PandoraPartyProject

シナリオ詳細

<巫蠱の劫>ほととぎす 鳴きつる方を ながむれば

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 人気のない京の外れ。歩いていた異装の少年──ブラウ(p3n000090)は周りを見渡し、誰も通りがからないことを確かめると獣形へ戻る。ポフン、と可愛らしい音と共に現れたのは小さな、成人した者なら小脇に抱えられる程度のひよこだ。ひよことしては十分大きいのだが、ブルーブラッドとしては小さな方だろう。
「あー……」
 そのままぽてぽてと歩き始めたブラウは気の抜けた声を上げる。いやだって久しぶりのひよこ姿である。ローレットならばブラウの存在を知る者もいるが、京の中で存在感があるわけでもなく、当然配慮もあるわけがない。人混みに揉まれ踏まれと危険がいっぱいだ。故に、あまり進んで晒したがらない人の姿でいたのである。
 けれども揉まれない踏まれないなら話は別。そのために京の外れまで来たわけではないが、ここぞとばかりにひよこ姿を晒したのだった。
(あ、でも早めに戻らないとシャルルさんやフレイムタンさんに心配されるなあ)
 先に来ていた2人のイレギュラーズを思い、ひよこは道を曲がる。調査ですっかりこんな場所まで来てしまったが、もうそろそろ戻り始めなければ集合時間に間に合わないだろう。
 ちなみに通常ならばかなり早く着くのだが、ブラウが『通常』のように戻れるわけもなく。彼の不幸体質を鑑みれば、今から戻って丁度良いのである。
 だがしかし、ここで素直に帰れないのはブラウだからか。
「ぴぃっ!?」
 突如影が差し、体をわしづかみにされる。足をばたつかせるも攻撃にすらならず、顔を上げたブラウはひっと小さく悲鳴を上げた。
 鬼人種の男。屈強なその手がブラウを掴んでいる。その瞳はとてもじゃないが──正気じゃない。
「ぴ、ぴよーーー!! ぴよおぉぉおおむぐっ」
 鳴くしかできないブラウは嘴も抑えられ、どこかへと連行されていったのだった。



「帰ってこないんだけど」
「……何かあったのかもしれんな」
 『Blue Rose』シャルル(p3n000032)と『焔の因子』フレイムタン(p3n000068)はいつまで経っても戻ってこない少年の姿を人混みから探す。ぴょんぴょんと跳ねた髪がどこかに埋もれていやしないかと見回してもそれらしき姿はない。
 2人の胸中によぎる想いは──まあ、あのブラウだしなあ。である。
「どうしよう、捜した方が良いよね?」
 フラン・ヴィラネル(p3p006816)は心配そうに2人を見上げる。これまで降りかかってきた災難の一端を知っているだけに、帰ってこないと言うのは気が気でない。ブラウはあの通り不幸も多く災難に巻き込まれがちだが、1人で戻ってこられる時はちゃんと戻ってこられるのである。そうでない時点で1人ではどうにかできない事態なのだ。
「俺とシャルルは京の東を探そう。貴殿らは西を探してくれるか」
 手分けをしようと言うフレイムタンに集まっていたイレギュラーズは頷く。元より肉腫(ガイアキャンサー)にされたと思しき鬼人種たちのアジトを探し、叩く予定で招集されていたのである。ブラウたちの調査結果でアジトの位置を特定する予定だったが、その最中でアクシデントに見舞われたのかもしれない。
「日が暮れる前にここへ再集合……かな」
 それじゃ、とシャルルはフレイムタンと共に京の東へ向かい始める。その後ろ姿を見てイレギュラーズもまた踵を返した。そして五感と人の噂を頼りにブラウを捜索していた一同は、『京の外れで黄色い何かが鬼人種に連れて行かれるのを見た』という情報を得ることになる。
「なんかちっちゃい……いや、大きい? ひよこみたいな鳴き声だったなあ」
「それ……ブラウさんだ!」
 フランはぴんとくる。その鬼人種たちが捕らえたのはひよこ姿のブラウなのだ、と。それは昨今流行っていると言う呪詛のためかもしれないし、食料にするためかもしれないが、一刻も早く助け出さなければならないのは確かだ。
 思い出しながら呟く男からその場所を聞き出し、イレギュラーズたちは一斉に駆け出した。

GMコメント

●成功条件
 ブラウの救出

●情報精度
 このシナリオの情報精度はAです。不測の事態は起こりません。

●エネミー
・鬼人種(複製肉腫)×10
 ガイアキャンサーとなった鬼人種です。妖と間違えてブラウを連れてきたようですが、食料に出来ると気づいてしまったようです。
 理性らしきものはほとんど削ぎ落されており、残っているのは主に『飢餓』と『闘争心』。イレギュラーズを見たらブラウの事を抜きにして襲い掛かってくるでしょう。
 いずれも至近~中距離レンジを得意としています。中には【必殺】や【貫通】属性を持つ攻撃をする者もいるようです。

攻勢の守護:攻撃は最大の防御なのです。【攻勢BS回復50】
捨て身の一撃:傷を負えども、勝つために。【反動100】【邪道20】

●フィールド
 鬼人種たちのアジト。粗末な長屋です。
 道は狭く2人ほどが横に並べる程度。暴れれば建物は容易に倒壊するでしょう。
 日中なので明るさは問題ありません。

●NPC
・ブラウ(p3n000090)
 今回の救出対象となるローレット所属の情報屋。30cm程度のぬいぐるみにも似たひよこです。
 このままだと唐揚げに……いや、焼き鳥かもしれない。蒸したお肉も美味しいですよね。煮物にだっていれられちゃうかも。そんな結末が待ってます。
 長屋のどこかでロープにぐるぐる巻きにされ、梁からプラーンと吊るされています。

●ご挨拶
 愁です。アフターアクションありがとうございます。
 ブラウが物言わぬ肉にする前に助けてあげてください。
 ご縁がございましたら、どうぞよろしくお願い致します。

  • <巫蠱の劫>ほととぎす 鳴きつる方を ながむれば完了
  • GM名
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2020年09月24日 22時30分
  • 参加人数8/8人
  • 相談6日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

アルペストゥス(p3p000029)
煌雷竜
シュバルツ=リッケンハルト(p3p000837)
死を齎す黒刃
メイメイ・ルー(p3p004460)
約束の力
フラン・ヴィラネル(p3p006816)
ノームの愛娘
フレイ・イング・ラーセン(p3p007598)
アカツキ・アマギ(p3p008034)
焔雀護
リュコス・L08・ウェルロフ(p3p008529)
神殺し
ラグラ=V=ブルーデン(p3p008604)
星飾り

リプレイ


「早く、お助けしなくては、いけませんね……!」
 『さまようこひつじ』メイメイ・ルー(p3p004460)のファミリアーが空を飛ぶ。今よりよほど高い場所から見下ろせるようになったメイメイは、眼下に広がる建物たちのうちに粗末な長屋をいくつか見つけた。
(あのうちのどれかに、恐らくブラウさまが……)
 『またしても』の危機、なんとしても回避させなければ。メイメイがそう慌てるのは、初の邂逅からひよこに災難が尽きないためであったりする。時に食われそうになり、時に溺れそうになり、そして今も呪詛の生贄だか食料だかにされそうである。相変わらずの不幸体質だが、ひよこには最低限の幸運を呼び寄せる贈り物が備わっている。今で言えばイレギュラーズへ情報が舞い込んだことこそ、ひよこにとって幸運だろう。
 ファミリアーの後方をついていく『煌雷竜』アルペストゥス(p3p000029)はふんふんと鼻を鳴らし、風に紛れるひよこの香りを探す。食べちゃいけない、小さくて丸い生き物の姿を。
「人助けセンサーがびびびっと……うむ、そこかしこで反応しておるのう」
 『放火犯』アカツキ・アマギ(p3p008034)は多数見つかる助けの声に、しかしメイメイから伝えられる長屋の距離を考えてブラウらしき反応を割り出していく。
「まだ捕まっただけ、ってのが不幸中の幸いか」
 『死を齎す黒刃』シュバルツ=リッケンハルト(p3p000837)は言葉にいくらか含みを持たせる。仲間を脅すわけではないが、この先でさらに悪い状況となっていた時の心構えくらいはいるだろう。
「焼き鳥か唐揚げか手羽煮込みになっちゃう!?」
「焼き鳥救出ですね私ちゃんはタレで」
 声を上げるも想像してみたらお腹が空いて来ちゃった『緑の治癒士』フラン・ヴィラネル(p3p006816)に『星飾り』ラグラ=V=ブルーデン(p3p008604)はマイペースな返答。というか今食べる気満々でなかっただろうか。
「タルタルソースも持参です」
 とにかく美味しく食べたい気概がよく見えた。
「た、食べ物って、勘違いなんだよね……?」
「ああ。食い物に見えなくもないだろうが」
 『うそつき』リュコス・L08・ウェルロフ(p3p008529)に『Unbreakable』フレイ・イング・ラーセン(p3p007598)は肩を竦めてみせる。どれだけ丸々した美味しそうなひよこに見えたとて、それはただの飛行種、つまりヒトである。いくら飢えているからといっても人食いをさせるわけにはいかないだろう。
「そろそろ……着きます!」
 メイメイの言葉とともにアルペストゥスが先行する。フランが保護結界を張った直後、彼は長屋の前へと降り立った。
 ここだ。間違いない。黄色い毛玉の匂いがする。核心にアルペストゥスは四肢を踏みしめ、一度は閉じた翼を大きく広げた。
「グルルルルルル──ルァアアアッ!」
 天を突く方向。ビリビリと空気が震え、鬼人種がまろぶように飛び出してくる。アルペストゥスに追いついたアカツキもまた大きく声を上げた。
「ブラウくんやーい、どこじゃー! 無事なら返事をするのじゃー!!」
 ややあってぴよーとか細い鳴き声。黄色い毛玉──ブラウ(p3n000090)の声だとアルペストゥスは首を巡らせる。アカツキは人助けセンサーで再度確認し、深く頷いた。大体の位置はこれで十分だ。
「それでは皆──打ち合わせ通りに頼むのじゃ」
「ああ。さっさと助け出してやろうぜ」
 シュヴァルツの影が盛り上がる。ひとつ、ふたつ、みっつ。立体のように盛り上がった影はやがてぶつんと途切れ、長屋から出てきた鬼人種へと放たれた。撃たれた彼らは一様に血走った眼を彼へ向ける。その口元が、ニィと笑って。
「掛かってこいよ」
 その言葉を聞き、鬼人種は弾かれたように駆け出した。全力ですり抜けたアカツキの前に別の鬼人種が立ちはだかるが、彼らは不意に頭上を見上げる。直後、腹まで響くような轟音。黒の稲妻が空を走る。
「──行け。『打ち合わせの通り』だ」
 アカツキはフレイへ振り返り、頷いて再び走り出す。フレイはその後ろ姿を見届ける前に、鬼人種の視線を感じて武器を構えた。
 さあ、まずは彼女とひよこの帰還まで耐え抜かなければ。
 とはいえ、彼女の足であればそう長い時間でもない。甘くて苦くて酸っぱい霊薬を用いた彼女はあっという間に吊り下げられたブラウの元までたどり着く。
「ぴ……ぴぃー! 助けてー! 食べられたくないですー!!」
「こらこら、食いにきたわけではないぞ?」
 大人しくするのじゃ、と言い聞かせたアカツキはブラウの縄を慎重に解く。その間にも薄い長屋の板越しに、外から戦闘の音が聞こえていた。
「悠長に挨拶をしている場合ではなさそうじゃのう。よし、しばらくじっとしてるのじゃ」
 ひょいと腕の中へ抱え上げられたブラウ。黒くつぶらな目をぱちり、と瞬かせる間に視界が何かで隠される。
「うむ、これで見えないはずじゃ」
 外側からアカツキの声。恐らくは彼女が服の袂などでブラウの姿を隠したのだろう。体全体を揺らす振動に、ブラウは彼女が移動し始めたのだと感じた。
 一方の外。練り上げられた癒しの力がフランから放出され、鮮やかな緑の葉を見せる。淡い光の種が魔力循環を補佐してくれること、そして何より幻想種という種族柄もあって力の扱いには慣れが見える。それよりも後方からブツブツと何かを唱え、物質を変質させていたアルペストゥスははっと顔を上げた。
「グルルルルッ!!」
 勇敢なる妖精とともに戦っていたメイメイが唸り声に気づく。同時、ラグラの破壊的な熱波が敵を貫かんと地面に焼き焦げを作った。
「戻ってきた、ね」
 チェーンソーによる乱撃を行うリュコスは視界にアカツキの姿を認める。腕に何かを抱いているようだから──ここからだと無事かどうかまではわからないが──ブラウも連れてこられたのだろう。
 しかしその姿にか、或いは別の何かにか。感じるものがあったのだろう、鬼人種たちの手が伸びる。アカツキは腕の中の存在を庇いながらも走り続けた。
「ぴ、」
 激しい揺れに気づいたのだろう、ブラウが小さく鳴く。アカツキは大丈夫だと言わんばかりに抱きしめ、同時に傍から黒き閃光が鬼人種を襲う。多数の鬼人種を相手取り、尚も引きつけんとするフレイの一撃だ。負けじとシュヴァルツの黒影弾が続く。
「グルルルルッ!!」
 唸り声とともにアルペストゥスがアカツキたちと鬼人種の間へと立ちはだかる。その背中は「行け」と言っているようだ。彼へ任せたアカツキはそのまま敵の手が届かない場所まで退避する。
「ここで大人しくしておるのじゃよ」
 味方が敵を留めている今、この距離なら安心だろうとブラウを下ろすアカツキ。その視線は今しがた退避してきた方向へ向けられる。
(勢いは……止まりそうにないか)
 オーダーをクリアした今、ここに留まる理由はない──が、せっかくの『食料』を奪われた鬼人種は止まらないだろう。ならば倒しきってしまう他ない。
「まあ放っておいたら私達怒られそうだし。制圧できるならしちゃいましょう」
 ラグラは破壊的魔術でピンポイントに敵を狙う。特に優先すべきは貫通攻撃の出来る者だ。持っているのは粗末な槍だが、これがなかなかどうして。複製肉腫となった賜物か。
 その攻勢はイレギュラーズたちによる執拗な引きつけの中、鬼人種たちへいくらかの正気──この状況を正気と言うべきか定かではないが──を齎し、頑丈でない者へ狙いをつける。けれどもすぐさま注意を取り返すシュヴァルツ、フレイに加えて回復手であるフランもまた飛び出していく。彼女の狙いすました場所へ誓いのこもった花弁が舞った。
「見て見て! あたし、美味しいケーキ持ってるんだー」
 視線が集まったところへすかさずケーキを取り出すフラン。それをこれまた美味しそうにムシャムシャと食べてしまうものだから、鬼人種がムキになって襲いかかってくる。代わりに戦線を束の間支えるのはメイメイだ。
「微力、ですが……!」
「十分だ」
 フレイは肉腫と味方の間へとその体を躍らせる。複製肉腫は時に、気絶させれば暴走から解き放たれることがあるらしい。それが本当なのかも彼らに適用されるのかもわからないが、試してみる間くらいの盾にはなれる。すかさずリュコスが蹴りで攻めにかかった。
(この人たち、元に戻るのかな? それとも……諦める、しかないのかな……?)
 やってみなければわからない。けれどそこばかりに固執はできないとリュコスは戦況を把握しながらギリギリを攻めていく。今しがた倒した敵の様子を確認できるほど余裕はないが、確実に数は減っていた。それはリュコスのように殺さぬ一撃で攻めた者もいれば、そうでない者もまた然り。
「いやぁ私ちゃん手加減とかできないのでー」
 ラグラは全力攻撃で敵を叩きのめす。後方に居ても時折敵が近づくが、近づこうとも遠ざかろうともラグラから受ける攻撃は変わらない。だって『そういうスベ』しか持たないのだから。
 フランの足元を中心に咲いた花畑が囀り、踏み込んだ味方の傷を優しく癒す。メイメイはそこから駆け出し、敵へ肉薄すると威嚇術を放って昏倒させた。
(ごめんなさい……全員を、助けられなくて)
 減ってきた今だからこそわかる。殺さぬ一撃は確かに彼らの呼吸を守った。けれども手加減なしの一撃は、その辺りどころが悪ければ──。
「苦しませずに葬ってやるのは、せめてもの手向けだ」
 仲間が倒れようと、自らが傷つこうと意に介さず戦い続ける鬼人種たち。まるで理性を失った獣のようだとシュバルツは斬撃で倒しつつ思う。直後、その脇から襲い掛かってきた影へ彼は咄嗟に短刀をかざした。
「アルよ、お主の雷と妾の炎獄の競演じゃぞー!!」
 アカツキから赤と青の輝きが発せられる。向けられるのは今しがたシュバルツへ襲い掛かった鬼人種だ。残るはその男と、後方で負傷を抱えた男のみ。アカツキは攻撃の直後、アルペストゥスの射程に入らぬよう体をずらした。

「……Tu eris quasi velis」
 ──汝、願うままに、あるがままに。

 それは誰もが初めて聞く声で、けれど聞いたことのある声音で。知らない旋律はあらゆるものを在るべき形へ変えていく。
 それを紡ぐアルペストゥスは、ゆるりと首を巡らせて。

「In somnium」
 ──夢へ、堕ちよ。



「……だいじょーぶ?」
 案じるフランにブラウはこくこくと頷く。瞳からは大粒の涙をこぼし、ふわふわの毛並みはそのせいでびしょびしょだ。
「ほんとうにひよこさんだ……」
 リュコスは物珍しげに呟きながらもブラウの体を調べさせてもらい、怪我をしていないことを確認する。ひよことはいえ人型になれば思春期の少年なのだが──ひよこ姿ではぬいぐるみにしか見えない。
「ブラウさまは、ふかふかもふもふしたほうが、幸せな気分になれます、よ」
「そうそう。それにおいしそ……ごほん、かわいいんだから気をつけなきゃだよ!」
「……フランさん??」
 ブラウ、身の危険を聞き逃さない。呼ばれたフランはにっこりと笑った。
「ところで──唐揚げと竜田揚げの違いってなにか知ってる?」
「ノーコメントです!」
「妾は竜田揚げ派じゃ」
「聞いてませんが!?」
「俺は唐揚げだな」
「シュバルツさんんんん!?!?」
「とり肉の可能性は無限大、です、から……」
「メイメイさんまで!? あっちょっとなんで目をそらすんですかむぐっ」
 必死なブラウの口へ、唐突に何かが突っ込まれる。ぼくは食べないよと控えめながらも主張するリュコスの傍ら、ラグラは自らが突き出したチルタルソースをモゴモゴと食べるブラウを見つめていた。
 そして不意に、
「早く大きくなってね」
「……!?」
 ブラウは戦慄した。一体それはどういう意味なのか。果たして純粋に成長を促されていると考えてないのだろうか。いやそれならなぜタルタルソース。やはりこれは『そういう意味』の成長か!
 恐らくは完全に狙ったものではないだろう。しかし『助けに来たはずのイレギュラーズにまで食われる心配をする』という通常運行により、ブラウは命の危機によるショックから立ち直っていた。その様子を見たフレイは後方を振り返り、そこらに転がるゼノポルタへ視線を向ける。
「……憐れだな」
 彼らもまた被害者だ。もっと早くからこちらが気づいていれば、手遅れになる者もいなかったのだろう。もう過ぎ去ったことではあるけれど、それでも悔やまないものはない。
 戻ろうというようにアルペストゥスが小さく唸る。この場は近くの兵に知らせるとしても、きっとまだシャルルとフレイムタンがブラウを探しているだろうから。
「そうですね、まずは合流しなきゃ!」
 ぴょこんと立ち上がったブラウ。小さな黄色は、アルペストゥスに咥えられてぷらんとぶら下がったのだった。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

シュバルツ=リッケンハルト(p3p000837)[重傷]
死を齎す黒刃
フレイ・イング・ラーセン(p3p007598)[重傷]

あとがき

 お疲れさまでした、イレギュラーズ。
 ブラウも無事助かったようで何よりです。

 それでは、またのご縁をお待ちしております。

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