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シナリオ詳細

<夏の夢の終わりに>大きな蜥蜴と、妖精の

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 その子は、とてものろまなトカゲでした。
 エサを食べようと走っても、自分より小さな虫すら追いつけず。
 やっとこさ捕まえても、他の蜥蜴に横取りされて。
 自分を食べようとしてくる鳥には何度も捕まっては、どうにか逃げ出してを繰り返す日々。
 劣ったものがつまはじきにされる。そんな自然のセカイで、その子はいつ死んでもおかしくない子だったのです。
 ――だけど。
 そんなのろまなトカゲにも、たった一度だけ、素敵なしあわせが訪れました。
「……精々特異運命座標達の足止めになってくれればと思っていたが、存外よく働いてくれた」
 目を閉じて、ぺたんと座り込むトカゲに、お話するのはフードの男の人。
「あの変態とて、借りが無いわけではないからな。
 お前にはこのまま、奴の手助けとして働いてもらう」
 座ったままのトカゲを軽く撫でた男の人は、そう言った後に、懐から輝く光の玉を取り出しました。
「尤も、私はここで去るが……せめてもの手向けだ。
 これを入れておけば、即座に殺されるようなことは無いだろう」
 首を傾げたトカゲは、それでもたいせつなひとから貰った光の玉をごくんと飲み込むと、その人に命じられるまま、「わたしたち」のお城へと向かっていくのでした。

 これが、飲み込まれてしまった「わたし」が視た、のろまなトカゲの些細な記憶です。


「今回の目的は、大別して二つ。
 魔種に占拠された妖精城アヴィル=ケインの奪還、またそこを占拠する魔種、その勢力の討伐、乃至撃退なのです」
 集まった特異運命座標達に対し、『新米情報屋』ユリーカ・ユリカ(p3n000003)が開口一番に言い放った。
 表情は真剣そのもの。当然と言えば当然だろう。彼の城に拠って封印されていた冬の王はその姿こそ消えたものの、その力の残滓によって今現在、妖精郷は在り得ざる冬に悩まされ続けている。
 今回の攻城戦を成功させねば、続く災厄によって妖精郷が凍える不毛の地と化すのはそう遠くない。だからこそ、彼らは此度の戦いに全霊を賭すのだ。
「今回、皆さんに攻略してもらうのは城門に位置する錬金術モンスターの足止め。
 少なくとも攻城戦に参加するメンバーの総員が城門を抜けるまでの間、持ちこたえて貰うことが最低条件なのです」
「……足止め、ね」
 討伐ではなく? と視線で問い掛ける特異運命座標に、ユリーカは首を横に振って答える。
「倒すことは――出来るのです。ですがそれまでの間にかかる時間と、人的コストが大きすぎます。
 幸い、このモンスターは基本的に鈍重なので、一度潜り抜けてしまえば追い付くことは困難と思われます」
「だから、足止め……は良いにしても、実際に通る人数は――」
 最低でも、200は超えるだろう。
 更に言うと、この数は攻略する特異運命座標だけを指す。それを援護する妖精や、迷宮森林警備隊、また此方の味方に付いてくれたアルベドも含めれば、その数は更に増える。
 全員が一斉に潜り抜けられるほど、城門のサイズも大きくは無いだろう。或る程度の長期戦を耐える必要があると腹をくくった特異運命座標達の視線を受けて、ユリーカは説明を続ける。
「敵は単体の巨大な……蜥蜴、のようなモンスターなのです。
 蜥蜴と言っても、その個体は魔種によって大幅な強化が為されており、元の個体そのままに捉えることはできないでしょう」
 相手の錬金術モンスターが有する手段は巨体を活かした大多数を対象とするブロックと、自動的な脱皮による移動制限や状態異常の解除、これに加えてダメージを与えられた回数ごとに、自身の体力を除くステータスを上昇させる能力を有しているという。
「そして、最後に。この錬金術モンスターは、本来アルベド、キトリニタス達に用いられるフェアリーシード……『らしきもの』を呑んでいます。
 無論、それによって引き出される力はアルベドたちに比べると微々たるものでしょうが……」
 ――『殺したくない』というブレーキをかけるのに、その材料は十分すぎる。
 或る程度とは言え、かの蜥蜴と妖精は生命のリンクが築かれつつある。迂闊に蜥蜴を殺してしまえば、中に居る妖精にも同等の衝撃が与えられかねない。
「……皆さんの勝利を、信じているのです。けれど」
 情の為、成功を擲つことだけは、しないよう。
 重苦しいユリーカの言葉に、特異運命座標達はただ頷いた。
 この勝利一つを手放せば、多くの妖精たちが死を、そして故郷の喪失を味わいかねないのだと、理解していたから。


 ――私はのろまだから、私が身代わりになります。

 妖精だった私の記憶。恐ろしい誰かが私を捕らえて、自由を奪われた姿にされる前の、最後の言葉。
 そんな私が、同じように、他より劣ったこの子と結びついたのは、運命にも似た偶然でした。
 けれど、この子は力を与えられて。与えてくれた人の為に、その力を振るおうとしている。
 虐げられてきたあなたにとって、それは自然なことなのでしょう。
(……けれど)
 私と似たあなたであっても、私はあなたを許せない。
 それを許せば、私は私の大切な人を失ってしまうから。
 だから、その為に出来ることを。
(どうか、どうか。誰でも、良いから)
 自分の身体から溢れ出す力。無秩序に流れ出るそれらが尽きれば、このトカゲを少なからず巻き込んで、私は命尽きるでしょう。
(私達を、ちゃんと、殺してくださいね)
 願うのは、そう遠くない未来のこと。
 恐ろしくて、それでもきっと、皆が幸せになれる結末を望み、私は静かに笑ったのでした。

GMコメント

 GMの田辺です。
 以下、シナリオ詳細。

●成功条件
・シナリオ開始時から一定ターンに於いて、下記『大蜥蜴』が使うスキル「聳える」を使用不可状態にし続ける

●失敗条件
・シナリオ開始時から一定ターンに於いて、下記『大蜥蜴』が使うスキル「聳える」を一定回数使用する

●場所
 妖精城アヴィル=ケインの城門付近。其処をふさぐような形で下記『大蜥蜴』が位置しています。
 時間帯は昼。凍り付いた地面や庭園、吹きすさぶ雪など、真冬のような戦いを強いられます。
 シナリオ開始時、『大蜥蜴』との距離は自由に設定してかまいませんが、配置は場外に限られます。

●敵
『大蜥蜴』
 元は唯の蜥蜴でしたが、魔種による改造で巨大化しました。分類は錬金術モンスター。
 下記『妖精』との融合によってその能力が変異し、さらに巨大化しました。現在は体高8mの超巨体。
 それも相まって、こと耐久面に於いてはけた違いの性能を誇ります。少なくとも純粋なダメージで倒すことは不可能。
 自身の体格を活かしたブロックを以て、侵攻する特異運命座標達の足止めを図ります。
 以下、能力詳細。

【P系スキル】
・鈍重
(1ターンにおける自身の行動順が最後になる代わりに、体力に大幅な補正がかかります)
・超すーぱー脱皮
(自身の副行動直前に自動発動。自身を戦闘不能状態とする代わりに、「その時点での自身のHP現在値」を「HP最大値」とした、全く同じ能力値のエネミーを同位置に発生させます)

【A系スキル】
・聳える
(自身の3m以内に存在する敵対対象が7名より少ない場合使用可能。防御技術と最大HPに補正を与えます。この効果は重複します)
・スタンピング
(近距離範囲対象に足踏みを行います。高命中高威力)
・うるとらファイヤーブレス
(近距離範囲対象に向けて口から温風を吐き出します。命中した場合、対象のHPが回復するとともにMアタック効果が発生。
 これにより対象のAPが0となった場合、対象は眠たくなって一定ターン行動不能状態となります。BS回復等は不可)

●その他
『妖精』
 本来フェアリーシードとして用いられる素体を、最低限の加工のみで外付けの動力機関として動作するよう調整を施された妖精です。現在は上記『大蜥蜴』の心臓部分に位置しております。
 フェアリーシードそのものとなっていないためか、意識は存在しており、自身を取り込んでいる『大蜥蜴』に害を与えない形でのみ力を行使することが可能です。
 現在は自身の限界を超えて内在する力を無軌道に放出し続けております。
 これによって一定ターン後に『妖精』は死亡し、それに伴って『大蜥蜴』は全ステータスに大幅な弱体化がかけられることが予想されております。
 これを救出するには、心臓部に対して一定のダメージを与えて『妖精』を摘出する必要があります。(部位狙いとなるため、命中判定にマイナス補正がかかります)

●情報精度
 このシナリオの情報精度はAです。
 想定外の事態は絶対に起こりません。



 それでは、参加をお待ちしております。

  • <夏の夢の終わりに>大きな蜥蜴と、妖精の完了
  • GM名田辺正彦
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2020年09月01日 22時30分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧 (8人)

フェリシア=ベルトゥーロ(p3p000094)
うつろう恵み
サンディ・カルタ(p3p000438)
須臾を盗む者
ウォリア(p3p001789)
彷徨う赤の騎士
氷室 沙月(p3p006113)
オールレンジ委員長
ルチア・アフラニア(p3p006865)
「Concordia」船長
メリー・フローラ・アベル(p3p007440)
躾のなってないワガママ娘
バルガル・ミフィスト(p3p007978)
豪華客船の警備隊
ラムダ・アイリス(p3p008609)
流離人

リプレイ


 大きな声と共に、「誰かに抱えられた私」は、暴れまわる大蜥蜴から離れていきました。
 その下を、その脇を、大勢の「友人」たちが、彼らを伴った誰かが過ぎ去っていって。
 ――ああ、ああ、彼らは。
 私を抱えている誰かによって足止めされた大蜥蜴を過ぎ去り、彼らは氷に閉ざされた城の扉をこじ開けて、その中に入っていきます。
 それは、きっとこの城を、この妖精郷を、今なお覆う冬から救い出すために。
 ――ありがとう、ございます。
 今なお、私を抱える人々は戦い続けています。
 より多くの友人たちを、より多くの援軍を、城内に向かわせるため、それを妨げる蜥蜴の目論見を封じるために。
 力も使い果たして、指一本動かすことさえできない私にできることは、だから、ただ祈るだけ。
 ――どうか、貴方達に、祝福を。

 巨体を前にし、居並ぶ八人の希望を前に、私は、ずっと祈り続けていたのです。


「まったく……大きな蜥蜴もいたものよね」
 開口一番、歎息と共に自身らが立つ頭上を見上げたのは『「Concordia」船長』ルチア・アフラニア(p3p006865)。
 視線の先には巨大な蜥蜴。今まさに特異運命座標らが攻め込もうとしている妖精郷の城の門を前に立つそれは、侵入する彼らを封じようとじたばた足踏みし続けている。
「はい、依頼を受けてやってきましたがとても大きな蜥蜴ですね……」
 半ば呆然とした声色で、『元々は普通の女の子』氷室 沙月(p3p006113)もぽつりと零す。
 8mクラスの巨体が足踏みを行うなどと、最早一種の災害に近い。緩慢な動き成れども沸き立つ土埃や振動で態勢を保つことすら難しく、その為に今現在も味方の侵攻はある程度の足止めを食らっている。
「ただ立っているだけでもかなり厄介ではありますね。
 しかして『あの妖精』が死亡すると弱体化するならば、救出した際も同様になれる可能性があると伺いました」
 貼り付いたような笑顔でそう述べたのは『砂風の使い手』バルガル・ミフィスト(p3p007978)。此度の戦闘に備えた『竜斬刀』を鞘から抜きながらも呟く言葉は、何処か余裕すら伴っているように思えて。
「――ですので、全力で務めさせて頂きます」
 それが、妖精に対する処遇をどちらに向けての言葉か、問う者は何処にもいない。
 その、敵対の意図を感じ取ってか否か。臨む巨体の意識が確かに自分たちに向いたことを、特異運命座標らは確信する。
「淘汰されるべきでありながらも、永らえた命。立ち塞ぐならば、打ち砕くのみ」
 ばちばちと燃える炎を内部に湛えた鎧姿で、『彷徨う赤の騎士』ウォリア(p3p001789)が決然と言う。
 自らの務めを口にし、さあ、命を奪い合おうと語る彼の言葉は……果たして、笑っていただろうか。
「件の妖精さんとやらも、この蜥蜴の中に入ってるんだよね。……助け出すの、苦労しそうだなあ」
 うーんと悩ましげな顔で言ったのは『流離の旅人』ラムダ・アイリス(p3p008609)。
「救出するとは言ってもこの蜥蜴大きさ自体が既に武器みたいなものなんだけど」。そう言った彼女の言葉は正しく真実で、だからこそ相対する覚悟は並大抵では務まらない。
 けれど、それでもと。
「……誰かが欠ける終わりが、ないように……わたし達は、ここにいるのです、から」
『うつろう恵み』フェリシア=ベルトゥーロ(p3p000094)が、囁いた。
 自己を犠牲として、少しでも誰かの助けになろうと、今なお自らの命を削り続けている「蜥蜴と同化した」妖精。そんな悲しい結末を否定したいのだと言う彼女は、きゅ、と指揮杖を両手に握って。
「どうか、少しだけお待ち下さい」
 彼の巨体を止めるべく、仲間と共に、戦場へ駆けだすのだ。


「彼ら」は、自らをスルーして城へ向かうのではなく、自らを囲うように位置し、その動きを止めるべく立ち向かう。
 それを本能的に察した蜥蜴の動きが、変わる。
 初動で自己、他者への付与行動を主軸とした特異運命座標達が一連の動作を終えた後、その巨体故に遅い動作が冒険者たちを襲う。
 交互に持ち上がる四足。それがどしんどしんと落ちてくるのは、ともすれば空の落下にすら等しい。
「話には聞いてたけど本当危ないわね!? 頼むわよサンディ!」
「応とも!」
『躾のなってないワガママ娘』メリー・フローラ・アベル(p3p007440)の悲鳴じみた声に応えて、『レディの味方』サンディ・カルタ(p3p000438)が薄く笑んだ。
 着込んだ衣装から飛び交う幾つもの暗器。『エッジ』が味方へと落下する足の軌道を逸らすも、彼に出来るのは其処までだ。
 僅かに逸らした程度の軌道は仲間を護る程度にしか使えず、尚且つその範囲に自身を含むことは不可能だった。自らを叩く蹴撃に表情を歪めるサンディは、しかしこれでいいと呟く。
 より多くを護る。それが此度、彼が自己に定めた役割であるならば。
「……猶予は多くないと判断する。先に『此方』を、良いな?」
 問うたウォリアの意図を察した者たちに、異論は無い。
 マッドネスアンガー、からのクラッシュホーン。自身の鎧内に内包した炎を膨れ上がらせた彼が踏み込み、大戦斧――『暴君暴風』を剛と薙いだ。
 心臓を大きく裂く刃。目を見開いた蜥蜴がたたらを踏んだ隙を逃さず、
「さて、先ずは小手調べ」
 気配を消失させていたバルガルが、付けられた傷跡を更に穿つ。
 敵の耐久性を図るための一撃は、予想通りと言うか相当に分厚い反応を返した。事前に情報屋をして「『倒す』事は相当に困難」と言わしめた地力は伊達ではない。
 骨が折れますね。苦笑したバルガルの傍らから、寂寞と、郷愁を伴う歌声が。
 ――――――追懐ノットゥルノ。
 自傷を恐れぬフェリシアの歌声が場を満たせば、それを聴く敵対者には身を焦がす業炎を。
 突如として集中したダメージに、ぐるぐると目を回す大蜥蜴。
「敬愛するマスターの為にも……!!」
 言葉にする沙月が、『魔具・雷撃華之』を振りかぶった。
 叩く、穿つ、切る、形状を自在とする武器だからこそ可能となる、彼女だけのレジストパージは、更に蜥蜴に並々ならぬ傷をつけ。
 だからこそ、蜥蜴も本気の態勢を見せる。
 ぽろぽろと零れる薄皮の下は無傷にも見える姿。その後にかぱっと開いた口から温風が流れ出した。
 うるとらファイヤーブレスと名付けられた技に気力を削がれる仲間たちは、だが。
「時間もあまりなさそうだし最初からとばしていくよ!」
 踏み込んだラムダ。この程度に手こずっている暇は無いと振るった両刃剣が、何度目かの心臓部につけられた傷を創る。
 吹き出す血。見えるか細い光。それを、逃すまいと。
「……見えたわ。救出できそう?」
「ええ。まあ、私としては――」
 ――あの妖精に思い入れもないし、死んだところで気にはしないのだけれど。
 言いかけた言葉を呑みこんだメリー。首を傾げたルチアを尻目に、指輪『ディストーションリング』を構えた彼女が、それを基点に神気閃光を撃ち放った。
 光が取り囲んだその先に、落下する小さな光の粒。それを逃さじと鉄の騎馬を駆ったバルガルがその真下に辿り着き、受け止めることに成功する。
 助けられたそれは――妖精は、ひどく衰弱していながらも、未だ命は取り留めていた。
「これで一つ目の目標は達成、ですね」
「ええ、後は……」
 応えたラムダに対して、大蜥蜴はじっと特異運命座標らを睨みつけている。
 確実に、此方を強敵と判断したそれに対して、彼女もまた、表情を消す。
「私達が、どこまで耐えられるか」


 元より、作戦目標が持久戦である以上、彼らが取る戦法はどうあってもシンプルなものになりがちだった。
 最初に妖精を助け、その後は大蜥蜴が他の特異運命座標達の足止めをしないよう、足元で妨害しながら防御態勢を取り続ける。言葉にすればそれはとても簡単な内容に見えて、けれど。
「――――――あ」
 それを達成するのがこれほど困難だったとは、誰が思おうか。
 繰り返しの温風に眠気を誘われ、ふら、と倒れたのは沙月だった。
 ……妖精の救出後、基本の行動を防御と援護に据え、合間合間を見ての攻撃に留めるのみだった特異運命座標達は、此度何度目かの昏睡を余儀なくされている。
 体力を狙ったストンピングに対して、気力を削いでくるブレス攻撃を重点的に取るようになった蜥蜴に対して、戦況は芳しくない。
 横たわった沙月に対して、「許せよ」とだけ呟いたウォリアが強く頬を叩けば、酩酊した面持ちで彼女が意識を取り戻し始める。
 それとて、一度で奏功することは少ない。対して、仲間たちが失っていくリソースはウォリアの手法による復帰速度を大きく上回っている。
 即ち、このペースが続けば、事実上の戦闘不能者が多く出ることとなり、それは大蜥蜴による侵攻妨害を許す結果となってしまう。
 こうなった大きな原因は、この蜥蜴に相対する特異運命座標達が作戦目標の達成に完全性を求め過ぎたことと言える。
 大蜥蜴による侵攻妨害能力は、その行使条件に至近距離の敵対対象が六名以下であることとなっている。
 逆を言えば、大蜥蜴の近距離に配置する存在は七名居れば十分なのだ。
 蜥蜴の攻撃射程は近距離対象の身に限定されている。これに対し、彼らは八名全員が蜥蜴の近距離に立っていることで、範囲攻撃の被害を一名分、ただ拡大させるだけの結果となっている。
 そして、もう一つ。
「くっ……そ。ルチアさん、回復頼めるか?」
「出来なくはないけど……」
 聞いたサンディに対し、呼気を継いだルチアの視線の先には、彼同様気力の枯渇が激しい仲間たち。
「……長くは保たないわよ」
『態勢を整えられない』。
 もう一つの理由は、それだった。
 先にも言った通り、今回は一定時間に於ける大蜥蜴の侵攻妨害を更に妨げることが依頼の成功条件とされている。
 そして、その侵攻妨害に大蜥蜴が行使する能力は、何も一回の使用すら許されない、と言うわけではないのだ。
 敵の行動はそのほぼ全てを複数名に対象取っている以上、ダメージの蓄積は即ち全滅のリスクと直結している。
 それを避けるためならば、一度や二度、大蜥蜴に侵攻妨害能力を行使されたとて、一旦敵の射程範囲から逃れて態勢を整えるという手法もまた肝要の筈であった。
 それを――恐れるがゆえに。
 蜥蜴が一度でも能力を行使することを恐れるがゆえに、特異運命座標達のダメージは、目に見えない形で蓄積していく。
 気力の上限値が少ない仲間を庇い続けていたサンディと、それをスーパーアンコールで援護するルチアが倒れた瞬間、戦況は瓦解する。
 そうでなくとも、気力の上限値が多いものとて、それを回復する手段が乏しい以上、時間経過でリソースは枯渇し、他の仲間と共に昏睡状態に陥るのは自明。
 そして、それまでにかかる時間は、恐らく大蜥蜴を妨害し続けなければいけない時間よりも先に訪れる。
「誰かを助けることが……できても。
 誰かを……失わずにいることが、できても、それだけじゃ……!!」
 何度目かの歌声を上げるフェリシアの声音も、何処か寝ぼけたようなそれ。
 メリー同様、スキルを介して気力を回復する彼女は他よりは保っているが、如何せん消耗する量の方が大きすぎた。
 何よりも。
「……やれ、ここまでですか」
 申し訳ない、そう言って地に付したバルガルは、その直前までスキルを介した攻撃で気力を消費していたため、消耗の度合いが他より大きかった。
 それはラムダも同じく。耐久面で優れていると言われていた相手に対し、耐えるよりも倒すことを目的としたがために、彼女もバルガル同様消耗を重ねている。
「……皮肉よね。『消極的だったから』じゃなく、『行動的過ぎたから』、敗北を招くなんて」
 苦笑交じりのメリーもまた、自身が長く保たないことを自覚している。
 蜥蜴が気力を狙ったブレス、体力を狙ったストンピングのどちらを主軸とするにしろ、それに対する備えが彼らには足りていなかった。
「……撤退しよう」
「何を………………」
 言ったラムダに、反駁しかけたウォリアは――しかし、途中でその口を閉じた。
 彼もまた気力が高いとは言えない部類。それがこれまで一度も倒れることなく戦場に立ち続けていたのは、偏に蜥蜴のブレスを受けるたび、自らを傷つけ続けていた為に過ぎない。
 有する睡眠不要スキルも、あくまで「それを必要としない」ものであり「睡眠できない」ものではない以上効果は示されない。このまま続けても、彼が自身の刃を以て倒れるという不名誉な結果を齎すだけだと、彼自身解っていた。
「請け負った役目を放り投げて、あとは託すことしかできない。それが悔しいことは解るけど」
 倒れ切った全員が、為す術もなく踏みつぶされ続ける未来をたどるくらいならば。そう、彼女は言って。



 誰かが頷いた、他の一同も、それに続いた。
 倒れた者を抱えて、特異運命座標達は、今なお暴れる蜥蜴の元から去っていく。
 ――軈て、彼のモンスターによって稼がれた時間は、城内で戦う仲間たちに如何なる苦境を齎すのか。
 それを彼らが知るすべは、最早失われてしまっていた。

成否

失敗

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

ご参加、有難うございました。

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