シナリオ詳細
再現性東京2010:夜妖出現に法則性……?
オープニング
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練達にあり、とある世界の東京を模した区画。それが再現性東京だ。
知る者であれば、そこはまさに地球にある日本地域にある東京そのものとすら感じる場所。
この地に住む者達は無辜なる混沌を受け入れられず、元の世界と同様に住むことを求めた。
だが、ここは混沌であることに変わりはない。
住民達がこの区画だけは平和、安全だと思い込んでいても、次々と怪異……夜妖が生まれて活動しているのだ。
ローレット所属の旅人、伏見 行人(p3p000858)は再現性東京にて高等部の理科教師として出入りすることもあり、数々の事件に立ち会っていた。
この間は影のような夜妖との交戦を行い、無事学生や教師ら学校関係者に被害を出すことなく討伐することができたのだが……。
「校内でヨルの発生が多い気がする」
その出どころは非常に多岐にわたり、得体の知れないモンスターから悪霊、都市伝説と言われる類のもの。
「その出現に法則性を見出すことはできないか……」
夜妖の出現に何か決まった状況があるのなら、それだけで対処が楽になる。
例えば、状況から生徒らに現場と思しき場所へと近寄らぬようにするとか、他のイレギュラーズと待ち伏せて夜妖と手早く叩くとか……。
「ともあれ、調べなければならないな」
まずは、現状、確認されている夜妖らしき事件を行人はいくつか洗うことにした。
現状、確認できたのは3種。いずれも夜に夜妖らしき存在が活動しているという噂を行人は耳にする。
まず、廊下を駆け回るという理科室の人体模型。
2つ目は、瞳を輝かせて浮遊し、動き回る音楽室の肖像画。
そして、夜な夜な獲物を求めて校内を彷徨う飼育小屋の首狩りウサギ。
行人はそれらの怪異を一つ一つ調べ、法則性がないかと調べていたのだが。
「……これは想定外だったね」
まさか、その3種全てが一斉に襲い掛かってくるとは……。
後ろから走ってくる人体模型と首狩りウサギは何とも恐ろしい。
そして、ふわふわと浮かぶ3枚の肖像画が前方へと回り込んで瞳を煌めかす。
「絶体絶命……かな?」
一応、情報屋へと保険はかけておいたが、果たして仲間達は間に合うかどうか。
行人は廊下で多数の夜妖に囲まれつつ、どうしたものかと考えながら構えをとるのである。
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その少し前。
練達、再現性東京にローレットから依頼を受けたイレギュラーズ達が集まる。
「伏見 行人さんが放課後の学校で、夜妖について調べてくれています」
『穏やかな心』アクアベル・カルローネ(p3n000045)が今回の事態について説明を行っていたのだが、事前に行人から何かあった場合に備えてと召集をかけていたらしい。
行人は夜妖の出現について法則性を見いだすことができればと、複数の情報を集め、確認していたようなのだが……。
「どうやら、3種の夜妖から一度に襲われてしまうようです」
弱い力だが、アクアベルは予知の力を持つ。それによって、彼のみに危険が襲い掛かることを察して予め動いていたというわけだ。
現れる夜妖の情報については、アクアベルは行人に聞いていたものに自らが予知で見た情報を加えてイレギュラーズ達へと紙面で渡す。
「一刻の猶予もありません。夜妖を倒して行人さんを救い出してあげてください」
簡単に説明を終えたアクアベルは頭を下げ、依頼を受けたイレギュラーズ達へと彼の救援を託すのである。
- 再現性東京2010:夜妖出現に法則性……?完了
- GM名なちゅい
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2020年09月19日 22時15分
- 参加人数8/8人
- 相談5日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
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参加者一覧(8人)
リプレイ
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練達、再現性東京内にある学園、中等部校舎。
電灯に照らされて静まり返る廊下を、イレギュラーズの一団が歩いていく。
「相変わらず夜の学校は慣れねェなクソが」
様々な場所を冒険してきた『勇者の使命』アラン・アークライト(p3p000365)だが、この状況は独特の不気味さを感じるらしい。
「皆さんが集まる学び舎で夜妖が現れるというのは、何か法則があるのですかね」
そこまで言いかけて、モノクル着用の『知識の迷い子』フランシス=フォーチュン(p3p005019)は今回の救出対象がそれを調査していて襲われたことを思い返す。
「行人先生のピンチなのですよ!」
遊牧民の少女、金のツインテールを揺らす『シティガール』メイ=ルゥ(p3p007582)は早く助けに行かないと、ミイラ取りがミイラになってしまうと仲間達へと告げて。
「……今、メイ、ことわざ等言ってみてちょっと賢いのですよ」
自分で言ってドヤ顔するメイは実に可愛らしい。
「まさかの一気に来るっスか……。『アイツ消しとかねぇーとヤベーぞ』みたいに結託でもしたんスかね」
「相変わらずバラエティに富むと言うか、取っ散らかった街だね」
オッドアイと黒髪に緑のメッシュが特徴的な『紅眼のエースストライカー』日向 葵(p3p000366)の疑問を受け、耽美主義的な王子様風の魔術師、『性別:美少年』セレマ オード クロウリー(p3p007790)が様々な物が入り混じるこの街に些か呆れを見せていた。
「……いやそんな事どーでもいいけどな」
そこで、葵は改めて、どこかで夜妖に袋叩きに遭っているかもしれない救出対象のことを改めて強調して。
「さっさと見つけるとするっスよ!」
「ああ、つべこべ言ってたら、『間に合わなくなる』」
アランもこの校舎のどこかで、多数の夜妖の攻撃にさらされている救出対象のことを気にかけて。
「今行くぞ伏見。持ち堪えろよ……!」
まず、アランはaPhoneを用い、救出対象へと電話を試みる。
連絡先は以前の依頼でセレマやゴスロリ系のドレスを纏った鉄騎種女性、『玩具の輪舞』アシェン・ディチェット(p3p008621)が聞いていたこともあり、代わる代わる連絡を入れる。
「これなら、す~ぐ見つかるとは思うけど」
神性を与えられた人の姿をした蛇の旅人、『虚虚実実』ウロ ウロ(p3p008610)も暗視を働かせて薄暗い場所もくまなくチェックしていく。
だが、救出対象が電話に出る気配はない。
イレギュラーズ一行はしばし、戦闘音や電話の着信音などが聞こえないか。また、視覚でどこにいるかを注意深く見回し、救出対象、『希望ヶ浜学園高等部理科教師』伏見 行人(p3p000858)の捜索を急ぐのである。
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着信音は別の棟にいた行人の元に届いてはいた。
「舐めてた訳じゃあないんだけどな……!」
肩より下辺りまで伸びた黒髪を揺らしながら、彼は自らを取り囲む3種の夜妖を見回す。
偶然か意図的かはさておき、2つ以上が同時に重なる貴重なケースに立ち会っていると行人は思案する。
「それだけこの学園が夜妖の発生に適した場所なのか……」
しかしながら、それは現状を打破する考えとはなりえないと行人は思索を後に回し、状況を再確認する。
ものすごい形相で動いてくる人体模型1体、瞳を怪しく輝かせる音楽家の肖像画3体、そして、口元を血で濡らした徘徊ウサギ1体。
また、行人はこの中等部の見取り図を予め確認しており、ここが3階にある1年生の教室が並んでいることを思い出す。
「廊下なのが幸いだったな……」
先んじて飛び掛かるは、素早い徘徊ウサギ。
だが、行人はほんの少しだけ速く廊下の窓へと飛び込み、外へと飛び降りていく。
「「「…………!?」」」
さすがに、その行動は夜妖達にとっても想定外だったようで、少し戸惑いを見せる。
「悪い、カイ=レラ。着地頼んだ……!」
一方で、行人は空中で風の精霊の力を借り、僅かな間空中を飛んでゆっくり地上へと着地する。
「さあ、鬼ごっこの始まりだ……!」
3種の夜妖の行動は様々。
人体模型はすぐさま別方向へと走り出していたし、徘徊ウサギも逆方向へと跳ねていく。
直接行人を空中から追うことにしたのは、3体の肖像画達。
ギラギラと瞳を輝かせるそいつらは、自らの身体から音楽を響かせつつ行人へと迫る。
そこで、行人のaPhoneが再度鳴り響く。
「伏見先生、良かった!」
「アシェンちゃんか、今、第一校舎棟と第二校舎棟の間にいる」
救出チームにもガラスが割れる音はしっかりと聞こえており、彼の方へと皆向かってきている。
「まずは行人との合流が先っス」
葵の提案に皆頷き、行人は皆で戦う為に広い場所を思い出す。
中等部の敷地内であれば、該当するのは校庭か体育館。ここからより近いのは……。
「分かった。校庭で落ち合おう」
答えた行人は胸元のポケットへとaPhoneを入れて緊急時の連絡手段とし、肖像画3体を引き付けつつ校庭に向かって全力で逃げていく。
「はっけ~~ん」
一方で、ウロがその行人の姿を捉え、皆彼を追うべく別ルートで校庭へと降りていくのだが……。
そこに走ってきたのは、人体模型。素早く駆けてきたそいつは一行へとタックルを仕掛けてくる。
それを食い止めるべく、葵が前に出て。
「すぐ追いつくっスから先に行ってろ!」
この場は葵に任せ、他メンバー達は近場の階段を駆け下りていく。
「校庭への最短ルートはこちらです」
フランシスもまた予め校内の見取り図を瞬間記憶で覚えており、仲間達を案内していく。
先に校庭へとやってきたのは救援のチーム。
続いて、肖像画を引き連れた行人がやってくる。
「待たせたなァ、伏見ィ! このクソ共をぶっ潰すぞ……!」
アランが叫び、このまま迎撃へと移る。
丁度、人体模型を抑えていた葵も敵を引き連れてこちらへとやってくる。自らがピンチになる前に頃合いを見て、葵は仲間達を全力で追いかけてきたらしい。
「まさに学校の怪談に出てくる感じっスね、現物を見ると結構迫力あるもんだな……」
「今回の相手は推定ゴーレムと……推定ポルターガイストが3と……うっわ、ボーパルバニー!?」
改めて、セレマが倒すべき夜妖の姿を視認していると、どこからともなく飛び掛かってきた徘徊ウサギがにやりと笑い、跳躍してくる。
そんな姿に、ウロはう~さ~ぎ~お~~いしい~みたいな菓子の歌を思い出して。
「ウサギ、食べ……るどころじゃ~~~~ないねコレ?? ヒェ……」
ウロは相手が捕食者側だと認識して思わず恐怖し、とりあえず相手の足を止めるべくビーム銃DXで威嚇射撃を行う。
「なんだって首狩りウサギがここにいるんだ! 最悪ボクぁ一撃死だぞ! むしろボクを助けろ!」
叫ぶセルマの前に、防御に転じた行人が自分を助けるべく駆けつけた仲間を守るべく前に出る。
「ちょ……、伏見サ~~ン??」
「何、逃げはしたが、そう簡単に倒れないからね」
守るべき対象が前に出たことに驚くウロに対し、行人は事も無げにそう告げた。
「行人先生、お守りするのですよ!」
まだ彼の状態が確認できていないメイは、ロケッ都会羊のスラスターで加速して行人の傍へと近づき、勢いを伴って自らを刃と化してウサギへと突撃していく。
そして、彼に態勢を整えてもらうべく、身を挺して牙を剥く徘徊ウサギを抑えるのである。
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校庭にイレギュラーズと夜妖が勢揃いし、本格的な戦いが始まる。
襲い来る夜妖を引きつけるべく、まずは行人が前に出て。
「――結構やれるぜ? 俺は」
首の辺りをトントンと叩いて目の前のウサギを挑発しつつ、夜妖全員に対して名乗りを上げる。
すると、素早くウサギが飛び掛かって煌めく牙を振り下ろしてきた。
さらに人体模型が低い体勢からショルダータックルを繰り出し、てくる。引き続き、空中を飛び回る肖像画どもが瞳を輝かせて相手を魅了させる呪いの歌を響かせてきていた。
それでも、イレギュラーズ達は徘徊ウサギが最も危険な存在だと認識したようで。
「可愛いウサギさんを攻撃するのは心がいた……」
スラスターでビュンビュンと校庭を飛び回るメイは口元が赤く染め、にやりと笑うウサギに恐怖を感じて。
「やっぱり、すごい怖いお顔なので容赦しないのですよ」
メイはすれ違いざまにそのウサギへと、斬撃を浴びせかけていく。
「ボーパルバニーには絶対近づかないぞ」
対して、セレマはこのウサギが必殺持ちの可能性が高いと考えており、一撃でも攻撃を食らうと倒れかねない儚い美少年である彼は十分にウサギから距離をとって戦う。
「自身の体力の数百倍のダメージを食らったうえでくたばるのは死ぬほど痛いんだ!」
鬼気迫る表情のセレマは行人にとりつく肖像画をメインに神気を投射してダメージを与え、相手の射程から逃れるヒット&アウェイを繰り返す。
「目的は半分終わってんだから、後はいつもの仕事っスよ」
行人自身が急場を逃れていることもあり、後は発生した夜妖を倒せばOKだと、敵から十分距離をとる葵は改めて敵を見据えて。
「やっぱり、協力関係にない夜妖は固まったっスね」
ソイツらの無差別とはワケが違うと、葵は流星マークが描かれたサッカーボールをシュートする。
赤いエネルギーを纏ったボールは、鮮やかな一筋の光を残しながらこの場の全ての夜妖のみへとぶつかっていく。
「ウサギは首を狩る可能性もあるので、なるべく早く倒したいのよ」
同じく、距離をとって位置取っていたアシェンも敵全てを捉える。
「この大火力からは逃れられないのだわ!」
アシェンは行人を巻き込むことも考えて肖像画1体を外し、ライフル「グリード・ラプター」から砲撃を行う。
防御負荷のアシェンの砲撃を受け、身体を業炎が包む夜妖達だが、それでもなお、行人をメインに攻撃を続けてくる。
主に傷つく前線メンバー達。
その状況を見たフランシスは攻撃の集まる行人には、調和の力を賦活のそれに変えて癒しをもたらす。
ただ、周囲に響く呪いの歌が厄介だ。精神異常対策を事前に講じていた行人はともかく、他メンバーが時に惑わされてしまう。
そちらはヒット&アウェイを繰り返すセルマが正常な思考を仲間が行えるよう号令を発していた。
仲間の援護を受けながら、アランは思考の一部を自動演算化しながら敵の背後へと回り込んで。
「来い、セレネ。俺たちの本気を見せてやろう」
攻撃の直前、アランは月輪の聖剣『セレネ』の残影を再現して刹那元の世界での力を垣間見せ、紅き『殺意』のオーラをウサギへと叩き込んでいく。
「ここなら、い~~かな」
ウロは校庭脇に植えられた木に登り、仲間を援護すべく勘を働かせてビーム銃を発砲し、ウサギの足を撃ち抜く。
「…………!?」
赤い瞳に見つめられ、ウロは身を震え上がらせて。
「ぴえっ、いやだこっち来ないでウサギ」
「よそ見している暇などないのだわ」
そこで、アシェンが別方向から狙いを研ぎ澄ませて放った銃弾によってウサギの胸部を穿つ。
口から血を漏らす徘徊ウサギに対し、すかさずメイが迫って。
「今まで可愛いウサギさんのふりでメイを騙してたですか!? なんて、卑怯なのですよ!」
メイは空中を旋回し、ウサギの体を大きく切り裂く。
「…………!!」
自らの血を撒き散らした徘徊ウサギの目から光が消え、その小さな体躯を校庭へと横たえたのだった。
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最も危険な徘徊ウサギを討伐したことで、イレギュラーズ達による夜妖討伐は加速する。
残る敵を引き付けているのは依然として行人だ。
「――纏めて受け切ってみせる」
肖像画と人体模型の攻撃を受け続ける彼は自らの傷を修復させつつ、チームの壁となり続けていた。
相手が正気に戻って範囲攻撃を仕掛けるようなら、フランシスがすかさず天使の歌を響かせる。
一方で、アランなどは夜妖同士が攻撃を巻き込んで同士討ちするよう、序盤から立ち回っていて。
とりわけ、肖像画達は周囲へと歌を響かせる。すでに倒れた聴覚が過敏なウサギもそうだが、思考力に乏しい人体模型などは比較的すぐに呪いの歌の虜となっており、敵味方構わず攻撃を仕掛けることもあっていたようだ。
「狙い通りだな」
アランは肖像画を中央に固めるよう位置取りながら、オーラを纏わせた斬撃を浴びせかける。ウサギが倒れたことで、その対象は肖像画に移っていた。
続けざまにセレマが敵陣へと纏めて神気を浴びせかけていくと、肖像画達に亀裂が入っていく。
そのうちの1体に、アシェンが麻酔銃の弾薬を改造した特殊弾を撃ち込んで穿ち、地面へと落としてしまう。
程なくして、仲間を援護すべく援護射撃を続けていたウロがふわふわ浮かぶ肖像画を狙い撃ちして。
「そろそろ、撃ち落としとこ~~ね」
人体模型がいい具合に暴れ、傷つけあう状況となっていたのを受け、ウロは勘を働かせた一射で肖像画の眉間を射抜いて撃墜してみせた。
さらに、近寄られぬようにと立ち回りながら、無回転シュートを蹴り込んで込んでいた葵が肖像画の片方の動きが鈍っていたのを見て、一弾一殺の魔弾を蹴り込み、見事にその肖像画を粉砕した。
残る人体模型はなおも理性がないまま暴れ続けている。
模型である内臓などを投げつつ、辺りを走り回っていたそいつを横目に、フランシスが光線を続ける仲間へとミリアドハーモニクスを使い続ける。
フランシスの回復が続く中、メンバー達はその残り1体に攻撃を集中させて。
「なんで、そんなに動きたがりの模型が多いのですか!?」
別の依頼で、すでに人体模型と交戦済みのメイは空中を飛び回って相手を翻弄し、斬りかかっていく。
ようやく正気に戻った人体模型だが、すぐさま抑えに当たる行人が相手の影を踏むかの如く、動きを合わせて蔦纏う刀で斬りかかっていく。
そこで、気力の尽きていたアランがセレネと合わせて二刀の構えをとって。
「ここで消えろやァァァア!!」
紅と蒼の光の奔流は得物を包み、人体模型を包み込む。
「…………!!」
声帯を持たぬ敵は声すら上げることなく、夜の校庭に倒れていったのである。
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全ての夜妖を討伐し、セレマは鼻を鳴らす。
「なんてことない相手だったね」
少しばかり、セレマの身体が震えているようにも見えたが、彼は「怪異が見せる幻覚か何かだったんじゃないかい?」と軽く流してみせた。
「そうだ。その怪異を調査する為に俺はここへ来たんだからなあ……」
「それは行ってみないと解らないけれど、とりあえず一言」
そこで行人が更なる調査に意欲を見せると、アシェンが笑いながら彼をたしなめて。
「生徒に心配を掛けたら駄目なのだわ、先生!」
冗談半分での忠告ではあるのだが、大人でも1人では危ないとアシェンは心配してくれている。
「ああ、すまない」
とはいえ、行人も謝りこそすれ、自らの考えが正しいかを確認するまではと調査を続行する気満々のようだった。
「この学校、他にもいっぱい夜妖が出そうな場所がありそうなのですよ……」
とはいえ、メイの主張ももっともであり、すでに一戦を交えた直後。今回は討伐した夜妖の出現場所のみを調査することにする。
「しかし、噂話を起因とする存在にしては奇妙なこともあったものだよ」
セレマが言うには、こうした噂は1種ずつだからこそ噺として成立するのであって、複数出現するのならそれは茶番や大衆娯楽でしかないとのこと。
「少し、夜妖に対する見方を改める必要があるね」
「都会の学校はまるでお化け屋敷なのですよ」
メイもそんなセレマの主張に賛同していたようだ。
まず、一行が訪れたのは音楽室。
フランシスが得意な領域ということで、一度訪れたいと主張したのだ。
「なぜ、数ある肖像画の中から3枚だけなのでしょうか?」
頭上を見上げるフランシスは、壁に掛けられていた音楽家の肖像画を見上げる。
先程倒した3つがこの場にはなく、後は何事もなかったかのように全ての肖像画が一行を見下ろすのみだ。
フランシスは全ての肖像画に何か仕掛けられたり、差異があったりしないかをチェックし、呪術的な痕跡など発生の法則性がないか見極めようと試みる。
アランもこんなこともあろうかと取り出した懐中電灯で理科室を照らし、気になる所を確認する。
「夜邪の出現条件かァ……今んところ共通するのは時間帯。黄昏時……夕方か、夜中ってことぐらいか……?」
夜妖をそう呼ぶのは、彼が別世界にて近しい存在を相手にしていたからだろうか。確かに、その出現傾向は夜が多いようだが……。
フランシスもアランも、いずれの場所でもこれといった要因を見いだすことができない。
「元がどうなんだか分からんし、あんま意味がねぇよな……」
協力する葵だが、新たな発見があることには後ろ向きだ。
「ウサギ~~、ウサギのとこ見に行こ~~~~」
最後に、ウロが飼育小屋に行こうと皆を促して。
「ヨル……?? はよく分からんけどウサギもお腹減ってたんじゃない??」
被食者の本気を見たと天然でおどけるウロに対し、セレマは足を止めて飼育小屋へと近づこうとせずに遠くから見ることにしていたようだ。
「ん~、ここも変わった様子はありませんね……」
アシェンは寓話に出るような魔法陣などがあるかと思ったが、3ヵ所いずれもそうしたものがないことを確認する。
「現実の物が変貌して夜妖になった相手が今回の相手だったし、夜妖に同族意識が無いのは間違いなさそうだな」
それに、と行人は続けて。
「ただ、学園に夜妖が集中するのは、やはりおかしいと思う」
妖怪、都市伝説など、信仰、噂話が形を持ったようなものには違いないが、その要因がいまいちつかめぬことに行人はもどかしさを感じていたようだ。
「人々が集まる所に出てくんのか?」
アランは住宅街や公園にも出現している話を引き合いに出して。
「悪性怪異。お前らは一体何者なんだ?」
ただ、行人やアランの疑問に対し、答えが返ってくることはないのだった。
成否
成功
MVP
状態異常
なし
あとがき
リプレイ、公開です。
MVPは自力で急場をどうにかしてしまったあなたへ。
今回はご参加、ありがとうございました!
GMコメント
イレギュラーズの皆様こんにちは。GMのなちゅいです。
こちらは、拙作「再現性東京2010:忍び寄る足音」において伏見 行人(p3p000858)さんがアクターアクションを起こしたことで発生したシナリオです。
●概要
全ての夜妖の討伐
●敵……夜妖
異なる要因によって姿を現した2種が一度に襲ってくる形です。
生きている人々やイレギュラーズ達へと襲うことを優先しますが、共闘・連携するわけではなく、互いに範囲攻撃に巻き込むようです。
○走る人体模型×1体
夜の校内で人体模型が動き出し、全力疾走するという都市伝説です。
遠方からでもタックルや蹴りを繰り出してくる他、模型である臓物を投げつけたり、奇妙な叫び声を上げたりして襲い掛かってきます。
○動く肖像画×3体
ベートーヴェン、バッハ、モーツァルトと言った肖像画が動き出し、空中を飛び回ってギラギラと瞳を輝かせて襲い掛かってきます。
光る瞳で相手の動きを止め、音楽を奏でて相手を惑わし、呪ってくるようです。
○徘徊するウサギ×1体
小学校で飼育しているウサギが獲物を求めて夜な夜な中学、高校の校舎を徘徊しているというものです。
口元が地に濡れ、赤く目を光らせて獲物を駆り、朝になると飼育小屋に戻って何食わぬ顔をして過ごしているそうです。
●状況
練達、再現性東京で出現している夜妖に共通性はないものかと行人さんが調査を行っております。
夜、中学校の校舎にて、3種の夜妖から一度に襲われる形です。
他のメンバー達は行人さんを助けつつ、夜妖を討伐してくださいますよう願います。
事後はそれらが発生した現場(人体模型は理科室、肖像画は音楽室、ウサギは飼育小屋)を見て回ることができます……が、それぞれの夜妖の出現状況は大きく異なっているようです。
●情報精度
このシナリオの情報精度はAです。
想定外の事態は絶対に起こりません。
それでは、よろしくお願いいたします。
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