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シナリオ詳細

<夏の夢の終わりに>Pachira

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●ローレット
「わたしも、たたかいにいく!」
 新たな作戦の通達されたローレットで、高めな少女の声がした。視線を向けた『黒猫の』ショウ(p3n000005)がフードの下で瞳を眇める。
「フィラ、だったか。病み上がりの身体は?」
「ばっちり!」
 ひらりと羽ばたいた妖精フィラは、つい先日までフェアリーシードにされアルベドへと埋め込まれていた。あの時はぐったりと力なくしていた彼女だったが、今ではすっかり元気そうである。
 彼女には小人の友人がいる。同郷の友はエウィン奪還の際に郷へと戻り、そのまま行方不明になっていた。彼女が同行を申し出たのも友を探したいが故であろう。
「気軽い気持ちではない、と思っていいんだね?」
「もちろん。それにこのままじゃ、ぜんぶメチャクチャになっちゃう」
 フィラの言葉に近くを飛び回っていた他の妖精たちも頷いた。成程、彼女らは皆イレギュラーズへ同行するための直談判に来たらしい。
 現在、アルヴィオンは冬に呑まれつつある。イレギュラーズは籠城する魔種タータリクス討伐と冬の精討伐を並行することになるが、当然戦力が足らない。故に迷宮森林警備隊も妖精郷へ赴いてくれるという話が出ていた。
「わたしたちのさとを、わたしたちがまもらないで、どうするの!」
「そうだ!」
「私たちの場所よ!」
 フィラの言葉に周囲の妖精たちが湧く。その表情に全く恐れや怯えがないとは言えないが、それでも小さな勇気に突き動かされてここまで来たのだろう。その心を確かに感じたのか、ショウもそれ以上言うことはなくイレギュラーズへと視線を向ける。
「だ、そうだ。君たちには妖精と共に冬の精の対処を頼みたい」
 冬の精とは突如湧きだした太古の怪物たち。アンシーリーコートの一種である。冬の王から産み出されたとされるモンスターは放っておけば妖精郷は滅亡するだろう。そうなれば妖精たちは行き場を失う事にもなる。
 ショウから必要な資料を受け取ったイレギュラーズたちは、それを読み込みながら妖精郷へと向かった。


●声
 聞こえたの。聞こえたの。胸の内からの声が。命の声が。
 『守りたい』のだと訴えかける必死な声は、無色だったアルベドにだって色を付けてしまいそうなほど鮮烈で。ふるりと震えた睫毛が持ち上がって、ゆっくり視線が移ろう。
「私は、」
 新たに作られた真っ白な少女は呟く。細胞に刻まれた記憶のリフレイン。憧れだったあの人。内なる妖精の願い。それらがタータリクスの予想外へと少女を導く。

「私は──守りたい」


 あまりにも寒く、吐いた息がすぐさま白くなる空気の中をイレギュラーズと妖精は進んでいた。
「このさきに、こわいもの、たくさんいる……」
 身の丈に合った武器を持つ妖精たちは顔を引きつらせながら、けれども妖精郷の光景に何度も頭を振った。こんなところで竦んでいるわけにはいかない。女王のためにも、友のためにも、これまで戦ってくれたイレギュラーズの為にも。何より自身らのためにも動かなくてはならないのだと言い聞かせながら進む。
 今回のターゲットは城へと続く洞窟、そこを根城とした冬の精の討伐だ。洞窟での光源は妖精たちが担ってくれるということで、イレギュラーズは討伐にだけ力を注げばよいという事になる。しかしただひとつだけ、この寒さは妖精たちも想定外であった。
「そこにも、あそこにもあるんだ」
 妖精の1人が何か所かを指さして回る。岩肌の多いここには複数の洞窟があるのだそうだ。不意打ちを受ける可能性も十分にあり、それ相応に警戒が必要となるだろう。
 不意に、洞窟の内から氷刃が煌めく。洞窟を示して回っていた妖精へとそれは真っすぐ迫っており、イレギュラーズは思わず駆けだした。振り返った妖精もその悪意に気づくが、間に合わないと誰もが肌で理解していた。
「──!!!」
 声なき叫び。甲高い音。薄らと瞳を開けた妖精が見たのは、月明かりよりも白い長髪だった。振り返ったその姿にフィラがびくりと飛び跳ねる。
「……アルベド」
 イレギュラーズの誰かが呟いた。あからさまな敵意の視線に少女──アルベド・タイプメルナが眉尻を下げる。その手は束の間、鳩尾へと当てられた。
「この戦いが終わったら、この子は返すよ。……でも、今だけは借りさせて。『守りたい』の」
 長髪が翻り、メルナがイレギュラーズたちへ背中を向ける形で洞窟へ視線を向ける。冬の精を警戒するアルベドに、イレギュラーズたちもまた警戒態勢を作った。
 このアルベドが真に敵か味方か、その言葉が嘘か本当かもわからない。けれど冬の精を妨害し、また倒そうとしているのは明らかであった。
 ここは一時的にでも共闘といこうではないか。

 そんなイレギュラーズたちに紛れて武器を構えながら、フィラはそっとアルベドを見る。自らが埋め込まれたアルベドと同じ形の化け物だ。
 けれど──どうしてか。彼女が悪いモノには見えなかった。

GMコメント

●成功条件
 冬の精の撃破

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。不明点もあります。

●エネミー
・イヴェル・シュヴァリエ×3
 亡霊騎士です。その体に触れることがあれば、驚くほど冷たいことが分かるでしょう。その顔は良く見えず、笑っているようにも泣いているようにも見えます。
 防御技術と命中に長けていますが、反応はそこまででもありません。

カウンター:身に着けた盾で攻撃を受け流し、カウンターを放つ構えです。【反】
氷刃:凍てついた斬撃です。【氷漬】

・イヴェル・ヴォルフ×10
 氷で出来た狼です。イヴェル・シュヴァリエに従っているようです。
 攻撃力と反応に長け、防御技術はそこまででもありません。牙や爪での攻撃を行います。通常攻撃に【凍結】を持ちます。

冷徹なる牙:悪意と殺意の籠った牙です。【必殺】

●フィールド
 岩肌に囲まれた広場のような場所です。複数の洞窟入口があり、中ではどこかで繋がっているようです。
 光源は妖精が魔法で用意してくれます。しかし寒気はどうしようもないものであり、毎ターンAPが削られます。

●友軍
・フィラ(妖精たち)×5
 小さき精霊種。故郷の危機に、女王の為に、友を探す為にと目的は様々でありますが、イレギュラーズへ協力すべく共に妖精郷へ赴いています。
 槍状の武器を持ち、一丸となってイヴェル・ヴォルフ1体を相手します。かなり頑張ってそこそこ戦える、程度です。

・アルベド(メルナ)
 メルナ(p3p002292)さんの姿を模した白き怪物です。新たに作られた個体のようで、鳩尾にフェアリーシードがあると考えて良いでしょう。戦闘終了後、本人は「この子を返す」と言っています。戦闘において特に指示が無ければ、イヴェル・シュヴァリエの1体を相手取ります。
 前回と異なり、真っすぐに『守る』ためその剣を振るいます。時には自らの危険も顧みない近接アタッカーとして参戦するでしょう。攻撃力と命中に重きを置いていますが、全体的なステータスはPC単体より高く作られています。最も、敵を倒しきるほどの力ではありません。

●ご挨拶
 愁と申します。
 再度アルベドの登場ですが、どうやら前回とはだいぶ異なる個体の様子です。
 ご縁がございましたら、よろしくお願い致します。

  • <夏の夢の終わりに>Pachira完了
  • GM名
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2020年09月01日 22時30分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧 (8人)

セララ(p3p000273)
魔法騎士
ハイデマリー・フォン・ヴァイセンブルク(p3p000497)
号令者
メルナ(p3p002292)
揺らぐ青の月
九重 竜胆(p3p002735)
一刀繚乱
シャルロッテ=チェシャ(p3p006490)
ロクデナシ車椅子探偵
カッツェ・サンドーラ(p3p007670)
喰われた半心
浅蔵 竜真(p3p008541)
一刀暁明
ドミニクス・マルタン(p3p008632)
特異運命座標

リプレイ


 凍えるような気温。竦みそうな嫌な気配。けれどそんなものには屈さない。何せここにいるのは──。
「「魔法騎士セララ&マリー参上!」」
 ばっちりポーズを決めた『魔法騎士』セララ(p3p000273)と『マム』ハイデマリー・フォン・ヴァイセンブルク(p3p000497)。2人が揃えば魔法少女となるのは必然である。
 しかし、例え魔法少女であっても寒いものは寒い。早く掃討すべく偵察に放っていたマリーのファミリアーは、氷でできた狼と先ほどの亡霊騎士を複数捉えていた。
「さて──短期決戦だ」
「ええ。早めにケリをつけましょう」
 車椅子という王座に座りし『ロクデナシ車椅子探偵』シャルロッテ=チェシャ(p3p006490)の言葉に『喰われた半心』カッツェ・サンドーラ(p3p007670)は頷く。長引けば長引くほど不利は目に見えており、また長く留まれば体も壊してしまいそうだ。
「故に、だ。軍師としては戦術の役に立てばそれでよい」
 その視線が向いた先はアルベド・タイプメルナ。その元となった『揺らぐ青の月』メルナ(p3p002292)もまた剣を構えて警戒しつつ視線だけを向ける。
「本当に守りたいと思うなら……指示を聞いて。お願い」
 2対の視線にアルベドは頷き、メルナと同じように剣を構えた。すでに敵は気づいている。いつ襲いかかってくるともしれないのだ。
 騎士の1体を引きつけるよう告げられたアルベド同様に、フィラたち妖精にも『一刀繚乱』九重 竜胆(p3p002735)から指示が下される。
「貴女たちは狼を1体ずつ相手取って頂戴。けれど命は大切にね」
 生きて勝たねば望みは掴み取れない。成し遂げたいことがあるのならば、こんなところで命を散らしてはならないのだ。
 頷く妖精たちの耳に「来るよ!」とセララの声が響く。次いで飛び出してきた狼の攻撃を受け止めつつ、口元をもぐもぐさせたセララは斬撃を放った。
(さて)
 シャルロッテは心の内で告げる。ここで皆の注目を集める必要はない。ただ、自らの中で戦いという名のチェスが動き出しただけ。
「──始めようか」
 振られるタクト・オブ・グレイゴースト。『特異運命座標』ドミニクス・マルタン(p3p008632)はちらりとアルベドへ視線を向け、それからセララの引きつけた敵へ移す。
(まあ、事情はよく分からんが協力してくれるってんなら力を借りるだけだ)
 瓜二つの仲間が、その他の仲間がどう思っているかもわからない。けれどドミニクスからすれば利害の一致が起こったのだろうという程度。利用されているのかもしれないが、こちらも利用しているのだからお互い様だ。
「妖精ども、無理はするなよ」
「もちろん!」
 自律自走式爆弾を放ったドミニクスの言葉に妖精たちは元気の良い声をあげ、一丸となって狼へ襲いかかる。その力は決して強いとは言えなかったが、それでも味方の頭数がいるだけで相手へ不利を強いれる。
「こっちも来たわね」
 竜胆は別の出入り口から現れた亡霊騎士に駆け寄り、その動きを阻害する。
「また狼だ、範囲攻撃を」
「了解っ!」
 シャルロッテの指示にセララが元気よく答え、聖剣技を放った。狼、騎士、また狼と次々出てくる敵にシャルロッテは的確な指示を飛ばしていく。同時に仲間へ与えるのは、自らの生命力を犠牲にした鼓舞。受けた『出来損ないの英傑』浅蔵 竜真(p3p008541)は新たに現れた騎士の1体を迎え撃った。振り下ろした武器は硬質な音を立てて騎士の鎧へとぶつかる。その至近距離からはまるで氷のような冷気が漂ってきていた。
(多少の手傷は負うだろう。だがそれでも……全力で剣を揮う!)
 アルベドが守るのだと告げ、メルナは信じるようだった。ならば竜真は彼女らの意思を守り抜く。ここで手傷に恐れをなすなどとんでもない。
(削られる力は微々たるもののようですが……重なれば痛い損失ですね)
 カッツェは触れる寒気に眉を寄せながら治癒魔術を展開する。どんどん増えていく狼を一手に引き受けるセララは、いくら熟練といっても無傷とまでいかない。彼女の、皆の命運は攻撃手たちに任されていた。
「マリー、一緒に合わせて攻撃するよ!」
「はい!」
 セララの放つ雷の斬撃に、よろめいた狼へハイデマリーの贈る死の凶弾が命中する。まずは1匹、などと思う間も無く複数の狼がセララへ飛びかかった。群れへ叩きつけられるのはメルナの光刃。無垢なる光の斬撃に、しかし彼女自身の心は相反したような乱れ模様だ。
(……前のアルベドとは全然違う。意思も戦い方も)
 前のアルベドは怯えて怖がって──羨ましくて苛ついて。
 今のアルベドは真っ直ぐで勇猛果敢──これもまた妬ましく羨ましい、なんて。
(ダメだね、私。こんなの、お兄ちゃんらしくない)
 こんな私よりあのアルベドの方がずっと兄らしい──"理想"だ。その姿は正直複雑で、けれどあの言葉も瞳も嘘には見えなかった。だから信じるのだと、信じたいのだと思う。
(格好悪いところなんて、見せられない。だって私が……"本物"なんだから!)
 再び刃を光らせ、狼たちを蹂躙するメルナ。被さるようにシャルロッテの放った苦痛と苦鳴が狼へ襲いかかる。
 亡霊騎士を相手取る竜真は未だ倒れぬ相手を睨みつける。強靭な鎧は死者となってもまだその身を守ってくれているらしい。
(だが、倒れるわけにはいかない)
 的確なところを突いてくる騎士。その攻撃を躱し受け流し受け止めて、竜真は歯を食いしばった。
 まだ錆は落ちきっていない。
 鈍った腕が戻ったわけでもない。
 ならば、ここからもう一度磨き上げるしかないから。
「うおおおおおお!」
 コンディションを引き上げ、一瞬の隙に変幻邪剣の切っ先が騎士の首を狙う。それは辛くも鎧をひび割れさせた程度で、本物の首には届かないけれど。
「っまだだ! ここで必ず、お前たちを打倒するッ!」
 竜真を鎮めるはずだった騎士のひと太刀は宙を切る。運命の力はまだ、竜真を戦いへ誘っていた。
 別の亡霊騎士を相手取っていた竜胆は、偶然近くにたったアルベドを視界の端に入れて「ねえ」と声をかける。視線はそれぞれ敵へ向けられながらも、その意識がこちらへ寄せられているのを感じた。
「『守りたい』……って言葉、信じるわ。でもね、」
 一瞬だけ視線を向ければ、アルベドも竜胆同様に怪我を負っている。これまで出現した個体を考えるに、単体としてはイレギュラーズたちより強いのだろう。けれど、そんな彼女がイレギュラーズたちと同じくらい怪我を負っているのは──傷を負う、痛みを負うという人としては忌避しがちなことを気にしないからかもしれない。
「……今の貴女の命は貴女だけの命ではないの。誰かを守るだけじゃなくて、貴女……貴女たち自身もちゃんと守ってみせなさい」
 アルベドは一瞬ハッとしたように竜胆を見て、すぐさま動こうとした騎士の動きを阻害する。竜胆もまた目の前の敵へ視線を戻し、小さく笑みを浮かべた。
「ソレが本当の意味で『守る』って事よ。いいわね?」
「……ありがとう」
 聞こえてきた言葉に一瞬目を瞬かせる。その言葉の意味をちゃんと知っているのかはわからないけれど、こういう時に言うものだとは知っているのだろう。竜胆は再び小さく──されど好戦的に──笑って。狼へと顔を向けていた亡霊騎士へ朗々と名乗り上げ、注意を奪った。
 セラマリの連携力、カッツェの回復にシャルロッテの支援。メルナと妖精たちが畳み掛け、ドミニクスが後方からSADボマーで狼たちを吹っ飛ばす。残るはアルベドと仲間2人が押しとどめる亡霊騎士のみだ。
「不測の事態には臨機応変に……なに、要はどいつもこいつも殴り倒すんだよ」
 シャルロッテは自己を犠牲に仲間をあと一押しと支援する。最後に自らが立っていることは成功条件ではない。チェックメイトしてこそのゲームだ。
 カッツェはより疲弊している竜真へとヒールをかけ、妖精たちが果敢に立ち向かっていく。セララは竜真と立ち位置を代わり、アルベドと同じように壁を背にする。ちらり、と2人の視線が交錯した。
「……ボクは『守りたい』って言葉を信じるよ」
 騎士によるカウンターを受けながら、されどもセララは攻撃を止めない。それも全ては守りたいから。アルベドと同じだから。
「同じ意志のキミはボク達の仲間で戦友だね」
「……なかま」
 ぽつりと呟いたアルベドは不意にハッとして剣を横に構える。直後、押し切らんと言わんばかりに騎士の剣が押し込められた。白い肌が、髪が、凍てつく空気に当てられていく。
「──セララっ!」
「うん! いくよ、マリー!」
 セララの相手していた騎士が崩れ落ち、下敷きにならないよう躱したセララはハイデマリーと声だけでやり取りする。見る必要はない。言う必要もない。だって2人は魔法騎士セララ&マリーなのだから!
「いくら防御力が優れていようと、急所を、ほぼ一瞬の連続で、撃ち貫けば問題ないであります」
 外さない。確固たる意思の元に黄金の獅子の咆哮が一度、二度と吠える。直後落ちた雷をセララは剣で受け、全力で振るった。ドミニクスの狙撃が徐々に、執拗にその余裕を削いでいく。鎧を崩しながらもなお立つ亡霊騎士は、振り向きざまに燃える蒼を見た。
「これで──終わり!!」
 メルナの放つ蒼炎の斬撃は亡霊騎士の魂を焼き、灰と化していく。残るは、あと1体。
 カッツェの放つブレイクフィアーがアルベドと竜胆の氷を溶かす。アルベドは手元の剣を構え、本物と似たような技で残る騎士へ切りかかった。それを肩越しに見た竜胆もまた外三光で騎士を迎え撃つ。
 もはや多勢に無勢──騎士がその魂を燃やし尽くすのは、時間の問題だった。



 敵を全て倒したことで、辺りの寒気がいくらかマシになる。ほう、と息を吐いたカッツェは妖精たちを呼び寄せた。
「全く……僕よりも華奢なのに良く頑張りますね」
 カッツェの治癒魔術に妖精たちがくすぐったそうにはしゃぐ。戦闘中にそんな素振りをされたことはないが、彼女たちにその力はくすぐったく感じるのかもしれない。
「だって、私たちの場所だもの!」
「わたしたちの、おともだちのためだもの!」
「そ。それでも僕は前衛なんてまっぴらですけど」
 はい終わり、とカッツェが許可を出すと妖精たちはふわふわ浮かび上がる。そしてありがとうと礼を言いつつ髪の毛をちょいちょい引っ張るものだから、カッツェはさりげなくその他から逃れつつアルベドの方を見た。
(あちらはお任せしましょう)
 アルベドに対してそこまで感情を持っていない。もし迎え入れるのならば治療をする──追い払うようなことはしない、という程度だ。
 ドミニクスもまたアルベドが核を返すのかどうか見守っている。アルベドの言葉が真実なのかもわからないし、口出しをするほど事情もよく知らない。
「どうしても……ダメ、なんだよね」
 セララは小さく呟いた。戦闘中も感じていた彼女の心。アルベドは作られた存在だが、このアルベドは自我らしきものを持っている。その身に心を宿しているのだ。
 けれどもアルベド本人が苦笑を浮かべ、ダメだよ告げる。
「だって、私の命じゃないから」
「……その前に、聞いてもいい?」
 メルナはアルベドに声をかける。真白な自分は穏やかな笑みを浮かべて頷いた。
「どうして、守りたいって思ったの? ……怖くは無かったの?」
「怖くないよ」
 そう言い切ったアルベドは、次いで淡い苦笑を浮かべた。
「……なんて、嘘。これはきっと、怖かったんだ」
 胸に手を当てるアルベド。その感情の意味を、形を、ようやく知ったのだと言わんばかりの口調だった。形も知らぬ感情に苛まれながら、それでもアルベドは戦い抜いたのだ。
「守りたいと思ったのは……内緒」
「え?」
 この子に聞いて、とフェアリーシードのある場所へへ手を当てたアルベドは、力を込める直前に竜真の声を耳で拾う。視線だけを向ければ、同じように視線だけが向けられていた。
「守りたいものは、しっかりと守れたか。一時の生に不満はないか」
「勿論。『私』がいなくなるとしても、あなたたちがいるなら、これからだって……きっと」
 その答えはあまりにも穏やかで。竜真は「そうか」と短く告げて視線を伏せる。
「……なら、その意思は俺たちが受け継ごう」
 竜真の言葉に頷き、アルベドは自らの身へ指を埋め、フェアリーシードを取り出す。それが体を離れた直後、アルベドの体はどろりと溶けた。
「あ……っ」
 思わず手を伸ばしたメルナの手にフェアリーシードが載せられて、アルベドの手もそのまま溶けてしまう。残ったフェアリーシードは眩い光を放ち、後にはぐったりとした小人が残された。
「ああ、やっぱり!」
 フィラがメルナの周りを飛ぶ。この小人こそ、自身の探していた友人だと。
(話を聞くのは目覚めてから……か)
 早く深緑へ戻らなければ。顔をあげたメルナの視界に、祈るドミニクスの姿が映る。
(われら、生のさなかに死に臨む。土は土に、灰は灰に、塵は塵に──)
 聖職者でも、ましてや信徒でもない人間の祈りにどこまで価値と意味があるのかはわからない。されど、しないよりは聞き届けてくれるだろう。

 のちに目覚めた小人は語る。
 たしかに自身は妖精郷を守りたいと願った。あのアルベドは、それに答えてくれたような気がした、と。

成否

成功

MVP

九重 竜胆(p3p002735)
一刀繚乱

状態異常

浅蔵 竜真(p3p008541) [重傷]
一刀暁明

あとがき

 お疲れ様でした、イレギュラーズ。
 無事にフェアリーシードも奪還です。

 それでは、またのご縁をお待ちしております。

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