PandoraPartyProject

シナリオ詳細

ハクスラネコ

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●要:警戒
 風が緑一色の野原を駆け抜け、銀色の波を一筋立てる。
 聴こえて来る音も、草の香り運ぶのどかな風の音だけだ。そこには都会の喧騒や人の諍いは無い。
「いーい天気だぁ」
 こういうのんびりした一時があるからこそ、『運び屋』は止められないのだ。
 御者台から足をぶらんと揺らし、馬車を馬のペースに委ねて。運び屋のテスラという男は安穏とした草原地帯を往く。
 彼の行先は幻想王都から少々離れた農村だ。
 荷物はただの農具や水源の管理道具であり、金目の物や魔物を誘き寄せてしまう食糧など何一つなく。これまでに幾度と渡ってきたが一度として賊の類に襲われたことは無かった。楽な仕事である。
「ふぁーあ……気持ちのいい日だ。そこいらで一休みするかい相棒」
 ほんの少しだけ豊満なお腹を一叩きしながら、テスラは馬車を引いている馬たちに声をかける。返事はない。
 だが上機嫌なテスラは視界の端に小さな森があるのが見えた。
 目的地まで数刻といった所だろう。お天道様が休めと言っているに違いない、とさえ彼は信じ。「よーし、木陰でパーティーだ」と馬車の進路を変更する。

 木陰に馬車を寄せる。
 膝の高さ程度の草原に囲まれているだけで、半径100mも無いような森林だ。半ば不自然であったが、なんて事は無い。気紛れに植木だけ置いて行く物好きなら幻想にいくらでもいるだろう。
 何より木々の向こう側に広がる草原が見えているのだ。賊が潜んでいる事もないだろう。
 テスラは荷台から取り出した弁当箱を抱いて飛び降りると、馬たちに水をやることにした。
「上手いかぁ。よしよし」
「にゃーん」
「おお?」
 猫の声だ。テスラは馬好きだが猫も好きだった。
「ちちち……猫たーん、どこでしゅかぁ」
 揺れるお腹の上に弁当箱を乗せたテスラは、頭に被ったターバンがずれるくらい辺りをきょろきょろと見回す。
 鳴き声は草原の方から聴こえて来ていた。子猫のようなか細い声だった。
「猫たーん、ちちち……」
「にゃーん」
「おおっ、そこにいた……か……?」
 がさがさと、揺れる草葉の向こうに気配を感じたテスラが弁当箱から取り出したドネルケバブを差し出した。
 しかし、その手からドネルケバブが地面に落ちる。
「にゃーん」
 それは――魔物だった。
 草原の向こうからプルンと弾ける水の音めいた、手足なき流動体のような質感をした魔物。スライムというには猫の様な円らな瞳にヒゲがついている。
 特に愛らしく思えたのは、その姿には猫耳のような突起が生えていたことか。
「なんだい君は、可愛いねぇ」
「にゃーん」
 すっかり気を許して近付くテスラに猫のような、スライムのようなそれが、ゆっくりと近寄って行った。
 そして。
「にゃーん」
「にゃーん」
「にゃーん」
「にゃーん」
 数秒後、彼はザザザザ! と周囲から一斉に飛び出して来た魔物達に為す術もなく襲われたのだった。

●命名者(被害者
 全身に包帯を巻いた男は涙ながらに話してくれた。
「あんなの初めて見た……すごい賢いんだぁ、僕のお弁当を奪っただけじゃなくて馬車の荷物も持って行っちゃったんだよ」
 運び屋のテスラ。彼は襲われた際の状況を話してくれた。
「先ず僕を何匹かで滅多打ちにしてきたんだ、ボールみたいに硬い奴等でさ。次に相棒の馬たちを襲ったんだけど……もう見てられなかったよ。
 木の上にもいたのかな。うっすら透き通って見えるだけに全然気付かなかったっけ。
 ああいう集団で襲って来る魔物って怖いのが多いよねぇ、イヤになっちゃうよ。え? どう集団で襲って来たのかって?
 ……まずやたら硬い、あの、前衛な感じのハクスラネコ。それが四匹くらいで囲んで来て、たまに後ろから石を投げて来る子が何匹か他にいるんだ」

 彼の話では、その数は馬車を襲った際に姿を現した個体も合わせて三十匹にもなるらしい。
 その特徴は。
 透き通った乳白色、出来立ての水まんじゅうのような質感、猫耳、猫ヒゲ、馬程度の動物を麻痺させる魔眼。
 ……話を聞いていたイレギュラーズは思わず首を傾げたが、しかし目の前で大怪我を負っている本人の言葉に嘘はないだろう。
「当分これじゃぁお仕事ができないよ。またハクスラネコに襲われるのも何だし……お願い、討伐を依頼してもいいかい?」
 ちなみに名前は彼が命名したらしい。イレギュラーズは訝しんだ。

GMコメント

●依頼成功条件
 ハクスラネコの討伐

●情報精度
 このシナリオの情報精度はAです。不測の事態は起こりません。

●討伐目標
 ハクスラネコ(30)
 狡猾なスライムの集団です。
 可愛らしい見た目で相手を油断させたり、移動手段に用いる馬などを行動不能にしてくる特性があります。
 とにかく囲んで襲ってきます。
 単体の戦闘力は低めですが、前衛の攻撃力はそこそこの威力がありそうです。

能力)「囮にゃーん」
   「ぼくがまえにでるにゃーん」(至・近・単 威力(中) 行動する前に味方が指定した対象へ全力で行う)
   「うしろはまかせろにゃーん」(中・遠・単 威力(小) 行動する前に味方が指定した対象へ集中して行う)
   「ぼくのことはきにせずにげろにゃーん!」(至・近・単 【怒り】 付与が成功するまで次ターン以降同じスキルを使用)

●目標地周辺・状況(ロケーション)
 場所は王都郊外に伸びる街道から外れた、草原地帯に小さくある森林周辺。
 接近後、単独行動している者がいればそちらから襲撃を受けます。
 敵の作戦や隊形は主に集団戦を想定されたものと推測され、草原や木々の陰から奇襲・包囲して来るでしょう。

●最後に
 初めまして、シナリオを運営させて頂くイチゴと申します。よろしくお願いします。
 皆様のご参加をお待ちしております。

  • ハクスラネコ完了
  • GM名いちごストリーム
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2020年08月27日 22時10分
  • 参加人数8/8人
  • 相談5日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ヒィロ=エヒト(p3p002503)
瑠璃の刃
美咲・マクスウェル(p3p005192)
玻璃の瞳
回言 世界(p3p007315)
狂言回し
マヤ ハグロ(p3p008008)
ソニア・ウェスタ(p3p008193)
いつかの歌声
フゥ・リン(p3p008407)
戦う行商人
フリークライ(p3p008595)
水月花の墓守
黒野 鶫(p3p008734)
希望の星

リプレイ


 長閑な平原沿いをイレギュラーズ達は往く。
 向かい風、流れる陽の薫りと草の香りが入り混じり。幻想王都から遠ざかるに連れ人の気配が完全に消えて行くのをそれぞれ感じ取る。
 いっそこのまま遊びにでも、とはいかないのがローレットの仕事。
 馬車の荷台上に腰掛け、流れ行く景色を眺めながら『キャプテン・マヤ』マヤ ハグロ(p3p008008)はじきに見えて来るだろう目的地を思い僅かに溜息をついた。
「猫かスライムかよく分からない生き物……こういう謎の生物はちょっと苦手なのよね」
「ハクスラネコ……命名がイマイチな上にネコかスライムかはっきりしない見た目だな」
 荷台。マヤの声を聞きポツリと『貧乏籤』回言 世界(p3p007315)が零す。
 これから向かう平原沿いの先、目的地である小さな森の周辺には彼が口にした標的『ハクスラネコ』が潜伏しているらしい。その何ともなネームと特徴の組み合わせに、世界は怪訝そうにしていた。
「ネコいいよネ。まず形からしてかわいいヨ。後頭部の丸みとか、ぺたりと伏せた耳もピンと立った耳もたまらないヨ。当然、仕草も素晴らしいネ。時に素っ気なくて、時に甘えてきて、そんな天邪鬼なところがいいよネ」
「……なんなんでしょう。負傷者も出ていて荷も奪われて、大事件なのに、気のせいかいまいち緊張感に欠ける感じが……にゃーんって鳴くとか聞いたせいですかね」
 妙な特徴の魔物に訝しむ一方で『ネコ』に対する何かのスイッチが入る『戦う行商人』フゥ・リン(p3p008407)に、苦笑いを浮かべる『勇気は勝利のために』ソニア・ウェスタ(p3p008193)が小さく首肯する。
 勿論、リンも商人の端くれ。街道を脅かす存在は見過ごせないとばかりにハクスラネコ討伐に気を引き締めて見せる。
「と、とにかく。見た目に騙されないように気をつけなくては……無害であれば、一匹連れて帰りたい気持ちはありますけど」
「まあどんな外見だろうと敵である以上容赦はしない。悪事を働くのならば尚更な」
 思い起こされるのは包帯を巻いた痛々しい姿の依頼人か。世界の言葉にもソニアは首肯して目を逸らした。
「可愛かろうと矢張り魔物。集団を行う知能と危険性もある以上容赦は出来ぬ、一切合切討滅させて貰うのじゃ!」
 民草に被害を出すとは許しておけない、と。マヤとは反対側を向くように荷台上に座っていた『脱新人!』黒野 鶫(p3p008734)が腕を振り上げて憤慨して見せるのだった。

 流れ、移り変わる景色が鮮やかな新緑の景色に変わって暫く経った頃。
 荷台の外を覗くように。小さく体を丸めて眺めていた『水月花の墓守』フリークライ(p3p008595)が遠い昔の情景に、宝石の様な金の眼をキュイと揺らした。
「ニャーン……――猫耳 猫髭 主 ノリノリ フリック 自分 ツケル アッタ……大事 思イ出」
 揺れる車内を心地良い風が吹き抜ける。
 荷台奥。風当たりに狐耳をぱたりと動かした『咲く笑顔』ヒィロ=エヒト(p3p002503)が『紫緋の一撃』美咲・マクスウェル(p3p005192)の視線に首を傾げていた。
「どうかした?」
「んーん、なんでも。農具や水源の管理道具を持ち去る魔物って聞いてちょっとね」
「あー。ネ? 確かにハクスラネコはなんで農具を運ぶテスラサンを襲ったのカナー?」
 彼等を惹きつける何かがあったのだろうか。そんな事を考えて御者台窓から覗き込んだリンに美咲は肩を竦めて応える。
「手足もないスライムに使えるとは思えないけど。一掃したら、農具の回収ついでに調べてみましょうか」
「依頼人さんの代わりに届けたら村の人も喜んでくれるかもしれないしね!」
 何はともあれ、目の前の依頼を片付けた後で考えようと。ヒィロの笑顔に美咲が頬を緩めるのだった。

 そうすること更に一刻。
 ついにイレギュラーズの乗る馬車が速度を落とし始める。

●ハクスラネコとの遭遇
 馬車が速度を落とし、御者台から合図があると同時に美咲が軽やかに馬車から飛び降りる。
 姿勢を低く保ち。街道沿いの背の高い草原へ身を隠した彼女は、馬車の周囲に変化がないか観察しながら随行する。
(さてさて……あれが例の森かな)
 葉先より出過ぎぬ様、細心の注意を払いながら美咲は馬車がゆっくりと近付いて行く先を見渡す。
 一面が草原の中。街道から外れた場所に、確かに小さな森のような一帯を彼女は見つける。
 街道から抜け、リンが操る馬車もそちらへと少しずつ近寄って行った。
 周囲に敵影がないことを確認した美咲は地を這うように素早く移動する。そこで……のそり、と。
「ン。フリック 気分ハ 巨岩 切リ株」
 草葉を揺らしながらも美咲と離れた位置から馬車を追うフリークライの姿があった。その動きはのっそりと、半ば転がってるようにも見えて愛らしい。
 大地と共にあろうとするせいか小鳥が彼を追っている様だが、特に隠蔽性に影響はないだろう。
 ゆっくりとした動きの馬車を見守ること、数分。
 いよいよ馬車の周囲を索敵していた美咲たちの前で、荷台上にいた鶫やマヤが動き出したのが視界に入った。
 馬車の荷台を覆う布の隙間からヒィロが手を振る。
(見つかったのね)
 美咲がそこで足を止め、呼吸を浅くして気配を消失させる。チラと覗いた、暗幕の奥で。世界が眉根を寄せ馬車の右方を警戒している様子があったのだ。
「数が多いのはもちろん、連携を取ってくるのは面倒だな……足元をすくわれないように注意した方がいい」
「心配ないわ。海賊と言えど、海ばかりが戦場じゃないのよ? 依頼を受けた分、しっかり働いて、自分の名前を世に知らしめないとね」
 【エネミーサーチ】にあった反応から、世界は既にハクスラネコが馬車の存在に気付きつつある事を報せる。
 リンと入れ替わる形でマヤが御者台に移動し、地面に降りていく姿を荷台に隠れた一同が見守っていた。
「予め狙いさえわかってれば、その姿に騙されて油断するようなことはないけど……そういう策を使ってくるくらいの賢さには要注意だよね」
 囮役のマヤが森の方へ悠然と歩いて行く様を見つめ、ヒィロは辺りの警戒に努めながらも注意する。

 ひゅう、と風が鳴る。
 後から遅れて草原が波打つように揺れ、耳触りのよい音だけが体を通り抜けて行った。
「……さーて」
 ハクスラネコの気配はまだ無い。
 けれどマヤは腰元から引き抜いたラム酒の瓶を手に、吹き付ける風に片目を閉じた。力が抜けたように。髪を無造作に風に靡かせて。

「にゃーん」
 来た。

「ウーン、可愛いネ。完全にネコだよこれネコ」
「可愛さを武器に……ってこういう意味じゃないよね!」
 マヤが酒瓶を片手に体の緊張を解いて僅か十数秒。急に草むらを分けて出て来た乳白色のネコ耳をぷるんとさせたそれは、リンやヒィロ達が注視している中でマヤのブーツに頭を擦りつけに来ていた。
 その様にくらっときたフリをするリンにヒィロが首を振る。
「依頼人の話通りなら来るぞ」
 低い声で世界が警戒を促す。
 彼は、短いジェスチャーで後方に控えている美咲やフリークライにもすぐさまマヤが接敵した事を報せた。
 同時。
「もしかしてこれ、集まって来てます?」
「ああ。少ないが"俺達の方にもな"」
 ソニアの問いに首肯する世界。マヤの足に擦り寄るハクスラネコを見据えながら漂わせる気配は真剣そのものだ。
(……あっちこっちから猫の鳴き声がなければな~)
 緊張感が仕事してない状況にソニアは項垂れた。

●ハクスラネコ
 状況が動き始める中、鶫は荷台の隅で息を殺して機を伺い続けていた。
(我慢じゃ、我慢……ここは新人の域を出た所を見せる格好の場。儂とて御先の威厳があるのじゃからな!)
 じっとその身を小さく。爪を板に喰い込ませて。
 馬車の外からハクスラネコとマヤのやりとりが聴こえて来るのに、聴覚を研ぎ澄ます。
「なによ……くすぐったいわね」
「にゃーん」
 一歩後退るマヤの足下でぴょん、ぷるん、と右往左往しながら擦り寄るハクスラネコ。
 うっすら警戒が抜けていないからか。それとも離れた位置に停められた馬車の存在が気になるためか。他のハクスラネコは未だ姿を現さない。
 ほんの一瞬焦燥に駆られるものの、暫しそのまま様子を見ているとマヤは背後の草陰が異様に揺れたのに気付いた。
 なるほど、と彼女は手にした酒瓶からコルクを軽快に弾いて見せる。
「……準備は良いようね? じゃあやっちゃうよ?」
「にゃーん」
 そして一挙に飲み干す様を。煽るように飲んで見せ、空になった空き瓶を草むらに潜んだハクスラネコに向かって放り棄てた。
 草陰から飛び出して瓶をキャッチしたハクスラネコが鳴いた。
「我は海賊マヤ・ハグロ! 恐れを知らぬ無法者ならばかかってくるがいいわ!」
 高らかに、ボルテージを上げた女海賊の名乗りが上がる。
 切られる火蓋。マタタビは投げられた。
「にゃーん」
 ザザザ、と一斉に揺れ動く草の音が波打つ水面のようにマヤを囲もうとする。その動き、狙いは彼女を二重にも三重にも囲い込んで完全に叩きのめす陣形だと、後方から索敵に集中していた仲間達は全員気付いただろう。とんでもないスラネコだ。
 個をこれでもかと打つスタイル。ゆえに。
「にゃーん!?」
「ふしゃー!」
 突如マヤの周囲に見慣れぬ集団の幻像が出現したことで。ヒィロの思惑通りハクスラネコ達は一斉に動きを止めて数歩飛び退いた。
 その動揺は群れ全体に広がり、馬車に迫っていた数匹のハクスラネコもまた動きを止めて。マヤを包囲せんとしていた仲間の方を注視していた。

 チャンス――!
「いっくよー!」
 馬車の荷台に掛けられていた幕が内側から引き裂かれ、待機していた面々が飛び出す。
 一直線に敵の陣形後方へ突っ込んで行くヒィロの体が少し軽くなる。
「油断なく、な」
 世界がイオニアスデイブレイクで味方の負担を和らげる。
 離れた位置でマヤとヒィロが魔物と切り結ぶのを視界にいれた端、馬車に近付いていたハクスラネコが砲弾の様に跳ぶ。
 眼鏡を掛け直す世界の手が黒く染まる、が。滑り込む影。
 突撃してきたスラネコの丸い体を文字通りボールのように蹴り上げ、続く全力の裏拳でリンが爆散させた。
「ワタシの馬車には指一本……肉球一つ? とにかく触れさせないヨ!」
 降り注ぐ乳白色ゼリーにソニアの悲鳴がバックで響き渡る。
 同時に、リンの前方左右で土と草葉が撒き上がった。瞬間的に体内のゼリーを爆発させたハクスラネコの前衛が砲弾の如く突撃して来たのだ。
「にゃーん」
 後転と同時にリンが一匹蹴り上げた一方、大地を穿ち土砂を撒いてジグザグに迫って砲弾と化したハクスラネコが残像を伴い襲い掛かる。
 そこへ、馬車を飛び越え投げつけられる物。アンデッドのなりそこないがハクスラネコを捉えた瞬間に横合いから鶫が全力でぶちかましを当てて吹っ飛ばした。
「そこじゃ!」
「後ろは任せて下さい!」
 確実に、仕留める為に。草葉の陰に落ちたスライムに鶫はトドメを刺しに行く。
 その間際飛び交う礫。後衛に該当するハクスラネコの放った石をソニアが氷刃を射ることで相殺。
 瞬く間に切り裂かれたハクスラネコに、再び鶫が飛び掛かって行くのだった。
 その裏。
 世界もヒィロに続こうとする中、美咲とフリークライが馬車に近付いていたハクスラネコを仕留めてその場に合流しに来る。
「フリック サポートロボ ナリタイ ガンバル」
「群れで行動する特性として個の力は低い、ここまでは予想通りだね。崩していこう」
 フリークライの両腕の宝玉が輝いて鮮毒の霧が敵を包む一方で、美咲の放ったチェインライトニングが他を一掃した。
 駆ける足音。連続する銃声と剣戟。
 20匹ほどがマヤを囲もうとしていたハクスラネコだったが、その陣形は崩れた。馬車から登場したイレギュラーズの存在が、魔物側のセオリーを喪失させていたのだ。
「にゃ、にゃーん」
「奇襲したと思ったら奇襲されてた気分はどう? でもね……これからが本当の地獄だよっ!」
 後方で火の手が上がる。ラム酒爆弾に次いで奔るカトラスの鋭い一閃が敵の前衛の見せる連携に拮抗する。
 後衛のハクスラネコの前にヒィロが躍り出る。その闘志は無視できず、馬車周辺のこともあってさらに混乱がハクスラネコの間で広がって行く。

 ボッ、と空気の抵抗を貫いて奔る砲弾。
 後衛の動きが阻害され、控えていた前衛のハクスラネコが代わりに集結し。マヤの周囲が爆撃でもされているかのように衝撃波と土砂が飛び交うようになる。
「この程度の攻撃、私に効くとでも思ってるのかしら? 全く効いてないわよ?」
 足を止めずに応戦しながら、強かに挑発を重ねて。マヤがカトラスを振り抜く。
「受け取って下さい!」
 そんな彼女の下にヒールが重なる。ソニアに並び支援してくれたフリークライ達に笑みを一つ返す。
 ヒィロが集めたハクスラネコ達に白蛇が次々に咬み付いていく。
「前衛の密度が増していてマヤに近付けん。早々に何とかした方がいいなあれは」
「ヒィロ! 面制圧しちゃおう!」
 後衛の数も減って来た所で、世界が戦況をもう一捻りする必要があると告げる。
 倒したハクスラネコは半数近い。あと一押しだと、視線と視線が交差する。
「うん! いつもの連携で!」
 美咲の呼び掛けに応じたヒィロがほぼ同時に自らの闘志を更に練り上げて収束させた。
 そして、放たれた怒涛の闘志が。読み抜かれたタイミングで一陣の風となって吹き抜け、マヤの周囲で起きていた爆撃を止めて見せる。
「にゃーん」
 重圧。ハクスラネコがその場から転がり跳んで、風を辿った先で構えるヒィロに向かおうとした瞬間。奔る雷撃が地面を駆け抜け、乳白色のゼリーを幾つも爆散させた。
 間の抜けた猫の鳴き声が動揺に染まる。逃走の気配。
 しかし踵を返す間もなく、雄叫びがぷるんとした流動体を震わせた。
「おおお! 見たか! 連携が十八番なのは其方だけではないのじゃ、逃がしはせんぞ!」
 猪突猛進。されど敵の前に出てマークしながら立ち塞がる鶫に、ハクスラネコの足が止まる。
「そうだよ! チームプレイはそっちだけのお家芸じゃないんだよー!」
 前門の狐後門の鬼。たった二人の存在がハクスラネコたちを真っ平らな草原の中で立ち往生させていた。
 彼女達の、イレギュラーズの確実な勝利に集中した働きが、早々に決着をつける決め手となった事は間違いないのだった。

●ハクスラネコの後
 依頼を完了した事を確認すると、イレギュラーズは周辺の探索に乗り出していた。
 それは依頼主の損失を少しでも補填できればと、魔物には無縁のはずの農具くらいなら見つかるのではという思いからだった。
 結果は――やはり、あった。
「やっぱりね。これを届けたら農家さんから季節の野菜とか、もらえたりするかなー」
「美味しいお野菜もらえたら、美咲さんに料理してもらって食べたいな……」
 だめ? と鍬を抱えて覗き込むヒィロに美咲は肩を竦めて「じゃあはりきっちゃおうかなー」と応えた。
 この日は二人で旬の野菜を使った料理を楽しんだに違いない。

 ――その一方。
 一見、何の特徴もない雑木林のようだったそこには農具以外にも何某か落ちていた。
 上手く立ち並び、外観からでは分かり難い陰に置かれたそれは。これまでに襲った際の戦果だろうか。
「なにがしたかったのかナ。巣穴も持たないのに不思議だよネー」
 馬の手綱まである雑多な山の中を覗きながらリンは首を傾げる。
「……ニャーン ココ 好キダッタ、カモシレナイ」
「これが無害な子なら本当に良かったんですけどね~……あ、落書きみたいなのまであるんですね? えぇ……可愛い……」
 フリークライが近くの木陰の前に佇んでいる所へソニアが近付いて行くと、木の根元に何かチョークのような物で描かれた絵を見つける。
 丸い、目のようなものが描かれたモノがハクスラネコだろうか。
「絵画か。魔物にしては妙に人間味があって、とことんはっきりしないな」
 付近をうろついていた世界も同じく木の根元に描かれた絵を見つける。
 そこには別の色も加わり、水色や黒の塗料で描かれている。見れば、地面に人間が使う幻想王都のアトリエでも見かける絵の具の空き瓶が転がっていた。
「スライムが芸術ね……あの賢さには何か裏打ちされたものでもあったのかしら」
「だとしても結局やっておる事は山賊紛いじゃがのう」
 馬のような絵。丸いお腹をした男をハクスラネコが囲む図。鶫とマヤは呆れながらもそれらを観察しながら首を振っていた。
 何にせよ、もう終わった事だ。彼等はヒィロ達の見つけた農具や何かしらの荷物を馬車へと積み込むと、ギルドへと帰還する事にした。
 日が暮れてきても尚、草原に吹く風は変わらない。
「中々意味深な絵を描いてるネ。絵心があって面白いヨ」
 帰り際、リンはまたも少し大きめの絵を見つける。そこには珍しく人らしきモノが、ハクスラネコと共に描かれていた。

 農具のような物をかざした人と、小さなスライムが追いかけっこでもしているかのような。そんな絵だった。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

お疲れ様でした。
妙ちくりんなスライムでしたが、如何だったでしょうか。依頼後に素敵な一時を!

またお会い出来る時を楽しみにしております、ご参加ありがとうございました!

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