PandoraPartyProject

シナリオ詳細

<幻想蜂起>狂気の裏に潜む毒

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●蠍の毒
 幻想楽団『シルク・ド・マントゥール』の公演以来、レガド・イルシオンは不穏な空気に包まれていた。
 原因不明の頻発する猟奇事件の数々。徐々に人々の心は荒み、燻る不満は燃え上がりつつあった。
 平和な村――ここ、アースム村も同様だ。
 百人程度で構成される小規模な共同体。そんな小さな村にも狂気の影――否、毒が廻ろうとしていた。
「さぁ立ち上がれ、アースム村の皆々よ! 幻想を狂わせる貴族の良いようにさせてはならない!」
 外套で身を隠す頬に傷のある男が声高らかに村人を煽動する。
 始めは村の自警団だけだった聴衆は、いまや村のほぼ全員――百人程度の規模に膨れあがり、男の唄うその熱に浮かされていた。
「武器を取れ! 怒りを燃やせ! 支配と搾取を繰り返す、貴族連中に君達が抱いて来た不満をぶつけてやれ!」
 ここ幻想で貴族に逆らうなど愚の骨頂である。で、ありながら村人達は熱に浮かされたように武器を取り声をあげ叫ぶ。
 それは不可思議な狂気と言うよりは、意図的な熱病だ。
 武装蜂起を決意する村人達を見て、煽動した男は満足げに頷いた。

 ――村の外れ、村人達の目の届かないところに屈強な男達が集まっていた。
 その中には煽動していた頬に傷のある外套の男もいる。
「へっ、上手くいったな」
「小さな村で派手さはないが……まあ及第点だろう」
 口の端を釣り上げ笑う男達を外套の男が嗜める。
「まだ仕事は終わっちゃいない、気を引き締めろ」
「わかってるさ」
「全ては我らが頭領『キング・スコルピオ』の為に、ってな」
 まだ武装蜂起の準備が終わっただけだ。これから始まるのだと、男達は瞳を滾らせ、その場を後にする。

 ――男達は気づかなかった。その会話を震えながら身を隠し、聞いてしまった村の少女のことに。


 幻想国内で広がる惨劇、猟奇的な事件。
 原因不明の事件の数々はやがて人々の心を蝕み、燻る不満を燃え上がらせていく。
 燎原を炎が征くが如く、烈火のような激情に駆られ、人々が貴族達に楯突こうとする異常事態。
 当然のように、貴族達は冷徹に、即時の軍派遣による完全鎮圧を決定した。
 それは猟奇事件とは桁違いに、ただただ無意味な犠牲者を増やす最悪の事態だ。
「そこで、ローレットが――ギルドマスターのレオンちゃんが貴族連中に待ったを掛けたの。『何でも屋』であるローレットの出番だってね」
 情報屋の『黒耀の夢』リリィ=クロハネ(p3n000023)がいつになく真面目に(ちゃん付けだが)言葉を重ねる。
 幸い反乱蜂起は比較的小規模、初動状態のものが多い。で、あれば必要最小限の被害で済ますには、市民レベルでの知名度も十分高いローレットが適任だ。
 そして重要なのは初動に軍を動かす事でなく、最悪訪れる『更に大きな反乱』の為に戦力を温存することではないか、とレオンは言ったそうだ。
「要約すれば、今回の反乱封じはローレットがやるから軍派遣は待てということね。被害者が多数でるまえに、反乱を阻止する。それがローレットの方針よ」
 そこまで言ったリリィが依頼書を取り出して今回の依頼について説明を始める。
「今回の混乱に乗じてラサで壊滅した大盗賊団『砂蠍』の残党連中が、武装蜂起を煽動しているようなの」
 それは本当に小さな村で起こった出来事だという。最初は街宣程度にしか思われてなかったソレは、気づけば村全体を巻き込んだ武装蜂起へと至ってしまっていた。
「たまたま井戸水を汲みに行った薬屋の少女が、煽動する男達が話している内容を聞いてしまったそうでね、『キング・スコルピオ』の名前も噂話程度には知っていたそうだけど、それを聞いて怖くなって逃げ出してきたってわけ」
 ローレットで保護した少女の話を頼りに裏を取ってみれば、確かに焦臭い連中が裏で暗躍していたようだ。
 幻想中に広がる狂気の影響というよりは、より意図的な犯罪の臭いがする。
 平和な村の村人を煽動して何を企んでいるのかはわからないが、何にしてもこのまま放置すれば貴族の武力によって鎮圧されてしまうだろう。それは集団自殺と変わりない。
「村人達の暴動を収束させ、可能ならば残党の捕縛、或いは殺害含めた対処を行う事。それがオーダーになるわ」
 武装蜂起した村人は百五名、煽動を行っていた残党と思われる連中は十五名。計百二十名を相手に立ち回る必要がある。
「村人達をすべて相手取る必要はないわ。力を見せれば逃げ出す物が大半のはずよ。ただ、そうね……残党の連中をあぶり出すのには一工夫が必要かもしれないわね」
 リリィの言葉にイレギュラーズは頷いた。リリィは伏せていた目を上げると、イレギュラーズを真剣な眼差しで見つめた。
「不穏な空気が幻想中に漂っているわ。しばらくは悪夢にうなされそうね……。けどね、貴方達がきっとこの状況も打開してくれるって、私はそう思うわ。だから、がんばってね」
 レオン曰く、この件はサーカス事件を解決する為には必要不可欠だ。
 ローレットにとって、イレギュラーズにとって重大な分岐点に位置していることだろう。

GMコメント

 こんにちは。澤見夜行(さわみ・やこう)です。
 幻想中で起こる武装蜂起の影に蠍が潜んでいるようです。
 狂気とは別の可能性がそこにあることでしょう。

●依頼達成条件
 ・アースム村の武装蜂起の収束
 ・可能な限りの『砂蠍』残党の捕縛または殺害

●情報確度
 情報確度はAです。
 想定外の事態は起きません。

●『砂蠍』残党について
 屈強な男達が旅人を装って村に滞在しています。
 十五名。
 リーダー格の一名は頬に傷があり外套を纏っています。
 残党達の使用スキルは以下の通り
 ・奇襲攻撃
 ・肉薄戦
 ・射撃
 ・曲芸射撃
 ・フリーオフェンス

 十名が近距離武器を装備し、五名が遠距離武器を装備しています。
 戦闘経験も豊富で、手強い相手になるでしょう。  

●村人たち
 煽動され武器をもった村人達。
 煽動されるがままに武器を振るうかもしれませんが、脅威にはならないでしょう。

●想定戦闘地域
 アースム村の広場になります。遮蔽物のない広く開けた場所になり、戦闘は問題なく行えます。その他目に付く障害物はなく戦闘に支障はでないでしょう。

 皆様の素晴らしいプレイングをお待ちしています。
 宜しくお願いいたします。

  • <幻想蜂起>狂気の裏に潜む毒完了
  • GM名澤見夜行
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2018年05月07日 21時55分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ロザリエル・インヘルト(p3p000015)
至高の薔薇
シェンシー・ディファイス(p3p000556)
反骨の刃
伊吹 樹理(p3p000715)
飴色
メートヒェン・メヒャーニク(p3p000917)
メイドロボ騎士
スリー・トライザード(p3p000987)
LV10:ピシャーチャ
クロネ=ホールズウッド(p3p004093)
自称騎士の騎士見習い
ハロルド(p3p004465)
聖剣使い
アレクシア・アトリー・アバークロンビー(p3p004630)
希望の蒼穹

リプレイ

●阻止へと動く
 アースム村に辿り着いたイレギュラーズを待っていたのは、いまにも武装蜂起を開始しかねない村人達だった。
 村の中央広場に集まり、武器を持つ殺気だった村人達。その視線の先には、外套を纏い頬に傷のある男が、腕を振り上げ村人達を煽動していた。
「俺達はもう我慢の限界だ! ついにこの怒りをぶつける時が来たのだ!」
 燃え盛る貴族への不満が、村人達の意志を有耶無耶にし、焚きつける。
 男の周囲に目立った者はいなさそうだった。
 この頬に傷のある男が『砂蠍』の残党でこの村での『仕事』をまとめ上げるリーダーなのだとしたら、きっとこの村人達の中に男の仲間が潜んでいるはずだ。
 イレギュラーズの成すべき事は、武装蜂起の収束と、可能であれば砂蠍関係者の捕縛にある。
 イレギュラーズは旅人を装いながら、集まる村人達の中に紛れ込んだ。
 油断なく、人々を見回して、怪しい動きをする者がいないか確認する。砂蠍関係者を一人でも多く見つけておくためだ。
 そんな中、演説を繰り返す男の元へ、歩み出るイレギュラーズがいた。『聖剣使い』ハロルド(p3p004465)だ。
「茶番だな。犯罪者どもが笑わせてくれる」
 演説に割り込む形で大声を上げながら出てきたこの男に、頬に傷のある男は訝しげに睨む。
「なんだ貴様は? この村の住人ではないな?」
 男の言葉と同時、幾人かの村人らしき人間が、耳打ちし前にでようとする動きを、イレギュラーズは見逃さなかった。その者達は、壇上にいる男の挙げた手に合わせて動きを止めるそぶりを見せる。
 イレギュラーズは砂蠍関係者とアタリをつけてその者達をマークした。
「ふん、立派なお題目をあげちゃいるが……おい、そいつらの正体を知っているのか?」
 ハロルドは頬に傷のある男の質問には答えず、村人に勿体付けて語りかけ、幾許かの興味を引くように誘導する。
 突如出てきたハロルドに、村人達も訝しげに顔を顰めて、周りの者と相談し合う。この男が一体なにものなのか? そして正体とは一体? ハロルドの言葉に十分な注目が集まった所で、ハロルドは一歩身を引き仲間へと後を引き継いだ。
 ハロルドの後ろから、小柄な女性が現れる。『特異運命座標』アレクシア・アトリー・アバークロンビー(p3p004630)だ。
 アレクシアは村人達に丁寧に頭を下げると、ハッキリとした声色で村人達に話しかける。
「皆、聞いて。私達は特異運命座標。イレギュラーズと呼ばれている者だよ」
 アレクシアはゆっくりと言葉を紡ぐ。
 この村の武装蜂起を聞きつけ、貴族が軍を用いて鎮圧に来る事、そうなれば犠牲者が一杯出てしまう事、そして自分達はそうならないように村人達を止めに来た事。
 小さな身体で一生懸命に説明をするアレクシアの言葉は確かに村人達に伝わっていた。ただ怒りと共に振り上げた武器をどこに収めるべきなのか困惑のままに顔を見合わせてしまう。
 アレクシアが言葉を続ける中、『メイドロボ騎士』メートヒェン・メヒャーニク(p3p000917)と『自称騎士』クロネ=ホールズウッド(p3p004093)、そしてローブを纏いその異質な身体を見せないようにしている『暴食麗花』ロザリエル・インヘルト(p3p000015)は、マークしている男達以外にも、人垣の中で連絡を取り合うそぶりを見せる男達を見つける。どの男達も他の村人に比べ、体格が良く、『場』慣れしている様に見えた。
  『飴色』伊吹 樹理(p3p000715)のエネミーサーチも、そんなイレギュラーズの観察を肯定するように、数名の男に反応を見せることがわかった。その結果を受け、イレギュラーズも共に連絡を取りながら警戒を高めていく。
 アレクシアの説得を援護するように『反骨の刃』シェンシー・ディファイス(p3p000556)が村人達をギフト『気迫の蛇眼』で威圧した。一部の村人は戦意を失い、武器を下ろしたのが確認できた。
 アレクシアの言葉は、集まっている村人達の熱量を失わせていく。その様子に頬に傷を持つ男はアレクシアの声に割り込み口を挟んでくる。
「都合の良いこと言ってるが、貴族が良いように従わせるためにお前達に依頼したんじゃないのか?」
「何を――」
 返そうとする言葉を遮って、
「だいたい、お前達に従って幻想中に起こる猟奇染みた事件が止まるのか? 彼等がもつ不安や、何もしようとしない貴族への不満は解消されるのか?」
「――それは約束できない。……でも、事件は私達が必ず止めて見せるよ」
 アレクシアの言葉に続けるようにシェンシーが村人達へ問いかける。
「お前達はどうなんだ。こいつらに言われるままに武器を取って、武装蜂起を決行したとして、その先は考えているのか。誰かの言葉に踊らされて命を賭ける馬鹿なのか? どうだ?」
 武装蜂起の先、アレクシアの言葉を信じれば、村人達に待っているのは虐殺にも似た未来だ。熱に浮かされていたとはいえ、そこまで考えが至らなかったことはシェンシーの言うように馬鹿と言わざるを得ないのではないのか。
 村人達が自分達の行為を振り返っている最中、一人の男が震える手で武器を持ち前にでてくる。
 アレクシア、ハロルド、シェンシーが村人達に紛れる仲間へ目配せする。帰ってくるサインは白。砂蠍の残党ではなさそうということは、誰かに焚きつけられたか――? 油断することなく男を見やれば、男は怯えながらも声を振り絞る。
「あんた達の言ってることはわかるけど、俺達はもうやると決めちまったんだ! あんた達は、この人達の言うようにきっと貴族の手下だ! そうに違いねぇ! 出て行け! 村から、出て行ってくれ!」
 根拠のない熱に浮かされただけの言葉に、イレギュラーズ一同は呆れると同時に大きく息を吐く。焚きつけられただけなのは間違いないだろう。これで殴りかかってくるのであれば対処も簡単だったが、足まで震えさせているのを見ればそれも無理なのがよくわかる。
 村人達を掻き分けて『LV7:グール』スリー・トライザード(p3p000987)が前へでると、
「私達は、元凶は兎も角、蜂起した方々を討てとは、言われておりません。
 故に、今退く方には危害は加えないと、約束いたします。
 いかがでしょうか?」
 その言葉は信頼に足るか、村人達がざわついて隣のものと相談する。その様子を確認してからスリーはさらに言葉を続ける。
「……逆に言えば、
 退かぬならばこちらも、相応に対処せざるを得ないと、
 ご理解いただけましたら、幸いです」
 言い終わると同時に中空から大鎌を取り出して、スリーが手にした武器に、村人達のざわつきは大きくなっていく。
 そんな村人達を鎮めるように、背を折った老人が一歩前にでる。
「先ほどもこの者達の正体と言っておりましたな。元凶……、そのようなものが本当にいるのでしょうか?」
 老人の疑問にハロルドが頷いて、頬に傷を持つ男を指さす。
「こいつらはラサで壊滅した大盗賊団『砂蠍』の残党共だ。こいつらが話している所を、この街の薬屋の娘……シウィといったか、が聞いている」
 その言葉に、村人達が、「砂蠍、聞いたことあるぞ」とか「そういえばシウィがいないぞ、どうしたんだ」など言葉をあげる。
 この言葉に頬に傷を持つ男は苦しそうに顔を歪ませる。マークしている者達が慌ただしげに動き出した。
 ざわめきはどんどんと大きくなり、その視線が頬に傷のある男へと向けられていく。
 問い詰められる男は、しばらく為すがままになったかと思えば、突如外套に隠していた武器を振り上げた。
「ちっ、上手くいっていたところに飛んだ邪魔が入ったな……始末するぞ」
 その言葉と同時に村人達に紛れていた盗賊達が一斉に武器を構える。数は――十五名。事前に聞いていた人数だ。
「全員避難しろ!」
 イレギュラーズ達が村人に声をあげると村人達は武器を捨てながら蜘蛛の子散らすように逃げていく。
「仕事の邪魔をしてくれたんだ、その命で贖ってもらうぞ!」
 『砂蠍』の残党、頬に傷をもつ男が、声をあげた。

●剣をもって毒を制す
 イレギュラーズの動きは素早かった。
 事前に半数程度はマークしていたこともあり、砂蠍の残党達が武器を取り出したところで奇襲を掛けることに成功したのだ。
 この動きは、残党達にイレギュラーズの力を警戒させると同時に、逃げ出す村人達から注意を逸らす事に繋がった。場合によっては村人を人質に取られたかもしれなかったが、そうはならなかったのだ。
 また、この奇襲で二名の残党に致命傷を与え、命を奪うことに成功した。
 イレギュラーズの力を見せ付けた奇襲となったが、戦い慣れた『砂蠍』の残党は冷静に立て直し、まるで最初から倒された二名はいなかったかのように振る舞う。
 仲間の死を厭わないその冷徹さに、イレギュラーズもまた命をやりとりする場面に直面しているのだと覚悟を新たにした。
 誰よりも素早く動いたのは騎士を自称する少女クロネだ。
 刺突剣を構え、瞬発力に任せた踏み込みを見せると、リーダー格である頬に傷のある男へと肉薄し、鋭い踏み込みからの突きを放つ。
 必中と思われた突きはしかし寸前で狙いを外される。男の太い腕に掠り薄く血が溢れた。男はニヤリと口の端を釣り上げると、手にしたナイフをクロネの喉元目がけて付いてくる。
(早い――!)
 慌てて腕を引き戻し武器を振るってナイフの狙いを外すと、一度間合いを広げた。
「思った以上にやるようですね。でも、これなら――」
 武器を構え集中し、身体能力のギアを一段上げるクロネ。そうして突き出された瞬速の突きは今度は狙い通りに男の屈強な肉体を串刺しにする。
「ちっ――女やガキだと思って油断するな! こいつら強敵だ! 囲んで倒せ!」
 リーダー格の男が部下に向かって声をあげると、すぐさま残党達はチームを作ってイレギュラーズに向かってくる。
「上等だ。やらせるかよ!」
 聖剣リーゼロットを手にするハロルドが戦場を駆ける。
 聖剣と同調し、その力を僅かながら取り戻すと、聖剣がもつ守護の力を瞬間的に魔を討つ力へと変換し、銀色に輝く斬撃を放つ。輝く斬撃は残党の一人に直撃し、肩口から袈裟斬りに斬り伏せる。血の水たまりを作りながら一人倒れ命を散らした。
 ハロルドは止まらない。倒れた残党の傍にいたもう一人へ向かい、一足飛びに間合いを詰めると、一合、二合と斬り結ぶ。残党が横薙ぎに振るった剣戦がハロルドの腹部を切り裂くも――浅い。生まれ出た隙を狙ってハロルドが上段から斬りつける。
「ぐふっ――」
 血の塊を吐き出しながらまた一人斬り伏せることができた。だが、残党も仲間を無駄に死なせるわけではない。ハロルドが二人目を斬り伏せると同時にアクロバティックな動きから銃弾を放ち、弾丸がハロルドの身体を貫通する。
「くっ!」
 衝撃に膝を折りそうになるハロルドに直ぐさま樹理が対応する。回復効果のある薬を用いて傷を癒やしたのだ。
「少し痛むわよ」
「構うな、やってくれ」
 元々特殊な医療チームで働いていた樹理は、素早く的確にハロルドの――仲間の――傷を癒やす。
 医療に関わる知識と、薬学知識と素養が遺憾なく発揮され、仲間達にもう一度戦う力を与えていった。
「治療なんてさせるかよぉ!」
 治療していることに気づいた残党が樹理を狙い銃口を構える。引き絞られる引き金。だが――。
「治す方が専門だけど、元々、普通の医者じゃないからね。盾を持ってるのは伊達じゃないっての、教えてあげる」
 両の手に構えた大盾を広げれば銃弾は明後日の方角へ飛んでいく。
 通称【ゲートキーパー】と呼ばれる攻防一体の大盾を操る樹理は、防戦において無類の強さを発揮する。
「これでよし、無理しないでね」
 仲間の傷を癒やした樹理が、盾を構えて次の仲間の傷を癒やしに戦場を駆けていった。
「あのキング・スコルピオの部下が女一人倒せないような腑抜けばかりだったなんて、これでは件の盗賊王や盗賊団もたかが知れているね」
 リーダー格の男と、その周りにいる残党達を挑発するように言葉を漏らすのはメートヒェンだ。
 メイド服を翻しながら残党達の攻撃を受け止め、隙を見つけて強打を放つ。戦闘慣れしたその動きに残党達が浮き足立つ。
「安い挑発に乗るなよ――! どんな外見でも俺達一人一人より強いと思え!」
 リーダー格の男がメートヒェンの挑発を受け流しながら、仲間達を鼓舞する。
(挑発には乗らないか……相当練度が高いみたいだね)
 繰り出される斬撃をその身に受けながら、残党達の練度に舌を巻くメートヒェン。しっかりと間合いを見極めながら、リーダー格の男にシールドバッシュならぬレッグバッシュを繰り出した。振り抜いた足が男の顎を捕らえるも、踏鞴踏みながら踏みとどまる。
「今ので倒れないなんて、やっぱり強いね」
「ふざけるなよ。こんなイカれた威力の蹴りを繰り出せるメイドなんていてたまるか」
 首を振りながら男が愚痴る。
 戦いは一進一退ながらも、イレギュラーズの優勢で進んでいた。
 一人、又一人と残党の命を奪っていく。死にものぐるいで仕掛けてくる残党相手に手加減などできはしなかった。
 当然連携にすぐれた残党達もただではやられていない。素早く動くクロネとハロルドを厄介とみたのか、二人に攻撃が集中され、凶刃と凶弾が二人を襲う。樹理の治療により持たせていたものの、限界も訪れ、二人はパンドラに縋ることとなった。
 だが二人に攻撃が集中したことで、他の面々が残党達を各個撃破しやすくなったのは確かだ。
「手加減の余地はない――」
 赤き血潮を滾らせながら、シェンシーが焔を放つ。燃え盛る火炎が残党を飲み込み焼き殺す。
 立ち止まることなく、リーダー格の男へと肉薄するシェンシー。
「アンタだけは殺さない程度に燃やしてやるさ」
「はっ! そいつはお優しいことだ!」
 腕を振るえば焔が迸る。渦巻く火炎に外套を焼かれながら、リーダー格の男が踏み込みナイフを振るう。肩に食い込む鋭きナイフの痛みに奥歯を咬みながら、威嚇術で吹き飛ばす。血を吐きながらも、倒れることはない。
 情勢不利を悟るリーダー格が一歩後ずさるが、その動きをスリーが見逃さない。
 回り込むように移動すると、進行を塞ぐようにブロックする。
「ちっ、邪魔だ――!」
「邪魔、と言われて、はいそうですか、というわけには、行きませんので」
 スリーに振るわれるナイフを紙一重で躱し、勢いそのままに蹴撃を加えて反撃する。薄らと塵が舞った。
 茨の鎧で身を包むロザリエルが、意のままに動く、頑強な棘のある蔓を目にも止まらぬ早さで突き出す。
 銃砲と遜色ない殺傷力を持つその一撃が、残党の一人を貫いた。断末魔の悲鳴をあげることなく、残党が血を吐き倒れる。
「残りはわずかね」
 荊を蠢かしながらリーダー格の男へと近寄っていくロザリエル。傷ついている他のイレギュラーズもまたリーダー格の男を包囲するように近づいていく。
「うぉぉぉ、どけぇぇ――!」
 残っていた残党、最後の一人が我武者羅に武器を振るいながら、リーダー格の男の元へと走る。
「ここはまかせて、いけ!」
 残党がリーダー格を庇うようにして逃げ道を用意する。リーダー格の男は一瞬悩む仕草を見せたがすぐに逃げようと走り出した。だが――。
「逃がしは、しないよ!」
 アレクシアが放つ青い衝撃波が、リーダー格の男を守ろうとする残党を飲み込み吹き飛ばす。同時にスリーが疾駆し、逃げ道を再度塞いだ。
「く、くそっ――!」
 逃げ道を塞がれたリーダー格の男は、ついに観念したように動きを止めた。
「あぁ……わかった、降参だ」
 ナイフを捨て手をあげる男。これで終わり、と気を許した瞬間、男の口の端が釣り上がった。
 何の前触れもなく走り出した男が目の前にいたメートヒェンに肉薄すると、外套の下に隠し持ったもう一本のナイフを振るう。不意の致命打とも言える一撃を受けたメートヒェンが地面に倒れ、追撃の凶刃が振り下ろされようとして――咄嗟に駆けたスリーとロザリエルの蹴撃が見事に男を捕らえた。
「か、かはっ――」
 短く喉を鳴らし息を吐き出すと、意識を失い倒れる男。
「――終わったか」
 動きを止めた残党達を前に、ようやくイレギュラーズは息を吐く。
 手強い相手だったと、自分達の傷を見て思う。
 意識を失い倒れるリーダー格の男を捕縛しながら、全員がなんとか無事であったことに安堵した。

●収束
 頬に傷のあるリーダー格の男を捕縛し、戦いを終えるイレギュラーズ。
 忌々しげに顔を歪めながら口を閉ざす男の処遇は、ローレットに任せることになるだろう。
 残党達の死体を漁るも、『砂蠍』であることを証明する物品は見つからなかった。ただ、倒れる残党達の肉体には蠍がモチーフの入れ墨があることがわかった。
「あの……ありがとうございました」
 自宅の薬屋に隠れていた薬屋の娘シウィが頭を下げる。
 逃げ惑うだけの村人にも怪我人はでた、だが幸いにも死者はでなかったのだ。
「こちらこそ、勇気をだしてくれてありがとう」
 樹理が微笑みお礼を返せば、少女に顔が浮かぶ。
 幻想蜂起、一先ずはその一つを解決することができた。
 この先に待つのは、果たして。
 イレギュラーズは次なる戦いの予感を感じながら、アースム村を後にした。

成否

成功

MVP

アレクシア・アトリー・アバークロンビー(p3p004630)
希望の蒼穹

状態異常

なし

あとがき

 澤見夜行です。
 依頼成功となります。

 説得と警戒のプレイングがよく、残党全員のあぶり出しはできました。
 代わりに戦闘ではリーダー以外への不殺が足らずリーダー以外は全滅しました。
 とはいえ、リーダーを捕縛できたのは素晴らしかったと思います。
 MVPは説得とリーダーへの動きに対応していたあなたへ贈ります。

 依頼お疲れ様でした。次の依頼に備え今はしばしの休息を。

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