シナリオ詳細
奉納蹴鞠 豊穣夏之陣
オープニング
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豊穣の地のとある浜辺。
夏祭りに賑わい、多数の人々が行き交う砂浜の近くに、小さな神社があった。
小規模ながらも長い歴史を持つその神楽神社には、一つの催しが伝えられており、今なお続けられている。
それは、奉納蹴鞠と呼ばれており、神の御前で蹴鞠の試合を行うというものだ。
今年もまた開催が予定されていたのだが、残念ながら参加を予定していた鬼人種の巫女達が怪我をしてしまい、試合に出られなくなってしまった。
「どうしたものか……」
行事の開催すら危ぶまれる事態に、進行役である神楽神社の神主、光太郎は頭を痛めてしまう。
そんな彼の目の前に、豊穣の海を楽しみに来た4人の女性ローレットイレギュラーズの姿が。
神主は藁をも縋る気持ちで、彼女達を呼び止めて。
「あの、よろしければ、力をお貸し願えませんか?」
「はい?」
足を止め、キョトンとしてしまう夢見 ルル家(p3p000016)。
「なんでしょう。新手のナンパでしょうか?」
彼女に合わせて、友人であるヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ (p3p001837)も光太郎を振り返る。
「さすがに、神主がナンパはしないと思うけれど」
「それで、私達に何の用かしら?」
アルテミア・フィルティス (p3p001981)が相手の見た目を見て思ったままを口にすると、神主の顔を見つめてゼファー (p3p007625)が問いかける。
「長く続いた我が神楽神社の歴史ある奉納蹴鞠の存続の危機なのです……」
「奉納蹴鞠?」
そんな神主の申し出に、顔を見合わせるルル家達4人。
光太郎の話を聞く限り、足のみを使ったビーチバレーといった印象。浜辺でやるセパタクローというべきか。
服装は巫女服……で行うのが理想だが、動きにくいこともあり、実際は水着で試合を行う者が多いのだとか。
「こちらからお願いする立場で大変恐縮ですが、全力を尽くして競技に臨んでいただきたいのです」
奉納蹴鞠は神に奉納する為の催しだが、全力を尽くして行わねば
神には届かないとのこと。
技術面などはイレギュラーズとしてのスキルでカバーするとして、本気で勝利を勝ち取るべく試合を行えば神に満足していただけると光太郎は主張する。
「ほぼぶっつけでお願いする形となりますが、どうぞよろしくお願いいたします」
練習期間は僅か数日。
その間に見せられる試合となるよう形にして、奉納の日を迎えたい。
「分かりました。何とかしてみます!」
「最善を尽くしますわ」
「ええ、やるからには中途半端な試合は見せられないわ」
「そうと決まれば、早速練習ね」
ルル家に合わせ、ヴァレーリヤ、アルテミア、ゼファーの3人も皆力強く頷く。
「それでは、よろしくお願いいたします……!」
そんなイレギュラーズ4人に、光太郎は深々と頭を下げるのだった。
- 奉納蹴鞠 豊穣夏之陣完了
- GM名なちゅい
- 種別リクエスト
- 難易度-
- 冒険終了日時2020年09月22日 22時10分
- 参加人数4/4人
- 相談6日
- 参加費---RC
参加者 : 4 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(4人)
リプレイ
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豊穣……カムイグラのある浜辺には、小さな神社がある。
小規模ではあるが、神楽神社では毎年行われている奉納蹴鞠。
今回は神社の巫女の代役として、ローレット所属、4人の女性イレギュラーズ達が選ばれた。
4人は白衣に緋袴という神社の巫女服を着用し、奉納の為の競技に臨む。
砂浜、まだ昼間はやや日差しの暑さを感じさせる中、今回の催しにおいて運営となる神社の関係者が設置したコートの周囲には多数の人々が集まる。
そこに入っていったのは今回の奉納蹴鞠の主役達。
まずは、神社関係者に声を掛けられた今回の立役者の1人、可愛い金髪で片目を隠した旅人の少女、『不揃いな星辰』夢見 ルル家(p3p000016)だ。
「ゼファー殿、今日は宜しくお願いします!」
その相方は、各地をさすらう流浪の人間種、『never miss you』ゼファー(p3p007625)だ。
「今回はティーンズチームね!」
まだまだ若々しさを感じさせる2人に対するは、大人の魅力を感じさせるチームだ。
小柄でスレンダー、おデコが魅力的な『祈りの先』ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ(p3p001837)は鉄帝出身であり、鉄騎種である。
「ふっふー、大人を舐めると痛い目に遭うという事を教えて差し上げますわー!」
赤い十字架を掲げる鉄帝の宗教団体の司祭である彼女だが、今回は神教なる異教の服装に通している。
少しばかりほろ酔い気分でテンション高いヴァレーリアとペアを組むのは、幻想の武家貴族出身の人間種女性。銀の長髪の『怒りの一蹴』アルテミア・フィルティス(p3p001981)だ。
「あまり大人を舐めてもらっちゃ困るわねぇ? ここはしっかりと分からせてあげないとだわ!」
余談だが、アルテミアは母が飛行種であり、ハーフとのこと。
「騎士をやってるアルテミアは兎も角、日頃呑んだくれてるヴァレーリヤとなら体力の差は歴然ね!」
そんな相手ペアに、ゼファーは勝機を十分感じて。
「勢いが違うところを見せつけてやろうじゃない!」
「ふふふ、拙者達の若さ故のパワー! 見せつけて上げましょう!」
勢いで相手を叩く気満々のルル家だったのだが……。
「そういえばゼファー殿17歳でしたっけ? 年下ですか……」
ふと小柄な彼女の緑色の瞳は大柄なゼファーの豊満な胸へと向けられて。
そして、ルル家はゆっくりと真下へと視線を落とす。
つつましやかな自らの胸にそっと触れた彼女のテンションは急降下してしまって。
「いえ……なんでも……ありません……」
「……って、ちょっとルル家。何でいきなり意気消沈してんの??」
大きな溜息をつくルル家の悩みが分からぬゼファーは白衣の上からでもわかる胸を揺らし、一層相方のモチベーションを下げてしまう。
そんな相手チームの状況を見ていたのか、少し考え事をしていたヴァレーリヤがそうだと何かを思いついて。
「折角ですもの、賭けをしましょう」
やや悪戯っぽい笑みを浮かべ、ヴァレーリヤはティーンチームにこう言い放つ。
「私達が勝ったら、私達が満足するまで無限にお酒を奢って下さいまし!」
「って、ヴァレーリヤさん??」
そこで、相手以上に大きなリアクションをしたのは、相方のアルテミアである。
「賭けをするのは良いけれど、私は貴女ほどお酒は飲めないからね???」
そんな主張をするアルテミアへと微笑みを見せただけで、ヴァレーリヤの条件は続く。
「もし貴女達が勝ったら……ええと、しばらくタカるのを止めてあげるというので如何ですこと?」
折角の豊穣リゾートくらい、静かに過ごしたいでしょうと問いかけるヴァレーリヤは、ルル家やゼファーが支払いを行うのが当然と言わんばかりの傍若無人っぷりである。
「ちなみに断ったら、3倍タカりますわ!」
これにはさすがにルル家も黙ってはいられない。
「どういう不平等条約ですか!?」
「落ち着きなさい。ヴァレーリヤの理不尽にペースを乱されちゃ向こうの思う壺よ」
熱くなるルル家をゼファーが推しとどめる。
「仮に負けたとしても、どうせ一晩適当に呑ませて路地裏に放り投げれば綺麗さっぱり忘れるわ!」
ゼファーからもなかなかにひどい扱いだが、勝利を疑わないヴァレーリヤは気にも留めていないようである。
そうだなと少し冷静になるルル家は少し考え直して。
「こっちが勝ったらヴァレーリヤ殿には溜まってる家賃払えるまで我が領地で強制労働です! あとアルテミア殿は……ヴァレーリヤ係です!」
「ルル家さん、ヴァレーリヤ係ってなんですかっ!? これ勝っても負けても私にリスクしかないんじゃないの!? ねぇ!!」
「先に、本人に言われてしまったわね……」
すかさず、聞き捨てならないとアルテミアは声高に叫ぶ。ゼファーも同じことを考えていたようだが、ルル家もヴァレーリヤも全く聞き入れる様子が無いようである。
「ふふん、そんな事を言っていられるのも今の内だけでしてよ! お財布から搾り取られて、泣きべそかく準備をしておきなさい!」
そんな当事者達の争いを受け、会場のボルテージは高まるばかり。
神に捧げる為の儀式である奉納蹴鞠だが、それを行うイレギュラーズ達は我欲を満たす為、そして、それを阻止する為に。
勝敗関係なく受難確定の1人はさておき、砂浜にて熱いバトルが始まるのである。
●
改めて、奉納蹴鞠は足で行うビーチバレーのようなものである。
ビーチバレーは2人1組で行い、3セットで2セット先取。
通常バレーと比べれば人数の少なさもあってボールに触れる回数が非常に多くペアの連携が重視されること、風の影響が大きく度々試合に影響されることが特徴だ。
しかも、今回はそれを全て足で行う為、セパタクローのような要素も取り入れる形だ。
もっとも、蹴鞠は豊穣におけるご当地の遊び。
普段から蹴鞠を行う者はいるが、遊ぶ上でのルールこそあれ、競技として確立しているわけではないようだ。
始まる奉納蹴鞠1セット目。大人ペアが最初のサーブ権を握る。
「巫女服だからちょっと動きづらいけれど、それほど支障はないわね」
砂浜のコート上で慣らしを行うアルテミアも、巫女服で実際に競技をするのは初めてのようだが、問題はなさそうだ。
「さぁ、やるからには負けないように頑張っていくわよ!」
「では、いきますわよ!」
鞠……ボールを握ったヴァレーリヤは早速、サーブを放つ。
「どおおりゃあああ! 消し炭になりなさい!」
全力でボールを蹴りこむヴァレーリヤの一撃。
ネットを越え、ボールは一直線にルル家へと飛来していく。
「うおー!」
そのルル家は、飛んできた弾を会心の動きで……回避する!
「ふふふ……そのような攻撃、拙者のクリティカルの前では無力!」
ピー。
鳴り響く笛の音。
観客もこの状況には目を丸くし、あんぐりと口を開く。
ティーンズペアのコートにボールが落ちて、大人ペアの得点となるのだが、競技を行うメンバー達はお構いなし。
「オーケー、こいつら大体そんな解釈をしてくるだろうなって思ってたわ!」
ゼファーは相手のそんな動きを悟っていたかのように、次なるヴァレーリヤのサーブを迎え撃つ。
「どんな毬だろうと、衝撃を受け流せば所詮は毬よ!」
「どおおりゃあああ!」
再び、放たれてくる剛速球を、ゼファーは返そうとして。
「ほら、こんな風にぁ痛ッッッ!」
上がったボールをルル家がトスしている間に、痛みに顔を歪めるゼファーは相手コートを睨みつける。
「何すんだコラッ!!!」
ゼファーもまた本気のボレーシュートを相手コートへと叩き込む!
「見切りましたわ! アルテミアシールド!」
飛んできたボールを、ヴァレーリヤは後ろに下がって回避する。
「ちょっと!! これそういうルールじゃないか、グハァ!?」
一方で盾とされたアルテミアの顔面にボール直撃して。
「いたた……、流石に不意打ち過ぎたわ……」
顔を抑えるアルテミアは身を起こしたところで、審判である神主、光太郎から物言いが入り、競技は一旦中断してしまうのだった。
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しばし、光太郎から競技についての説明が続く。
「え? 避けたら点取られるから、避けたら駄目? そんな……」
「えっ、相手にボールをぶつけて倒すのはルール違反ですの?」
改めて伝えられたルールにルル家が残念がり、ヴァレーリヤもその方が手っ取り早いのにと戸惑いを隠せない様子。
とはいえ、長時間中断するわけにもいかず、両者納得がいかずともコート上へと入り、競技は再開される。
「仕方ありませんわね、気を取り直し……」
「ルールの理解が未だ追いついてなさそうなヴァレーリヤが狙い目……」
開始の笛が響いてすぐさま、ゼファーはヴァレーリヤ目がけて
サーブとなるボールを蹴り込む。
「……あっ、こら! もう打ってくるなんてズルいですわよ!」
「でも、この程度で慌てるほど軟じゃないのよ?」
構えてもいなかったヴァレーリヤだったが、結果受ける仕打ちはどうあれ、勝負には前向きなアルテミアがそのボールを軽く足で弾く。
「もしかしなくてもコレ、身長が高い方が有利ですわね?」
すると、冷静さを取り戻したヴァレーリヤがそのボールをしっかりと捉えて。
「アルテミア、上げますわよ! そーれっ!」
「よし、ヴァレーリヤさん、ナイストスよ!」
相方が落ち着いたことを喜ぶアルテミアは、すぐさまそのボールをシュートして、ティーンズペアのコートへと素早く叩き込む。
「流石にその辺のフォローは心得ているようね。此れだから生真面目な騎士様ってやつは!」
隙を突いたつもりが逆にポイントを入れられ、ゼファーは苦々しい表情をしていたのだった。
その後は両者ともにルールを把握したこともあり、スムーズに試合展開は進んで。
第1セットは大人ペアが若干リードする形。
「ふふふ、行きますよアルテミア殿!」
ティーンズペアも何とか追いつこうとルル家が気合を入れる……のだが。
「その脂肪の塊を胸につけた状態でこの攻撃……じゃない、玉が受けられますか!?」
ルル家はボールを手にしつつアルテミアの胸部を注視し、みるみるうちに表情が陰っていく。
「その脂肪の塊が! ……うっうっ! 鞠みてぇな胸してからに……」
「そしてまた意気消沈してんじゃないわ、ルル家!」
サーブを仕掛けてようとしたルル家が崩れ落ちてしまったのに、ゼファーが思わずツッコミを入れる。
今度はすぐに立ち直ったルル家は闘志を燃やす。
「負けられない……!」
ルル家はこの戦い、全ての胸部が人より気持ち恵まれていない人の祈りを背負って渾身のサーブを蹴り出す。
「甘いわね!」
サーブをするルル家のボールをアルテミアが受け、ヴァレーリヤががトスする。
「任せましたわ!」
頷くアルテミアは相手コートで自分を見て、なぜか歯ぎしりしているルル家を狙って。
「それっ、アタック!」
速攻での一撃はゼファーが受けるには遠い。
「は、速い! くそ! 体のどこかに当たってください!」
ルル家が受けねばならず、ボールに向かって全身を投げ出すように飛び込む。
だが、アルテミアのアタックは見事にルル家の真横をすり抜け、コート上の砂へとめり込む。
この場はアルテミアのおむね、もとい、大人ペアに軍配が上がったのだった。
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大人ペアが1セットとった状況からの第2セットは接戦となり、追いつけ追い越せといった展開に。
2度のデュースの後、大人ペアから飛んできたアタックをルル家が速攻で返し、このセットを制してみせた。
「現役の武芸者の運動能力を侮っちゃいけませんわ?」
ガッツポーズをするゼファーに、ルル家はこの上ない心強さを舵て。
「しかし、ゼファー殿の対応力の高さはすごいですね! 敵でなくてよかったと心底思います!」
「鞠を拾うのは私に任せて。決めるのは任せるわよ」
第3セットが始まってからは、ゼファーのトスからのルル家のアタックと、ティーンズペアの快進撃が続く。
「……っと、危ないッ! ふぅっ!」
足を延ばしてギリギリのところでボールを拾うゼファー。
「足が長くてラッキーだったわ?」
「ズルい……今すぐ私と同じくらいまで縮みなさい!」
不敵に微笑むゼファーを指さした小柄なヴァレーリヤが騒ぎ立てるが、そう言われてもとゼファーは困り顔。
そこからボールを上げたルル家に続き、ゼファーがアタックして大人ペアのコートへと叩き込む。
「ぐっ、やりますわね……」
「でも、だからと言ってそれを理由に負けたなんて言い訳は出来ないからね!」
きっちりと点を入れられ、ヴァレーリヤが苦い顔をしてしまうが、アルテミアは前向きに捉えて次なるラリーを制しようと集中する。
「胸もあるし足も綺麗だし……ちょっと凹んできました」
なお、ゼファーの隣では、ルル家がまたもテンション下降気味になっていたようだ。
「って、おーい。ルル家??」
「確かに、身長が高いと色々と便利だものねぇ、羨ましい、わねっと」
ここはアルテミアがサーブ。
ゼファーとなんとかモチベーションを上げるルル家が無難に返す。
「足の長さで負けているなら、こっちは機動力でカバーさせてもらうわ、よ!」
走るアルテミアがボールに追いつき、蹴り上げてトスを上げると、ヴァレーリヤが高く上がったボールを見上げて飛び上がる。
「これなら如何ですこと!?」
彼女はオーバーヘッドで蹴り返し、ティーンズペアのコートへと見舞ってみせる。
しかしながら、黙ってやられてはいないとルル家は気を取り直して次なるラリーに臨む。
「受けよ、拙者の爆発力!」
多重銀河分身したルル家はフェイントも交えながら、ここぞと宇宙力を発揮して。
「我がCT(宇宙力)を見よ! 銀河旋風シュート!」
高いクリティカル値を持つルル家の渾身の一撃は見事に敵コートへと突き刺さり、すぐさま点差をなくしてみせた。
大人ペアも持ち直したことで3セット目も互いに譲らず、デュースへと持ち込む接戦に。
だが、うまく1点をリードしたティーンズぺアがこの機を逃すまいと、ゼファーが動く。
(此ればかりは使うまいと思っていたけれど奥の手よ)
彼女は相手コートへとボールが言ったタイミング、明後日の方角を指さして。
「あっ! 見てっ! 向こうの海の家の看板! タダ酒が飲み放題って書いてあるわよ!!」
これには、酒好きなヴァレーリヤが黙っておらず、ゼファーのさした方向をきょろきょろと見回して。
「えっ、タダ酒!? どこどこ、どこですの!?」
「ちょっ、ちょっとヴァレーリヤさんよそ見したら!?」
もはや意識がコートにはないヴァレーリヤをアルテミアが正気に戻そうと呼びかけ、なんとかラリーは続ける。
「よっしゃ、この隙に行くわよルル家!」
「流石です、これで決めましょうゼファー殿!」
相手の弱点を的確についた頭脳プレイを見せたゼファーを絶賛し、ルル家は呼吸を合わせようとする。
2人は跳び上がり、同時にボールへと蹴りかかる!
「これが! デュアルノヴァストライク!」
「何か凄いキーック!!」
微妙に協調性に欠けたゼファーと息の合わぬ叫びこそあれ、ボールをけるタイミングはぴったり。
「って、二人同時に!? そんなのアリなの!?」
剛速球となって帰ってくるボールの正面にいたのはアルテミア。
「きゃぁッ!?」
受けそこなった彼女は大きく吹き飛ばされてしまって。
「なんで、なんで私ばかりこんな目に遭うのよぉ!!!!」
ここまで溜まった怒りをぶちまけたアルテミアは、蒼炎を纏った強烈なレシーブを行う。
だが、僅かにティーンズペアのコートのラインを出てしまい、これにてゲームセット。
「オオオオオオオォォ!!」
ティーンズペアの勝利が決まり、観客が一斉に歓声を上げたのだった。
●
結局、ティーンズペアが2対1で大人ペアを下し、奉納蹴鞠は終了する。
「いや、一時はどうなる事かと思いましたが」
汗を拭う神主光太郎は心底ほっとした表情で、競技を終えた4人に礼を述べる。
「さて、言い出しっぺはそちらですので、しっかりと履行していただきましょう!」
ルル家はどんと胸を張る。大人チームが負けたら、ヴァレーリヤは溜まってる家賃払えるまでルル家の領地で強制労働の約束だ。
「こ、この卑怯者ーー!! 武芸者とあろう者が、そんな手を使っても良いんですの!?」
ただ、そんな中でもヴァレーリヤは叫び続けて。
「やり直し! やり直しを要求致しますわー! ……ああ、アルテミア何をしますの!?」
「はいはい、手を煩わせないでね」
ヴァレーリヤ係に任命されたアルテミアが自らの処遇に割り切りを見せつつも、叫ぶヴァレーリヤを引きずっていく。
あくまで監視役なので、アルテミアに労働の義務はないとのこと。どれだけの期間行うかが分からないが、気持ち程度には楽にその役目を遂行できそうである。
「思ったよりは楽しかったわね」
「また機会があれば、いつでも声をかけるのです!」
まんざらではない気分のゼファーが心地よい勝利の余韻に緋たる。
ルル家は何かあればローレットか幻想の自分の領地へと声をかけるよう、神社の関係者や観客へのアピールも忘れないのだった。
かくして、いつも以上に盛況で終わった神楽神社の奉納蹴鞠。
神社の関係者は嬉々として、来年もイレギュラーズに頼もうと語り合っていたそうである。
成否
成功
MVP
状態異常
なし
あとがき
リプレイ、公開です。
MVPは勝者ペアから身体能力を活かしたプレイを見せたあなたへ。
今回はリクエスト、並びにご参加、ありがとうございました!
GMコメント
イレギュラーズの皆様こんにちは。GMのなちゅいです。
今回はリクエスト、並びに挙手に対するご指名ありがとうございます。
●目的
蹴鞠を奉納すること。
●概要
豊穣、神楽神社の催しとして行われる奉納蹴鞠に参加します。
4名の参加者で2名ずつのペアに分かれ、砂浜で蹴鞠を行います。
ビーチバレーを思わせる状況ですが、ここは豊穣の地。
ユニフォームは巫女服(今年の水着)。蹴鞠ですので、足のみ利用可能です。
奉納蹴鞠は全力を尽くさなければ神に届きません。
全力を尽くして勝利を目指してください!
基本ルールはビーチバレーに準じます。
ボールへの接触は3回までで相手コートに返します。
風向きなどの都合で、合計点数が7の倍数ごとにコートチェンジ(3セット目は5の倍数ごと)。
2点リード21点先取で1セット取得(3セット目は15点先取)。21点を超えて2点の点差がない場合はデュースとして2点差がつくまで継続。
3セットのうち、2セット先取で勝利です。
●情報精度
このシナリオの情報精度はAです。
想定外の事態は絶対に起こりません。
それでは、よろしくお願いいたします。
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