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シナリオ詳細

本日、提灯日和

完了

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

⚫︎あめのきせつに

 あめのかみさま ねぼすけさん
 あめのきせつに やってくる
 くろくものって やってくる

 ごーごー ざーざー じゃーじゃーじゃー

 たくさん あめをふらせては
 やまに かわに まちに みどりに
 たくさん みずをとどけてくれる

 けれども あんまりながいあめ
 あまおとばっかり きいてると
 うっかり すやすやねむくなる

 すーすー ぷーぷー ぐーぐーぐー

 あめのかみさま ゆめのなか
 たいへん みずがあふれちゃう
 どうかとどいて ゆめのなか
 みんなでともそう ひよりごい



⚫︎恵と禍

「神様のせいで雨が止まなくて困ってるんだってサ!」

 傍迷惑な話だよねぇ、と小さな境界案内人は一冊の本を手にして言った。
 紫色のぼさぼさ頭に、両耳はピアスだらけ。サイズの合っていない草臥れた作業着の袖をぱたぱた遊ばせて少年は続ける。

「いつもならとーっくに日和乞いのお祭りをしてるんだけど、それに使う提灯が足りないとかなんとか?」

 なんでも提灯職人が泥濘で滑った拍子に腕を痛めてしまったらしく、このままでは祭りは行えず、世界が水浸しになるのも時間の問題とのことだ。

「ほらほら、最後のページにはキレイな虹が見たいでしょ? だからお手伝い、行ってくれるよネッ☆」

 そう聞く分には身勝手なお願いだが、人助けには違いない。
 了承の意を伝えるイレギュラーズに『ねぼすけかみさま』と題名が記された本を見せてけらけら笑う案内人。柔らかいタッチで描かれた幼児向けの絵本だった。

NMコメント

こんにちは、氷雀です。
日和乞いとは雨乞いの逆で晴れを願うものだそうです。
あまり難しく考えず、やりたいことをやってくださいね。


⚫︎目標
職人さんに手解きを受けながら提灯を完成させる。
お祭りを開催して神様に雨を止めてもらうようお願いする。

⚫︎世界観
神話が色濃く根付いている、日本の江戸時代に似たところ。
職人の技が神様と人間を繋いでいます。


⚫︎提灯
代々受け継がれた技術によって職人さんの手で作られる、雨避けの魔法が宿った提灯。
一度ロウソクが燃え尽きると効果がなくなる。
鯉に似た模様を入れることが多い。

提灯そのものは最低限の数はあるのでまずは絵付けをお願いします。
それが済んだあとなら、一から教わってオリジナルのものを作ることもできます。


⚫︎日和乞い祭り
翌日、提灯を灯して盆踊りのように円になって踊ります。
雨の中ですが提灯の魔法で濡れません。
細やかながら屋台も出ますので飲食も楽しめます。
雨上がりには神様からお礼とお詫びを兼ねて虹が出てるとか。


⚫︎プレイング例

「本当にはた迷惑な話だな!
俺は晴れが好きだからさっさと止んでほしいぜ!」

職人さんとやらには丁寧に話を聞いて、立派な提灯を作ろう
鯉、コイ、どんな魚だったかな?お手本があればいいんだが……

「よし、気持ちはたくさん込めたぞ!
次は絵付けだけじゃなくて提灯から作ってみたい。
職人さん、怪我をしてるところ悪いが教えてくれると助かる。
神様が驚いて飛び起きるようなすごいのを作ってやるから見とけ!」

絵は下手だが手先は器用だからな
楕円形をした赤色のナニカしか描けないが
形を工夫すればきっといいもんができると信じて……

  • 本日、提灯日和完了
  • NM名氷雀
  • 種別ライブノベル
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2020年08月27日 22時10分
  • 参加人数4/4人
  • 相談5日
  • 参加費100RC

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(4人)

藤野 蛍(p3p003861)
比翼連理・護
桜咲 珠緒(p3p004426)
比翼連理・攻
カルウェット コーラス(p3p008549)
旅の果てに、銀の盾
樒(p3p008846)
水鏡の茜

リプレイ

⚫︎光明

 ざあざあと屋根や壁を叩き、締め切られた窓に当たって弾ける雨粒。時折滴る音は秒針の進むそれに似て、閉ざされた作業場では追い立てられる感覚に襲われもする。それを止める責を果たせずにいたのであれば、尚のこと。

 己を呼ぶ声に物思いから浮上し、振り返れば手伝いを願い出てくれたとても前向きで不思議な少年少女達。今行くよ、と無事な方の腕で返事をして踏み出す足取りは年甲斐もなく浮かれている。ああ、間違いない。きっと今年は良い祭りになるだろう。



⚫︎兆し

「雨の中で行う日和乞い、という祭りがあるとお聞きしまして。なんでも大事な提灯を作る方がお怪我をされたとか……微力ですがお役に立てれば、とこうして伺った次第です」
 すらりと伸びた背丈の『水鏡の茜』樒(p3p008846)は中性的な容貌に柔らかく微睡むような笑みを浮かべる。見下ろす橙色をした額の瞳に、職人は扉を開いた姿勢のまま目をぱちくりと瞬かせていた。
 この世界で職人とは各々に与えられた業でもって人と神様との橋渡しをする者だ。故に弟子もいない彼は怪我で途方に暮れていたのだった。
「その風習の謂れにも興味はありますが、水没してしまっては元も子もありませんからね」
 続いたのは橙と紅の瞳をした少女、『二人でひとつ』桜咲 珠緒(p3p004426)。
「そうそう、物語はやっぱりハッピーエンドが一番よ!」
 黒髪眼鏡の委員長、『二人でひとつ』藤野 蛍(p3p003861)がそこへ更に声を乗せた。
「小さな子には明るい未来と希望をたくさん夢見て育ってほしいから……現実を知るのは、大人になってからで充分だもの」
 だから虹を架けるのは任せてちょうだい、という言葉にハッとした顔をする職人。
「ボクは、不器用だけど、必死に頑張る、します。よろしくお願い、します」
 『新たな可能性』カルウェット コーラス(p3p008549)は体に対して大きめな角を生やした頭をぺこり。幼いながらも真摯な所作に職人は苦笑する。頭を下げて願い出るべきはこちらであるのに。
 それは遠くの空に雲の切れ目を見つけたような出会いだった。


 大きな作業台を囲む一同。
「鯉……初めて、見る。綺麗なお魚」
 赤、橙、黄、緑、青、藍、紫。既に絵付けを終えた提灯に踊る七色の鯉がカルウェットを惹きつけた。中に蝋燭を灯した姿を想像したのか、キラキラ輝く瞳の桃色に鮮やかな鯉が映り込む。
「ふむふむ、鯉の模様……『乞い』だから、かしら? 何か曰くがあるなら伺っても?」
 これから行う作業にも一層身が入るかもしれない、と蛍。隣で真剣に鯉を見つめていた珠緒も是非にと頷き、和紙の上の赤い鯉を指でなぞる樒も倣えば嬉しそうに顔を綻ばせた職人がそれに応える。
「ひとつはお嬢さんの想像通り。もうひとつは——」
 明かり窓の向こう、滝のような雨を見遣って呟く。鯉の滝登りに擬えて、雨を登って神様まで届けたい。雲の上まで登った鯉は竜になり、それが虹になるから七色なのだ、と。
「鯉、いっぱい描く、する。早く竜の虹、見る、したい!」
 純粋な願いに満ちたカルウェットの一声に促されるように、和やかに準備は始まった。


 雨音をBGMに、各々が選んだ彩りで提灯と向かい合う。時折アドバイスをしに来る職人以外に動き回るものと言えば、少女の姿を模したロボット達くらいだ。彼女らは倉庫から提灯の運び込みに塗料の補充にとせっせと働いていた。
 それを頼んだ蛍は晴れを願う気持ちを精一杯込め、慎重な手付きでひと筆ずつ色を載せている。
「神様との縁を繋ぐ大切な提灯だもの、ここは伝統に則った絵柄で、丁寧に、丁寧に……あ、まひろさんちょっと材料足してくれる?」
 茶髪ツインテールのロボット少女が素早く絵具を追加するその横で、同じくロボットを連れた珠緒が彼女らの作品を覗き込む。
「こじまさんの鯉はなんとも色鮮やかな」
 紅白に橙、黒や金色まで大胆に使って描かれた錦鯉が悠々と泳ぐ様は、神様だけでなく祭りを行う人々の目も楽しませることだろう。
「すずきさんの、上になびいているのは……こいのぼりには矢車と吹き流しがつきもの、ですか」
「職人さんが聞かせてくれた、鯉の滝登りのお話があるでしょう。それを出世に見立てて子供の成長を願う五月のお祭りで——」
 首を傾げる珠緒に気づいて捕捉する蛍。ふたりは会話を挟みつつ仲睦まじく、ロボット達と一緒に着実に数を仕上げていった。

 樒はひとり静かにまっさらな提灯を前に頭を捻っていた。鯉も良いが、何か見ていて涼しげな物を描きたい。
「……金魚なんてどうでしょう」
 水中を泳ぐ様はとても心地好さそうで愛らしい出来になるだろう。まずは提灯全体を薄青に塗った上に水草と金魚を、とそこでまた筆が止まる。
「こうしてしっかり描こうと思うと、いい感じの姿が思いつきませんね。赤い魚型で済ませるのは、こう。少々味気ないですし」
 普段よく見ていたとしても、動きのある生き物などはいざ絵にしようとすれば迷うものである。樒は尾びれを大きめにしたり、お腹をふっくら丸く描いたりと試行錯誤を繰り返していく。

「職人さん、職人さん。少しだけ、聞く、してもいい?」
 手を挙げて訊ねるカルウェット。
「コツつかむ、むつかしい……から、教えてもらう、できる?」
 一生懸命跳ねる、凸凹と不格好な鯉。職人も思わず孫を見るような眼差しで、痛めた利き手の反対でゆっくりと手本を描いてみせる。カルウェットより少し整っているだけで、やっぱり不格好な鯉にふたりで笑った。
「神様、寝坊、してる。だったら目覚まし鯉のほうが、きく、する? ベルが、ジリジリ、鳴く、する鯉」
 いくつか仕上げた頃に、やや不満そうな顔の上で小さな握りこぶしを揺らしてそう提案する。どうやら同じ絵がつまらなくなってしまったらしい。
「お日様鯉。きらきら光るして、まぶしってして。あと、朝ご飯鯉。美味しい匂いして、神様も起きる、するはず!」
 どうだろう、と反応を窺うカルウェットの頭を撫でて職人は力強く頷くのだった。

 そうして完成した提灯は乾いたものから祭り会場へ運ばれ、出入りする人々が慌ただしくなっていく。
「ん、絵付けはこれで一通り済んだのかしら」
「おさかなの絵ははじめて描きましたので、大変でした」
「たくさん、たくさん、鯉、描く、した」
「ええ、数をこなすうちにだんだん手慣れて、それらしく書けるようになりましたね」
 作業に集中して凝り固まった体をぐぐっと伸ばす一同を労う職人に樒が続けた。
「せっかくなので神様によく見えるように……最低限だけと言わず、数をご用意できたらよいのですが」
 それを聞いたカルウェットも身を乗り出した。
「基本のやつでよい。一から提灯、作る、してみたい。ボロボロになっても、最後まで」
 この状態で上手く教えられるのか。口籠る職人の心に飛び込む、子供らしくて真っ直ぐな言葉。
「前に、依頼で悪夢見た。時、偽物お父さんが、傘作る仕事、してた。偽物だったけど、かっこよかった、から」
 だから提灯作りに興味を持ったのだ、と語られれば物づくりを生業とする者としてはもう否とは言えない。
「それなら。ね、珠緒さん。自分達用の提灯、作ってみない?」
「よいですね。絵はお花はいかがでしょう」
 女子ふたりも加わって、また俄かに騒がしくなる作業場。祭りの時間まで、あと少し。



⚫︎提灯日和

 提灯に彩られた祭り会場が雨の中にぼんやりと浮かび上がる。まるで虹色の鯉が泳ぎ回るよう。そんな幻想的な光景も、カルウェットの食い気には勝てなかった。
「お祭り、食べる、いっぱい、できるの?それは、よいものだ」
 憧れに夢に希望。形は歪で不安定だが揺らめく蝋燭の温かな光の詰まった提灯を手に、屋台の匂いを吸い込んで笑う。和紙の上には瞳や髪と同じ色の鳥や水玉、それから竜がくねくねと踊っていた。
「盆踊りも忘れずに……ですが、この本ではどういった食事が出されるのでしょうか」
 樒が持つ貝の形を模した提灯には色鮮やかな熱帯魚が珊瑚の森で遊ぶ。水族館の水槽をぎゅっと閉じ込めたような躍動感と清涼感があった。
 まずは踊っておいで、と職人に促されて四人は中央の輪へ入っていく。踊りと言っても難しいことはない。太鼓の音と周りの動きに合わせて、見様見真似で提灯片手にくるりと回って手拍子ぱんぱん。それだけですっかり仲間入りだ。ふっと見渡せばあちらこちらで自分達の描いた提灯が雨を弾いている。
「雨のあたらない状態は、なんとも独特な感覚がいたしますね」
 珠緒は風にそよぐ藤を描いた提灯を眺める。優雅な紫は隣で踊る恋人の花でもある。対になる満開の桜の提灯を持つ蛍は、春の訪れを告げる歓喜の花の色に包まれながら微笑んだ。
「珠緒さんの花だもの、神様の居眠りを終わらせて優しい陽光を届けてくれるはずよ!」
「魔除けの藤も、きっと晴れ間の邪魔になるものを追い払ってくださいますよ」

 次第に弱くなる雨足。最後の一滴が水溜まりに落ちると、そこからぐぐっと伸びをするように長髪の少女が現れた。頭に立派な角、下半身が竜。透き通った体で空を見上げ、大欠伸をする彼女が件の神様のようだった。
 前に進み出て丁重に雨のお礼を述べるのは正装の提灯職人だ。それに小さく頷き返した神様は数粒の小さな種子を差し出し、すぐにふわりと浮かび上がった。付き従うように提灯も空へ上り、やがて山の向こうへと消えていくのを見届けた会場内は拍手の海となるのだった。

 功労者として紹介されたイレギュラーズは、神様の軌跡が生んだ虹の下、感謝の声を浴びながら屋台を楽しむこととなる。よく味の染みたおでん、香ばしい焼き鳥に焼きとうもろこし、それからあまぁい苺飴。目一杯食べてに食べたり、自身の知る文化と比べたり、嬉し恥ずかし恋人達はあーんし合いましたとさ。めでたしめでたし!

成否

成功

状態異常

なし

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