PandoraPartyProject

シナリオ詳細

生きる為の盗み

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●生きる為の糧
 幻想の東南部に広がる、フィッツバルディ領。
 そこで平穏な生活を送る、ごくごく普通の村人や、交易に携わる商人達。
 平穏な生活の裏には……光と闇の如く生活する者達も存在する。
 フィッツバルディ領の傍らに広がる、森の中に夕陽が差し込み、キラリと瞳が輝く。
「いいかお前ら。今日も奪いに奪い捲るぜ!!」
「おおおおおー!!」
 威勢良く声を上げるが……その姿はかなりボロボロで、死んだような瞳の輝きである。
 更には疲れ切っているような表情の仲間達。
 ……だが、そんな仲間達に威勢を付けさせる様に、リーダーと思しき男が、街から街を繋ぐ街道を移動している、商人の馬車を発見。
「今日は、あの馬車を襲う。馬を操っているのは商人の様だからな。あいつを倒せば、飯にありつけるぜ!!」
「飯……?」
 飯、と聞いた仲間達の視線に僅かな光が灯る。
 更にはグゥゥ……と、仲間達のお腹が共鳴するように鳴り響く」。
 お金も無い、知力も無い……だが、餓えた仲間等の腹を満たす為には、これしかない。
 それは、リーダーの決意でもあり、住みにくい此処で生きる為には、やらねばならない。
 そして覚悟を決めたリーダーと、その仲間達……いや野盗の集団は、突如として森から姿を現わす。
「え!?」
 突然の事に、驚いた商人が、馬の手綱を引く。
 当然の如く、馬はその場に立ち止る……その結果、周りを瞬く間に取り囲んでいく野盗の集団達。
 数発、商人と馬を気絶させる程度に殴り掛かり、馬車の動きを完全に停止させたが後に、積み荷の食料だけを、全て奪い去って行った。


「皆さん。この近くで商人さんの牽く馬車が襲われた、って事件が起きたのです!!」
 と、ギルド・ローレットの『新米情報屋』ユリーカ・ユリカ(p3n000003)がイレギュラーズ達に声を掛ける。
 商人が野盗襲われる事件というのはまぁ、良く良くある事件ではある。
 だが、いつもの事件に比べてちょっと不可解な点もある様で。
「今回事件に襲われた商人さんなのですが、その命までは奪われなかった様なのです。馬さんも同様、命までは奪われなかったのです」
「更に言うと、この野盗さん達は馬車の幌の中にあった商材の中の食糧、食材だけを奪い去って行った様なのです。何故か宝飾品とか、金貨などの財宝とかは手つかずに残されていた様なのです」
「それに商人さんが襲われたのも、深夜とかではなく、夕陽差し込む頃という時間帯だったのです。下手すれば、他の人にも見つかりかねない状況なのに、野盗行為を躊躇無く働いた、という事なのです」
 と、小首を傾げる。
 ……ともあれ。
「でも、何にしても商人さんを次々と襲い、食材を奪うというのは許されない行為なのです。イレギュラーズの皆さん、宜しく頼むのです!」
 とユリーカは、ぺこりと頭を下げた。

GMコメント

 皆様、こんにちわ。緋月 燕(あけつき・つばめ)と申します。
 今回の依頼は、事情を抱えた野盗集団の退治依頼となります。

 ●成功条件
  野盗集団の退治

 ●情報精度
 このシナリオの情報精度はAです。
 想定外の事態は絶対に起こりません。

 ●周りの状況
  今回の時刻は夕方頃です。
  襲撃場所は分かっており、交易の商人の馬車も、ちらほらと行き交う頃合いになります。
  交易の商人の馬車の襲撃をインターセプトし、野盗を退治する事、が目的となります。

 ●討伐目標
  野盗ですが、大きく3種に分けられます。
   ・野盗のリーダー
     この集団の統率者です。当然、一人のみです。
     仲間達へ行動を指示し、上手く連携を取った形で効率的な攻撃を行います。
     その為、ポジションも前衛、後衛をフレキシブルに動きます。
     武器はショート・ソードで、物・近となります。
   ・野盗・前衛
     リーダーの下、前衛に出て戦う者達で、15人います。
     武器はダガー、物・近となります。
   ・野盗・後衛
     リーダーの下、後方から支援射撃をしてくる者達で、10人います。
     武器は樹を削り出して作った弓矢、物・中となります。
 
  野盗達は、裏事情としてお腹がとても減っており、その飢えを凌ぐ為に野盗に堕ちている、という背景があります。
  彼等の事情を察した上で、プレイングに説得行動などを行った場合は、相手の攻撃が中止されたり、乱れ効果と同様の
  バッドステータスを受けた状態で戦う事が出来るかも知れません。
  但し、リーダーについては説得難易度は高めですので、ご注意下さい。

 それでは、イレギュラーズの皆様、宜しくお願い致します。

  • 生きる為の盗み完了
  • GM名緋月燕
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2020年09月18日 22時10分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

志屍 志(p3p000416)
密偵頭兼誓願伝達業
ユーリエ・シュトラール(p3p001160)
優愛の吸血種
アルテミア・フィルティス(p3p001981)
銀青の戦乙女
コゼット(p3p002755)
ひだまりうさぎ
シラス(p3p004421)
超える者
クラウジア=ジュエリア=ペトロヴァー(p3p006508)
宝石の魔女
長月・イナリ(p3p008096)
狐です
メルランヌ・ヴィーライ(p3p009063)
翼より殺意を込めて

リプレイ

●平穏の影に
 野盗退治の依頼を受けたイレギュラーズ達。
 時刻は夕刻、交易の人通りも少し落ち着きつつある夕刻の町。
 夕刻とは言え、まだまだ交易のために馬車を出す商人たちはちらほらと行きかうので、人の目はままある状態。
 普通に考えれば、野盗は人目につかない頃合いを狙って仕掛ける筈なのだが……。
「金品には目もくれず、かと言って命を奪う訳でもなく食糧のみを奪う野盗ですか……」
 と、『翼片の残滓』アルテミア・フィルティス(p3p001981)は悲し気に息を吐く。
 それに『宝石の魔女』クラウジア=ジュエリア=ペトロヴァー(p3p006508)が。
「うーむ。食い詰め者の犯行、というには状況がおかしすぎるんじゃよなー。食糧のみに手を付けて他は一切被害なし、誰だっておかしいと思うのじゃが……」
 軽く首を傾げる彼女。
 その言葉に『遺言代筆業』志屍 瑠璃(p3p000416)も。
「ええ。馬車を襲ったなら馬を脚として確保、車体や幌は焚き付けに、荷はすべて戦利品で不要な商人は行方不明、とする方が効果的だと言うのに、今回の野盗はずいぶん迂遠な事をなさっておいでで」
「じゃろ? 飢餓か、獣害虫害魔物害野盗害かといった所じゃな」
 瑠璃の言葉に頷くクラウジア。
 そして『ひだまりうさぎ』コゼット(p3p002755)と、瑠璃、『優愛の吸血種』ユーリエ・シュトラール(p3p001160)が。
「でもこの人たち、だれも殺してないし、お金にも手を付けないで食べ物だけ持って帰ったんだね……よっぽと、お腹空いてたんだね。なんとかしてあげたい。やり直させてあげたいな」
「はい、強盗ですので法の裁きは受けるべきですが、効率を重視せず踏みとどまる姿勢は好ましいと思います」
「そうですね。衣食住は人が生きる為に必要不可欠な要素です。でも、その為なら他の人の生活をも脅かしたり、踏み躙る事はだめだと思います! 悪い事は悪いって、誰かが言ってあげないと。悪い事は、良い事に変える事が出来るのですから!」
 各々が複雑な思いを抱き、理解は出来る。
 そんな仲間達の会話へ『白鳩婦人』メルランヌ・ヴィーライ(p3p009063)と『狐です』長月・イナリ(p3p008096)も。
「盗みは大小問わず許されるものではありません。しかし、どうやら向こうにも様々な理由がある様子ですし」
「そうね、今回は何やら事情がありそうな盗賊達の様ね。食事で困っているのなら、私達でなんとかしてあげないと」
「ええ。のっぴきならない理由はありましたが、他人の家畜を襲った経緯は、わたくしにもあったことだし……まあ、どうあれ救われる機会は与えられるべきだと思いますね」
 そしてシラス(p3p004421)が。
「正直賊と呼ぶには何とも物悲しい連中だね。だからといって死なせてしまうのも後味が悪い。だから、出来るだけのことはやらないとね」
 と言う。
「うむ。最後の良識までは捨ててはおらぬようじゃし、なんとかしてやらんとの。ていうか、こういうのに対処すべき領主は何をしておるんじゃまったく」
 と、怒りの矛先を領主に向け、憤るクラウジア。
 そう、ユリーカより説明された今回のターゲットは、食うに困り果てた結果、悪事に手を染めてしまった野盗達。
 対処すべきは、確かにこの地を治める領主であろう……というのも頷ける。それを知らないのか……死って知らぬ振りをしているかは分からないが。
 ともあれイレギュラーズ達も、そんな彼等を救う為にはどうすればいいか、を考えてきた。
「彼等は食うに困っての略奪なのでしょうけど、状況からしてまだ改心の余地はあるはずよ。幻想貴族の一員として、見過ごす訳には行かないわ!」
「そうね……アルテミア様は、考えがあるのよね?」
 と、メルランヌの言葉にアルテミアは。
「ええ。彼等を説得して、私達の領地に誘いたいと思うの。うちの領地で働いて、罪を償わせるわ」
 その提案に、コゼットも、クラウジアも。
「そうじゃな。儂の領地に誘う用意も出来ておる」
「あたしも……あたりまえに寝て起きて、あたりまえの暮らし……できるようにする」
 そんな領地を持つ三人の力強い言葉に、メルランヌもこくり、と頷き。
「そうね。皆様が領地に勧誘して、そこで労働させて罪を償わせ、なおかつ手に職をつけさせるというのは大賛成。だからこそ頑張らないとね」
 そして。
「それじゃ、取りあえず野盗さん達が何処から襲い掛かってくるから分からないし、上空から偵察飛行をさせるわね」
 と言うとイナリは、ファミリー・ウィッチクラフトで召還した鴉を上空に飛ばし、上空からの俯瞰視点で周囲を監視し、準備を整える。
 更にクラウジアも。
「儂の、この甘い匂いに誘い出されれば良いのじゃがな……」
 彼女が準備したのは、馬車一個分のプリン。
 それを馬車に積みこみ、更にパカダクラにその馬車を轢かせて、彼女自身はパカダクラの手綱を引く御者役へ。
 その周りを護るのと、一歩離れた所を進む者。
 イレギュラーズ達は陣を構えて、被害が報告された街道へと急ぐのであった。

●いのちの価値を
 そして交易の商人を装い、野盗が襲い掛かってくる事を期待して、プリンを満載した馬車を牽くイレギュラーズ達。
 幌の隙間からプリンの甘い香りが街道沿いに漂い、空腹を刺激する。
 その香りは街道の傍らに広がる森の中にも広がって行き……森の中に潜む野盗達にも届く。
「ん……?」
「甘い香り……おいしそう……」
 グゥゥ、と森の中で腹の音が鳴り響くと共に、涎を拭く野盗達。
「おい……お前ら。飯の匂いだ。飯、奪いに行くぞ」
 そんな仲間達を引き締める様に、一際体の大きな男が促す。
「あ、リーダー……そうだな」
 野盗の一人が何かを言おうとするも、言いかけて直ぐに止める。
 そしてリーダーを先頭にして、甘い香りの方向に向けて移動を始める野盗達。
 26人という集団が、早くご飯にありつきたいとあっては……潜んだ歩き方になる訳が無い。
 樹が不自然に揺れて誰かが歩いているであろう……と、上空から俯瞰していたイナリの鴉が、その動きを察知する。
「ん……皆さん。どうやら野盗達が気付いた様です」
 と、野盗達が来るであろう方向を指さす。
「了解です。気付かないふりしつつ……いつ襲われても良い様に準備を進めましょう」
 瑠璃がそう仲間達に伝える中に、ユーリエは人助けセンサーを発動し、周囲の救いを求める声を確認。
 すると。
「お腹、空いた。でも……襲いたく無い……でも、腹を満たすには……これしか……」
 彼女の頭の中に聞こえてきたのは、迷い、救いを求める声。
 その声は、野盗達の誰かの心の叫びなのは間違いない。
 ただ、その声は一つだけでない。十数人の声が重なりあい、聞こえてくる。
「……」
 そんな救いを求める声の重なりに押し潰されそうになり、唇を噛みしめるユーリエ。
 しかし、その声に対して返事を返すことは出来ない故に、先へ進む他に選択肢はない。
 空からの俯瞰で、段々と近づいてくる野盗の位置は丸わかり……徐々に距離が詰まり行く。
「……よし。行くぞお前ら!」
 森の中でリーダーに発破を掛けられ、ダガーを持った野盗達15人が森の中から一気に姿を現わす。
 最初のターゲットは、荷を積んだ幌を牽く御者であるクラウジア。
 一斉に仕掛け、逃げ道を塞ぐ事で、幌を効率的に奪おうという作戦。
 だが、クラウジアは咄嗟に身を翻し、インターセプト。
「何っ!?」
 と驚いた表情を浮かべた野盗達に、クラウジアが。
「まあ待て待て。話を聞くだけなら損はないじゃろ? 交渉次第では、この馬車の中身をまるごと進呈する用意もあるのじゃよ?」
 と言いながら、幌を捲る。
 その中に積まれていたのは、大量のプリン。
「!!」
 甘くて美味しそうな食べ物をッ目の前に、明らかに野盗達の目の色が変わった。
 しかしそれが見えない野盗の後衛陣が、森の際より次々と矢を放ってくる。
 それに咄嗟に割り込むはユーリエ。
「……生きていくのに上手くいかなくて、行き場がなくてどうしようもなくなって、盗みを繰り返しているのですか?」
 と、少し強い口調で訴え駆ける。
 しかし、それにリーダーが。
「うるせえ!! お前達に、俺達の事なんて解る訳ねえだろうが!!」
 売り言葉に買い言葉、でもユーリエは。
「私たちイレギュラーズの話しをしましょう。皆それぞれ生きてきた道程があります。順風満帆な人もいれば、紆余曲折、苦節十年な方も居るでしょう。私達だって、全て何もかも上手くいった訳じゃない。だから……一緒にやり直してみませんか? 汗を流して食べるご飯はきっと美味しいですよ?」
 笑顔で手を差し出すユーリエ。
 しかし、そんなユーリエの手を睨み返す。
 そんなリーダーに向けて、務めて冷静な声で。
「お腹空いてたのかな? ……あたしも、昔やったことあるけど、人から盗って食べるごはんは、おいしくないよね。びくびくしながら食べなきゃいけないから、味もよく分かんないよね?」
 コゼットは野盗達の置かれた状況を理解する様に語りかける。
 更にアルテミアが。
「どれだけ悪い事だと理解していても、生きる為に飢えた仲間達に食わせる為に略奪を繰り返す。行いはどうあれ、仲間を護るというあなたの決意は本物なのでしょう。でも、ずっと上手く行くとは限らない事は、あなたも解っていたのでしょう?」
「う、煩いって言ってるだろう!!」
「『命を奪う』という、最後の一線は越えていないあなた達を、私は見捨てないわ。私達の管理する領地に、仲間と共に来て見なさい。今迄の悪行の償いとして働いては貰いますが、衣食住は保証するわ」
 衣食住を保証する、という言葉に、野盗達は驚いた表情を浮かべる。
「お、おいおまえら! こんなの、嘘だ! 嘘に決まってるだろう!!」
 ただ、リーダーはその言葉を信じようとしない。
 でも、アルテミアは。
「これが貴族の道楽だと嘲笑ってくれても構わないわ。でも、あなたの決意と同じように、私の想いも本物よ。この手を取るかどうかは……仲間の事を想うなら、迷う必要は無いでしょう?」
 真摯に真っ直ぐ見据えるアルテミア。
 更にはコゼット、クラウジアの二人も。
「そう……だれも飢える人がいないように、理不尽な暴力に怯えることがないように、病気になったら治療してもらえて、働いたらお金が貰えて、屋根がある場所で、寝て起きて、あたりまえの暮らしができるように、そんな場所をあたしも作ってるんだよ……よかったら、あたしのとこにこない?」
「そうじゃ。儂もこの近くに領地を持っておる。仕事も住居もある。そこで働き、その報酬の中から今回迷惑を掛けた人達へ慰謝料込みで弁償するのじゃ。喫緊に必要な食糧は、この馬車の中身の他にも用意しておる。領地如何に関わらず、何らかの方法で弁償するのであれば、これら全ておぬし達のものじゃぞ」
 と、野盗達の心を尊重しつつも、精一杯の譲歩を引きだそうとする。
 そんなイレギュラーズ達の提案に、明らかに周りの野盗達は、どうする、投降するか? と、ひそひそ話し始める。
 迷う野盗へトドメとばかりにイナリが進み出て。
「そんな事、私達、イレギュラーズ達にに出来ないと思って居るのでしょう? 私は稲荷神の眷属、動く穀物地帯や生きている穀倉、私の血からなら、荒れた荒野すら黄金色の稲穂が実った大地を作り出す事が出来るわ」
 その言葉と共に、実際に自分の周りに実際に五穀を実らせてみせる。
 みるみる内に実る穀物に、更に驚く野盗達。イナリは。
「もし、他の領地で食に困ったなら、私を呼びなさい。お腹いっぱい、お米を食べさせてあげるから」
 そんなイレギュラーズの説得と行動に、明らかに野盗達は動揺。
 でも、リーダーは仲間達に向けて。
「お前ら、柔な考えに騙されるんじゃねえ!! おら、仕掛けるぞ!!」
 と、一際強い口調で引き締めを図る。
 自分が苦しい時に、前に立ってくれたリーダーへの恩義。
 でも、自分達を救おうとしてくれているイレギュラーズ達への、希望。
 そんな二つの背反する思いに押し潰されそうになり。
「う……うわぁあああ!!」
 後衛の一人が、耐えきれずに叫び、その手の弓矢を無差別に発射。
 リーダーに刺さりそうになった矢を、あえてインターセプトするシラス。
「こんな真似を、いつまで続けられると思ってるんだ? 直ぐに捕まるか、そうじゃなければ盗るものが食い物だけじゃ済まなくなるぜ。御前らは、あの気の毒な連中に、人殺しまでさせる気なのか? 正直、食い物だけで思いとどまってくれて良かったんだ。今なら頼る先がある、やり直せる。世の中はあんたらを見放す人間だけじゃあないんだ」
 と言いながら、敢えてリーダーから一端距離を取るシラス。
 そんなシラスの行動に。
「……あ、ああ……」
 半数近くの野盗達がその場へ崩れ落ち……武器を零す。
 残る野盗は前衛5人、後衛6人、そしてリーダー。
「仕方ありませんね……皆さん、二つで宜しくお願いします」
「ああ、分かった」
 アルテミアに頷くシラス。
 前衛に立つ野盗に対し、手刀打ちで確りと不殺の一撃で、確実に一人を戦闘不能へと導く。
 続けてイナリが、神通力・禍津日神ノ霧を発動し、怒りをリーダーに対し放ち、自分へ怒りを誘導すると共に、他の野盗から引き離すように移動。
 そして残った野盗に対しては、コゼットが辺りを跳び回り、跳ね回る跳挑発止にて、前衛の野盗達へ怒りを付与。
 コゼットに対し野盗が攻撃を集中させる中、それを支援する様にメルランヌがノーギルティで絶対の不殺の一撃を食らわせる。
 対し、後衛から瑠璃とクラウジアの二人は。
「攻撃を仕掛けてきている野盗だけ狙いましょう」
「うむ」
 と頷き合い、神気閃光を敵の後衛に向けて放つ。
 そして、アルテミアとユーリエは。
「仕方ありません……!」
「そうだね……でも、絶対に命を奪う様な真似はしないよ!」」
 と、ディアノイマンと、スイーツタイムをそれぞれ使用し、自己強化。
 イレギュラーズの攻撃が一巡し、残る野盗達の攻撃は……ダガーと、弓矢、そしてショート・ソードによる攻撃。
 幸い個々の攻撃力はそこまで高く無く、しっかりと防御。
「くそっ……くそっ!!」
 余り攻撃が効いていない状態に、唇を噛みしめる野盗達。
 自分達だって助かりたい。でも、自分達だけ助かっても、リーダーが助からないのなら……覚悟するしかない。
 リーダーの発破の声に、追い詰められた野盗達は、がむしゃらに戦う他にない。
 今迄ほぼ無抵抗な商人だけしか襲ったことが無かった彼等にとって……戦い慣れたイレギュラーズ達に真っ正面から勝ることは出来ないだろう。
 だからこそ、徒党を組んで、せめて一人だけでも、と。
「でも……貴方達をこのまま放置しておく訳には行かない。だから……できるだけ痛くない様に、眠らせてあげるわ」
 メルランヌは野盗達の心境を理解しつつも、神気閃光で後衛の野盗達の体力を削り、倒す。
 数刻の後、後衛全員が倒れ、残るはリーダー一人のみ。
「さあ……後は、アンタだけだ」
 とシラスの宣告に、ちっ、と。
「くそ……くそったれが!!」
 叫ぶ彼に接近。
 そして、苦しくない様、素早く背中に回り込み、放つは手刀打ち。
 その一撃にリーダーは、すっかり戦意を失ってしまった。

●安息のときは
「ま、参った。だから、い、命だけは……命だけは助けてくれ……!!」
 戦を選んだ野盗達は全て気絶し……最後に残った野盗のリーダー。
 そんなリーダーに対し、瑠璃が。
「……そうですね。では」
 と言うと、武器を納める。
 それにえっ、と驚きの表情を浮かべるリーダー。
「……さぁ、生活と職業訓練の場は用意されています。償いを終えた後は何をするのも自由ですが……また野盗への路を選ぶことが無い様願っております」
 と瑠璃が言うと、アルテミア、コゼットが。
「私達は、貴方達を倒す事が目的ではありません……貴方達が更正してくれれば、それで充分です」
「そう……もう、苦しむ必要は無いの。ちゃんと罪を償って……その場所は、あたし達が用意する」
 改めて、己が領地へと誘う言葉を掛ける。
 でも、リーダーは……すぐに答える事は出来ない。
 そんなリーダーに対し、クラウジアが。
「無理強いはせん。今すぐ決められないのであれば、後でも構わぬ……いつでも、儂らはおぬしらを受け入れよう」
 そう言いながら、軽く微笑む。
 その微笑みには嘘は全く無い……すさんだ野盗達には、その笑顔が輝いて見えた。
 そして。
「ほれ、このプリンやら、干し肉やらはこの場に置いてくからの……ゆっくり食べて、心を落ち着けるのじゃ」
「そうですね。皆さんで相談して、ゆっくり結論を出してください」
 クラウジアに頷くイナリ。
 そしてイレギュラーズ達は、野盗達の心の負担にならない様に、そっとその場を後にするのであった。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

ご参加頂いた皆様、ありがとうございました。
皆様の説得プレイング、見させて頂き、大変心の中があったかくなりました。

リーダーを初めとして、野盗の方々は皆様の説得行動にしっかりと心を動かされた様です。
彼等は今後罪を犯すことは無いと思います。
皆さまの領地において、今後の人口増加として数えられる人たちの中には、決意と共に訪れた彼らがいるかもしれません。
その際には、ぜひとも暖かく迎え入れていただければ……と思います!

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