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シナリオ詳細

翌在高校の恋愛事情~春の出会い編~

完了

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●春は出会いの季節とか恋の季節っていうよね
 ここは翌在(よくある)高校。全国からいろんな学生が集まってくるこの世界有数のマンモス校だ。
 この高校では勉学、運動、芸術などいろんな分野に秀でた子が入学し、卒業と共にそれぞれの夢へとまた旅立っていく。そんな高校なのだ。
 そして今は春。桜の花びらが舞う季節、この高校に新しく進学する2人の姿があった。

「今日からここに通うのかぁ」
 茶色い瞳に短い黒い髪。整った顔立ちに愛用のバッドを片手に近くなってきた高校へ視線をやりながら歩くのは七空・ユウト(ななそら・ゆうと)というピカピカの……というと語弊なありそうな気がするが翌在高校の新一年生だ。
 部活での活躍に目を付けられ入学を許されたユウトは新しい学校生活に心を躍らせながら足を進めていく。
「まさかユウトと同じ高校になるとは思わなかったなー。ユウトお馬鹿だし」
 なにおー!と怒るユウトを見てくすくす笑うのは七色・ヒカリ(なないろ・ひかり)である。ユウトの幼馴染であり成績優秀なヒカリは学力でこの高校への入学を許されていた。
 彼女のこげ茶色の髪は赤いシュシュでまとめられて揺れており、黒い瞳はユウトを映して優しい色を浮かべている。
 幼い頃からの腐れ縁でずーっと、本当にずーっと彼と一緒だったのだがまさか高校まで一緒になるとは思っていなかった。腐れ縁もここまで来ると怖いものを覚える。

 だが、ヒカリには、ユウトには、この高校生活で目標があった。
(今まではヒカリがいるせいか全然出会いがなかったけれど今度こそ……!)
(ずーっとユウトのお守りをしてきてたけどそろそろ私だって……!)

 それは恋人を作ること!!!

 世界有数のマンモス校ならば出会いなどいくらでもあるだろう。そこで甘酸っぱい青春を目指すのだ。
 二人の胸の内は希望で満ち溢れていた。

●って話だけで済めばよかったんだけどね
 今の話の中で自分たち介入する要素ある?って顔をしているイレギュラーズを前にして『ホライゾンシーカー』ポルックス・ジェミニには困ったような顔をして首を縦に振った。
「それがねー、ちゃんと彼らが思うみたいに出会いがあればいいんだけど……何の因果か今のところ出会いがゼロ! ゼロ確定なんだよね」
 酷いうえに哀れすぎる断言だった。
「で、それだけならよかったんだけど出会いがないのが巡り巡ってこの世界の崩壊を招きかねないんだよね」
 バタフライエフェクトっていうの?と小首をかしげる彼女を前にして、恋愛関係で世界を滅ぼさないで欲しい。と多くのイレギュラーズは思った。
 というより恋愛なら幼馴染同士くっつけばいいのでは?という声も上がるが、ポルックスは首を横に振る。
「残念だけど今のところ幼馴染としての距離が近すぎて全く恋愛対象として見てないんだよね。青い鳥はすぐそばにあるのにー」
 ともかく、とポルックスは続ける。
 このまま放置しては世界の崩壊に関わる。なので彼らに出会いを与えてしまおう!というのがポルックスの提案だった。
 確かに出会いはゼロだ。だがもし運命的な、印象に残る出会いがあれば、彼らの因果は良い方に転がり、最終的に世界を守ることに繋がるのだ。

 では、そのような出会いをする相手は誰か?相手を探すのか、適当な人に声をかけて出会えるように交渉や演出をするのか。
 次々あがる提案にポルックスはにっこり笑って首を横に振ってから、イレギュラーズを指さしてこういった。
「あなたたちが彼らにいい感じに出会ってあげて!」

NMコメント

 初めまして、心音マリと申します。
 初めてのライブノベルをお届けいたします!

 恋愛シナリオに見せかけたコメディ寄りのシナリオです。
 ざっくり言ってしまうとギャルゲーや乙女ゲー風な出会いを『出会いがほしい!』と夢見る彼らにしてあげてください。
 例えば校門付近で食パンくわえたまま遅刻遅刻~!ってしながらぶつかるだとか、落とし物を拾ってチャラく声をかけるだとか、図書室で騒いでいるのを冷たく厳しく一喝するだとか、同級生として隣の席に座って親しく声をかけるだとか。
 印象的で運命的な恋が始まりそうな雰囲気を持つ出会いを考えてみてください。
 出会いがあればいいので恋愛感情は一切なくて問題ありません。(彼らにとって)希望のある出会いが、大切なのです!
 また出会ったその後会うことがなくても『マンモス校だししょうがないなー』ぐらいで流されます。人が多いから仕方がないのです。

 そして性別によって対応する登場人物が変わります。
 性別が『男』の場合はヒカリ(女性)と『女』の場合はユウト(男性)と出会うこととなります。
 性別が『不明』もしくは『なし』の場合は指定があればその人と、そうでなければこちらで選んで出会わせていただきます。

・舞台について
 時期は春、4月から5月ごろまでを想像してください。
 場所は翌在(よくある)高校という3年制の超マンモス校です。
 全国からいろんな生徒がやってくるため制服ありますが服装は基本自由。
 広い中庭を有しており、学生に人気の購買もあります。
 というより言えば大抵何でもありますし生まれます。

・登場人物について
 七空・ユウト(ななそら・ゆうと):翌在高校の新一年生、男性です。スポーツ万能ですが勉強はからっきし。明るく人を引き付けるタイプです。幼馴染のヒカリには頭が上がりません。

 七色・ヒカリ(なないろ・ひかり):翌在高校の新一年生、女性です。読書が趣味で常に本を抱えています。頭がよく、しっかり者ですが幼馴染のユウトにだけは容赦がありません。

・イレギュラーズの立ち位置
 翌在高校の学生、となります。
 それ以上は学年や生徒会などの役職、部活、肩書などお好きにどうぞ。

 それでは皆様のご参加と素敵なプレイングをお待ちしております。

  • 翌在高校の恋愛事情~春の出会い編~完了
  • NM名心音マリ
  • 種別ライブノベル
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2020年08月23日 22時15分
  • 参加人数4/4人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(4人)

回言 世界(p3p007315)
狂言回し
エル・エ・ルーエ(p3p008216)
小さな願い
不動 狂歌(p3p008820)
斬竜刀
樒(p3p008846)
水鏡の茜

リプレイ

●放課後の教室にて
 新しい学校、新しいクラスメイト、そしてマンモス校となればいろんな人が集まるのは必然。だとしてもユウトの隣に座るクラスメイトは初日から大注目だった。
「ねぇ、エルさんのお母さんって有名な女優さんなんでしょ」
「お父さんは脚本家でしょ? ドラマ『雪と冬の物語』の!」
「普段は家だとどんな感じなの?」
「あ、あの……エルは……」
 有名な脚本家と女優を両親に持つという『ふゆのいろ』エル・エ・ルーエ(p3p008216)はユウトの隣の席だ。
 エルの周りにはクラスメイトだけでなく他のクラスからもやってきた人でいっぱい。次々投げかけられる言葉に彼女は埋もれているようだった。
 ちらとユウトが視線を向けると困ったような瞳のエルと目が合ったような気がした。
 それだけだった。次の日からエルは小難しそうな本を読みふけるふりをして質問攻めから自衛を始めたからだ。

 ある日の放課後、エルは廊下を走っていた。いつも読んでいる本をうっかり教室に忘れてきてしまったのだ。
 そのままにしてもよかったのだが話の続きが気になる。帰るのが遅くなったところで家に両親はいない。咎める人は誰もいないのだから。
 胸の内を占める寂しさを感じながら教室の扉を開けると思いがけない人物がいた。
「……七空、さん?」
「あれ? エルさんだっけ。どうしたの?」
 誰もいないはずの教室に一人、ユウトが座って机の上の紙とにらめっこをしていたのだ。
「エルは本を取りに……七空さんは何をしているのですか?」
「あー、俺はテストの成績が酷いからって補習を」
 ものすごく気まずそうな顔をするユウト。自分の席に本を取りに行き、ちらと彼の机を上を見ればなるほど、真っ白な課題が鎮座していた。
 一瞬の逡巡の後、エルは自分の椅子を動かしてユウトの隣に座る。
「えっ?」
「教えてあげます。このままだと夜になっちゃいますから」
 にこりとエルは笑って見せる。そして自分のカバンから教科書を出して課題を丁寧に教え始めたのだった。

 次の日、エルは一人教室へと向かっていた。と、別のクラスの集団に呼び止められた。また質問攻めかと身をすくめたエルへ思いがけない言葉が飛び込んでくる。
「あ、エルさん、さっき先生が呼んでたから早く教室いった方がいいんじゃない?」
「七空さん……はい、皆さんまた今度」
 急いで集団から抜け出して教室へと急ぐ。すれ違いざまにユウトはウインクをしてきた。教室に入っても先生はいない、どうやら助けてくれたらしい。
「七空さん、ありがとうございます」
 小さく呟いて、また勉強を教えてあげようと、そしてこの関係が1年間続くようにエルは思うのであった。

●通り雨は出会いの香り
 高校からの帰り道、突然の雨に不動 狂歌(p3p008820)は走ることを強制されていた。
「今日は晴れじゃなかったのかよ」
 天気予報では一日晴れ、過ごしやすい日などと言っていたものだが次からは鵜呑みにするまいと誓う。
 走りながら雨宿りできる場所を探していると公園の中に屋根付きのベンチがあることを思い出した。とりあえずそこで止むまで待とう。
「すまねぇ、邪魔するぞ」
 走り込んだ公園の屋根付きベンチ。先客の影が見えたので声をかけながら入り込む。部活で使っているタオルで軽くふきながら視線を動かせばやはり先客がいた。せっかくなので声をかけてみる。
「俺は翌在高校の三年生、不動狂歌。アンタは?」
「えっ、翌在高校の一年生で七空ユウトです……」
 先輩だったんだ……とは小さな呟き。
 そしてどうしたことか、答えた後でユウトはそっぽを向いてしまう。その頬は赤い。
「先輩に対していい度胸じゃないか」
「いっ、いやそういうわけじゃ……!」
 妙な態度が気に入らないので逸らされた顔を掴んで無理やり向けてやる。目線が困ったように泳いで泳いで、そしてさらに顔が赤くなった。
 何を見ているのかと思えば視線の先は自分の顔ではなく少し下側にあるようで、つまりどういうことかというと……雨でぬれた制服が透けてその下にあるものが見えていたのだ。
 といっても透けて見えたところで恥ずかしくないタイプのものを付けている。だから気にすることはないのだが、こうも反応されるとさすがに照れる。
「そんなに気になるのなら触ってみるか?」
 照れ隠しに胸を寄せて迫ってやれば、ユウトは「えっ? いや、え? あの」などと言葉にならない声しか出せない。
 ひとしきり楽しんだので「冗談だよ」と解放してやる。
「あ、そうですよね……」
 困ってたくせに冗談だといえば明らかに落ち込んでるもんだからわからない。
 ただ落ち込まれるのも少しばかし後味が悪い。
「じゃあ、もう一度会えたらデートしてやるよ」
「ほんとですか!!!」
 仕方ないなと続けた言葉にユウトの顔がガバっと上がって明らかに嬉しそうなオーラを出している。単純だが、悪くない。
 そんな様子にひとしきり笑っていれば気づいたら雨はやんでいた。
「じゃあなユウト」
 最後に一言とウインクを残して狂歌は走り去ったのだった。どこかぼーっとしたユウトを残して。

●印象は大事なんだよ!
「おわっと!?」
「きゃっ!?」
 廊下の曲がり角で『貧乏籤』回言 世界(p3p007315)は曲がってこようとした七色ヒカリと軽くぶつかっていた。
 ここで伝えておきたいのだが、世界がヒカリとぶつかるのは本日三度目である。
 もう一度、本日三度目である。もちろん世界にそのつもりはない。
(一体どういうことだ……)
 世界としては軽くぶつかって終わらせるつもりだったのだ。だから朝、登校中のヒカリに怪我させないように気を付けながら軽くぶつかった。
 ラブコメ的展開?いやいや現実的に考えたら無理がある。そもそも自分のキャラじゃない。
 ぶつかるなんて単調だが王道、それ故に間違いはない。
 だからこれで終わったと思っていたのだが……世界(この場合は世界本人ではない)の意志か、出会いがほしい二人の力なのか、さっぱりわからないがもうちょっと印象付けないと繰り返すことになりそうだ。
(面倒だが仕方ない、もう少しちゃんと彼女に関わってみるか)
 溜息は心の中に押し隠して、先の二回では謝って済ましていたところにさらに言葉を紡ぐ。
「すまない、今日はお互い良くぶつかるな」
「で、ですね。すみません……私もよく前を見てなくて……」
 ちらと見やれば本が数冊抱えられている。これに気を取られてぶつかったのだろう。
「読書が好きなようなのは結構だが前方注意……っとこれはお互い様だな」
「あはは、そうですね。気を付けます」
 和やかな会話。同じ日に三度もぶつかれば多少なりとも思うところはあるのだろう。
 ──キーンコーンカーンコーン。
 不意にチャイムが響く。
「ああ、そうだ。用事があるんだった。じゃあ俺はこれで」
「はい、すみませんでした」
 ぺこっと頭を下げるヒカリを後に、世界は足早に歩いて去って行く。その時、ハンカチを落としていくことを忘れない。
「あ、ハンカチ……あの人のかな? 名前、聞きそびれちゃった」
 そしてハンカチは目論見通りヒカリの手に渡り、名も知らぬ相手の落とし物として握られることになったのだった。

●穏やかな昼食
(はあ、出会いがないと世界が滅ぶ……不思議な物語もあるのですね)
 はむ、とあんパンを口に運びながら目を閉じて『水鏡の茜』樒(p3p008846)は屋上で一人考える。
 幼馴染との関係が進展するのが一番いいと思うのだが、難しいのは何となくわかる気がする。近しい関係というのは近すぎてなかなか分からないものなのだ。
 もう一口パンを口に運んで、日差しと風に身を任せて樒はその時をそっと待つ。

「あれ、こんなところで何をしてるんですか?」
 足音と声に目を開ける。明るい声から察するに女子生徒であるヒカリの方だろう。
 そんな思考を出すことなく樒は微笑んだ。
「私は、ここでお昼ごはんを……」
「目を閉じてましたけど寝てないですよね?」
「そうですね……あたたかくて、つい、という事です」
「寝てたんですね……」
 食べかけのパンを見せれば呆れたような困ったような声。どうコメントしたものかといったところだろう。
「あなたは……見ない方ですが、新入生の方ですか?」
「あ、はい。一年生の七色ヒカリっていいます」
「そうですか。私は二年生の樒です」
 よければお隣どうぞ、とぽふぽふして誘いながら樒は残っていたパンを再度口に運ぶ。
 ちょんと誘われるまま座ったヒカリは小さな弁当箱を取り出す。
「せっかくですから先輩とお昼ご一緒してもいいですか?」
「どうぞ。ならせっかくなら私の話し相手となってください」
 このままだとまた眠ってしまいそうですから、と言えばこらえきれなくなったようにヒカリは吹き出した。
 もぐもぐとお昼をしながらたわいない話をする。
 ヒカリはまだ入学したばかりで人の多さと教室の場所にまだ慣れないだとか、部活をどうするか決めかねてるだとか。
 樒は本が好きなら文芸部はどうかとアドバイスをしたり、迷ったら気軽に近くの生徒に声をかけてみたらと言う。大半が迷った経験があるから新入生には優しいのだと。
 パンと弁当箱の中身がなくなっても話は続いたが、終わりを告げるように予鈴が鳴る。
「もうこんな時間ですか。そろそろ行かなくては午後の授業が始まりますよ」
「わわ、そうですね。すっかり先輩と話すのに夢中になっちゃいました」
 教室に戻るよう促せばヒカリは慌てて弁当箱を片づけて立ち上がる。そんな様子に樒は笑みを浮かべた。
 自分はたまにここにいるからまた会えるだろう、戻っていく彼女に告げればヒカリは笑って答えた。
「でしたら樒先輩に会うためにまた私もここに来ますね!」
 ヒカリを見送ってから、これでよかったのだろうかと樒は空を見上げたのだった。

成否

成功

状態異常

なし

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