シナリオ詳細
パラレル・アパレル・パラダイス
オープニング
●ここはファッションの坩堝
幾つもある異世界の内の一つ、数ある産業の中でアパレル産業が最も発達した世界。
無数のアパレルブランドが乱立し、群雄割拠の有様はまさしくファッション戦国時代!
コーデバトルで世界の覇を決めるのが世の習わしであるが……今それは横に置いておくとして。
どんな世界でも消費ある所に需要アリ。
ファッション戦国時代を生きる民の需要は多岐にわたり、大都市圏ともなれば巨大なマーケットが生じるのは必定。
店舗を見て回るにも集まっていた方が客にとっても、店にとってもメリットが大きいわけで……。
結果として身に着ける物なら産着から死装束まで何でもそろうカオスな区画が誕生するのだ。
●モード系もいいと思うんですけど、どうでしょう?
(どうしてこの様な事になったのでしょう)
彼岸会 無量 (p3p007169)は、ぼんやりと街並みを眺めていた。
無辜なる混沌でいう練達の再現性東京に似た街並みは人があふれていて、誰もがどこかのメーカーロゴの入った紙袋を手にしている。
きっと中には買ったばかりの服が入っているのだろう。
なにせ、この世界最大級の衣料品・服飾品の専門店街だという触れ込みだ。
しかし、ショーウィンドーの向こうでポーズを取るマネキンよりも、広場にとめられた移動式アイスクリーム店の方がまだ少し興味がある無量にとっては何処か浮いた感じがぬぐえない。
「ここの通りって大小100以上の服屋さんが集まってるんですって!すごいわねぇ」
『キールで乾杯』アーリア・スピリッツ (p3p004400)がガイドブックを熱心に読みながら告げると、横から『私の航海誌』ウィズィ ニャ ラァム (p3p007371)も覗き込む。
「カジュアルはもちろん、モード系からトラディショナルスタイルまですべてのファッションがそろいます!
……なるほど、ここなら無量さんに似合う服も見つかりそうですね」
意気込むウィズィの横でアーリアの瞳がキラリと輝いた。
「シンプルなトップスとハイウエストのワイドパンツに肩掛けカーディガン!なーんて似合うんじゃないかしらぁ?」
「あっワイドパンツめちゃくちゃ分かります!」
「でしょー?でもここで敢えてフェミニンなスタイルに振ってみるのは?」
「ギャップ萌えですね!無量さんはやっぱり大人な感じが似合いそうですけど、甘めのワンピースで……でも背中とか大胆に出してみたりして!」
「やだ、甘かわセクシー!」
「あの」
きゃあきゃあと声を上げて盛り上がる二人に挟まれて無量が可愛そうなくらい眉を下げて声を上げる。
「そろそろ私服が欲しくなってきましたとは申しましたが……」
そう、渦中の無量は決して『オシャレ』がしたいという意味で二人に相談したわけではない。
いやむしろ相談というよりも、雑談の流れでぽろりと零れただけ。
己を律する為に着ている僧服であるが、時と場合によってはもっと機能的な服装に着替えても良いかもしれない……。
その程度の意図だったわけであるが、その程度の意志だったのでアーリアとウィズィの二人の瞳の中に渦巻く見たこともない炎の前に言葉が途絶えた。
勝てる線が、見えない。
「大丈夫よぉ!無量ちゃん!おしゃれは怖くないわぁ!」
「そうですよ!私服だけとはいわず頭の先から足の先まで全部任せてください!」
「は、はい。お任せします」
二人の勢いに飲まれるようにして無量が頷き、三娘は様々なファッション渦巻く街へと足を踏み入れたのだった。
- パラレル・アパレル・パラダイス完了
- NM名七志野言子
- 種別リクエスト(LN)
- 難易度-
- 冒険終了日時2020年08月17日 22時10分
- 参加人数3/3人
- 相談9日
- 参加費---RC
参加者 : 3 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(3人)
リプレイ
●女性らしい装い
「これがフェミニン、という装いなのですね。フェミニンとはどう言った意味なのですか?」
「女性らしいってこと」
アイス片手の作戦会議の後、まずは『フェミニン』な店を巡ろうと決めた一行はそれをテーマにしたブティックの中に居た。
ならばこの中にある服は全て『フェミニン』に当たる筈と見渡す彼岸会 無量(p3p007169)に『私の航海誌』ウィズィ ニャ ラァム(p3p007371)がハンガーラックを漁りながら説明する。
「こう……あっ、これはガーリー寄りだなぁ。戻しとこ。えーっと……これこれこういうの!」
取り出した一着のワンピースを無量の胸に押し当てるとウィズィはうん、と納得した風に頷いて。
「こんな感じの可愛いだけじゃなくって、シンプルで上品みたいなオトナな女性のスタイル! かなー?」
無量がちらりと鏡を見れば黒地に鮮やかな白花――夜来香だ――が描かれた薄衣を纏う自分がいる。
「そうですか……。普段は精々紅を差す程度ですが、分かりました。
スピリッツさんを手本に女らしさ、演じてみせましょう」
「見て、これ可愛い~!」
へにゃりと笑って駆け寄ってきた『キールで乾杯』アーリア・スピリッツ(p3p004400)が体にワンピースを当てて見せるととたっぷりとギャザーの入ったスカートがふんわりと揺れた。
「わっ、本当!柄がちょっと派手ですけど、デザインがいい感じに甘くて」
「でしょぉ」
頷きながらアーリアはウィズィの手に自分が持っていたワンピースを握らせる。
「……えっ、私にもこーゆーの? え、絶対似合わないですよ肩幅広いし!」
「折角とっても背が高いんだもの、こういう服にもきっと負けないわぁ
肩だって、身長だって、ウィズィちゃんの魅力! 思い切り活かしちゃいましょ!」
後押しする様なウィンクも受ければ、「一応着てはみますけど……」と無量と一緒に試着室へと入っていくウィズィであった。
「……いい女ねぇ」
途中着替え途中の無量が試着室から出てくるというハプニングがあったものの、着替え終わった二人を見てアーリアはしみじみと頷いた。
黒地に白の花柄のワンピースに麦わら帽子とサンダルを合わせた無量はバカンス風ながらも上品にまとまっている。がっつりと開いた後ろから見える白い背筋は姿勢の良さも相まって鶴のようだ。
一方でレトロ調の花柄の明るい色合いのワンピースを着こんだウィズィは露出した肩を気にしている様子であったが、身長や体格はワンピースの派手さに食われないための個性に過ぎない。表情や装いによってはイケメンと評されるウィズィをフェミニンなアイコンで包み込むのはアーリアの英断といえるだろう。
「はーー綺麗……無量さんスタイルいーよなぁ……。
やっぱり似合うじゃん、花が似合うのはいい女だよ!」
「ウィズィニャラァムさんも。良く鍛えられていますから、洗練された美しさを感じますね」
「ぅ、うん、そこまで言うなら…買ってみようかな……!」
おずおずと鏡を見ればそこには夏めいて頬を染める少女の姿。
●シンプルなトップスとハイウエストのワイドパンツに肩掛けカーディガン
アーリアとウィズィの前で無量は着心地を確認するために数歩歩きだした。
店内に並べられた服はどれもシンプルでありながら着る者を選ばないカジュアルなテイストであり、無量が来ているのも上から下まで同じブランドのものだ。
「おお!できる女って感じ~!」
「うーん、さすが着る本人の素材が上質。
これならきっと動きやすいし、気にいるんじゃないかしら?」
夏物であるからだろうか。さらりとした肌触りで外に出て僅かに汗ばんだ肌にもまとわりつかず気持ちいい。それに。
「このワイドパンツと言うのは良いですね。いつも穿いている袴と然程変わらぬ着用感です」
着慣れた感覚というものはいい。
慣れてしまうまでの問題かもしれないが、着用時にどことなく不安感が残るものよりも気安い。
カジュアルとは気軽に寛いだ様を示す言葉らしいが、なるほど、それは装飾だけでなく体に寄り添ったもの含まれるらしい。
「ところで、これは肩に掛けるだけですか?」
「あっそうそう、肩に掛けるだけだよ!袖通さないの!」
「これがお洒落?成程……」
無知なままではならないとフェミニンとカジュアルを身をもって体験した無量だったが、着こなしというお洒落の深淵はまだまだ深く、今はただ先達の言葉に瞑目して頷くのみだった。
●レディ・ア・ラ・モード
モード。それは流行を意味する単語であり、ファッションにおいてはハイブランドの流行を取り入れたものと言うのことになるのだが……。
「ファッションとは一朝一夕では身に付かぬ程奥深い……」
それ故に明確な基準はなく、ファッションというものを学び始めた無量にとってはジャンルと言う大きな指標すら計りかねる深淵であった。
「これは黒で、普段と方向は違ってもしっくりくる感じかもねぇ」
「ここは素直に、黒尽くめで……。
黒タイツ履いてマキシ丈のチュールスカートで美脚シルエットを薄っすら見せるのとか!どうです?」
ファッションナビゲーターのアーリアとウィズィもコーディネートに迷っているようで、白と黒の衣服をオセロのように並べては取り除いてを繰り返している。
あのチュールスカートという奴は一見端切れの薄布を合わせたスカートに見えるが、安く上げる為のデザインではなくやはりお洒落のためのものだとアーリアの薫陶を受けた無量は知っている。
「あらぁ、いいわねぇ。じゃあそれに合わせる感じでトップスはちょっとシンプル目にしようかしら」
「ですね!……でも、ヤバイ。どれがシンプルかよくわからなくなってきた」
「うふふ~奇遇ねぇ、私もよぉ」
モード。
それは、エッジの効いたファッションであるが故に何処までが個性で、何処までが無個性か見失う事もある沼である。
「っていうか、アーリアさんもこういう格好良くスタイル見せつける服、似合いそうですよね!」
「あら、じゃあ私も着てみようかしら?」
「どうせならアーリアさんはもっと透け感アブない路線で……」
これとかどうです!とウィズィが黒レースのセットアップを差し出す。
一見上品にも見えるデザインだが……。
「……ねぇこれあちこち透けてない!?」
レースの下になにも布がないので当然ながら着れば地肌が透ける事になる。
大胆なデコルテに、半ばまで透けたウェスト。そして。
(チャイナドレスみたいに深くレースが入ってるけど、これパンツ透けちゃわないのかしら!)
はわわと、口元に手を当てるアーリアを着てみればわかりますよ、とウィズィは満面の笑みで試着室に押し込んだ。
「おおー!二人共セクシー!」
試着室から出てきた二人を迎えたのはマニッシュなモードスタイルに身を包んだウィズィだ。
小粋な中折れ帽にワイドなアウターと対照的なスラリとしたシルエットのパンツ。モノトーンで統一した中に一点、フェミニンなハイヒールサンダルが映える。身長なんて気にするな、モデルは皆背が高いんだ。
「……このスカートふわふわします」
落ち着かない様子でスカートを撫でる無量は黒のチュニックにマキシ丈のチュールスカートでお手本のような黒づくめのモードスタイルだ。
「……ええっとぉ」
アーリアの纏うセットアップもまた黒一色である。
しかし、レースが絡まる肌は、極上の白布に縫い上げられた刺繍のようで独特の妖艶さが漂っている。
「……てゆか二人共おっぱいでかっ……」
しかしまぁ、ファッションはおいておいても無量の服の上からでもわかる圧力、そしてアーリアのレース間から覗く白い谷間にひれ伏さない人類はいるだろうか。いや、居ない。しかもアーリアのおっぱいは際どいお洋服でブーストがかかっているのだ。おそらく心が弱いものが見れば「おっぱい」としか喋れなくなるおっぱいである。
当然ウィズィも例外ではないので思わず手を合わせた。ありがたいものに人は自然と手を合わせるのだ。
「もうっ……ま、まぁ女同士だし今日だけ。このまま買って、着ていきましょ!」
「スピリッツさん、下着が見えておりますがそのまま行くのですか?」
ぴしりっ、と裾を翻して会計に行きかけたアーリアの動きが止まった。
●ザ・トラディショナルパンツ
「本当にあるとは……褌専門店……」
ウィズィが見上げる店内に広げられた様々な柄の布は全てふんどしであった。
ざっと見まわすだけで豊穣にあるような伝統的な柄から、ラサを思わせるアラベスク調のものや、果てはレースを組み合わせたものまで存在する。
「私は褌風下着ではなく本物の褌を買いたいです。……どうせならおそろにしません?」
「ぇえっ!?」
店内をあっけにとられた様子で見渡していたアーリアが裏返った声を上げる。
「きょ、興味がないわけじゃななくて、その……ね、締付けがなくて気持ちいいらしくて!
そ、そうね折角の記念にお揃いで……こ、ここで!?」
未知なるもの、更に下着となれば足踏みするのも尚更のこと。
「女は度胸よアーリア!わ、わたしも褌を買うわぁ!」
しかし好奇心はそれに勝ってアーリアは大きな声で宣言した。
「……着方、教えてちょうだいね?」
傍らの無量にそっとお願いするのも忘れずに。
両手に一杯の荷物を抱えた三人の影が町に伸びる。
影は3本から混ざって2本になったり3本に戻ったり繰り返しながら来た道を戻っていく。
やがてそれは最初に訪れた広場に辿り着き、あっ、と無量が声を上げる。
「また何時か此処へ来て、交換してくださいますか?」
夕暮れ色になったアイスの移動販売車を背に問われれば、アーリアとウィズィの耳に蘇る『ねえ何食べてるの、私のと一口交換しましょう?』なんて、魔法の言葉。
「「もちろん、だってーー私達、友達でしょ」」
笑う声は重なって鈴のように転がっていく。
成否
成功
状態異常
なし
NMコメント
リクエストありがとうございます!七志野言子です!
今回は皆さんに異世界の町並みでお買い物を楽しんでいただければと思います。
●目的
服を買ったりガールズトークしたりして楽しむ
●シチュエーション
現代日本風の街並みです。
服はもちろん靴や帽子の小物まですべてそろいます。
どんな体型、年齢、性別、人種の人が裸で来ても帰る時には全身コーデが決まるという触れ込み。
所々に足を休めるカフェもあり、一日中お買い物ができます。
●その他
プレイングに書いたらその場所や物はあるという風に描写します。
いちゃこらするのに必要なものは何でもお申し付けください、お嬢様。
Tweet