シナリオ詳細
再現性東京2010:X+Y=?
オープニング
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絶体絶命なつのよる。
完徹決定ほんじつは。
おいおい、やばいよ、こりゃやばい。しゃれにならんわ、むりむりだ!
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塚本シゲルは少年漫画家である。
しかもギリのギリになってようやくネームを描くような印刷所泣かせの漫画家だった。
それでも人気があるものだから打ちきりにもできない。思いつめた編集からドス持ってカチこまれたこともある。
今もその状態だった。
じったりした雰囲気をまとい、編集の鷺原は自分の喉へ包丁を突き付けて陰気極まりない声を出す。
「先生が今日中に原稿書いてくれなかったら、私、死にます」
塚本としては好きにしてくれと言いたいところだが、仕事場を事故物件にされてしまうと大家に賠償金を支払わねばならない。そんな金があるならもう半年くらい生活費に充ててPCをビィカビカ光る最新のゲーミングに組み替えて快適に模様替えした涼しい部屋にこもり、ガンガンにテンションあがるBGMをかけて蜂蜜選択2でもやりたいところだ。
ところがこの編集は今日中にネームだけでも仕上げろという。バカじゃなかろうか。ネーム(原案・ようするにネタ)がいちばん大変なんだって、何度言えばわかるんだ。鷺原も鷺原で冷めたピザみたいなネタしかよこしやがらねえこの無能。漫画家と編集の不毛な時間が過ぎていく。
「先生、原稿」
ついに鷺原が片言になった。
だいぶキてる。
こりゃほんとにヤバいぞ。塚本は悩んだ。もちろんどうやって切り抜けるかをだ。こうなったのは塚本のサボり癖もある。だが自分のせいには断じてしたくない。それが人情ってもんだ。そうだよね、わかれ。
さて、なんて言い訳しよう。言い訳言い訳、言い訳。あ、そうだ。アシスタント。塚本に専属のアシスタントはいない。アシにすりゃ仕事がなくて稼げないのだ。先週も先々週もそのまえもそのまえも落したもんだから、あそこに行っても座ってるだけで身にならないとまで言われている。べつに塚本としては問題ない。自分で全部描けばいい話だ。なに、新人の頃に戻ったと思えばいいのだ。温故知新、違った、なんだっけ、ああもう思いだせねー、知らね。とにかく! 言い訳は考えついた。
「アシがいないからネタが出せない!」
「……アシがいれば、いいんですね?」
鷺原が青い顔のままにへらと笑った。相変わらず首に包丁を突き付けている。デッドラインが来たらほんとに頸動脈をスパッと行きそうだ。まあ編集者なんてのはえてしてサイコパスが多いしそうでなきゃやってられん。以前、鷺原もパワハラがひどいと愚痴って、おっと、もしかしなくても、こいつマジで逝く気か? 誰が払うと思ってんだ賠償金!!! 塚本がそこまで考えたところで鷺原がぬっと立ち上がった。
「アシを……呼んできます……」
●ローレットにて
「……あの、とても、急ぎの、依頼、です」
『孤児院最年長』ベネラー (p3n000140)は依頼書片手に面食らっているようだった。
「飲食自由、出前もOK。休憩自由。やることは簡単な手作業。で、えー、メインはターゲットとの雑談、とあります。が……」
絶対裏があるよねこれって顔であなたとベネラーは同じ方向に首を傾けた。
「本当のところを言うと、ネタに困ってる漫画家さんがいるので。代わりに出してあげてください。ターゲットの先生は練達では今時珍しいアナログ派で、紙とインクとトーンでがんばるタイプで……一度原稿へ取り掛かれば神速だそうです」
それまでは? とあなたが問うと、聞かないでくださいとベネラーは言った。
一応傾向をとあなたは殊勝な発言をした。しかし自由な発想を妨げたくないとのことで少年漫画としか教えてもらえなかった。いや、いろいろあるだろ少年漫画っつっても。そうつっこむとベネラーはひみつですよと掲載誌を教えてくれた。
え、えっ、16ページで2億もらえるっていうあそこ!?
ちょっとまてちょっとまて。あなたはベネラーの襟首をつかみ全部吐かせた。
『連載再開! 超豪華巻頭カラー特大42P新章幕開け!』
えっ、これのネームがまっさら? しめきり? 今日!?
「うえええん、守秘義務があ……」
そんなもん現地につけば、あってないようなもんだろ! 一番肝心なところを黙っておいて何が情報屋だ!!
- 再現性東京2010:X+Y=?完了
- GM名赤白みどり
- 種別通常
- 難易度EASY
- 冒険終了日時2020年09月13日 22時05分
- 参加人数8/8人
- 相談6日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
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参加者一覧(8人)
リプレイ
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「先生ぇ……もうすぐアシが……来ますからね……」
ええいうっとおしいこの編集め。塚本は真剣にそう思った。ふらっと出て行ってせいせいしたと思ったのもつかの間、すぐに帰ってきて結局包丁を首へ突き付けている。頼むから仕事場を事故物件にしないでくれ。塚本としてはそう祈るほかなかった。原稿をやると言う選択肢は塚本の中にない。
――バンバン!
扉が乱暴に叩かれた。
「お、アシか?」
相変わらずぶつぶつ言ってる編集は放置し、塚本は重い腰を上げた。
覗き窓から外を確認する……誰もいない。
妙だな、たしかに音がしたんだがと塚本は思ったが、何があるかわからない御時世なのでそのまま部屋へ戻っていった。
――バンバン!
――バンバン!
「しつこいな!」
塚本は悪夢の世界へ旅立っている編集をほったらかしたまま、再度窓をのぞいた。……誰もいない。近所の子のいたずらだろうか。塚本は呆れ果てて扉を開けた。やっぱり誰もいない。いたずらで間違いないなと塚本は辺りを見回し、扉へ顔を向けて小さく悲鳴を上げた。そこには真っ赤な手形がいくつも残されていた。
「は、はは、古典的ないたずらだな」
乾いた笑いが漏れる。いたずらだ、ただの、そういうことにしてしまいたい。気になって防犯カメラをチェックしてみた。……誰も、映っていない。おい、こりゃまずいんじゃないか? 塚本がそう感じた時だった。
――バンバン!
今度はベランダから。目をやると大きな窓ガラスにべったりと手形が。
「おい鷺原!」
「……ふぁい」
ある意味こっちもホラーだが、それ以上に厄介なことが起きている。ここは役に立たない編集に特攻させるべきだろう。塚本はそう考えた。
「見ろ、あの手形を」
「手形ぁ? どこにですか?」
塚本は今度こそ肝を冷やした。あれほど大量につけられた窓ガラスの手形が拭い去ったようになくなっている。
突然電灯が消えた。暗闇の中、何かが塚本の背後に立っているのがわかる。それは氷のように冷たい手を塚本の肩に乗せ、地獄の底から響くような声をはりあげた。
せ ん せ ぇ …… 原 稿 く だ さ い よ お …… !
「うわああああああああああああああ!」
電灯が付いた。
「うわああああああああああああああ!」
目の前にオバケが立っている。
「うわああああああああああああああ!」
それはしゃべった。
「先生、原稿ください」
●
「なんだアシスタントのひとりだったのか。ああ、びっくりした。びっくりした。そういう事は先に言ってくれ」
「ネタばれしちゃうと驚かないでしょう?」
「うん、ベタではあったが実体験のホラーとして及第点だった」
ことさら偉そうにふるまう塚本がまだ震えているのを目ざとく見つけ、『希望ヶ浜学園の七不思議』十七女 藍(p3p008893)はうふふと満足そうに笑った。
(それにしてもこんな状況でもまだ包丁を手放さない鷺原さん。もう地縛霊になりかけてるのかもしれませんね)
藍は鷺原を気の毒そうに見やった。そんな空気をぶち壊す元気いっぱいな声。
「やったー! あの塚本先生のお手伝いだなんて、イレギュラーズでよかったー! あたし塚本先生の漫画の大ファンなんだもん!」
「おおっ。きみ、お手当増やそうか!?」
漫画家とは案外ちょろい生き物である。ファンだなどと公言されればぐらっとくるくらいには。『緑の治癒士』フラン・ヴィラネル(p3p006816)は喜色満面で何かをぐっと差し出した。
「うれしい! あっ、塚本先生、新刊にサインお願いします!」
「よし! サインだな! まかせろ!」
差し出された本はなんか、B5サイズの、分厚いやつで、肌色多めの、帯には「待ってたよ俺のエクスカリバー」。
『さまようこひつじ』メイメイ・ルー(p3p004460)はさすがに危険だと気づいた。
「フランさん……そ、それは、乙女の秘密本、ではない、でしょうか」
汗をだらだら流しながら進言するも塚本は平気な顔をしている。
「主ライアンソロかー。俺はライ主のつもりで描いてるんだけどな」
「まさかの……! しかも解釈違い!」
「俺このアンソロジーに1ページも寄稿してないからサインしても意味なくない?」
「圧倒的まっとうな理由……!」
「いやー、俺も同人アンソロが出るくらいには売れてるんだな。そしてその頂点に君臨するのが俺……くくく。今後の展開に泣きわめくも喜びいさむも沼にはまるも焦土と化すもすべて俺次第」
なんかやる気だしてる……! メイメイは漫画家の闇を見てしまった気がした。確認のための声音を作る。
「漫画……絵と文字で綴られた、物語。ですよね?」
「そうだが?」
「あ、あれを生み出す作家さんに、お会いできる、なんて。すこし、緊張、します、ね……。わたしに出来る限りのお手伝い、させていただきます……」
「なんだかすなおそうなお嬢さんだなあ」
「塚本先生の、作品も、予習してきました。ガムルウォー来訪者、すてき、でした」
「よりによって2巻で打ち切りになったあれがお好みとは、やるな、お嬢さん。あの作品は俺の中の原点の一つだ」
「はい、敵のファッショナブルな造形と、シンプルながらも力強いストーリーライン、とても、良かった、です」
「鷺原あ! このお嬢さんのお手当3倍にしろ!」
「……無茶言わないでください」
黒スーツを着た『ミス・トワイライト』ブレンダ・スカーレット・アレクサンデル(p3p008017)は仕事場をざっと眺めまわした。敵情視察と言ったところか。
「ふむ、ドリンクバーに休憩用のソファ、クッションもかなりの値打ちもの。意外とおしゃれだな。そして……」
壁一面にずらりと並んでいる本棚から、ブレンダは「失礼」と一言断って漫画を一冊抜き取った。
「これが漫画。初めて見たが……なるほど、絵で物語を作るのか。絵本を発展させたようなものだな、面白い」
「それだけじゃないぞ。絵本へさらにカメラワークを取り入れたのが漫画だ。言うならば紙の上に映画の手法を持ち込んで発展してきた大衆娯楽だ。さらに……」
ブレンダは塚本の漫画談議にしばらく付き合わされた。
「非常に興味深いのだが、時間は大丈夫なのか?」
塚本は黙り込んでそっぽをむいた。
「だいじょーぶ、だいじょーぶ、がんばるあなたはすてきだよ! しめきりにむかってれっつごーふぁいっ!」
『ふわふわ』えくれあ(p3p009062)が塚本を励ます。ぬいぐるみみたいな愛らしい外見、その後ろで編集の鷺原が相変わらず原稿原稿と呻いている。ギャップがすごい。
「塚本仕事しろ!」
「同じく仕事しろ!」
『朱の願い』晋 飛(p3p008588)と『危魔道士』キンタ・マーニ・ギニーギ(p3p008742)が塚本の前に立ちふさがった。両腕を組み、上から目線で塚本へ語り掛ける。
「いいか塚本。なせばなる、なさねばらなぬ何事も、だ」
「ならぬは人のなさぬなりけり、これすなわちワレの状況そのままじゃ!」
「はっそれがどうした! 俺の預金口座はまだ108億あるぞ!」
「「えっ、普通にうらやましい」」
急に低姿勢になったふたりは揉み手しながら塚本へすりよった。
「ってか漫画家って大変っすよねー。毎度毎度ネタ出ししてー。それを絵にして形にすんだから尊敬するっすよー」
「うむ、貴殿は押しも押されぬ大衆娯楽の第一人者。ここはぱあっと使って社会に還元するのも悪くない選択」
「わかってくれるか二人とも! じゃあ俺はネッサフするからその間鷺原を抑えててくれるか!?」
「「是非もなし」」
「ι(`ロ´)ノ」
三人の後頭部へ『おかえりなさいませご主人様』ジョーイ・ガ・ジョイ(p3p008783)のドロップキックが炸裂した。
「現実逃避キメる時間はもうないですぞ! 〆切当日にまっさらなネーム! 絶望! それ以外の言葉が浮かばぬ状況! それはそれとして連載再開で前作を知らない人からネタをもらって大丈夫か?」
「大丈夫だ、問題ない」
「絶対言うと思ったですぞ。ならばここは少々かっこつけて、秘められし吾輩たちの力、思い知るがいい!」
「うわああああああああああああああ!」
ジョーイはいつも持ってるマチェットみたいなのをヌンチャクみたいにぶんぶか振り回し、飛とキンタを引きはがした。
〆切まであと6時間。だが! この場に集まった強者たちは誰一人として諦めた目をしていない! さあ! 時間との勝負だイレギュラーズ達!
「……というモノローグを流しておきましたのでもう後には引けませんぞ」
「くっ卑怯な!」
●ネタだし
イレギュラーズたちによるブレインストーミングは熾烈を極めた。ホワイトボードに次々と書き加えられていくネタの数々。だんだん字が小さくなってしまいにはプリンターから持ってきたA4用紙に書きたくる始末。さて、その一幕をご覧いただこう。
「最近体験したことです、と……食べられるモンスター、との戦い、とか……学園生活とか……食べ歩き、とか……食べ歩き、とか……あとカムイグラでの食べ歩き、とか。なんですか、塚本先生、スケッチブックを、取り出して」
「いやそのたどたどしく指を折る姿がかわいいからスケッチしようかなーとか」
飛はaPhoneを取り出すと検索ワードをぴぴっと入れて、とある掲示板サイトへたどりついた。
「よし、それじゃスレ立てするぜ! スレタイは【原作者に】安価でラノベを作るスレ【なろう】、これでどうだ!」
「特定不可避」
「いやー、吾輩パンツを見せるなら恥じらいながらこうたくし上げてというシチュエーションこそが至高と思っていたでありますが……熱く拳を交えながら語り合った結果意外とその言い分も悪くないかと思いましてな」
「いまチェックしてきたけどやっぱぱんつ見せたんだな」
「やっぱりプロの人が頑張っても出てこないネタを私が出す……難しそうです。というわけでね、発想を変えてみましょう」
「ほうほう」
「出せる人に出してもらうのです……そう、塚本せんせーに、ねぇ……」
「うわああああああああああああああ!」
「はい、新章ってことはまずここからの展開だよね。新しい敵組織を登場させよ! そうそう、こういう敵はねーそこまでの章でなんかちょこっと出てきた街とかの設定絡めるといいよ! 伏線とか考察ってやつ!」
「後付けだな! 俺、それ得意だぜ!」
「ネタと言われても困るな……。私自身そんなに面白い人生を歩んできたわけでもない」
「またまたそんなこと言ってあるんでしょ、ひとつやふたつ」
ブレンダは己の半生をつらつらと語った。
「ネタだらけじゃん……」
「そうか? 私はこれが普通だったからな……」
「握力には自信があるさかい、書き損じた原稿とか小さく握ったるで」
「シュレッダーあるんで大丈夫だ問題ない」
「そのネタ二回目じゃぞ」
「ねた!!!!! おはなし考えるんだよね、えっとね、えっとね、考えるんじゃなくて、じっさいにあったことでもいい?」
「それよりもふらせて、お願いだからもふらせて」
とかやってるうちに新章のネームができた!
・主人公はロボットパイロット by飛
・世界観はスチームパンク、竜人やドワーフ、エルフなど人間以外の種族もいる byブレンダ
・主人公はある日5000Gで売れるきんのたまをおじさんからもらう by キンタ
・きれいな性別不明の人から主人公はそれがこの世に二つしかない不思議な道具だと知る byえくれあ
・主人公はカピブタのピピと共に旅立つ決意を固める byメイメイ
・かたわれを探すことにした主人公はまずゴブリンをコロコロするだけでシースー食べ放題のクエストを受ける byジョーイ
・しかしそれは罠で幽霊の出る洋館に閉じ込められてしまう by藍
・次々と襲ってくるモンスターを倒しモンスターグルメの蘊蓄を披露しながら舌鼓を打つ主人公 byメイメイ
・館に閉じ込められていた美少女といい感じになる by飛
・主人公が甘いロマンスを楽しんでいると修業を積んで何倍も強くなったライバルが登場 byフラン
・しかし主人公も負けてはいない、自動人形のお付きに教わった武術でライバルと熱戦を繰り広げる byブレンダ
・戦いを終えて冷静になると、ロボット同士が戦ったにもかかわらず洋館には傷一つないことに気づく by藍
・じつは館は呪われていた、呪いを解くためにはプライドを捨て去り全裸にならなくてはならない byジョーイ
・全裸はどうかと思うのでぱんつまでで byメイメイ
・ここから美少女無双、ひたすら嫌そうな顔しながらぱんつを見せるまでの葛藤を描く、16Pくらいで byジョーイ
・キレた美少女は正体を現す、そう、彼女こそがこの洋館のボスだったのだ byフラン
・主人公はライバルと共闘しボスを撃破する byフラン
・ぼいんでばいんだったボスの胸がパッドであると明かされる byえくれあ
・そしてあろうことか彼女(?)にはきんのたまが byキンタ
・主人公はボスへきんのたまを渡し、ボスを励まして立ち去る byブレンダ
・ふたつの宝具が揃う時、大きな代償が支払われると主人公はボスから聞く byえくれあ
・大きな災厄を打ち払うために主人公はもうひとつのきんのたまを見つけ出し火山へ捨てることを心に決める byメイメイ
・新たな旅の予感に胸を躍らせる主人公とライバルが熱く拳を打ち合わせて〆 byブレンダ
「よし、これで行こう!」
「本気なの塚本先生! 考え直すなら今のうちだよ、この女ボスの胸がパッドだって下り要らなくない!?」
「そこは大事だろ」
悲鳴を上げるフランを制し、塚本は原稿作成に切り込んだ。
「ネタは熱いうちに書け!」
「わあ、先生がやる気を出してます。なんだか別人みたいですね。お手伝いできることはありませんか」
「じゃあ君にはベタ塗りを頼む! むらが出ないよう気をつけてくれ!」
「はいっ」
アシスタント机に向かった藍はさっそく原稿を手渡されてどきどきした。
「こ、これがプロの原稿……思ったより修正だらけ。それだけ線の一本一本を大事にしてるんですね」
飛は腕時計を見やると残念そうに舌打ちした。時間切れだ。
「やっとエンジンかかったか。長かったぜ……がんばれよ塚本! 俺は鬼のように舞い込んだ仕事を片付けてくる!」
塚本と飛はお互いにサムズアップで答えた。男の人生は語るものではない、背中に出るものだ。飛はスマホ片手に仕事場を飛び出しタクシーへ飛び乗る。お仕事頑張ってね!
順調に作画をしていた塚本が突然頭を抱える。
「くっ、ここの美少女のぱんつを見せるシーンが!」
「ん?」
「くっ、ここの美少女のぱんつを見せるシーンが!!」
「どうした?」
「くっ、ここの美少女のぱんつを見せるシーンが!!!」
「で?」
ブレンダはふしぎそうに首をかしげた。そんな彼女へおそるおそる塚本が話しかける。
「……モデル頼んでもいい?」
「いいぞ」
「おおおおおやったあああ! ぜひお願いします!」
「ぱんつを見せるのだな。どんな感じでだ」
「嫌そうな顔で、すごく嫌そうな顔で! こう、たくしあげるように!」
「表情筋の仕事は別料金だ。ともあれ、このような感じでいいだろうか」
抜群のスタイルを誇るブレンダが長いスカートをゆっくりとたくしあげていく。なめらかな細いおみあしが露わになり、ついに白レースの秘境へたどりついた。
「よし! 次は別のぱんつでやってみようか!」
「……何故女物のぱんつが大量にあるんだ塚本殿の仕事場は」
「先生、趣味に走ってないで……仕事をお願いします」
ばんばん散らかる机周りを片付け、コーヒーを配って歩いたメイメイが塚本を正気に引き戻す。
「集中線1コマ終わり! いやー、これもうデジタルへ移行した方がよくないでありますか?」
ジョーイは少年漫画につきものの集中線に取り組んでいた。強調したいコマに「!?」と書いて某探偵漫画風にするのも忘れない。
「みんなすごーい! せんがまっすぐ引けてすごーい! はみださずにべたがぬれてえらーい! ぴったりトーンがはれてかっこいい!」
ポンポンをもって応援に徹していたえくれあは、はっと気づいた。
「そういえば! ぼくは! 【美術】がある! なんと! 【色彩感覚】も! ある!! もしかして! ぼくは! この中でいちばんおてつだいに向いてる!!!」
気づいたか、気づいてしまったか。えくれあは椅子に飛び乗ると猛烈な勢いで原稿を仕上げ始めた。それを見た塚本も触発され、神速がさらにスピードを増す。
「おつかれさまでした!」
別人のように晴れやかな表情で原稿を手にした編集は去っていった。残るは死屍累々。
塚本の新章は今までと全く違った芸風が賛否両論を巻き起こし、雑誌はこれでもかとばかりに売れたという。
問題は。
「先生……次の原稿……」
連載がある限り、塚本の苦悩も終わらない。
成否
成功
MVP
なし
状態異常
なし
あとがき
いかがでしたか?
たまにはお仕事を忘れて……お仕事でしたねこれ。
またのご利用をお待ちしております。
GMコメント
とりあえずひたすらかきまくれ
のこり7000字おわらないりぷれい
みどりです。これが出るのは9月なので実質的には遅刻ですね。
みんなでたのしくネタを出そう。相談はしてもいいししなくてもいいです。
やること
1)漫画家・塚本の代わりにネタを出す
A)オプション 原稿を手伝う
1)さえやればあとはカウチポテトしようが塚本の原稿を手伝おうが好き勝手どーん。
そういえば友人の漫画家はネーム~下書きまで手書きです。やっぱりそのほうが速いそうで。逆に液タブがないと何もできないって方もいらっしゃいますし、そこは人によるんでしょうね。
●情報精度
このシナリオの情報精度はCです。
プレイングで不測の事態が起きる可能性があります。主にネームの内容が。
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