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シナリオ詳細

砂漠に月満ちる時

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●『竜の砂嵐』
 覇竜(デザストル)にほど近いラサの砂漠には竜が棲む……そんな噂がまことしやかにささやかれるようになってどれ程になるだろうか。
 事実として、その地域は定期的に砂嵐が吹きすさび、生半可な者達の接近を許さぬとも、竜の気まぐれであるとも伝えられている。
 砂竜と呼ばれるそれの砂鱗を得た者が真のラサの王になる、という冗談めかした伝説が残されているくらいなのだ。信じるのは一部地域の馬鹿か子供ぐらいだと多くの傭兵は高らかに笑った、という。
 ……だが、まことしやかにささやかれるだけの真実の羅列はいくつか存在する。
 ひとつ、当該地域では定期的に砂嵐が吹きすさび、人々が近づくのを拒否するかのようである、ということ。
 ひとつ、満月の夜は決まって砂嵐が和らぎ、それまでの荒々しさが嘘のように静かになるということ。
 ひとつ――荒々しい砂嵐は、砂漠を住処にするサンドワーム達でさえ退ける威力を秘めている、ということ。
 それらが何を意味するのかは分からぬまでも、未知であること自体が神秘である、ということだ。

●調査と、安らぎと
「ラサの南方、覇竜と近い砂漠地帯への調査依頼が来ています。条件がなんというか……不思議、といいますか。特殊なものになりますが」
 『ナーバス・フィルムズ』日高 三弦(p3n000097)は居並ぶイレギュラーズにそう切り出した。
 覇竜にわざわざ近づくこと自体、危険なだけで利のない話だ。竜種に襲撃を受ける可能性があるなら出来れば避けたい……そう思う者もいるだろう。だが、今回は竜種の干渉は考えづらいのだという。
「砂漠地帯での竜種の観測はここのところ確認されておらず、その辺りに関する伝承も眉唾ものとして伝えられています。その『生息域』で、最近砂嵐が激しいので調査してほしいということなのですが、満月の夜にその地域に足を踏み入れてほしい、というのが本題です」
 満月、という言葉にエルス・ティーネ(p3p007325)がぴくりと眉根を寄せた。そして、その地図を確認した彼女は瞠目する。
「……この辺りに、竜の噂……ですって?」
「ええ。実在性も、その証拠も残されていない為、多くの人々は信じておりません。砂嵐の発生は自然現象ですし、その多寡は珍しい範囲ではないと聞きますが、満月の日は不思議と少なかったそうです。なんでも、ここ数ヶ月は急増している傾向にあると……」
 目を剥いたエルスの様子に、親しい者達は首を傾げた。彼女がラサの事情に多少なり詳しい事は周知の事実だが、どうやらその地域についても思い当たる節があったらしい。
「行く……行くわ、竜種がいるかどうかは別として、行きます!」
「あ、ありがとうございます……? 取り敢えず、竜種の出現は認められませんが、そこそこ大規模なサンドワームの群れが確認されているので気をつけて下さいね……?」
 周囲のイレギュラーズは、驚いた様子で互いの顔を見つめ、それからエルスの方を向くのだった。

GMコメント

●達成条件
 ラサ南方、『砂竜の寝床』への到達し、一晩過ごす(過ごし方は自由)

●砂竜の寝床
 ラサと覇竜の境界あたりの砂漠一帯の名称。
 竜種が潜んでいるとされ、その鱗を持ち帰った者が真のラサの王になるという言い伝えが残っている(冗談半分のようだが)。
 真相は不明ながら、砂嵐が多数発生する危険地帯であり、好んで踏み入る者など限られている……はずだ。
 ラサ~砂竜の寝床間の針路は確立されているものの、サンドワームや小型敵性生物が多数出現する地帯であり、普通は近寄らない。

●サンドワーム×4
 体長4mほどにもなる砂中を泳ぐ長虫。
 巨大であり、『巻き付き』以外のすべての攻撃に『移』が付随する。ブロック時、ブロックした人物の防技による判定が発生。
 防技、CT高め。
・砂撒き(物遠単・暗闇、移)
・巻き付き(物至単・HP吸収小、麻痺、連)
・大口喰らい(物超単・万能、移、弱点、流血)

●サンドワーム・マザー
 体長6mに及ぶ、サンドワーム達のボス的な生物。
 概ねの特徴はサンドワーム同様。
 さらに「大口喰らい」「巻き付き」に「防無」が付随する。巨体ゆえにマーク・ブロック不可。

●地形効果「砂嵐」
 ランダムに発生、「物特レ(発生地点・域)」扱い。
 敵味方関係なく出現し、同一地点で2ターン持続する。
 発生ターン、もしくは次ターンにサンドワームを追い込めれば戦局を左右しうる。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

  • 砂漠に月満ちる時完了
  • GM名ふみの
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2020年09月02日 22時20分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

リリー・シャルラハ(p3p000955)
自在の名手
リック・ウィッド(p3p007033)
ウォーシャーク
鹿ノ子(p3p007279)
琥珀のとなり
恋屍・愛無(p3p007296)
愛を知らぬ者
回言 世界(p3p007315)
狂言回し
エルス・ティーネ(p3p007325)
祝福(グリュック)
ヴァイオレット・ホロウウォーカー(p3p007470)
咲き誇る菫、友に抱かれ
エスメラルダ・クペード(p3p008856)

リプレイ

●月明かり眩く
 夕焼けが砂漠の砂を赤く焼き、乾いた風が吹き抜ける。熱を持っていたそれらは夜に向かって急激にその熱を吐き出し始め、もう数時間もしないうちにすっかり冷気にさらされるであろう。
 砂漠とは、常に人間の居座る余地を与えぬ類の自然の暴威の中にある。
「竜……ワタクシの元いた世界では創作やお伽噺の中での存在でしたが、この混沌にはれっきとした種族として存在するんですねえ」
「竜種か……見てみたい気もするが、こちらに友好的とは限らないし出ないに越したことはないな」
 『影を歩くもの』ヴァイオレット・ホロウウォーカー(p3p007470)が出身世界での伝承を思い浮かべながら感慨深げに呟くと、『貧乏籤』回言 世界(p3p007315)は遭いたくないとばかりに顔をしかめた。友好的な相手ならいざ知らず、移動する自然災害、存在自体が超弩級の破壊に匹敵する彼等と好んで会いたがる者など居ようはずも……。
「竜種の噂、かぁ……気になるし、海洋で竜種の背中にのった身としては、確かめなきゃねっ!」
「ラサに竜種が出るなんてすごいな! 本当の竜種に会えたり見られるなら楽しみだぜー!」
 ない、というわけではないらしい。『緋色の翼と共に』リトル・リリー(p3p000955)は友好的な竜と間近で交流した身であるし、『ウォーシャーク』リック・ウィッド(p3p007033)は伝承と事象の関連性に興味を持ちつつ、ロマンの可能性に期待を隠さない。重畳の存在というのは、得てして若い感性の者達の心を揺さぶるものなのである。
「竜種の噂。色々と謎が多いとなれば、解き明かしたくなるというものです」
「砂虫の群れというだけで厄介だが。砂嵐まで発生するとは。やれやれ、タフな依頼になりそうだ」
 エスメラルダ・クペード(p3p008856)は好奇心に満ち満ちた声で告げる。『餌付け師』恋屍・愛無(p3p007296)は仲間達よりは幾許かドライな反応で、如何にも厄介そうだと困ったように肩を竦めた。愛無にはロマンというものが理解できないが、仲間達がそれを追い求めること自体は否定しないのだ。その情熱が、依頼達成の精度を上げて士気があがるなら万々歳だ。差し出口を挟むよりもずっと建設的であった。
「今日は苦しくないッスか?」
「この姿でのお仕事も増えてきたから……大丈夫よ、ありがとうっ」
 『黒犬短刃』鹿ノ子(p3p007279)の気遣わしげな視線に、『砂食む想い』エルス・ティーネ(p3p007325)は笑顔で応じる。普段とは異なる赤い髪。満月の時に悪化する吸血衝動が肉体に影響を齎している格好だが、彼女の自制心と混沌での経験を重ねた結果、幾分かマトモに行動できるようになったらしい。「もし竜種が見つかったら、ディルクさんにごほーびもらえるかもッスね!」などと続けざまに鹿ノ子にからかわれると、たちまちのうちに頬も赤くなるのだけれど。
「火の無いところに煙は立たないというけど、『竜の寝床』周辺にいるワームがそう……」
 世界は「竜の正体はワームではないか」と暗に口に仕掛けるが、それに否定的なイレギュラーズ達の視線に気付き、咳払いと共に「ではなさそうだね」と言葉を継いだ。
「覇竜の近くってくらいだし、噂になるくらいだから砂嵐もよっぽど強いんだろうなー!」
「……エルス様が何かをご存知のようですが」
 リックの興奮気味な声を受け、ヴァイオレットはエルスに問いかけるように視線を投げた。当の本人だが、首を捻って考え込んでいる。
「ラサ全体で考えても……心当たりはない……個人的な事は色々あったけれど……でも、その中に竜種が惹かれる何かがあったというの……?」
 エルスは自らの記憶を引っ張り出し、色々と考え込む。目的地周辺に足を運んだことはあるかも知れないが明確な記憶はなく、辿り着いたことで有意な出来事に寄与できるかと言われると疑問符が浮かぶ。それでも足を向けたのは、何か、その地が自分を呼んでいるようにも思えたからで。
「でも、色々試す前にこれなんとかしなきゃ。一晩過ごすのにこれじゃあ大変だよーっ……」
「砂虫がどこかに逃げてくれればいいが。僕達は彼等からしたらとんだカモだろうさ」
「あれをどうにかしなければ、解き明かすどころではなさそうなのが悩ましい所ですね」
 リリー、愛無、エスメラルダの3名の視線の先には、砂漠の砂を巻き上げて暴れ回るサンドワームの群れと、鎌首をもたげてこちらをみる一回り大きな個体。
 そして、にわかに立ち上り始めた砂嵐という、過剰なまでに荒々しい『お出迎え』であった。

●砂漠駆ける虫と人
「砂嵐が実際に起きているなら、そこから予兆も想像できる。問題は視界だろうか」
「出来るだけ俺の近くで固まって戦ってくれると助かるぜ! 皆が戦いやすく出来るはずだ!」
 リックが勇ましく仲間に声をかける中、愛無は砂嵐を観察しつつ前進する。散開して動き回るワーム達を一所に引きつけることは難しいが、最も厄介なマザーを起点にすれば大分マシではある。なにより、愛無が外す理由がない。
「愛無さんが引きつけたヤツを倒していこう! 攻撃できなくしちゃえばいいんだよねっ!」
 リリーはサンドワームの一体へと式符を飛ばし、炎でもって鋭く穿つ。炎とそれによる行動阻害、加えてあり得ざる存在による運命操作は、巨体なだけのそれには覿面に効く。
「一体ずつ確実に、ですね。同意します」
「ヒッヒッヒ、リリーさんとはウマが合いますね……好きですよ、そのやり方」
 エスメラルダは砂を集めて拳に変え、サンドワームを打ち据える。掠り、わずかに動きを乱したそれを追撃するのはヴァイオレットの『影』。次々と食らいつくそれが肉体に染み出し、苛み、血を吐き出させる。常よりも激しい痛打を呼び込んだのは、リリーが先手を打ってサンドワームに与えた不調がためだろう。
「いくッスよ! 雪の型『雪上断火』!」
 鹿ノ子は黒蝶を振り上げ、二度、三度と斬り付ける。サンドワームの鱗を縫って裂かれた傷は、殊更強く血を吹き出して砂上を濡らす。
「こっちで抱えてる分は問題ないが。2体の取りこぼしが、此方を襲いにかかるな」
「そう、よね……足止めしきれない分も出てくるわよね……っ!」
 エルスは愛無の警句を耳にしつつ、サンドワームが砂を巻き上げ、頭上を覆った事に舌打ちする。砂は受け止める。だが、腕で目元を塞いで体ごとサンドワームに突進すると、振り上げた大鎌に魔力を込めて振り下ろす。
 体格的に圧倒的に劣るエルスが、サンドワームとの押し合いで拮抗したのは驚くべき出来事……気合いと時の運か。
「距離をとれるなら助かるんですが、そうもいきませんか……?」
 エスメラルダに向かったもう一体は、大口を開けて彼女に食らいつこうとする。当たれば、彼女は無事では済むまい。
 が、そこに立ち塞がり、牙を受け止めたのは世界だ。その牙の鋭さと致命的な『返し』の深さを思えば受け止めただけで碌な結果は待つまいが、世界は護りを固め、凌ぎきった。
「楽ができるなら最高だけど、そうは問屋が卸さない……か。愛無さん、まだいけるかい?!」
「其方よりは数が多くて厄介だがね。許容範囲さ」
「結構厳しいってことだよね、分かってたけどさ……」
 そして直ぐ様気にするのは自分では無く仲間という有様だ。確かに愛無は、マザーと通常個体2体を引きつけているのだから傷は浅くない。が、そちらの治療を己より優先させる姿はやはり世界も『まとも』を踏み越えた者であることを思わせた。流石にそれを見たリックが世界の治療に魔力を用いたのは無理からぬ事であろう。
「ヴァイオレットさん、さっきの一匹はまかせてもいい?」
「勿論ですとも。ワタクシ、得意分野ですので……」
 リリーは世界の元に向かった個体へ黒炎烏を飛ばし、その動きを鈍らせようと試みる。如何に守りが堅かろうと、当たるのなら不調を撒き散らすことは難しい話ではないのだ。
「風の音……ちょ――マズいッス! 僕と愛無さんの目の前にひとつ! 世界さん達からちょっと離れた位置にひとつ! 砂嵐が来るッスよ!」
「無論、此方でも匂いで気付いてるとも。……好都合じゃないか?」
 鹿ノ子が耳に届いた風切り音を頼りに仲間達へ叫ぶ。咄嗟に後退を選んだ彼女と異なり、嗅覚を頼りに動いていた愛無は当然ながら分かった上で――自らすら巻き込む覚悟で――その場に立ち、世界達は一体を足止めしつつその兆候に目を瞠る。
「……俺の得意分野じゃないんだけどな。リック、こいつを押し込むのを手伝って貰えるかい?」
「おれっちに任せな! アンタは自分の怪我も心配した方がいいぜ!」
「そうなんだけどさ、びっくりするほど傷が浅くてね」
 世界とリックは、砂嵐に視線を合わせ軽口を叩き合う。そのやりとりが分かるはずもあるまいが、サンドワームは己が無視されたように思えて苛立ちを覚え、世界に巻き付き締め上げようと試みる。
 が、試みただけだ。肉体を蝕む違和感で動けない以上、巻き付くことも食らいつくことも敵わない。リリーに受けた一撃が、ここにきて不利益を与えるとは。
 世界が至近距離からノーモーションでサンドワームを弾き飛ばすと、リックがそれを照準して追撃とばかりに衝撃の青で吹き飛ばす。2連の衝撃を受けたサンドワームの背後には、巻き上げられた砂嵐――逃げ場は、ない。
「堅いわ、ね……っ! この鱗、もう少し密度が低くてもいいじゃない!」
 エルスは、自らに襲いかかるサンドワームの猛攻を凌ぎつつ、鎌による猛襲で拮抗を保っていた。兎に角、堅い。外す方が難しいほどに巨大な胴は、しかし折り重なった鱗が攻撃をそうそう通してはくれないのだ。エスメラルダとの連携で少しずつ打撃を通しているが、仲間達のことを思えば長丁場は避けたい――そこに、鹿ノ子が頭から突っ込むように黒蝶を振るい、鱗ごと切り刻みに来た。
「愛無さんはどうしたの……?!」
 思わず問いかけたエルスに、鹿ノ子は屹立する砂嵐を指さした。

●嵐と静寂
(諸共の覚悟ではあるけれど、あれに巻き込まれて――マザーだけ無事で降りてこられたら厄介だね。どう切り抜けるか)
 愛無はマザーを含む都合3体のサンドワームの猛攻を凌ぎ、地面から巻き上がる風と砂から離れようと一歩下がる。次の瞬間、集中砲火を受けていた一体は全身から噴き出す血と毒に耐えきれず崩れ落ち、残り2体は身を捩った。それは次の攻撃への準備であったのか、はたまた同胞への嘆きであったのかは、愛無は知るつもりはない。
 が、一瞬、愛無が先手をとれるだけの隙があれば十分だった。僅か10メートル。一歩と呼ぶには大きく、相手の射程を鑑みれば小さすぎる移動にワーム達が反応するより早く、砂嵐が巻き上がる。
「――やれやれだ。僕はこういう力業や根性論は一番無縁だと思っていたのだがね」
「でも、無事でよかった! ……マザーが落ちてきたら、リリー達が何もさせずに倒すから!」
 深く息を吐き、砂嵐を見上げた愛無にリリーが近付き、語りかける。あまりに小さな彼女は、砂嵐の余波ですら舞い上がってしまいそうになるが、そこは仲間の服を掴んで耐えきった。
「ワタクシの占いが正しければ、マザーは……生きていても青息吐息でしょう。ワタクシ達と同じような呼吸かは知りませんが」
 ヴァイオレットが冗談めかして告げるのと、その直前に彼女が一撃ぶちかましたワームがエルスの手で討伐されたのとはほぼ同時。
「しっかし……こんな砂嵐を生み出すとか本当に厄介な竜種だな! そいつのせいかは分からないけど!」
「そうね、そこは……会えたなら文句のひとつも言ってやりましょう」
 リックは呆れ気味に砂嵐を見上げ、エルスも苦笑気味に頷く。
 『竜の寝床』は、すぐそこだ。

●噂の先は
「寝床ねぇ……いえ、母様に歌って貰ってた子守唄を思い出して……千年も前の歌なのに……覚えているものだわ」
 エルスは『竜の寝床』に辿り着くと、いそいそと焚き火を準備するリックや休む準備を進める世界、使い魔を飛ばし周囲を観察するリリーらをよそに、深呼吸をいくつかして『子守唄』を思い浮かべた。長らく忘れていたと思ったが、思い出せるものなのだ――と感慨深い気持ちになる。
「近くにそれっぽい形……はないみたいッスね。匂いは乾いた砂の匂いばっかりッス……」
「俺は何もできないから英気を失うために休んでおくよ。これは決してサボりでは……」
「暇なら知ってる物語でも話すかー? 歌を歌うのもいいな!」
 周囲から何か手がかりがないか探す鹿ノ子、世界を巻き込んで夜通し楽しもうとする(そして途中でねる運命にある)リック。
 騒がしさを背景に、エルスは空を見上げた。

 きーん、いろの……おつきさま……きらり……
 かわいた風に……ゆられて……
 夢見の夜に……近づく……闇で
 見守っていた……三日月……

 エルスが思い出しながら、辿々しく紡ぐ子守唄を背景に。
 愛無は砂の中に、楕円に切り取られた何かを見た気がした。すわ、噂の竜の鱗かと目を瞠った愛無は次の瞬間、その輪郭が既に消失していた――あるいは最初から無かったことに気付く。
「幻か、ホンモノか。どちらにしろ、謎のままの方が当面はいいこともあるのだろうな」

成否

成功

MVP

なし

状態異常

鹿ノ子(p3p007279)[重傷]
琥珀のとなり
エスメラルダ・クペード(p3p008856)[重傷]

あとがき

 物語は嘘か真か。
 幻は事実(ほんもの)の残滓か――さて。

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