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シナリオ詳細

春先はまんじゅうひよこ狩りの季節

完了

参加者 : 10 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●まんじゅうひよこ
 君はまんじゅうひよこを知っているか。
 つるっとした雛のような形をしたそれは、甘い皮に覆われ割ればほっくりとした白餡が詰まっている。
 観光地のお土産としても人気でバルツァーレク領の港町では箱詰めされたギフト商品を頻繁に見かけることだろう。
 そんなまんじゅうひよこ狩りを専門とする猟師、ピヨ子氏に話を聞いてみた。

 ――ひよこ狩りとは?

「人生ぃ……ですかね。僕がまんじゅうひよこを狩る。ひよこを食べる人が笑顔になる。世の中がちょっとは良くなる。
 僕の人生は、そんなふうに社会の歯車として組み込まれてるんじゃないかって思うときがあります。
 見てください。まんじゅうひよこが卵を暖めている」
 ピヨ子氏の視線の先。
 枝を集めて作られた巣の中で、親まんじゅうがお腹の下に卵をおさめていた。
 親と、子。
 やはりというべきかそっくりな姿をした彼らは今、羽化を待っている。
「親まんじゅうは4月に卵を産んで、数ヶ月で羽化させます。
 まんじゅうひよこは『直射日光、高温多湿を避け、涼しいところで保存』というのが基本です。卵も同じなんですね」
 不思議な光景だ。
 親まんじゅうは、自分と殆ど同じような形の卵を大事に温め、羽化の時を待っている。
 羽化した雛まんじゅうは数年をかけて成長し、やがて自らも卵を産むようになるのだ。
 だがしかし、羽化する前に親まんじゅうから長期間離された卵は羽化への過程をやめ、食用のまんじゅうへと変わる。
 そのメカニズムはきわめて神秘的であり、命を頂くことへの尊さと子の大切さを教えてくれる。それゆえにお土産として人気だ。
「僕らが狩るのはあくまで卵です。老いて卵を産めなくなった親まんじゅうをしめることはあっても、卵を産む親まんじゅうを殺すことはありえません。
 それに、卵をとりすぎてもいけない。未来に卵を産む存在を消すことになってしまいますからね。
 さあ、行きましょう」
 竹籠を持ったピヨ子氏は、親まんじゅうが離れた隙をうかがってそっと巣へと近づいていく。
 だが我々取材班は忘れていた。
「親まんじゅうに気づかれてはいけません。彼らは卵を守る時は非常に獰猛で、は、は――ハックシュン!!」
 そう、ピヨ子氏が昨今花粉症にかかったという事実を。

●ひよこ狩り代行業
「そんなわけで、ひよこ狩りを代行して欲しいんですけど……」
 全身包帯まみれにしたピヨ子氏が、病院のベッドでそんな風に語った。
 ベッドを囲むのは、依頼されて集まったギルド・ローレットのメンバーたちだ。
「狩りのしかたや、簡単なコツは教えます。けど僕のやり方は変わっているから、自分たちなりにやり方を見つけるのが一番いいんじゃないかなあ」
 竹籠を引き寄せるピヨ子氏。
「とりあえず、納品が決まってる30個以上を目標に集めてくれ。
 狩りには時間がかかると思うから、夜中に森でキャンプをはることにもなると思う。
 お泊まりの用意をしておいてね」
 ベッドから傷む身体を起こし、ピヨ子氏は頭をかいた。
「急なピンチヒッターになってしまってすまない。けれど、これを食べる皆の笑顔を守るために、力を貸して欲しいんだ。おねがいします」

GMコメント


【オーダー】
 成功条件:まんじゅうひよこの卵を30個以上獲得する

 まんじゅうひよこが沢山生息するという森に入り、巣から卵を盗み出します。
 一つの巣には5個ほどの卵があるとされていますが、ピヨ子氏がいうには『巣から1つだけいただくのが基本』という話です。
 巣は一般的に木の枝に設置されており、採取の際には高所での作業を要するでしょう。

 また採取中に親まんじゅうが気づいた場合、もんのすごい勢いで飛んできてとてつもない打撃を与えてきます。
 ピヨ子氏が重傷をおったことからも分かるように、戦闘(ちからづく)でどうにかするのはやめておいたほうがいいでしょう。

●教わったテクニック
 ピヨ子氏からテクニックを教わってはいますが……親まんじゅうが餌をとるため巣を離れている隙にきわめて高度な忍び歩きと音も無くするする登る木登り術、そして卵を獲得して素早く撤退する技など、色々非戦スキルを要するテクニックです。マネするのはとても難しいでしょう。
 当人のいうように、自分たちなりのやり方を見つけるのが一番の近道です。

 主な手順としては
①まんじゅうひよこの巣をみつける:泣き声や臭い、痕跡などをたどって見つけましょう。非戦スキルの有無とは別に工夫があると効率がアップします。
②巣を観察する:じっと息を潜めて親まんじゅうが離れるのを待ちます
③卵を採取する:巣に近づき卵を採取します。親まんじゅうは割と近くにいるので、こっそり奪うか素早く奪うか、いっそ味方を犠牲(めいよあるふしょうしゃ)にするか、どのみち工夫が必要です。

※補足
 当依頼内では、音や気配を殺すには非戦スキルを要するものとします。
 飛行に関しても無音化するには相応の説得力を持たせてください。

●キャンプ
 まんじゅうひよこ狩りは気の長い作業です。
 夜間はあまりお勧めできないので、日が落ちたらキャンプをはりましょう。
 森キャンです。比較的ゆるいやつです。
 翌朝になったら活動再開。
 基本的に一泊二日くらいを想定しておいてください。

【アドリブ度】
 ロールプレイをよりお楽しみいただくため、リプレイにはキャラクターのアドリブ描写を用いることがございます。
 プレイングやステータスシートに『アドリブ歓迎』『アドリブなし』といった形でお書きくだされば、度合いに応じて対応いたします。ぜひぜひご利用くださいませ。

  • 春先はまんじゅうひよこ狩りの季節完了
  • GM名黒筆墨汁
  • 種別通常
  • 難易度EASY
  • 冒険終了日時2018年05月02日 21時15分
  • 参加人数10/10人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 10 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(10人)

ノリア・ソーリア(p3p000062)
半透明の人魚
レンジー(p3p000130)
帽子の中に夢が詰まってる
フニクリ=フニクラ(p3p000270)
歪んだ杓子定規
トリーネ=セイントバード(p3p000957)
飛んだにわとり
パティ・ポップ(p3p001367)
ドブネズミ行進曲
エリザベス=桔梗院=ラブクラフト(p3p001774)
特異運命座標
徨影 彌夜(p3p002745)
未熟なクノイチ
アベル(p3p003719)
失楽園
レスト・リゾート(p3p003959)
にゃんこツアーコンダクター
ヨダカ=アドリ(p3p004604)
星目指し墜ちる鳥は

リプレイ

●おみやげに最適
 風になる木々の葉。遠くを白い鳥が飛んでいる。
「――はい」
 眼前に翳すように高くあげた手のひらには、いっこのひよこちゃん……否、まんじゅうひよこが一個乗っていた。
 つやっとした、そしてふかっとした表面構造。
 丸みをおび、僅かについた焼き色。
 どこか甘い香り。
 『私は考える葦ではありえない』フニクリ=フニクラ(p3p000270)がガラス細工のような目に、その全容を写している。
「普段何気なく食べてるお饅頭にこんな秘密があったとはね。世の中知らないことで一杯だ。実に興味深い」
「知らないというか……見てはいけないお菓子業界の裏側に、潜入している気分ですの」
 『半透明の人魚』ノリア・ソーリア(p3p000062)が正面に回り込んでまんじゅうひよこをつついた。
 幻想港町のよくお土産が売ってるあたりで何気なく見かけるアイテムだが、よもやこのまま生きて動いていたとは。
 ノリアは空中をそれこそ魚のようにふよふよと右へ左へ泳ぎ、覗き込むようにまんじゅうひよこ(近所のパン屋で購入)を眺めた。
 横に立っていた『星目指し墜ちる鳥』ヨダカ=アドリ(p3p004604)がちらりとその様子を見て、なんとも複雑な表情をした。
「まんじゅうひよこって、そんな生き物だったんだねェ……」
 改めてポケットに手を入れ、折りたたんだ紙を取り出した。
 ピヨ子氏から『森の地図をください』と言って貰ってきたものである。
 なんか『こっからここまで全部森!』みたいな落書きだった。測量という言葉すら知らないかのような大雑把さに目を瞑り、くしゃっとやってポケットに戻す。
「その分だと、自力でマッピングする必要がありそうだね?」
 『大賢者』レンジー(p3p000130)が方位磁石でもって帽子のつばを持ち上げた。
 レンジーいわく、地図というのは本来とっても貴重で高度なアイテムなのだという。測量技術とか地形変動とか情報の価値と速度とかこう、なんか、難しい色々を語ったが、要するに森の中のものは自力で探るしかないとういハナシである。
 似たような話で、レンジーがまんじゅうひよこの資料を漁って見たところ『あまくてうまい』くらいのことしか書いていなかった。生態を調べようとした人はおらんのか。この辺の学者ってパトロン少なそうだしね、と遠い目をしてレンジーが語ったのは昨日のこと。
 しかしこんな言葉もある。
 なければつくればいいじゃない。
「まんじゅうひよこ。ひよこの文字が入ってるなんて運命的だわっ!」
 コケーッ! といって両手(はね)を広げる『聖なるトリ』トリーネ=セイントバード(p3p000957)。
 もうみるからに鶏だった。
 鶏が二羽いた。
 二羽目は誰かって?
「私です!」
 『特異運命座標』エリザベス=桔梗院=ラブクラフト(p3p001774)がスギャーンという効果音を背負って(看板に書いて)立っていた。
 その辺の布をめっちゃ縫い合わせて作ったらしい『まんじゅうひよこぐるみ』というきぐるみを装着し、すごくシリアスかつ芸術的な顔をしていた。ちなみにお腹の所から顔が出ている。
「まんじゅうひよこ。危険な相手でございますわね。油断していると口の中の水分を全て奪われ、もがき苦しみながら血糖値を上昇させられるとか……フフ、こんなこともあろうかと、着ぐるみを自作してきたのです。くるっぽー! くるっぽー!」
「うん」
「はい……」
 実物のまんじゅうひよこを見るフニクリたち。
 まんじゅうひよこぐるみ(ウィズエリザベス)を見るノリアたち。
「まず……まんじゅうひよこはニワトリじゃない」
「なんと!?」
 ズギャーンの看板が増えた。

「ここにはたまに変わり種のがあるでちね。卵が、ちょのまま、まんじゅうになるんでちか。おもちろいでち」
 そんな風に語る『ドブネズミ行進曲』パティ・ポップ(p3p001367)。
 きわめて複雑な顔をしていた『未熟なクノイチ』徨影 彌夜(p3p002745)がこっくりと頷いた。
「とゆーかこの世界の食べ物動きすぎじゃないであります? オサシミといいまんじゅうといい」
「今更じゃないかな」
 『破片作り』アベル(p3p003719)がガスマスク越しにふこーふこーと呼吸をしている。
 どころか近くの切り株に腰掛けて足を組んでいる。
 彼の横にそっくりな分身が生まれ、『きをつけ』の姿勢で待機した。
「俺は皆に指示を出す役をやらせてもらおうかな?(出来ることなら楽して成果を上げたいってのが本音サ)」
「いま心の声が聞こえたような」
「気のせいじゃないかな」
「みんな準備万端ね~」
 日傘をさしてゆったり歩いてきた『夢色観光旅行』レスト・リゾート(p3p003959)が、近くのリスさんを傘の上にのっけた。
「お客さんの笑顔で世の中をちょっと良くする為に、みんなで頑張っちゃいましょうかあ~。えいえいお~」
 おー、と言ってグーにした手をあげるレスト、パティ、彌夜、アベル(分身)、ジークフリート(リス)。
 こうして、イレギュラーズたちによるまんじゅうひよこがりが始まった。

●まんじゅうひよこがり
 方位磁石をぶらさげて、レンジーは森の中を歩いていた。
「まんじゅうひよこ狩りを行なう人は少なかったのかな。マニュアル化がまるでされていないね」
「口伝のみで継承される職業というものはどこにでもある」
 フニクリはその横を一緒に歩きながら、たまにかがんでは草を観察していた。
「『直射日光、高温多湿を避け、涼しいところで保存』」
「まんじゅうひよこの保存方法……ああ」
 ちらりと顔を見合わせるレンジーとフニクリ。
「あの、二人のなかだけで納得するの待って欲しいであります。某、全然話についていけてないであります」
 どうどう、のポーズで手を翳す彌夜。
 レンジーとフニクリは考え方やテンポが近いせいか会話が弾むらしく、放っておくと二人だけの世界に入っていった。
 対して、割と直感で生きている彌夜は置いていかれるばかりである。
 アベル(分身)はしゅこーしゅこーって息してるだけで全然会話に入ってこないし。
「この分身殿、さっきから呼吸しかしてないんでありますが……」
「そもそも呼吸が必要なのかな」
「物品の機能が複製されるとは考えづらいから音声と質感だけまねていると見たね」
「ただその場合空気の流動は起こるわけで」
「ストップ! ストップ・ザ・インテリジェンストークであります!」
 レンジーたちはすまないすまないと手を翳し、その手をまんま木の上へと向けた。
「見つけたよ」
「日陰になり風通しのよい場所に巣があると踏んだんだ」
「…………」
 アベルが『おつかれさまです。じゃあ卵の確保はたのみましたよ』と木の上を指さした。
「分身殿は気楽そうでありま――分身じゃない!?」
 いつのまにか本物と入れ替わっていたアベルを二度見する彌夜。
「さあ早く。親まんじゅうが戻ってくるよ」
「はっ、了解であります!」
 彌夜は仲間たちに距離をとらせると、ぬきあしさしあしで気に近づき、気配を殺しながら木をするする登っていった。
 これでも結構音を殺せているほうだが、木登りの際にはどうしてもがさがさって音が鳴ってしまう。ひるんでいてもしょうが無いので頑張って巣へとたどり着き、そっと卵を拝借――した途端。
「ピヨーーーーーーーーッ!!」
 森のかなたから猛スピードでまんじゅうひよこの親……もとい親まんじゅうがダッシュしてきた。
 『あっ飛ばないんだ』と思ったのもつかの間、彌夜は卵を掴んで勢いよく飛び降りた。
「皆逃げ――ハッ!」
 レンジーとフニクリはもういなかった。
 茂みからこちらを観察していたアベルは既に分身と入れ替わっており、親まんじゅうが触れた途端溶けるように消えた。
 というか、アベル(分身)を突き破って親まんじゅうがジェノサイドまんじゅうクラッシャーを仕掛けてきた。
「うぎゃー! お助けー! でありまみぎゅー!?」
 脇腹にすごくイイのをくらって、彌夜は滅多にあげない声をあげた。

 ぎゃーす、という悲鳴が森のどっかから聞こえてくる。
 ヨダカはちょっとだけ嫌な予感がよぎったが、一旦無視して捜索を続けることにした。
 闇雲に捜索するというより、親まんじゅうがとってくるという『エサ』に目星をつけて捜索をしたのが役に立った。
 その辺の小さい木の実や、木の幹からちょこちょこと生えている極小のキノコを加えて親まんじゅうが移動している姿が観測できたのだ。
「こういうのを食べてるんだねェ……というか、なんだろう、コレ?」
 親まんじゅうが運んでいた木の実を手に取る。
 六角形の物体である。香りはチョコレートパイに似ていて、触った感じはチョコレートパイに似ていて、囓った感じ大体チョコレートパイだった。
「チョコレートパイの実ですわこれ」
 口いっぱいに実(?)を頬張ってもっふもっふ喋るエリザベス(インザぬいぐるみ)。
「じゃあ、こっちのキノコは……」
「山のきのこですわね」
「だよねェ」
 深く触れないことにした。
「見てください、ここに里のたけの――」
「触れないようにしたのになァ」
 ノリアが親まんじゅうの餌を両手いっぱいにして持ってきた所で、はたとヨダカは何かに気づいた。
 見上げた先にまんじゅうひよこの巣があった。
 見つけてしまえばこっちのものだ。
 親まんじゅうが戻ってくる前に卵を獲得せばならぬ。
「わたしが取ってきますの。こっそり高く泳ぐ(飛ぶ)すべを覚えましたの」
 ノリアはそういうと、まるで綿ぼこりが飛ぶようにふわふわと飛び上がっていく。
 当然のように枝から離れて飛ぶので木登りの際のがさがさ音もない、とっても素敵な獲得方法であった。
 あとは――。
「ピヨーーーーー!!」
 巣に手を出したことに気づいた親まんじゅうが少し遅れて走ってくる。
 ノリアは空へ向かって逃げ出していく。
 ヨダカはここぞとばかりに作って置いた式神を配置してみたがまさかの瞬殺。
 そのままハイパーまんじゅうバードキックを繰り出してくるので、一目散に逃走した。
 エリザベスがキリッとした顔で滑り込む。
「ここは任せてもらいますわ」
「えっ」
「わたくしはまんじゅうひよこ……。誰がなんと言おうとまんじゅうひよこですわ……」
 すごい自己暗示をかけると、遅いかかってくる親まんじゅうにフレンドリーさをアピールしはじめた。
「くるっぽー。くるっぽー。まんじゅう、まい、ふれんグフゥ!?」
 ハイパーまんじゅうバードキックが炸裂した。

 遠くから悲鳴が聞こえる。
「これは、急がなくっちゃならないわね……」
 トリーネがシリアスな顔(?)で空を見上げると、跨がっていたわんこの背をつついた。
「こけ!」
「わん!」
「こけこけ!」
「わんわん!」
 謎の会話をしてから、シリアスな顔(?)で振り返る。
「まんじゅうひよこのにおいが近いらしいわ」
「分かるのね~」
 レストはおっとりと日傘をさして歩いている。日傘の上ではリス(命名ジークフリート)がチョコレートパイの実をひたすらほっぺに詰め込んでいる。
 暫く進んでいくと、わんこがぴたりと足を止めた。
「ここよ!」
 カッと木の上を見るトリーネ。
 同じくレストとジークフリートが見上げるが、なかなか高い所にあった。
 親まんじゅうはエサをとりに出かけているところらしい。
「これじゃあジークフリートちゃんでは登り切れないかもしれないわね~」
「まー、音を立てずに卵取りなら、あちしも、できるでちけどね」
 パティが気配をころしながら木に近づき、同じく気配を殺しながら気を登っていく。やっぱり枝のがさがさ音はちょっとはしちゃうものだが、親まんじゅうが即座に気づくようなこともなく、巣へとたどり着くことが出来た。
「これで、いいでちね」
 卵をゲットし、木から飛び降りる。
 すると、親まんじゅうが猛烈な勢いで走ってきた。
「ピヨー! ピヨー!」
「あら~。案外早く戻ってきたわね~」
 なんて言いながらダッシュで逃げ出すレスト。くるくる回る日傘。日傘の上で走るジークフリート(リス)、その後ろ一列になって走るぴよエールズ(折角だから呼んだ子ら)。
「ハッ、トリーネちゃんが……!」
「ここは任せて先に行くのよ! 大丈夫、すぐに追いつくわ!」
 結構大丈夫じゃない時の台詞を言って、トリーネが両腕(はね)を広げた。
「かかってきなさい、親まんじゅう! こけー!」
 相手に近い所で大声で鳴くことで指向性を持った衝撃波を対象に向かって飛ば――
「ぐわー!?」

●キャンプファイヤー
「ここを、キャンプ地とする!」
 ヨダカが『一度言ってみたかったんだよねェ』と満足げにテントを設置していく。
 フニクリやレストが自然知識や自然会話を駆使してあちこちから集めた木の実やきのこやたけのこを籠いっぱいにしてやってきた。
 籠の中でつまみ食いをするリス(ジークフリート)とぴよマスコット。
 彌夜が腕まくりをした。
「某野戦料理なら少々心得があるでありますよ! 少々でありますが! まずは食材を……なんでありますかこれ」
 チョコレートの香りがはげしい籠に困惑する彌夜。
「おばさん、先に火をつけるわね~」
「わたしはお茶をふるまおう」
「私は……手伝えることがないわ!?」
 トリーネが存在意義に悩みつつ、自分の中で『私はカンテラスタンド』という折り合いをつけたのか、頭の上にカンテラを乗っけてリスとひよことわんこに囲まれていた。
 やがてキャンプファイヤーを囲むイレギュラーズたち。
 最初は乾燥するのを嫌がっていたノリアも、仲間に誘われて(変化状態で)火を囲んでいる。
「このあたり、まだ夜は寒いんですのね」
 自然と会話は自分たちの話になり、ノリアは海の中の綺麗な世界の話を語った。
 お返しにとパティが。
「あちし達って、ここに来る前は、魔王討伐の旅に出てて、ちょれで、時たま森で一晩明かすこともあったでちね。でも、森って、魔物も多いでちから、かなり危険でちたよ。ちょーでなくても、獰猛な野生動物も多かったでちからね。まー、空牙(黒豹)がいれば、大抵の動物は逃げるでちけどね」
 といった具合に、もといた世界でのことを語ったりした。
 語り合いはいつまでも続くかとおもえたが、まんじゅうひよこ狩りで疲れたのか皆しだいに眠りにつくようになっていく。
 アベルは『森の中から皆を見守っておくサ』といって寝ずの番を買って出た。
「ああ、皆を見守ると行っても覗きとかしないですよ? 本当だよ、たぶん……」
「…………」
「きっと……」
「…………」
 シリアスな顔をしたエリザベス(ぬいぐるみから顔だけだした状態)がおかしなねじれ方をしたままこちらを見ていた。
 両目がカッと開いたまま瞬き一つしないので寝てるのかなと思ったが、どうやら普通に起きているらしい。
「魔物を警戒しているだけで他意はございません」
 って言ってるし。
 結局二人は夜通したがいに見つめ合って過ごした。
 翌朝、トリーネの爽やかな『こけこっこー!』の声で皆が目を覚ますまで。

 こんな具合に、イレギュラーズたちは二日目のまんじゅうひよこ狩りを行なった。
 一日目に要領を掴んだのか、皆スムーズに、たまにちょっとアクロバティックなこともしつつ、なんやかんやで目標の個数をゲットすることができた。
 そんなこんなで帰りには籠いっぱいのまんじゅうひよこを抱え、ちょっとだけメンバーと仲良くなりつつ、森を出たのであった。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 おかえりなさいませ。
 まんじゅうひよこ、絶賛発売中。おみやげお歳暮お中元にどうぞ。

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