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シナリオ詳細

<禍ツ星>サバンナを召喚するタイプの呪具

完了

参加者 : 10 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●僕たちはその獣の名前をしらない
 僕たちの村には『御神体』と呼ばれる大事な木彫りの像がある。
 祭りの時には表に出されてくるもので、みんなが毎年、その姿を拝むことができた。
 御神体は犬や猫に似た四足歩行の動物の形をしているが、それらとはまるで異なるものだ。
 猛々しいたてがみを纏い、その姿はまさに獣たちの王という風情で、僕はそれが大好きだった。
 だから、いい加減、大人の仲間入りをした身であっても、祭の日にはこうして、御神体が持ち出される儀式を最前列で眺めることにしている。
 それらしい笛の音と共に、ゆっくりと運び出される御神体。だが今年は、どこか様子が違う。それがわかったのは、毎年熱心に見ているからだろうか。その『どこか』はすぐに分かった。
 御神体が黒く染まり、妖しい光を放ち始めると、他の皆も気づいたのか、何事ぞと目を剥き、騒ぎ始める。
 そうこうしている内にも御神体は輝きを強め、やがてそれが収まる頃、そこに居たのは御神体と同じ姿をした一匹の大きな獣だった。
 見た目相応の力強さと、リアルになった四肢から見て取れる、やはり猫を思わせるしなやかさ。これは御神体に命が宿ったのだろうか。皆、それをどう判断すれば良いか迷っていた時、その獣は我々に目もくれず、村の奥へと走り始めた。
「あっ……」
 行ってしまう。思わず手を伸ばし、自分もそちらへと駆け出そうとした時、同期の男に肩を掴まれた。
「待て、これを見ろ……!!」
 言われて見れば、獣の通った後に緑が生い茂り、青々としている。しかしそれらの植物はどれも見たことがないものだ。
 そして、心做しかいつもより暑い……ざあらりと、雨が降ってきた。この季節に特有のにわか雨だろう。そう思っていたが、どうにもいつもと違う気がする。
 それには同期も気づいたようで。
「まさかこれは、この雨の強さは……雨季か!?」
「馬鹿な、梅雨の間違いだろう。ここらは亜熱帯気候だぞ!」
 このあたりはきちんと四季があるものだ。雨季と乾季に分かれる熱帯系の気候ではない。
 しかし。
「ぎゃあ、でかい猫が襲ってくる!!」
「儂の盆栽がヤシの木に!!」
「馬が! なんか白黒の馬の群れがーー!!」
 あちこちで聞こえる悲鳴。どうやらあの獣が通った後は全てこうなっているようだった。
「馬鹿な……サバンナ化しているのか!?」
「そうだ、あの獣は、通った場所をサバンナにしてしまうんだ!!」
「なんてことだ、このまま気候が変わっては、作物がみんなだめになってしまうぞ!!」
 気候の急激な変化。広がる前になんとしても止めなくては。
「助けてくれ! オラの田んぼのコメが全部インディカ米に!!」
「何ぃ!? うちの村の主食はジャポニカ米だというのに!!」
 最早一刻の猶予も無いようだった。

●舌足らずとは少し違う
 今年の夏祭りはカムイカグラで開催される。
 女王イザベラより提案されたそれは、特異運命座標を忌むナナオウギ最高権力者、天香・長胤には到底受け入れてもらえるはずのないものと思われていたが、彼の庇護する巫女姫が頷いたため、拍子抜けにもあっさりと開催される運びとなった。
 しかし、問題もある。カムイカグラの首相が魔種であることを始め、特異運命座標にとっては解決すべき憂慮が山積みである。
 そして、ここにもひとつ。
「どうやら、おかしニャ『呪具』ってものが出回っているみたいでさ」
 情報屋の発したものによれば、祭りの準備、事前儀式を行っていたさる村で、御神体とされていた像から突如、肉食獣のようなものが召喚されたという。
 このような呪具が各地で確認されているらしく、このまま放置していては夏祭りそのものを中止せざるを得なくなる。
 カムイカグラにしても、海洋からの提案を受け入れた手前、外交的にもなんとか成功させたいところだろう。
 ローレットとしても、せっかく友好関係の第一歩とできそうなこれを台無しにさせるわけにいかない。早急に、これらに対処する必要があった。
「でね、ニャんでも、この獣が通った場所がサバンニャ化するんだってさ」
 …………。
 なんて?
「サバンニャ」
 サバンナ。
「サバンニャ」
 どっち?
「ごめんね、あちし一部の発音が苦手でさ」
 そっかあ。
 じゃあ、サバンナになるんだな。
 よくわかんないけど、対処するぞ。
 みんなでサバンニャ化を食い止めよう!

GMコメント

皆様如何お過ごしでしょう、yakigoteです。

さる村の『御神体』が呪具と化し、そこから召喚された獣が村をサバンナ化して回っています。
このまま気候が変わってしまえば、人々の生活も変わってしまうでしょう。
夏祭りだって、浴衣や屋台によるものから皆で水を掛け合ったり、顔に化粧をして音楽とともに踊る系のものに変わってしまいます。
これを食い止めてください。

【エネミーデータ】
■ライオン
・呪具から召喚された獣。通った場所がサバンナ化します。
・サバンナ化すると植物も気候も住んでいる生き物もサバンナになっていきます。松の木はヤシの木に変わり、気候はサバナ気候に、木々が生い茂り、周囲からは『オッオッオッオッ』とか猿系の鳴き声が響いてきます。
・ライオン自体は群れの長たるオスライオンくらいの戦闘力しか無く、積極的に戦おうとはしません。村中を逃げ回り、周囲をサバンナにしていきます。
・道中、妨害してくるのはサバンナの動物や虫、地形などです。チーターやシマウマの群れが容赦なく襲来し、急に湿度や気温が変わると体調にもう不安を覚えることでしょう。
・ライオンは村全土をサバンナにすると他の土地もサバンナにすべく、村を出ていってしまいます。そうなる前に、ライオンを退治してください。

【シチュエーションデータ】
■サバンナに埋もれた村
・ほぼサバンナになった村。
・和風の家がサバンナの風景内に見ることができる。
・村人も大半がすでにサバンナ化しており、出で立ちもよりサバンナに適したものに変貌しています。
・雨季になったので雨が降っています。

  • <禍ツ星>サバンナを召喚するタイプの呪具完了
  • GM名yakigote
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2020年08月07日 22時10分
  • 参加人数10/10人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 10 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(10人)

グレイシア=オルトバーン(p3p000111)
勇者と生きる魔王
オデット・ソレーユ・クリスタリア(p3p000282)
鏡花の矛
ムスティスラーフ・バイルシュタイン(p3p001619)
黒武護
新田 寛治(p3p005073)
ファンドマネージャ
ルチア・アフラニア・水月(p3p006865)
鏡花の癒し
太井 数子(p3p007907)
不撓の刃
黒影 鬼灯(p3p007949)
やさしき愛妻家
シューヴェルト・シェヴァリエ(p3p008387)
天下無双の貴族騎士
しにゃこ(p3p008456)
可愛いもの好き
砧 琥太郎(p3p008773)
つよいおにだぞ

リプレイ

●大きな猫だと誰かが言った、多分眼が悪いのだろう
 雄大に走り、この地を塗り替える。目覚めてみれば、どうにも生きにくい環境であった。ならばそれらしい世界に変えてしまわねばなるまい。彼はその様に考えて、自分の思うようにあたりを変えることにした。

 だばだばに降り注ぐ雨が、傘に跳ねて重い音を連続させている。
 地に跳ねる水のせいで、靴や裾などはとうにそれらを吸い上げ、重くなっている。
 これから追いかける相手のことを思うと、傘をさしているわけにはいかず、このだだ降りの中に身を晒すのかと思うと、思わず深いため息が出た。
「ご神体の像に生命が宿り、歩いた道を異国の風景へと変えていく……状況を鑑みるに、元々豊穣にあるご神体では無かったのだろうか?」
『知識の蒐集者』グレイシア=オルトバーン(p3p000111)が仮説を立ててみるが、答えが出ることはないだろう。
「全く違う地方へと変貌させてしまう辺り、過去に訪れたウォーカーが作った像なのかもしれん」
「環境を変えるのは迷惑もいいところよ。倒して戻るかはわからないけど食い止めなきゃ!」
 この大雨と高気温の中、『木漏れ日妖精』オデット・ソレーユ・クリスタリア(p3p000282)の格好は水着である。ある意味、TPOに適しているといえた。
「こんなところで出番があるなんて思ってなかったけど、濡れていいのはいいわね!」
「サバンナ! 色々話を聞いたけど何かすごーい所だって聞いたよ!」
『ムスティおじーちゃん』ムスティスラーフ・バイルシュタイン(p3p001619)はサバンナを初めて見るようで、目の前に広がる異色の自然、環境に目を輝かせている。
 きっと豊穣とはまるで違う世界が待っていることだろう。
「どんな所なんだろうね! 楽しみ!」
「どうしてこんな事になってしまったんでしょうかね……」
 豊穣で見るそれとはまるで似つかない自然群は、『ファンドマネージャ』新田 寛治(p3p005073)がかつてテレビ番組の特集で見たようなそれらと同じものである。池を見かければカバが間違いなくいるだろう。野を駆けるチーターだって居るに違いない。
「まあ、お仕事ですからね。やりいますけど」
「ライオンといえば強さの象徴ではあるけれど……」
『「Concordia」船長』ルチア・アフラニア(p3p006865)の思い浮かべる獅子のイメージ。百獣の王、群れの長、印象の強い鬣。それは確かに、肉食獣の中でも別格の強さを持つものだと認識している。
「さすがに、周囲を構わず変質させるような者は頂けないわね? 大人しく退場いただきましょうか」
「ライオンと戦うなんて……倒したら私が百獣の王になってしまうわ!! かっこいい……」
『不撓の刃』太井 数子(p3p007907)はそんな自分を想像して目を輝かせた。そうはならんのではなかろうか。
「サファリパークでもこんなに近くで見ることないわよね! ……ハッ! あれはキリン!? かわいいわ……! 見てみて、ゾウもいる! かっこいー!!」
「なるほど呪具の力によってサバンナに……サバンナ? なんで?」
『お嫁殿と一緒』黒影 鬼灯(p3p007949)は素直に首を傾げた。
『動物さんたち ごきげんよう!』
 手元の嫁殿に、動物たちに手を振らせると。
「動物に喜ぶ嫁殿は非常に可愛らしいがこのままではサバンナになってしまう。。さぁ、舞台の幕を上げようか……なんか、決まらないな」
「ふむ、詳しくはわからないが、どうやらあのライオンが通ったところは大きく環境が変わるみたいだな……」
『貴族騎士』シューヴェルト・シェヴァリエ(p3p008387)と周囲の風景を比べてみるとギャップが凄い。絶対に今までなかった組み合わせだ。
「かなり厄介な事件だ。ここは本気でやらせてもらうとしよう」
「この御神体どこ産です……? 明らかにカムイグラ産じゃないですよね……」
『可愛いもの好き』しにゃこ(p3p008456)は依頼の説明から、木彫りのライオン像を想像した。ワンチャン、北の大地あたりで売ってそう。
「しにゃの耳はブチハイエナです。ブチハイエナの方が狩りは上手いんですよ? サバンナの覇者にどちらが相応しいか、勝負です!」
「神使になったからにはでっけー男になるって、村のとーちゃんかーちゃんに言ってきたんだ!」
 しかし、『おにだぞー』砧 琥太郎(p3p008773)の興味は別の所に惹かれてしまっているようだ。
「……なぁなぁ、外から来た奴ってあのニャアニャア言ってたねーちゃんみたいな服装ばっかりなのか?」
 残念ながら、特殊な例だよ。
 雨が少しだけ弱まったところを見計らい、傘をたたむ。
 一気に全身が濡れるが、手がふさがった状態で動物を追い回すこともできはしない。
 この広がるサバンナに、今ローレットが足を踏み入れた。

●インディカ米は炒める調理の方が良い
 腹が減ってきたが、見えるのは食いでのない猿ばかりだ。そろそろシマウマの一匹でも出てくればよいのだが。そう考えていると、獲物が見えた。幸いと食らいつく。目が冷めて、初めての食事だ。

 それはふと足を止めると、周囲を見回した。
 歩を進めた先から環境が変わり、サバンナとなっているところを見るに、これが件のライオンで間違いはないだろう。
 警戒をしている、と見える。
 何か、自分への敵意を感じ取ったのかも知れない。
 彼にとっての敵が現れる瞬間を、今か今かと待ち構えていた。

●サバンナ広げる雄ライオン、追っかけて
 追いかけてくる。あれらが追いかけてくる。かけっこは久方ぶりだ。ここは童心に返り、目一杯走ってみよう。当然、あたりを塗り替えることも忘れてはならない。

「いたか……」
 茂みを挟んだ向こう側から、グレイシアはライオンの存在を感じ取っていた。
 その所作を聴覚で持って聞き分ける。明らかに、警戒の気配を見せていた。これ以上近づけば気取られ、逃げられることは間違いない。
 もとより、初見で捕まえることが出来るとは考えていなかった。相手は狩りに長けた肉食獣。油断してかかって良い相手ではないのだから。
 気づかれることを承知で狼煙を上げ、仲間に知らせることにする。この雨で煙は見づらいだろうが、何もないよりは良いはずだ。
 煙を確認したのだろう。音でライオンが走り出したのがわかる。それで良い。しかしこちらも追いかけるべく立ち上があった時、グレイシアにはそれが立ちふさがった。
 長い角を持つ、牛と鹿の中間のような生き物。
「オリックス……!」
 それが50頭という群れをなし、グレイシアの行く手を阻んでいた。

 空からライオンを探していたオデットは、上げられた狼煙をいち早く確認し、現場へと急行することが出来ていた。
 走り逃げていくライオンが見える。そのままにしておけば、草原地帯の方へと逃げていきそうだ。オデットはそちら側に砂嵐を発生させた。
 砂嵐に驚いたのか、ライオンは一瞬だけ脚を止めるが、すぐさま方向を転換する。今度はどうやら森の方へと向かうようだった。
 それでいい。そうなるように、進路を限定したのだから。
「なんかこう、追い込み漁って変な感じだわ。でも協力するのは悪くないわね」
 より追い込むべくライオンを追いかけようとしたオデット。しかしサバンナの仲間たちが立ち塞がった。
「シマウマ……!!」
 シマウマである。馬と違い、尻尾の根元は毛がふさふさしていないのでスグに見分けることが出来るぞ。

 ライオンは森の中に入って驚いた。
 森とはこんなにも窮屈に感じるものだったろうか。木々の間とはこのような岩壁が立ち並ぶものだったろうか。
 それはムスティラーフの仕業であった。
 予め、バリケートを作成し、ライオンの進路をより限定的なものにしていたのだ。
 ライオンも高く積み上げられたそれらを無理に越えようとはせず、逃げられる道があるのならと狙い通りの進路へと進んでいく。
 しかし急ごしらえのそれらでは完璧とは行かないのか、途中、積み上げの低いバリを見つけたライオンが、進路をそちらに向けようとしてしまう。
 しかしムスティラーフにはもうひとつの対策があった。
 サバンナに対応すべく、彼自身がサバンナになることである。
 もう何言ってるかわからないが、サバンナになったムスティラーフはマサイとなり、口からマサイビームを発射してその進路を妨害するのだ。

 積み上げられたバリケートの上から、寛治はライオンの行方を追っていた。
 その格好はいつものスーツ姿ではなく、アロハとハーフパンツである。なんだか頑張ってバカンスに馴染もうとしているようにも見えるが、彼が来ていると、海外支部に転勤したリーマンに見えなくもない。力の限り生きてやれ。
 村の住民には、ライオンの討伐に巻き込まれると危ないので、その間は家から出ないように伝えてある。
 言語体型はカムイグラに来てからよく耳にするものよりも、明らかに「ウンバホ」言っていたようにも思えたが、そこは混沌である。どんな言語もバベってくれるので、寛治も安心してウンバホすることができた。
 目的地を確認する。そこはこの村で唯一、まだサバンナになっていないところ。
 御神体が祀られていたという、村にひとつしかない神社であった。

 木々の間を抜け、一般家屋の屋根に着地すると、ルチアはジェットパックのスイッチを切ってライオンが現れるのを待った。
 音で気づかれてはいけない。肉食獣というものはけして馬鹿ではない。こちらの意図に気づかれては、無理に進路を変えられてしまう恐れもあるからだ。
 アカシアやバオバブの見える風景に瓦屋根というのはなんともミスマッチであり、居心地を悪くさせる。
 と、来た。
 息を潜めて様子をうかがうと、ライオンが向こうから走ってくるのが見える。
 聞こえない音量で術式を展開し、ライオンの道の景色を変えた。
 それはサバンナからカムイグラらしい風景へ。ライオンに、そちらはまだ書き換えていないと、そうするべきだと誤認させるために。
 思惑は成功し、ライオンは思った方向へと走ってくれる。
 繊細なイメージの構築に気疲れしたか、ルチアは思わずため息をついた。

「かわいい、んだけど……」
 数子は困った顔でその巨体を見上げていた。
 キリンである。キリンの群れが高いところの葉っぱをもしゃもしゃしているのだ。
 仲間からの連絡で、もうじき、ここにもライオンが来ることはわかっている。誘導の邪魔になってしまうため、彼らには移動してもらわなければならなかった。
「悪いけど、あっちに行って頂戴?」
 小さな焚き火を作ってやれば、やはり動物は火を恐れる習性があるのか、キリン達はもしゃるのをやめて立ち去ってくれる。
 ちょっとだけ名残惜しい。こんな距離でキリンを見られる機会というのもそうそうないからだ。
 ライオンをなんとかしたら、村は戻ってしまうのだろうか。
 村には悪いけれど、なんだかもったいなかった。
 茂みが揺れる。ライオンが来たのだろう。頬をピシャリと叩いて、気合を入れ直した。
「来たわね! これ以上村をサバンナ化させないわよ」

 カムイグラらしい家屋、屋根の上を、一匹の猿が我が物顔で陣取っていた。
 それだけを聞けば、自然の残る地域ではそういうこともあるかもしれないと思うだろうか。
 しかし、それは猿は猿でも。
「マンドリル、だよな……」
 マンドリルであった。
 明らかに和風家屋とは不釣り合いである。
「突っ込んでは負けだ。理解できなくてもそういうものなのだ。心を無にしろ黒影鬼灯」
 こめかみを押さえながら、自分に言い聞かせる。サバンナになるって何だって、思っちゃいけないのだ黒影鬼灯。
 マンドリルが何かを感じ取ったのか、慌てて立ち去っていく。
 それが何に拠るものなのかはわかっていた。
 走りくる、その姿は。
『まぁ! ライオンさんよ鬼灯くん! とっても大きいのねぇ!』
「うん、大きいね。嫁殿」
 そろそろ、目的地も近い。

 それは凄い光景であった。
「ここにはもうじき、肉食獣が来る。外に居ては危険なんだ。どうか、今しばらく家の中にいてくれないか」
 西洋騎士然としたシューヴェルトとサバンナ現地民族になったカムイグラ民の会話である。
 方や綺羅びやか、方や腰蓑。
 しかし混沌ではこの会話も成り立っているのである。世界のシステムって凄い。
「いや、僕は大丈夫だ。戦うためにここに来ているからな。キリンもゾウも平気だ」
 気遣ってくれた現地の人はもそれで納得したのか、家の中へ入っていく。
 ここにももうじき、ライオンがやってくる。シューヴェルトの視線は神社の方へ。
 さて、ひと仕事。神社は見上げるほど小高い丘の上。それに続く長大な階段を、ライオンには登ってもらわねばならない。
「手加減は、しなくて大丈夫そうだな」
 なにせ、百獣の王が相手なのだから。

 もうすぐだ、という仲間からの連絡に、しにゃこはようやく完成したそれの前で胸をなでおろしていた。
 神社へと続く長い階段。その長大な一本道から外れられてはならないと、階段の両脇を有刺鉄線で囲んでいたのだ。
 階段という斜めの環境で、それらを張り終えたのはつい今しがたのことである。ライオンが来るまでに間に合うか不安であったが、ブチハイエナの維持を見せた。
 しかしほっと息をついたのもつかの間、階段の入口に、別の動物が現れたのを見つけてしまったしにゃこは、長い有刺鉄線で悲鳴を上げる腰を伸ばしながら、階段を降りていく。
 入り口に陣取っていたのはハイエナであった。
 数匹、何かを探すようにうろついている。
 大方、狩りの気配を感じて現れたのだろう。流石だと感心しながらも、追い払う。
「倒したらサバンナ部分ちゃんと戻るんですよね……?」
 さあ、どうだろう。

 階段を駆け登ったライオンも、流石に長距離の逃亡で披露したのか、その足取りも少々乱れているように感じられた。
 しかし、ようやく、追いかけてきた者も見当たらなくなった。
 空腹を感じて視線を巡らせるが、こんな時に限ってシマウマの一頭も見当たらない。
 しかし鼻孔をくすぐるものがあった。これは、肉の匂いである。
 きょろきょろと肉の匂いをたどるその姿を、琥太郎は神社の賽銭箱に隠れてじっと見ていた。
 肉を置いたのは彼である。上手くいくだろうか。じっとその動向を見守っている。
 そしてライオンがついに肉を見つけ、披露した頭から警戒心も抜けさり、それを口にした瞬間。
 縄が引かれ、足を捕らえ、ライオンは宙吊りにされてしまう。
 罠だと気づいたときにはもう遅く、百獣の王は空腹のまま、ぐるると喉を鳴らしていた。

●ウンバホ
 良いかけっこだった。満足だ。

 ライオンは無事、御神体へと戻り、感謝の意を表す村人と、イレギュラーズ達は握手を交わしていた。
 村も徐々に戻りつつある。しかし徐々にであるせいでどうにも中途半端だ。
 村人は着物の上から腰蓑を着け、顔には戦化粧が残っている。
 屋根瓦の上には相変わらずマンドリルが鎮座してあくびをしているし、家猫の隣で丸くなっているのはチーターだろうか。
 なんとも折衷の過ぎる様に一同は何も言うこと無く、広大な草原地帯を帰路につくのであった。

 了。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

後遺症は残るもの。

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