PandoraPartyProject

シナリオ詳細

秋になったらお茶会ですっ

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●妖精の輪
『ああ、秋が来た!
 常春の国アルヴィオンの妖精だって、きっと秋が大好きだ。
 木々は彩鮮やかに色を変え、冬へと備える。
 あと、食べ物は美味しいし(超重要なの!)。

 妖精たちは、踊るのが大好き。
 森に集まりお茶会を開き、切り株を椅子にして。くるくるくるくる踊って回る。
 ちょっと調子に乗って過ぎるいたずらをして人間を困らせるものもいれば、このときだけひっそりと現れる妖精もいる。
 そんな彼らが踊った後には。ときとして、妖精たちがいた証。フェアリーサークルができるのだという。
 木々のキノコが、まるく輪になっているのはその証拠。蝶やホタルだって輪になって飛ぶ。
 もしかして妖精の国に行けたりしないだろうか?
 ああ、妖精郷の門はいずこ』
……とある無名の伝記作家。

※注:今は『おとぎ話の門(アーカンシェル)』は新緑にて発見されている。

●遺品博物館
 そわそわ、そわそわと落ち着かない『遺品博物館館長代理』ノラ・グース。
 遺品博物館にて、イレギュラーズたちの妖精郷での続報を待っているところだ。
「彼らの帰りがそんなに気になるかい?」
 今日は珍しく『遺品博物館館長』枝折 流杉も一緒だ。
 普段、博物館の外回り活動を行っている館長がいるのは珍しいことに違いない。とはいえ、目立たない彼の存在に目を留めるものは少ないが……。
「き、気になってないですよっ! ノラはきっちりお仕事するのです。それにしても、何ですかー! ヒツギさんは。ノラがそう簡単に死ぬわけないじゃないですか!」
 遺品博物館職員であるヒツギ・マグノリアが引き起こした一件は、イレギュラーズたちの活躍によって上手く収まったようである。
 その時に勝手に死んだとされていたのがノラは大変不服である。
「ノラそんなに弱くないですっ!」
「困ったものだ」
 そういう流杉は特に困ったような表情を浮かべているわけでもない。
 無表情がデフォルトである。
「ノラだって結構強い子ですよ! この前も泥棒さんをやっつけましたからね!」
 ふんすと胸を張るノラだった。
「そうそう。ここへ来る途中に配達人から話を聞いたけど。彼らは上手くやったようだよ」
「えっ、えっ、先に言って欲しいですよー!」

●おかえりなさいっ!
 ノラは駆け寄るようにして、先の決戦から帰ってきたイレギュラーズたちを迎えるだろう。
 応じるものにはハグをかえして、ふんふんと匂いを確かめる。
「みなさん、大丈夫でしたかっ?
ノラはもちろん、みなさんが負けちゃうなんてちーっとも思ってませんでしたけど!
さあ、今回はご迷惑をおかけしたお詫びと……それと、たっぷり活躍を聞かせてほしいです!」
 ティースタンドにはずらりと並べられたお菓子の山。
 色とりどりの果実と花のジャム。
 腹を満たすための軽食もある。
「みなさんが無事に戻ってくるか、心配で心配で。それで、お菓子作りに没頭してたら。つい、焼きすぎてしまいました」
「いやあ、ノラのお茶はおいしいね」
 流杉は控えめにティーカップを口元に運ぶ。
「そうそう。今日は。運が良ければ……フェアリーサークルが見れるかもしれないよ」

GMコメント

布川です。
妖精郷も一件落着ということで、ノラ館長代理がお茶会を開いてくれるようです。
目指せPerfect Tea Time!

●目標
時刻は夕~夜ごろまで。
ちょっと遅いアフタヌーンティーですね。
日も短くなってきました。
楽しみましょう!

●登場
<遺品博物館>について
宛先の分からない遺品を集め、それをあるべき場へ帰すという活動をしている。
古いがよく手入れされている建物で、どの遺品も丁寧に保管されている。
見知らぬ鍵や、誰かのリボン、片方だけの靴。
いつか誰かが失くしたものが保管してある。
誰かが来るのを待つために。

『遺品博物館館長代理』ノラ・グース
館長代理を勤める獣種(猫)の少年。子供ながらに礼儀作法はなかなかのしっかりもの。
「お茶を淹れるのもお手の物ですっ!」
好きな紅茶はダージリン。
添えるジャムはオレンジママレード。
かつてノラも「一つの滅んだ集落の遺品」として、博物館に届けられた過去を持つ。

『遺品博物館館長』枝折 流杉
「探し物や失くし物があるなら、僕達はきっと貴方の力になれると思う」
「ゆっくりしていってくれ」
遺品博物館館長。とはいえ、博物館に訪れたとしても、彼の存在に気付かないものは多い。
やたらと影が薄く、控えめに思えるが、それは流杉の能力によるものである。
「他人に強い印象を与えにくく、忘れられやすい」。
イレギュラーズであればとくにこの効果の影響を受けることはない。
この世界に来る前にも遺品をあるべき場所へ返す活動をしていたという。
基本的に目立たず、のんびりお茶を飲んでいる。
収集のために戦地に赴くこともあり、戦闘力は高め。

ヒツギ・マグノリア
職員。
過去シナリオ『ラデリ』等に登場。
ヒツギは「過去に集落を焼き、息子を辛い目に遭わせたのは事実だし、息子になら殺されてもいい」と考えていた。イレギュラーズたちの活躍により一命をとりとめ、和解する。

呼ばれなければ表に出ることはなく、ひっそりと輪から離れて蛍の燐光でも見ているかもしれない。

●お茶会のメニューですよっ!
・フルーツケーキ
・スコーン&クリーム
・スイートポテトプティング
・バナナケーキ
・アップルパイ
・レモンのトライフルケーキ
・各種サンドイッチ(ハム、ツナ、たまご、フルーツサンド、etc)
 スイーツを中心に。軽食用のサンドイッチもあります。
 その他、薫り高いお茶が用意されています。
 ほか、リクエストがあればノラが応えてくれるでしょう。えっへん。
 調理設備があり、調理・持ち込み可能。
 未成年の飲酒はめっですよ、めっ!

●お茶会など
お茶会での話題についての一例です。
・「最近、どんな活躍をした?」
・「失くしものがある?/それを覚えている?」
・「取り戻したいと思う?/取り戻せると思う?」
他、気が向いたら答えてみるといいでしょう。必須ではありません。
イレギュラーズたち同士でもご自由にどうぞ!

●フェアリーサークルと踊ろう
 今日はフェアリーサークルが見られるようです。
 夜になると、近くに、きらきらと輝くキノコやちょうちょや、蛍。その他の生物によって光の輪ができます。基本的に地面に輪ができますが、空中にあるものもあります。
 空中のものは、上手く輪にぶつからずにくぐれれば幸運が舞い込むのだそうです。
 踊りたい人は踊り、歌いたい人は歌い、奏でたい人は奏でましょう。
 のんびりしたい人は、ゆっくりお茶をしましょう。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はAです。
 想定外の事態は絶対に起こりません。起こってたまるか。

  • 秋になったらお茶会ですっ完了
  • GM名布川
  • 種別通常
  • 難易度EASY
  • 冒険終了日時2020年09月19日 22時15分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

棗 茜(p3p000817)
流浪の鍛冶師
ラデリ・マグノリア(p3p001706)
再び描き出す物語
札切 九郎(p3p004384)
純粋なクロ
メイメイ・ルー(p3p004460)
約束の力
メリー・フローラ・アベル(p3p007440)
虚無堕ち魔法少女
アルム・カンフローレル(p3p007874)
昴星
カルウェット コーラス(p3p008549)
旅の果てに、銀の盾
シェプ(p3p008891)
子供じゃないヨ!

リプレイ

●今日はお茶会日和ですっ!
 目印は香ばしいバターの香り。
「わあ、とても良い匂いが……」
『さまようこひつじ』メイメイ・ルー(p3p004460)は、小道をたどって遺品博物館へとやってきた。
 迎えてくれるのは、どっさりとおやつを用意しているノラである。
「ノラさまは、たくさん、たくさん……心配して待っていてくださったのです、ね。ありがとうございます……」
 スカートの裾をつまんで、小さな声ではあるが、はっきりと。
「えと、そうでした。……「ただいま」」
「はいっ、おかえりなさいですっ!」

「はーい! 招かれたわ!」
『躾のなってないワガママ娘』メリー・フローラ・アベル(p3p007440)は堂々と一番いい席に陣取る。
「ご注文、ご要望はございますか? あったかいのも、冷たいのもありますよ!」
 流浪の鍛冶師』棗 茜(p3p000817)はメイド服を着込み、給仕のお手伝いだ。
「ふーん。で、何があるの?」
「食べ物はご覧の通りです。お飲み物は、紅茶、緑茶、コーヒーの他に……レモングラスのハーブティーです!」
「ハーブティーは、茜さんの提案なのです!」
「リラックス効果があるっていいますよね」
「じゃあ、それとそれとそれとそれと~……」
 次々とメニューを選ぶメリー。
「それにしてもすごいです。茜さん、もうメニューをぜんぶ暗記しちゃったんですか? とっても助かりますですよ! 手際もいいですし」
「まあね!」
 茜にとって、家事は慣れたものである。
「相変わらず、いや、いつもより豪勢だな」
『再び描き出す物語』ラデリ・マグノリア(p3p001706)は、帽子を預けて席に着いた。無事戻ってきたことで張り切っているのだろう。
「ノラは博物館の中で、喫茶店でも開くつもりか」
「! それはいいですね!」
 館長が咳払いをする。
 とたとたと足音を響かせてやってきた『救いの手』シェプ(p3p008891)はひょいと椅子によじ登った。
「招待してくれてありがトネ!」
 隣はメイメイ、羊の角である。メイメイはぺこりと頭を下げる。
「ア! おんなジ!」
「……です」
 メイメイの頭にも、羊の角がある。
「ふふ、お茶会へのお誘いありがとう」
『ゆるふわおにーさん』アルム・カンフローレル(p3p007874)は穏やかにカップをあおる。
「……まぁ、そうだな、お招きにあずかり感謝する」
『純粋なクロ』札切 九郎(p3p004384)は、そわそわとしつつ、アルムとラデリの所作を真似してみた。少しだけ熱かった。けれど、おいしい。
「お茶会……初めてなので少し緊張していますけど、あまり深く考えずに楽しむのが一番ですよね」
 慣れない風だが、九郎がピンと伸ばした背筋はまっすぐ。緊張がとければ、音ひとつ立てないくらいに器用だ。
「お茶会、お茶会、ここ?」
 そうしていると、ひょっこりと、テーブルの向こうに角が生えた。『新たな可能性』カルウェット コーラス(p3p008549)だった。
「ワァ、カッコイイ!」
「ボクのつの、トクベツ」
「クッション使うかい?」
 アルムに台をもらって、小さい者たちはようやく同じ目線に立つ。
「ありがとうございます……」
 茜がタルトにナイフを入れた。
「初めて、楽しみ。あまいもの、すき。お話、すき。楽しいこと、すき」
 断面で輝く果物にカルウェットは目を輝かせる。
「これは、ボクにとって、幸せ、決まった!」

「あ、誰か来ます」
 ピンと耳を立てる九朗。空から羽ばたく音がした。
「とうちゃーく!」
 蝙蝠の羽を持った男……遺品博物館のテリガン・ウルグナズが、スーツケースを抱えて降り立った。
「館長ー、次の遺品捜索依頼纏めといたぜー。って、オイラ抜きにしてお茶会始めるとかひどくねぇ?」
「もちろん席はある」
「呼ぶつもりだった……んならいいんだけどさぁ」
 そこにいたのは、なんとも不揃いで面白そうな集団。
 心当たりに、にいっと笑う。
「あんたらがローレット……イレギュラーズか、ノラから話は聞いてるぜ。
面白そうな話題に尽きないのとか、腕が立つってことをさ……お互いにいい関係が築けたらいいな?」
(あ、ふわもこだ……)
 コウモリの翼に、カラカルの頭。尾は狼か。アルムはふわもことした生き物が好きである。
「っと、オイラこんなナリだけど魔種じゃねーから、悪魔だから。悪魔と魔種をごっちゃにすんなよ、まぁヨロシクー」
 くるくるとテリガンの周りを回っていたカルウェットは、精一杯まっすぐになってみる。
「はじめまして、カルウェット、いうぞ。よろしくお願い、します」
 それにつられるように、一同も挨拶を交わした。

●楽しいお茶会
「ノラには親父が迷惑をかけたみたいだな。燃えたと聞いたときは息が詰まったよ、無事で何よりだ」
「そうですよ! ひどいですよ! もうー!」
 ラデリと、その父親……ヒツギが争った一件は、記憶に新しい。ヒツギの先走りであって、イレギュラーズたちの介入で事なきを得た。
「その割には親父も会った時点で無傷だったからな……おかしいとは思ってたが。親父との件では博物館にも迷惑をかけた、すまなかった」
「もう大丈夫かい?」
「あぁ、もう暴れたりはしないさ、一区切りついたからな。そういった意味で、俺は『失くしもの』を取り戻せたのかもしれない。……と、言うわけだから拳銃に手を掛けるのはやめてほしい、自業自得なのは分かってるが」
 手を挙げるラデリ。
 さりげなく腰の何かを気にしている館長。おそらく、ホルスターが下げられているのだろう。
 幾度となく親子喧嘩して、何度か叩き出されたりしていた。
「まあ、それならいいんだ。僕も……守るものは守らなくてはならないからね」
「ノラだって強いですからね!」
「そういえばここは「遺品博物館」だっけ」
「はいっ、ノラはここで働いているのです」
 アルムに、ノラがえっへんと胸を張る。
「宛先の分からない遺品を集めて、持ち主に返すのが仕事……だな」
 ラデリがそれに補足説明を加えた。
「なんでもだからなぁ。骨が折れるぜ」
 テリガンの言葉もあながち大げさというわけでもないのだろう。なんたってここの職員は、誰しも戦闘の心得がある。戦場に赴くことすら、少なくはない。
「また何かあれば館長自らが出向くのだろう。その時にローレットへ声を掛けてくれれば、こちらも依頼として手を貸せるはずだ」
「そうだね。また、声をかけさせてもらうよ」

●お茶会
「もらった!」
 メリーがイチゴタルトを手にとる。
「甘いものたくさん食べていいノ!?」
 シェプは暗闇の奥の目を輝かせ、たくさんのおやつをお盆に乗せていく。
「たくさんあるとどれを食べるか迷ってしまうね。とろうか?」
「ン! アリガト!」
 アルムは上背があるので、遠くに手が届く。
 カルウェットはそわそわしてそれを見ていた。
「どれかな?」
「ボク、最近まで食べる、したことなかった。何、食べる?」
「なラ、お気に入りさがス!」
「ラデリ、君? リンゴ、好き?」
 不思議そうにラデリを見つめるカルウェット。ラデリが手にしていたのはアップルパイだ。
「このアップルティーも……リンゴの茶だ」
「ほんと?」
「飲んでみますか?」
「これ美味しイヨ!」
 シェプはどっさりと集めてきた甘いものを並べる。
「ボク甘いもの大好きなノ、あとね甘いものと一緒のお茶が美味しの知ってル! だからとっても楽しみにしてタ!」
「甘いもの、幸せですね」
 おいしいとみればシェプが少し追加してくれる。メイメイは少しずつ切り分け、幸せそうにもぐもぐとする。
「ありがとうございます。あ、紅茶もいただきます、ね」
「はいはーい!」
 めまぐるしく働く茜であった。
「おっと、俺は冷たいのを淹れよう」
 アルムが立ち上がり、茶をついだ。

●どんな活躍をしたんだい?
「今領地二つ持ってるんだけど、できればもう一つ欲しいのよね。それには名声が必要なの」
 野心に燃えているメリー。
「そこで相談なんだけど、わたしがもっと幻想王国での名声を得る方法は無いかしら? さあ、みんなで考えよう!」
 ぱん、と机をたたいて辺りを見回す。
「ううん、僕はあまり冒険には行かないので活躍と言えるほどの物は無いんです……すみません」
 九郎の耳が垂れる。
「僕のより、皆の活躍を聞いてみたいです」
「うんうん、あたしも勉強させてもらうね?」
 茜も聞き役に回る姿勢だ。
 さりげなくアルムが椅子を勧め、皿を片付ける役を買って出る。
「ボクも妖精卿に行って妖精サン助けたノ! いっぱい困ってる妖精サンがいてそれをボクが見つけてみんなに運んでもらってタ……」
 シェプは、戦いの思い出を楽しそうに語る。
「羊さんですか」
 メイメイは目を丸くする。
「ウン!」
「……頑張ったんだな」
 ラデリはそっとカップを口に運んだ。
「角、あった?」
「アッタ! あと狼サンと赤ずきんサンとボクとは違う雪羊サンとも戦ったヨ! ねむねむしてずっと夢の中にいようっていう敵だったノ……!」
 赤い帽子を思い出し、シェプはきゅっと縮こまる。
「アッでもボク夢を見るのは好きなんダ。ボクのギフトで夢を見るとすごく幸せってみんな言ってくれるのが嬉しいシ、ボクも楽しい夢見られるからネ!」
 混沌の眠り。真っ暗闇に手を浸すと、それは夢へと誘うのだ。
「ボクの顔に触れるとねむねむできるヨ、触ル?」
「いいの?」
 そーっと手を出すアルム。ふかふかであった。眠くなるが、味わっていたかったので慌てて気をしっかりと持つ。
「たしかに良い夢が見られそうだね」
「へへ」
「も、もうちょっともふもふしていい?」
「いいヨ!」
 シェプはぴょこんとアルムの膝に乗る。
「もふもふも自慢! ノラサンのもふもふもボクと同じくらいもふもふ?」
「ノラも立派な職員として、手入れを欠かさないのです!」
「ふわもこ、いいよね……好きなんだ、うん。あの、嫌じゃなかったら……」
 九朗はきゅっと目を閉じる。良いよの合図だ。メイメイも同じようにしてみた。
 Fluffy Fluffy。
 両手にふわもこである。
「なんだか、褒められてるみたいですね……」
「て、照れますね……」
「触る? 触る!」
 カルウェットが列に並ぶ。角は避け、そっと触ってみた。
 アルムはちらりとラデリを見た。間違いようもなくふわもこである。ちょっと撫でたい。さすがに口にするのははばかられたが。
「……」
「……握手なら」
 というわけで、握手を交わしたのだった。

●大切なもの、なくしたもの
「……思いを、言葉にするのは、あまり得意ではないのです、が、皆さまのお話を聞いていたら、不思議と、混ざりたくなってきますね」
 メイメイはふんわりと微笑んだ。
「九朗様は、何をしていらっしゃいますか?」
「今してること……ポーカーですかね」
 九朗は、どこからともなくトランプを取り出した。
「僕の父が賭場をやっていて、僕もそこでポーカーをしてるんです。聞こえは悪いかもしれませんけど、僕は誇りを持ってやってます」
「ディーラーというやつね?」
「はい。だから、好きなものはトランプです。
シンプルなデザインのカードなのに、高度な心理戦ができるって素敵ですよね!」
 ざっと広げて見せる。53枚のトランプがまるで生き物のようにうなった。目にもとまらぬ素早さでカードを切る。
「しかも皆で集まって気軽に遊ぶのにも使えるってすごいです!」
 ぴん、と一枚をひっくり返せばそれにつられて残りが裏返る。その手さばきは、つい見とれてしまうほどだ。
「アッ!? 生きてる?」
「トランプ? あいさつ、する?」
 照れたように、完璧な一礼をする。
「あぁ、少し興奮してしまいました。こういうことを話す機会が殆ど無かったので……」
「もっとみたい、です」
「名声の形もいろいろね」

●なくしたもの
 そして、お茶会の話題は失くしたものへと移る。
「探しているもの、ですか。ちいさな木彫りの小鳥のチャーム、です」
 メイメイが懐かしそうにつぶやいた。思い浮かべているのだろう。紫の瞳は、優しく細められている。
「とうさまの手作りで、お気に入りだったのです、が」
「思い出の品だったんですね」
 九郎は頷いた。
「失くしたのは、ずっとずっと前だと思います。
鞄につけていて、いつの間にかに。戻ってきたら良いな、とは思いますけれど、きっとどこかに飛び立ちたくなったのかもしれません、ね」
「ものには役割がある。のかもしれないね……」
「失くしもの……と言えるかどうか分かりませんけど、僕、母がいないんです」
 しゅんと耳をたたむ九郎。
「僕が産まれてすぐに失踪してしまったらしくて。母の記憶はあまり無いんですけど、たまに会いたくなります」
「さみしい、いたい?」
 カルウェットは、そっと九朗の前にあめ玉を置いた。
 シェプが背伸びをして、カップに茶をつぐ。アルムが手を添え、それを手伝った。
「……すみません、ちょっとコメントしづらい話でしたね」
「いえ、大切な思い出、なのですね……」
「記憶、か。失くしものの中でも、見つけるのが難しいものだね。すこしでも助けになれればとは思うけれど」
 記憶ほど、あやふやなものはない。
 いろいろな世界から、この世界にやってきたり。生まれ落ちたり。確かな記憶を持っていないものは、たくさんいた。
「俺はいろんな世界を転々としてきた、ような気がするんだけど、
この世界に来る前の記憶がはっきりしないから、無くした記憶の欠片……みたいな、何か発見があるかも……?」
「思い出の品で、少しでも助けになれればいいのだが」
「とはいえ、そう都合よくは行かないか。今覚えてないってことは、別に思い出さなくてもいい記憶かもしれないしね」
 アルムが少しさみしそうにそう言うので、シュプはもふもふをサービスする。
「ん? 忘れ物……ボク、昔の記憶ない。記憶、忘れ物?」
 シュプは首をかしげた。カルウェットもまた何か考えているようだった。
 カルウェットの記憶は、ふっと目が覚めたら知らぬ暗い山の中だったところから、はじまる。
 おぼろげでつかみ所がない、記憶というもの。
 たくさんまねて、たくさん言葉を覚えて、やっと表現できるようになったもの。
「……ボクの、角。おそろいだって。だれか、言う。だれか、わからない。声も、姿も、なにも、忘れ物。けど、きっと、大切。大切な、忘れ物。いつかきっと、帰ってくる」
 カルウェットは力強く頷いた。
「簡単に届く、しない。ゆっくり、少しずつ、集める、する。だからよい」
「そうだね。ゆっくりいこう」

●フェアリーサークル
 こうして、和やかにお茶会は過ぎていき、日は傾いていた。
「いろいろ参考になったわ! わたしが幻想をまとめ上げる日も近いわね!」
 メリーは満足そうに最後のクッキーをほおばった。
「働いたよー!」
 ぐっと背を伸ばす茜。
「もうそろそろ、フェアリーサークルの時間ですね!」
 心なしか声を潜めるノラ。
 メイメイはそーっと、光の輪が出来上がるのを見守っている。
「……私も、上手に、踊れるでしょうか」
 ぎゅっと、手を差し出してみる。
「ワァ〜! 綺麗だナァ!」
「歌ったり。踊ったり、あの輪をくぐったり、するんだったか?」
「エッ……! 一緒に踊るノ? ボク踊ったことないんだけド……大丈夫かナァ」
 そわそわとフードをかぶりなおすシェプ。
 
 いよいよ、はじまった。

 生き物が。妖精たちの呼吸が輪を作り明滅する。夕日と交代するように、燐光が舞う。次第にそれは強く、輝くものとなっていく。
「わぁ、綺麗ですね」
「……きらきら。すごい! これ、すごい。あっち、こっち、あそこ! わわ、きれい、きれい」
(俺は運動は苦手だから、見るだけ、見るだけ)
 アルムは穏やかに切り株に腰かける。
「えっと、僕も踊れないので、歌いますね」
 九郎はそっと歌いだす。
「こうやって皆で歌ったり踊ったりするのって素敵です」
「お空! お空、にも。飛ぶ、できない。飛ぶ、したい。くぐりたい。うううううー」
 じたばたするカルウェット。
「……これ、踏むすると、なんか踊る、してるみたい、だ」
 ぴょんぴょんはねるカルウェットを、そっとアルムが持ち上げてみる。
「それ」
「ヤーーーーッ!」
 ひょい、と軽く放り投げられて、キラキラと輝くキノコにぶつかった。光の輪をくぐり、キノコにぽよんとぶつかって、着地。
「飛んだ! 飛んだ! ひっひー」
「!? できた!」
「ボクも!」
「ふふ、順番ね」
「下手くそだけど、ボクも歌うぞ。みんなも、一緒。楽しく、歌う、踊る」

「綺麗なんだろうね。皆、……精霊たちもうれしそうだ」
 ラデリは、飲み物を持って、燐光を眺めるヒツギの隣に腰掛ける。
「しばらくは安静と聞いたが、もう大丈夫なのか」
「ああ。もう大丈夫だよ。ずいぶんと良くなった。少なくとも……」
 何を言いかけたのか、ちょっと迷って。おそらく以前のヒツギなら……考えていたのは、せめて、ラデリに遺してから、だとか。そういうことだったろうが。
 それから、ほほ笑む。
「少なくとも次があれば相談するさ。ローレットは、頼りになるところだろう」
 もう勝手に炎に飛び込むような真似はしないということだ。
 取り戻せた、と実感が湧いた。
 ヒツギはそっとぬいぐるみを撫でる。
「待て。それ、新しいものじゃないか」
 ヒツギが持っているぬいぐるみが、前見たものとはちがう。
「これは……前の戦いで気を使ってもらったとはいえ、ちょっと焦げてしまったしほら、しょっちゅう一緒にいれるわけじゃないし……」
「変態め」
「……」
 相変わらずのようではある。
 それから、親と子は、言葉少なに燐光を眺める。
 マグカップからそろいの湯気が立ち上っていた。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

というわけで、お茶会はつつがなく終了です。
お疲れ……は癒やせましたでしょうか!
だいたいいつもリプレイを書くときは「かわいいな……」とか「かっこいいな……」とか、プレイングに感極まって立ち上がって噛みしめる瞬間があるんですが(何の告白だろうか……)今回はとくにそれが頻繁でした。かわいいな……。
気が向いたらまたお茶でもいたしましょうね!

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