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シナリオ詳細

<幻想蜂起>長靴をはいたフェレット

完了

参加者 : 10 人

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オープニング

●幻想の動物達の様子が……?
 最近、幻想領内、特に王都のペット達が騒がしい。
 人間達も貴族への不満を漏らし、何やら不穏な動きが起きている。
 そのためだろうか、ペット達が騒いでいることに気付く者がいなかったのだ。

「……風が騒いでやがる」
 そう呟き、羽飾りのついた帽子を押さえたのは、二足歩行しているフェレットだった。
 その毛並みはスターリングシルバーと呼ばれる色で、本来は黒と白の毛色なのだが白い毛との比率のせいで淡い銀色に見えるのだ。
 白の割合も多く、背中側は淡い銀色、腹側になると白くなっていく。
 瞳は黒曜石のような黒である。
 その口調とは裏腹に、とても可愛らしいと人に感じさせる見た目だ。
 彼は、腰にベルトとレイピアのような剣を携え、長靴をはき手袋まではめている。
 ただ、全てが彼の身長に合わせ、フェレットサイズである。
 そのかたわらを野良猫の集団が駆け抜けていった。
「おうおう、まったく……危ねぇな」
 そう、ここは街の裏路地なのだ。
 野良猫や野良犬が日々走り回り、生存競争を繰り広げている場所だ。
「ちっ…今の奴らもかよ」
 フェレットは舌打ちし、苦い表情を浮かべる。
「今の幻想はおかしい……人間達もだが、動物達もだ。なのに、人間様と来たら自分達のことで手一杯ときてる。
 こうなりゃ、俺が動くしかないか」
 帽子を目深に被り直し、再び歩き始めるフェレットであった。

●フェレット、ローレットへ
「頼もう」
 長靴をはいたフェレットがローレットを訪れ、そう声をかけると応対してくれたのは『新米情報屋』ユリーカ・ユリカ(p3n000003)だった。
「かっ、可愛いのです……」
 フェレットは愛らしい見た目をしているものだ。
 ユリーカは、思わず彼を抱き上げようと手を伸ばす。
「おいおい、嬢ちゃん。そりゃあちょっと積極的すぎるぜ…俺達、まだ初対面だろ?」
「はっ……す、すみません。えっと、何のご用でしょうか?」
 フェレットがかっこよくポーズを決め、目を閉じて片手で制止すると、ユリーカは仕事を思い出したようだ。
「悪いな、嬢ちゃん。ちょっと急を要するんでな。まあ、話ってのは幻想領内の動物達のことだ。
 人間達も大変なことになってるみたいだが、足元がお留守になるのはいただけないぜ?」
 ユリーカは目を瞬かせる。
 彼の言いたいことが分からなかったからだ。
「簡単に言うとな。幻想領内のペット達、それも庶民が飼ってるペット限定だ。それと野良の動物達。
 こいつらが、お貴族様のペットとお貴族様を襲おうと集結しつつある、って話だよ。理解できたか?」
「なっ……!?」
 ユリーカは、すぐにフェレットをテーブルにつかせ、詳しい話を聞き出すことにしたのであった。

●動物達の会話
 以下は、フェレットの彼が聞いたという動物たちの会話を人の言葉に置き換えたものである。
 街の中、平民の主人と散歩中の犬達が野良犬に声をかけられていたのだという。
「おい、そこの犬達! 平民の人間達が武装蜂起して貴族を襲うって知ってるか?」
「知ってるけど、俺達には関係ないだろ。それより野良はあっち行ってろよ、駆除されちまうぞ」
「そんなドジは踏まねえさ。お前ら、貴族が飼ってる犬とか猫に嫌な思いさせられたことねえか?」
「ある……あたし、『毛並みが悪くて可哀想、きっとろくなもの食べてないのね。どうせ、主人も小汚いんでしょ?』って言われた!
 いつも大事にしてくれて、大好きなご主人様なのに! 大体、あたしの毛並みは悪くないし!」
「俺も、貴族のペットだっていう猫に、仔犬の頃に虐められてた。
 あの猫、いつもお忍びで抜け出して来ては、この辺りのペットや野良に好き放題してたんだ。
 お屋敷でいい物食べてるくせに、野良が数日ぶりにやっと手に入れたって小魚を横取りしたり。
 その野良は翌朝、冷たくなってたらしいよ……」
「だろ? しかも、あいつら俺達が反撃しようとすると、すぐ『貴族のご主人様が黙ってない、皆殺しにしてやろうか』なんて言うだろ?」
 ここで、散歩中だった飼い犬達は揃って頷いたらしい。
「動物としての誇りも忘れて、自分で餌も取れなけりゃ身を守ることもできない奴らがただ、貴族に飼われてるってだけで偉そうにしてやがる。
 人間達が立ち上がるんだ。俺達も、やってやろうって話になってんだよ。だからどうだ?
 お前らも加わらないか? せめて、他の奴らにもこの話を広めてくれよ」
 ここで飼い犬達は顔を見合わせ、少し考えていたという。
「あたしは、いつも家の中だから行けるかは分からないけど、こうして散歩に出た時に外の犬に話すならできるわ」
「俺は参加するよ。虐められた時についた傷、今でも痕が残ってんだよ。他のヤツも誘ってみる」
「よし来た! 頼むぜ、お二人さん」
 それだけ言うと、野良犬はすぐに立ち去ったらしい。

 このように、人間達の蜂起をきっかけとして、幻想領内の動物達も動き始めたのだ。
 まだこの動きは始まったばかりである。
 今のうちに手を打たなければ、貴族達が本当に動物達を皆殺しにしてしまうかもしれない。
 彼らを救うため、長靴をはいたフェレットが立ち上がったのである。
 フェレットは、動物たちの説得に自信があるようだが、統率しているボス猫のところまでたどりつけなかったらしい。
 貴族を襲う計画を立てているような時期なので、警戒されてしまったのだろう。
 そこで、イレギュラーズにはボス猫の元へとたどりつくための手伝い、ボス猫ときちんと話せるようなサポートを依頼してきたのだった。

GMコメント

 閲覧ありがとうございます、文月です。
 今回は動物達の蜂起を思いとどまらせるため、長靴をはいたフェレットをボス猫のところへ説得に行かせるのが目的です。
 以下、補足となります。

●成功条件
 ・ボス猫の元へフェレットがたどりつく
  武力行使しても良いですが、できれば動物達は捕獲していきましょう。
  そのための道具は必要ならギルドで用意します。
  余力があれば、フェレットと一緒に説得しても良いです。
  人と近いところで生活している動物達なので、こちらの言葉は何となく理解します。

●動物達の動きについての確定情報
 ・今のところは王都中から集まってきている程度
 ・徐々に王都周辺へと話が広がりつつある
 ・統率しているのは、王都の路地裏にいる野良猫集団のボス猫
 ・入り組んだ路地裏の袋小路にボス猫がいる
 ・集まってきた動物達は皆、路地裏に身を寄せている
 ・集まってきた動物達の数は、50近くなっている
 ・元々、路地裏にいた野良猫集団の数は60前後
 ・野良犬の集団も路地裏に同じくらい住んでいて一応参加はしているが、消極的
 ・放置すればペット、野良以外の野生動物にまで話がいきかねない
 ・集まった中には、数頭だが大型犬も確認されている

 野良猫達を統率しているボス猫が攻撃をやめると決定すれば、元々消極的な野良犬達はこちらにつきます。
 ボス猫は強いカリスマを持っているので、ボス猫を説得すれば他の動物達もボス猫がどうにかします。

●長靴をはいたフェレットについて
 ・名前はカイ
 ・動物相手ならそこそこ戦えはするが、今回は数が多すぎる
 ・説得は任せろとかなり自信がある様子
 ・ボス猫と顔見知りだという噂も
 ・色々と謎多きフェレット

●その他
 口調や性格等が分かりやすいよう書いていただけたりしますと、大変助かります。アドリブ不可と記載がない場合はアドリブが入ることもありますのでご注意ください。
 皆様のご参加、お待ちしております。

  • <幻想蜂起>長靴をはいたフェレット完了
  • GM名文月(休止中)
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2018年05月08日 20時55分
  • 参加人数10/10人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 10 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(10人)

アルペストゥス(p3p000029)
煌雷竜
エーリカ・メルカノワ(p3p000117)
夜のいろ
那木口・葵(p3p000514)
布合わせ
トラオム(p3p000608)
アクセル・ソート・エクシル(p3p000649)
猫さんと宝探し
リトル・リリー(p3p000955)
緋色の翼と共に
九条 侠(p3p001935)
無道の剣
ルティアニス・ディフ・パルフェ(p3p002113)
おてんば歌姫の冒険
桜坂 結乃(p3p004256)
ふんわりラプンツェル
アーデルトラウト・ローゼンクランツ(p3p004331)
シティー・メイド

リプレイ

●路地裏行進曲
 依頼を受けたイレギュラーズ達は、まずは長靴をはいたフェレット、カイと合流した。
「カイさん、だね。ボクは結乃。一緒にボス猫さんの所に行こうね」
 桜坂 結乃(p3p004256)が最初に挨拶し、他のメンバーもそれに続く。
「おう、よろしく頼むぜ」
 カイがその小さな手を上げて応える。
 挨拶が済むと、すぐに路地裏へ向かう準備を整え始めた。
 トラオム(p3p000608)は大型動物の対処も可能なようにと動物用の刺股や睡眠薬入りの餌をもらい、『空歌う笛の音』アクセル・ソート・エクシル(p3p000649)は一時的に動きを止められれば良いだろうと網を借り、『シティー・メイド』アーデルトラウト・ローゼンクランツ(p3p004331)は網とボーラで本格的に足止めしようと大きなリュックに詰め込んでいる。
 『布合わせ』那木口・葵(p3p000514)は網や袋だけでなく大量のマタタビ、餌を受け取り、練達上位式でぬいぐるみ達を使役して、彼らに持たせている。
 もちろん、これらを用意したのはローレットだ。
 『おてんば歌姫の冒険』ルティアニス・ディフ・パルフェ(p3p002113)はカイから路地裏をどう進むのか予定している道順を聞き、アクセルも説得の方針を確認して、他メンバー達と情報を共有してどのように動くか相談する。

 幻想領内全体の不穏な動きもある。
 少しでも早く動いたほうが良いだろう、と準備が整ったらすぐに路地裏へ向かうことにした。
 路地裏には粗大ゴミなどの廃棄物、住民が使っているリアカーや洗濯板など、実に様々な物がある。
 路地裏というくらいなので、そんなに広い道幅ではない。
 一番狭いところだと、『煌雷竜』アルペストゥス(p3p000029)が歩くだけでもギリギリだ。
 入ってすぐは、さすがに何もない。
 奥へと向かい、障害物を避けながら進みつつ、トラオムが誰に向かってというわけでもなくこぼす。
「動物の蜂起、か。それを止めよう、と……。カイは立派だな。それに、皆もだ……。
 俺は……はは、ダメだな。痛めつけられたからそれを復讐するななんて言えない」
 故郷を滅ぼされた過去を持つ彼にとっては、他人の復讐を止めに行くというのは複雑なものがあるのだろう。
「構わないさ。こうして手伝ってくれてるってことは、何かしら想うことがあったんだろう?
 あんたの事情は知らないが、俺にはそれで十分だ」
 カイがトラオムに笑ってみせた。
 かっこよく決めているが、カイは『夜鷹』エーリカ・マルトリッツ(p3p000117)の左肩に立って乗っている。
 右手でエーリカの頭に寄りかかり、左足は曲げてポーズを取った状態だ。
「そうそう。表立って出てきてるのはいないが、こういう場所では物陰から見張られて向こうには筒抜けだって思ってた方がいいぜ」
 カイがそう言って自分の髭の根本を指でつまみ、そのまま先端までスッと滑らせる。
 言われてみれば、何かがいる気配はそこかしこに感じる。
 普段から人間に見つからないよう身を隠している動物達が多いのだから、この反応は当たり前かもしれない。
 野良の動物達は、それだけ苦労しているということでもある。

 カタン。
 迷路のように入り組んだ路地裏をしばらく進むと、前方で何か物が倒れるような小さな音が聞こえてきた。
 それが合図だったかのように、動物達が姿を見せる。
 物陰はもちろん、人がとても入り込めないような建物同士の隙間などから顔を覗かせているだけの動物も少なくない。
 建物の屋根の上にも気配はあり、様々な種類の犬や猫が20はいそうだ。
 『無道の剣』九条 侠(p3p001935)と共に先頭に立っていた『小さな思い』リトル・リリー(p3p000955)が、正面で身構えてこちらの様子を窺っているアビシニアンに向かって話しかける。
「リリーたちは、たたかいにきたんじゃないよっ」
 リリーを背中に乗せているウルフドッグは、アビシニアンを警戒しているようだ。
 動物達は不思議そうに見ているが、やはり警戒している。
 カイも一旦エーリカの肩から下りて前へ行く。
「その通り。『フェレットのカイが来た』、そうボスに伝えな。話がしたい」
 カイが言うと、犬と猫が1匹ずつ奥へと引っ込む。
 ボス猫のところへ向かったのだろう。
 しかし、他の動物達は動かない。
 動物達とコンタクトを取るため、心聴のギフトを発動させたままでいるエーリカが、近くにいた雑種の小型犬に声をかけようと膝を折る。
「怒らないで。私たちは敵じゃない。ニンゲンとみんなの架け橋になりにきたの」
 エーリカの声は優しさに満ちている。
 しかし、これを見てもアビシニアンの態度は変わらない。
 動物達の言葉は、動物疎通を使うリリーや心聴のギフトを使うエーリカがいるが、全てカイが翻訳してくれている。
「人間の言うことなんて信用できない。そもそもお前達は一体誰だ」
 アビシニアンが言うと、葵が慌てて自己紹介する。
「私達はローレットから派遣されたイレギュラーズです」
「ああ、お前達があの……噂は聞いてる。だが、通すわけにはいかないな」
 そう言ってアビシニアンは「ミャアアォ!」と声高く鳴き、他の動物達に合図を送った。
 その直後、動物達がイレギュラーズを取り囲んだ。

●動物達を乗り越えて
 アビシニアンと話している間に、動物達はかなり増えていた。
 今回、ほとんどのメンバーが武器を置いてきている。
 リリーの位置は、侠がすぐ側にいるとは言え危険だ。
 仕方なく、エーリカが動物達から見えないように、用意してきた捕獲用の網にこっそり手をかけた。
 もちろん動物達が手を出してくるまで、こちらから何かするつもりはない。
 しかし危惧した通り、アビシニアンやその後ろの数頭がリリーや侠に向かって飛びかかってきた。
 エーリカは、手に持っていた捕獲用の網をアビシニアンめがけて投げる。
 アビシニアンもろとも、その後ろにいた動物達も5、6頭が網にかかってしまう。
「おい、何だこれ!」
 アビシニアンが網の中でもがきながら喚いている。
「怪我をさせるつもりは無いんだ、頼むよ。ボス猫の所まで通してくれないか?」
 侠が困ったように言うが、アビシニアンは暴れ続けていた。
 前後左右ともに、まだたくさんの動物達がいる。
 狭い通路を、4枚の翼を畳んで小さくなりつつ歩いていた最後尾のアルペストゥスも周囲の動物達をじっと見ていた。
 アルペストゥスに見られた動物達は、その力の差を瞬時に感じ取り半数程は逃げるなり隠れるなりしている。
 相手はドラゴンなのだから、この反応は当然とも言える。
 どうにか踏みとどまっている動物達も戦おうという気はほとんど残っていないようだ。
「……グゥ」
 自分の横にいた動物達にアルペストゥスが尾に近い方の鳥に似た翼を使い、ふわふわと揺れる羽根で撫でるようにしてこの場から去ることを促す。
 くすぐるかのような優しい触れ方だったからこそ、動物達は何かを感じ取ったようだ。
 アルペストゥスがその気になれば、あっという間に自分達は駆逐されてしまうだろうことも、彼らはよく分かっている。
 後方の動物達は、この様子を見て躊躇いながらもほとんどが去ってくれた。
 アルペストゥスのすぐ前を歩いていた結乃は、感心したような声を出しつつアルペストゥスを見上げていた。
 後方にいた動物達がほとんど去ってしまうと、結乃がしゃがんで残った動物達に語りかける。
「ボクたちを、あなたたちのボス猫さんの所まで、行かせてくれないかな?」
 その表情は申し訳なさそうだ。
 攻撃してはいなくても、動物達に少なからず怖い思いをさせてしまっている。
 そんな気持ちが、結乃の声からも感じられた。
「あなたたちが大好きで、大事なのはきっと、ご主人様だよね。ボクにも、ボクを大事にしてくれたひとがいるから、分かるよ。大事な人を馬鹿にされたら、悔しいよね。
 だけど、あなたたちの行動は、ご主人様を苦しめるかもしれないんだよ」
 結乃は自分を大事にしてくれたあの人を思い出しているのか、どこか苦しそうにギュッと胸元で手を握りながら言う。
「だから……やめよ?」
 残っていた動物達も、結乃の言葉や声、その仕草から何かを感じたようだ。
 彼らは人間の感情にとても敏感なのだ。

 後方は穏やかに進んだが、中央辺りでは血の気の多いグレートデンが飛び出してきてアーデルトラウトに噛み付こうとしたので、トラオムが刺股で押さえていた。
 アーデルトラウトは肉体言語で敵意がないことを動物達に告げていたが、グレートデンには通じなかったようだ。
 刺股のせいでグレートデンはガチガチと口を開閉させるばかりで攻撃できない。
「届かねぇ! ちっきしょう!」
 グレートデンが怒って罵っているが、刺股を握るトラオムを援護しようとアーデルトラウトがボーラを投げ、グレートデンの足をひとまとめにして身動きできなくしてしまう。
 それでも喚いてガチガチと口を開け閉めしているのを見て、ため息をつきながらトラオムがアーデルトラウトからボーラを1つ分けてもらう。
「少しの間だけ、我慢してくれな」
 そう言って、噛まれないように気を付けながらグレートデンの口を両手で閉じさせ、ボーラの紐部分を使って固定してしまう。
「そんな使い方もできるのですね」
 本来の使い方とは違うトラオムのボーラの使い方を見て、アーデルトラウトがふむ、と頷いていた。
「蹴撃で気絶させるよりはいいかと思ったんだが、どっちもどっちかな?」
 トラオムが顎に手を当て、恨めしそうに彼を見上げているグレートデンを見ながら言う。
 グレートデンは何か言おうとしているのか少し声が漏れ、ボーラの紐の両端についている重りがその動きに合わせて揺れている。
 アーデルトラウトは上から動物達が攻撃してくることも考えて警戒していたが、建物の屋根から見下ろしていた猫達は、アビシニアンが網にかかった時点で尻込みしてしまったらしい。
 皆、誰か他の者に行けと言うばかりで誰も来ない。
 アクセルも上方を警戒しつつ、感情探知で動物達の敵意を探っていたが、最初はともかく今ではかなり落ち着いているようだ。
「アルペストゥス君のお陰かなぁ? あんまり襲ってやろう、って子はいなさそうだね。
 捕獲なんてしなくて済むならその方がいいし、助かったよー」
 アクセルはそう言った直後、いつの間にか葵がマタタビを撒いて通路脇で相当数の猫達を酔わせ、骨抜きにしているのを見てしまった。
「あ、うん。これくらいはまあ、仕方ないよね……」

「いや、まさかドラゴンがいてくれるだけで、こんなに大人しくなるとはな。助かったぜ」
 気付くとカイが最後尾まで来て、アルペストゥスを見上げて感心している。
 そんなカイを見下ろし、アルペストゥスは軽く首を傾げてみせてから、頷いた。
 その時。
「カイ、何しに来た」
 エーリカやルティアニスのいる辺り、建物の屋根から声が聞こえた。
 そこには、メインクーンが立っている。
「よぉ、久しぶりだな。野良猫達のボスやってるとは聞いてたが、まさかこんな大きなことするとは思わなかったぜ」
 カイが走ってルティアニスの足元まで行き、返事をする。
 どうやら、このメインクーンが路地裏の動物達をまとめているボスのようだ。

●ボス猫との対話
「人間達が何かするらしいと聞いたからだ。せっかくだから便乗させてもらう。しかし何故、人間達といる?」
 ボスがカイの後ろにいるイレギュラーズ達を見て訊ね、建物の窓枠や雨どいなどを器用に伝い、地面まで下りてきた。
「人間達が仲間を攻撃するようなことがあれば、隠れている仲間達にも一斉に飛びかかるように命令はしていたが。
 平和的に解決したようだな。一部を除いては」
 メインクーンが網にかかっているアビシニアンやボーラで身動きが取れないグレートデンを見て、目を細める。
 どうやら、物陰にはさらに多くの動物達が隠れていたようだ。
 ボスの言葉で気配を隠すのをやめたのか、一気に気配が倍以上に増えて感じられた。
「なるほど、聞いていた数より少ないと思ったらこういうことだったか」
 侠が納得したように呟く。
 ボスが近くに放置されていた木箱に乗った。
 イレギュラーズ達も、アルペストゥスやリリー以外は、適当に近くにあった台や木箱、瓶ケースなどを寄せて腰をおろす。
 トラオム、アーデルトラウトは静かにその場を離れ、動物、人間問わず、この話し合いを邪魔する者達が割り込んでこないよう、見張ることになった。
 侠がリリーを膝に座らせてやり、リリーを背中に乗せていたウルフドッグはリラックスした様子で寝そべり、アルペストゥスも少し後ろで座る。
「それで?」
 ボスが促すが、猫なのになかなかの威圧感だ。
 いつの間にかボスを中心として、イレギュラーズが彼を囲み、さらにそれを動物達が囲んで静かに話を聞く体勢になっていた。

「幻想領内のあちこちで暴動が起きているのは知っていますよね。ローレットは、それを止めようと動いているんです。
 そして私達はカイさんから依頼されて、貴方達のやろうとしていることを止めに来ました」
 葵が話し始めると、アルペストゥスが尾の先で近くにあった木箱の側面に文字を刻んでいく。
 カイがこれを読み、ボスに伝えた。
「何のために戦うのか。私達がここに来たということは、人に知られているということ。それを考えて」
 カイが伝え終わると、アルペストゥスは喉の奥を鳴らして低い声を出し、その青い瞳でボスを見つめた。
 ボスはそれをじっと受け止めている。
「つらかったね。くやしかったね。私もニンゲンに怖がられてきた。石を投げられる痛みも、怖さも、蔑まれる悲しみも、知っている」
 エーリカも、自らの過去を思い出しうつむきながら語りかける。
「いまあばれたら、とってもあぶないこたちだ、っておもわれるかもしれないよ。
 さいあくころされちゃうかもしれない。だって、ふつうのひとたちには、どーぶつさんたちのこえがとどかないんだよ?
 それにね、だれかをうらんだりにくんだりしてあばれるよりかは、じぶんのしあわせをほこっていきていくのがリリーはいいとおもうのっ」
 リリーも一生懸命、ボスを説得しようとする。
「幸せ? 私達が幸せに見えるか?」
 ボスが小さく首を傾げて問う。
「確かに貴族に飼われている連中と違って、贅沢な暮らしはできてないだろう。でも、贅沢な暮らしができれば幸せなのか?」
 リリーを膝に乗せた状態の侠が、カリスマを使って助け舟を出す。
「私も贅沢であることが幸せだとは言わない。だが、貴族達はあまりにも……」
 ボスが遠くを見るような目をする。
「貴族達は俺達が何とかする。俺達も、他の仲間もどうにかしたいって思ってる。だから、今は信じて欲しい。
 今はまだ、時期じゃないんだ」
「そう、今、みんなが彼らに牙を向けたら。今あるたいせつなものも、全部なくしてしまう」
 侠の言葉にエーリカも真剣な眼差しでボスを見る。
「戦って守れるのはほんの一部だけなんだ」
 侠が剣の師でもある祖父の言葉を思い出し、ボスだけでなく自身に向けても言うかのように、少し低い声で言う。
 そんな侠の膝の上で、リリーが力強く何度も頷いていた。
「このまま幻想中で暴動が広がり続ければ、他の国も絡んでくるかもしれない。そんなことになったら、ちょっと怖いと思わないかい?
 飼い主さん達にも、危険が及ぶかもしれないよね。それを防ぐためにも、オイラ達はこの暴動を止めたいと思ってるんだよ」
 アクセルもいつになく真剣に話している。
「もし今すぐ解決したい問題があるのなら、ローレットに依頼してください。私達や、他の仲間が必ず貴方達のために力を尽くします」
 アクセルの意見に同意するように頷いてから、葵が問題解決の手助けをすることを伝えていく。
「それに、人間がこれだけ各地で暴動を起こそうとしていることを考えれば、貴方達はそのコマとして使われるかもしれない。
 今回のことは、ボス猫さんが誰にも何も言われずに、1人で考えたのかな? あたしはそれが気になるの。
 少し前から、サーカスが来ているけど……貴方達の中に、サーカスに協力している子はいない?」
 ルティアニスが懸念を伝え、ボスの言葉を待つ。
「サーカス? 確かに来ていたが、私達はそれどころじゃないからな。毎日の食べ物を確保するので精一杯だ。
 そういえば、私が食べる物を探していた時、人間に話しかけられたか」
「もしかして、その人の話を聞いて思いついたのかな?」
 ボスの話を黙って聞いていたルティアニスが、確認するように訊ねる。
「そういう訳でもないが、人間達が暴動を起こすと聞いた時、何となくその人間の言っていたことを思い出した」
 関係あるのかどうか、微妙だ。

「しかし、わざわざカイが人間を連れてまで止めに来るとはな。しかも、これだけ熱心に、完璧に止められては、もうそんな気もなくなってしまったよ……」
 説得は成功したようだ。
 カイが笑って、溜息混じりのボスの肩に手を置く。
「当たり前だろう、義兄なんだから」
「……え?」
 全員の声が綺麗にハモった。
「言ってなかったかな? ボスはマイスイートハニーの兄貴だ」
 直後、路地裏に驚愕するイレギュラーズ達の声が響いた。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 大変お疲れ様でした。
 今回は私、文月の担当しましたシナリオにご参加いただきありがとうございました。

 皆様のお陰で、ボス猫の説得は成功しました。
 動物達にも怪我はなく、カイとボス猫の関係も暴露されました。
 彼ら達が行動に移す前に止められたのは、皆様の活躍あってのことです。
 ありがとうございました。

 少しでも楽しんでいただけましたならば幸いです。
 またの機会がありましたら、よろしくお願いいたします。

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