シナリオ詳細
神様だって、大きくなりたい!
オープニング
●悲しいかな、生まれ持ったこの能力
「それでは、また次の祭りでお会いしましょう」
にっこりと微笑み去っていく女神の一人を見ながら、碧紗はため息をつく。
ふんわりと香る花の香り。
優しい微笑み。
ぷるりとした唇にたっぷりとした布の上からでもわかる豊かな胸とお尻。
「良いなぁ……」
「去年も同じセリフ言ってましたよね?」
碧紗を補佐する少年の姿をした使いの言葉に、碧紗は視線を逸らす。
「だって、毎年思うんだもん……!」
そう、碧紗は毎年祭りの後このセリフを言っている。それというのも、碧紗も女神の一人でありながら、見事なまでのぜっぺ……まない……少年体系だからだ! 隣に補佐役の使いが立つと、少年二人にしか見えない悲しさ!
見た目に気を使って可愛い服を着ても「女装した少年」扱いされ、かといって少年の服を着たら普通に「可愛い男の子」扱い。泣くぞ。
「私も、もっとぼんきゅっぼんになりたい!!!」
「いや、碧紗様は無理ですよ。何せ絶壁の神なんですから」
そう、碧紗は絶壁を司る神。とてもマイナー! 断崖絶壁とか有名なのに、それを司る神様がいるなんてみんな知らない。
だけど司る物が絶壁故にか、碧紗の胸はとても悲しい。外見だけは十代後半(をもう何年やっているか本人も覚えていない)なのに何時まで経っても胸は大きくならない。
ちなみに碧紗という名前も、本当は壁紗になるはずだったが、流石に女神にその漢字は、ということで碧紗になったという噂もあるほどだ。
「甘いわね。今年の私は一味違うわ!」
「はい?」
「食べると胸が大きくなるという果物の噂を調べたの! 後は取りに行くだけ!」
ドヤ顔を見せる碧紗に、使いは呆れを隠さない。
「碧紗様、お役目の地域から離れられないのにどうやって?」
その言葉に碧紗の嘆きが響いた。
●求)噂の果物取ってきてくれる人
ここは神様たちが住まう世界。
そこにいる神様の一人が、ある果物を欲しがりました。
お役目上土地から離れられない神様のために、誰か果物を取ってきてくれませんか?
「なんでもね、食べると胸が大きくなるっていう噂なんだって」
面白い果物だと笑うフェリーチェに、一部のイレギュラーズはそわそわとする。
「果物自体は森の奥のほうにあるけど、特に危険はないよ。あ、でも果物が生ってる辺りを縄張りにしてる妖に見つかると面倒だから気を付けてね。森を抜けるまで執拗に追いかけてくるんだって」
見つかったら倒すか逃げ切るかのどちらかしかないようだ。
「採ってきたら欲しがってる神様の所に持って行ってあげてね? 興味があれば、言えば一緒に食べられると思うよ」
さて、噂の真偽を確かめてみようか。
- 神様だって、大きくなりたい!完了
- NM名ゆーき
- 種別ライブノベル
- 難易度-
- 冒険終了日時2020年08月26日 22時10分
- 参加人数4/4人
- 相談4日
- 参加費100RC
参加者 : 4 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(4人)
リプレイ
●進め! 慎ましやか隊!!
「ぜっぺ……ぜっぺき……絶壁の神様!」
ふるふると震える『平らな胸族』フラン・ヴィラネル(p3p006816)の大きな目には涙が浮かんでいた。
目の前には絶壁、もとい碧紗がいる。
「きっと皆に乗り越えるべき壁をたくさん与えてきたすごい神様なんだよね!
ぼんきゅっぼんになりたい気持ち、凄く良くわかるよ!」
「分かってくれる!?」
「分かるよ!
おむねのところがきゅってして、そこからふわっとしたワンピース着たいもんね……! あたしが着ても筒だもん。泣いてないよ、うん……!」
マネキンが着ているのを見て、可愛いと思って買ったワンピース。
胸が強調されるとちょっと恥ずかしいかな。なんて思ってきてみたら、強調されるどころかすとん……。
泣いた。あの日は泣きながらやけ食いをした。
今は涙は浮かんでいるけど泣いてない。これは涙がこぼれ落ちているだけで泣いてないの。
「友よ……!!」
抱きしめ合うフランと碧紗。
二人の胸の間は……うん。隙間風が通り抜けていった。
だが通り抜けた隙間風はまた壁に当たって向きを変える。
「うぅ、わかる……わかるよ、その気持ち!」
壁が二人の言葉にうんうん頷く。見れば壁ではなく、『平らな胸族』炎堂 焔(p3p004727)のむ……胴体だった。
「大丈夫! ボク達が必ずその食べるとお胸が大きくなる果物を取ってくるからっ!」
「有難う……!!」
「だから、その……自分の分も採って来たら一緒に食べてもいいかな?」
「勿論だよ! みんなで一緒に食べよう!」
分かり合う碧紗と焔たち。そこにいる少女たちのお胸は皆ひん……ぜっぺ……慎ましやかだった。
狙ったわけではない。だが、碧紗の胸への思いに共感したのだろう。
そう、彼女たちは慎ましやか隊!
目指すはぼんきゅっぼん!
意気投合する三人を見ながら肩を竦めたのは『魅惑の魔剣』チェルシー・ミストルフィン(p3p007243)。
「男は胸が小さくてもいいって言ってくれる人が多いけれど、女としては自信になる胸の大きさは気になるわよね」
大胆な衣装に身を包んだチェルシーも、そっと自分の胸を見て目を伏せる。
魔剣の精霊とは言えチェルシーも女の子。巨乳とは言わなくても、それなりに大きなお胸に憧れる。
「こっちの世界の神様のお願いって、何だか可愛らしいんだねっ」
逆にくすくす笑っているのは『なぐるよ!』巡理 リイン(p3p000831)。
彼女の胸も慎ましやかだが、お役目をこなす為に生まれたためか、特に姿が変わる必要もなくずっと今の姿のまま。
(でも、元の世界からはぐれた身だし、少し位可愛く素敵になりたいって願っても罰は当たらない……よね?)
死神として生まれても、リインも女の子。
今より可愛く、女の子らしくなりたいという気持ちはいつだって胸の中に隠されている。
「お役目のせいで窮屈を強いられちゃうのは辛いだろうし、この位のお願い、きっちり要望通りに叶えてあげたいよね!」
「うん! 今回は神様が探してる果物……つまりきっと本物!
あたしと焔先輩はぺたん湖にぺちゃのパイ、色んな過去があったけど……そう、今度こそは! 本物!! このお洋服もぴったりになる!!!」
フランが着ているのはぺたん湖の時にみんなで買った大きい服。どこがとは言わないけど、きっと帰る時には良い感じになるに違いない!
お揃いの服を持ってきた焔も期待に胸を膨らませている。
帰る時は、きっと物理的に膨らんでいるに違いない!!
「……みんなもなんだか燃えてるわね」
「できれば2サイズ、ううん、贅沢言わずに1サイズでも大きくなって欲しいのはみんな一緒なのよ!」
そっと胸を手を当てるリインに、チェルシーも小さく頷く。
「そうね。きっとみんな同志。胸の大きさと一緒で心も同じ。
私達に胸が加われば世界に勝ったも同然よ!
必ずその果物採ってきて、大きな胸で帰りましょう!!」
勇ましく拳を握るチェルシーの言葉に、四人は拳を上げた。
「おー!」
●目標発見!
太陽の向きで帰るべき方向を確認したチェルシーは、アシストバッグと食料を持って進み始めた。
「ねーねー。甘い匂いのする桃? たゆんたゆんのやつ! どこー?」
途中に咲く花にフランが話しかければ、そよそよと葉が揺れて奥を示す。
暖かな日差しに心地良い気温。他愛ない話をしながら歩いていると、まるでピクニックのようだ。
「あ、なんだか甘い匂いがしない?」
風にのってやって来た甘い香りに、リインが目を閉じる。
「本当だ! なんだか甘い匂いがするね!」
真似をして匂いを嗅げば、焔の鼻にも甘い香りがはっきりと。
匂いに誘われるままに進んでいけば、濃い緑の中に、白い桃のような果物がたわわに実っている。
「これが……!」
ごくりとつばを飲み込んだのは誰だろう。じゅるりと涎がこぼれそうなのはフランだ。
「はっ! いけないよだれが!」
慌てて涎を拭うと、届く範囲の果物に手を伸ばす。
思ったよりも簡単に枝から離れた果実はずっしりと重い。
「まずは神様の分だね」
マントを脱いで果物を乗せていく。
「前の依頼では残念な結果だったみたいだけど、今回は大当たりだと信じて……!」
慎重に捥いでいくリインの隣で、焔も嬉しそうに果物を捥いでいく。
「いっぱい採って、みんなで大きくなろうね!」
山盛りになった果物を、マントで風呂敷のように担ぐフラン。
背中はずっしり重いけど、入りきらなかった分を置いていくつもりはない。
「そ、それは……!」
「ふふん」
誇らしげに笑うフランの胸元。かなり余裕のあったそこは、今果物でたゆん! と揺れていた。
●たゆんたゆんで追いかけっこ!
「走れー!!」
無事に果物を収穫出来たフランたちだが、森を半分ほど戻った時にそれは現れた。
一見すると白いクマ。
思わず「かわいいー!」と喜んだ四人だったが、その可愛いクマが怒りの形相で走り寄って来たので、喜ぶ余裕もなく全力ダッシュ!
必死になって走る四人! 追いかけるクマさん! おむねの果物がたゆんたゆんだ!
あともう少しで森の外なのに、クマの手がフランの背負ったマントに伸びる……!
「あぶなーい!」
思わず目を瞑った瞬間、チェルシーが森のクマさんもとい森の妖に横からタックルを食らわせた。
「チェルシーさん!」
「あたしもすぐに追いつくから先に行って!」
凛々しく魔剣を構えるチェルシーに、果物を持っていないリインも鎌を構える。
「この依頼は神様のお願いだけど、その果物はみんなの希望なの。無事に持ち帰りましょう!」
「リインさん……! ……待ってるから、すぐに来てね!」
涙を拭って走り出すフランと焔。
その二人を守るように立ったチェルシーとリインは、森の妖に向かって走り出した。
「……お帰りなさい。随分大量ですね」
息を切らして森から抜けた二人を待っていたのは、のんびりと本を読んでいた巧だった。
「うん。いっぱい採って来たよ。でも、チェルシーさんとリインさんが……!」
二人が心配で涙を浮かべるフランに、巧は首を傾げた。
「チェルシーさんとリインさんがどうかしました?」
「ボクたちを守るために、森の妖と……!」
果物を守るためとはいえ、二人を置いてきたことに焔も後悔しかない。
「……凄く元気そうですよ?」
暗いオーラを漂わせる二人に、巧は言いずらそうにそう口にした。
「え?」
「なんで二人は落ち込んでるの?」
「もしかして、私が負けたと思っているのでは?」
後ろから聞こえた声に振り返れば、そこには元気そうなチェルシーとリインの姿。
どうやら森の妖はあっさり負けたようだ。
「無事で良かったよー!」
思わず抱き着くと、胸に詰めていた果物が潰れるのは当然の事だろう。
●実食!
「これが……!」
剥かれた果物は見た目も香りも桃によく似ていた。
「い、いただきます!」
震える手で果物に手を伸ばす五人。
いつ胸が大きくなっても良いように、焔は用意していた服に着替えている。
舌で押しつぶされそうなほど柔らかな実は、香りから期待していた以上に甘い。
「美味しい……!」
「凄い甘い桃だね!」
口の中で蕩けるその美味さに、用意された果物はあっという間になくなってしまう。
「美味しかったねー!」
「うん! 後は……!」
そっと自分たちの胸元を見る五人。
そこにはたゆんたゆんに揺れるほどではないけれど、服の上からでも確かに分かる曲線が……!
「フランちゃん……!」
「焔ちゃん……!」
感動で手を取り合う二人。
リインとチェルシーも、女性らしく柔らかな線を描く胸に触れてはその柔らかな感触に感動している。
「今度こそ、お胸が大きくなったよー!」
「やったー!!!」
喜び歓喜する五人の少女たち。
それを見守っていた巧は、持っていた本を見てそっと目を逸らした。
『豊満の喜び』
そう書かれたページには、五人が食べた果物の効果が書かれていた。
曰く、一日一回、5分だけ胸を大きくする効果のあるびっくりアイテム。
そう、この成長はほんの一時の夢。
本当なら先に言うべきだったのだろう。だけどあまりにも期待に満ちた碧紗の眼差しに、手伝いにやってきてくれた四人の表情に何も言えなかったのだ。
喜びの時間はあっという間に過ぎていく、いや、5分しかないから本当にあっという間だ。
「あれ……?」
先ほどまであった柔らかな感触が消えたことに、五人の動きが止まった。
「……すみません、この実、5分しか効果がないんです……」
やっとの思いで絞りだした巧の言葉に、五人の目からハイライトが消える。ついでにきゅっとしわが寄る。それはまるで梅干のような虚無感。
「5分だけ……」
「そんな……」
「おむね……」
すかすかになった胸を抑える虚ろな眼差しが辛い。
「大きくなったけど……大きくならなかったー!!!」
切ないほどの少女たちの嘆きが、天まで響いた。
成否
成功
状態異常
なし
NMコメント
悲しいぐらい絶壁の女神様、碧紗のために、胸が大きくなるという噂の果物を取ってきてあげましょう!
うん、どう考えてもコメディだよね……!!
●成功条件
・噂の果物を持って帰る。
●森の妖
・森を縄張りとする妖。普段は森の中を巡回しています。
散歩ぐらいなら別に何もしませんが、森の恵みを奪おうとすると襲ってきます。
攻撃力は低いけど、凄くしつこい。
森の外には出ない。
●神様たち
・碧紗
絶壁の神様。
その役目通り見事な断崖絶壁。
夢はぼんきゅっぼん。
おうちで噂の果物を待っている。
・使いの少年
名前は巧。
碧紗の補佐で、こまごまとした雑用が得意。
森の外まで連れてきて、戻ってきたら碧紗の元に連れて行ってくれる。
女性のスタイルには「その人の良さがあるよ」とさらりと流す。
●その他
・果物は白い桃のような見た目で、甘い香りがします。故に森の妖も香りが移動したらわかるようで、採った後はさっさと帰りましょう!
・果物食べない場合でも、巧がお菓子を用意してくれます。
それでは、ぼんきゅっぼんを夢見る女神様のお手伝い、宜しく願いします!
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