シナリオ詳細
鉄を穿つ雷となりて
オープニング
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鉄帝国北東、ヴィーザル地方。
そこは鉄帝にありながらも、貧しい大森林地帯が広がるのみで、鉄帝民もさほど重要視していない場所だ。
だが、この地域には、『ノーザン・キングス』という連合を形成した少数部族達が住んでおり、鉄帝から自らの領土を勝ち取って自分達の国を成立させようとしていた。
力こそ全てという指向を持つ者の集まりである鉄帝国としては、戦いを仕掛けてくるなら力でねじ伏せんという構えではある一方、ノーザン・キングスとの交戦にメリットはほとんどない。それもあって、彼らとの戦いに消極的だ。
今また、この地帯において力を示しているノーザン・キングス所属の一団として、イシュト団と名乗る集団がいる。
「力こそ全てと語る鉄帝もこの程度か。拍子抜けだな」
雷神の末裔を自称する彼らの中で、一際並外れた体格と力を持つ鉄騎種男性がいる。
彼の名は迅雷のガラハ。身長2mを超える恵まれた体格と、奇怪となった右腕で軽々と操る自らの身長と同程度の大槍。
敵陣を突っ切っていく様から迅雷の二つ名で呼ばれ、鉄帝民にすら恐れられる存在だ。
「なあ、お前達もそう思わないか?」
「「おう!!」」
団員は血気盛んな若者が中心。力ある団長ガラハに負けじと重量感ある武器を扱う者が多い。
「当然、力しか能のない連中になんて負けないわ」
それだけでなく、重量感ある錫杖を持つ精霊使いもおり、支援を行うなどただ力で攻めるだけの団体でないことを窺わせる。
「よし、さらに仕掛ける。森林地帯を抜けてその先の集落まで攻め込むぞ」
ただ、無抵抗の者は襲うなとガラハは団員達へと厳しく告げる。あくまで自分達はノーザン・キングスの所属。物取りをすることなど最初から眼中になく、自分達の力を示して自治を勝ち取ることがイシュト団の狙いだ。
「では、いくぞ、お前達!」
「「おう!!」」
彼らは両手武器を背負い、前方に広がる森林地帯へと突入していくのである……。
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それからしばらくして、幻想ローレットへと入ったのは、鉄帝の集落を守ってほしいという依頼だった。
「依頼は鉄帝国から直接出ています。それだけに届けられたのは早かったですね」
『穏やかな心』アクアベル・カルローネ(p3n000045)が集まったイレギュラーズ達へと告げる。
現状、鉄帝のラハティと呼ばれる小さな集落を目指し、ノーザン・キングス所属のハイエスタ、イシュト団と呼ばれる集団が森林地帯を移動しているのだそうだ。
団長は迅雷と呼ばれる大槍を獲物とするガラハ。そして、大型の武器を所持する団員がメインとなり、彼らを数人の精霊使いがサポートする。
「彼らが集落へと至る前に掃討する必要があります」
イシュト団は基本的に鉄帝の民を虐げるようなことはしないとされるが、集落民からすればノーザン・キングスが攻めてくるというだけでも脅威にさらされる状況なのは間違いない。
また、鉄帝国から見捨てられたと集落民が感じれば、ノーザン・キングスの自治に下る可能性がある。
鉄帝国としてはできるだけノーザン・キングスの侵攻を食い止めたいのが本音だ。
「ただ、鉄帝の強者達のモチベ―ションは高くありません」
強者が多数いる幻想との戦いならいざ知らず、小国の寄せ集めの者達と戦ったところでという意識が彼らには強い。
端的に言えば、この戦いに面白みを感じる者が少ないのだ。
「その為、鉄帝としては国を守る為にローレットへと彼らの撃退を依頼してきている状況です」
依頼とあれば、どんな状況でも動くのがローレット。
それぞれの正義、考え、スタンスがある為、ノーザン・キングスの一団をここで叩くことが必ずしも正しいとは言えないが……。
「どうか、よろしくお願いいたします」
すでに、侵攻は進んでいるはず。できるだけ早く現地である鉄帝の森林地帯へと急行してほしいと、アクアベルは改めてイレギュラーズ達へと願うのだった。
- 鉄を穿つ雷となりて完了
- GM名なちゅい
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2020年09月25日 22時15分
- 参加人数8/8人
- 相談5日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
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参加者一覧(8人)
リプレイ
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鉄帝北東の森林地帯へとやってきたローレットイレギュラーズ達。
「なんか面倒くさい連中が居るみたいね」
狐の耳と尻尾を持つ小柄な『狐です』長月・イナリ(p3p008096)は些か大儀そうに呟き、自らのファミリアーを上空へと飛ばして索敵を開始する。
「イシュト団でありましたな」
同じく、鉄帝の軍人であり、魔法少女でもある『マム』ハイデマリー・フォン・ヴァイセンブルク(p3p000497)もまた、鷹のファミリアーを高く飛ばし、空から撃退対象の集団を捜索する。
「……確認。距離は1キロ前方」
「こちらも捕捉したわ」
自身も飛行するハイデマリーが鷹の眼と超視力を活かして敵を捕捉。イナリの情報も合わせてメンバー達は奇襲ポイントを定める。
周囲の草木で偽装を施すイナリは迷彩模様の布に周囲に草木を刺し、簡易迷彩装備を作るなど、万全に対策して身を隠す。
徐々に近づいてくるハイエスタ、イシュト団。誇り高き自分達の存在を主張し、鉄帝に立ち向かう若者達だ。
「時期に森を抜ける。戦いの準備をしておけ!」
「「おお!!」」
団長である巨漢の男、迅雷のプラハの叫びに、長物を携えた血気盛んな団員達が応じて吠える。
まだ距離はかなりあるが、ハイエスタの声はイレギュラーズ達の耳にもしっかり届く。
(「勝ちたければ敵を知れ」とは、よく言ったものだと思うよ)
荒野の戦闘民族である『宝飾眼の処刑人』シキ・ナイトアッシュ(p3p000229)は超視力を活かし、後の戦闘に役立てる為にその行動を観察する。
「ったく、気持ちは分からんでもねぇが、やり辛いったらありゃしねぇ」
影を操る暗殺者、『死を齎す黒刃』シュバルツ=リッケンハルト(p3p000837)はそれでも割り切りをみせ、全力でこの依頼に取り組む。
「今だ」
遠距離攻撃を行う仲間達へと合図を出しつつ、シュバルツは気持ち早めに自らの影から漆黒の弾丸を生成し、発射していく。
それが体を掠めて血を迸らせたことで、ガラハも警戒を強めて。
「前方、何かいるぞ!」
団員に警戒を強めさせ、自らは攻撃してきたイレギュラーズへと雷を放出してくる。
すぐさま団員達は足を止め、周囲を注視して警戒する。
山育ちである彼らも目はいい。物陰に隠れてなければイレギュラーズ達もすぐ発見されていたことだろう。
「イシュト団……。人数、練度、共に私より上のようね」
ゼシュテル鉄帝国の銃士であるローザ・グランツ(p3p009051)も、自国民に名の知られた集団だと感嘆する。
「でも、負けるつもりはないわ」
周囲には自分よりも強い仲間がおり、相手が常に有利な戦場ばかりに行けるわけがない。
そう考えたローザは猟銃を構え、青い衝撃波を発して団員を狙い撃つ。
「落ち着け、ハイエスタとしての誇りを強く持て!」
撃ち抜かれ、団員達へと落ち着かせるガラハ。
彼のイシュト団は自治権を勝ち取ろうとしていることを大柄な黒髪短髪の少年、『砲使い』三國・誠司(p3p008563)は思い出して。
「……その為の力の誇示、かぁ」
元の世界では何不自由なく学生として生活していた誠司であるが、イシュト団の主張は理解できるし、彼らの持つ誇りは大事だと思っている……のだが。
「……それだけで生きていけるほど、この世界はきっと優しくない。僕のいた世界ですらそうだったから」
それに誇りに拘るなら、何も武力による進軍でなくても……と考えたところで我に返って。
「いやもう始まっちゃってるし、どうにかするか……!」
すでに仲間の遠距離射撃は始まっている。誠司も追随して御國式大筒【山崩】より放った鋼の驟雨を敵陣へと撃ちつけていく。
狙うは足。怪我をさせて退けさせるのが彼の狙いだ。
しかしながら、状況分析が的確なハイエスタ達はすぐさま個々で布陣を整える。
「力こそすべてではないというのは理解できるし、統率・連携・規律を完成させれば鉄帝はより強くなるでありましょう」
飛行して頭上からその様子を見ていたハイデマリーが針葉樹の枝へと降り立って。
「やり方が悪いでありますし、先にも言いましたが規律を乱す奴が結局のところ最終的に負かしたものを虐げ最終的にはたいして変わらなくなる」
敵に凶弾を叩き込もうとレールガンの引き金を引いた。
「一種の輪舞でありますな」
狙撃に特化した能力を持つハイデマリーは団員数人を巻き込むように撃ち抜く。
「怯むな、我等の誇りを、力を、奴らに見せつけるのだ!」
「おやおやおや……」
そんな敵団長の指示に、自称混沌の根源たる力に携わる一族出身のアルテラ・サン(p3p008555)が目を見張る。
「中々良い信条をお持ちのようですねぇ……」
その主張はアルテラにとって、鉄帝と同じように聞こえたようである。
「まぁ、太陽の輝きには一片の濁りすら与えられるモノではないですがね」
ドヤ顔で語るアルテラを尻目に、狙撃班が上手く敵を奇襲してくれたことで近接班も動き出す。
「さて……仕事の時間と行こうか」
シキは敵に感情など抱かず、淡々と依頼に当たるべく樹々の影を利用し接敵していく。
布陣を整える敵だが、それがイレギュラーズ達にとって隙となる。
「これ以上、暴れられると面倒だからここで御帰宅を願いましょうか」
イナリは木陰に身を隠したまま、敵を奇襲する。
「雷神の末裔を自称するハイエスタ。他のノーザン・キングスの奴等より多少マシですが……」
そして、鉄帝出身の長身男性、『鋼鉄の冒険者』オリーブ・ローレル(p3p004352)は獰猛なノルダインや悪知恵が働くシルヴァンスを思い返してから改めてハイエスタの戦士達を見つめて。
「結局は敵です。排除します」
オリーブは自らの獲物である両手長剣を振りかざし、団員へと攻撃を仕掛けていくのである。
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敵は北側から南へと森を抜けようとしてくる。
ならば、イレギュラーズ達も森の中に潜んで網を張り、敵を奇襲して迎え撃つ。
「私や父上みたいに内部から正攻法で変えようとする意志がないのであるのなら……」
ハイデマリーは飛行して木々の上を飛び回り、ファミリアーの鷹の眼を感覚共有することで狙いを定めて。
「大人しく討たれて私の礎になるがいい」
さらに、彼女は複数のイシュト団団員達を撃ち抜いていく。
敵がこちらの奇襲を察して動きを止めたところで、イナリはファミリアーで俯瞰視点を維持しつつ、贋作・天叢雲剣の力で爆炎を操って視認した精霊使いを狙い撃つ。
そうなれば、敵は視認を防ぐべく木々を斬り倒してバリケードとし、身を隠そうとする。
だが、それは誠司にとっては想定内。
「倒した木を利用できるのはそちらだけじゃない」
敢えて銃弾を木々にも命中させることで敵を巻き込んで倒し、団員の分断を図る。優先して狙うは精霊使いと大弓使いだ。
また、身を隠す敵にはたいまつを投げつけて発火を狙う誠司だったが、明かりとして利用するのがメインのたいまつの火力はさほど強くなく、すぐに団員にかき消されていたようだ。
遠距離からの狙撃が続く中、接敵するメンバーも多い。
敵が木を切り倒してくるなら、シキはその倒木を利用して相手を挟み込むように気を倒す。
そうして、戦力を分断させつつ、シキは団員……特に精霊使いのみを狙って処刑剣と魔術を合わせた攻撃を繰り出して相手を追い詰めようとする。
「私は唯皆様の背中を輝かせる太陽でありますので、戦闘面をお願いします、えぇ、えぇ」
そんな仲間達の背後から笑顔を浮かべるのは、非力で脆弱だと主張するアルテラだ。
ファーストネームであるサン……太陽はアルテラにとって、仲間を回復支援すべく輝く存在でもある。
「さぁ、皆さんは存分に戦ってください。えぇ、えぇ」
敵の引き寄せも行いつつ、アルテラは接近戦を仕掛ける仲間達へと指示を出す。同時に、魔神の詩を紡ぐことで、彼は仲間達の気力の維持にも努めていたようだ。
近場にいたオリーブは至近から木々を巻き込みつつ大剣や大斧を振るってくる団員の数を減らそうと立ち回る。
「やはり、団員は若者が多いですね。芽を早めに摘む事が出来て、都合が良いです」
活かして帰せば、鉄帝にとってより厄介な存在となる。
そう考えるオリーブも長剣で乱撃を叩き込み、複数の相手を切り伏せていく。
団員達はイシュト団の誰それと名乗りを上げ、長物を振り回す。
「名を上げる相手に不足なし。ローザ・グランツ、参る」
名乗り返すローザも数を減らすべく団員へと格闘魔術を見舞う。
範囲攻撃を持たぬ彼女は各個撃破を狙い、大振りに長物を振るった敵の懐へと集中した一撃で叩き伏せていた。
シュバルツは自身に近づいてくる集団の長へと接敵して。
「イシュト団とやら、お前らには悪いが潰させて貰うぜ」
「鉄帝軍ではないな……?」
ガラハは襲い来るイレギュラーズを訝しみながらも、自らの気を引くシュバルツ目がけて雷神の如く槍を一閃させる。
(槍使いで雷を操る力を持ってるとなりゃ、中距離で立ち回るのは分が悪いな)
先程の雷と合わせてその一撃を受けたシュバルツは、槍を振り回しにくい至近距離にまでガラハに近づく。
彼は自らの別の可能性を纏って自己強化し、実体を持った分身を発生させて同時に切りかかっていく。
「我が輝きをとくと御覧下さい」
仲間が傷付けば、アルテラがすかさず癒しに当たってポーズをとる。
すると、ギフトによって太陽の魔法陣が展開し、アルテラの身体が煌めく。
「全て光り輝き、全てを包むのです」
光を発する彼は天使の歌をも響かせ、仲間達を癒していた。
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イシュト団の練度はかなりのもの。
戦い慣れした盗賊や海賊、ならず者などを相手にする機会は多いイレギュラーズだが、このハイエスタの集団はそれらとは違って団員1人1人がかなりの力を持つ。
それだけに、ローザは彼らの力が惜しいと感じて。
「ヴェルス帝に従い、皆で協力して良い国にするつもりはない?」
「断る」
鉄帝の皇帝の名を出すローザだが、団員は露骨に嫌悪感を示して拒絶する。
「あくまで自分が上じゃないと気がすまない、と?」
無駄と感じながらも、ローザは戦いながらも団員を諭し続けていた。
「諸君、鉄帝が何時までも同じ轍を踏むと思うなであります」
帝国軍人であるハイデマリーも彼らにとって倒すべき敵に他ならないが、彼女は木々を飛び回り、団員達を翻弄し続ける。
その間に、一行は優先討伐対象としていた精霊使いの撃破が進む。
錫杖を使用する4人の精霊使いは大地の力で仲間を攻防の両面で強化し、さらに癒しの風を振りまいてくる。
この厄介な相手を叩かねば戦いは長引くと感じた一行。
シキがすでにそのうちの1人を追い込み、直死の一撃の刻み込んで倒してしまう。
「他の皆も狙っているはずだけれど」
4人の精霊使いの制圧にはそう時間は要しないとのシキの考え通り、その数は確実に減っていた。
誠司はバリケードからの燻り出しが難しいと判断し、上空からバリケードを崩して敵をその中から叩き出す。
そこから出た精霊使いを別の木を切り倒して行く手を遮ったオリーブが長剣で切りかかり、仕留めてしまった。
続き、イナリが別の精霊使いを狙う。
弓を使う団員によってファミリアーを撃ち落とされてしまったイナリは自ら、木々の合間よりその精霊使い目がけて爆撃を浴びせかけて撃破する。
残る1人はローザが相手にしていて。
「豊かな土地を手に入れるのも、相応に戦う力を準備して攻め入るものなのよ?」
交戦を続けるローザは敵が風の力で木を切り倒したことで、青い衝撃波を放ってその木を押し返す。
「そうしないと、いくら個々人が強くても犠牲が出る。補充出来ない強さの消失は、やがて支配を揺るがす」
表情を歪めながらも、精霊使いは土の精霊の力を借りる。
何も起こらない……と思いきや、ローザの背後に回り込んでいた大剣使いが彼女の身体を切り裂いてしまう。
パンドラの力が僅かに砕けたことで、ローザは倒木に持たれかけるようにして態勢を立て直す間に、頭上から狙撃したハイデマリーが迷いなく引き金を引いてその精霊使いを倒していた。
全ての精霊使いが戦闘不能に陥ったことで、シキは団長ガラハを抑えるシュバルツの助力へと向かう。
「ハイエスタの誇りを持て!」
そんな中でも、団長ガラハの一喝が残る団員達を鼓舞する。
ラド・バウでもかなりの戦績を上げられそうな力を持つだけでなく、カリスマ性も備えた彼はシュバルツと互角以上に戦っている。
「私の処刑人の剣にかけて、力比べといこうじゃないか!」
さらに駆けつけたシキが交戦を開始し、アルテラの回復支援もあってシュバルツは幾分か持ち直したようだった。
ガラハの鼓舞を受ける団員達も場数は踏んでいたが、支援の手がなくなったことで団員達も疲弊し、歴戦のイレギュラーズにはかなわず地を這う者が増えていた。
誠司はこの段になり、はぐれた敵を見定めようとする。
すでに精霊使いが皆倒れていたこともあり、誠司が狙いを定めたのは……。
「……あの弓使いなら」
僅かに浮遊した誠司は足音を消し、距離をとる大弓持ちへと近づいていく。
その間に、団員の討伐が進む。
「私や父上みたいに、内部から正攻法で変えようとする意志がないのであるのなら……」
ハイデマリーが樹上から重い刃を振るう団員へと語りかけるように銃で狙って。
「大人しく討たれて私の礎になるがいい」
鋭いハイデマリーの鷹の眼は、確実に一弾一殺の魔弾で1人を撃ち抜き、倒してしまう。
至近に敵が近づいて来たイナリは近接戦へと移行していた。
刹那殺人剣の極意をその身に宿すイナリは、雷電を纏った一撃で敵を切り伏せる。
さらに、オリーブは敵の長物に態勢を崩されながらも、審判の一撃を打ち込み、そいつを切り倒してみせた。
息つきながらも、オリーブは残る団員を見据えて果敢に攻めていく。
(怯めば殲滅速度が落ち、むしろ危険です)
そう考え、オリーブは体力が減ってもなお、長剣を振りかざして攻撃を続ける。
すると、アルテラがすぐにオリーブを癒すべくポーズをとり、全身を輝かせた。
「あぁ、なんと素晴らしい能力なのでしょうか!」
ナルシストな彼は自己主張がかなり激しいが、しっかりとオリーブの傷を塞いでいたようだ。
そんな連携の取れたイレギュラーズ達の戦いに、ガラハは苦々しい顔をして。
「……これほどの手練れがまだいたとはな」
「さぁ、君の信念も、力も、生き様も……よぅく私に見せておくれよ!!」
不敵な笑みを浮かべ、シキが重い一撃で武器を組み交わす。
「……俺を忘れてもらっては困るな」
さらにシュバルツも敵から離れず、大槍を振り回させない。
それでも、身を引きながら雷鳴を轟かせるガラハは、電流を帯びた槍を振り上げようとする。
「そこまでだ」
そこで、誠司が大弓を扱う女性の頭に銃を突きつけ、人質にとる。
ガラハが態勢を立て直そうと身を引く素振りを見せたことで、シュバルツがブロックして。
「おかしな真似はさせないぜ。誇り高き雷神の末裔とやら」
「卑怯な。何が狙いだ」
多少の煽り混じりに告げると、槍の電流を霧散させたガラハが誠司へと問う。
「卑怯で結構。……今すぐ、拠点へと撤退してもらおう」
これで争いが止まるならば構わないと、誠司はガラハ他、残る団員達へと告げる。
「待ってください。彼らはこの場で完全に叩くべきです」
オリーブがそれに異を唱えると、樹上から降りてきたハイデマリーも口を挟む。
「鉄帝は何時までも同じ轍は踏まないのであります。奴らは私が鉄帝に連れ帰って一から鍛え直すであります」
イレギュラーズ達だけでも、一枚岩ではない状況。それは各自の持つ正義が違うからであろう。
「誰にだって正義はあるんだ。例え悪人にだろうがな」
ガラハが力ずくで仲間を助けようとする可能性も考慮し、シュバルツが黒刃を向けたまま語る。
ただ、ガラハも現状を打破するだけの力も仲間も残ってはいない。
先程のローザの言葉もある。これ以上仲間を失うわけにはいかないとガラハも判断して。
「退くぞ。倒れた者を抱えるんだ」
後退しようとするイシュト団。完全に武装解除して撤収するまではと、誠司は人質を放さない。
そんなガラハ達へと、シュバルツがさらに一言。
「力が無きゃ何も証明出来ねぇんだよ。だから勝った方が正義だ」
この状況だって、力があれば覆せたかもしれない。
歯噛みして口から血を流すガラハに、ローザは力がないわけではないと告げる。
「あなたたちなら、ゼシュテル軍でも名を上げられたでしょうに……」
実際、イレギュラーズと互角以上に戦う力がイシュト団にはあったのだが、この場はイレギュラーズの作戦勝ちといったところか。
「我等の誇りを汚した貴様を俺は許しはしない……!」
「…………」
ガラハに睨みつけられた誠司は臆することなく、人質を解放する。
イシュト団もこれ以上戦うことは無く、森の北東へと引き返していく。
「さすがに追うことはできないわね」
「治療しましょう。ここに残るのは傷を負った者達ばかりです」
その後ろ姿を見つめてイナリが呟くと、アルテラが仲間達を癒す。
ともあれ、ハイエスタの一団を撃退したことに変わりはない。
イレギュラーズ一行は依頼の完遂を報告すべく、森を出ていくのだった。
成否
成功
MVP
状態異常
なし
あとがき
リプレイ、公開です。
MVPは索敵や戦闘で活躍をみせたあなたへ。
今回はご参加、ありがとうございました。
GMコメント
イレギュラーズの皆様こんにちは。GMのなちゅいです。
鉄帝を打倒せんと戦いを仕掛けてくるノーザン・キングスの一団の討伐を願います。
●目的
ハイエスタ、イシュト団の掃討。
●敵……ハイエスタ、イシュト団
規模は20~25人程度。人間種と鉄騎種のみで構成されています。
誇り高き自分達の存在を主張することで、力こそ全てと主張する鉄帝のあり方に異を唱え、戦う者達です。
鉄帝との戦では無類の強さを誇り、鉄帝民にも名の知られた一団です。
○団長……迅雷のガラハ
20代の鉄騎種非常に大柄な男性。高地の出身で、雷神の末裔を自称するハイエスタの中でも、我こそがその力を受け継ぐと自負する巨躯の戦士。
自らの身長と同等の長さのある槍を振り回す他、雷を操る力もあります。
戦況に応じて戦法を変える柔軟な思考も持ち、隙がありません。
○団員……20名あまり
人間と鉄騎種が半々。10~20代の男女です。
名前こそ知られぬ者達ですが、鉄騎種の手練れと同等程度に交戦できる力量を持ちます。
基本、大剣、大斧、大弓と大きな武器を好んで使用します。隙が大きい部分は持ち前の力、瞬発力を活かして重い一撃を叩き込んでくるようです。
また、4人ほど、身長ほどの長さがある錫杖を使用する精霊使いも存在しており、風や大地の力を駆使して仲間の支援と強化、さらに攻撃を行います。
●状況
場所は鉄帝の北、高地の森林地帯です。
針葉樹林の多い場所の中、誇り高い民族柄かだまし討ちなどを好まず敵は正々堂々と名乗りを上げて襲い掛かってきます。
ただ、戦闘では斬り倒した木々を攻撃、防御に利用してくることもあり、油断は禁物です。
●情報精度
このシナリオの情報精度はAです。
想定外の事態は絶対に起こりません。
それでは、よろしくお願いいたします。
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