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シナリオ詳細

<禍ツ星>蛇の毒ともののふの策

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 カムイグラ。イレギュラーズの知る混沌大陸から遥かな『静寂の青』を抜けたその先に存在した、閉ざされた国。
 政治の中枢を魔種に蝕まれ、種族間の差別も横行する彼の国の問題は山積みといえた。
 そんなカムイグラにてイレギュラーズが活動を開始してから少し。
 ネオ・フロンティア海洋王国からカムイグラに向けてサマーフェスティバルの合同開催が提案された。
 その提案は、カムイグラの実質的な政権を握る天香・長胤の快諾により思いのほか簡単に認められた。
 イレギュラーズを嫌う彼のその怪しいほどの簡単な了承の理由はともかく。
 ひとまずは夏祭りを楽しもう――そんな最中の事であった。


 高天京の一角にある、大きな和風屋敷。
 そこはとある八百万の住まう大屋敷である。
 そんな屋敷の正門前にて、他人からはカガミの君と呼ばれることのある人物が立っていた。
 腰には刀らしき物がおさめられ、背中には弓のような物を背負い、いかにも武者といった雰囲気がある。
 門番らしきの2人の鬼人種が槍を構えて警戒をみせると、懐から1つの封筒のようなものを取り出し、門番に放り投げた。
「開けてみよ」
 恐る恐る、一人の門番がそれを開く。そしてその中身をよく読むと、再び槍を構えた。
「刀と弓をこちらに渡せ! まさか武器を一緒に持ち込めるとは思うまいな」
 槍を突き出しながら言う門番に、外套の人物は肩を竦めると直ぐに刀と弓をそれぞれ門番に預けた。
「扱いに注意することだ。下手に扱えば死ぬぞ」
 その人物はそういうと門番の方に足を踏みこむ。
 まるで物ともせぬ姿に驚きながら、門番たちは逆におじけづいたように槍を立ててカガミの君を見送るのだった。

 そのまま屋敷の中に入り込んだカガミの君は、一人の男の歓迎を受け、彼に先導されて屋敷の廊下を歩き続け、ある程度のところで障子を開いて中に。
 そのまま屋敷の中を、警戒するように歩き続けた後、やけに開けた空間にて男が立ち止まる。
「ようこそお越しくださいました、カガミの君」
 胡散臭いを絵に書けばこんな形であろうといった雰囲気の男が、にこにこしながら笑う。
「実はでございまして。……そろそろ、貴方様にも覚悟を決めて頂こうと思いましてな」
 そういうや、男は口元を開く。裂けるように広がる口の大きさは蛇を思わせ、長い舌がだらりと伸びた。
「そうか……ははっ、面白いな、蛇めが」
「……なんですかな、君よ。今の私には、あなたを殺すことなど容易いのでございますよ!」
「いや、まさか……貴様がここまで阿呆だとは思っていなかったのだ」
 やれやれと呆れたように首を動かしたカガミの君は、少しだけ間合いを開ける。
「そもそもだ――まさか本気で何の対処もせずにここに来たと思うたか?
 だとするなら、貴様はどこまでも間抜けというものだ」
 ぴくりと男の表情が揺らぐ。
「であれば、どうするというのですかな!」
 そういうや、男が手をカガミの君の方に向ける。それと同時、裾から勢いよく飛び出したのは、蛇だった。
「よろしく頼むぞ、神使諸君」
 まるで跳ぶように軽やかに後ろに下がったカガミの君の背後で、バンッ、と音がした。


 ――時を遡ること数日前。
 ローレットのカムイグラでの拠点に、外套と頭巾で詳細を隠す謎の人物が姿を現し、依頼したいことがあると言ってきた。
「数日後、カムイグラの祭祀があることは貴殿らも知っていると思うが……その日、少しばかり時間を借りたい」
「時間?」
「あぁ。実はその祭祀に、招待されたのだ。
 そして十中八九、私はその日に殺されるだろう」
「殺される……?」
「あぁ。『私が君たちに合流するのを警戒している』のだ。
 であれば、合流される前に殺してしまえと、まぁ、こういう次第だな」
「分かってるなら行かなきゃいいんじゃ……」
「もちろん、それもありだが……私は諸君らに期待しているのだ。
 君達のことが強いことは以前に目にした。
 だから次は本当に魔なる者と戦っている場所を見せてほしい」
 そういうと、カガミの君は静かに君を見つめてそう言った。
 魔の者、その言葉が意味するものは1つであろう。
 魔種――不倶戴天の彼らのことだ。
 相手が相手と悟り、君は少しばかり深呼吸した。

GMコメント

さてこんばんは、春野紅葉です。
遂に始まったカムイグラにおける魔種の攻勢。
その最中の謀略を食い止めましょう!

●オーダー
カガミの君の救出及び生存

●戦場
高天京にあるとあるお屋敷。
大広間の類であろうカガミの君がいる場所は
天井も高くかなり広くなっています。

●状況
リプレイではオープニングの場面の若干前からスタートします。
皆さんの存在を悟られないために皆さんは少しだけ後から潜入する形になるためです。
隠密系のスキルを持っている方であれば、密かにカガミの君の後をついていっても構いません。

●エネミーデータ
【呪蛇刑部(じゅだぎょうぶ)】
 蛇の要素を持つ八百万が反転した魔種です。
 皆さんの接敵時、カガミの君へ向けて裾から出した蛇を飛ばしています。
 なお、部屋への到達が遅ければ到達時点での状況は悪化します。

下半身が蛇のそれであり、両脇腹あたりから各々2本の蛇が生えています。
はたから見ると腕が6本あるような印象を受けるでしょう。

その姿形から、反応、回避、EXAなどに秀でた能力を使用すると推察されます。
また、猛毒や致死毒を含む毒系列、呪縛、石化を含む麻痺系列のBS攻撃が予想されます。

【呪蛇】×4
 呪蛇刑部子飼いの蛇たちです。
 蛇としてはかなりの大きめのサイズで、やや強いです。
 キャリアーではないので狂気の伝播は起きません。
 ただし、ある種の毒性を帯びており毒系列、麻痺系列のBSを付与する攻撃をしてきます。
また、どうやらこれらの牙は何らかの加工がもたらされているようです。

【門番×2】
その実力で門守れるか?ってぐらい雑魚です。
槍で攻撃してきます。
誰かに任せ他の面々で突入するもよし、さっさと倒してしまうもよしです。

なお、彼らはカガミの君の武器を持っています。
武器を回収してあげる場合は倒す必要があります。
カガミの君の武器では攻撃してきません(というより、力量的に扱いきれません)

なお、2人以外には衛兵や使用人などの姿は見受けられません。

●NPCデータ
【カガミの君】
救出対象兼場合によっては友軍ユニット。
イレギュラーズと同程度のスペックを有しますが、今のところ武器がありません。

現状では素の能力値で回避に徹しています。
武器を渡せば戦いに参加することができます。
もちろん、守りに徹させることも可能です。
ただし、『魔種と戦っているところを見せてほしい』という理由上、彼だけに逃げてもらうことは難しいでしょう。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はCです。
 情報精度は低めで、不測の事態が起きる可能性があります。

  • <禍ツ星>蛇の毒ともののふの策Lv:10以上完了
  • GM名春野紅葉
  • 種別通常
  • 難易度HARD
  • 冒険終了日時2020年08月05日 22時35分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

銀城 黒羽(p3p000505)
ブーケ ガルニ(p3p002361)
兎身創痍
マニエラ・マギサ・メーヴィン(p3p002906)
記憶に刻め
久住・舞花(p3p005056)
氷月玲瓏
アリア・テリア(p3p007129)
いにしえと今の紡ぎ手
京極・神那(p3p007138)
サブマリン小太刀
桐神 きり(p3p007718)
小金井・正純(p3p008000)
ただの女

リプレイ


『――あぁ。そうか、故にあれは足繁く私の下に来ていたのだな……
 あれの声も阿呆であったゆえ無視してはいたが……
 ご助言感謝する。くれぐれも注意しよう』
 『月下美人』久住・舞花(p3p005056)はカガミの君へ魔種というものを説明した時のことを思い出す。
(命を付け狙われる理由、何やら事情があるという事は解る。
 ――魔種の事にも気付いている、となれば……さて。彼の立ち位置をどう見るか……)
「にゃはは、こらまたえらい期待されたもんやねぇ……?」
(ところでカガミさんってどう書くんやろ。普通に鏡、加賀美、鑑……蛇身、だったりしてなあ)
 笑う『兎身創痍』ブーケ ガルニ(p3p002361)はそんなことを考えながらカガミの君が門番に武器を預けるのを見ていた。
「物好きも、いるもんじゃね。わざわざ他人の戦闘がみたいだなんて……値踏みかい?」
 ブーケの言葉に続けるようにして云う『策士』リアナル・マギサ・メーヴィン(p3p002906)はこっそりと青色の扇子を広げる。
(自分が命を狙われているというのに、豪胆な方ですねー
 それだけ私たちを信用しているのか、そうまでしないといけない何かがあるのか……)
 桐神 きり(p3p007718)はカガミの君のことを考えながら、その一方で自らは仕事をこなすだけだと割り切っていた。
 そんなきりとは反対の感想を抱いていたのは『流星光底の如く』小金井・正純(p3p008000)だ。
(相手が魔種だと分かっているのに、こちらの協力を取り付けたとはいえ単身乗り込むなんて。
 向こうみずですねほんとに。呆れます)
 あきれ果てて溜息を吐きつつ、立ち上がる。
 その視線の先で、銀城 黒羽(p3p000505)が門番の視覚となる位置から屋敷の中へと飛び込むのが見えた。
「何者だ貴様ら! 刑部様はお客人とあっておられる。今すぐいね!」
「そうさね……」
 少し考えた様子を見せるリアナルの横で正純が動く。
「星々を信仰しません? 後で入信書持ってきますね!」
「勧誘か? 刑部様はそのようなものには興味がない! 今すぐ帰れ!」
「あ、そうですか。それならあなた方に罪はありませんが倒されてください」
 ぴょんっと間合いを取った正純のアルテマ・ルナティックから放たれた矢が2人の門番へと殺到するその最中、6人のイレギュラーズは門番たちの間を突っ切るようにして屋敷の中へと強行突破していく。
 それに続いて、片方の門番の足元に絶対零度の冷気が放たれた。

――――――
――――

 黒羽は気配を殺してカガミの君の後を追っていた。
 屋敷の中に入ってすぐ、カガミの君を歓迎した男に連れられて、彼は堂々とその後をついていく。
 どうやら両者は会話の一切をしていないらしい。やがて、男がある場所で障子の向こうに消える。
 そのまま2人は中にあった和室、襖で遮られた小部屋を幾つか突き進む。
 さて、それがどれくらい続いた後であろうか。
 向こうの部屋から不意に声がした。
「ようこそお越しくださいました、カガミの君」
 カガミの君の声ではない。魔種の者だろう。
 黒羽がちらりと視線を向ければ、開け放しておいた襖から仲間たちがこちらに向かってきているのが見えた。
 部屋の向こうでは、幾つかの会話――というより、どちらかというとカガミの君による挑発が執り行われている。
「――頼むぞ、神使諸君」
 ――声。
 黒羽は目の前の襖をバンっと叩きつけて押し開き、カガミの君と入れ替わるように蛇の前へ躍り出た。
 黄金の闘気を収束させ、鎧へと変じながら、伸びてきた蛇の牙を籠手化した闘気の上で受け、払う。
「お前程度の毒、俺に効くとは思わねぇことだ」
 立ちふさがる黒羽の姿に、呪蛇刑部が驚いたように目を開く。
「そういうことですか、神使、神使の方々でございますか!
 まぁ、構いません、貴方を殺せばいいのですから!
 お前たち、やっておしまい!」
 黒羽越しにカガミの君を見た呪蛇刑部が叫べば、柱を伝って4匹の蛇が姿を現した。
「ちょぉぉぉぉっと、待ったぁぁぁ!
 その陰謀、是が非でも防がせて……ぜぇ……貰うからね……はぁ」
 制止の声をあげた『希望の紡ぎ手』アリア・テリア(p3p007129)が肩で呼吸しながら息を整える。
 アリアは別の和室へと距離を取り、詩をつむぐ。
 異質な呪詛の歌はやがて質量を伴う紅蓮の蛇として可視化し、呪蛇刑部の足元からその身体を包み込む。
「がぁぁああ!!!!」
「カガミの君、こちらに下がってください!」
「あぁ、そうさせてもらおうか」
 悲鳴を上げる呪蛇刑部を視界に抑えながら、アリアは叫ぶ。
 その一方、呪蛇刑部と代わるように、畳に降りてきた蛇――呪蛇が1匹、アリア目掛けて滑るように進む。
 ブーケは後退したアリア、黒羽、カガミの君を追うような形となっている呪蛇めがけてファントムレイザーの不可視の刃を放った。
 不可視ゆえの防御不可能な一撃に呪蛇の身体が切り刻まれる。
「イレギュラーズとカガミの君が合流する前にカガミの君を消してしまえと……
 なるほど、確かにそれは道理ですね。それが出来るかどうかは別にして。
 そう上手くいかせないのが私達ですからね!」
 広間に踊りこんだ『サブマリン小太刀』京極・神那(p3p007138)はそう宣言し、アリアの方に後退したカガミの君の近くにいる呪蛇の下へ踊りこんだ。
 しゅるしゅると音を立てる蛇と間合いを調整しながら、一気に至近。虚式『風雅』を突くように蛇の方へ。
 伸びる腕の動きを変化させ、残像を引く刃が蛇に傷をつける。
「ふむ、今回の依頼の前に新しく手に入れた刀ですが中々しっくりきますね」
 手になじむ隠密刀に神那は頷きながら呟く。
 舞花は自らのギアを瞬間的に引き上げ、神速の踏み込みと共に愛刀を振りぬいた。
 バチリッーー紫電爆ぜる神速の一太刀が蛇の頭部に迫る。
 強烈な一撃を見舞われた呪蛇がひるんだ様に動きを止めた。
「まずは貴方からでございますねぇ」
 そういう呪蛇刑部の笑みが深くなる。
 袖の下からしゅるしゅると音を立てる2匹の蛇、まるで腕が4本あるような威容の男。
 その下半身がいつの間にか蛇のような姿に変じていた。
 身長が伸びたその異様な姿の敵を黒羽は見上げ、構える。
 その瞬間、袖の下から出てくる蛇が疾走し、連続して黒羽を痛めつける。
 黒羽はそれらすべてを受け止めながらも、反撃は決してしない。
「はっ、こんなもんかよ……」
 黒羽はそう返すや、自らの闘気を鎖のように伸ばし、呪蛇と刑部を縛り付けるべく伸ばす。
 自らの最適化を熟したきりは呪蛇達の攻撃を受けた仲間たちの方へ近くへと至近する。
 展開した魔術陣が光り輝き、仲間たちの傷を治癒していく。

 リアナルは戦闘が行われている場所にたどり着くと、仲間たちのいる中心辺りに移動する。
「主役は遅れてなんとやら。いや主役じゃないがね?」
 扇子を口元に寄せて悠々と笑う。その姿に多くの仲間たちに齎された状態異常が癒えていく。
 続くように現れた正純は弓を引いて構えた。
 引き出した矢は周囲にいた呪蛇と呪蛇刑部を諸共に打ち抜いた。


「……なるほどね」
 呪蛇刑部との戦いを続けていたアリアは後退しながら呟いた。
「……隙が欲しそうだ。お嬢さん、少し手助けをさせていただこう」
 アリアが次の一手を呪蛇刑部に打ち込もうとしていた時、カガミの君がそう告げ、弓を引き絞り、放った。
 尋常じゃない速度で放たれた三本の矢は一発目は躱され、二発目は首筋を掠め、三本目は胸元に突き立った。
 うめき声をあげる刑部を見て、アリアは指輪を介して魔力を高め、歌を歌う。
 歌は小さなキューブを形成する魔力となり、呪蛇刑部を内側へと取り込んだ。
 小さなうめき声と共に吐き出された呪蛇刑部の身体には複数の異常が満ちていた。
「えへへ、動けないかな? ごめんね?」
 呪蛇刑部がアリアを見て、恨めしそうに叫ぶ。
「残念だが、くるようだな」
「下がりましょう!」
 尋常じゃない速度で接近してきた呪蛇刑部の袖の下の蛇がアリアに食らいつこうとして、少女の動きに翻弄されてからぶった。
「ほう……見事な身のこなしだ。私も負けられないか……!」
 続けるように横なぎに放たれた刑部の下半身、蛇の尻尾のようになったそれをカガミの君が躱してみせる。

「まぁ、戦い方も千差万別…もっと強い奴もいれば頭のいい奴も色々さね」
 リアナルは2本の扇子を開き、舞を踊る。
 最適化された特殊な舞による自らへの支援と共に、続けた舞踊は周囲にいた仲間の気力を奮い立たせる。
「俺にも可愛い蛇ちゃんがおるんよねぇ、優しゅうしたってな」
 呪蛇の一匹を視界におさめたブーケは式符から毒蛇を呼び出すと、呪蛇めがけてけしかけた。
 毒蛇は呪蛇へと食らいつき、呪蛇による返すような一撃で式に戻って消えていく。
『シャァァア』
 口を大きく開けた蛇の意識が、不意にブーケからそれる。
 黒羽は黄金の闘気を迸らせ、ブーケに意識を向ける呪蛇を含むすべての呪蛇に縛鎖の如き闘気を飛ばしていた。
 呪蛇がブーケから視線を外し、黒羽の方へと走っていく。
 2匹の蛇による食らいつきが、黒羽の纏鎧の闘気を貫通し、肉体に傷を刻む。
 呪蛇のうち、1匹と神那は相対していた。
 ぎろりと睨むその蛇の瞳は神那を縛り付けていた。
 大口を開けた蛇の口が神那に食らいつく。神那はそれを何とか防ぐと、食らいついた蛇めがけて邪剣を閃かせた。
 その一撃は風雅な空気を保ち、逃げようとする蛇の首筋に向かって強烈な一閃を突き立て、鮮血と共に大きな隙を与えた。神那は口を離して後退した蛇向けて刀を構える。
 きりは傷を特に多く受ける神那と黒羽を範囲に巻き込む位置まで移動すると、そのまま魔術陣を形成させた。
 光り輝く魔術陣の治癒がいくつかの傷を癒していく。
 舞花は神那の下へと走ると、愛刀に『気』を籠めた。
 刀身に纏われた紫電を引き放つようにして放たれた一太刀はがら空きな蛇の首に開いた傷口からその頭部を叩き落とす。
 正純はアルテマ・ルナティックを構えた。
 放たれた矢は流星群のそれの如く輝きながら2匹の呪蛇へと狙い澄ましたように叩き込まれていく。
 複数の矢を受けた呪蛇の動きが鈍っていた。


 ほとんど自由な状況となった呪蛇刑部は、アリアとカガミの君を相手に殆ど千日手のような応酬を繰り広げていた。
 その間に他の7人のイレギュラーズは呪蛇を順調に倒していきつつあった。
 そして、遂には最後の呪蛇を切り伏せ、残りを呪蛇刑部に残すのみとなっていた。
「さぁ呪蛇刑部、次はお前ですよ! 覚悟!」
 神那は呪蛇刑部の前に立ちふさがるやそう声を上げた。
「むむむ! これはまずい、これはまずいですよ!」
 周囲を見渡し、既に4匹の呪蛇が倒れているのを見た刑部が唸る。
「どうやら、私の作戦負けの様子、ここはひとまず下がらせていただきましょう!」
 そういうや、呪蛇刑部は尋常じゃない速度でその場を離れ、屋敷の奥の方、入り組んだ和室の迷宮に消えていく。
「待ちなさい!」
「いや……追わなくとも構わない」
 きりが叫び、追いかけようとするのを引き留めたのは他ならぬ依頼人だった。
「逃げを選んだという事はどこかで外に出るはず。追って戦い続ければ余波で民衆を巻き込むだろう。
 逃げるだけならば逃がすのも手だ。それに……これ以上は諸君らもただではすむまい」
 屋敷の奥、入り組んだどこかへと消えていった呪蛇刑部の方を見つめ、依頼人は静かに愛刀を鞘におさめる。
 しゅるる――音がした。
 反応したのは、種族の特性も相まって奇襲に備えていたブーケと、不測の事態を想定していたアリアだ。
「この音……!」
 音の先をアリアが視認する、迅速な脚力でブーケが跳び、体当たりをかましてカガミの君もろともに吹き飛んだ。
 2人がいたその場所に、黒い槍――いや、呪蛇が一匹、突き刺さった。
 警戒を怠っていれば、最後の一撃が見舞われていただろう。
 とはいえ、最後の一匹。奇襲を乗り越えさえすればどうということもない。


「命を狙われている理由は、貴方の素性ですか?」
 最後の呪蛇を切り伏せた舞花は、ちらりとカガミの君の方を向いた。
 男は静かにイレギュラーズを見据え、やがて頷いた。
「そうだな……もし私が君達と同じであるといったら、どうであろうか?」
 そういうと、男はイレギュラーズの方を見渡して、外套に触れて、そっとそれを脱ぎ去った。
 露になった男はやや褐色気味の肌に赤色に近い色合いの瞳、紺色の髪をしていた。
 そして、特に特徴的なのは、その額に生える二本の角。
「私の名はカガミ……各務 征史郎 義紹。かつては刑部省に属しておった。
 霞帝陛下が姿を隠されてからは野に降りていたのだ。
 誰が敵なのか分からず、相手にも警戒されぬようにな」
 そこまでいうと、男――義紹はその場で膝を屈した。
「頼む。神使諸君……どうか、我が国の事を助けてやってほしい。
 私程度に言われなくとも、君達であればそうしてくれるのかもしれぬが……どうか頼む」
 そういって、男はそのまま頭を下げる。
 異世界の一つ、地球――そこにある日本なる国では土下座などというものだ。
「あの刑部とか言うのは何者なんですか?」
「あれは……あれは元々は私と同じ時に刑部省に務めた者。ただ、刑部省は警邏などをする部門だ。
 純粋な腕っぷしで上であった私の方がちょくちょく仕事で上になっていた。それに嫉妬したのであろう。
 そして……いつの間にやらあのざまよ。同時に、なにやら私に異様な執着をするようになってきたのだ」
 少しだけ憐れむようなニュアンスを含み、男が首を振った。
「あなたの目的は何なのですか? 正直、信用は出来ませんからね」
「私は……陛下の御世の方が好きであった。ただそれだけだ」
 そう言って正純の方を向いた義紹はじっと正純を見つめる。
「信用せよとは言わぬ。だが、私自身、妖やならず者はともかく、魔の者との戦いは経験がなかった。
 それに、そもそも誰が敵なのか分からない以上、だれも信用するわけにはいかぬというのもあったのだ」
 正純の問いに男はまっすぐに視線を合わせて答えた。
「どうか、もう一度頼む。陛下の事を救ってほしい」
 そう言って、もう一度男は頭を下げるのだった。

成否

成功

MVP

アリア・テリア(p3p007129)
いにしえと今の紡ぎ手

状態異常

銀城 黒羽(p3p000505)[重傷]
アリア・テリア(p3p007129)[重傷]
いにしえと今の紡ぎ手

あとがき

MVPは呪蛇刑部への攻撃を続けた貴方へ。
貴方がいなければ作戦は失敗していたでしょう。

プレイングが来る前、場合によってはオープニングでかっこつけて後ろに跳んだ後の「バン」って音がカガミの君が襖に激突した音ととかになってすごい恥ずかしいな……とか思ってたのは内緒です。

それでは、お疲れさまでした。
ひとまずは傷をお癒し下さい。

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