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シナリオ詳細

8月10日の悪夢

完了

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

■至って平和な世界の唯一の悪夢
 剣と魔法が力の全てのとある世界、とある大陸。人族と魔族が理由なく互いを憎み合い、殺し合いを続けていた地。
 しかしその争いは突然終わりを告げる。後に賢王と呼ばれる人族の女王と、後に武王と呼ばれる魔族の王が若かりし頃に偶然にも顔を合わせ。あろうことかお互いに一目惚れをしたのだ。
 二人は当初、報われることのない恋だと思っていたのだが……人族の女王が停戦を提案。渡りに船と魔族の王もそれに乗り、やがて結ばれる事となったのだ。そしてそれを機に、人族と魔族はゆっくりと互いに歩み寄るようになり、今ではその大陸から争いは消えた。
 知力に優れ手先が器用な人族が道具を作り、力に優れた魔族がそれを使い大地を拓く。助け合いの心が芽生え、いつしか王達のように種族を越えて結ばれる者も増え、まさしく理想郷とも呼ぶべき国へと成長していったのだ。
 たった一つの悪夢を除いて。
「……今年ももうすぐ、あの日ですね」
 賢王と呼ばれし女王が憂鬱そうにため息を吐く。隣に座る武王と呼ばれる魔王も同様に息を吐く。
「こればかりは、我の力をもってしても防ぎきれん。……役に立てずに済まない」
「謝らないで下さい。私の魔法の力でもどうにもできないのです……それに一日だけ、ですから」
 お互いに相手を思いやり……それでいて、再びため息を吐く。
 二人が、いや、この大陸に住まう全ての人族と魔族が恐れる日。それは8月10日。
 一年のうち、たった一日だけだが……その日、この大陸からは活気が消え去ってしまう。
 たった一匹の魔物によって。

■ダラダラしませんか?
「……っていう世界の物語があるんだけど……」
 境界案内人のカストルは集まったイレギュラーズの顔を順番に見つめながら説明を行う。その中の一人が、「その魔物を倒せばいいのか?」と問いかけるがカストルは首を振る。
「いや、特に何もしなくていいんだ」
 討伐の必要もないし、その国を救う必要もない。
 それでは何の為に向かうのか?と再び質問が飛ぶ。
「この国に一日だけ起こる病気。それは皆がやる気をなくしダラダラ過ごしてしまう病気なんだ」
 きょとんとするイレギュラーズ。無理もない。そんな病気、この混沌世界では聞いた事もない。
「普段君たちは忙しいじゃないか。だから、一日だけゆっくりダラダラするのもいいんじゃないかなって」

NMコメント

 8月10日はアレの日らしいです。以下略です。
 ピンク色で尻尾が美味しくて切っても再生する魔物の日です。
 この世界に赴いた皆様も、この【病気】に一時的に感染しダラダラ過ごす事しかできなくなります。なので一日ダラダラ過ごして下さい。
 なおパッシブ【全状態異常無効】スキルを持つ方のみは通常通りの行動ができ、原因の魔物に闘いを挑む事が可能です。一人ででも余裕で勝てる相手です。でも倒す必要はあんまりありません。

Q.とどのつまりどういう事だってばよ?
A.休日を過ごせばええんやで

・サンプルプレイング
 朝起きて朝食食べたら二度寝して。昼は食べずにごろごろ本を読んで。夜はお菓子をいっぱい食べる。

 こんな感じでOKです。
 ただし国の人達は皆この病気に感染し、この一日だけは協力も何もほぼしてくれません。なので食事とか必要なものは自分でなんとかするか、持ち込むプレイングを書いておいて下さい。

 以上となります。
 普段は忙しいイレギュラーズの、たまの休日。ゆっくり過ごしてみませんか?

  • 8月10日の悪夢完了
  • NM名以下略
  • 種別ライブノベル
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2020年08月20日 22時20分
  • 参加人数4/4人
  • 相談5日
  • 参加費100RC

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(4人)

回言 世界(p3p007315)
狂言回し
リンディス=クァドラータ(p3p007979)
ただの人のように
シルヴェストル=ロラン(p3p008123)
デイウォーカー
シュテム=ナイツ(p3p008343)
久遠の孤月

リプレイ

■8月10日
「……おお、これは綺麗な場所だ」
 境界案内人に誘われるがままに異世界にやってきた四人のイレギュラーズ達が目にしたのは、美しい青空、豊かな緑。そしてそれと見事に調和する綺麗な街並み。
 話通りに本当に魔族と人族が共に暮らしているならば、まさしく理想郷と呼ぶにふさわしい地であった。
 しかし日にちは8月10日。この理想郷の唯一の悪夢が襲いかかる日である。それはイレギュラーズ達にも例外なく襲いかかる。街並みに目を奪われている間に、こうやる気というか動く気力が削られていくのだ。
「なるほど……これは確かにダラダラしたくなります」
 『妖精譚の記録者』リンディス=クァドラータ(p3p007979)が手にした鞄をゆすりながら、口にする。一刻もはやく、本を手にして一日ダラダラと動かずに読むだけの生き方をしたい。そんな欲求が溢れ出る。
「やる気というやる気が折れていくというか、「あ、なんかまた今度、気が向いたらでいいか」という気持ちに……」
 同じく、買ったまま読めていなかった本を読もうと用意していた『白夜月』シルヴェストル=ロラン(p3p008123)も、怠惰の誘いに屈しようとしていた。できる事ならこのまま寝転びたい。でも流石に道端ではみっともないと最後の理性が踏ん張っている。
「本来ならば原因の魔物を退治すべきなのだろうが、私には倒す術がない」
 『久遠の孤月』シュテム=ナイツ(p3p008343)も早々に魔物を倒す事は諦め、休日として一日過ごすつもりのようだ。一人で近くの森の中へと姿を消す。
「この世界の病気に体を委ねて一日中寝て過ごせばいればいい…………だけなんだかなぁ」
 そんな三人とは裏腹にたった一人、病に抗う男がいた。『貧乏籤』回言 世界(p3p007315)だ。
 勿論彼とて一日ダラダラ過ごしたい欲求はある。だがソレ以上に、彼自身の意識を捻じ曲げてくる病が気に入らないのだ。
 破れざる英雄の鎧を自らに与えた彼は、病を跳ね除け足を動かす。大丈夫だ、やる気が出てくる。
「……この世界に恩を売っておくのもいいだろうしな」

■騎士を目指す少年の一日
「うん、ここなら静かで集中できそうだ」
 森の中、少し開けた広場を見つけたシュテムはぐっと身体を伸ばす。周囲には生き物の気配は全くしない。怠惰の病とは知性あるものだけでなく、野生の動物達にまで効果を及ぼすのだろうか。
 さておき、柔軟運動を済ませたシュテムは剣を抜き、構える。まずは身体に、脳に染み付いた型を只管に繰り返す。多少身体はダルくても、彼の精神は止まる事を知らない。
 二巡、覚えている限りの型を再度身体に染み付かせたシュテムは、身体を大地に投げ出す。ようやく休むのかと思えば、腕立て伏せを始めた。
 次に腹筋、背筋。スクワット。筋力トレーニングを無心に只管に繰り返す。
 そうしてトレーニングに明け暮れていると、腹の虫が鳴き始めた。
「おっと、昼か。……そういえば、街は怠惰の病なんだよね」
 街で食事を取るのは無理かなと考えた彼は、森の中を散策し始める。
 多少ならば食べられる木の実の知識はある。最悪獣を探して狩れば良い。そう考えたのだ。やがていくつかの木の実と、小動物を一匹捕まえてきたシュテムは恵みに感謝しつつ簡単な調理を始める。
 流石にプロ程うまくはいかないが、自分で作ったと考えると味わい深いものがある。ゆっくりと時間をかけて飲み込んでいく。
 食事を終え、一時身体を休ませたシュテムは素振りとランニングも終える。全て終わった頃には日が沈みそうになっていた。空が茜色に染まっている。
「もうこんな時間か。一日ダラダラ過ごすことでいつも以上に鍛練できたな」
 満足げに笑うシュテムだが……彼の「ダラダラ」は一般とずれている事をつっこむ者はここにはいない。
 本人がいいなら問題ないのだが。

■読書家の二人の一日
「あった……ここが図書館」
 気だるい身体に活を入れ、なんとか街の案内板を頼りに図書館までやってきたのはリンディスとシルヴェストル。なにせ街の人々はやる気が0な為に簡単な案内すらもしてくれない。本来ならば、人当たりの良い人々なのだろうが……。
 閉まっているかもしれないという不安もあったが、扉は開いていた。中に入るとごろ寝をしながら本を読んでいる人もちらほらいる。二人と同じ考えの人がいたようだ。
「よいしょ、と」
 一つの長椅子を窓際に移し、その隣に持参した鞄を置くリンディス。カバンの中身は水とサンドイッチだ。
「動かないでもいい、これがパーフェクトな戦略というものです……!!」
 果たしてそうなのだろうか。だがそれに疑問を唱えるものなどいないのだ、皆やる気がないから。
 放置されている台車を見つけた彼女はその上に、興味を惹かれた本を次々と積んでいき先程の椅子まで戻る。これで一日、完全に身体を動かす必要もなく過ごせるという算段だ。
 シルヴェストルも同じく、長椅子の近くに自分が用意したお菓子と水を起きごろんと寝転ぶ。彼は本は持参しているので取りにいく必要もない。
「お菓子ならゴミ捨てるだけでいいしね……今は食器洗うのもしたくないし」
 完全に病気に毒されている。

 誰も一言も発さない、静かな時間が図書館を支配する。それが何より読書家の二人には心地よい。
 気の向くままにページを捲り、時折思い出したように水を飲み食事を摂る。それだけで良いのだ。
 本が無言で語りかける、世界の知識。想像の世界。それらに思いを馳せながらただ只管に、時間を過ごす。
 他に何もしなくて良い。なんとも贅沢な時間である。
「よっと……」
 菓子を食べたシルヴェストルが、気だるげにゴミをくずかごに投げ入れようとして……外した。
「あ、外れた……また明日でいいよね」
「いいんじゃないですか?」
 完全に怠惰に毒された二人である。

■ただ一人
「ああ……あれ、か?」
 世界はただ一人、病に抗い続け魔物を探し続けていた。剣と魔法が支配する世界故か、彼の気力は切れる事がない。怠惰の病に侵されなければ休まずに動く事だってできそうだ。
 時間はかかり、空は月が上り一日が終わろうとしている。そんな中ようやく、池の畔で一匹の魔物を見つける。全身ピンク色で尻尾が長く、いかにも間抜け面といった風貌のなんとも弱そうな魔物を。
「変な奴だよな……全然強そうに見えないのに」
 英雄の加護が切れないように気をつけながら、世界は物音を立てずに魔物に近づく。魔物はというと世界に気づく事なく、のんびりゆっくりと身体を動かし、尻尾を水面につけている。釣りでもしようとしているのだろうか?
「お前さんには恨みはないが」
「やぁん?」
「……気の抜ける鳴き声だな」
 世界を前にしても魔物は慌てる様子もなく首を傾げるのみ。その姿に脱力しつつも、魔物の身体を黒のキューブに包み込む。
 その中では無数の苦痛が与えられるというが……世界の攻撃が終わっても魔物は顔色一つ変えていなかった。世界の攻撃が効いていない訳ではない。実際魔物の身体は出血を起こしている。
 だが血が吹き出るそばから傷がふさがっていってるのだ。
「再生能力か……面倒な」
 眉をひそめる世界をよそに。魔物は相変わらずマイペースで、水面から尻尾を引き上げるとあろうことかソレを自分で食べ始めた。
 絶句する世界。彼の目の前でちぎれたはずの尻尾が即座に再生し生え変わる。
「……なんつー奴だよ。こりゃあ長期戦か」
 ならば、と世界は白蛇召喚の陣を描き、魔物に白蛇をけしかける。
 大した動きもとらない魔物は白蛇に噛まれ、さらなる毒と出血を引き起こす。流石の魔物も多少は堪えたのかわずかに苦痛の声を漏らす。
「やぁ……ん」
「……効いてる、よな」
 間を置いては白蛇を呼び出し、英雄の加護が切れないように何度も繰り返し。どれだけの時間がたっただろうか。ようやく魔物は完全に動かなくなった。
「これでいい……んだよな? 証拠に尻尾でも持っていくか」
 試しに引っ張ると簡単にちぎれる尻尾。ほのかに甘い香りがする。
「……俺も一日ダラダラしておけば良かった」

 翌日、世界の報告に賢王と武王は喜び彼を歓待しようとしたが、疲れ切った様子の世界はあっさり辞退し帰還してしまう。
 しかし彼の活躍により、この国は8月10日の悪夢から解放されたのだ。

成否

成功

状態異常

なし

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