PandoraPartyProject

シナリオ詳細

暗殺令嬢(イチゴ味)
暗殺令嬢(イチゴ味)

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●何味?
 テーブルの上で湯気を立てる白磁のカップは薔薇の香り。
 鼻先をくすぐる上等なバターの香りは、「当家自慢のクッキー」による暴力だ。
 空間全てに一級品を詰め込んだ応接室は成金の趣味の悪さも無く、まったく適切に贅沢を極め尽くしているような――国王辺りにも見習って欲しいような場所だった。
 そんな最高の部屋(かびん)に、全ての贅沢も霞むような大輪の薔薇が佇んでいる。
「――私、ほとほと思い悩んでしまったのですわ」
 遠路はるばるアーベントロートの屋敷に招かれたイレギュラーズを出迎えたのは当然と言うべきか、屋敷の主たる『暗殺令嬢』リーゼロッテ・アーベントロートその人だった。
 今日も一分の隙も無く華美なゴシックドレスに身を包み、『まるで荒事等経験した事も無いかのような白く長い指』をアンニュイな雰囲気で遊ばせた彼女は、全く上等なビスク・ドールそのものであるかのようだった。人間離れして美しく、同時に怖気だつような――彼女を目にした人間が覚えるのは精緻が過ぎた人形を見た時と、皮肉に近い。
「例の幻想蜂起の事か?」
 幻想を騒がせる一大事件は終息の気配を見せていない。
 その見た目に反してこの国でも指折りの国家重鎮たる彼女の柳眉が曇るのはイレギュラーズからしても当然に思えた。しかし、リーゼロッテはゆっくりと頭を振る。
「いいえ。そんな事よりも、大変な事です」
「……蜂起より? 一体何が――」
 思わず声のトーンを落としたイレギュラーズにリーゼロッテは囁いた。
「――恋、とは一体何なのかと。まったくまるで命題ですわ」
「……………」
「ですから、恋とは何なのかと」
「……………………」
「ですから……」
「……………はあ?」
 薄い唇から零れ出た天使の福音は毒花の彼女のイメージをブチ壊す――何とも強烈なものだった。いや、冷静に考えれば『国民の蜂起よりかような疑問を大変と言い切る』リーゼロッテは今日も暗殺令嬢そのものなのだが。
 そのものであったとしても先のトンチキな発言は理解出来よう筈もない。
「……おぜうさま? 何で突然そんな事を」
「先日、当家の使用人二人が『駆け落ち』をしたのです」
 説明するリーゼロッテにイレギュラーズは安心した。
 理由もなく彼女にそれを尋ねられるのは冗談を通り越してむしろ怖い。
「使用人は貧しい農家の出身で――まぁ、謂わば口減らしのような。税金の代わりに当家に奉公する約束となっておりまして、何年か仕事について貰っておりました。
 当然ながら、当家の架した『ある程度のルール』に従って貰う必要はあったのですけれど」
「恋愛禁止だった?」
「私が決めた訳ではございませんけれど」と頷くリーゼロッテ。
「解せないのは、彼等は当家の使用人だという事です。
 彼等は身共の事を良く存じている筈。
 逃げて、はいそうですかと逃げられるような家と思っているとは思えませんわ」
 アーベントロート家は幻想三大貴族随一の武闘派である。
 何より国の暗部を統括するこのリーゼロッテは『薔薇十字機関』なる暗殺部隊の頭目も兼任するという筋金入りだ。庶民、貴族含めて幻想で『一番恐ろしい個人』の名を挙げたなら、確実に上位に名を連ねるような人物である。確かに使用人が恐れぬ筈は無い。
「ですから、私――どうしても解らなくて。
 唯で済む、と思っていないのにどうしてそんな事をしたのかしら。
『恋』とはそんなに酩酊するものですの?
 そんなに宜しくて? 薔薇の迷路も忘れてしまう、その位に」
 それを問われても、と苦笑するイレギュラーズにリーゼロッテは満面の笑顔で言った。
「今、うちの者が二人を追いかけておりますのね。
 皆様が、私に『恋』を教えてくれたなら――そのお願いを中断いたします。
 ね、イレギュラーズの皆様のお仕事みたいになったでしょう?」
 お嬢様は美しい。
 それこそとんでもなく――滅多に居ない美少女だ。
 言葉は蠱惑的で鼓膜をくすぐる銀色の呼び声は魔術的ですらある。

 ――嗚呼、彼女が『暗殺令嬢』で無かったら!

GMコメント

 YAMIDEITEIです。
 コメディです。お話(もうそう)するだけ。
 でも難易度はノーマルです。何故って……
 以下詳細。

●依頼達成条件
・リーゼロッテに恋とは何ぞやを説明する(間違っていても本人が満足なら可)

●リーゼロッテ・アーベントロート
 幻想三大貴族アーベントロート家の当主代行。
『暗殺令嬢』なる物騒極まりない異名を持つおぜうさま。
 性格は享楽的で嗜虐的。見た目は最高ですが、蛇蝎のように恐れられています。
 幻想の暗闘部隊『薔薇十字機関』の頭目も兼任しています。
 余談ながらアーベントロート家はウォーカーの家です。

●アーベントロート邸
 見事な薔薇の庭園を持つ広大なお屋敷。
 皆さんはリーゼロッテに正式に招かれたお茶飲みトモダチです。
 薔薇の香りが楽しめるお茶と、最高に美味しいバタークッキーを出されています。

●このシナリオについて
 シチュエーションは『リーゼロッテと応接間でお茶をしながら恋を語る』です。
 部屋からは一歩も出ませんし、倒すべき怪物も出現しません。
 但し現在進行系で『駆け落ちした使用人は薔薇十字機関に追われています』。

●プレイングについて
 どちゃくそ勝手なシチュエーションでリーゼロッテと自分を恋愛的(或いは面白おかしいコメディ)シチュエーションにぶち込んで雑に妄想をキメるシナリオです。リーゼロッテは『恋なる不合理な感情論に思い悩んでいる為』余程度を過ぎたもの以外はそれを無礼とはしません。
 勝手にシチュエーションを捏造して設定を決めて「例えばこういうものなんだ!」と言い張れば「そういうものですの」と基本的には納得します。
 妄想以外にもまっとうに教えてあげたり、諭しても良いです。

プレイング例
俺(PC):不良学生
リーゼロッテ:生徒会長
雨の日に捨て犬に傘を立てかけた俺を見てリーゼロッテは……みたいな事を力説する。

 プレイングは実行する訳ではなくシチュエーション語りとなります。
(妄想劇中)のリーゼロッテの動きはある程度指定出来ますが、彼女がツッコミを入れる場合もあります。
 プレイングの面白おかしい指数……じゃなかった恋愛パワーが一定値以上となり、リーゼロッテの乙女心ゲージを破壊すれば『薔薇十字機関へのお願い』はストップします。
 舞台とは全く関係ない所で一組のカップルが不幸を免れるでしょう。
 このクソくだらない依頼にマジで人命が掛かっています。頑張って下さい。
 尚、<b>百合可。</b>

 非常にプレイング次第の造りなので、面白気なの頂けると嬉しいです。
 以上、宜しければご参加下さいませませ。

  • 暗殺令嬢(イチゴ味)完了
  • GM名YAMIDEITEI
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2018年05月10日 21時30分
  • 参加人数 8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ティア・マヤ・ラグレン(p3p000593)
穢翼の死神
ローラント・ガリラベルク(p3p001213)
GORILLA
ウィリアム・M・アステリズム(p3p001243)
希望の聖星
刀根・白盾・灰(p3p001260)
煙草二十本男
マルク・シリング(p3p001309)
ボルカノ=マルゴット(p3p001688)
ぽやぽや竜人
九重 竜胆(p3p002735)
一刀繚乱
ミラーカ・マギノ(p3p005124)
夜天の光

リプレイ

●苺も血液も同じ赤
 イレギュラーズの仕事は実に多岐に渡る。
 期せずして混沌のスープの中で『主人公である事を余儀なくされた』彼等は、今日も不可思議な運命にダンスを誘われたという訳である。
「皆さん、大変愉快そうな方達ですから――お話にも熱が篭もるというものですわね」
「ふふ」と薔薇が咲くような笑みを浮かべ、大きな赤い瞳をキラキラと輝かせる美少女が八人の前に座っていた。
「ええと、今日のお仕事はお嬢様に『恋』をお教えする事で良いので?」
『屑鉄卿』刀根・白盾・灰(p3p001260)は「ええ」と頷いた依頼人――幻想貴族リーゼロッテ・アーベントロートに「まるでジゴロのようですね」と続けかけ、慌てて頭を振って『不遜』な台詞を追い払った。
 灰の言う通り今日の仕事は『暗殺令嬢(リーゼロッテ)に恋という概念を理解させる』事である。
 幻想でも指折りの悪名高いお嬢様は美少女のなりにターボエンジンを積んだ暴走トレーラーのような存在である。
(『恋』とは何か……ね。
 今迄あんまり考えない様にしてきたし、いざ語れって言われるとどうにもピンと来ないのよね)
『一刀繚乱』九重 竜胆(p3p002735)の形の良い唇が小さな嘆息を吐き出した。
 くだらない仕事は山程ある。だが、しかし『コイバナ』に人命がかかるケースは多くない。
(恋に恋する……より大分手前ね。貴族も年頃の娘ってことかしら……)
『ツンデレ魔女』ミラーカ・マギノ(p3p005124)の視線の先のリーゼロッテはにこにこと笑っている。
(しかし感情論の無茶についてね。幻想貴族は馬鹿じゃないらしいけど蜂起に絡めてるの?
 いや、深読みか。まぁ見た目は美少女だし、もし恋愛するなら……)
 思案に忙しいミラーカも実は片思い経験ばかり募る恋愛ルーキーである。
 令嬢はイレギュラーズの語る恋に納得すれば逃げ出した使用人を許すと言う。
 ……だが、この仕事は中々人を選ぶ。
「恋の話、恋の話、かあ。そういう物語を読んだ事なんて殆ど無いぞ、俺……」
 思わず呟いた『星を追う者』ウィリアム・M・アステリズム(p3p001243)の『経験値』の方は言うに及ばず。
 イレギュラーズには老若男女様々居るが、何せ、この場に集まった連中と言えば。
「へへ、善処しますぜ!」←四十路のアル中
「へ? 私も?」←元・男
「どうしたである?」←竜人
「うん?」←極めつけにゴリラ
 灰、竜胆、『ぽやぽや竜人』ボルカノ=マルゴット(p3p001688)に『GORILLA』ローラント・ガリラベルク(p3p001213)と面白ガチャの結果が趣深い。
「ハッピーエンドになるように頑張るのである!」
「出来る限りで善処しよう」
 世の中は不出来な偶然に塗れているものだから、ボルカノに頷いたマルク・シリング(p3p001309)の結論は実に素早い。
 彼は自身を凡庸と呼ぶけれど、凡庸でなければ紡げない物語もない訳ではないのだ。
「恋か……私はした事ないから元の世界であった事でも話そうかな」
『その辺りは好きにすればいいと思うぞ』
『穢れた翼』ティア・マヤ・ラグレン(p3p000593)の呟きに十字架の魂が相槌を返す。
「私としては、契約を破って逃走した者は罰を受けるべきと思うが……
 恋を知りたい、乙女の望みを無碍にするも本意ではない。少し面映いが――ひとつ、語ってみるとしようか」
「ふふ……さあ、誰から私に『教えて』頂けますかしら?」
 イケゴリな台詞を吐いたローラントの言葉に幾度目か、薔薇が綻ぶ。

●ティア・マヤ・ラグレンの場合
「私達の世界では住んでいる地域によって階級が決まってる様なものだったけど……
 その時あったのは上流階級のお嬢様とその事情を全く知らない下層の路地裏に住んでいる女の子の恋だよ」
 ――ティアの語るそれもまた『何処の世界にも起こり得る』ドラマに違いなかった。
「そのお嬢様が下層エリアに出向いたのは大した理由も無いちょっとした偶然が切っ掛けだった。
 偶々その日、下層を訪れた彼女の目の前に偶々倒れたティアが居ただけの話。
 路地裏にお嬢様が赴くという奇跡的な偶然と、その日そこで女の子が倒れていた偶然」
 小首を傾げたリーゼロッテは納得しているのかは分からないが、話を興味深そうに聞いている。
「それでね。女の子は初めて優しくしてくれたお嬢様に好意を覚えたし、孤独なお嬢様は初めて出来た友達に心を開くに時間は掛からなかったの。
 だけど、私達の世界は厳密な階級社会だったから……或る時親友の階級を知った少女はこう考えたんだ。
『――自分は迷惑をかける存在なのでは。自分は、離れた方が良いのでは』。
 それで『何時もの場所』から姿を消した親友にお嬢様は凄く悲しんだのね」
「……それで、お嬢様はどうしましたの?」
 問うた令嬢にティアは言う。
「如何してこんなに悲しいのか、苦しいのか考えて……女の子の事が『好き』なんだってお嬢様が気付いてね。
 女の子は打ち明けられて驚くんだけど、その子もお嬢様が好きだったからそのままお屋敷で幸せに暮らしたんだって」
「まあ!」
「これが助けられた女の子と助けたお嬢様の恋だよ。感謝と保護欲からくる恋になるかな」

●ミラーカ・マギノの場合
「次は私か」
 クールぶったミラーカだが、その実彼女は可愛げの塊でもある。
「連想しやすいようにシチュは近いほうがいいわね。どこかの。そう、どこかの森の魔女と、貴族の娘の話をしましょう――」

***

 森は人を惑わせるものだ。
 ましてや魔女の近い――その魔性を漂わせる森ならば、娘を惑わすのはお手の物。
 散歩にやって来たリーゼロッテがお付きとはぐれて魔女の館に迷い込んだのはある意味必然だったかも知れない。
「不思議なお客ね。何の用?」
 招かれざる客の到来を歓迎はしないまでも、人の良いミラーカは何にでも興味を示すリーゼロッテの反応に気を許し。
 リーゼロッテもミラーカの澄まし顔の中にある不器用な優しさを感じ、彼女との心の距離を縮めていく。
「……大丈夫? 寒くない?」
「大丈夫ですわ。貴女が、何だかとても暖かいから――」
 星空の中を箒に二人乗りで飛んで、夜の寒さの中にぬくもりを感じたり!

***

 終盤に熱の篭ったミラーカはコホンと咳払いをして妄想をストップした。
「結論、恋とは――自分にないものを求める事かしら。
 あたしゴホン! 話の魔女は娘の素直に興味や喜びを表現する姿に。娘からは魔女が誰にも頼らず一人で生きる姿に惹かれたり、ね。
 人は自分の予想を越えてくれるものへ期待をするの。ドキドキするの。
 恋すれば他人どころか自分の心すら思い通りにならない――一人では味わえないその想いが、理性や論理なんて軽く超えるのよ!」
 熱弁にリーゼロッテは「んー」と唇に指を当て、少し思案顔をして。
「――!?」
 突然、その指先でミラーカの顎を隙一つ無く持ち上げた。
「愛らしいとはこの事ですわ。成る程、食べてしまいたい――」
「!? !?」
 ……ほら、君等がのっけから百合二連発で教えに行くから……

●九重 竜胆の場合
「恋か――いまいち実感は無い話だけど、でも、そうね。
『運命』とでも言える相手に出会う事が出来るのなら、衝動のままに馬鹿げた事でも平然と行う事もあるんじゃないかしら?
 私が『私』である限り、出会うべくして出会った、そんな相手。もし、そんな人と出会う事があるのだとしたら、私は――」

***

 私は世界を巡り、世界を越える放浪者で、貴女はそんな中で漸く出会った運命の人。
 最初はそうとは気付かないかもしれない。
 偶然の出会いを繰り返して縁を紡ぐかもしれないし、
 互いに一目見た瞬間に何かを想う事もあるかもしれない。
 時に喧嘩してぶつかり合ったり、すれ違ったり、時には何気ない事で笑い合って、喜びを分かち合ったり。
 その果てに、心の中で――「あぁ、そうか」って思える瞬間が来たりして。
 そんな風に納得する事が出来る相手が居たのだとしたら、どんな馬鹿げた事だって――人から笑われたって出来てしまうかも知れない。
 私はきっと『誰よりも恐ろしい薔薇の令嬢』を前にしても、貴女のその手を取るでしょう。
 その先に奈落しか無いとしても、繋いだ手を離そうとは思わない。

***

「彼らだって、きっとそうなんじゃないかしらね。
 出会ってしまったから、踏み出さずにはいられなかった。
 ままならないわ。だけど、だからこそ恋。
 ……ハァ、らしくない事を語っちゃったわ。ところで、どうして私の手をぎゅっと握っているの? 暗殺令嬢」
 だ百合三。

●ボルカノ=マルゴットの場合
「恋、コイ、LOVE!説明するのはとっても難しいであるが、少しでも感じ入って貰えれば嬉しいのであるなー。
 さて、我輩が語るは異種族恋愛、人と竜の物語である――」

***

 竜とは富めるもの、財宝と長きを生きる命を持つものである。
 それらを狙う冒険者も数知れず、竜にとって人間等自分の宝や血肉を奪いに来る無礼な輩以外の何者でも無かった。
 しかし、竜はある時、少女(リーゼロッテ)と出会う。
「病気の妹を治すために、あなたの血を一滴だけ下さい。その代り、私のすべてを捧げます」
「すべてか。その言葉に嘘は無いな?」
 竜は気紛れに願いを叶え、その血を与え、彼女に問う。
「何故我が身を差し出す?血肉を分けた兄弟とて、己とは違う者ぞ」
「それが愛というものです」
 竜と少女のそれからは確かに幸せで満ち足りた時間だった。
 しかし! 竜が少女を囲う様を知られ、冒険者が押し寄せる!
 竜は護るべき物を得てしまった故に押され、遂に致命の一撃を受けるに到る。
 最後の力を振り絞り冒険者と相うつ竜は、少女の無事を確認し、死にゆく中で語る。
「後悔等無い。汝との出会いは、只生きた幾歳月よりも鮮やかな宝の日々よ」
 ……恋さねば死なずとも、恋したが故に彼は幸福。

***

「……と、まぁ。全く違う種族であっても時に心が触れ合う事はあるのであるな」
「何だか腹の立つ方々ですわね。その冒険者共は」
 リーゼロッテはボルカノの物語に幾らか憤慨している様子である。
「私がヒロインならば、鏖にしてやりますのに」。唇から溢れた物騒な言葉は概ね実行力を持つ真実なのだろう。
「だから、君はヒロインには成り難い」――イレギュラーズの誰もそれを言う事は無いけれど。

●ウィリアム・M・アステリズムの場合
 俺と令嬢サマ、二人は魔術研究所に所属する同僚だ。
 研究題目は同一。同じように取り組み、研究している筈なんだけど俺と令嬢サマの結論は、何故かいつも、正反対って位違う物になる
 正直イライラするよな。でも、興味を持つ理由には十分だ。
 何せ、俺達は研究肌だからな。何故そうなるのか――相手の事ばかり考えるようになって……
 理解する為に一緒に時を過ごすようになって……同じ結論に至るんだ。
「ああ、これが『恋』なんだ、と」
 相手を知りたいと思う心。それも一つの恋だと思う――

***

「恋愛と一口に言っても、その形は千差万別なんだよな。
 件の使用人達の……追手が来ると知ってても尚、駆け落ちしてしまうような、向こう見ずな恋もあるんだろう」
 苦笑交じりのウィリアムは言葉を続ける。
「……恋ってのは『する』物じゃなくて『落ちる』物だと俺は思う。
 何かの切っ掛けで、容姿だとか、考え方であるとか相手の何かに惚れて、恋に『落ちる』。
 酩酊する、って令嬢サマは言ってたけど、それも案外的を射てるかも……」
「沼だよ、落とし穴」。ウィリアムの言葉には不思議な実感が篭っていた。
「貴方も、何時かそんな恋を?」
 目を細めたリーゼロッテに「冗談。気の所為だよ」とウィリアム。
「ただ、令嬢サマが恋をしたなら――それがどういう物になるかは、少し興味あるかな」

●刀根・白盾・灰の場合
 向こう見ずに騎士見習いとなった私はある日、貴女と酒場で出会うのです。
 酔っぱらって大立ち回りして酒場から逃げる私、追って店を出る兵士達……そして貴女!
 貴女は路地裏にてすでにボコボコにされた私を見つけるわけです。
 何だかんだで付き合いが始まり、色々、こう……仕事の愚痴を話し合ったり、たまに遊びに出かけたり。
 ……私のアルコール依存の治療に付き合って、ダルクに詰め込むことになって愛想が尽きたり……失礼。昔のトラウマが。
 私は最後に酒浸りが祟って、もう長くないことを医者から告げられるのです。
 久しぶりに二人で話す時間やらが取れ、長くは続かない幸せを噛み締めるわけですよ!
 支え合うことで活力が、別れによって感傷を得られるのです! 素晴らしいでしょう?

***

「正直を申し上げて、私の佳い人を痛めつける連中なんて生かしては……いえ、ご退場頂きますけれども」
 薄い唇から白い牙を覗かせたリーゼロッテの赤い瞳は若干の興奮に濡れている。
「いえ、喩え! 喩えですからな!?」
 灰は彼女の表情からふと――考えた。
(この方は、案外惚れれば尽くすタイプなのでしょうか……?)

●ローラント・ラブストーリー
「山を荒らす怪物の噂を聞き、これを退治するため山に向かうローラント。
 しかしそこで彼が見たのは、巨大怪獣に雄々しく立ち向かうメスゴリラの姿だった。
 これが、ローラントとリーゼロッテ(ゴリラ)との出会いであった」

***

「ちょっと宜しくて?」
「む、何か?」
「何ですの!? そのリーゼロッテ(ゴリラ)という字面は一体!?」

***

「……彼女に加勢し、怪獣を倒した後、彼は彼女の境遇を知る。
 彼女はこの山のゴリラ達の王女であった。
 しかし、継母である第二王妃が彼女の美貌と膂力に嫉妬し、陰謀によって集落から追放したのだ。
 ローラントは怒ったが、リーゼロッテは微笑むだけ。
 それから、日々が流れる。次第に近づいていく二人の距離。しかし、悲劇は起きた。
 業を煮やした継母が、リーゼロッテに毒バナナを盛ったのだ!
 倒れ伏すリーゼロッテ。しかし、眠りについたのは心優しい精神のみ……」

***

「ですから! そのゴリラ設定は!」
「何を興奮しているのだ。彼女はとても美しく、気高い――女子ならば誰も憧れる存在だぞ?」
「……っ……!」

***

「悲しき暴走が始まった。
 駆け付けたローラントが見たもの、それはリーゼロッテが護ろうとしたゴリラたちの無残な姿。
 そして、継母の首をねじ切った、かつて愛したメスゴリラの姿であった。
 無数の屍の上で、今、二人の最後の逢瀬(バトル)が始まる……」
「……もん」
「……む、どうした?」
「ゴリラじゃないですもん。大体、それは少年漫画(ばとるてんかい)というのではなくって!?」


●マルク・シリングの場合
 ……全てが許された恋ばかりなら、何て幸せな事だろう。
 恋の始まりは曖昧で、でも確かに始まって。
 理屈じゃないから、誰に恋するかなんて――人はそれに気付くまで気付け無い。
 そう、リーゼロッテ様と僕は、主人と使用人の関係。
 貴女と僕は共に長い時間を過ごしたから――互いの見えない一面を知るようになった。
 貴女は僕の――自分で言うと少し恥ずかしいけど――たまには意外と頼りになる所とか。
 僕は貴女の、当主として振る舞う貴女が普段は人前では見せない、少女のような表情とか。
 ……時間が積み重なるほどに、貴女だけが知る僕の、僕だけが知る貴女が積みあがっていく。
 自惚れで無ければ。僕達が相手の事をいつも考えていたり、一緒にいたいと思うようになったのは何時からだろう。
 貴女の恋が、僕の恋が始まったのは。お互いが片思い同士の――そんな恋が。
 けれど恋は不安も連れてくる。
 何より、貴女は当主で、僕は使用人。身分という谷が横たわってる。
 想いを伝えられない苦しさと痛みを抱えて、互いが互いを片思い――恋はまるで辛い事だらけだ。
 それでも、貴女と僕は決断するんだ。谷を飛び越える事を。
「好きだ」
「好き、ですわ……言わせて、この馬鹿……」
 万感を込めて、身分違いと引き裂かれると分かっていても。
 それがたとえ谷底に落ちるまでの短い間でも。後悔なんて、あるわけない。

***

「きっと、駆け落ちした二人も、禁じられた恋という『谷』を飛び越えて。
 自分たちの想いに、恋に誠実であろうとした。僕には、そう思えます」
 嘆息したリーゼロッテはマルクの熱のある語り口に微笑を見せた。
 白い頬に僅かな朱色をさした彼女は悪戯っぽく笑って言う。
「――本当に、私を薔薇の檻から攫ってくださったら素敵ですのに」

●薔薇の贈り物
 長くて短い歓談の時間は終わりを告げていた。
「貴女が私達の話を聞いて納得するかはまた別の話。後は心のままに従いなさいな、暗殺令嬢」
「でも、出来たら……逃げてるお二人のことはなんとか考え直していただけませんでしょうか……」
 竜胆が、灰がそれぞれの調子でそう言った。
「ご安心を。悪いようにはいたしません。
 それに使用人如き――最初から大した興味は無かったのです。
 私は、皆さんと遊びたかっただけですわ」
 言葉がどれだけ本当のものかは知れない。
 だが、大輪の花を咲かせる美少女は確かにその見た目通り――珍しく毒気を失って夕日の中に居た。
「……でも、何だか、恋って難しいものですのね。熱が出てしまいそう」



 駆け落ちをした二人が二人だけの式を挙げたのはそれから暫く経っての事だった。
 誰にも告げなかったその式に赤い薔薇の花束が届いたのは、語る者の無い余談である。
 暗殺令嬢から『恋』に捧ぐ――

成否

大成功

MVP

マルク・シリング(p3p001309)

状態異常

なし

あとがき

 YAMIDEITEIです。
 内容を変えずに30%圧縮する難易度Hard。

 八人ならいけるかと思いましたが、内容柄甘かった。
 かといってこれがEXシナリオというのはどうなのだという話で……

 ……EXでやればよかったなあ!

 プレイング抜群に良かったです。
 色々なアプローチで色々やっていて面白かったです。
 シナリオ、お疲れ様でした。

PAGETOP