シナリオ詳細
海洋密林探検記―最強のパンケーキを求めて―
オープニング
●竜人青年との邂逅
――飽きるところから新しい料理は生まれる。
――料理人・北大路魯山人
彼との遭遇は、リトル・リリー(p3p000955)が混沌世界へ転移したての頃のお話。
とある日、リリーが海岸沿いを散歩していると真紅色の竜人青年が倒れ転げていた。
つんつん、と突っついてみても竜人は微動だにしない。
「あ、あのね? 竜人さん? 生きているよねっ!?」
見ず知らずの人だが、お人よしのリリーは揺さ振って起こしてみる。
行き当たりばったりの出会いだが、死なれては夢見も最悪だろうから。
「がるるるぅぅぅ……。うがあああああああああ!!」
「きゃああああああ!?」
正に唐突千万、竜人が咆哮を上げるとリリーを強襲した。
そして、がぶり、と心地良い咀嚼音を立ててリリーを齧ってしまった。
海岸には少女の救助を求める悲鳴が響き渡った。
「うが!? お、おえええ……。な、なんで俺は女の子を食べてるんだあああ!?」
「うええええええん!! 痛いよおおおお!?」
竜人は我に返るとリリーを即座に嘔吐して己の愚行に驚愕する。
一方のリリーは竜人から吐き出されると血塗れの姿で号泣していた。
「うおお、すまねえ、お嬢ちゃん! お、俺は……。死ぬ程腹が減っているんだ!」
「えっ、お腹が空いて!? はい、これ、お菓子。もうリリーを食べないでねっ!!」
どうやら竜人青年はもう何日も食事が出来ずに餓死する寸前で幻覚を見ていたらしい。
うら若き少女の実像が美味しそうな生肉として視野に映っていたとの事。
リリーは事情を察してあげた後、しばらく彼を餌付けするのであった。
光陰矢の如し。竜人のウォーカーであるリューは、やがて料理人へと成長した。
今では『練達』で小規模な喫茶店を開業しながら料理の腕を振るう日々だ。
ところが最近、彼にも店主として悩みの種がある。
「うん、仕方ねえ。ローレットにでも依頼するか……。そういや、リリーの奴は元気かな?」
●採取依頼のヒアリング
翌日、リューがローレットへ訪問すると情報屋と面談する事になった。
「はじめまして、リューさん。私は担当者の『鉄騎学者』ロゼッタ・ライヘンバッハ(p3n000165)と申します。早速ですが、幾つか質問をさせて頂けないでしょうか?」
「おう! よろしく頼む」
テーブル越しに向き合いながらのヒアリングが開始された。
「ふうむ。ご自身の喫茶店で新メニューを開発されるのですか? 『最強のパンケーキ』と仰いますが、どのようなパンケーキでしょうか?」
さて、話題の切り口はそこからだ。
「今までに誰も食べた事がない『最強のパンケーキ』を作りたい。その為、究極の素材が必要なんだ。それでな、調査したら『海洋』のとある無人島にその素材がある所まではわかったんだが……」
何分、密林の無人島に単独で臨むには多様な困難があったらしい。
「ふむふむ。究極の素材ですね? 具体的に何という素材を集めれば良いのですか?」
リューは手帳からメモを取り出すとロゼッタに提出した。
「欲しい素材は3種類あるんだな。まず、沼地に『紅蓮ベリー』がある。燃えるような紅蓮の色をした甘い木の実だが、トッピングとして必要だ。で、海岸に『シロップ・ビーの蜂の巣』がある。その蜂の巣から採れる白い蜂蜜が欲しい。そして、高地に『蒼海小麦』がある。海面の如く蒼い小麦なんだが、パンケーキの元となる粉にする訳だ」
時に最大の難点は、採取場を守る手強い魔物達との戦闘が発生する事である。
「そこでお前らを派遣する事を思いついたんだ。頼むな!」
彼は素材を詰める為の大袋をロゼッタに手渡した。
派遣人数分の袋に素材を詰めれば十分だそうだ。
料理人としての道を極める為、リューは『最強のパンケーキ』という頂へ挑む。
竜人青年の夢の実現に向けて、特異運命座標の助力を仰げないだろうか。
- 海洋密林探検記―最強のパンケーキを求めて―完了
- GM名ヤガ・ガラス
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2020年09月11日 22時10分
- 参加人数8/8人
- 相談7日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(8人)
リプレイ
●沼地
熱帯雨林が生い茂る密林の沼地は高湿度で猛暑の世界だ。
本日は沼地で採取活動をするべく、小人の『緋色の翼と共に』リトル・リリー(p3p000955)が尾花栗毛の牡馬であるカヤに跨ってご登場。
「リューさんのパンケーキ、楽しみだねっ!」
リリーは、隣で漆黒の翼を羽ばたかせて低空飛行している『饗宴の悪魔』マルベート・トゥールーズ(p3p000736)に熱意を語り掛ける。
「そうだね? 料理に『最強』という頂があるのかは疑問だけど、良い物を求めようとする気持ちは分かるよ。料理を嗜む者として珍しい食材にも興味はあるしね」
「さて、紅蓮ベリーの木っていうのがわからないね? 鳥さん飛ばそうかな?」
リリーは沼地で緑の木々や赤い果実が視界に入るがどうも特定出来ない。
そこで配下の小鳥を上空に飛ばして俯瞰する。
やがて、彼女の鋭敏な感覚に引っ掛かるが……。
「……うっ、臭い……早く済ませて帰ろっと……。っと、あの木、孤立しているね?」
嗅覚が鋭利なリリーは、沼地の泥臭さに耐えながらも訝しい木々を発見する。
「相手が動く樹の怪物であるならば……。動いた時には葉擦れなどで音を鳴らす可能性が高いだろう。どんなに小さな音にも耳を澄ませておけば、不意打ちは回避できるかな?」
マルベートは目を凝らして木々を観察する一方で聴力を研ぎ澄ます。
すると、擬態をしていた木々から不自然な枝ずれの微音を拾えた。
「そこか? では、火炎の如く赤々しいその果実を頂こうか?」
マルベートがフォーク型とナイフ型のアーティファクトから術式を導き出す。
暗黒に煌めく魔光が紅蓮ベリーの木に必中すると迸る電撃が弱点を喰い尽くした。
「リリー、今なら特技の状態異常が通りやすいよ?」
「ありがとう、マルベートさん! リリーもご馳走を目指すよっ!」
リリーが魔導書を紐解くと暗褐色の立方体が紅蓮ベリーの木を恐怖の極みで包囲した。
標的の大木は奇声を上げながら各種の苦痛で呪い殺される。
「いっけぇー、狐さーん!」
召喚術式から九つの尾を持つ白狐が走り抜けて紅蓮ベリーの木を張り倒した。
実を採取し易い様にリリーが魔導銃で落下の軌道に修正を掛けた。
「さあ、採取しちゃおうっ!」
リリーはカヤの顔の上に跨って紅蓮の実を袋にちょこまかと詰める。
「そうだね、袋に詰めて……」
マルベートは決して警戒を怠ってはいなかった。
現にリリーが採取している最中に挙動不審な木を呪術で牽制していたぐらいだ。
だが、此処は紅蓮ベリーの住処である為、かの木々に自然に包囲されていたのだ。
「リリー、危ない!?」
「えっ? わ、ちょっと、マルベートさん!?」
木々の包囲突撃を受けて二人と一頭は沼地に転落する。
むせ返る臭さと粘着質の泥水が彼女達を沼底へ追い込む。
(私なら気持ち悪いだけで済むけど、リリーが大変だ!? 早く拾って助けないと……)
マルベートが沼地を泳ぎながら溺れているリリーとカヤの救助に向かう。
「あれっ、何これ? うそ、カヤ!! 助けて、マルベートさん!!」
一方で、リリーとカヤは足搔きながらも沼底へ吸引される。
実は、沼地で潜伏していた触手が彼女達の脚に絡んで水没を助長しているのだ。
「触手!? リリー達から離れろよ? さもなくば食べるよ?」
マルベートが触手を長物で攻撃するがなかなか獲物を離さない。
しかも紅蓮ベリーの木々まで沼地に突撃して火炎の体当たりをする始末だ。
結局、マルベートが運命の欠片を手放して猛反撃する事で事態は収束した。
「ベリーは多いに越したことはないだろう。へとへとになるまで採取を繰り返して沢山集めようか?」
「そうだね? 初手で成功した攻撃を繰り返してこの辺のベリーを一通り採ろうか?」
そして、彼女達は大袋二袋分に満遍なく詰まったベリー採取に成功した。
その際に、一体幾度、リリーが沼地落しを狙われた事だっただろうか……。
「数粒くらいは味見も……。これくらいの役得はね?」
「はぐばぐっ……。酸っぱいけれど激甘い、けれど酸っぱい、絶妙に美味しいねっ!?」
マルベートの提案で最後は二人で内緒の摘まみ食いも愉しんでしまった。
なお、合流前に二人と一頭は仲良く入浴して、泥と汗と臭いを綺麗に流し落すのであった。
●海岸
潮風が心地良く靡く海岸の岩場にはシロップ・ビーの蜂の巣が群集している。
『私の航海誌』ウィズィ ニャ ラァム(p3p007371)は、食べると浮遊する不思議なドーナッツを齧りながら上機嫌で現れた。
「ふっふふ~♪ いやあ、試食楽しみですね!」
ウィズィの隣で跳ねて歩行する『逆襲のたい焼き』ベーク・シー・ドリーム(p3p000209)が魚の頭で頷く。
「はてさて、パンケーキですか……。最強のパンケーキってのはよくわかりませんが、まぁ美味しいものをつくりたいって気持ちはわかりますからね。頑張ってお手伝いです」
前方を歩く二人の後方で『勇往邁進』リディア・T・レオンハート(p3p008325)も楽しげに張り切っていた。
「最強のパンケーキも勿論ですが、究極の素材と聞くと興味が尽きませんね……! 未熟ながら同じく混沌の食を探求する者として、全力で臨ませて頂きますとも! さあ、ファイト一発、栄養ドリンクを飲むのです!」
リディアは桃色の液体を飲み干すと全身に熱い快感が駆け巡った。
女性の敏感な所がビンビンとなり、もう頭の中はピンク色のお花畑である。
「あれれ? 栄養ドリンク……ですよね、これ? それと、こちらで獲れる食材は何でしたっけ……? は? 蜂……? こ、ここここ怖くなんてありませんとも!」
赤面してふやけるリディアを白い蜂魔物が何体も包囲して一斉に射撃する。
リディアは四方八方から艶のある真っ白な粘液をどっぷりと体中に浴びてしまった。
「うわっ、何ですか、この甘ったるい汁……どろどろして気持ち悪いです……。あ、でもちょっと美味しいかも……♡」
「引き付けは任せましたよ、ベークさん!」
粘っこい白の液体に溺れるリディアを救援するべくウィズィが叫ぶ。
ベークに最前衛を交代した直後、ウィズィは岩陰に潜伏して機会を狙った。
「では、僕は蜂をおびき寄せる役をやりますね。ふふ、僕って美味しそうでしょう?」
ベークが鮮魚の如く跳躍すると焼き菓子の甘い香りが戦場に充満した。
リディアを包囲していた蜂達が標的を鞍替えしてベークに強襲を仕掛ける。
「うーん、痛いような、痛くないような……。蜂に刺されたのは初めてですが、こんなもんなんですかね?」
その感想には理由があり、ベークはまず魔力障壁で攻撃を難なく弾いている。
稀に効果が切れた時に針で襲撃されるが手堅い防御と抵抗力で麻痺等怖くもない。
そして、蜂達が意地でシロップ攻撃を繰り出すと……。
まるでベークが、白い蜂蜜の塗られたたい焼きそのものに見える様だ。
「蜂蜜まみれにされたって僕は生き抜くぞって決めたんです。食べないでください!!」
「さあ、Step on it!! 大人しく蜂蜜を寄越しなさい!」
ベークが囮になっている隙にウィズィが甘い香りで狂った蜂達を側面から襲撃する。
ウィズィが巨大なナイフを振り回して戦端の希望を切り開くのだ。
鉄塊剣の如く重厚かつ流麗なまでに鋭い切れ味を持つ斬撃が蜂を斬り捨てる。
彼女のハーロヴィットによる通常攻撃こそが何よりもの必殺技なのだ。
やがて挑発の効果が一時的に切れると蜂達はウィズィにも麻痺針の牙を剥く。
針とナイフの剣戟を交える白兵戦となるが、ウィズィが圧倒される事はない。
「さぁて、一気に叩きますよ!」
なぜなら、恋人の魔力を火種にして大空を羽ばたく翼(ジャナフ)があるから。
恋の火力が全力で体内を駆け巡るとウィズィの連撃の切れ味が一段と冴え渡った。
ベークが囮をして、ウィズィが側面から敵を叩き、リディアが巣へ採取に向かう。
リディアは、蜂魔物と対峙すると強化魔術で戦意を高めて双眸を深紅に輝かせた。
蒼煌剣から蒼紋を導き出す事でレオンハート小国直伝の剣技を繰り広げるのだ。
「さっきのお返しです! まとめて退治してあげますよ?」
初手では翠色の闘気と共に魔剣を振り翳すと鮮やかな空刃が直線を描いて突進する。
この一撃で蜂達の頭数を減らせたものの増援の前衛達が未だに剣戟を挑んで来る。
「いざ参ります!」
最前線の敵と一騎打ちをするべくリディアが蒼き魔剣に全力の闘気を注入した。
即ち、王家に伝わる超全力全開のレオンハートストライク。
前衛で跋扈する魔物の中でこの一撃の粉砕に耐えられる輩はいなかった。
だが、リディアが蹴散らせども敵の増援はすぐに出現する。
増援の波が途絶えた隙を突いて、リディアは蜂の巣付近まで駆け抜けた。
濃厚な蜜の詰まった蜂の巣を魔剣で切り取ると、三人分の大袋へ即座に詰め込んだ。
「これでよし、っと……。さあ、さっさと離脱しましょう!」
もっとも、敵陣にしてもリディアを簡単に帰還させるつもりはなく……。
作業中の隙を見て集合していた蜂達による連続攻撃がリディアに炸裂した。
「な、なんの、これしきっ! 美味しいパンケーキのためにも負けません!」
運命の欠片を破裂させながらもリディアは大袋を守って必死に剣を振るう。
そんな孤軍奮闘をしている最中、誰かの絶叫と共に紅蓮に燃え盛るナイフが飛翔した。
「仲間を潰せると……思うなっ!」
恋に燃える業炎のナイフが魔蜂を串刺しにしたのだ。
リディアが我に返ると遠方ではウィズィが諸手を大きく振っていた。
さらにウィズィの付近で相変わらず蜂に集られて刺されているベークが尾で挨拶した。
「よっと……こんなもんですかね。蜂の巣の量は大丈夫そうですか?」
採取成功後、シロップの汚れを洗い落とす為の入浴を皆、忘れなかった。
●高地
高地で颯爽とした強風が吹き荒れると蒼海小麦が流麗な漣の様に揺れていた。
『エージェント・バーテンダー』モカ・ビアンキーニ(p3p007999)は高地まで登り詰めると、密林が広がる無人島の全景を展望しながら息を呑む。
「なかなか良い島だな。観光地として開発できれば、観光客で賑わうかもしれんな」
彼女はもう一段階高低差がある丘に駆け上がると下方の毒草の在り方を探索する。
高地の頂で強風に煽られないように姿勢を低くしながら毒草の配置を俯瞰してみた。
「おーい、そっちの中央周辺、それから崖付近、あとは、……に毒草が生えてるから気をつけてー!」
丘の下で戦闘準備に入る仲間達は、助言を受け取ると笑顔で手を振り返してくれた。
『黒一閃』黒星 一晃(p3p004679)は高地に上がると戦場に咲く蒼海小麦畑を見渡す。
甘党の彼は妖刀『血蛭』の偽打を抜刀して構えながらも事後の試食会に思いを馳せる。
「最強のパンケーキ、か……。甘味はミルクレープこそが至高だと思ってはいるが、最強を目指すとあらば一つ噛ませてもらおう。全力を尽くすが故に、期待を裏切らないでくれるなよ」
そんな一晃の首に綺麗なゼラチン質の尾を螺旋状に巻き付けながら『半透明の人魚』ノリア・ソーリア(p3p000062)が彼の想いに共感を示す。
「そのとおりですの。おいしいものを、食べるためなら、危険を冒しても、かまわない……。そんなのは、召喚前のわたしだったら、考えもしなかったことでしょうけれど。陸の食べ物の味を、知ってしまったいまは、その意味が、よく、わかりますの。……そんなことを、言えるようになったのは……捕食者を、あんなにも恐れていたわたしも、強くなって、捕食する側に、変わったということなのでしょう……」
無論、彼女は一晃を巻き殺しているのではなく防御技術上の理由からそうしている。
盾役の彼女が攻撃特化の一晃に巻き付けば鬼に金棒である。
しかもノリアが海色の術式を施すと彼女の外面に無数の棘が生えた。
既に数多のバッタ魔物達が蒼海小麦畑に群がって麦を捕食していた。
一晃は愛刀を上段に構えて疾走しながら小麦畑の魔物達に斬り込んで行く。
「黒一閃、黒星一晃、一筋の光と成りて、最強の素材を手に入れる!」
初手では剣術の勢いで多数のバッタを斬り殺したものの敵の数は依然と無数だ。
一方で採取活動を開始するモカに敵の追手が回らないようにノリアが引き付ける。
「どこからどう見ても隙だらけですの。思わず捕まえてみたくなってしまうでしょう?」
一晃に巻き付いているノリアが巻き付けを緩めながらも空中を舞い踊る。
まるで防御態勢を捨てたから攻撃して欲しいと願う姿勢とも取れる。
挑発された周辺のバッタ達はノリアのコンビに密集して一斉に飛び掛かった。
集中攻撃の嵐が飛び乱れたものの、最後に立っていたのはノリアを巻いた一晃だった。
「食べたいなら食べてもいいですが、必死に抵抗されることくらいは覚悟しなければなりませんの」
棘だらけのノリアを襲撃しようとしたバッタ達は茨の園に飛び込んだ様な物だ。
返り討ちにあった魔物達は茨の反射攻撃に刺撃されて次々と逃げて行く。
それでも未だに無数の増援が出没して一晃達への強襲の機会を窺っていた。
「この場は俺がやる。いざ勝負、バッタ共!」
強かな向かい風をその身で受け流しながらも一晃が必殺の剣術奥義で牙を剥く。
妖刀の太刀筋が砂嵐を巻き起こしながらも百花繚乱の斬撃をお見舞いした。
けれども全滅しないバッタには撃ち漏らしもあるのでノリアが水鉄砲で援護射撃だ。
「バッタたちには、可哀想ですけれど、これも、弱肉強食ですの。わたしたちの共生の力を、見せてやりますの!」
一晃達が蒼海小麦畑のほぼ中央で激闘をしている隙にモカが採集活動に精を出す。
流石にノリア達が囮の役を買って出たのでモカの採取活動は存分に捗った。
モカは蒼海小麦をナイフで切っては大袋に詰め込んで収穫を急ぐ。
「長居は無用だ。採る物採ったらさっさと帰ろう。……ああバッタが鬱陶しい」
丁度、一袋分の採取が切りの良い所まで終わるとバッタの増援が出没した。
彼女は採取を優先していた訳だが、戦闘の危機が迫ると一時中断せずにはいられない。
流星流格闘術・基本ノ型を構えると毒蜂の動作で周囲の獲物に飛び掛かる。
「悪いが瞬殺させてもらう。こっちも仕事中なものでな」
モカは残像を閃光の如く揺らせて舞い踊りつつも各標的の急所を蹴突した。
殺人蜂に刺されたバッタらは痺れて氷結しながらも闇へ葬られていった。
「ふう、スパイ活動でも邪魔が入った時は現状復帰が肝要だ。さて、仕事に戻ろう」
その後、モカは度々戦闘する事もあったが、大袋三袋分もの麦を回収し終えた。
「さあ、高地班全員で撤収だ。皆、逃げるぞ!」
モカが前方で戦い続ける二人に撤退を叫ぶと、彼らは逃走を開始した。
皆でバッタの群れから跳ねる様に逃げたが、高地を下ると追跡は絶えたのであった。
●試食
その日の夕方、皆で集めた素材を持ってリューの喫茶店で合流した。
「こんなに皆頑張ったんだもん、食べさせて貰わないと、ねっ、ねっ?」
「おう、任せろ」
昔の友人であるリリーからのおねだりとあっては試食会も自然と開催となる。
ところで、依頼した素材の一種類に、なぜ、たい焼きが存在するのだろう?
リューがベークを試食しようかと密かに迷っていたら……。
「……僕はパンケーキでもたい焼きでもありませんからね? 食材とか、関係ないですよ? 美味しくありませんよ?」
慣れた手付きでパンケーキを調理するリューの様子をリディアが隣で見学している。
「ちなみにこの蜂の巣、ほんの少しだけ食べてもいいですかね……?」
リューは蜂の巣を小さく切ってカラメルで焼き焦がした。
リディアは香ばしい蜂の巣焼きを受け取ると、皆にも分ける為に客席へ急いだ。
ついに、試行錯誤の果てに「最強」が完成する。
甘美な白蜜と紅蓮の実に彩られて、こんがりと黄金色に輝くパンケーキだ。
試食会ではリリーが代表して号令する。
「さ、美味しいパンケーキ、皆で食べよっ♪ いただきますっ! ……はぐはぐっ、甘さが最高だねっ!?」
美食家のマルベートは初めての神秘的な美味に驚愕する。
「ふむ……。これが……最強なのかな?」
甘味好きのベークも不思議な美味という感想を抱いた。
「なるほど……。最強とは不可思議ですかね?」
同業者であるモカも最強の味に興味津々である。
「……どれほど美味いのか料理人として興味があるが、な、なんと……!?」
ノリアは甘き逸品を味わいながらもご満悦だ。
「甘さは、海の中では、とけだしてしまうので……陸ならではの、贅沢な味ですの!」
ウィズィは蕩けた笑顔でうっとりとしながらも食が進む。
「これはもう、最強に美味しいのですね! あ~~っ、蕩けちゃう~~……!」
一晃はパンケーキを無心で頬張るもののお店のミルクレープの方を愛好する。
「はて、最強とはいかなるものか? ……俺はやはりミルクレープ派だな?」
リディアに関しては黙々と一瞬で平らげるとお代わりである。
リューは皆の反応を窺い見ると、成功した事を確信して不敵に笑っていた。
最後に補足しておくが、「最強」とは一概に定義できない不確定要素のある解釈だ。
「最強」の定義は試食した各自の舌が決める為、皆の反応がそれぞれ異なるのであった。
了
成否
成功
MVP
状態異常
あとがき
シナリオ参加ありがとうございました。
今回は最強幻想とパンケーキを絡めた冒険譚でした。
リュー君の料理人としての探求は今後も続いていく事でしょう。
かく言う私もパンケーキは大好きです。
GMコメント
●注意事項
当依頼はリトル・リリー(p3p000955)さんの『関係者依頼』です。
関係者以外の方の参加も大歓迎です。
また、当依頼は『練達』と『海洋』の名声が半々程度での獲得となります。
●情報精度
このシナリオの情報精度はBです。
依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。
●目標
以下の3つの条件を全て達成する。
1.沼地で紅蓮ベリーを大袋に採取する。
2.海岸でシロップ・ビーの蜂の巣を大袋に採取する。
3.高地で蒼海小麦を大袋に採取する。
●ロケーション
『海洋』に位置する無人島が今回の物語の舞台です。
無人島で3種類の素材を採取する為、3か所の採取場を訪れる事になります。
採取場の3か所は同じ無人島内にありますが距離的にかなり離れています。
(採取場ごとの班分けを推奨します)
以下、採取場の解説です。
1.沼地
密林の奥に大きな沼地があります。沼に入るとBS泥沼が付与されます。
水中でも動く事は出来ますが、触手がいて、どろどろで臭くて動きづらいです。
沼地の周辺は熱帯雨林になっていて、紅蓮ベリーの木々(魔物)があります。
2.海岸
海岸には白い砂浜があります。
砂浜付近の岩場辺にシロップ・ビーの大きな蜂の巣が幾つもあります。
他の採取場に比べて魔物(シロップ・ビー)が少ないですが強いです。
3.高地
島の高地まで登って行くと野生の小麦畑に出ます。強風注意です。
蒼海小麦もありますが、BS毒の草も紛れていますので気を付けましょう。
他の採取場に比べて魔物(蒼海バッタ)が多いですが弱いです。
●敵
以下、採取場ごとに登場する魔物を解説します。
1.沼地
紅蓮ベリーの木×初期20体程度(増援の可能性あり)
紅蓮ベリーを実らせている木の姿をした魔物です。
小さな木から大きな木まであって歩行も可能です。
戦闘方法は以下。
・紅蓮攻撃(A):自ら燃えて体当たり攻撃です。物近単ダメージ。BS火炎。
・沼地落し(A):突撃して沼地に落します。物近貫ダメージ。飛。
・カムフラージュ(P):その辺の木々のふりをして姿を隠す時があります。
2.海岸
シロップ・ビー×初期10体程度(増援の可能性あり)
ドッジボールのボール程度に大きい白い蜜蜂の魔物です。
戦闘方法は以下。
・ニードル攻撃(A):お尻の針で攻撃です。物近単ダメージ。BS麻痺。
・シロップ攻撃(A):どろどろした白いシロップの射撃攻撃です。
物中単ダメージ。BS足止。
・飛行(P):常時、飛行しています。
3.高地
蒼海バッタ×初期50体程度(増援の可能性あり)
並みのボトルサイズ程度の大きさの蒼いバッタの魔物です。
戦闘方法は以下。
・ジャンプ攻撃(A):ジャンプで飛び掛かります。物中単ダメージ。
・小麦食い(A):蒼海小麦を食べてHPを回復します。物中単。
・逃げ足(P):HPが減ると逃げます。逃げ足が速いです。
●GMより
そろそろ秋ですが、まだまだ夏のシナリオやりたいGMのヤガ・ガラスです。
解説が少し複雑かもしれませんが、要するに「アイテム集め」のシナリオです。
希望者が多ければ、「リプレイ」の最後で試食会もあるかもしれません。
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