シナリオ詳細
ノーザン・キングスをカモにする戦争屋の始末依頼
オープニング
●キャラバン制圧戦の背景事情
軍事産業には戦争屋(Warmaker)という生業がある。戦争行為により発生する金銭的利益や刹那の快楽を享受する為にあえて紛争を誘発する業者を指す用語である。抜本的に彼らの商売は倫理観の欠如が顕著であり、千金を掠め取る為であれば非合法活動すらも辞さないという。
例えば、先日のヴィーザル地方で勃発した獣人族によるキャラバン制圧戦。当時の事件には戦争屋の影が背後に存在していたという黒い噂もあり――
――ノーザン・キングスの紛争は素晴らしい。奴らは金の卵を産む鶏だ。今後も引き続き、彼らを顧客にする事を我が社の基本方針としよう……。
ギアズ・メカ・ファクトリー社長のギアは工場で製造中の機体を眺めてご満悦であった。
先日、獣人族の熊族相手に鋼熊機(メタルベア)を売り捌き大儲けしたからである。
「社長、新兵器の製造工程が完了しました。いつでも出荷可能かと思われます」
技師から納品報告を受けたギアは完成具合を確認する為に検査する。
どうやら各機体は申し分ない程に仕上がっていた。
「うむ。先日の熊族に続き、犬族、兎族、鳥族から依頼があった機体もいよいよ出荷時か。将来的には戦闘民族や高地部族といった他のノーザン・キングスの勢力にも営業を仕掛けたい所だな」
「しかし、社長? もしかして、此度の戦争をノーザン・キングス側が勝利するとお考えでしょうか?」
側近の社員が慇懃に尋ねるとギアは腹を抱えて爆笑する。
「ノーザン・キングスが『鉄帝』に勝てる訳ないだろう? ヴィーザル地方の奴らはカモとして最高なのだよ。彼らは近々敗戦するだろうが、それまでに焚き付けて我が社の製品を大量に売り込むのだ」
そもそも彼ら戦争屋は、思想や理想があって紛争の幇助をしている訳ではない。
純粋に金脈を掘り当てる手段を模索した結果、獣人族に兵器を販売しているだけなのだ。
「ところで、先日のキャラバン制圧戦は残念な結果でしたね。いや、熊族が敗北した事ではありません。我が社のブランドカラーに傷が付くのではないかと心配しております」
別の側近が苦言を漏らすと、ギアは杞憂に過ぎないと高慢な態度で返答する。
「たしかに、我が社の製品を誤用して敗北した熊族は愚かだったな。だが、我が社の極秘活動は未だにバレていないので他の獣人族には順調に兵器が売れている。しかも型番等に細工がしてあるから、余程の事がない限り、俺らの面が割れる事はあるまい」
●ギアズ・メカ・ファクトリー奇襲作戦
「先日のキャラバン制圧戦の件っすが、貧乏な熊族があんな高度な機体を二機も引き連れていたのが不自然という話もあったっす。それで改めて調査したら、どうも背後に戦争屋がいたっすよ……」
件の戦について、あなた方に引き続き依頼の相談を打ち明ける情報屋は『パサジールルメスの少女』リヴィエール・ルメス(p3n000038)だ。
「あのね、実は私達、前回の戦闘後に機体の破片や型番情報も持ち帰って専門家に鑑定してもらったわ。すると、機体のパーツの出所情報や型番情報が偽造されていたりするから、慌てて再調査を開始したのよね」
前回戦場にいたチェルシー・ミストルフィン(p3p007243)が情報屋に続き解説する。
実際の所、リヴィエールに再調査を依頼したのはチェルシー本人である。
「あたしらの再調査の結果、『鉄帝』の東部にあるギアズ・メカ・ファクトリーというロボット製造工場に行き着いた訳っすが。これがまた怪しさ満点っす。表向きにはオーダーメイドの便利ロボットを製造している会社っすけれど、兵器を密造して獣人族に売り捌いているという噂もあったっすよ」
今度はリヴィエールと入れ替わりで晋 飛(p3p008588)の方から調査報告が開示される。
彼も不審に思う事があったらしいので調査班に加わっていたのだ。
「おう、俺はその問題となる工場へ偵察に行って来たぜ。で、表向きは何て事ねぇ普通の工場だ。だが内部が、ちと複雑な構造でな。工場の隠れ場で機体を密造していやがったぜ」
そして、これらが主要な敵機の情報であると報告データを図解と共に提示した。
犬型、兎型、鳥型等といった機体には、何処か前回の鋼熊機(メタルベア)の面影がある。
「無論、その問題となる工場の裏は取ったっすよ。社長であるギアという男は、その界隈ではそこそこ名の知れた戦争屋っす。今回のヴィーザル地方の件でも暗躍しているっすね。
ローレットとしてもこの件は見過ごせないという事で、彼を討伐あるいは逮捕する事にしたっす。要するに、きな臭い兵器を隠し持つギア達に奇襲を仕掛けるって話っすよ」
以上の様な経緯から、本件はギアズ・メカ・ファクトリー奇襲作戦の依頼となる。
ヴィーザル地方の紛争が戦争屋によって激化される前に悪党共を排除して欲しい。
- ノーザン・キングスをカモにする戦争屋の始末依頼完了
- GM名ヤガ・ガラス
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2020年09月24日 22時30分
- 参加人数8/8人
- 相談7日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
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参加者一覧(8人)
リプレイ
●奇襲
その日、ギアズ・メカ・ファクトリーの人々は何気なく平常業務に取り組んでいた。
まさか会社の裏の顔を暴いた特異運命座標が奇襲を仕掛けて来るとは思いも寄らずに。
「俺はヴィーザル地方に領地を構える者でな。アンタらのような非合法な戦争屋には迷惑していたところだ。ここでブッ潰させてもらおうか」
『聖断刃』ハロルド(p3p004465)が聖剣を警備員に突き付けて宣戦を布告する。
「何の事だ? お前の方こそ逮捕するぞ……」
「不審者」であるハロルドに職質をする警備隊の方こそギアの配下達である。
警備隊が警棒を抜刀して聖剣使いを包囲するが、彼は抜刀せず発煙筒を投擲した。
「ほら、毒ガスだ」
発煙筒から危うい深紅色の煙が立ち上がる。
ハロルドのハッタリに騙された警備隊は一目散に逃走した。
その後、ハロルドは方々を駆け巡って毒々しい煙の発煙筒を所々に投擲した。
「ふむ、こんなもんか? 陽動班も潜入班も上手くやれよ?」
毒々しい煙が上がった工場正面では、厳つい黒服の強面男が仁王立ちをしていた。
彼の眼光からは険悪な殺気が放たれている上に鉄パイプで武装している。
「カチコミだ! 死にたくねぇ奴は壁際で伏せろ! 動いたら殴る!」
任侠本場である『義に篤く』亘理 義弘(p3p000398)が組を潰す勢いで特攻する。
義弘の気迫に心身が硬直した社員や技師達は従わざるを得ず壁際に伏せる。
「よし、そのまま縄に付け。仕事されて、敵が増えるのも面白くねぇしな」
義弘は速攻で降参させたギアの配下達を一人ずつ縄で縛り上げた。
「さて、今回の仕事は、兵器密造の戦争屋をぶっ飛ばす事か。前回の依頼から、匂う奴が見つかったようだが……。戦争を広げられて、皆、迷惑してんだ」
工場表を義弘が制圧すると同時に工場内部で破壊工作が始まった。
精悍な鉄騎種の大男が機械の呪腕を振るい内部を破壊して回る。
「今日はハデにアバレるか! まずは設備をぶっ壊して嫌がらせしてヤルよ!」
『業壊掌』イグナート・エゴロヴィチ・レスキン(p3p002377)は念入りに工作をする。
表向きの設備でも電力や燃料や空調は密造室に繋がっている事だろう。
故に工場内部の配線や配管等の設備を壊して回れば敵の戦力を大幅に削げる。
イグナートが天性の腕力(シェイクハンド)で完全に叩き壊す前に敵共が正体を現した。
交戦になるとイグナートが睨みを利かした低い声で怒鳴った。
「こないだのイッケンといい、戦争屋が元気だよね最近。メイワクだからここで根っこから引き千切っておこうか!」
インフラを優先的に破壊するイグナートに対して、旅人の美少女は扉や通路を狙って派手に暴れていた。
「迎撃戦力が出てくる場所を先んじて潰しておければ、増援の数も絞れて良いかな、と」
『ジョーンシトロンの一閃』橋場・ステラ(p3p008617)が小柄な体格を上回る巨大なZ.A.P(試作高火力型)を振り回しながら目ぼしい箇所を重点的に破壊する。
騒動に反応した警備隊や敵機が少女を取り囲むと彼女は開戦を宣言した。
「あなた方は戦争屋、いわゆる死の商人になるのでしょうか。つまり遠慮なく叩いてしまっても良いのですね?」
工場正面が制圧と破壊を受けて、いよいよ工場全体が騒乱に陥る。
裏口から逃げ惑う社員が視界に入るとAG(アームドギア)の眼光に鋭さが増した。
「よう、別の支部から救援にきたモンだが、社長が脱出できそうな避難経路はあるかい?
ここは俺に任せてお前はとっとと逃げな」
味方のふりをして敵を欺く策士は『朱の願い』晋 飛(p3p008588)である。
相手が獣耳女性である為、腕力に物を言わすよりも漢気で「お前を守る」と口説いてみた。
救助の鋼鉄機パイロット、しかもカリスマ将校を装う飛に彼女は案外騙されてしまう。
「なるほど……。工場側面にそんな避難経路があったのか? へへっ、ありがとな。これ、俺の名刺だ。あと、九頭龍社製スパム缶もやる。パンに挟んで食うと美味いぞ」
飛は事前に偵察済みなので避難経路が虚偽ではないと判断したようだ。
時に彼は今回の一件に憤慨していた。
「へっ、あの機動兵器の出所を調査したら、やーっぱこっちにも死の商人って奴がいんだねぇ。俺ぁ戦いは好きだがそれを起こして結果だけを掠め取ってほくそ笑んでる奴ら……デェ嫌ぇなんだよ!!」
工場正面の攪乱と制圧と破壊が頼もしい程に過熱しているようだ。
ハロルドの発煙筒から行動開始の合図を受けると潜入班も仕事に取り掛かる。
「いよいよ潜入の時ね? 例の香水は貴女も振り掛けたわね?」
『魅惑の魔剣』チェルシー・ミストルフィン(p3p007243)が潜入班の先頭を切る。
新月の魔力が込められた香水を自身に振り掛けると不思議と匂いや気配が希薄となる。
事前調査の段階から尽力していた彼女は何としてもギアを逮捕したいようだ。
「はい。シュピも準備は万端です。ところで、地図はあるでしょうか?」
同班の『シュピーゲル』DexM001型 7810番機 SpiegelⅡ(p3p001649)が魔力香水を自身に振り掛けながら質問する。
実の所、彼女は今回の件が他人事ではない為に作戦に参加したようだ。
(この身もまた、戦争によって産み出され、そして不要となった個体ですゆえ。……だからと言って何か思うこともありませぬが)
「地図よね? ……はい、こんなこともあろうかと! 事前に偵察した晋から預かっていたわ」
チェルシーが問題の地図をSpiegelⅡに貸してあげた。
そしてSpiegelⅡが愛用の電子妖精(ギフト)を召喚して地図を改めて閲覧する。
電子妖精の使役によって工場地図を基に経路の裏取りをさせるのだ。
愛らしく相槌を打つ電子妖精を眺めるとチェルシーが萌えた。
「あら……かわいい妖精ね、貴女に似て」
「ん? 可愛いですか?」
一方のSpiegelⅡは美的感覚に疎い所もあるらしく意外な反応だったようだ。
仲間の侵入を確認するとアルテラ・サン(p3p008555)も別口から潜入を開始した。
「潜入班の最後尾として別経路から侵入する事によりリスク分散ですねぇ」
工場正面の陽動が十分に効いているのでアルテラは案外楽に侵入が出来た。
アルテラは飛から貰った工場地図を両手で広げると戦略眼で経路を読み解く。
「つまり今回は、前回の事件の背後に大きな影があった……という事ですかねぇ。当然と言えばそうですが……いやはや、お金狂いは周りが見えなくていけません」
半ば呆れた様子だが任務に直向きなアルテラは程なくしてチェルシー達と合流を果たす。
では、作戦を振り返ろう。
陽動班がハロルド、義弘、イグナート、ステラ、飛。
潜入班がチェルシー、SpiegelⅡ、アルテラである。
●陽動
工場正面で陽動班が盛大に暴れていると穏健な工場がついに真の姿を現した。
獣人族を象る機動兵器や警備隊が続々と出現して陽動班を撃退するべく迎撃に出る。
「おら、死にたい奴は掛かってこいよ! この俺、神殿騎士ハロルドが直々にあの世へ送ってやるぜ!」
ハロルドが陽動班全体の盾となるべく工場正面中心地に聖剣を構えて陣取った。
後方の鋼鳥機(以下、メタルバド)が砲台と化してレーザーで敵の燃焼に躍起になる。
魔力障壁の盾で防御しながらもハロルドがレーザーを退けて反撃に出る。
「ははははっ! さぁ、死に合うとしようぜ! テメェらごときに俺の翼十字が砕けるか!」
ハロルドの怒号と共に闘気の十字架が両翼を羽ばたかせてメタルバドを強襲する。
翼十字が突き刺さると憤怒が誘発されたメタルバドらはハロルドを標的と設定した。
バードストライクやレーザー照射の距離攻撃がハロルドを幾度も追撃するけれど。
勇猛果敢な壁役であるハロルドのお陰で鳥型の遠距離攻撃はほぼ完封された。
「鳥型共、神殿騎士団の聖剣の雷鎚で裁かれろ!」
一方で聖罰の剣を振り翳すハロルドの落雷でメタルバドが地に堕ちた。
ハロルドが盾役ならば義弘は剣役であるだろう。
最前衛の義弘の前に立ちはだかる敵勢力の数は歴然としていた。
鋼犬機(以下、メタルバウ)、鋼兎機(以下、メタルラビ)に増援のメタルバド。
さらには警備隊も鋼鼠機(以下、メタルマウス)を率いて義弘を包囲した。
「集まりやがったな? いいさ、全部まとめて吹き飛ばしてやるぜ」
義弘が自身を軸に鉄パイプで旋回しながら竜巻の如く暴風領域を巻き起こす。
戦鬼の暴風撃に呑み込まれたメタルシリーズは悉く部品が分解されていく。
警備員達も悲鳴を上げながら続々と窒息状態となって転倒する。
それでも敵が増援を呼び、もう一セットの敵勢と対決する羽目になった。
「気張れ、亘理 義弘! 今こそ男を張る時だ!」
義弘は敵勢の集中猛攻撃を浴びると運命の欠片が砕け散ったが気合で持ち直す。
背中にある桜吹雪の入れ墨は伊達ではなく幾度も戦鬼暴風陣で反逆の牙を剥いた。
前衛で健闘する義弘の傍らへAGが猛速度で参上して加勢する。
登場と同時にAGが苛烈な体当たりと至近銃弾の連撃で敵機を圧倒した。
「よう、わりぃ! 避難経路をちと探って遅れたぜ!」
遅れを十分に取り返す程の勢いで飛のAGが戦場中心部にて暴れ回る。
炸裂弾を駆使する機動戦術が鮮やかに連鎖して敵前衛の機体共が派手に爆破した。
対する敵勢力も増援を投入するので陽動班は数的不利の苦戦を強いられる。
メタルバウの連携、メタルラビの攪乱、メタルバドの急降下、いずれも熾烈な猛攻だ。
「どしたどした!? テメェらの機動兵器ってなそんなもんか!」
AGが余計な武装を解除すると剥き出しの鉄拳で挑発しながら殴り掛かった。
最前線の激闘の渦に呑まれて飛の運命の欠片が一気に粉砕してしまうけれども。
飛が囮役を買う事で陽動班の大半が敵機の的から射程外となった。
設備を破壊していたイグナートとステラを警備隊とメタルマウスが包囲する。
しかも増援として登場したメタルバウまで牙を剥き出す。
「まずは数を減らすのをユウセンして戦って行こうか? 犬型の一体はオレが抑えるようにするね?」
「では、拙は警備の相手をしましょう」
担当が即座に決まると、イグナートが包囲網の突破口を拳闘の一撃で切り開いた。
メタルバウの機体に栄光を象徴する拳の打撃で突撃すれば敵機も反撃に出る。
鋼の爪や牙の連撃は流石に堪えるが極寒の地で苦行したイグナートの瞬殺は叶わない。
「キミ、なかなかヤルね? でも、短期決戦でヤラセテもらうね!」
イグナートが呪腕に稲妻を宿しながら必殺の一撃をメタルバウの顔面に叩き込む。
雷吼拳の快進撃が派手に機体を撃破するとメタルバウは爆裂して砕け散った。
イグナートの拳による突破口に続きステラが警備共に直進して突撃する。
相棒のZ.A.Pを火力全開で猛回転させると暴風撃の猛威で包囲網を全壊させた。
警備員も鼠型も暴風陣に呑まれてその場で伸びる。
「あのですね、警備員の方? まさか工場に自爆装置はないですよね?」
ステラが倒した警備員を叩き起こして即座に尋問する。
まず問い質すべきは皆の安全の為に自爆装置の有無だ。
もっとも、その問題は杞憂に終わったようだ
「でも、非常用の脱出路とかありますよね?」
次に訊くべき問は戦争屋ギアが万が一の時に利用する脱出路である。
脱出路を事前に押さえておけば敵将の取り逃しも防げるからだ。
「ふぅん? そんな脱出路があるのですか?」
ステラは周囲を見渡すと柱に取り付けられている緊急連絡用スピーカーを発見した。
そしてスピーカーに駆け寄り起動させると脱出路の存在を工場全体に向けて暴露した。
『拙は、どこそこの逃げ道は知ってるぞー……』
●潜入
陽動班の騒乱と潜入班の奇計によって工場内部の行軍は順調だった。
稀に警備隊と戦闘する事等もあったが三人は突き当りの巨大な密造室に辿り着く。
「見つけたわ、彼が戦争屋ギアね? シュピーゲル、先行お願い! アルテラの援護も頼りにしてるわ!」
どういう訳かギアが密造室の中央で仁王立ちしている所をチェルシー達に発見された。
発見と同時に仕掛けるべく、三人は息を合わせて襲撃体勢に入るが……。
「ふはは! 見事に罠に掛かったな鼠共め?」
潜入班の三人がギアに仕掛ける直前で密造室の各地から敵機や警備隊が出没する。
三人はメタルシリーズ複数機、警備隊、警備鼠型に包囲されてしまった。
「彼の国の出身なら力こそ正義なのでしょう? 貴方にとってはこれが力で正義という事でございましょうが……。最後は己身一つで向かって来て欲しいものです」
ギアの卑怯な戦術に立腹したアルテラが反論する。
ギアは余裕の態度で高笑いする。
「俺は戦争屋さ。卑怯な手を使ってでも戦争は勝った奴が勝ちなんだ!」
どうやらこの戦争屋に慈悲はないと判断したSpiegelⅡが改めて宣告する。
「戦争で生活することを悪だと断じるならば、シュピもその謗りは免れません。しかし、他者を喰物にするからには、当然自身も喰われる覚悟があると判断します。要すれば年貢の納め時です」
SpiegelⅡの真摯な問い掛けにもギアは嘲笑して応対した。
「ふん、戦争屋は他者を喰物にした後は……逃げるんだ。そう、今日みたいに証拠を残さずに皆殺しにしてな!」
そして言葉の応酬が終わりギアの勢力が猛烈な集中攻撃で攻めて来る。
SpiegelⅡがチェルシーの前に立ち塞がって熾烈な攻撃の数々を一身に受けた。
犬型の必殺の牙が、兎型の跳躍蹴りが、鳥型の急降下攻撃が、少女の装甲を破壊する。
警備隊の警棒が、鼠型の斬撃が、ギアの重い拳の一撃が、少女の運命の欠片を砕く。
それでもSpiegelⅡは卑劣な悪の前で断固として折れる事はなかった。
「くっ、後ろの仲間は護ります……。装甲、限定展開。戦闘システム、継続起動します。本機体(ユニット)動作非常時(ステータスレッド)……」
「SpiegelⅡ様々、ご無事でしょうか? 私、何度も言いますが、脆弱でか弱いハーモニアでございます。ですが、友軍を輝かしく照らす太陽と成らせて頂きます」
アルテラが太陽の紋章を全開で発光させながら天使の神曲を美声で奏でる。
SpiegelⅡは自身でも装甲のリカバリーを試みていたが、やはりヒーラー本業の治癒術式が届くと体力が心強く回復した。
前衛が攻撃の盾となり、中衛が反撃して、後衛が前中衛の支えとなる厳しい戦況だ。
しかも数的にも地の利でもギア達の方が遥かに戦力を上回っている。
チェルシーは乾坤一擲の打開策に賭けてみるべく翼の魔剣をギアへ噴射する。
「次の一撃で終わりになるはずよ! 二人とも援護をお願い!」
魔剣の魔力動力線でギアを捕らえると一気に縛り上げる。
チェルシーはその反動で敵陣のど真ん中に居るギアの懐に飛び込んだ。
そして彼女の片翼にある魔剣の群で旋回しながらも急上昇と急降下で翼斬りを放つ。
御伽話の終幕を意味する魔剣奥義―グリムエンド―がギアを直撃して地に伏せさせた。
「ぐはっ……。降参だ、見逃してくれ……」
満身創痍で謝罪するギアを前にチェルシーは不敵の笑みを浮かべる。
「全機の緊急停止装置を早く出してよ? さもないと……不殺苦手だからグリムエンドで峰打ちしちゃおうかしら??」
あの大技をもう一撃受ける事に怯えたギアは装置を譲り渡した。
チェルシーが装置を停止させると戦況は潜入班の逆転勝利で終わった。
●事後
床に転倒している戦争屋ギアの尻をチェルシーが靴底で何度も踏んで痛めつける。
『ドM学』に精通しているチェルシーが反省の為に調教を始めたのだ。
「いい? 貴方はこんな事をしでかして、心の底ではお仕置きされたがっているドMなのよ。ほら、気づいて、本当の貴方に! 今!!」
そんな気の毒なギアを眺めながらアルテラがチェルシーに確認を取る。
「結局、彼を殺さずに逮捕するのでしょうか? 彼は色々な所に関わっていますし、何より影響力はあるはずです。平和を願い苦しむ者が居る一方でこうして争いで潤う者達が居る。幸も不幸も表裏一体、それでも私はこの世界の平和を願いますよ……えぇ」
一方でギアの残党である警備員達をSpiegelⅡが捕縛していた。
「彼らも当局に引き渡しましょうか? なお、電子妖精を派遣して陽動班への完遂報告は伝達させました」
そこに噂をすればイグナートと義弘が激闘後の姿で現れる。
「よう、お疲れ。チェルシー、そのままギアの背後関係を吐かせて? で、その後、外に『鉄帝』の当局がイルカラ突き出そうよ。オレのジモトでやりたい放題やってくれたツケは払ってもらいたいからね!」
義弘もギアの逮捕と引き渡しに同意するが苦言もあるそうだ。
「おまえさん、塀の中で臭い飯を食い続ける羽目になるか。それと、機体を注文していた部族を吐かせたり、不正な帳簿を突きつけたり……。色々とやるべき事はありそうだな」
なお、この場にいない飛、ハロルド、ステラは工場正面で活動している。
退路の封鎖、残党の捕縛、当局への説明をしている所だ。
最終的にギアの身柄は『鉄帝』当局に引き渡されて投獄処分が下された。
ギアの残党や機体を注文した他部族も革命未遂で鎮圧されると一先ずの終幕を迎えた。
了
成否
成功
MVP
状態異常
なし
あとがき
シナリオ参加ありがとうございました。
皆さんのご尽力によりキャラバン制圧戦背後にいた戦争屋勢力が解体されました。
しかし、ヴィーザル地方情勢の戦火は今度もしばらく続く事でしょう。
それでも皆さんは、きっと、一時の平和を守った事に違いはありません。
GMコメント
●注意事項
当依頼は「獣人族によるキャラバン制圧戦の阻止作戦」の「アフターアクション」から発生したシナリオです。
以下2名の方から「アフターアクション」の提案がありました。
チェルシー・ミストルフィン(p3p007243)さん。
晋 飛(p3p008588)さん。
前回のシナリオに参加された方も不参加だった方も大歓迎です。
なお、今回の参加にあたり前回のシナリオは必読ではありません。
https://rev1.reversion.jp/scenario/detail/3973 (←前回のシナリオです)
●情報精度
このシナリオの情報精度はBです。
依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。
●目標
戦争屋ギアの討伐または逮捕。
(他の機体の討伐や他の人の生死は問わない)
●ロケーション
『鉄帝』北東部からやや離れた東部にあるロボット製造工場が今回の戦闘場所です。
8人で攻略出来る程度の規模の工場ですが、内部には沢山の敵機が潜んでいます。
普通の製造工場の体裁を取っていますが、密造場所もある戦争屋の拠点となります。
●シチュエーション
ギアズ・メカ・ファクトリーに奇襲を仕掛けます。
問題となるロボット製造工場に乗り込んでボスの戦争屋ギアを発見しましょう。
ボスは工場の奥にいますが、沢山の敵機によって道を阻まれる事が予想されます。
●敵
戦争屋ギア(ボス)×1人
ギアズ・メカ・ファクトリー社長であり戦争屋の鉄騎種の壮年男性です。
『鉄帝』育ちだけあり格闘の白兵戦がやや出来ます。
下記で登場する主要な機体達程には強くありません。
ギアを倒すと全機体の緊急停止装置が使えます。
鋼犬機(メタルバウ)近距離アタックタイプ×3機程
獣人族の犬族向けに製造された自動で稼働するロボです。
戦闘的な魔犬の姿をした機体です。
戦闘方法は以下。
・メタルファング(A):鋼の爪攻撃です。物近単ダメージ。連。CT高。
・メタルトゥース(A):鋼の牙攻撃です。物至単ダメージ。必殺。弱点。
・魔犬の群れ(P):鋼犬機同士での連携行動が取り易いです。
鋼兎機(メタルラビ)中距離スピードタイプ×3機程
獣人族の兎族向けに製造された自動で稼働するロボです。
戦闘的な魔兎の姿をした機体です。
戦闘方法は以下。
・メタルラビットキック(A):鋼のキック攻撃です。物中単ダメージ。飛。
・メタルラビットジャンプ(A):大幅なジャンプで飛び回ります。物特レ。ダメージなし。
・跳躍機動力(P):機動力と反応の高さからヒット&アウェーの成功率が高いです。
鋼鳥機(メタルバド)遠距離狙撃タイプ×3機程
獣人族の鳥族向けに製造された自動で稼働するロボです。
戦闘的な魔鳥の姿をした機体です。
戦闘方法は以下。
・メタルバードストライク(A):鋼の急降下攻撃です。物遠単ダメージ。万能。
ダメージを与えた直後、後退して体勢を立て直せます。
・メタルバードレーザー(A):レーザー光線で狙撃します。物超遠範ダメージ。万能。識別。
・鷹の眼(P):猛禽の如く命中と回避が高いです。
警備隊員×10人程&鋼鼠機(メタルマウス)×10機程
ギアの製造工場の手下の警備隊員達です。
小型の鋼鼠機(メタルマウス)という警備ロボも潜んでいます。
いずれも至近から中距離程度までの通常攻撃手段を持ちます。
その他 社員と技師数名
ギアの製造工場で働く手下の一般社員や技師達です。
機械の整備等をしていますが、戦闘時は逃げ回っています。
●GMより
前回の鋼熊機戦のその後が気になるとの事で、もう一戦やりましょうか、というお話です。
今回は戦闘ロボ大集合ですので、お好きなロボと戦って頂けます。
敵が多いですが、一方で、ボスの戦争屋だけは確実に討伐か逮捕をお願いします。
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