PandoraPartyProject

シナリオ詳細

<This is Your World>Let there be light, far beyond the clouds.

完了

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●ばんぶつのそうぞう
 ――いちにちめ
 うちゅうと、ちきゅうをつくりました。
「ひかりあれ」
 するとひかりがあった。それだけではまぶしいばかりなので、『さかさま』のじかん。よるもつくりました。

 ――ふつかめ
「みずのあいだにおおぞらがあって、みずとみずを『はんぶんこ』にせよ」
 かんそくじょをせっち。このおおぞらを、てん、となづけました。
 『ふわふわ』のわたあめみたいな、くもののりごこちはさいこうで、ついついてつやだ。
 
 ――みっかめ
「おおきくなぁれ、おおきくなぁれ」
 りく、となづけたかわいたちに、きょうはいろいろとうえてみました。

 ――よっかめ
「『ぴかぴか』と、しんしんと、ちをてらしたもれ」
 おおきなまんまるのひかりはひるを。ちいさなひかりはみちかけをしながらよるをてらすようにつくりました。
 それは、しるしのため。きせつのため。もっといえば、まいにちのために。

 ――いつかめ
「みずはおさかなのむれでみち、とりはおおぞらをとべ!」
 たまごをうめよ、ふえよと、さいしょのせいめいのたんじょうをいわいました。

 ――むいかめ
「われわれのかたちに、われわれにかたどって、ひとをつくり。うみとそら、そしてちにあるすべてをおさめるように」
 うめや、ふやせや。みちよ、みちよ。
 せいめいを、おとこと、おんなにわけたのは、ほんのきまぐれだけれど。
 なかなかどうして、よいではないですか。きっとうまくいくことでしょう。

 ――なのかめ
 よし、よし。
 きょうは、ちょっときゅうけい。おやすみのひ。

●だれかがつくったせかいのかたすみ
『――暑い』
「わねぇ」
「ですの」
「ね……?」
「ですわー!」
 誰かがそう呟けば其れは伝播して、皆口々に不平を愬える。さても疎ましき空模様は雲一つ無い快晴で、茹だる様な日差しを浴びて額から滴り落ちる汗は手巾や袖で拭えど、拭えど止まらない。
 何も、そんな暑い日の真昼間から外で此の世の不幸を一身に背負った様な、辛く苦しい顔を突き合わせて居なくても。端から見たらそう思う者も多いだろう。
 然し、四人だって一時間程前は足取りも軽く、鼻唄を奏で道を闊歩する位にはご機嫌だったのだ。其れは、ギルド<ローレット>のコルクボードに張り出されて居た一枚のチラシに起因する。
 『昼から営業して居るビアテラス』
 『手ぶらで、厳選食材を使った本格バーベキュー』
 『貴重なクラフトビールも飲み放題で楽しむ事が出来ます』――其れは其れはもう、余りにも魅力的な見出しだこと!
 そして奇しくも同時刻に其の場に居合わせたふたりとふたり。
 前者は『キールで乾杯』アーリア・スピリッツ(p3p004400)と、ミディーセラ・ドナム・ゾーンブルク(p3p003593)。
 後者は『雷光・紫電一閃』マリア・レイシス(p3p006685)と、『祈りの先』ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ(p3p001837)と云う。
 チラシを指差し念の為の意思確認。神妙に頷き、互いの求るものが同じだと識れば最早、其処に言葉は必要無かろうと。肩を組み、宛らビートの効いたヒップホップが聴こえて来るかの様な滑らかなステップを踏んで、申し合わせた訳でも無いのにぴたりと息の合った圧倒的パフォーマンスで以てスイング・ドアから外へと繰り出した。

 『猫が産気づいたので本日臨時休業』

 話のオチとしては此の辺りが無難であろうか。
「無事に産まれると良いな」
「そうですわね……」
「子猫って可愛いですものね」
「そうねぇ……」
 ――沈黙。
 猫に罪はない、其れでも崩れ落ちる面々。
 特に軀が酒で構築されているかの如くな生き様をしているふたりへのダメージは甚大で、見ていて痛ましい程だ。
 ならば、別の店に。そう辺りを見渡せど、酒場は何処も夜からの営業ばかり。涼を取れそうな喫茶店も見当たらず途方に暮れて。有りと凡ゆる此の世の無常を嘆き、燦燦とした太陽に悪態を吐き、公園で力無くブランコを漕ぎ――そして今日はもう、此処で御開きかと云う雰囲気が漂い始めた頃。
「……そうだわ、図書館があるじゃない……!」
 虚ろな眼差しをしたアーリアが蹌踉めき乍ら立ち上がる。
 特異運命座標、行きつけの『境界図書館』。確かに『果ての迷宮』は近くに在るものの、別に其処は一行が求めていたビアガーデンではない。遂に気でも触れたかと哀感に満ちた眼で見遣るミディーセラを他所に、きぃきぃと軋むシーソーから飛び降りて其れに続くヴァレーリヤ。対面に座って居たマリアが反動で地を転がって行った。
「行きますわよ、今直ぐに!」
「いてて…… 待っておくれよヴァリューシャ、図書館にビールは置いて居ないと思……」
「あるかも知れませんわー!」
「ええ……!? まあ、君がそう云うのならあるのかもね!」

●かみさまのきゅうじつ
 此れも違う、彼れも違う。
 俗欲の赴く儘にぽいぽいと堆く積まれた本の山は、何れも望みを満たすものではない。深、と冷えた其処は暑さを凌ぐのには最適で、滝の様に流れる汗は引いたは良いが負けられない戦いは続いていた。
 白熱する、世界探し。血眼で本を読み込むアーリアとヴァレーリヤ。
 『お互い大変ですわね』、『いやいや、軍人をやってた頃に比べれば全然楽だよ』。ふたりが床に放った本をせっせと本を元に戻して行くミディーセラとマリアが諦めの境地でそんな風に友情を育んで居た時である。
 ころり、書架から飛び出した一冊は――。
「何かしら、……真っ白?」
 かど革も、ひらも、地も白く。背文字すら記されて居ない書。
「あらぁ、どうしたの、ミディーくん」
「なんですかマリィ! お酒が有りましたの!?」
「落ち着いてヴァリューシャ!」
 皆が、自分に眼を向けてくれるのを待っていた様に、其の本はミディーセラの細指が頁を捲るのに合わせて物語を紡ぎ出す。
 幼い子供が書いた様な拙い字で進む世界の創生、堊筆で描かれるアダムとイヴの肖像。七日目以降は記されて居らず、空白が広がっていた。
「何だろうね、創世の物語に似ているけど。子供か誰かの悪戯かい?」
「そうかも知れませんわ、まあ、元に戻して――……」
 本を、閉じようとした瞬間の事だ。光ふるふると瞬いて、少し急いでいるのか走り書きで語り掛け始めたのは。

『きょうは、おやすみのひなのですが、ひとりでさびしいです。そこのあなたがた、あそびにきてくれませんか』
『なんでも、ごよういできますよ』

「あらあらぁ、『なんでも』ですって?」
「今、『なんでも』って言いましたわね!?」

『はい。』
 暫定とは云え、神をも恐れぬ食い気味に彼方側は少し躊躇した様だったが、其れでも前言撤回とはしないらしく。

『おようふくなども、おかしできますよ』

「其れは結構嬉しいですわ」
「汗掻いたし、丁度良いかもだね!」
 中々如何して、至れり尽くせりではないかと、残りのふたりも相好を崩して快諾すれば、嬉しそうに本が跳ねた。

『てぶらでかまいません、ぜひに、ぜひに』

「何だか申し訳ないわ、でも、うふふ。お誘いを頂いたなら、行くっきゃないわよねぇ!」
「キンキンに冷えたビールとバーベキューですわー!」

 其処は、神様なら麦酒じゃなくて葡萄酒とかなんじゃないかなあ、と云う突っ込みはさて置いて。
 いざいざ、本日の行き先は、遥か高き空を漂う雲の上。斯く語り初められし、物語――。

NMコメント

 シナリオのリクエストを有難う御座いました。
 しらね葵(――・あおい)と申します。

●目標
 休日を目一杯楽しむ。

●かみさまのおわすばしょ
 雲の上です。
 望めば何でも出て来ます。
 バーベキューセットでも、飲んでも飲んでもお酒が湧いて来る樽でも。氷の様に冷えたジョッキだって!
 疲れたら下界を眺められるハンモックで眠るも良し、極上の触り心地のタオルケットも御座います。
 眠たくなる迄、想像力を駆使して遊んで頂ければと。
 また、何故か服も神様っぽい其れになります。

 ある程度のものは最初から有ったものとしてプレイングを掛けて下さって構いません。
 細かい理屈は抜きにして、どんちゃん騒ぎをしましょう!

●招待者
 鳩の姿を取って居ます。もふもふ。
 皆さんが楽しんでる姿を見ていられれば良いらしく、其の辺をぽてぽて歩いているので基本的にはリプレイに登場しません。
 お呼び頂けた場合や、お酒を勧められたらお相伴に与ります。

●その他
 描写はおやつ時から、夜が更けるまでを想定して居ますが、「いいや、夜通し飲むね!」など皆様のプレイング次第では如何様にでも変化致します。
 相談日数を長めに取っております。
 雲の上に辿り着いた所、と云う体で、余力があればRPを挟んで頂けるとぐっとリプレイでのキャラクター様『らしさ』の参考に為りますので、是非。

 飲み始めて下さっても大丈夫です!(大丈夫です!)

 以上となります。皆様のプレイングをお待ちしております。

  • <This is Your World>Let there be light, far beyond the clouds.完了
  • NM名しらね葵
  • 種別リクエスト(LN)
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2020年09月02日 22時20分
  • 参加人数4/4人
  • 相談11日
  • 参加費---RC

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(4人)

ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ(p3p001837)
願いの星
ミディーセラ・ドナム・ゾーンブルク(p3p003593)
キールで乾杯
アーリア・スピリッツ(p3p004400)
キールで乾杯
マリア・レイシス(p3p006685)
雷光殲姫

リプレイ

●かみがみのうたげ
 てんとちと、そのばんしょうのかんせいをもって。このなのかめをしゅくふくし、せいべつし。
 けっこうなじゅうろうどうでしたが、ようやくのおやすみのひ。
 まねいた、おきゃくさまはずいぶんと、ゆかいな――

 『なんでも、ごよういできますよ』と云う言葉に嘘偽りは無く、各々が欲しいものを念じれば次々と出て来た新鮮な食材、鱈腹の酒に、此の場では少し異質にも見えるバーベキューグリル。中では小気味良い音を立てて爆ぜる炭は香り良く、じゅうじゅうと焼ける肉に魚介、野菜の香りは食欲をそそって止まない。
 せっせ。せっせっせ。
 一口大の具を串に通し、火の通りを確かめ、皿に盛っては配って回る『雷光・紫電一閃』マリア・レイシス(p3p006685)の甲斐甲斐しさと来たら鳩が豆鉄砲を食ったよう――否、神も胸を打たれる程である。
「酒呑みは一寸のおつまみで飲んでばかりで少食の人が多いしなあ。アーリア君にミディーセラ君もどうぞ!」
「嗚呼、主よ! わらくし、氷を削っひぇ、ほら、あれぇ! 作ったジョッキで、お酒が頂きらいですわぁ! え、あるぅ? さいこーぉうですわね!」
「も、もう七分目位まで出来上がってるじゃないか…… ヴァリューシャも、ほら。飲んでばかりいないでちゃんと食べなきゃ駄目だよ?」
 敬われる筈の神も、敬虔な信仰心も酒の前では酷く無力だった。此の修道女――『祈りの先』ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ(p3p001837)も然し乍ら、今は何時もの清廉其の物を示す白の司祭服では無く、随分と薄い亜麻布を纏って居るのみ。
「ふふー、らってここは主のおわす場所。神のお誘いともあれば、酔わなければ逆に失礼ろいうものれしょう?」
「見えちゃうから! ほら、脚をもっと閉じて!」
「其れにしても、何だか随分頼りない服じゃない!? まぁ女の子とみでぃーくんだし……その、はだけてたら言ってちょうだいねぇ……?」
 他の三人にしても、其れは同じ。豊かな胸が滾れ落ちそうになるのを直した『キールで乾杯』アーリア・スピリッツ(p3p004400)には未だ、恥じらいを見せると云う理性が残って居る様ではあるが、実の所、もう既に危うい所まで来ているもので――『乾杯しましょ、かんぱーい!』とふにゃふにゃの笑顔を見せるのだ。
「ええっ!? もう乾杯するの九回目だよね?」
「まあ、まあ。乾杯は何回しても楽しいですもの。マリアさんも、ほぅら」
 一から十まで律儀に突っ込みを入れ、酔っ払い共の世話を焼くマリアを微笑ましく蜂蜜酒の様にとろりと滲む双眸で見ながら『キールで乾杯』ミディーセラ・ドナム・ゾーンブルク(p3p003593)もまた、手にしていたものを掲げ。『其れもそうなのかなあ……』と若干の疑念を抱く彼女と、『わらくしも! わらくしも!』と這いずって来たヴァレーリヤと。四人でまるで水晶とも見紛う美しさの、きゅっと冷えたジョッキを打ち鳴らす。
「神に感謝してかんぱぁーい!」
「かんぱいかんぱーーーい! ねえ、ねえ! 皆で飲みくらびぇをしまひょ! あの太陽が沈むまでにー、たぁくさん飲んだ人が勝ち! にゃのですらー!」
「其の勝負、乗ったわあ! ふふ、おねーさん頑張っちゃう!」
「あら、良いですわね。まあ、わたしが一等賞になるとは思うのですけれど?」
「そんな事したら誰が片付けるんだい…… でも。私がそんなに楽しそうなヴァリューシャの提案に乗らない訳が無いじゃないか!」
「いーい眼ですわ、マリィ! わらくし、負けましぇんからねー!」

「でも、おかしい」
「どうしたんだい、ミディーセラ君」
「妙だとは思いませんか。休みだなんて……いえ…… ひょっとして、神様位にもなれば其れも屹度」
 胡桃とピーナッツをヴァレーリヤによって口に詰め込まれて居る鳩の方を見遣り、首を傾げてから嘆息。マリアもそんな彼の云わんとして居る事を理解し、思慮に耽った様で居て――、
「まあ、ヴァリューシャが楽しそうなら此れは此れで!」
 実に脊髄反射な、誰しもが想像に難くない様な彼女らしい解を述べて見せた。
「……それにしても、まあ、アーリアさんがちょっとおかしくなった訳ではなくて。安心しました」
「なによぉみでぃーくん、私はいつでも正気! だもの!」
 『ぽっ、ぽっ』と白々しく鳴いて、其の疑惑の視線と、引いてはすっかり出来上がっておつまみの殻を剥く酔っ払いの手から逃げる様にぽてぽてと雲の上を走る其の軀をアーリアが抱き上げる。
「かみさま? 鳩さんも勿論ご一緒にどうかしらあ?」
「ええ、ええ。さみしい時って、誰にでもありますもの。だから、今日は一緒に飲みましょう」
「そうよお、ほら! お酒は一人で飲むより皆で飲む方が美味しいじゃない!」
「えっ、そーいう楽ひそうな事は、先に言って下さりまち! わらくし、もー……」
「ヴァレーリヤちゃん、一抜けみたいねえ。マリアちゃん、はいパス!」
「承ったよ! 任せておくれ!」

●わたしたちがかみさまだったころ
 さあ、さあと、戦ぐ樹々達の音色は遥か遠くに聴きながら、揺籠の様に優しく軀を包み込んで揺れるハンモックはずっと、ずっと昔の、温かい母の腕の中に抱かれて居た時の事を朧げに思い出すものだった。自分はとっくに大人で、そして其れを享受する事は二度と叶わないとは判っている。ならせめて自棄酒位は許されようか。こんな時は質より量。悪酔いする位で丁度良いのですわ――そんな夢から不意に、ヴァレーリヤの意識は浮上する。
「えへへ、もう、呑めませんわー…… って、あら?」
「嗚呼、起きたのかいヴァリューシャ。眠ってしまったものだから。大丈夫かい? 乗り心地は如何かな?」
 覗き込む赫は雨の前触れ、或るいは暑い夏の象徴の様な夕焼けを背に受けて眼に滲みる程。そんな、気付けば何時も傍に在る、自分に何処までも甘い其の色は不安そうに揺れて居て、呆けた様に暫く見つめ続ければ照れ臭そうに細まって笑みを象った。
「其れにしてもすごいね! 此処はさ、ふわふわで物語の雲って感じがする!」
「あのねマリィ、恥ずかしいから内緒にしておいて頂きたいのですわ」
「うん?」
「雲の上でお昼寝したい、って。子供の頃の夢が叶ってしまいましたの」
「子供の君は随分とロマンチストだったんだね」
「そう云う貴女こそ、随分とお酒が強くなったんですのね?」
「毎度連れ回されて、介抱していれば、飲み方位覚えるさ! 此のウィスキーとか美味しいよ、呑みなおすかい?」
「……そう、ふふ。頂きますわー!」

 夢見心地は、此処にももうひとり。くたくた、軽くて少しひんやりとしたタオルケットはメレンゲに包まれて居る様。
 望めば何でも出て来る此の場所でも、枕だけは唯一無二。尻尾にしがみ付くアーリアに、『一層、わたしをもうひとりと望んだら如何?』なんて意地悪を云えば、『私、そんな事では困ってしまうわ』と狼狽る貌が見れてご満悦のミディーセラ。無論――自分がもうひとり在ったって、戀人を譲る気は毛頭無いから何時もの『冗句』だ。
 飲み倒した彼女は眠る前に創造主にこんな事を持ち掛けた。『私もみでぃーくんと同じ、長生きで同じ歩幅で歩けないかしら』。其ればかりは無理なのだと首を振られれば、判り切って居た事でも少し寂しそうだったから。
「ねえ、可愛いでしょう、愛らしいでしょう? わたしの戀人は」
 夜更けにも為れば、起きて居るのはひとりと一羽。綿菓子の様に甘い酒を呑み交わし乍ら、惚気てみたり――今迄己が歩んで見て来た人々の話で大いに盛り上がった。そんな楽し気な彼の聲を半分夢の中で聴いていたアーリアがぎゅう、と腕に力を込めれば、其の虹に染まった髪を優しく撫でる。さっきの言葉だって、実を云えば寂しがり屋なのはわたしの方なんです、だから気を悪くしないで、と苦く笑って。
「――かみさま、かみさま。どうぞ、お耳を貸して下さいまし」

「アーリアさん、其れにヴァレーリヤさんとマリアさんも。朝ですよ」
 其の日、目にした夜明けの事は。皆、何時までも忘れないだろう。
 真っ青な、暁闇と太陽の光溶け合う束の間の時間の後の画布に、滲んで行くのは優しい桃紫に、快活な橙、鮮烈な紅。柔らかい灰色の雲の切れ端は光を帯びて銀の様に輝いて、其れから、幾重も色が奔って、落とされて、画家の手に依って複雑な筆使いで悩ましく描かれ。軈て東の方からまんまるな太陽が姿を見せれば、海と地に黒いシルエットを齎した。
「ミディーくんは此れを見せたかったの?」
「はい。かみさまにお願いしたんです。『とっておきの朝を見せてあげて欲しい』って」
「嗚呼、飢えに苦しむ事も無ければ、寒さに凍える事も無い。望めば何でも手に入る、此処は確かに理想郷でしたわ……皆を連れて、移住したい位! でも、」
「ヴァリューシャ、泣いているのかい」
「あらあらヴァレーリヤちゃんったら」
 『ぽんっ』と現れた手巾は、優しい友達たちと神様、合わせて四つ分。
「……もうっ、大丈夫ですわ。――分かっていますわよ。ほんの少し、夢を見ていただけ。さあ、私達の世界に帰りましょう!」
「君の優しい夢も、想いも、積み重なって、折り重なって。そうすれば絶対に、世界は応えてくれる。少しずつ良くなって行くって、私は信じてるよ。だからさ…… 一緒に頑張ろうね」
「夢を見るのは、悪い事ではないですわ。溺れる事だって、時には。――だから、かみさま。また来てもいいかしら?」

 ――ぜひに、ぜひに。そう、肯くかみさまを代わる代わる抱き締めて。

「其れで。朝帰りを咎められる歳でも無いかも知れませんけど、窘められたら、何度だってこう云ってあげましょうよ」

「『その日、わたし達は雲の上に居たのだった』って」
 其れは良い案だなんて雲の端より零れ落ちる、笑い声。――此れは確かにそう、晴れやかなる空に居た。嘘みたいで、ほんとうの一日の話。

成否

成功

状態異常

なし

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