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シナリオ詳細

再現性大阪2010:ある時にテンションが上がる魔法の食べ物

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 再現性東京<アデプト・トーキョー>――それは練達に存在する地区である。
 練達は旅人達が作り上げた都市国家だ。この世界に突如として召喚された者達の中にはファンタジー世界である混沌に耐えきれぬ者が居た。平穏と普遍の生活を求め、主に地球、それも日本地区出身の旅人や、それらに興味を持つ者達が作り上げた『日本』を模した特殊地区だ。
 複数エリアに分かれた内部では様々な時代が乱立していた。古き良き昭和をモチーフとする『1970街』、高度成長とバブルの象徴たる『1980街』、次なる時代への道を模索し続ける『2000街』――そして、ここ、再現性東京に何故だか存在する『大阪地区』だ。

「ちゃうねん」
「何も違わないと思う!」
 ががーんとしたのは『リインカーネーション』スティア・エイル・ヴァークライト(p3p001034)であった。中華風のロリータワンピースに身を包んだ彼女は現在ほかほかの中華まんを手にしている。
 再現性東京で仕事をしていた際に、ふと、「再現性大阪の中華まんが食べたい」と感じた……そうだ。甘めの生地でダイス状にカットされた豚肉と玉葱が絶妙なハーモニーを醸す再現性大阪名物をよくぞ天義の貴族令嬢が知っていたな、と言うところだが、きっと誰かのお土産で食べたのだろう。
「そ、それで何だっけ? 中華まんを狙うモンスターが現れたんだっけ……」
「せやねん。何かめっちゃ怖い奴で中華まんを寄越せっていうてくるねん。
 あれはほんまに怖いモンスターやで。店の子もビビってしもて開店できへんわ。知らんけど」
 開店してなかったら自分が今中華まんを食べている訳がないのに、とスティアは想った。ぼけ殺しはいけない。スティアに話を持ってきた関西人の話は輪のように堂々巡り。最早環状線状態だ。
 さておいて――
「モンスターについて聞いても?」
「虎柄で……」
「虎……」
「紫色で……」
「む、紫……」
「何処にでも現れる」
 ――大阪のおばちゃんやん、とスティア・エイル・ヴァークライトはそう言った。

 強敵、大阪のおばちゃんと戦うことになりそうである。
 無事に中華まんを守り切れたらお礼に餃子やごま団子もついてくるそうだ。

GMコメント

 髪の毛をパープル系にしたと母に言ったら「大阪のおばちゃんやん」って言われた事あります。
 夏あかねです。

●成功条件
 豚まんを守りに抜く!

●アデプト・トーキョー 大阪
  練達には、再現性東京(アデプト・トーキョー)と呼ばれる地区がある。
 主に地球、日本地域出身の旅人や、彼らに興味を抱く者たちが作り上げた、練達内に存在する、日本の都市、『東京』を模した特殊地区。
 その内部は複数のエリアに分けられ、例えば古き良き昭和をモチーフとする『1970街』、高度成長とバブルの象徴たる『1980街』、次なる時代への道を模索し続ける『2000街』などが存在している。イレギュラーズは練達首脳からの要請で再現性東京内で起きるトラブル解決を請け負う事になった。
 ……その区画になぜか存在している大阪地区です。皆大阪弁でしゃべります。

●中華まん(ぶた)
 再現性大阪でもよく食べられる美味しい中華まん。豚肉です。
 とても美味しいです。でも、餃子も美味しいですし叉焼が入ってるのも美味しいですし、更に言えば餡饅も美味しいですよね。店舗限定だけど。
 戦いに勝利したらご褒美に中華まんや餃子、ごま団子、ちまきを頂けます。
 お願いすれば練り辛子がついてきます。その他の調味料はコンビニで買ってきてね。

●悪の組織『大阪のおばちゃん』 おばちゃん戦闘員*10
 テンプレートな大阪のおばちゃんを体現してくる悪の戦闘員です。
 鞄の中には飴ちゃんとポケットティッシュが入っていて、誰にでも気安く話しかけてきます。
 が、彼女たちは悪の組織『大阪のおばちゃん』です。それも戦闘員として訓練されてテンプレート大阪のおばちゃんになっているのです。
 悪いおばちゃんなので皆が大好きな中華まんを買い占めに来ました。誰にも渡すもんか!

 黄色と黒/白と黒のカラーには好感を覚えてきますし応援もしてくれます。
 また、髪の毛はピンク、紫、青、様々なカラーであり、その髪色で戦闘能力が違うそうです。

 紫:ファイタータイプとっても強い。物理攻撃中心。
 青:クールビューティーを体現してるんやで。神秘攻撃中心。遠隔。
 桃:ヒャーーって言います。ラブリー。回復中心です。
 緑:「あんたちょっとアレちゃう?」「太ったやろ?」と言葉で責めてきます。BS豊富。

 大阪出身の旅人です。それなりに強いので注意してください。なめてかかるとオカンは怖いってヤツです。
 大阪のおばちゃんの技属性考えたのは人生初です。「おばちゃんはこうしてくる!」とか言えばそうなる可能性は大いにあります。おばちゃんの可能性は無限大です。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はAです。
 想定外の事態は絶対に起こりません。知らんけど。

  • 再現性大阪2010:ある時にテンションが上がる魔法の食べ物完了
  • GM名夏あかね
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2020年09月21日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

グレイシア=オルトバーン(p3p000111)
勇者と生きる魔王
スティア・エイル・ヴァークライト(p3p001034)
天義の聖女
ハロルド(p3p004465)
ウィツィロの守護者
Tricky・Stars(p3p004734)
二人一役
タイム(p3p007854)
女の子は強いから
太井 数子(p3p007907)
不撓の刃
カナメ(p3p007960)
毒亜竜脅し
ボディ・ダクレ(p3p008384)
アイのカタチ

リプレイ


 再現性東京――その中にもどうしたことか自己主張がやや激しめに存在するのが『再現性大阪<アデプト・オーサカ>』である。特異的な方言が用いられたこの地を踏み締めた八人のイレギュラーズの顔色は様々であった。
「美味しい中華まんを買い占めようとするなんて許せない! こらしめてあげるんだから!」
 何処で美味しい中華まんについての情報を得たか天義のご令嬢、『リインカーネーション』スティア・エイル・ヴァークライト(p3p001034)はきんつばを片手にそう言った。
「美味な中華まんを守り抜く、ですか。護衛対象としては奇特な部類ですが全霊で依頼を遂行します。
 しかしそれ以上に奇異なのは『大阪のおばちゃん』。何故、戦闘員におばちゃんを……? 何故……? これも再現された大阪の特徴なのですか? 色々な意味で興味が尽きません」
 疑問ばかりが存在する。美味しそうな中華まんを護り抜くと言うだけでも不可思議であるのに、敵はおばちゃんなのだそうだ。『痛みを知っている』ボディ・ダクレ(p3p008384)は「どうして……」と首を傾ぐ。それはその傍らできんつばを一口頬張っていた『二律背反』カナメ(p3p007960)も同じだった。
「『オオサカのオバチャン』? の何が怖いんだろう?
 トーキョーでもオオサカでも、オバチャンはオバチャンじゃないのー?」
「確かに……」
 カナメとボディには大阪のおばちゃんの脅威はまだ伝わってなかった。しかし、相手もローレットに依頼が来る程の戦闘員なのだ。例え、ヒョウ柄の服を着ている普通のおばちゃんなのだとしても油断はするべきではないだろう。
「それよりも、カナは中華まんが楽しみなんだー♪ えへへ。
 お肉の入ったお饅頭……? なんてあまり食べたことないんだよねっ。あと、オオサカって喋り方独特だね……?」
「それにしても大阪弁で喋られるとなんかうつっちゃうよね。なんでやろ?」
 なんでやろう、とカナメも口にしてから「あっ」と口元を抑えた。大阪弁、直ぐに伝染する現象に蝕まれつつあるのだ。
「大阪のおばちゃん……聞くところによると、初対面から突然旧来の知り合いのように話しかけてくるらしい。距離感、という物はないのだろうか?
 また、桃のおばちゃんは他人の誕生日に詳しく、所かまわず写真も撮っていくそうだな
 ……その情報を知ったところで、吾輩にはどう扱えば良いのかわからぬのだが……」
 腕の良い情報屋とでも言うところなのだろうか、と。『知識の蒐集者』グレイシア=オルトバーン(p3p000111)は恐ろしいと肩を竦めた。腕利きの情報屋であるが故に誕生日に詳しく写真を撮影していくのだろうか、と『二人一役』Tricky・Stars(p3p004734)――稔は首を傾げる。
「大阪のおばちゃん……! すごく強そう。これは一筋縄じゃいかないわね……!」
『揺蕩』タイム(p3p007854)は今までの会話の内容より『凄腕の情報屋』であることと『戦闘員』であるという大阪のおばちゃんに対して警戒心を強めていた。
「でも実は困った事に本物の大阪のおばちゃんってどんな感じなのか全然わからないのよね。だって私は生粋の関東育ち。小中高の修学旅行は日光京都北海道だったし大阪へは一度薄い本を売りに遠征したっきり。現地の友達に連れて行って貰ったお店のお好み焼きが美味しかったのだけは覚えてる!
 ……はっ。これは誰の記憶? 多分わたしの元の世界の話じゃないわね! ううん、知らないけど絶対そう!」
 海辺にある広い敷地のイベントに参加した記憶は無いったら無い。地下鉄にだって乗ってないし、アルファベットの名が付いた建物の事だって知らない。だからこそ、大阪のおばちゃんは知らないし――この記憶は「ウッ……再現性大阪の魔力恐ろしい……! ぐわああ、秘められた記憶がー!」と言った様子だ。
「…………」
 大阪のおばちゃん談義に花を咲かせる面々を尻目に『聖断刃』ハロルド(p3p004465)は無言で立ち去ろうとしていた。
「何処へ行くの? 仕事の時間よ?」
 大きな袋に着替えを詰め込んで持ってきた『ブラックパンサー』太井 数子(p3p007907)は首を傾ぐ。びく、と肩を跳ねさせたハロルドは「ええ……」と声を漏らす。
「ほら、もうすぐ大阪のおばちゃんがやってくるわ! 準備しなくっちゃ!」
「ちょおっ!? アカン! 大阪のオバハン敵に回すんはアカンで!
 後生やから堪忍してや! 二度とこの地の土を踏めへんようにされんで!?」
 頭を抱えて「あかんねん」と「ちゃうねん」「あれやねん」を繰り返すハロルド。流暢すぎる大阪弁にタイムは「凄い」と瞬いた。
「ただの中華まんを奪いに来る老体にそれ程怯えるのか? ……まあ、ごま団子と餡饅は護らなくてはならないが」
 甘党を発揮する稔に「肉まんと餃子もな!」と同意する虚。ハロルドは言った――お前達は本当のおばはんの怖さを分かっとらんのや、と。
「……すまん、取り乱した。別にこの街に住む訳でもなし、依頼が終われば無関係な身だ。
 今のは忘れてくれ、俺は大丈夫だ。――ほな行こか」
 大阪弁になっている。もうコイツは駄目だ。今のハロルドは只の『大阪人』なのだ……!


 中華まんを片手に数子――いや、ミーティアは待っていた。金の髪を靡かせ、先程準備した着替えであるヒョウ柄のワンピースに身を包む。ハート型のサングラスも携えて大阪色に染まる彼女は高台で立っていたのだ。そう、その双眸におばちゃんが映り込んだ刹那、中華まんを頬張り堂々たる名乗りを上げる。
「出たわね、大阪のおばちゃん! 『ブラックパンサー』ミーティア!
 私は世界の美味しいものを守るため、独占しようとする悪いおばちゃん達と戦うわ! トウッ!」
 飛び降りるミーティア。そして彼女を待ち受けるパンチパーマの桃色のおばちゃん!
「ヒャーーー! はい、チーズ!」
 ……写真を突然撮られた。その様子を見てグレイシアは「ウワサ通りか……!」と警戒心を露わにする。
「お、大阪のおばちゃん。カナ、ちょっぴりでいいからおばちゃんたちとお話ししたいんだけど、いいかなー?」
「え? 何々、どないしたん? 飴ちゃん食べる?」
 桃色のおばちゃんの背後から顔を現したのは緑色ヘアーのおばちゃんだった。パンチパーマをふわふわと揺らしてずいずいと来るおばちゃんにカナメは「凄い髪の色してるね」とぱちりと瞬いた。
「あんた、ウチとあの子の二人分の髪の色してるやん! めっちゃええやん。なあ、ええと思わん?」
「え、そやなあ……ええと思うで。知らんけど」
 突然話を振られた青色のおばちゃんの秘技『知らんけど』にハロルドはのたうち回った。
(『知らんけど』はそんなに驚異な技なのでしょうか……?)
 ボディは首を傾げる。だが、彼とておばちゃんに対する知識が無いわけでは無い。桃色のおばちゃんに写真を撮られているミーティアを解放するために、その指先は銃に見立てた形になり――

「ばーん」

 撃った。
「うっ……!」
「おばちゃん!?」
 ミーティアの前に立っていた桃色のおばちゃんの体がぐらりと揺らぐ。赤色のおばちゃんは「敵襲や!」と周囲を見回しボディをその双眸に映した。
「あんたか……! アンタが撃ったんか……!」
「え、ええで……ええねん」
「おばちゃんっ……すごい血だわ! けど、倒れ方が神戸っぽくてお上品すぎるじゃない……!」
 ミーティアが首を振っている。倒れ伏せたおばちゃんの様子にタイムは「これが大阪……」と生唾を飲んだ。
「と、取り敢えず褒め散らかして隙を突こうと思ったんだけど、こんな勢いじゃ私が飲まれるわ!?
 全てが始まる前におばちゃんが一人殉職(?)してしまっているし。どうしよう、ぜんっぜんわかんないどうしよう!」
 混乱するタイムの傍らでにんまりと微笑んでいた好青年を演じる稔は「俺も分からない」と言う様な顔をしていた。
「お姉さん……貴女は中華まんのためにやってきたのでは……」
「そうやったわ」
「でも、僕は体の弱い妹のためにどうしてもあの中華まんを買わなければならないのです。
 お姉さんが沢山の肉まんを買いたい事は分かっています。けれど――!」
 涙をはらはらと流す稔。お姉さんと呼ばれたおばちゃんはにんまりと微笑んでいる。その様子を見ながらもハロルドはその手に力を籠めた。
 耐えろ、耐えろ、耐えろ、俺は――俺は盾壁や! 神殿騎士や!(駄目)
「俺の役割は壁役や。付与スキル2種で無敵化し、BSは抵抗115で弾いたる。そうや、何を恐れる必要があるんや……俺は無敵や……!」
「え? 何て?」
「え? ちゃうんねん! 格好付けてる最中やねんから聞き返すんやめーや!」
 思わず突っ込みを炸裂させるハロルドの様子にスティアは「ががーん……」とそう言ったのだった。


 敵の標的は中華まん。一般的な者に比べて大きめで非常に食べ応えがあるものだとグレイシアは『おばちゃん銃撃事件』を眺めながら食レポを行っていた。
「成程、名物と言われるだけのことはある。……美味しいな……これは良い物だ。
 ふむ。しかし、普通に食べようとすると中華まんの裏に付いている竹の皮によって裏が剥がれてしまうが、温め直す際、中華まんをひっくり返して蒸し直すと綺麗に剥がれるとか。
 この中華まんは各駅で売られており、仕事帰りのお土産に最適らしい……その為、中華まんが
販売されて時は飲み屋の売り上げが下がるという噂もあるとか」
 おばちゃん達の言葉を聞きながらグレイシアはもぐもぐと食べていた。

 ――食べていた!

「ががーん!? どうして食べてるのー!? いいなー!」
「さっき購入したのだ。やはり、護るのならば護衛対象のことを知っておかねばならない。
 ふむ。これは上手いな。逆さで蒸せば後で食べれるならばルアナに土産として購入してやらねばならない」
「もうお土産の話!?」
 ええい、とスティアはつっこみも全てかなぐり捨てた。ギフトがあればおばちゃんのアイドルだと自負する彼女(きっと、たぶん、メイビー!)は『おばちゃん迎撃事件』から立ち直ったおばちゃんたちを相手取る。
「おばちゃん! 慌てないで! 可愛い私だよー!
 ほらほら。おばちゃん、得意って言うてた『あれ』見せてや。『あれ』
 ちょっと見せて欲しいな~! おばちゃんの良いところ見てみたい!」
 ついでに飴ちゃんも貰う気満々のスティアが癒やしの福音を与える中で混乱している大阪人は叫んだ。
「神殿騎士は屈しない。おら、掛かってこいよ! 貴様らごときに、俺の翼十字が砕けるか! オバハンがなんぼのもんやっちゅーねん! いてまうぞオラァン!」
「誰がオバハンや!!!」
 ――おばちゃんは良いけどオバハンは駄目なんだ、とカナメはハロルドとおばちゃんの会話を見ながらそう思った。
 ハロルドは割引券、クーポン券、商品券をちらつかせる。見せびらかす彼に対して怒濤の勢いで怒りが重なっていくのを稔は驚異だというように見ていた。
「凄まじいな……おばちゃんの動乱という戯曲ができあがりそうだ……」
「んーーーーwwww」
 タイムは頭を抱えた。「私、褒めようと思ってたの。どこから来たの、その髪色素敵、二十歳かと思ったって。ソレっていけると思う? 無理じゃない? 無理だよね」と何度も繰り返す。
「口で勝てそうには無いな」
「だよねー!? って、わー!?」
 突如としておばちゃんより降り注いだ雷が頭を抱えるタイムを襲う。
「わぁっ、ごめんなさいーっ!? おばちゃん、ほんまきれいやん!
 って、うううん、もう無理! 実力行使! これも中華まんの為! ごめんね悪のおばちゃん達!」
 雷が降り注ぐ中でおばちゃんの注目の的『ブラックパンサー』はおばちゃんに対して最大の『侮辱』を発した。
「あらあら? どこに行くのかしら? 相手になってくれないなんておもんないなあ!」
 おもんない。
 おもんな――「なっ、あ、あかん。それは禁じられた言葉や!」とハロルドが慌てる。
 面白くない、が最大の侮辱になるという再現性大阪。赤いおばちゃんの牛の如く襲い来る様子にミーティアは怯えてばかりでは居られなかった。
 前線に立っていたカナメは桃色のおばちゃんを殴りつけながら怯えていた。「おばちゃんの勢い怖っ」である。
 淡々と肉まんのレポをするグレイシアは気にしていないようだが、大阪のおばちゃんの狂気的な怒りに怯えずには居られなかった。
「ねぇ……あとで、ブルコメ、カナにもちょうだい? すっごい痛そうだし……うぇへへ……」
 へにゃりと笑ったカナメにボディは大きく頷き頭部のモニターを光らせた。
「うっ、眩しい!」
「まるで大阪のシンボルタワーみたいな輝きやん!」
 おばちゃんとカナメは同時に苦しんだ。あまりの光りの輝きにおばちゃんが苦しんでいる今だとカナメがくるりと姿勢を反転させる。放ったのはぎこちなくも鋭い一撃。
 真っ白な刃が翻りおばちゃんがダイナミックに倒れていく。おばちゃん銃撃の時よりもどかりとリアルに倒れるソレを通り抜けるようにミーティアは誰よりも真っ直ぐ、華やかに、歌舞く一撃を放つ。
「この中華まんは皆のもの! 大阪のおばちゃんなら、もっと人に親切にしなきゃだめでしょ!」
「せやけど欲しいんや!」
 強欲の獣――おばちゃんに「欲しいだけなのか」と稔ががくりと肩を落とした。
(欲しい……成程、それは人間的に素晴らしい感情ではあるが……それだけでこれほどの暴動を?
 もしかして、闇のおばちゃん組織による特殊指令だったのでは……?)
 はっ、とした稔の傍でタイムは「おばちゃんって欲しいからバーゲンで頑張るよね……」と呟く。
「百貨店とかで優勝もしてないのに毎年優勝セールの代わりに行われる『感動をありがとうセール』で要りもしないのに欲しかったって理由で購入する……うん、あるある……はっ、こ、これは誰の記憶ー!?」
 兎にも角にも強敵たるおばちゃん達は特異運命座標によって沈静化されたのだった。


「カラシで食べる……うんまぁ~新幹線で食べると怒られちゃう中華まん臭……
 でも美味しいからできたてが一番ね! この世界でも食べることができて嬉しいわ!」
 頑張って良かったとにんまりと微笑むミーティア。その傍らでおばちゃんの情報を生かして孫(?)への土産にするために袋に沢山の中華まんを購入するおじいちゃん――失礼、グレイシアの姿がある。
「ふむ。やはりこのごま団子は美味しいな」
「肉まんは?」
 一つの体で二つの趣向。今回は自分が頑張ったのだから堪えろと稔が中華まんを土産に購入すればうつろの楽しげな声が返ってくる。
「そういえば、ハロルドは?」
 問いかけた稔の言葉にカナメは「どこだろう? そういえばいないね?」とこてりと首を傾いだ。
「んー、それにしてもおいしいー! 中華まんおいしいね!
 これはおばちゃんも買いたくなるのわかるよー! 名物だもんね」
 ぱくりと口に含んだカナメ。ぴかぴかと輝くボディは「成程.それ程美味しいが故の行動なのですね」と肯いた。再現性大阪は彼にとっても不思議が一杯なのだ。
「あ、そういえばさっき『こんな所におれるかー!』って逃げていったわ」
 中華まんをぱくりと齧った数子にタイムも「そういえば、逃げてった」と肯いた。
 どうやらハロルドは大阪人であるというのに大阪に怯えて逃げ出したのだ.大阪人であるのに……。
「なんか、凄かった……。大阪のおばちゃんってすごいんだね……。
 二十歳ぐらいって言ったときの『そんなん照れるやん~!』とか言ってくるおばちゃんの視線とか、凄かったよね……」
 疲れた様子で中華まんを齧れば、その味に心が救われる気さえしてくるのだ。
「あ、そうそう。これは言っておいた方が良いかな?」
 スティアは中華まんを頬張りながら――そして、お土産に凄まじい中華まんの匂いを発する紙袋を握りしめながら言った。

「オチは特にないよ!」

成否

成功

MVP

ハロルド(p3p004465)
ウィツィロの守護者

状態異常

なし

あとがき

ミナミ育ちの生粋の大阪人ですが、「ばーん」されるとは思ってませんでした。
凄まじく中華まんが食べたくなったので買いに行ってきます。

MVPはあんたや! 大阪人や!

それではまたお会いできますことを楽しみにしてます。

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