PandoraPartyProject

シナリオ詳細

<禍ツ星>鈴の音の先に

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●祭り囃子の鳴る頃に
 新天地カムイグラにて行われる海洋王国との合同祭祀。
 あの天香・長胤が驚くほど簡単に許諾したお祭りの音が鳴る。
 その天香・長胤が――そして彼が庇護する巫女姫なる人物が魔種であること。
 今も神ヶ浜を行く鬼人種と八百万(精霊種)との間にある一種の格差社会。
 そして――『未知の疫病』と伝わる凶暴化を齎す何か。
 問題は山積みだが、それはさておき。今はこのカムイグラでの夏祭りを楽しもう――それがおおよそのイレギュラーズの考えである。

 神ヶ浜。夏祭りの会場でもあるかの地は、風光明媚な土地であった。
 夏祭りの真っただ中の今は、多くの人々が行きかい、屋台からは活気のある声が聞こえてくる。
 会場にはいくつか、祭壇にまつられるようにして置かれる祭具の姿や、人々が天香・長胤より下賜されたという祭具が見受けられた。
「ふぅむ。どこにも見当たらぬのう……」
 町を歩く4本の尻尾を持つ白い狐の精霊種――らしき女がぽつりとつぶやいた。
 着込むソレはカムイグラの衣装である。
 大きく長い背を担ぐようにして、女の後ろを狐が歩いている。
 それらの狐の胸元には、荒縄で絞められた鈴があった。
 時折、鈴から、ゴゥン、ゴゥン、と音が鳴る。
 大きな扇子で口元を収めながら、悩まし気に目を伏せる。
 ひょこひょこと頭部にある耳が揺れ動き、長い毛並みのような白い髪が風に靡いていた。
 伏せられた金色の瞳を開き、立ち止まって思案する。
「全く、あの小娘め……どこに行ったのやら……」
 ゆらゆらと4本の尻尾を揺らめかせて、嘆息する。
「あれはお転婆ゆえ、この祭りの中に紛れ込んだと思うたが……これ」
 女は考え込む様子を見せた後、そう言って後ろにくいくい、と指示を出す。
 後ろから進み出てきたのは、一層大きな狐である。
 尾は2つに分かれ、涼しげな顔をした狐には理性すら感じられた。
 「うぬの妹のことよ、分からぬか……」
 美しき狐はその言葉に申し訳なさそうに首を振る。
「うぅむ……最悪、あの小娘がおらずとも、鈴だけは回収したいがのう……」
 長い毛並みの白い髪をさらりと流して、女ははぁ、と一息ついてから歩き出す。
 不思議なことに女の周囲には人の気配が少ない。
 自分自身かなり目立つ装いな上に、狐集団を引き連れる明らかに目立つ場面なのにもかかわらず、である。
 まるで、人が彼女の周囲を避けて通るかのようでさえある。
「ふぅむ……どうしようかのう……少しばかり人の多いところに行くかの」
 ゴゥン、ゴゥンと音を立てながら、女が動き出す。

 神ヶ浜の中、喧騒のど真ん中にそれは姿を現した。
 突如として姿を現した謎の女に、周囲の人々がざわめき立つ。
 複数の狐を引き連れて現れたソレはきょろきょろと周囲を見渡した。
 まるで周囲の事など気にせず、女はやや目を細めた。
「むぅ……気配がないのう……」
 扇子を口元に添えながらはぁ、とため息を吐いた。その時だった。ゴゥン、ゴゥンと音が鳴る。
 その瞬間、女の目がすぅ、と細められるソレはまるで狐のように。
「ほほう、この音は……そちらに行くとしようとしようかのう」
 パタン、と扇子を閉じた女が、音の方へと足を進めだした。

●鈴の音の鳴る頃に
 神ヶ浜の夏祭りを楽しんでいた『水天の巫女』水瀬 冬佳(p3p006383)は、不意に立ち止まった。
 ゴゥン、ゴゥンと鳴り響くのは、鈴の音だ。
 荒縄に着いた大きな鈴はとある事件で戦った狐の妖怪から拾い上げた代物だった。
 どことなく邪悪な気配を感じるそれは、この祭祀の場で関連する物もあるかもしれぬともってきていた。
「……どうして突如として音が?」
 それは、つい先ほどまで、大きく振ったといえど決して動かなかった。
 それなのに今は元気に音を鳴らしている。
 絶対的に嫌な予感のする音に、冬佳は思わず近くにいたイレギュラーズらしき者達へと声をかける。
 そのほとんど直後の事だった。
「のう、そこのおなごや……それを返してくれんかのう?」
 そう、声がした。
 冷たい殺気と、圧倒的な迫力。濃密で淫靡な香り。
 それを視界に入れたその瞬間、あぁ、と納得した。
 これは――この女は、魔種だ。
「返してくれぬのなら――殺してでも取り返すしかあるまいが」
 細められた狐のような双眸が、冬佳を――そして彼女の持つ鈴を見つめていた。

GMコメント

さて、そんなわけでこんばんは、春野紅葉です。
夏祭り前の一仕事。さっそく詳細に参りましょう。


●オーダー
【1】鈴華御前の討伐もしくは撤退。
【2】『人除けの呪鈴』の奪還阻止

【1】は絶対の達成条件
【2】はそれ自体は依頼の成否に関係しませんが、不成立の場合は今後に何かしらあるかもしれません。

●戦場
神ヶ浜の一角。
人気は多く、退避が必要ですが、
少なくとも敵はそれらに対しての興味はなさそうです。

●状況
皆さんは冬佳さんの近くにいる状態です。
友人だから一緒に夏祭りを見ていたでも、偶然近くを通りかかったでも、
事前状況は様々でしょうが、今は彼女の近くにいます。

魔力撃など、スキルそのもののに奇襲攻撃効果がある、
通常効果にそれらの効果が着くなどしないかぎり、奇襲は不可能です。

●エネミーデータ
【鈴華御前】
4本の尻尾を持った白い狐の精霊種……ぽい姿をした魔種です。
周囲に複数匹の狐を従えた十二単風の衣装をまとった女。

強力な個体であり、神攻系の戦闘能力を有します。
広くレンジをカバーするでしょう。

衣装から考えるに、回避能力はやや低めと思われますが、それ以外は不明です。

また、現在こそ鈴の奪還を望んでいますが
『鈴を持っていた存在が消滅していること』が知れた場合、
その行動は予測できません。

【白尾双】
尻尾が2本に分かれた白い毛並みの狐です。
比較的大柄であり、その瞳には知性の輝きすら感じますが、
同時に驚異的な邪の気配も感じます。
首筋には冬佳さんが手に持つ鈴と同じようなものが巻かれています。

驚異的な反応速度、回避力、神攻などを有しています。

【気狐】×4
狐の妖怪です。雑魚です。

●その他
『人除けの呪鈴』
この音色を聞いた者は一定の範囲を無意識的に離れようとする他、
パンドラを持たないものが聞くとどうしようもなく暴れだしたくなります。
呪具の類です。

『呪具』
 天香・長胤が『妖避けの祭具』として民草へと祭具として配布したもの。
 怨霊やあやかしを呼び出すために使用される呪いの祭具です。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はCです。
 情報精度は低めで、不測の事態が起きる可能性があります。

  • <禍ツ星>鈴の音の先に完了
  • GM名春野紅葉
  • 種別通常
  • 難易度HARD
  • 冒険終了日時2020年08月06日 22時36分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

アルペストゥス(p3p000029)
煌雷竜
シキ・ナイトアッシュ(p3p000229)
優しき咆哮
すずな(p3p005307)
忠犬
水瀬 冬佳(p3p006383)
水天の巫女
茶屋ヶ坂 戦神 秋奈(p3p006862)
音呂木の巫女見習い
レイリー=シュタイン(p3p007270)
ヴァイスドラッヘ
ジョージ・キングマン(p3p007332)
絶海
小金井・正純(p3p008000)
燻る微熱

リプレイ


「……殺してでもと言われては、そうも参りませんね――貴女は何者です。この鈴の元の持ち主ですか?」
 そっと下がる『水天の巫女』水瀬 冬佳(p3p006383)の問いかけに、四尾の魔種が笑う。
「妾かの? 妾は……そうじゃのう、人には鈴華御前と呼ぶ者もおるかのう?
 ほほ、鈴に関しては当たらずとも遠からずというところかのう。
 それは妾の大切な僕の一匹のものじゃ」
 やれやれと首を振って魔種が溜息を吐いた。
(――四尾、それに金の瞳の白い狐。まさか……『天狐』? 魔種なら、元はこの世界生まれの純種という事か。
 備えをしてはいたけれど、こんなものが出てくるとは思いませんでした。この鈴、やはり……)
 魔種の返答を聞きながら油断せず冬佳は密かに愛刀を抜く。
「この風格、さぞかし名のある妖とお見受け致しますが……何故鈴をお求めに?」
「僕がどこぞに置き忘れた妾の大事な物を返してほしい、ただそれだけなのじゃが……ふむぅ……うまくいかぬのう」
 反応して竜胆を抜いた『金星獲り』すずな(p3p005307)の問いに自問自答のような答えを返す。
「やはり――殺してでも返してもらう方が良かろうのう」
 すぅっと魔種――鈴華御前が目を細め、殺気を露にする。その周囲を守るように金色の瞳の白い狐が鈴華御前に近づいた。
「誰を傷つけても欲しいものがあるのは人だろうと魔種だろうと同じかい」
 処刑剣「ユ・ヴェーレン」を抜いて構えた『宝飾眼の処刑人』シキ・ナイトアッシュ(p3p000229)は攻撃態勢を取るイレギュラーズに合わせるように動きを見せた周囲の狐たちに視線を向ける。
(狐というのは、豊穣では祀られることもあるのだったか。
 しかし、祀られる存在にしては、禍々しい気配を感じる。それに……)
 会敵と共に敵の様子を見て、中央の女の濃密な気配に手を握る。
(魔種か。共にいるということは、妖の類で合っていそうだな)
「同じ巫女の好、水瀬さんをお助けします。
 それにその鈴、良くないものを感じますので、放置はできません」
 たまたま近くにいた『流星光底の如く』小金井・正純(p3p008000)はそういうと、周囲に注意を向けた。
 周囲には突如として姿を現した謎の存在に対する奇異の目と動揺が見られるばかりだった。
 ついでに言えば、冬佳と魔種の問答を聞き入れた数人が状況に慌てつつあった。
 今のところは大丈夫だが、このまま戦い始めれば確実に巻き込まれるだろう。
「ここにいては危険です、早く避難を。
 大丈夫です、私と星々の加護があなた方を守りましょう。さあ、早く」
 正純は信仰を説くように滔々と民衆に向けて語り掛ける。
 異常な状況にようやく反応を示し始めた民衆が正純の言葉に促されるように動き始める。
 すずなはそんな正純に避難誘導を任せつつ、自らも声を上げる。
「早く離れて下さい! これよりここは鉄火場になります故……!」
 剣を構えて伝えるすずなの言葉に鬼気迫るものを感じたのか、民衆の動きは鋭い。
 偶然、近くでかき氷を頬張っていた『戦神』茶屋ヶ坂 戦神 秋奈(p3p006862)はふとその状況に視線を向けた。
(んんん~! 何アレ何アレっ! これ助太刀したほうがいいやつ?
 ぐへー。はぁ、まさかお祭りでやきそばとかき氷食べているときに鉢合わせするとは……)
 とりあえず手元のかき氷を全部かきこんで頭キーンなりつつ意識を戦闘モードに切り替える。
(いーぜいーぜっ! テンションあげぽよー! ……で、『ぽよ』って結局なんなんだっけ?)
 まだちょっとだけ切り替わってなかった。
 何はともあれ、剣を抜き放ち、すぐさまそちらへと駆けだした。
 一方、ちょうどそのころ、付近の空を飛ぶ影があった。影の正体――『煌雷竜』アルペストゥス(p3p000029)は濃密な魔力に身体を震わせる。
 そのまま、人が水辺に飛び込むように急転直下、地上目掛けて落ちていく。
 地上に着地すると同時、ばりばりと弱めの静電気を放出し、アルペストゥスは唸り声を上げた。
(お祭りの日に何やら物騒なことが起きているけど……
 ふむ、相手は綺麗な御仁だが……魔種か……ならば出番だ)
「換装!」
 瞬間、金色の髪と赤い瞳が竜を模したようなヘルムの奥に隠れ、その肉体も竜のような形状の鎧の下に消えていく。
 竜の角の如きうねる槍、同じく竜の翼のような形状の盾を構える騎士――『ヴァイスドラッヘ』レイリ―=シュタイン(p3p007270)は文字通りのヴァイスドラッヘ――白い竜の如き姿を見せた。
「ヴァイスドラッヘ! 参上! 善良なる者を襲う者よ、覚悟しろ!」
 ポーズを決め、真っすぐに敵を見据えれば、相手が目を見開いていた。

「なるほどのう……ここまで集まれば、否が応にでも分かるわ。その方ら、神使であろう?」
 見開いた双眸を細め、それまで以上の殺気を漏らしながら、鈴華御前がパンッ、と扇子を開いた。
「であれば――なおのこと、殺して奪い取ってもよかろうというものよなぁ!」
 その手に重厚な魔力が籠められていく。
 レイリーは直ぐに反応すると、鈴華御前の前へと躍り出た。
「綺麗なお姉さん。少しの間お相手してもらいたいな?」
「ほほほほ、妾をお姉さんとは。これは照れるのう……そのように言われたのは幾年ぶりか」
 躍り出たレイリーの静かな名乗りとほぼ同時、ゴウ、と旋風が駆け抜けた。
 一列を薙ぎ払う強烈な風が、近くにいたのイレギュラーズ一部を吹き飛ばす。
 レイリーは自らの身体が煽られるのを槍を地面に突き立て抑えながら、グッと前を向いた。
「貴女が私だけを見るなら最後まで受け止めてあげる」
「ほほほほ、それならば、其方だけを見るだけの魅力を見せてもらわんとのう」
 嫣然と笑みを浮かべた魔性がレイリーを見つめていた。
 名乗り向上が効いている気がしない。
 ある種の知性に満ちたその双眸は単純にレイリーとの相対を楽しんでいるようだった。
 金色の瞳と白い毛並みを持つ狐が走り抜ける。
 狐はジグザグに駆け抜け、アルペストゥスへと飛び込んだ。
 バリバリと爆ぜる電撃と妖力の籠った牙がまじりあい、強烈な光を放つ。
 すずなは鈴華御前の下を離れてイレギュラーズの方へ――より正確には冬佳の方へ迫る気狐の一匹へと竜胆を閃かせる。
 駆け抜けた刃が二度にわたって狐を切り伏せ、瀕死に追い込んだところで三撃目が上段から狐を斬り伏せた。
 氷の刃を持つ刀状の剣を冬佳はまっすぐに横に薙いだ。
 放たれた清冽な水の刃は気狐の一匹を足元から切り裂いた。
 秋奈は武骨な姉妹刀、緋憑と奏を用いて崋山の刀を叩き込んだ。
 気狐へと走りぬけた一撃が華水月によって開いた傷を押し開くように更なる傷を刻む。
 ジョージは自らの体内を駆け巡る魔力を活性化させると、こぶしを握り締め大地に叩きつけた。
 魔力は強烈な暴風域と化して3匹の気狐を包み込んだ。
「……オオオオウッ!!」
 アルペストゥスは白尾双から逃れるように間合いを開けると、気狐へと狙いを定めた。
 バリバリと音を立てたアルペストゥスは口を軽く開き、雷撃を放つ。
 強烈な弾丸となった雷撃が瀕死の気狐へと撃ち抜かれた。
 シキはまっすぐに走り抜けると、傷を受けつつ立ち上がる2匹の気狐を巻き込むように平たく長方形をした刃の剣を振るう。
 連続する猛攻撃が瞬く間に気狐を鮮血に染めていく。
 よろめく気狐めがけ、狙い澄ましたように矢が走る。
 精密な一撃は気狐を真っすぐに撃ち抜いた。


 早々に気狐達を叩き潰したイレギュラーズ達は魔種の周囲へと再び集結していた。
『ナァアァァァァ!!』
 白い毛並みをした二尾の狐が吼える。
 それはまるで猫の鳴き声のようで。
 人々を甘く誘う独特な音色がしていた。
 脳髄が痺れ、数人の視線が狐へと誘導される。
「ほほっ、やはりまだ幼き野狐では神使の相手は悪かったようじゃのう……
 いやはや、哀れなことをした」
「一手、馳走致しましょう――お覚悟を!」
 すずなは扇子を片手に悠々とイレギュラーズ達を――その後ろで倒れる気狐達を見る魔種に切っ先を向け、踏み込んだ。
 洗練された真っすぐに滑る刃の動きを合わせるように、魔種が扇子を持ち上げる。
 まるで力を入れてないであろうその仕草で受けた衝撃は重い。
「ほほ……愛しき子らを討たれるのに手を抜くわけにはいかぬのう……」
 細い目が開かれる。金色の瞳が妖しく光り輝く。
「ほれ――飛ぶがよいわ」
 直後――ズドンと、重い何かを撃ちこまれたような衝撃が腹部に走る。
 つんざくような音、遅れて爆風――すずなの身体は後方に向かって吹き飛ばされた。
「鈴を返してほしいというだけの話じゃったが、こうなるとはのう――じゃが、戯れとはいくまいの。
 さて、そこのおなごや、もう一度聞くが、それの鈴をどこで手に入れたのかのう?」
 鈴華御前を中心に渦を巻くように放たれる暴風と、散りつく紅蓮の焔――誰の目にも分かる、明確な敵意を放ち、女は笑みを浮かべた。
「さて……存じ上げませんね」
 問われた冬佳はさも平然とそう答える。鈴の出本も、御先狐についても。わざわざ敵に教えてやる筋合いなどない。
「……なるほどのう。その方の心を見ても意味はなさそうじゃのう……嘘の匂いがするわ」
 すぅと目を細めた鈴華御前は冬佳を見て、あきらめたように呟いた。
 一方の冬佳は戦場の後方で清浄なる神水を媒介にすずなへと癒しの術法を行使する。
 傷口を覆いつくした水の華が衝撃と共に縛り付けられた呪いを解き、傷を癒していく。
「さすがに四尾の妖狐……! 九尾とは行かずとも、相当の貫禄……気を引き締めねば!」
 立ち上がったすずなは気合を入れなおして刀を向ける。
「ほほほ、さて、次と行こうかのう」
 パン、叩きつけられた扇子の音が、否に響く。
 レイリーはその身を包む白き装甲に絶対不可侵の守護の力を手にすると、鈴華御前の眼前へと進み出る。
「ほほほ、おぬしばかりに手をかけてられないのじゃが……
 こうも妾の前に出るのじゃ、大方、守りに自信があるのじゃろうし」
 盾を構え、衝撃に備えた。ズドンと受けた衝撃に身体が後ろの飛ばされかける。
 装甲さえ貫き浸透する衝撃は激しく、内臓が揺さぶられる感覚がした。
 それでも、レイリーは足を前に踏み込んだ。
 敵の目が細くなる。
「いやじゃのう――これじゃから、守りが得意な奴とは戦いとうないのじゃ」
「何度でも言ってあげる。
 やらせはしない! まずは私からよって!」
 口の中に感じる鉄の味を無視して、竜の頭部を思わせる兜の下、レイリーはまっすぐに敵にそう告げた。
「戯れるには愉しいが、本気を出すには面倒なことよ……」
 すぅと細められた目には、言うほどの不快感は見られない。
 レイリーを射抜き、追いかけるその目は、どちらかというと、好ましい相手を見るようなそれだった。
「いいねいいねっ敵さんに目を付けられる!
 でもね私を無視しちゃダメなんだぜっ」
 秋奈はレイリーと鈴華御前の間に割り込むようにして剣を閃かせた。
 踏み込み――同時に走らせた刀は、文字通りの閃光の如くシンプルな軌跡を描く。
 しかれども、それは純粋ゆえに振るう手に迷いなど起こらない。
 放たれた剣は鈴華御前に傷を刻む。
 ぱさりと、美しい白の髪が風に靡いて消えていく。
 ジョージは秋奈とは別の方向から至近する。
「俺のスタイルは、刀のように鋭利ではない。盾のように硬くもない。
 ――だが、俺の肉体は、なまくらな刀よりは鋭く、生半可な盾よりは強い」
 ジョージは拳を握り締めた。
 漁火の如き青白い妖気をたなびかせるガントレットがジョージの気迫に応じるように更に輝きを増した。
 打ち込むは嵐の前兆。波浪が崩れるように、叩き込まれた強烈な拳打は鋭く。
 鈴華御前の防御行動よりも速く深く突き刺さる。
 正純は弓を引き絞る。放たれたそれはオリオンを形作る一つ星。闇夜に光る眩き星。
 その矢は白尾双を中心に、鈴華御前を巻き込んで突き立っていく。
 空高く舞い上がったアルペストゥスは自らの雷霆を放つ。
 雷霆は鞭のようにしなり走り、敵を縛り付けんと輝きを増した。
 シキは疾走すると、処刑剣に魔力を込める。
 跳躍と共に首を刈るように放たれた斬撃が首筋に微かな傷を付ける。
 そのまま無理矢理に身体を動かし、シキが放つは無形の術。
 型なき斬撃は躱しがたく、致命的な傷を刻んでいく。
「――今度は当てます!」
 すずなは一気に間合いを詰めた。
 今度こそ――そう強く心に刻みながら放つ無窮の斬撃。
 合わせられるような扇子をぐるりと迂回するように斬り降ろし、そのまま突きへ。
 長尺刀とはとても思えぬ滑らかな斬撃の軌跡。
 しかしその本命は――文字通りの首だ。
 連続で打ち込まれる攻撃に鈴華御前の目が見開かれた。
 そのまま強烈な斬傷に喉元を抑え、愛おし気に笑みを浮かべる。
「ほほほほ、愛おしいのぉ……妾は、強いものは好きじゃぞ」
 蕩けるように笑って、魔種が魔力を込めていく。


 戦いは継続していた。想定よりも形勢は不利といえる。
 魔種という強敵を相手にしているというのもあるが、敵の情報が薄く、何が起こるか分からないのに状態異常を受けた際の対応が薄すぎた。
 結果的に、完全に無視していた白尾双の精神への攻撃により鈴華御前への火力の集中がおろそかにならざるを得なかった。
 とはいえ、鈴華御前との戦いを通じて敵のことも把握できつつある。
 回避行動を殆ど取らない鈴華御前はその代わりとでもいうのか、堅牢な防御技術と抵抗能力を持っていた。
 その攻撃は遠くは超遠まで届き、自分を中心に範囲を撃ち抜くもの、カウンターを撃ち込むものなどがある。
 異常なまでの反応速度を誇る白尾双は精神攻撃を主体として鈴華御前の補佐をし続けていた。
 パンドラの箱はいくつも開き、幾度か魔種への痛撃も与えこそしてはいるものの、一つ一つを確実にこなして勝てる相手だ。
「ほほほ、お主。その鈴、暫し預けるとしよう。
 返してほしかったのは事実じゃが……その鈴よりもお主らの力の方が愛おしいわ。
 次は遊ばぬ。全力で戦おうぞ」
 ぱたぱたと扇子で自らを仰ぐ魔種がふいに魔力を高めていく。
 暴風がより一層吹き荒れる。
「待ちなさい……!」
 魔力を練り上げ、仲間を癒しながら声を張り上げる。
「ま、待て!」
 一部に罅の割れた鎧を抑えながら、レイリーは立ち上がる。
「嫌じゃ……其方の堅牢さは見事じゃったが……
 これ以上は戦いとうない。いつ援軍が来るやもわからぬしのう……」
 そう呟いて、扇子を振るった魔種の周囲で旋風が爆ぜた。
 次の瞬間、そこには魔種も狐も存在していなかった。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

アルペストゥス(p3p000029)[重傷]
煌雷竜
レイリー=シュタイン(p3p007270)[重傷]
ヴァイスドラッヘ

あとがき

お疲れさまでしたイレギュラーズ。
辛勝でございます。ひとまずは傷をお癒し下さいませ。

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