。
敵側を捕虜にとった場合は『中務省預かり』として処理されます。
●備考
・当シナリオでは依頼の成否、もしくは此岸ノ辺へのダメージによって、此岸ノ辺に様々な影響が出る場合があります。
※2020年9月18日不足分追記
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