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シナリオ詳細

ヴァンヴァニルに死を。灰色の思い出に炎を。

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●遠い遠い雪景色が、セピア色に凍ったままだ
 かつて少年には夢があった。
 冬には身体が半分埋まってしまうほどに雪が降り、限りある家畜と森の中で年を越すので精一杯の村を出て行くことだ。
 母と姉と、力強い父。凍った海を歩いて渡ったとも、百万の軍隊をひとりで屠ったともいわれる父の誇張されきった伝説を、少年は信じていたのだ。
 何より彼が信じたのは、父がはるか海の先にあると語った常春の国の伝説である。
『いいかい、ベルカイル。ノルダインは誇り高く戦って死ねば神の園に招かれ一生酒と肉にありついて暮らすというが……なあに。その必要は無い。一年中暖かく毎日果実酒と山羊肉を頬張って暮らせる国が海の先にある。俺はそこに暮らしていたんだ』
 そんな父の伝説は。

 ――村と一緒に焼けて消えた。

●復讐のベルカイル
 鉄帝の北東、ヴィーザル地方には三つの部族があった。ノルダイン、ハイエスタ、シルヴァンス。彼らは鉄帝国の侵略に対し『連合王国ノーザン・キングス』を主張し国家への反抗を始めた。
 鉄帝国はこの状態で併合したとて実りの薄い地域にメリットもまた薄く、かといって放置すれば国防問題になりかねぬとしてなかば放置状態となり、この戦火にさらされた北鉄帝の領主たちはローレットへの依頼という形で防衛力を確保することにした。
「今回の依頼は、ヴァンヴァニルというノルダインの海賊たちを撃滅することだよ」
 場所はヴィーザル地方の境にある酒場。『黒猫の』ショウ(p3n000005)は金属のカップをテーブルに置いて、なんとも苦々しい様子で語った。
「彼らはヴィーザル地方の海岸沿いで活動していて、集落を渡り歩いては略奪を続けている。
 略奪……ってわかるかな。殺して奪って全部平らげて、あとはそこに捨てていく。村には人も食料も金品も、全て奪われ廃墟だけが残される。
 たまたま村を離れていた子供でもいれば……例外だろうけどね」
 そうして紹介されたのは、ひどく憔悴しきった少年だった。
 身体は痩せ細り、しかし目だけは野獣のごとくギラギラとしている。
「彼の村はヴァンヴァニルによる略奪をうけたけど、彼だけは生き残った。
 それからはあらゆる手を使って生き延びて、助けが来るのを待ったそうだよ」
 『あらゆる手』という部分に、苦みの全てが詰まっているように聞こえた。
 少年はただじっと黙って、誰も信じられないという目つきで周りの人間をにらみ続けていた。
 しばらくにらみつけてから、口を開く。
「俺の持ってるものは、ぜんぶやる。だから、殺してくれ。ぜんぶ……ぜんぶだ!」
 こらえきれず溢れた涙を拭って、少年は懐から金のペンダンを出して、テーブルに叩きつけた。

●ヴァンヴァニル海賊団
「おかしらぁ、次の村はどうですかねえ。メシも女も、たんまりあるといいですねえ」
 竜頭を模した飾りが、海の波に上下する。
 長形のヴァイキング船をオールでこぐ男たちが、遠い陸地を想像しながらぼやいていた。
「うるせえ。今度喋ったら凍った海にたたき込むぞ」
 長い黒髪をバンダナでまとめた男。腰には剣と盾を装備した彼こそが、鉄帝海賊ヴァンヴァニルの長『ヴァニル』である。
「なんだっていいんだよ。メシにありつけりゃあな」
 ふああとあくびをするヴァニル。
 やがて陸地が見え、空に昇る煙が見えた。
「野郎共、そろそろ仕事の時間だ。構えとけ」
 ヴァニルは頬を叩くと、立ち上がって剣を抜いた。
「楽しい楽しい略奪タイムだぜ!」

 だが、彼らはまだ知らない。
 その村に村民などおらず、いるのは……。
 そう、『あなた』たちだけだということに。

GMコメント

■オーダー:ヴァンヴァニル海賊団の壊滅
 これよりある村を餌にしてヴァンヴァニル海賊団をおびき寄せ、彼らを一人残らず抹殺します。
 村人は既に避難を終えており、餌として機能するよう家畜や畑はそのままになっています。
 皆さんは村民に扮したり家屋に隠れるなどして、海賊を迎え撃ちましょう。

●戦闘と立地
 ここは村といっても2~3件の家しかない小さな集落です。
 隣の集落と定期的に物資をやりとりすることでなんとか存続している程度の場所で、こういう場所を毎年のように襲い続けることで海賊たちの生計は成り立っているようです。
 場所は海沿いですが、海は非常に冷たいので夏場とは言えあまり飛び込みたい場所ではありません。(かなり我慢すれば無理ってことはないですが、戦闘には適さないでしょう)

 流れとしては海賊に襲われてパニックになったふりなどをして陸の奥まで誘い込み、彼らを抹殺します。
 このとき船に戻れないように挟み撃ちになどできるとグッドです。
 (今回、船の破壊にはめっちゃ時間がかかるものとします。これを壊すくらいなら海賊を皆殺しにしたほうが早いでしょう)

 ヴァンヴァニル海賊団は12名ほどで構成されており、それぞれ剣と盾、弓といった装備を調えています。
 といっても戦闘力はみなそれなりに高いので、油断せずにいきましょう。
 特に団長のヴァニルは重鎧に包まれた非常に屈強な戦士です。
 これを倒すにはこちらも屈強な戦士をぶちあてるのがいいでしょう。

・余談 戦術について。
 ヴァニルと部下を引き離すことができればいいですが、相手もベテランなのでそうそう分離はしてくれないでしょう。
 例えば逆の立場から、自分がチームからひとりだけ孤立して合流不能になるような状況はどうやったら起きるかなと考えてみるといいかもしれません。

■■■アドリブ度■■■
 ロールプレイをよりお楽しみいただくため、リプレイにはキャラクターのアドリブ描写を用いることがございます。
 プレイングやステータスシートに『アドリブ歓迎』『アドリブなし』といった形でお書きくだされば、度合いに応じて対応いたします。ぜひぜひご利用ください。

  • ヴァンヴァニルに死を。灰色の思い出に炎を。完了
  • GM名黒筆墨汁
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2020年08月31日 22時00分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

日向 葵(p3p000366)
紅眼のエースストライカー
クランベル・リーン(p3p001350)
悪戯なメイド
咲花・百合子(p3p001385)
白百合清楚殺戮拳
オリーブ・ローレル(p3p004352)
鋼鉄の冒険者
エッダ・フロールリジ(p3p006270)
フロイライン・ファウスト
マリア・レイシス(p3p006685)
雷光殲姫
マヤ ハグロ(p3p008008)
リズリー・クレイグ(p3p008130)
暴風暴威

リプレイ

●炎はけれど他人事
 世界のどこかで村が燃えたという。
 世界のどこかで人が死んだらしい。
 手のひらにべっとりと血をつけて、息絶える間際の顔を直に見つめるでも無い限りは、実感の出来ぬことだった。
 けれど。
 それと『許せるか』は別の話だ。
「散々奪ったのです、代わりに奴等の命を奪わせて貰います。
 屑共の命では、麦の一粒分にすらならないでしょうが!」
 アーマーヘルメットをかぶり、ギラリと目を光らせる『鋼鉄の冒険者』オリーブ・ローレル(p3p004352)。
 鉄帝国に生きる戦士として、武力による攻撃を仕掛けてくるノーザンキングスは無視できない敵である。
 依頼人がそんな彼らノルダインの海賊に村を焼かれた少年ともなれば、義憤に燃えぬわけはない。
 だがそれは、立場や環境が違えど広く大衆に理解しうる義憤であった。
「海賊のやる事を聞いちまった以上、生かしておくほど情は持てねぇな。
 ああいうのは殺すなり一生牢屋にブチ込むなりしねーと、またやるんスよ絶対」
 『紅眼のエースストライカー』日向 葵(p3p000366)はサッカーボールをがしりと片手で鷲掴みにすると力を込めて赤い目の奥に怒りの炎を燃やした。
「けど、たとえ依頼つっても、人殺しは慣れないもんっスね。慣れればもっと素直にやれるんスかね……」
「どうかな。私は慣れたけど、だからって好きにはなれないね。
 今回は外道が相手で良心が痛むことが無いのは救いかな」
 『雷光・紫電一閃』マリア・レイシス(p3p006685)は走り去っていく馬車を見送ってから、無人になった村へと振り返った。
 もし自分たちがこの作戦に従事しなかった。
 そもそもこの作戦すらなく、誰もこの依頼をしなかったなら。
 しばらく後。この村は全ての物資と尊厳を略奪され、最後には燃えて消えたのかもしれない。

 立場の話を、もう一度する。
「略奪もその報復も、ヴィーザルじゃ珍しくもない。言っちまえばよくある事さね」
 ヴィーザルの土地に生まれたクレイグの戦士、『C級アニマル』リズリー・クレイグ(p3p008130)。
 村の中央にざくりと剣を立てて簡素な小屋ばかりが並ぶ集落を見回した。
 この辺りの土地が開拓されずこうしたバラックばかりが建ち並ぶのは、もちろん貧困のためもあるのだが……それ以上に海賊や山賊たちによる略奪で定期的に人口や資源が喪失するからである。
 彼らもまた民。獣が縄張りを奪い合うように、時に卑劣になってまで生きている。
「だから許せないとかどうとか、そういう話じゃあないんだ」
 誇り高く生きる者があれば、一方弱者を食うことで生きる者もある。結局のところ、他人事に過ぎないのかもしれない。
「だとしても、よ」
 樽の上に腰掛け、リボルバー拳銃に素早くからからと弾を込めていく『キャプテン・マヤ』マヤ ハグロ(p3p008008)。
「自分より弱くて、なおかつ何の攻撃手段も持たない村人を無差別に襲うとは言語道断。海賊なら海賊らしく、強いものと戦いなさいっていうのよ」
「そりゃあアンタ、海洋で私掠船許可証を貰ってるような海賊だろ? あっちにだって市民の略奪ばっかしてる海賊はいるんじゃないかい?」
「ああ、いるさ」
 マヤは弾倉をガチンとワンアクションで重に収めると、顎をあげて言った。
「だから私が沈めた」
 それは立場の話であり、同時に生き様の話である。
 彼女たちはノーザンキングスの戦士であり海洋王国の海賊であり鉄帝国の兵士であり異世界からの来訪者だが、そうである以前に今は、ギルド・ローレットに所属するイレギュラーズであった。
 ゆえに、立場の話に終わるのだ。

「略奪ー! 吾も略奪大好きである! 思い出すであるなあ聖ヴァイキング女学園にガソリンを撒いたクリスマス。今でも手に残るガソリン臭が懐かしいである……」
 『白百合清楚殺戮拳』咲花・百合子(p3p001385)は腕組みをしてうっとりと青い空を眺め、『が、しかし!』と叫んで前を向いた。
「吾は吾の領地の略奪は許してはおらぬ。ヴィーザルに領地を頂いた者としては見過ごせぬなぁ!」
 この世が弱肉強食であるならば、縄張りへ近づくことは殺される覚悟をもってすること。そして今更、それを語るまでもなし。
「ひゃー、こんな大きい仕事久しぶり。いつ以来かな? もしかして初めてかも!?」
 猫型のクッキーをさくさく食べながら、『悪戯なメイド』クランベル・リーン(p3p001350)は木の柵に腰掛けていた。
 最低限の桟橋と、夏でも冷たい海。
 真夏のバカンスには悪くない気候だなあと、クランベルはどこかのんびり考えた。
「はりきっていこ! ね!」
「無の論。無論であります」
 『フロイライン・ファウスト』エッダ・フロールリジ(p3p006270)はメイドカチューシャを取り外し、かわりにザ・村娘って具合の頭巾を被った。
「それにしても、あの少年……」
「ん?」
 クッキー最後のひとかけらを食べ終えて、親指をぺろりと舐めるクランベル。彼女に再び振り返られて、エッダは首を振った。
「なんでもないであります。いまは仕事の時間。趣味は後に回すであります」
 腕に装着されていた手甲を取り外し、馬小屋の藁のなかへと押し込んでいく。
 エッダとクランベルはそれぞれ粗末な村娘に化けると、襲撃を待った。

●ヴァニルと11人の海賊達
 長形のヴァイキング船でオールを漕ぐ男達。名をヴァニル海賊団。
 リーダーであるヴァニルはたちあがり、高い視力でもってぽつぽつと並ぶ家々を観察した。
「おお、建ってる建ってる。てこたぁ住んでるな。馬小屋もある。今晩は馬肉が食えそうだぜ。っとお……?」
 さらによく見ると、たき火の煙を囲むように二人の村娘の姿があるのがわかる。
「おい喜べ、女もいるぜ。ひーふー……早いもん勝ちだな」
「マジすか。やっべえ」
 色めいた男達がオールに力を込め、船のスピードをあげた。
 まるで桟橋にぶつかるかのような勢いで二台の船をつけると、こちらに気づいた村娘を逃がさぬように陸地へと飛び乗った。
「オラあそぼうぜお嬢ちゃん。鬼ごっこだ」

 村娘たちは大勢の海賊たちにおびえ、街道側へと走り出す。
「捕まえろ、家ぇ荒らすのは後だ」
「ええ? でもまだ居るかもですぜ?」
 走り出す男達。
 出遅れた男が、扉の開けっぱなしになった家をちらりとのぞき込んだ。
 ごく一般的な家の内装があるのみ。人の姿はみえなかった。
「何やってんだはやくしろグズが」
「へ、へい!」
 慌てて他を追いかけて男達が去ると……。
「行ったようであるな」
「港はどうっスか」
 幻影を用いてテーブルの下に姿を隠していた百合子と葵が、術を解いて周囲を観察する。
 一方で、ドリームシアターを用いて暖炉の炎に偽装していたマリアが這い出て、ちらりと窓から港の様子を見た。
「大丈夫。みんなエッダくんたちを追っていったみたい。それに……マヤくんたちが動くよ」

 マリアの言うように、向かいの小屋の扉が開いた。
 リズリー、マヤ、オリーブ。いわば立場を越えて協力した三人が、それぞれゆっくりと家を出て行った。
 そうと気づかぬ海賊達は、わざと転んだクランベルとマヤを取り囲んでいる。
「おいおい、ゲキマブじゃねーの」
「逃げ場はないぜ? お嬢ちゃん」
 下卑た笑いをうかべる彼らに対して、エッダは。
「逃げ場はないのは、そちらであります」
 立ち上がり、頭巾を脱ぎ捨て。
「自分を誰だと思っているであります」
 取り出した鋼鉄のメイドカチューシャを装着した。
 すると、馬小屋に隠していた手甲が謎のジェットによって飛び出し海賊達の間を強引に割ってエッダへと接近。
 パンチを繰り出すような動作で両腕にごつすぎる手甲を装着すると、まばゆい光が彼女の衣装を黒いメイド服へとチェンジさせた。
「自分は……騎士(メイド)であります!」
「騎士(メイド)……!?」
 大方が『アァン?』という顔をするなかで、一人の男が額に激しく汗を浮かべた。
「聞いたことがある。メイドを名乗ってあちこちであばら回ってるフロールリジの娘がいるらしい。まさかてめえが……!」
「自己紹介が省けたでありますね」
 エッダは無表情のまますぐ近くの男にネックハンキングツリーを仕掛けた。
「ぐええ!?」
「まさか……てめぇも!?」
 ドサクサのなかで立ち上がって頭巾を猫耳キャップに取り替えていたクランベルが『へっ?』といって振り返った。
「てめぇも騎士(メイド)か!」
「メイドはメイドだけどそんな字書かないよ!」
 そう言いながらスカートの中から大型拳銃をドロー。
 彼女の二ノ腕くらい長い銃身と非常識なほどごついボディ。両手でやっと握れるようなグリップ。とてもじゃないがミニスカートの中に収まっていたとは思えない大きさだが……。
「けど、ただのメイドじゃないのは確かかも?」
 大型拳銃をあろうことか三連射。
 『Answerer』と刻まれた銃身が連続でスライドし、親指ほどの空薬莢が回転しながら排出された。
 銃弾をまとめて食らった男が吹き飛び、開かれる包囲。
 思わず振り返った男は、家々から現れるマヤたちに気づいた。
 そして誰よりも状況を理解していたのは……。
「やべえ、これ罠じゃん」
 リーダーのヴァニルであった。

 一般的にそうとまでは言わないが、多くの場合罠とはかかった時点で死が決まるものである。足を止める。取り囲む。選択肢を奪う。初手のスタイルは数あれど、最初の罠が正常に動作した時点でフィニッシャーまで用意されているのが常識だからだ。
「我は海賊マヤ・ハグロ! 弱いものイジメしか出来ない卑怯者の海賊たちよ、真の海賊である私と、正々堂々勝負してみなさい!
 それとも、恐れをなして逃げるかしら?」
 空っぽにしたスキットルを腰のポケットにしまうと、マヤは拳銃を早速乱射。
 海賊の男達に盾を構えさせると、すかさずラム酒爆弾をアンダースローで転がした。
「うお!?」
 爆発によってひっくりかえる男達。それを飛び越え、フリントロック式の銃を撃つ別の男達。
「通じません。そんな弾が……!」
 オリーブは勇猛に吠えると鎧の防御に任せて突撃。男たちへ豪快な剣によるなぎ払いを仕掛けた。
 弾き飛ばした男達を踏みつけにし、ヴァニルが剣を抜いた。
「船には戻らせねえってか。こいつは……あぁ?」
 ヴァニルは強行突破の構えを見せつつ、それを阻もうとするリズリーとにらみ合いになった。
「どいてくれたらアメちゃんやるぜ?」
「茶化すなよ。こっちは命をとりにきてるんだ」
「アンタもそれなりのモンをベットしてるってか」
 衝突。そしてヴァニルの剣と、リズリーの宝剣ベアヴォロスが衝突した。
 無骨な刀身に目を細めるヴァニル。
「見覚えあるなあ。おめえさてはランドの――」
「悪いね。ゆっくり語る時間はないよ」
 なぜならもう――。
「終わりだヴァニル! 誰も生かしては帰さない!」
 赤い稲妻がレールを作り、窓をぶち破る形で現れたマリア。地面を走らぬ一直線のダッシュキックが、ヴァニルの顔面を打ち抜いた。
 ヘルメットを含む全身鎧によってかろうじて頭部がどっかいってしまうことを免れたヴァニルだが、清楚乙女走り(足跡に虹色の花が咲く軽やかなスキップ)で瞬間移動した百合子が真後ろに出現。点描を纏った乙女回し蹴りによってヴァニルを派手に吹き飛ばした。
「うお、お頭!?」
 フォローすべく追いかけようとする海賊たちを、側面から猛烈なカーブをえがきながら飛来するサッカーボールが跳ね飛ばした。そう、葵のシュートである。
 男達の間をまるでご機嫌なピンボールのごとく跳ね回ったボールが、最後に葵のもとへとリターン。胸のトラップをはさんでから地面に踏み止めると、葵は男達を指さした。
「オイ、逃がすつもりはねぇっスよ」

 戦いの行方を、どう語ったものだろうか。
 美味しい餌だと上機嫌で群がった海賊達が、このためだけに集められた屈強な戦士達に取り囲まれ、あの手この手で抹殺されていくさま。
 マヤとクランベル二方向からの容赦ない銃撃で。
 エッダと百合子。そしてマリアによる予測不能の格闘術で。
 あるいは葵の放つ真っ赤なオーラを纏ったサッカーボールで。
 そして鉄帝国のために燃えるオリーブの剣と、同胞を葬るべく突き進むリズリーの剣。
 これらを前にして無傷で逃げ延びることはとてもではないが難しかった。
 おそらくは多くの修羅場を潜ってきたであろうヴァニルにとっても。
「おいおい、マジなのかよ。海賊狩りかあ?」
 降参する姿勢をみせた海賊すらも容赦なく抹殺する姿に、ヴァニルは思わず苦笑した。
「俺ら殺して金になんのかよ。船と装備と金を奪えばそれでいいんじゃねえのか? なにも殺すことはよお」
「アンタなあ」
 目をギラリと光らせる葵。
 クランベルとマヤはそれぞれの銃口をヴァニルの額に当て、民家の壁におしつけていた。
「今更命乞いしても許さないわ。地獄で後悔なさい」
「そーゆーこと。これお仕事だからね」
 クランベルの言葉に、ヴァニルはまたも笑った。
「おいおいおい、これに金払った奴がいるのかよ! 馬鹿だなぁ! 利益にならねえだろうに」
 と、その瞬間。
 怒りに燃えたオリーブや冷徹に抹殺することを決めた百合子やエッダ、マリアたちを差し置いて……。
 リズリーの剣がヴァニルの鎧をあろうことか貫いて突き刺さった。
「ぐ……!?」
「そういう話じゃあ、ないんだ。金になるとか、何も略奪がいけないことだとか、海賊だから殺していいだとか、そういう話じゃあないんだよ」
 リズリーは剣を握る手に力を込め、そのまま民家の壁へと剣を届かせる。
 根元まで深々と刺さった剣を通して、まるで彼女の熱が伝わるかのようだった。
「全部失って、それでも残った最後のモノを賭けようって、見知らぬガキが言うんだ。
 その覚悟に応えてやりたくなっただけさ」
「あぁーあ……」
 ヴァニルは血を吐き。
「そういうベットね」
 とつぶやき、息絶えた。

●セピア色の後日談
「なに、貴様らの死は無駄にはせぬよ。
 食い散らかすだけの貴様らと違って吾の領は上品でな、殺したものは皆混ぜて腐らせて畑の肥とする事が決まっておる。
 鎧も武器も売れるし、賊に捨てるところなしであるな!」
 凶悪に、しかし清楚にクハハと笑う百合子。
 海にでも沈めようと船に放り込んでいたオリーブと葵が『まじか』という顔でそれを見ていた。
「だいたい木端のような稼ぎで満足しているようでは器が知れるでありますな。どうせ奪うならでっかく軍艦にでも当たればいいものを……」
 一方のクランベルとエッダは、集落を明け渡してくれた元の住民へ衣服を返し、戦闘の流れとはいえやや民家を破壊してしまったことに謝った。
 全て失うよりはずっといいと、住民たちはそれを快く許したようだ。
 そんな中で。
「それは? 例の報酬かい?」
 マヤとリズリーは、マリアの手の中をのぞき込んだ。
 すすけた金のペンダントである。
「憎しみを忘れろ、とは言えない。
 でも……これから彼が幸せになれることを、きっとこの人達も望んでいるはずだよ」
 ペンダントはロケット式になっていたようで、操作すると開くことが出来た。
 この辺りでは珍しい写真機を使った、モノクロの写真。父と母と少年が、笑顔でうつる写真だった。
「報告に行ってくる。報告と、お願いしにね」

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 ――依頼達成
 ――状況終了

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