PandoraPartyProject

シナリオ詳細

魔と機械のフュージョン

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 幻想と鉄帝の国境は緊張状態が続く。
 鉄帝という場所は大陸北部にあり、永久凍土となる地帯すらある。とてもじゃないが、作物など育つはずもない。
 肥えた国土を力ずくで奪うべく、国民である鉄騎種達は虎視眈々と南の裕福な幻想を狙っている。
 幻想もその侵攻に備えようと国境付近に警備隊を配備しており、常に鉄帝を威嚇している。
 ただ、この地帯にも不意の魔物が出現することはある。
 警備隊が魔物の討伐に当たるのは簡単だが、迂闊に動けば鉄帝に攻め入る隙を与えてしまう。
 そんな有事の際に動くべく、白豹の獣種『灰雪の騎士』スノウ・ダイン・スロウスがこの近辺に部下を従えて詰めている。
「……また出現したのか」
 詰め所で報告を聞いたスノウが頭を抱え、溜息をつく理由は2つ。
 出現したのは、体の一部が機械化した人狼の出現情報が散見されていること。
 もう一つは、その度に、『白雷の貴人』アッシュ・クラウ・ラースが身を張って討伐に繰り出してくれることだ。
「ええ、1、2体なら、あなたの部下と一緒に問題なく討伐できそうね」
 お嬢様ながら、アッシュは機械となった細腕で重い一撃を繰り出すことができる。その実力は幻想の騎士達も顔負けだ。
「だから、君はあまり目立つと……」
 この地で混乱が起きるのは鉄帝としては望むところ。
 アッシュはその解決にと自慢の機械の細腕で敵を殴りつけて倒してくれてはくれるが、幻想民全てが彼女の働きを歓迎しているわけではない。
「まあ、そうなのだけれど……見過ごしておけないのよ」
 アッシュとしては困っているから魔物退治に力を貸すといった脳筋志向であり、ある意味で鉄帝民らしい思考だ。
 だが、それがまた力こそ正義と侵攻してくる鉄帝民であることを印象付けてしまうのが皮肉なところである。
 スノウも彼女の好意はありがたいところなのだが、部下や警備兵達の不満を汲み取るのに頭も傷めていた。

 それはさておき、目下の問題は機械化人狼だ。
 度重なる襲撃もあり、スノウはその制作主まで特定することが出来てはいた。しかし……。
「魔種となった錬金術師アウォル、か……」
 この地にはびこる魔物に機械の要素を加えたらどうなるか。好奇心を抱いて研究を続けていた錬金術師がいた。
 すでにその地点で狂気の域ではあったのだが、それを強大な力を持つ魔種に見初められたらしく、アウォルもまた魔種へと堕ちてしまった。
 今は機械化人狼の生産を続けながら、新たなサイボーグとなりそうな魔物を……とりわけ知性を付けられるような研究も行っているとのこと。
「錬金術師が成果を上げる前になんとかせねばな」
 しかし、魔種が相手となれば、スノウですら分が悪い。魔種相手はローレットイレギュラーズ。その考えが幻想の騎士でも一般的になってきている。
 ローレットへと部下に使いを……とスノウが考えていると、アッシュが彼の顔を覗き込んできて。
「討伐に行くなら、私も絶対行くよ」
 スノウは小さく溜息をついてから、一言。
「わかった。だが、俺達の役目は露払いだぞ」
 魔種相手では『原罪の呼び声』による影響を受ける可能性が少なからず発生してしまう。自分達の身を守る為にも、ここは専門家に任せたいところだ。
「大丈夫。思いっきりあのサイボーグと戦えるんでしょう? 腕が鳴るってものよ!」
 全くもっておてんばなお嬢様だと、スノウは苦笑してしまうのだった。


 国境付近から少し離れた山間の別荘跡。
 あちらこちらに見張りとして徘徊する機械化人狼の姿がある中、家屋内から薄気味悪い笑い声が聞こえてくる。
「ヒヒ、今度は知能に秀でた魔のサイボーグを……!」
 完全に正気とは思えぬ灰色の衣服を纏う男がぶつぶつと呟きながら、周囲に設置された多数のフラスコ内に培養する様々な魔物と機械を掛け合わせていた。
 そのほとんどは融合が上手くいかず、機械化人狼を量産するのみとなっている。
「待っておれ、必ず研究成果を形にしてやろうぞ!」
 そいつは休みなく動き、目を血走らせながらも研究を進めていく……。

GMコメント

 イレギュラーズの皆様こんにちは。GMのなちゅいです。
 こちらは、アクセル・ソート・エクシル(p3p000649)さんの関係者依頼ですが、どなた様でも参加可能です。
 鉄帝に程近い幻想辺境に現れる魔物の1件の解決編です。

●目的
 魔種となった錬金術師の撃退。
 少なくとも、この地域から追い出すことで、スノウさんの目的は達成されます。

●敵
○魔種……錬金術師アウォル
 元人間種、30代くらいの痩せ型男性。グレーに統一された衣装が特徴的です。
 下記の機械化人狼の制作主です。
 ドローンを仲介して炎や雷などの魔法を放ったり、機械によって強化した魔砲を発射したりするなど、複数分野を合わせた攻撃を得意としております。

○サイボーグワーウルフ(機械化人狼)×?体
 鉄騎種と獣種のハーフにも思える見た目をし、自我を失った狂える魔物達です。
 毒やマヒの効果がある鋭い爪、噛みつきを使う他、機械となった四肢で強烈な打撃を繰り出すこともあります。
 距離を取れば素早く接近して来る為、遠距離でも油断はできない相手です。

●NPC
 以下のメンバーが参戦します。主に、別荘後周辺の機械化人狼を相手にしてくれます。

○『灰雪の騎士』スノウ・ダイン・スロウス
 幻想に属する騎士で、鉄帝に近い幻想の辺境に住む獣種の男性です。アクセルさんにとっては命の恩人に当たります。
 争いを好まぬ穏やかな性格ですが、真面目さも合わせ持ち、日々鍛錬は欠かしません。
 戦闘面でも卓越した剣術を存分に発揮してくれます。

○幻想の騎士(スノウの部下)×10名
 人間種男性のみです。軽装鎧を纏い、長剣と盾を使って攻撃を行います。

○『白雷の貴人』アッシュ・クラウ・ラース
 鉄帝の貴族の1人。金髪に赤と青のオッドアイが印象的な女性です。少なからず、スノウさんに好意を寄せているようです。
 華奢な見た目に見えますが、機械化した腕部は細腕ながらに中々の威力を叩き出すパワータイプ。
 鉄帝の民らしく、強い相手の力を認める価値観を持っております。

 戦いでもその細腕を直接叩きつける肉弾戦を好みます。
 あまり好みませんが、中、遠距離用に気弾を飛ばす技も習得しているようです。

○状況
 場所は幻想と鉄帝の国境付近。
 国境沿いに進んだところに居を構える錬金術師の巣窟へと乗り込みます。
 貴族の別荘跡を研究所へと改造し、周囲に多数の機械化人狼を見張りとして徘徊させている状況です。
 内部は多数のフラスコが設置されており、魔物が培養されております。破壊しながら戦うと敵の怒りを誘うことができるでしょう。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

 それでは、よろしくお願いいたします。

  • 魔と機械のフュージョン完了
  • GM名なちゅい
  • 種別通常
  • 難易度HARD
  • 冒険終了日時2020年08月31日 22時00分
  • 参加人数8/8人
  • 相談5日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

チャロロ・コレシピ・アシタ(p3p000188)
炎の守護者
アクセル・ソート・エクシル(p3p000649)
灰雪に舞う翼
ジェイク・夜乃(p3p001103)
『幻狼』灰色狼
楔 アカツキ(p3p001209)
踏み出す一歩
レーゲン・グリュック・フルフトバー(p3p001744)
希うアザラシ
マリア・レイシス(p3p006685)
雷光殲姫
チェルシー・ミストルフィン(p3p007243)
トリックコントローラー
フォークロワ=バロン(p3p008405)
嘘に誠に

リプレイ


 幻想と鉄帝の国境付近を、ローレットイレギュラーズ及び幻想の騎士団が移動する。
「アクセルさんの恩人さんと踊れるなんて光栄だわ」
 予め顔合わせは済ませてはいるが、剣の片翼を生やす『魅惑の魔剣』チェルシー・ミストルフィン(p3p007243)は貴族令嬢の優雅さで共闘する騎士達へと妖艶な笑みを浮かべて挨拶する。
「宜しくね、スノウさん、アッシュさん、そして騎士さん方」
「ああ、よろしく頼む」
「よろしく。どんな戦い方をするのか楽しみね」
 淡々と挨拶を交わすスノウと騎士達。そして、これからの戦いに胸躍らせるアッシュ。緊張する国境地帯に詰めている者達とあって、皆なかなかの力量を持っているようだ。
「レーゲンさんも相方としてお願いね」
「チェルシーさん! こちらこそよろしくお願いしますっきゅ!」
 続いて、声を掛けられた幼体のアザラシ、『森アザラシ』レーゲン・グリュック・フルフトバー(p3p001744)が挨拶を返す。
 なお、レーゲンは犬獣人のグリュックに抱えられて移動している。「前の事件の黒幕が魔種なんてね……」
 それにしてもと、鷹の獣人の姿をとる飛行種男性、『猫さんと宝探し』アクセル・ソート・エクシル(p3p000649)が前回の事件を思い返しつつ語る。
「サイボーグワーウルフの強襲は、その後も散発的にあった」
「だから、黒幕が分かったのだけれどね」
 知人のスノウ、アッシュの言葉に、アクセルはうんと頷いて。
「ここで止めないと、機械化した人狼だけじゃなくてもっと被害が広がっていくから、その前にやっつけないとね」
 皆、黒幕である魔種を討伐すべきと頷き合う。
 そいつの行いに、皆思うことがあったようで。
「聞けば、マッドサイエンティストの類らしいがよ」
 『『幻狼』灰色狼』ジェイク・夜乃(p3p001103)が言うように、相手は機械工学、生体工学、錬金術などに精通し、それらを合わせた独自の研究を行っているようである。
「兵器を作るではなく、わざわざ生き物を改造するのか」
 気が遠くなるほどの長きにわたり、守人として生きてきた『踏み出す一歩』楔 アカツキ(p3p001209)の目にもその魔種の行いはフザけたものに映っていたが、腕前は確かなのだろうと考える。
「サイボーグ……か……」
 異世界の魔動機工学によってサイボーグとなった少年、『魔動機仕掛けの好奇心』チャロロ・コレシピ・アシタ(p3p000188)だが、彼は生きる為、護る為にこの体になったと語る。
「魔物とはいえ、私欲のままに命をいじくりまわすなんて酷いよ!」
「魔物だからって、培養してるからって、命を弄ぶような事は酷いと思うっきゅ!」
 相手が望まぬ改造に憤りを見せるチャロロ。レーゲンもまた声を荒げてその行いを非難する。
「だから止めるっきゅ! 倒せなくても研究を遅らせてやるっきゅ!」
 生命を愚弄するような魔種の行為。
「彼らも性懲りもなくろくでもないことを繰り返しますね。ですがそれを放っておけないのがまた厄介なところです」
 皆が怒りを見せる中、燕尾服着用の執事、『嘘に誠に』フォークロワ=バロン(p3p008405)は些か呆れて。
「さぁ、魔種に堕ちた錬金術師の最後はどのようなものなのでしょうね」
 すでに、相手を倒す前提のフォークロワ。ジェイクも、相手が魔種なら怖くないと豪語する。
「なぜなら俺達は、魔種を退治するのが得意なローレットのイレギュラーズじゃないか!」
「魔種であるならば容赦の余地もない。この場で奴に引導を渡してやろう」
 アカツキも強くその討伐に意欲を見せる。
「さすがはローレット、というべきか」
 そんなイレギュラーズに、スノウを始めとする騎士達は頼もしさを覚えずにはいられないのだった。


 魔種となった錬金術師の研究所ともなっている山間の別荘跡。
 その周囲には多数の機械化人狼達が巡回を行う。見た目だけでも、20体は軽くいそうだ。
「さて、まとめ狩り作戦、結構するわ」
 そこに近づいたところで、チェルシーが前に出る。
 予め仲間達と打ち合わせしていた彼女はルーンシールドの障壁を展開し、星夜ボンバーを床へと叩きつける。
 爆音が鳴り響くと、警戒に当たっていた機械化人狼達が集まってくる。
「本当に大丈夫か?」
「どれだけ攻撃を受けても平気、信じて」
 スノウの心配に、チェルシーはさらりと返してから叫ぶ。
「きゃー! こっちよ狼さーん!」
 名乗り口上も働かせた彼女が喜びながら相手を煽って敵の引き付けに当たる間に、騎士達とレーゲンが迎撃へと当たっていく。

 外は人狼対処班に任せ、直接魔種を叩く班を編成するイレギュラーズ6人が別荘内部へと突入する。
 内部は元々使われていない建物を流用しただけらしく、通路は日に遮られて薄暗い。
「こういう時、大体は高い所にいると相場が決まっているが、どうなんだろうな」
 笑い声が聞こえればそこだろうと考えるアカツキは、なんとかと煙は高い所へ上る、なんて言葉を思い出す。
 その間、『雷光殲姫』の異名を持つ元軍人の『雷光・紫電一閃』マリア・レイシス(p3p006685)やジェイクは研ぎ澄ませた五感をフルに働かせ、魔種の居場所を探す。
 その際、外にいるレーゲンがファミリアーの鳥を同行させ、内部の構造、魔種との戦況を把握させていた。
 フォークロワは暗視を働かせ、怪しい通路を見過ごさないかと気にかけて探索を進める。
「こっちだよ……!」
 感情探査で魔種の居場所を探り、チャロロが仲間達へと示したのは地下だ。
 仲間達の少し前を歩くアクセルも暗視を働かせ、見張りの人狼がいないかチェックしつつ地下への階段を下りていく。
「ヒヒ……、ヒヒヒヒ」
 その部屋は地上階とは違って明かりがついており、不気味な笑い声が聞こえてくる。
(準備はいい?)
 アクセルが確認すると、頷き合うメンバー達は一気に研究室へと突入して。
 すぐさま敵……魔種となった錬金術師アウォルを捉えたジェイクが両手の拳銃を発砲し、敢えて掠る程度の傷を負わせて。
「今日の獲物はてめえだ!」
 相手を煽るジェイクを守るようにチャロロが位置取り、敵の攻撃に備える。
 さらにマリアがドリームシアターによって自らの幻影を展開し、交錯するように動いて。
「魔種か……。本来の君は一体どんな人間だったのかな?」
 どちらが実体かを判別しづらくしながらも、マリアは体に纏う紅雷を零距離から直接魔種へと浴びせかけていく。
「少なくとも今とは違って対話くらいはできたのだろうね……」
「ヒヒ、なんだお前達は……!?」
 沢山の実験器具に囲まれる中、ゆっくり振り返ったのは、灰色の衣服を纏う男。彼こそが今回の事態を引き起こした錬金術師アウォルだろう。
「これからモルモットになる予定の魔物の培養ですか」
 そこで、フォークロワが敢えてフラスコを破壊することで、敵を挑発する。
 フォークロワは暗黒物質でできた仮面のうちからじっと見つめ、もう一つ人狼を培養していたフラスコを破裂させた。
「無意味、無駄ですね。無能な貴方にはもったいない」
「私の研究が無駄……私が無能というか……!」
 顔を真っ赤にしたアウォルはいきり立って部屋の中に多数のドローンを展開する。
 そして、彼自身も片手に大砲、もう片手に魔力を溜め、この場のイレギュラーズ達へと襲い掛かってきたのだった。


 別荘外では機械化人狼と騎士を主体としたチームが交戦する。
 基本的にはチェルシーが多くの敵を集め、油と獣の臭いのする敵を集めていく。
「沢山の逞しい狼さんたちに囲まれて、あぁ……私はどうなっちゃうのかしら?」
「「グアアアアアッ!!」」
 自我を失った機械化人狼どもは鋭い爪を振り払い、チェルシーをぼろ雑巾の如く引き裂かんとするつもりだ。
「ぞくぞくするわね……私の壁を突き破られて襲われちゃうのかしら?」
 傷つけられるチェルシーは喜びに打ち震えながら魅惑の魔剣を手に舞い踊り、背の片翼も合わせて機械化人狼を切り裂いていく。
 敵の注意が彼女へと向いているうちに、騎士達も側面から敵へと斬りかかる。
 一方、注意が外れた敵はスノウが引き受け、長剣で爪を受け止め、反撃で斬撃を浴びせる。アッシュも身軽な身体と機械の腕で1体とタイマンを張って交戦していた。
 そんな中、レーゲンは神聖なる光を周囲へと展開していく。
「敵にしか当たらないから安心っきゅ!」
 この場に多数の騎士達がいるにもかかわらず、レーゲンは躊躇なく光を放ち、機械化人狼だけを灼き払っていくのである。

 別荘地下では、ジェイクが魔種アウェルの引き付けに当たり、相手を煽りつつ、銃撃を掠める。
「ヒヒ、そのへらず口を塞いでやる」
 すると、敵はジェイクへと近づいてドローンで射撃を浴びせかけようとしてくる。
「おっと、当たらせてたまるか!」
 だが、それをチャロロがしっかりとカバーに当たり、弾丸を受け止める。
 相手は魔種だが、防御に集中することでチャロロもそう簡単には崩れないと自負する。
 ジェイクもまだ子供のチャロロに庇ってもらうことに若干の引け目を感じてはいたが、ここは彼を全面的に信用して戦いを進めることにする。
 2人がかりでアウェルを抑える中、他の4人が全力で敵を叩く。
「さぁ、もがき苦しんだ時にどのような表情を見せてくれるのでしょうか」
 部屋の壁ギリギリまで下がったフォークロワが厄介なドローンを虚無の力を伴う暗黒物質の一撃で撃ち落とす。
(こちらの人数は少ない。長期戦は不利だ)
 6人で魔種を相手にする状況は相当厳しいとみているアカツキは、それだけに長期戦は不利と察して攻撃を集中し、全力でアウェルへと殴り掛かり、追撃として火柱を浴びせかける。
「君にどんな事情があるかは知らない! たとえ何か事情があったとしても、容赦は出来ない!」
 叫びかけながら、マリアは自らの幻影でアウェルを目晦まししながらも、死角へと回り込んで。
「けれど、君の為に祈ろう!」
 仲間の射線を塞いでいないことを瞬時に確認し、マリアは紅雷を纏った蹴りを叩き込む。
 アクセルは仲間がすでに接敵していたこともあり、破壊のルーンの使用を止めて神気閃光を周囲のドローン、実験器具などを巻き込むようにして放ち、敵陣へとダメージを与えていく。
「あれっ、これって……」
 敵陣、そう。この場にいる敵はアウェルだけではない。
 スペースの都合もあってか、機械化人狼を3体のみ敵はこの場に潜ませていたのだ。
「グルアアアアッ!!」
「まさか、この場に置いといた実験体が役立つとは、ヒヒ」
 小さく笑うアウェルはすぐに冷静さを取り戻し、手から炎を放つ。
 それはドローンを介して強化していき、ジェイクやチャロロの体を焼き払う。
 出来れば敵を直接抑えたいと考えながらもフォークロワはドローンの数を減らし、状況の打開へと繋げようとするが、アウェルの隠し玉である機械化人狼の実験体がこの場をかき乱す。
「長引けば不利……」
 アカツキは改めて魔種との交戦を長引かせぬ為、錬金術師アウェル目がけて攻撃を集中させるべく殴り掛かっていくのである。


 外での戦いも、乱戦状態となっていた。
 荒ぶる機械化人狼どもを押さえつけるのは一筋縄ではいかない。まして、数で攻めてくるからなおのこと。
「無理はするな、対処できる数のみ交戦するんだ」
 スノウの状況分析は見事なもの。騎士達は数人単位で敵を相手にし、確実に戦く。傍のアッシュは気ままに戦っていたが、不利を悟れば引いて自己回復に当たるなど、引き際はわきまえていたようだ。
 一方のチェルシーは軽口を叩き、鉄壁のルーンシールドによって機械化人狼の攻撃を受け止め続ける。
「あぁ……いいわね。胸の高鳴りを感じるわ」
 恍惚とした表情で敵の攻撃を堪え、魔剣の舞踏で相手に纏めて攻撃を繰り返す。
 レーゲンはそんなチェルシーに近づかぬよう……彼女の斬撃に巻き込まれぬようにと言う意味だが、それはさておき。
 魔種と戦う仲間達と早く合流できるよう、レーゲンは全力で神聖の光を激しく瞬かせ、機械化人狼の身体に痺れを与え、数体を倒してしまう。
「「ウウ、ガアアアアアアッ!!」」
 だが、そこへ新たに数体が増援として駆けつけ、その場のメンバー達を苦しめるのである……。

 逐一ファミリアーの鳥をい、外の状況を確認するアクセル。
「早く加勢に……」
 なお、現状こちらはジェイクがアウォルの攻撃を引き付け、チャロロがカバーを繰り返し、前線を持たせ続けている。
「オイラはおまえの実験台なんかとは違うよ。心まで失うわけにはいかないからね!」
 チャロロはジェイクが銃撃を仕掛ける手前から、自らの頑丈さを主張する。
「ヒヒ、その口を塞いでやる!」
 時折、怒りが醒めたアウェルは残るドローンを介して雷撃を放出してくる。
 広範囲に攻撃してくれば、攻撃に集中したいメンバーにもダメージが及ぶ。
 また、傍の機械化人狼3体の攻撃も、想像以上にこの場のメンバー達の体力を削っていく。
 こちらの態勢が崩れる前に。ある程度ドローンを撃ち落としたフォークロワは数多の紙片を放って魔種を攻め立てる。
 外が苦戦している状況を察するアクセルも、この場は全力でと全身の力を魔力に変え、砲撃を発射した。
 続き、アカツキが意志抵抗力を破壊力に転じて強く殴りかかり、さらにマリアが紅雷を纏った蹴りを再度叩き込む。
 順調に攻め立てているかと思いきや、ここで敵が突然牙を剥く。
「ヒヒ……」
 アウォルは銃の如き機械を手にし、それによって魔砲を強化して撃ち放ってきたのだ。
 その威力にチャロロが崩れかけ、パンドラを使う羽目に。
 ジェイクも立て続けに放たれたドローン仲介の炎と合わせ、機械化人狼達の爪を浴びて早くもパンドラを使い、一気に追い込まれた。特に、チャロロは深手を負っていたようだ。
 アクセルが彼らへと治癒魔術を使い、なんとか戦線を維持する中、アカツキが動く。
「下らない研究だな。この程度の物を誰かが認めてくれるとでも思ったか?」
「ヒッ……!?」
 時間を稼ぐべく、アカツキは正義の拳でアウォルを殴りつける。
「しかし、一生犬ころ相手に遊ぶ姿が、貴様にはお似合いだな」
「言わせておけば……!」
 アウォルはアカツキへ、今度は強化した魔砲を放射してくる。
 その身を穿たれるような苦痛を感じたアカツキも、遮断されかけた意識を運命の力で繋ぎ止め、踏みとどまる。彼もまた傷は深い。
「何……!?」
 倒れぬイレギュラーズに目を見開くアウォルの怒りを買うべく、ジェイクは掠る程度の射撃を浴びせて相手の気を引く。
 アウォルに注意がジェイクに移ったところで、マリアは紅雷を迸らせて。
「私の紅雷は特殊でね! 君のエネルギーを浸食して消失させる!」
 再度、その紅雷を纏ったマリアが連続蹴りを浴びせかけていき、相手を一層追い込む。
 よろけた相手をフォークロワが確実に仕留めるべく、ナニカを魅せつけて。
「これが因果応報というのですかね、あなたが扱ったモルモットのように、ね?」
「……ヒ、ヒ……?」
 その内部を決定的に狂わせ、魔種の意識をも完全に止めてしまう。
 実験器具に寄りかかるように崩れ落ちた敵に対し、マリアが一言。
「君がどんな人物だったか知りたかったよ……」
 そう呟く彼女の表情は少し寂しげだった。

 その後、全力でこの場にいた3体の機械化人狼を駆除した面々。
「このままにしといたら、悪用するやつがいないとも限らないからね……」
 チャロロだけでなく、ジェイクやマリアも同様に考え、室内のフラスコを全て破壊していった。


 外の機械化人狼達を相手にするチェルシー、レーゲンと幻想の騎士達。
 ほとんど回復もないまま、ルーンシールドに頼って敵の攻撃を受けていたチェルシーだったが、狂ったように攻撃を続ける敵に、シールドが解けたタイミングが命取りとなって。
「ふふ……あははははは!」
 機械化人狼の拳、鋭い爪がその身へと食い込み、チェルシーはパンドラを砕きながらも、なお、魔剣を振りかざし、血を散らす。
 危機を察するレーゲンだったが、そこで、別荘内からこちらへと駆けつけてくる仲間達の姿を確認して。
「待ってたきゅ!」
「待たせたね! さぁ! 早く片付けて皆で帰ろう!」
 残りを殲滅術く、マリアは紅雷を纏って機械化人狼に拳を打ち込む。
 負けじとアッシュも機械の腕で相手を殴り飛ばせば、スノウが斬撃で敵の体を寸断して仕留める。
「こんな風にされて暴れ回るなら、せめてここで終わらせてやるしかないよね……」
 疲弊していたチャロロだが、それでも敵のマークを続けながらも防御態勢からカウンターとして機械盾で相手を殴りつけ、卒倒させてしまう。
 傷が浅くないことを感じていたチェルシーも再びルーンシールドを張り、魔剣を手にして躍りかかり始めれば、レーゲンはさらに聖なる光を浴びせかけて残る敵の体力を削り、1体、また1体と倒していく。
 狂った相手を見つめ、フォークロワが倒していく近場でジェイクが叫ぶ。
「狼仲間のよしみで、てめえら俺が直々にあの世に送ってやる! 感謝しろよ!」
 改造されなければ、別の人生があったはずの機械化人狼達へ、ジェイクはさらに一言。
「あばよ」
 別れの言葉を告げた彼は、自我の無い相手の生を銃砲で終わらせたのだった。


 全てが終わり、静まり返った別荘跡。
 ようやく一息ついたアクセルがスノウとアッシュの姿を認めて。
「大丈夫? 怪我はない?」
「ああ、そちらも上手くいったようだな」
「お疲れ様。これで事件は解決したのね」
 アクセルの気遣いにスノウも労いの言葉を返す。アッシュも喜びこそすれ、戦う機会が減りそうだと残念がってもいたようだ。
 マリアやチャロロが中心となり、騎士達の力を借りながら、別荘の庭へと機械化人狼達、そしてアウォルを埋葬して簡易な墓を作っていく。
 複雑な想いを抱き、チャロロが改造された魔物達に手を合わせる。
「君は魔種になる前も非道な人間だったのかな? そうじゃなかったのかな?」
 マリアは弔うアウォルへと言葉をかける。
 今となっては元の彼の姿を知るすべはないが、死んでしまえば皆同じ。
「君と君が造った命の罪が赦され……せめて死後……平穏が訪れますように……」
 祈りを捧げたマリアは少し悲しそうな表情をし、その場を立ち去って行ったのだった。

成否

成功

MVP

チャロロ・コレシピ・アシタ(p3p000188)
炎の守護者

状態異常

チャロロ・コレシピ・アシタ(p3p000188)[重傷]
炎の守護者
楔 アカツキ(p3p001209)[重傷]
踏み出す一歩
チェルシー・ミストルフィン(p3p007243)[重傷]
トリックコントローラー

あとがき

 リプレイ、公開です。
 MVPは引き付け役とペアになり、庇いに当たり続けたあなたへ。
 今回はご参加、ありがとうございました!

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