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シナリオ詳細

木漏れ日の森にある古びた音楽堂で魔物討伐

完了

参加者 : 2 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●音楽堂に潜む魔物
 ヴァルト・コンサートホールという『天義』聖都郊外の深い森に佇む音楽堂がある。木漏れ日に照らされた宗教建築は静謐な古典音楽を奏でる場として古くから人々に愛されていた。年度の行事が頻繁に開催されていた頃は、地元の民達がアコースティックピアノの紡ぐ天使の如き旋律に傾聴していたものだ。

 しかし近年、ヴァルト・コンサートホールは久しい老朽化により音楽堂として機能する事が難しくなりつつある。当音楽堂を取り壊す意見も民の間で議論が重ねられていたが、やはり文化的、芸術的、建築的な価値の高さから省みて保存が決定された。老朽する建築物の保存行為には修繕が必要である為、とある日に管理団体が調査を行うが……。

「おい? あのピアノの影にいる奴は……!?」
 調査員の一人が旧き打弦楽器の背後を指摘する間もなく、黒い影が突如襲来する。
 黒い影、もとい、鼠の魔物が奇声を発して加速しながら調査員に飛び掛かったのだ。
「くっ、しまった! 牙で右手を噛まれたようだ。毒だろうか、ふらふらする……」
「大丈夫か? しばらく放置していたら魔物の巣窟になっていたか。撤退するぞ」
 調査員達は鼠の魔物達に追い立てられながらも音楽堂から迅速に逃走した。
 どうやら保存や修繕以前の問題でまずは魔物の清掃が急務と言えよう……。

●音楽堂の魔物討伐
「今回、お二人にお願いしたい依頼は、古びた音楽堂での魔物討伐となります」
 あなた方に依頼の相談を持ち掛けた情報屋は『鉄騎学者』ロゼッタ・ライヘンバッハ(p3n000165)である。
 その音楽堂だが、『天義』の聖都郊外の森に位置するヴァルト・コンサートホールという名所であるとの説明を受ける。いや、「元名所」と述べた方が現在では正確であろうか。

「うん! シュテ、やっても、いいよ! 詳しく、教えて?」
 相談を持ち掛けられたうちの一人であるシュテルン (p3p006791)が快活に返事をする。
「あぁ、俺もかまわないが……。ところで、なぜ俺ら二人なのか?」
 依頼相談を受けたもう一人の美城・誠二 (p3p006136)が硬派に返答する。

「実は、お二人がその音楽堂のある森で仲良くされていたとローレットに通報が入りましてね……」
 ロゼッタが業務上の話題を意地悪そうな口調で語り掛けると二人は慌てた。
「え? シュテたち、歌の話を、ね?」
「そ、そうだ。俺達は偶然、森で出会って音楽の話を少ししていただけで……」

 無論、通報の件は罪のない嘘だ。二人の動揺を見てロゼッタは即座に謝罪する。
「ごめんなさい、冗談です。本当の理由は、土地勘がある上に、音楽に造詣が深く、討伐依頼でも実績があるシュテルンさんが適任という判断です。しかし、流石に一人だけで依頼に送り出されるのは荷が重いかもしれません。そこでアタッカーとして定評のある誠二さんも補佐に付けてお願いするという話ですね」

「まぁ、魔物討伐の助太刀ぐらい問題はない。それでロゼッタ? どんな魔物だ?」
 さて、真面目な誠二としては戦況の把握がまずは必要だろうと考える。
「私も音楽堂へ偵察に行きましたが、ベア・マウスという鼠の魔物が10体いました。森に生息する害獣タイプの魔物ですが、音楽堂に沸いて悪さをしている訳です。数がいて素早い上に毒等の攻撃もしますから、討伐の際には気を付けて下さいね」

 ところで、当依頼の問題は魔物討伐だけだろうか。
 ロゼッタも言う様に土地勘があるシュテルンとしては音楽堂の今後も気に掛かる。
「うん、魔物、倒すね! その後、どうするの? あの音楽堂、直すのよね?」
 討伐後の件についてもロゼッタが忘れずに補足する。
「もし、魔物討伐後に余裕もあれば、戦闘で荒れた音楽堂の後片付けもお願いできますか? それと、ステージに年代物のアコースティックピアノがあります。そのピアノの動作確認も行えればさらに助かります。なお、戦闘の際には貴重なピアノを破壊しないようにも気を配って頂ければと。では、よろしくお願いします」

 依頼を受理すると二人はすぐに支度を整えて木漏れ日の森にある音楽堂へ出向く。
 二人にとって思い出の深い森にある音楽堂での依頼成功を祈ろう。

GMコメント

●目標
 ベア・マウスの討伐。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はAです。
 想定外の事態は絶対に起こりません。

●ロケーション
『天義』聖都の郊外に大きな森があります。
 森の一角にヴァルト・コンサートホールという小さな音楽堂があります。
 この音楽堂が今回の戦闘舞台となります。
 音楽堂のステージにはアコースティックピアノがあります。
 客席は300席程度です。
 戦闘でピアノを壊さないようにご注意です。

●敵
 ベア・マウス×10体
 森に生息する鼠の魔物ですが、たまに音楽堂に現れて悪さをします。
 外見は黒色で何処か熊にも似ている鼠です。大きさはドブネズミ程度です。
 戦闘的な性格である上に、連携を得意としています。
 反応と機動力が高い分、HPは低いです。
 戦闘方法は以下。
・マウスファング(A):鼠魔物の爪攻撃です。物近単ダメージ。BS出血。CT高。
・マウストゥース(A):鼠魔物の牙攻撃です。物至単ダメージ。BS毒、痺れ。
・垂直移動(P):戦場である音楽堂でちょこまかと垂直移動もします。

●GMより
 EXリクシナでのご指名ありがとうございます、GMのヤガ・ガラスです。
『天義』の森にある音楽堂でほのぼのと魔物討伐をするシナリオでお送りします。
 ぜひ今回の依頼をきっかけにお二人の仲を深めて頂ければ幸いです。

  • 木漏れ日の森にある古びた音楽堂で魔物討伐完了
  • GM名ヤガ・ガラス
  • 種別リクエスト
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2020年09月28日 22時15分
  • 参加人数2/2人
  • 相談8日
  • 参加費---RC

参加者 : 2 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(2人)

美城・誠二(p3p006136)
元。
シュテルン(p3p006791)
ブルースターは枯れ果てて

リプレイ

●準備
 その日、特異運命座標の二人は木漏れ日が照らす森中の古き音楽堂へ魔物討伐に向かう。
 旧音楽堂の内部は黴やら埃やらの塵芥で部屋が侵食されていた。

「さて、久方ぶりの仕事か……。鈍ってないといいのだが、ともあれ全力を尽くそう」
 先頭を歩く『元。』美城・誠二(p3p006136)が音楽堂の鍵を開けて静かに入堂する。
 掃除や調律の道具を抱えているが力持ちの彼にはさほどの重量ではない。

「よーし! お仕事、頑張ろー!」
 誠二に続いて嬉々と入堂するのは『こころの花唄』シュテルン(p3p006791)である。
 お出掛け用の際のフード付きの黒き羽織りを纏う彼女は手ぶらである。
 重い物を運ぶ仕事は全て誠二の担当らしい。

 音楽堂奥には流麗な旋律の古典音楽を奏でた旧きアコースティックピアノがあった。
 本日、魔物駆除の為に戦闘もあるのだがピアノは破壊しないで欲しいとの事。

「念のためにピアノ周辺に保護結界をかけておこう。魔物が意図して破壊しに来るというという線もなくはないが、最低限の事故は防げるだろうからな」
 誠二は道具袋から保護結界の石を取り出すとピアノ周辺に間隔を空けて撒いた。
 結界石同士が作用して透明な光が溢れるとピアノを包囲して守護状態となる。

「よーし、結界、張れた! もくひょー、ペア・マウス、倒すよ!」
 シュテルンは誠二が結界を張っている最中は周囲を警戒していたのだ。
 警戒が功を奏したのだろうか、奥で頭隠して尻隠さずのベア・マウスを発見した。

●討伐
 ベア・マウスは「侵入者」を発見すると続々と集合して全部で十体の姿を現した。
 流石に反応速度と機動力が優れた魔物らしく戦闘開始と同時に四方八方に飛び散る。

「勝負しろ、ベア・マウス! 俺は美城・誠二、人呼んでヒーロー……!!」
 開戦と同時に名乗り上げる誠二がベア・マウスの群れに激情を誘う。
 怒り狂った何体かの鼠魔物共が方々から誠二を目掛けて突撃だ。

「なんのこれしき」
 誠二が防御態勢で鼠魔物の爪や牙の猛撃に耐え切った。
 防御技術に秀でたタンカーの彼であれば数撃で撃破される事はあり得ない。
「ちっ、頭が少々ふらふらするな……」
 しかし、不潔な鼠魔物は状態異常を駆使する事に関しては達者である。
 誠二は手堅くガードしていた両腕を軽度に出血して、毒と痺れに冒される。

「シュテ、回復、頑張るする!」
 前衛で敵の猛撃を防ぐ誠二に対して後衛のシュテルンが治癒術式を歌唱する。
『そっと……』の柔らかな神曲が癒しの音色で誠二の痛みと異常を取り除いた。
 その上、シュテルンからの神秘の応援歌が誠二の活力を促した。
 誠二は後衛で歌う彼女を護りながら戦う為に魔物を後ろに通す訳にはいかない。

 頭に血が上がる鼠魔物達は猛撃の遊撃離脱(ヒット&アウェー)で再び襲い掛かる。
 攻撃がワンパターンなので今度の斬撃を誠二は回避の実力でいなした。
 さらに反撃には防御技術を応用した鉄帝盾の強打攻撃で鼠魔物を地に落す。

「よし、まずは一体、倒した。地道に数を減らしていこう」
 誠二は後衛のシュテルンを護る事を意識している為に敵前衛を威嚇して抑制する。
 抑えた所で魔物の方も誠二狙いであるが為に両者は激しい殴り合いの応酬となった。

 もっとも、鼠魔物は垂直移動が特技であり天井伝いからシュテルンの元へ現れる。
 魔物の毒牙がシュテルンを襲撃するが……。
「心配、大丈夫! シュテ、攻撃、出来る、する!」
 シュテルンは色白の指先で星詠みの神秘魔術を創造していた。
 音楽堂内で疑似的に発生したカシオペア座が瞬く。
 シェダルの閃光が煌めき出す刹那、鼠魔物を狙い撃つ必殺の隕石が流れ落ちた。
 神秘奥義―χ Cassiopeiae―が鼠魔物を姿形なく浄化したのである。

「おい、魔物共! アンタらの相手はこの俺だ!」
 再び名乗り上げた誠二が魔物の群れを引き受ける。
 先程一体だけシュテルンの元へ出現させてしまったが、それは誠二側の過誤ではない。
 鼠魔物は三六〇度、どこへでもどんな動きでも到来するのである。

 次の襲撃は苛烈な集中攻撃とも言えよう。
 鼠魔物達が垂直移動した四方八方から全力で攻め上げる。
 鉤爪攻撃の強斬撃は誠二から鮮血が迸る程に切り裂いた。
 鋭利な毒牙の連続攻撃が彼の身体の方々に食い込んで行動の自由を奪った。

「くっ、絶対に、負ける、ものか……。立ち続けること、それが俺の矜持だ!」
 無論、誠二は彼の熟知する我流の技で猛連撃の防御を試みた。
 それでも運命の欠片まで破壊されてしまうが彼は再び立ち上がり防御を構える。
 スタイリッシュな戦法ではなく泥臭いのを地で行く戦法かもしれない。
 だが耐えて耐えて殴って殴って、それこそが彼のヒーロー像の戦い方なのである。

「誠二、頑張るする! シュテ、何曲でも、誠二に、歌うよ!」
 後衛を護る為に前衛で満身創痍になる誠二の為にシュテルンが心を込めて歌う。
『こころの花唄』が神聖なる救いの音色で誠二の生傷を大きく癒す。
『そっと……』が優しい音色で誠二を蝕む毒の類を洗浄した。

 垂直移動の機動や状態異常の攻撃が驚異とも言えるベア・マウスではあるが……。
 その攻撃手段はワンパターンである上に徐々に数が減っていく。

「あと、もう一息だ……。お互いに頑張ろう、シュテルン!」
「うん、シュテ、まだ頑張れる! 誠二、援護、いつでもね!」
 誠二が鉄帝盾を構え直して鼠魔物に強烈な迎撃を浴びせて殴り倒した。
 シュテルンもカシオペア座の神秘狙撃で援護しつつも着実に仕留めていく。
 やがて十体もいたベア・マウスは二人の息の合った共闘により全滅してしまった。

●ピアノ
 魔物討伐が終わると散らかった音楽堂の掃除活動の段階に移る。
 誠二は持参した掃除道具で戦闘後を綺麗に片付ける。

「戦闘で埃が舞っていたりするだろうし、気をつけながら掃除しなくてはな。器物を壊さないよう気をつけてはいたが……。まぁ、派手に戦った以上、少々壊れているかもしれない」
 一方、シュテルンの方は一生懸命に掃除するそんな誠二の姿をにこやかに眺めていた。
「掃除してる、するとこ、シュテ、見てる、する、だけ……。誠二、真剣、邪魔する、したくない、だから……」

 小さな音楽堂である上にピアノ等の器物も破損した所はなかった。
 掃除は案外早めに終わり、問題であるアコースティックピアノの件となるが……。

「んん、掃除、終わる、した? やったー! ねね、誠二! ピアノ、弾く、してみて! ポロンポロン……綺麗な音色……とっても、素敵、思う、する!」
 子供のように強請るシュテルンの為にも誠二は急いでピアノの確認作業に移る。

「……ピアノか。そういえば幼い頃、習っていたっけな……。ほんの少し、調律も兼ねて弾いてみるか。シュテルン、少し付き合ってくれ。その綺麗な声に合うような演奏が出来るかわからないが、できる限りの演奏をしてみよう」
 誠二は旧式の打弦楽器の蓋を開けると白鍵と黒鍵を押しながら音色を確かめる。
 中には弦が切れている所もあったのでその分は調律して取り換えた。

「うん、シュテも、歌いたくなっちゃった……」
 調律していた誠二からのお誘いではあるがシュテルンも既に同じ気持ちである。
 音楽堂にアコースティックピアノがある。ピアノ演奏者がいて歌手がいる。
 一体、ここで音楽を奏でて歌わない理由が何処にあろうかとも言えよう。

 古き音楽堂で二人だけのピアノ演奏と歌唱が開催された。
 誠二が柔らかなリズムでサビのメロディーを弾き始める。
 シュテルンが優雅な美声を響かせてピアノの旋律に歌唱を乗せる。

***

 曲名:『そっと……』
 作詞作曲:シュテルン
 ピアノ演奏:美城・誠二
 歌手:シュテルン

 そっと 目を閉じて♪
 そっと 明星(あけぼし)光る♪
 そっと 時を重ねて♪

 そっと 目を開けた♪
 そっと 夜が見える♪
 そっと 夢をかけてく♪

 未来に見たあの輝いた星♪
 いつかまた 会えるよと 笑ってくれた♪
 朝を連れてきてくれるから♪
 あなたの為 唄を歌ってあげる♪

***

 二人だけの演奏会が終了すると誠二とシュテルンは誰が居なくともお辞儀をした。
 そしてお互いに照れた表情で礼と賛辞を述べ合った。

「えへへ! 今日はね、誠二のこと、思う、して、歌う、してみた! いつもは、わからない、あなたへの、歌、だけど……。一緒に、お仕事、嬉しい、した、だから! 誠二に、伝わる、した?」
 頬を赤めたシュテルンからそんな風に訊かれた誠二も誠意で応えたい所であろう。
 硬派な彼の回答はまず、黙って頷いた。
「ああ、とても良い曲だよな、『そっと……』は。まるでシュテルンの温かな気持ちが歌で伝わって来たようだったな。俺の方こそ、素敵な歌に対してピアノ演奏で気持ちを返せていたのであれば良いが」

 二人はアコースティックピアノの蓋を閉じると旧式の打弦楽器にも感謝を告げた。
 古き音楽堂を立ち去る前にシュテルンは誠二にとある約束を笑顔で持ち掛ける。
「また一緒、誠二の、ピアノと、歌う、したいなぁ……。ね、ね? また、歌う、しても、いーぃ? いっぱい、歌おっ!」
 流石にストイックな誠二も爽やかに微笑するとシュテルンの気持ちに素直に応えた。
「おう、またな。ピアノの演奏だったら、そのうち付き合うから……」
 言い方が少々雑な男であるが、誠二の心の奥の温かさをシュテルンは知っている。
 だからこそシュテルンは誠二の両手を取ると思わず跳ね上がって喜んでしまった。

 シュテルンは「こころの花」(ギフト)で涼し気に微笑む誠二の緑の瞳を覗く。
 彼女の心の視界に映った誠二の花は、鮮やかに咲き誇る蒼い朝顔であったようだ。

 後日、二人が魔物討伐をしたヴァルト・コンサートホールが見事に復旧を果たす。
 誠二がピアノ演奏者でシュテルンが歌手として、二人は記念演奏会に招待された。

 了

成否

成功

MVP

シュテルン(p3p006791)
ブルースターは枯れ果てて

状態異常

なし

あとがき

シナリオ参加ありがとうございました。
古びた音楽堂で魔物討伐や演奏会をするお二人はとても輝いていました。

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