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シナリオ詳細

ハイエスタの血闘

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●ハイエスタの名もなき村にて
 人は生まれなんて選べない。
 その村では、大人になるのにも力が必要だった。

 ハイエスタの一部の村では成人と同時に勇者として扱われる。つまりノーザン・キングスの一員として鉄帝国との戦いに身を投じることになる。
 しかし誰もが勇者になれるわけではない。

「今年は八人か。少ないな」
 勇猛な戦士を何代にもわたって輩出してきたハイエスタのとある村でのこと。村長は八名の若者を鷹のような眼光でえぐるように見た。今では腰も曲がった村長もかつては勇猛な戦士だった。
 若者達は間もなく成人を迎える。つまり戦士候補、未来の勇者である。
 卵といっても皆がスコットランドの英雄譚に登場しても不思議ではない佇まいである。無駄なものがそぎ落とされた均整の取れた体躯、冷たさを帯びた鋭い眼光は猛獣というよりは猛禽を髣髴とする。
 稀にみる年だ。いい奴らが揃っている。村長は妙案を思いついた。

「お前ら、ローレットって知ってるか?」
 村長の問いに若者達は首を横に振る。
「知らねぇか? なんでも屋らしいが鉄帝と渡り合う奴らを大勢用意できるらしい」
 どうやら村長は自分の村の若者達に過酷な試練を与えたいようだ……。

●ローレットにて
「つまり勇者の卵達と、一対一の決闘をして欲しいそうだ」
 そう述べた『黒猫の』ショウ(p3n000005)は、集まったイレギュラーズ達に仕事の詳細を語りだす。
「ハイエスタの全ての村がそういう訳では無いようだが、依頼主の村では毎年、成人の儀式として一対一でやり合うらしい」ショウは続ける。

「使う獲物は自由。一対一が原則。勝ち抜き戦ではなく、一人一回の戦いだ」
 つまりローレットには決闘相手を八人用意して欲しいということだ。
 イレギュラーズの誰かが問う。その儀式は例年だと近隣の村同士でやるのではないか、なぜ今年に限ってローレットに依頼が来たのか、と。

「あのハイエスタだ。野心、自立心、独立心。下剋上でもなんでもありだろうからな」
 ショウは意味深な笑みを見せるに留まった。

「そうそう、大事なことを忘れていた」
 儀式に生き残れば戦士として認めてもらえるそうだが……逆にいうと生き残れない若者も少なからず、いるらしい。
 もし対戦相手を殺めてしまっても不問だ。ショウは説明を結んだ。

GMコメント

日高ロマンと申します。よろしくお願いいたします。

ハイエスタのとある村にて、成人の儀式という名の戦いに参加します。(戦闘シナリオです)

●依頼成功条件
 ・ハイエスタの若者との戦闘(八ラウンド)
 ・イレギュラーズは一人ずつ、かつ一人一回しか戦わないこと
 ・対戦者である八人全員を戦闘不能※にすること
 ※殺害、失神、戦意喪失など

●情報確度
 このシナリオの情報精度はAです。
 想定外の事態は絶対に起こりません。

●若者達について
 ・八人の戦闘力は同等です
 ・若くても非情の戦士です(何人かは人を斬ったことがあります)
 ・ティーンエイジャーです
 ・獲物はクレイモア(両手剣)しか使いません(村の伝統)
 ・雷神の末裔であることを誇りに思っており自分から降参はしません
 ・戦闘中に話しかけたり名前を聞くことはできますが返答は期待できません

●その他補足
 ・全八回の戦闘順はイレギュラーズ側で指定可能です
 ・イレギュラーズ側が使用する武器は不問です
 ・村には到着しており一人目と戦闘するところからシナリオはスタートします
 ・時間帯は昼で明かりには困りません
 ・戦闘は闘技場で行われます。闘技場は十分な広さがあり、特別なギミックはないものとします

  • ハイエスタの血闘Lv:1以上完了
  • GM名日高ロマン
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2020年09月19日 22時15分
  • 参加人数8/8人
  • 相談6日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ルウ・ジャガーノート(p3p000937)
暴風
ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ(p3p001837)
願いの星
エッダ・フロールリジ(p3p006270)
フロイライン・ファウスト
メリー・フローラ・アベル(p3p007440)
虚無堕ち魔法少女
蒼海・紋華(p3p007679)
青の守護者
虚栄 心(p3p007991)
伝 説 の 特 異 運 命 座 標
メアリー=バーン=ブライド(p3p008170)
燃やすのは任せて
ローザ・グランツ(p3p009051)

リプレイ


「ようこそ、戦士の村に」
 村長はイレギュラーズの面々を舐めるように見た。目には衰えぬ眼力が宿る。昨日のことである。
 一晩休んで皆のコンティションは整っている。
 儀式の日は快晴だ。空には雲一つなく、陽の光が肌を焼く。間違っても『雨』が降るなんて誰も予想しない陽気だった。
 村の中央には石造りの円形闘技場があった。儀式の舞台である。闘技場には屋根が無く、野ざらしではあるが状態は悪くない。定期的に整備されているのかもしれない。
 闘技場を囲む観客はなく、八名のイレギュラーズと八名の若者が闘技場を挟み向かい合うだけだ。

「儀式に参加する皆様の名前を聞いてもよろしくて?」
 『祈りの先』ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ(p3p001837)は村長に問う。
「名は明かせない。一人前の戦士となるまで名乗ることは許されん……しかしそれも不便か」
 村長は逡巡し、
「エーン、トワ、スリー、ファウア、フェイヴ、サクス、スィーヴェン、エフの順だ」そう答えた。
「あん? 数字かなんかか?」
 『暴風』ルウ・ジャガーノート(p3p000937)は首をかしげる。
「うむ。それで十分だろう」
 村長は戦士達に『番号』を付けると、儀式の開幕を高らかに宣言する。
「それでは儀式を開始する。若造ども心してかかれ」
 いよいよ血闘が始まる。


「私からですわね」
 一番手のヴァレーリヤが舞台に上がる。対峙する戦士はエーンだ。
「ところで村長」
 ヴァレーリヤは不意に振り返る。
「貴方達の儀式に協力しますわ。私達が勝った時の決着の仕方ですけど」
「ふむ」村長は腕を組み横柄な態度で耳を傾ける。
「私達に一任していただけますわね? 貴方達の流儀に口を出すつもりはないけれど、そのくらいの権利は私達にもあるでしょう?」
「勝者の言葉に従うのもよかろう」
 ヴァレーリヤは納得したように小さく頷き、対戦相手と向き合った。

「まずは小手調べ」 先手はヴァレーリヤだった。
 聖句を唱えメイスを振るうとエーンは弾き飛ばされ体制を崩す。ヴァレーリヤは好機とみて追撃を仕掛ける。
「ヴィーシャ、油断するなであります」
 『フロイライン・ファウスト』エッダ・フロールリジ(p3p006270)が外野からエールを飛ばす。わかってますわ。僅かに口角が上がる。 
 二手、三手打ち合った時点で大勢は概ね決まっていた。ポテンシャルはあれど実戦経験はほぼ皆無。そして短射程の剣技一辺倒では彼女の牙城は崩せない。
 ヴァレーリヤはメイスを振るうと再びエーンは態勢を崩し、好機が訪れる。
「どっせえーーい!!!」
 強烈無比な突撃を受けたエーンの限界が近いのは誰の目にも明らかだった。エーンは苦悶の表情を浮かべる。
「本当の名前を聞いてもよろしくて……?」
 問いかけるとエーンは何かを口にしたが彼女にしか聞こえなかった。
「そう、良い名前ですわね。貴方の家族が掛けた期待と愛情が、感じ取れるような」
 ヴァレーリヤはメイスを構え直す。
「クラースナヤ・ズヴェズダーの司祭、ヴァレーリヤ。この戦いが貴方にとって乗り越えるべき試練であるのならば、謹んでその役目を引き受けましょう」
 エーンは死を覚悟したがヴァレーリヤが放つ最後の一撃は彼女の温情が込められていた。
 お疲れ様でした。またいつか戦える日を楽しみにしていますわね? そう胸に秘め口にはしない。

「おいこっち向けであります」勝者に向かってぴょこぴょこと跳ねて歓声をあげるのは。
 ヴァレーリヤとエッダはハイファイヴをかわす。
「貴女も遅れを取らないように。一応、応援はしていますわ」
 態度はぶっきらぼうながらも、口元には微笑みをたたえていた。


「次は俺だな!」
 ルウは見事な跳躍で舞台の中央に躍り出る。その姿は獣のごとし。
「なんと見事な肉体」村長は思わず膝を打つ。
「儀式だがなんだか知らねえが、俺の力を見せつけてやろうじゃねえか!」
 仁王立ちのルウにトワは最初から萎縮気味であった。
「では、はじめ」
 村長の合図で二戦目の火蓋が切って落とされた。

 トワは先手を取り斬撃を打ち込むも圧倒的な体躯を誇るルウに対して力で勝負するのは分が悪い――。
 実戦を知らぬ青年には選択肢が限られてしまう。やはり場数が物を言う。
「甘いぜ! より強い力でねじ伏せてやるまでだ!」
 ルウは次の一手に集中し、渾身の一撃を放つ。トワは大きくぐらつくも踏みとどまった。彼女が持つ巨獣の大剣からすると、トワのクレイモアは小剣のようだ。剣が砕かれなかっただけ運がよかったかもしれない。
 彼女は続いて必殺のぶちかましを仕掛けるつもりでいたが、トワ青年の能力を見抜いて戦術を変えた。これ以上の力比べは無用であると判断したのだ。
 ルウは得物をしまい、代わりに拳で殴り倒し、戦いの幕を下ろした。
「十年早いぜ。生き延びてせいぜい腕を磨きな」
 トワは微かに呼吸をしているようだ。彼女の岩のような拳は得物と呼んでも過言ではない。

 ルウは舞台上から村長に呼びかける。
「儀式がどれほど大事なもんかはよそ者の俺にはわからんが、命あっての物種だぜ」
「二戦目もあえて生かしたと。強者の情けか」
「他意はない。俺からはそれだけだ。後よ、」
 リベンジマッチならいつでも受けるぞ、ってあいつに伝えておいてくれ。俺が万全の状態なのが条件だがな。
 ルウはそう言い残し、獣のごとき跳躍で舞台を去る。


「三番手はわたしね。よろしくね」
 『躾のなってないワガママ娘』メリー・フローラ・アベル(p3p007440)は満面の笑みで舞台に立ち、愛想を振りまいた。
「村の若者達よりも更に若い娘とは。しかし中止にはできん。三戦目、はじめ!」村長は戸惑いながらも三戦目を開始した。
 メリーと対戦するのはスリーだ。他の戦士たちと剣の腕に大きな違いはないが最も頭が切れるのは彼だろう。
「わたし、タイマンは強いのよ。余裕があったら手加減してあげるけど、殺っちゃったらごめんね」
 メリーは無垢な表情でそう言った。スリーは僅かに躊躇したが、剣を構え猛然とメリーに立ち向かう。
 メリーは見た目は無手である。そして自分より頭一つ以上も小さい少女である。そんな彼女に剣を振り下ろすのは並の精神力ではできないことだろう。彼も覚悟を持って挑んでいるということだ。
「わたしはあなたへの攻撃と自分の回復を同時にできるのよ」
 その前に……。至近距離まで接近したスリーをノーモーションで弾き飛ばした。残念でした。メリーはぺろりと舌を覗かせた。

「そうそう、わたしに触れると怪我をするのよ。気を付けた方がいいわ」
 メリーは自身への攻撃を反射する力も有する。
 距離を取れば神秘の力で命を吸われ(しかもメリーは回復する)接近すれば弾き飛ばされる。彼女に一撃を加えられたとしても反射の力で自らが被害を被る。スリーは既に完封されていた。
「そろそろ?」
 メリーは攻撃の手を弱めた。
「ふふ。よかったわ。余裕があるから、あなたのことを殺さないですみそうよ」
 彼女の指輪が冷たく輝いた。
 冷たい石畳みに伏したスリーは虫の息だったが死んではないはずだ。
「終わったわ。わたしの勝ちよ」
 メリーは皆に向けて舞台上から満面の笑みを振りまいた。
 メリーは舞台を降りる直前、床に伏すスリーにだけ聞こえるように言った。
「殺した方がよかったかしら? ここまで誰も死んでないから。もう少し盛り上げた方がよかったかしら? どうかしら?」
 メリーはいたずらっぽく舌を覗かせた。


「四番手は自分であります」
 エッダの立ち振る舞いには気品が漂う。
「ほう。どこかの国の騎士か」村長はエッダに問う。
「当方、鉄帝の騎士でありますが」
「面白い。ファウアよ。お前が後に戦争をするのはこちらのお嬢さんの国だ。覚えておくがよい」
「笑止。生死をかけた儀式を前にして未来を語るとは?」エッダは静かに言い放つ。
「その通りじゃな」村長は暫し口を閉ざしてから、改まって四戦目開始の合図を出した。

「青二才はとっとと、かかってくるであります」
「!!」
 挑発にかかったファウアは接近戦を仕掛ける。エッダの狙いであった。意図した挑発にファウアは思うように乗ってくる。
「基本は素手でありますが」
 エッダは次の策に移行する。彼女の手に虚無の剣が浮かび上がる。
「覚悟するであります」
 その斬撃一つでファウアの体は悲鳴を上げる。ただの斬撃ではない。開幕からの仕込みが効いたのだ。
 ハイエスタ――雷神か。フロールリジたる私の前でその名を呼ぶ以上、完璧な勝利を期したい。
「当方、不殺の技は持ち合わさないであります。お互い覚悟を持って臨んだ一戦故……」
 エッダは裡に秘めた憤怒の感情を解放した。
「あら、出し惜しみしないのですわね」
 戦闘を終えたヴァレーリヤが外野から合いの手を入れるもエッダは気が付いていない。次の一手に集中しているためだ。
 エッダは決めに行く。内なる力を魔力に変換し相手に叩きつける大技だ。一撃を受けたファウアは当然のように崩れ落ちた。
「立ち上がれないのあれば、これ迄でありますな」
 エッダは舞台から降り、ヴァレーリヤとハイファイヴをかわす。そして会場を離れ一人になる。
 この試練、なぜ我々なので? 最初から戦士を死なせるつもりで? 彼女は思案する。
 戦場で戦士が死を厭い噴気する一番の理由は『戦友の死』でありますよ。ハイエスタはそこまでして鉄帝との戦争に勝ちたいでありますか。


「次は私だ」
 五番手のローザ・グランツ(p3p009051)は得物を手に舞台に上がる。
「鉄帝の兵士か」
「そうよ。通過儀礼だからといって戦士の誇りを汚したくない。手加減はしない」
 ローザは村長にそう告げ、猟銃に銀の弾丸を込める。その手際は彼女が兵士<プロフェッショナル>であることを示している。
 そして対戦相手のフェイヴに告げる。
「その剣が部族の誇りと言うのなら、当然銃への対策も講じてあるのでしょうね?」
 まだだと言うのなら生き延びた後にでも考えなさい。でも、私と戦って生き延びられるかは、わからないわよ――戦闘開始と同時にローザの得物が火を吹く。

 青き衝撃にさらされたフェイヴは必死に間合いを詰める。彼にはそれしか選択肢がないのだ。
 フェイヴは意地を見せ接近戦に持ち込み斬撃を見舞う。だが直ぐに弾き飛ばされ再び間合いは不利になる。剣士が自分より技量の高い銃使いに勝つのは至難の技だろう。
 剣術の腕は悪くないわね。ローザは加減するつもりは毛頭無く必殺の一撃を狙う。対戦相手の実力を認めたからだ。
「その身に刻みなさい。これがゼシュテル兵士の水準よ」
 得意の遠い間合いからフェイヴの体を容赦なく撃ち抜いた。
 さて、生きてるといいわね? 崩れ落ちたフェイヴを一瞥してからローザは舞台を降りる。
「とどめは刺さんのか」村長が問う。
「普通ならアレで死ぬはずだから」ローザは舞台を降りるまえに足を止め、
「ザーバ将軍たちは私たちの比ではない強さ。上を目指すならもっと鍛えなさい」
 村長にそう告げる。
「覚えておこう」
 村長はローザと目を合わさずにそう言った。


「次は私ですね」
 六番手は『焦心』メアリー=バーン=ブライド(p3p008170)。
「まぁ、ドレスね」メリーは歓声を上げ、
「赤いオーラみたいのは炎だよね?」ローザもメアリーの入場に注目する。
 炎を纏う花嫁衣装に燻る炎の鎖鋸。敗退した村の戦士達も注目し始める。白と赤のコントラストに目を奪われる。
 対戦相手のサクスも見とれているのか、ぼんやりしている。
 だが、晴れ姿<花嫁衣装>で晴れ舞台に上がる彼女のエスコート役は村の若造では不釣り合いであろう。
「さて始めましょうか。優しく燃やして差し上げます――じっくり強火で」 

「どうぞ、お手柔らかにお願い致しますね?」
 言葉とは裏腹に彼女を包む炎の勢いが増した。
 先手はメアリーが取った。鎖鋸に纏わせた炎がサクスを包み込む。
 更に、伝承から生じた業炎は彼の足に絡みつき自由を奪う。このままだと彼はいずれ焼け死ぬ。サクスは無我夢中で斬りこんでくる。
 メアリーは彼の必死の斬撃を受ける。だが、彼女は耐えるだけでいいのだ。炎が全て解決する。何もせずとも待つだけでサクスは死に向かい続ける。
「卑怯? だなんて思わないで下さいね? 私見ての通りの花嫁ですし……それに精霊種ですので」
 私の流儀でやらせて頂きますので悪しからず。メアリーの言葉は燃え続けるサクスに届いていないだろう。
 サクスは何度か斬撃を繰り出すもメアリーを追い詰めるには至らない。そして彼は自分の時間を使い切ってしまった。
 不意にサクスの体から炎が消えた。同時に彼は崩れ落ちる。僅かに意識はあるようだ。
「優しく燃やして差し上げるっていったでしょう? 命を奪うつもりはありませんよ」
 メアリーはこの一戦をエンターテイメントのように彩った。花嫁は歓声に包まれて優雅に舞台を降りる。


「次はウチじゃ!」
 『喧嘩上等』蒼海・紋華(p3p007679)は勢いよく舞台に駆け上がる。
「……しようや」
 紋華は呟いた。
「何と申したか」
 村長は問う。
「早く喧嘩しようや、って言ったんじゃ!」
 紋華は舞台下の面々を指し、
「海洋は蒼海組の一人娘、蒼海紋華じゃ! ウチの相手はどいつじゃ?」
 青の守護者または青の担い手。ステゴロ上等、喧嘩上等。紋華の見事な口上に視線が集まる。
「これは勢いがある……七人目はスィーヴェン」
 村長に呼ばれた青年は紋華の前に立つ。彼は特注の巨大なクレイモアを愛用する。
「ほう、大きな剣じゃな。ウチの得物はこの拳じゃ」紋華は口角を上げ、自慢の拳を見せびらかす。
「ちゅうわけで喧嘩しようや」紋華は拳を打ち鳴らし血戦の幕が上がる。

 七戦目が最も苛烈な打ち合いとなった。
 紋華が気合を込めて殴りつければ、スィーヴェンも剣を掲げて必死に食らいつく。
 鼻っ柱に拳を叩きつけてもスィーヴェンは諦めずに立ち上がり紋華食らいつく。
「それぐれぇで死ぬほどヤワじゃねぇじゃろ? まだ喧嘩は始まったばかりじゃ」
 顔面が変形しつつあるスィーヴェンは、微かに微笑んだように見えた。
 これが肉体言語、拳語りというものかもしれない。
 スィーヴェンは引くことは許されない。つまり自分が死ぬか相手を殺すまで戦いを続けなければならない。
「これは喧嘩じゃ。喧嘩は相手の命まで奪わんじゃろ?」
 紋華は最後の一撃を加減して打ち込んだ。倒れたスィーヴェンは一度片膝を立てて起き上がろうとしたが、再び崩れ落ちて失神したようだ。
「あえてうちの若い奴に合わせたというのか?」
 村長は紋華に問う。
「いいや、喧嘩はいつだって全力じゃろ?」
 紋華は満足げな笑みを浮かべた。


「私がトリね」
 『伝 説 の 特 異 運 命 座 標』虚栄 心(p3p007991)が舞台に上がると村長の顔色が変わった。
「私は伝説の特異運命座標」
 ただの純種の格の違いってやつを見せつけてやるわ。心は不敵に笑う。
「これが伝説の」
 村長は心に畏怖の念を抱いたがその理由は分からない。

「最後はエフじゃ」青年は大剣を手に心の前に立ちはだかる。
 村の戦士達はここまで全敗であり、自分が最後の壁であることを意識してか青年は落ち着かない様子だった。
「あなたまで負けたら全敗ね」心は念を送る。
 ――私に勝つ必要は無いのよね?
 ――失神したフリをしてくれる?
 ――嫌なら死んでもらうわ。生きるか死ぬか自分で決めなさい。
 エフは応えず斬りこんでくる。
「怒ったの? そう、いいわ」
 心はアンデッドのなりそこないを召喚し盾として配置する。
 次に、手心を加えた術を打ち込むもエフは構えを解かず、むしろいきり立った。彼は降参のチャンスを不意にしたのだ。
 いいわ――本気で殺すわ。
 エフは必死に剣を振るうも、アンデッドが肉の壁となり思うように通らない。
 心は赤き魔棘を生み出しエフに撃ち込む。エフは全身から出血し徐々に体力を奪われていく。
 それからも延々と魔棘を撃たれ続けエフは多くの血を失った。得意の斬撃も肉の壁に阻まれる。長期戦にはなったが心が剣士の持ち味を上手く封じた一戦となった。
「そろそろね」
 随分と手間取らせてくれたわね。エフが力尽きる前に心は再度、念を送る。
 ――もう一度チャンスをあげましょう。私の足にキスをして一生涯の忠誠を誓いなさい。それで命だけは助けてあげるわ。
 エフは力なく俯いたままで応じなかった。
「そう」
 ただの純種の分際で特異運命座標に逆らうからよ。心は剣を高く掲げ――エフの首を目掛けて勢いよく振り下ろした。


 儀式という名の決闘はイレギュラーズの全勝で終えた。何名の若者が命を落としたかは分からない。
 儀式を終えたイレギュラーズは各人各様の行動を取る。
 墓の用意を手伝う者。再戦の誓いを立てる者。敗者の助命を進言する者。

 生き残った若者はこれからハイエスタのためにノーザン・キングスのために研鑽を積み続ける。
 鉄帝とノーザン・キングスの戦争は続く。いつの日か戦場で村の戦士達と再開するかもしれない。その日まで壮健なれと誰かが言った。

成否

成功

MVP

ローザ・グランツ(p3p009051)

状態異常

なし

あとがき

お疲れさまでした。依頼は無事成功となりました。

戦闘プレイングは皆さま、素晴らしいものでした。
よって戦闘パート以外のプレイングにて、未来の敵対国ながら敵に塩を送ったローザ様をMVPとさせていただきました。

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