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シナリオ詳細

奇跡の塔4F:湖に浮かぶ暴食龍

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 天義某所、果てしなく続く草原の中央に聳え立つ白い巨塔『奇跡の塔』。
 大罪の魔種が残したとされるこの大罪の塔の調査が、ハルトヴィン・ケントニスという名の初老の男性主導で、進められている。
 頂上に何があるのかを求め、依頼を受けるイレギュラーズ達も上を目指す。
 果たして、今回、4階では何が待ち受けているのか……。

「いらっしゃい。いつもすまないね」
 塔の1階の休憩所にて、ローレット・イレギュラーズとハルトヴィンと顔合わせするのが恒例となっている。
「先生、こんにちは」
「いつもユーリエがお世話になっています」
 ハルトヴィンの助手として、折を見て塔の調査を手伝うユーリエ・シュトラール (p3p001160)が挨拶を交わすと、ユーリエにとって大切な存在であるエリザベート・ヴラド・ウングレアーヌ (p3p000711)も言葉を続ける。
「今回もよろしく」
「次は何が待っているのか、楽しみだな」
 調査には常連のリゲル=アークライト(p3p000442)、ポテト=アークライト(p3p000294)夫妻。
「初めまして。スティアだよ」
「天義の騎士カイト・C・ロストレインと申します」
「クラリーチェなのです。よろしくお願いするのです」
 また、この塔へと初めて訪れた、スティア・エイル・ヴァークライト (p3p001034)、カイト・C・ロストレイン (p3p007200)、クラリーチェ・カヴァッツァ (p3p000236)の3人がそれぞれハルトヴィンに自己紹介。本題へと移る。
「もう、次の階のことは分かっているのかしらぁ?」
 最後に挨拶したアーリア・スピリッツ (p3p004400)の言葉に、ハルトヴィンはうんと頷く。傍のユーリエはすでに分かっているようで、先生の求める資料を用意して仲間達へと示す。
「次に待ち受けるのは、【暴食】……全てを呑み込む蛇とある」
 【暴食の呑尾蛇】グラトニーウロボロス。それが次なる4階フロアで待ち受ける敵らしい。
「湖に浮かびながら、この巨大龍と戦うのですが、白い光の玉が浮かぶことがあるようです」
 ユーリエも仲間に年上のメンバーもちらほらいる事から、ここは丁寧口調で話す。
 この玉をうまく利用すれば、暴食の龍討伐が楽になるとのことらしい。
『私はクラリア……この塔を管理している者』
 その時、突然、イレギュラーズやハルトヴィンの頭に女性の声が響く。
「こ、これは……!」
 イレギュラーズ以上に、ハルトヴィンが驚いていたようだ。
『次に挑みしは【暴食】の大罪。貴方達のご無事をお祈りしています』
 そして、いつか最上階へ……。そう言い残し、女性の声は途絶えた。
「先生……!」
 ここに来て、直接自分達へと呼び掛けてきた声に、しばし目を見張っていたハルトヴィンだったが、一つ咳払いして。
「もしかしたら、君達はこの塔の管理者に認められたのかもしれないね」
 長きにわたる自分達の成果が認められたと、彼自身もまた小さく拳を握り締めて喜びに打ち震えていたようだった。


 その後、一行が階段で4階フロアまで上ると、階段周辺だけ小さな孤島になっており、それ以外はフロア内全てが湖の様になっていた。
 試しにメンバー達が足を踏み出すと歩くことができ、水面はゆらゆらしていたものの水に沈むことはなさそうだ。
 水の上へと歩み出す一行の前に、水中から姿を現したモノ。それは、とぐろを巻いた巨大龍だった。
「渇く。この異常なまでの渇き……!」
 目の前の龍が咆哮を上げると、まるで自分達が餌だと思わせるような恐ろしいまでの威圧感を放ってくる。
「暴食の呑尾蛇と呼ばれたこのグラトニーウロボロスの前では、全ては餌に等しい存在と知れ……!」
 そいつは口の中にエネルギーを蓄え、一気に前方へと放射してきたのである……。

GMコメント

 イレギュラーズの皆様こんにちは。なちゅいです。
 今回はリクエストシナリオのご依頼、ありがとうございます。

●目標
 【暴食の呑尾蛇】グラトニーウロボロスの撃破

●敵
○【暴食の呑尾蛇】グラトニーウロボロス
 全長7~8mほどあり、手足が無く蜷局を巻いた巨大な龍です。

・暴食の咆哮……神遠扇・【万能】・【崩れ】
 相手に自らが獲物であるという認識を強制的に植え付けます。

・満たされぬ空腹感……神自域・【HPAP吸収】・【Mアタック】
 暴食の力を解き放ち、対戦相手のエナジーを奪います。
 ただし、【罰】が【暴食】の者に対しては効果が反転し、ウロボロスにダメージを与えます。

・超熱線……物超貫・【万能】
 非常に強力な熱線を口から吐き掛けます。
 後述の【熱耐性】で威力を軽減できます。

・光と闇……物超特【万能】・【溜1】
 狙った1人を中心としてまばゆい光を照射し、闇の熱線を放ちます。
 威力は一定で、対象者に近づく人数が多い程、ダメージを分散できます。

●状況
 このシナリオは、影絵 企鵝GM『奇跡の塔1F:永遠の命』に始まり、拙作SS『奇跡の塔1.5F』、『奇跡の塔2F』、『奇跡の塔3F』の続編に当たります。

 塔の4層フロア内で戦闘を行います。
 幻想的な湖の上(半径40m)が戦場となりますが、水面を歩くことができ、沈むことも溺れることもありません。
 壁の方には森も見ることができます。

 湖に浮く白い光の玉に触れるとAPを回復でき、【熱耐性】を得ることができます。

(PL情報)
 この層を攻略すると内装が他フロアと同様に石碑へと変化し、
 次の層に続く階段が出現します。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

 それでは、よろしくお願いいたします。

  • 奇跡の塔4F:湖に浮かぶ暴食龍完了
  • GM名なちゅい
  • 種別リクエスト
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2020年08月27日 22時10分
  • 参加人数8/8人
  • 相談6日
  • 参加費---RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

クラリーチェ・カヴァッツァ(p3p000236)
安寧を願う者
ポテト=アークライト(p3p000294)
優心の恩寵
リゲル=アークライト(p3p000442)
白獅子剛剣
エリザベート・ヴラド・ウングレアーヌ(p3p000711)
永劫の愛
スティア・エイル・ヴァークライト(p3p001034)
天義の聖女
ユーリエ・シュトラール(p3p001160)
優愛の吸血種
アーリア・スピリッツ(p3p004400)
キールで乾杯
カイト・C・ロストレイン(p3p007200)
天空の騎士

リプレイ


 天義某所の平原に聳え立つ奇跡の塔。
 その内部にて研究者を続けるハルトヴィンなる初老の男性と合流したイレギュラーズ達は今回の攻略フロア4階を目指してフロア外壁に隣接する形の螺旋階段を登っていく。
「天義にこんな場所があったなんて、全く知りませんでした」
 修道服を着用したシスター、『罪のアントニウム』クラリーチェ・カヴァッツァ(p3p000236)が天に向かって伸びるこの塔の外観を視認して世界が本当に広いことと実感する。
「この塔も4階まできましたか。折り返しって感じですかね」
 銀の髪のゴスロリ吸血鬼、『夜に沈む』エリザベート・ヴラド・ウングレアーヌ(p3p000711)が頭上を見上げて呟く。
「憤怒に傲慢と来て、今回の暴食……私達の中に誰しもが持っている罪、みたいなものばかりねぇ」
 すでに酔っているのかやや頬を赤くしていた『キールで乾杯』アーリア・スピリッツ(p3p004400)が各層の敵について思い返す。
 七つの大罪が元なら、4階をクリアーすれば残りは4体。エリザベートが言うように折り返し地点とも解釈できる。
「それにしても、先程の声は……」
 そこで、ハルトヴィンが改めて塔の管理者を自称した女性の声について思い出す。
「さっきの声の彼女、一番上にいるのかしら?」
 そこで、そもそも、何の目的でこの塔が存在するのかとアーリアが疑問を口にしたのだが。
「――まぁ、聞くためには登るしかないわよねぇ!」
 テンション高く、彼女は塔の踏破に強い意気込みを見せていた。
「塔の管理者に認められた……と言っていたけど。なんだか最後の方の言葉は消え入るような感じだった」
 茶色の長い髪を左側だけ一点結んだその弟子、『優愛の吸血種』ユーリエ・シュトラール(p3p001160)は、女性の口調に思うことがあったようで。
「もしかしたら、助けを求めているのかな……?」
「確かに、気になるな」
 今回も大切な夫とユーリエに誘われる形で探索に参加する樹精の旅人、『ハニーゴールドの温もり』ポテト=アークライト(p3p000294)も声の主の正体が何を求めているのか考える。
「そも、一番上には何があるのでしょう」
 クラリーチェも改めて疑問を口にするが、残念ながらこの場の全員が答えることはできない。
「この塔を踏破したときに全ての謎が明らかになるといいですね。
そして願わくは、皆に有益なものが齎されますように」
 小さく祈るクラリーチェにも先を急ぎたいという気持ちはあるが、まずは目の前の相手を制することから。
 メンバー達は階段を登り切って4階フロアを見回すと、そこは階段部分付近の島を除き、湖の様になっていた。
「一階一階が違うギミックなのはわかっていたが、ここは森の湖畔と言ったところか」
 ポテトは呟きながら、水の上へと足を踏み出す。
 どうやら、水面はメンバー達が乗ることができるほどの強度があり、誰一人湖の中へと沈む様子はない。
「湖の上に立つことができるとは神秘性を感じるな」
 天義の騎士、髪から闘衣まで白銀が目に付く『白獅子剛剣』リゲル=アークライト(p3p000442)がその光景を眺める。
 目に見えるのは、森の湖畔。3階まで外壁があった場所には森が見える。
 歩くことができる湖は底まで透き通って見ることができ、水面から淡水魚が泳いでいるのまで確認できた。
「ゆらゆらしてちょっと楽しいけど、楽しんでいる余裕はなさそうだな」
 その不思議な感覚を夫リゲルと楽しんでいたポテトだが、殺気を感じて身構える。
 水中から現れたのは、全長7~8mほどもある蜷局を巻いた巨大な龍。
「あっはっは、蛇かあ!!」
 ピンクの髪にオッドアイを持つ天義の騎士、『天空の騎士』カイト・C・ロストレイン(p3p007200)がテンション高く叫ぶ。
 少し前に海洋……かつて絶望の青と呼ばれた海域での戦いもあり、しばらく長細い鱗ありきの敵は視認すら躊躇う相手だったのだが。
「ここに踏み入れたところから逆鱗に触れちゃったかな」
 そんなカイトの言葉を受け、ハルトヴィンが解説する。
「3階に記された奇術によるとこの龍は……、【暴食の呑尾蛇】グラトニーウロボロス」
「暴食の蛇……全てを飲み込むだなんてなんだか強そうだねぇ」
「神話の中の生物のようで、実に凄まじいな」
 小柄な天義の聖職者『リインカーネーション』スティア・エイル・ヴァークライト(p3p001034)が素直な感想を口にし、リゲルもその威容に圧倒されていたようだ。
「渇く。この異常なまでの渇き……!」
 漲るその力を放出してくる暴食龍。
 今回戦う相手は輪廻蛇だとエリザベートは見定めるも、七つの大罪では蠅の王が暴食とされることを思い出して。
「まぁ、蠅を相手にするより断然マシな気がしますね、ビジュアル的にも」
 折角の幻想的な湖にいるのが蠅とあれば、その雰囲気も台無しだ。
「さて、吸血鬼に挑む輪廻蛇をどういたしましょうか?」
 エリザベートが仲間達へと微笑みかけながら問いかける。
「倒して先に進ませてもらおう。先生は安全な所まで下がっていてください」
 構えをとるポテトがハルトヴィンへと避難を促す。
「先生は下がって、見ていてください!」
「あ、ああ、頼んだよ」
 弟子ユーリエ達のこの場を任せ、ハルトヴィンは階段の段差へと身を顰めていた。
 それを見計らったかのように、暴食の龍は吠える。
「我の前では、全ては餌に等しい存在と知れ……!」
「餌は困るなあ、まだまだやらなければいけないことが多くてね」
 カイトにとってこの一戦は、ちょっとしたストレス発散。しかしながら、その龍を侮っているわけではない。
「喰らえど喰らえど底知れぬ龍よ! 確かな龍の圧力に敬意を持って剣を振るおう」
 他のメンバー達も思い思いにこの暴食龍と対して。
「何もせずに食べられるなんて嫌だし、頑張らないといけないね」
「最上階へはまだまだ先。まずはこの強敵を倒さないと!」
 皆と力を合わせてこの難敵の討伐に臨むスティア。ユーリエも塔の上層を目指すべく討伐を強く意気込む。
「貴方を倒し、この塔を攻略してみせる!」
「おいで、グランドオーダー」
 リゲルが銀の剣を手に敵へとの距離を詰めていく間に、カイトはギフトによって魔剣を呼び寄せて握りしめる。
「それでは一戦、推して参る」
 彼もまた接敵し、暴食龍に全力で抗うのである。


 水面から蜷局を巻く長い体を出す暴食の呑尾蛇グラトニーウロボロスを前に、イレギュラーズ達は湖面を歩きながら交戦を始める。
「オオオオオオオオオオォォォ!!」
 咆哮を上げる暴食龍。前方広範囲にいる者達へと対し、自らが食らう餌だと示す為のものだ。
「そう簡単に崩されない女よぉ、私」
 アーリアが自信満々に受けとめていたのはさておき。
 下手に固まると、纏めて獲物だという認識を植え付けかねられないが、カイトやリゲルがそれを受けてなお敵へと近づいて。
「暴食の龍か。ここに満足たる餌はないだろうに」
 毒づくカイトは吠える暴食龍を見上げ、剣を構えたまま呼びかける。
「孤独の大海でひとり、浪を揺らしていたのは退屈だろう」
 しかしながら、こちらを睨んでくる暴食の龍は、もはや獲物の言葉は意にも介さないらしい。
 カイトもその意を組んで腕の1本や2本あげたいところとも考えはするが、さすがにそうもいかない。
「願わくばその魂が鎮むことを……。そのお命、貰い受ける」
 その身を揺さぶるほどの咆哮が正面から襲い来る中、カイトは速力を威力へと変換して切りかかっていき、巨竜の動きを麻痺で封じようとする。
 リゲルも、あれだけの巨体では自分達を食べた程度では満たされないのだろうなと考えつつ。
「そうであっても、俺達は餌になる訳には行かない」
 銀閃の煌めきを纏う彼は、未来を生きてこの塔の謎を目にしたいと強く望んで。
「俺達は貴方に真っ向から勝負を挑み、そして打ち勝ちます!」
 ギフトによって剣を輝かせたリゲルは抜き身で暴食龍の巨体へと斬りかかり、相手の気を強く引いていた。
 その2人を主にサポートするのは、手厚い回復担当班。
「巨大な相手だ。油断せずにいこう」
 ポテトは自らの体力を引き換えにしてリゲルやカイトの強化に当たりつつ、号令を放って最善の状態で戦うことができるよう戦線の維持に努める。
「支え、癒すのが私の役目だ」
 回復役は自分だけでなく、これだけの仲間が回復支援に当たるとあって、普段から仲間の回復に注力するポテトは誰一人として倒れさせはしないと気合を入れる。
「リゲルも、ウロボロスへの攻撃を頼んだ。背中は私が守って見せる!」
 バックアップに当たる彼女の存在は実に頼もしい。
 エリザベートもこの場は仲間達全員が自身の歌声が聞こえるように位置取り、天使の歌声を響かせる。
 魔力の充填力の高いエリザベートだ。そうそう簡単に魔力が尽きることは無い。
「私の魔力の貯蔵が尽きるのが先か、相手が倒れるのが先か、どっちでしょうね」
 そのエリザベートにとって大切な人であるユーリエもまずは、仲間の支援から。
 気力、魔力の能率を高めるべく、ユーリエはまず自分で食べる分には大好きなショートケーキを。さらに、仲間達には甘いお菓子を振舞っていく。
「ありがとう。頂くね」
 その1人、スティアは敵の後方へと回り込み、暴食龍の咆哮から逃れていた。
 彼女は一旦仲間達が動くのを待つべく待機していたが、その間にクラリーチェやアーリアが暴食龍へと仕掛ける。
 神秘への親和性を高めることで自らの魔力を一時的に強化したクラリーチェは、充分に敵から距離を取りつつ敵の暴食の力に封印を施そうとする。
 厄介な攻撃も封じてしまえば怖くはないが、それだけの相手は抵抗力も高い。
(そう簡単にはいかないかもしれませんが、回数を重ねればいずれは……)
 クラリーチェは諦めることなく、何度も封印を試みていく。
 アーリアはそのクラリーチェよりは少しだけ近場に位置取り、瞬き一つで黄金色へと変化した瞳で暴食龍を見つめて。
「異常なまでの渇きなんて、お酒が足りてないんじゃないのぉ?」
 それなら、甘い蜜でお腹を満たすことができるように。
 蜂蜜酒の甘い罠にアーリアは相手を誘い、満足に攻撃できぬようにしようとする。
 そんな仲間達を傍で見ながらも、周囲の不浄なる気を浄化しつつ仲間に活力を与えていたスティアもまた、敵を満足に攻撃させないよう手にする本を開く。
 セラフィムの力を発動させた彼女は周囲に残る魔力の残滓を利用し、多数の魔力の羽根を顕現させる。
 後はそれらで暴食龍の硬い鱗をも貫き、浄化の炎を燃え上がらせることで相手を苛む。
「ぐうう、我が渇きは満たされぬ……!」
 怪しく瞳を輝かせる暴食龍は満たされぬ空腹感を周囲へと振りまこうとしてくる。
 周囲にいる交戦相手のエナジーを奪い取って我が物にしようとするスキルとあって、距離をとるエリザベートなどはすぐさま位置を確認して攻撃対象から外れていることを確認していた。
「オオオオオォォォォ……!!」
 全身から力を解き放つ暴食龍だが、罰が暴食のものに対してはダメージが自分に返ってくるという弱点も存在する。
「グ……ッ」
「私にそれは効かないな」
 メンバーの中で唯一該当するポテトはすぐさま、前線メンバーの癒しをとエリザベートと共に天使の歌声を響かせる。
「甘いものを食べることなら私だって負けないぞ……! 皆で飢餓感に打ち勝ちましょう!」
 さらに、ユーリエが皆に戦いながらでも食べられるドーナツやクレープを振舞う。湖上で食べるとちょっとしたピクニック気分だ。
 ただ、ユーリエは気を緩めることは無く、じっとグラトニーウロボロスを見つめて効果的なダメージを与えられそうな弱点を探すのである。

 その後も、イレギュラーズ達は丁寧に暴食の呑尾蛇グラトニーウロボロスの攻撃に対処しながら、相手を攻め立てる。
「光と闇……抗えるものか」
 渇きを訴え続ける暴食の龍が狙いを定めたのは、引き付け役となるリゲルだ。
 彼の周囲が光り出したのを見て、ユーリエは朱色の結界を展開しながら叫ぶ。
「皆、集まって!」
「一人でなんて持たせないわよぉ!」
 仲間達に警戒を促すと、アーリアを始め、皆リゲルの近くへと集まっていく。
 反対側にいたスティアが最後に近づくと全員が集まる形となり、丁度暴食龍が放つ闇の熱線をイレギュラーズ達へと浴びせかける。
 その攻撃……光と闇はかなりの火力を持つのだが、威力が能力に反映されぬ上、範囲内の頭数でダメージを割ることとなる。
 8人全員で受けた上でユーリエの結界の効果も合わさり、よりダメージが軽減されていた。
 すかさずそれをポテトやエリザベートが天使の歌で回復へと当たり、クラリーチェがサブの回復役として疲弊の大きい前線メンバーへと治癒魔術を施す。
 万全の状態へと戻してからメンバーは元の位置まで散開し、攻撃を再開する。
 回復が間に合っていれば、彼女達は気力魔力のケアにも当たって。
「気力は私たちが回復させるから、思いっきりやってくれ!」
 ポテトが攻撃する仲間達へと叫ぶ。
 回復が手厚いのはいいが、その分攻撃役の人数が減る。
 皆元の位置に戻れば再び全力で攻撃を繰り出していく……のだが、その時、少し離れた水面に光の玉が現れる。
「それは、戦う力と耐える力を与えてくれる玉だよ」
 ハルトヴィンの声が聞こえてくるが、対処に当たっていたのはスティアとリゲル。
 だが、仲間達の回復サポートもあってリゲルの状態は万全に近い。
「ウロボロス……死と再生を司る者か」
 この場はリゲルは取ることで一致し、彼が玉へと向かう。
 死を振りかざす龍の力。ならば、ありがたく恩恵を受け取って。
「俺達は死を乗り越え、生を手にし未来へと歩み続けるんだ」
 リゲルは再び、暴食龍を抑えるべく前線へと戻っていく。

 交戦を続けるうち、暴食龍の口内に膨大なエネルギーの高まりが。
「超熱線に警戒だよ」
 いち早くそれを察したスティアの呼びかけもあり、この場は放射された超熱線をリゲルが抑えに当たる。
「なるほど、これなら問題なく耐えられそうだ」
 だが、熱線は貫通性能を持つ。彼の後ろに立たぬよう位置取りながらも、メンバー達は攻撃を続ける。
 アーリアは指先で空間をなぞり、作った裂け目の中へと暴食龍を送り込む。
 刹那の刻だったが、月の裏側を見た敵は一度に襲い来る異常に抗えず。
「ぐおおおお……っ!」
「全部逃げられるなんて思わないことねぇ」
 元の空間に戻った敵に対し、クラリーチェは簡易封印を続けて。
「我が力が……!」
「……かかりました。今です」
 一時的だが、暴食の力を封じればこちらのもの。
 自らへと祝福を与えるスティアは、空気中に呼び出した氷の花を散らして相手の動きを制する。
「……この世界の乱れを糺し、人々の剣となり、盾となる」
 敵を抑えるリゲルが銀の剣を握りしめ、徹底的な破壊衝動に身を委ねる。
「その矜持を折られてなるものか!」
 星凍つる剣の舞を見せつけた彼は相手の硬い鱗を凍らせ、刃を刻んで叩き割っていく。
 相手の力が削がれた状況とあり、皆攻撃を集中して。
「狙うなら、喉か腹を!」
 満足に動けない相手へ、ユーリエは統率を働かせて仲間に呼びかけながら、自らの意志の力を光の弓矢へと変えて一気に射放つ。
 力を封じられた身の丈7mはある龍を、クラリーチェが具現化させた黒の囀りが捕らえて離さない。
「覚めない悪酔い、悪夢よねぇ」
 アーリアがさらに葡萄酒色の蔦で雁字搦めにし、動けなくした相手の頭……脳天を狙って背に3対の翼を現したカイトが空中から飛び降りてくる。
「最期の晩餐に血潮の味とは申し訳ないところだ。おやすみ」
 あまり苦しまぬよう、一瞬で顎下まで刃を貫通させたカイト。
 ――オオォォ……。
 暴食の龍の呻きが途絶え、その巨体は水の中へと沈み始めたのだった。


 グラトニーウロボロスの討伐と同時に周囲の森は消え、水は引き、沈んだはずの龍の姿も合わせてきれいさっぱりなくなっていく。
 フロアの構造は下層と同様のものに変化していき、中心に石板が。そして、森があった場所に上層に続く螺旋の階段が現れた。
 あっという間の出来事であったが、とりあえずリゲルが胸元で十字を切って黙祷を捧げた後、ポテトは彼と共にフロアの調査を始める。
「綺麗な見た目が一気に無機質なものに変わってしまいましたね」
 エリザベートが残念がると、クラリーチェも気を取り直して何か壁や床にないかと散策する。
 あちらこちらに文字や紋様が浮かび上がるのは下層と同様。それらをメンバー達は一つずつチェックし、ハルトヴィンに報告していく。
「面白いものが見つかればよかったんだけどね」
 興味本位でフロアを調べていたスティアも占いを行って何か見つかればと思ったが、残念ながら目新しいものは見つからなかった様子。
 ユーリエは水晶玉を取り出し、中央の石板を調べる。
「あの光景は呼びかけてきた女性と関係あるのかな?」
 それを調べるには、解読が必要だ。おそらく、5層攻略の手がかりも示してくれていることだろう。
 調べる仲間達を一通り見回したアーリアは階段へと視線を移して。
「……さて、次の層は何が出るかしら?」
 その先の上層を見上げ、自分達の行く手にどんな敵が待ち受けるかと想像を巡らすのだった。

成否

成功

MVP

リゲル=アークライト(p3p000442)
白獅子剛剣

状態異常

なし

あとがき

リプレイ、公開です。
MVPは敵の抑えに当たり、仲間の攻撃の隙をつくったあなたへ。
今回はリクエスト、並びにご参加ありがとうございました!

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