PandoraPartyProject

シナリオ詳細

縺れは刃の束と成りて

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●ある晴れた昼下がり
 だって、彼は素敵なんだもの。

 ある晴れた日。穏やかな風が吹くギルド・ローレット。
 コーヒーを口元へ運べば、かぐわしき香りが鼻をくすぐる。
 ああ実にいい日だ。そのまま杯を傾け喉で楽しめば――

「誰か! 誰かあの人を刺してちょうだい!!」

 思わず吹き出しかける様な言の葉が響いてきた。

●痴情の縺れ
 激しく感情を高ぶらせる女性をなだめ、話を聞いてみた所――その『誰か』というのはどうやらヴォルペ (p3p007135)の事であるらしい。女性には……彼女には愛した男、つまりヴォルペがいたのだが。
「恋人になってって、その後も一生添い遂げたいって……伝えたのよ……なのに! なのに!! 彼は恋人になれないと言ったのよ! 道端の花を一生愛でることはしないって!」
 道に咲く花は美しい。季節によって色とりどりの美麗さを奏でてくれる。
 しかし所詮、そんなモノその時だけの感情だ。
 散歩の中で華麗さに感情を動かされる事はあれど、独占欲至りて持ち帰ろうものか。
 たった一時の出会い――それで終わり。しかし花の方にも感情があればそれでは済まず。
 刺したそうだ。つい先日、彼を。
「だって、だって私は悲しくて、彼を……! ええ。でもね、もちろんすぐに後悔したわ。刺した後に、私、とんでもない事をしたと思って……」
 病院へ連れて行かねば。彼が、彼が死んでしまう――
 本気で憎悪した訳ではない。軽んじられる様な発言……少なくとも彼女はそう思う内容の旨を伝えられ、つい『カッ』となってしまったのだ。指先から伝わる鈍い感覚に冷静さを取り戻し、医者をと思って、しかし。
「……彼は、死にもせず笑ってた」
 生きていた。彼はイレギュラーズだ――通常の者よりも丈夫であった故か。或いは当たり所が良かった故かもしれないが……ともかく。
 ヴォルペは生きていた。その上笑って、ああ、ああ――
「だから私、悔しくて……! 私なんか、私なんかじゃ彼の傷の一つにもなれないんだって!! そう思ったら――ええ! このまま済ませられないと考えたのよ!!」
 それが彼女に更なる火を付けた。ヴォルペを、必ず痛い目に合わす。
 しかししかし渾身の一撃をもう一度行ってもまた彼は笑うだろう。
 いつもの愛しい笑顔できっと微笑むのだ。
 それは許せない!! 私で無理なら、他人の力でもいい!
 そう! そうだ!! 彼がイレギュラーズであるというのなら!!
「なら、同じイレギュラーズなら彼に痛い目を見せられるでしょう? ローレットは報酬を用意すればなんでもしてくれるのでしょう? ――どうせなら尻でも刺しちゃってちょうだい!!」
 思わず額を抑えるイレギュラーズ。尻の前に頭が痛くなりそうである。
 まぁその。依頼であるというのなら別にハイ・ルールには違反しないだろうが……
 これもヴォルペ自身の業が故か。さて、どのように事を運んだものか――

「ここがローレット!? ちょっとお願いがあるのだけど!!」

 と、その時だ。再びけたたましい勢いでローレットの扉が開けられる。
 またまた女性である。先の方よりも一段年若い様な雰囲気のある人物だが……おや?
「失礼しますわ。ちょっとどうしても依頼したい事があるのですが」
「こんにちは――!! クズ野郎を始末してほしいんですけど――!!」
「あ、あの……依頼を……」
 ……続いて更に更に女性達が剣呑な雰囲気と共にローレットへ。
 嫌な予感がした時にはもう遅い。それら全て、同じ目的を持った女性達。
 ヴォルペに『道端の花』と称された被害者達である。

 ――閃いた。もうこの女性陣の中に彼を投げ込めばいいんじゃないかなぁ。

GMコメント

 リクエストありがとうございます!!
 さぁおにーさんをボコボコに……なんだこの依頼は……!?

■依頼達成条件
 ヴォルペ (p3p007135)を刺す。刺す!?
 もしくはヴォルペへ感情を抱く女性陣(複数大人数)の中に投げ込む。

■戦場(?)
 ヴォルペさんはとある街を歩いています。
 どうやら彼はこれから起こり得る喜々、もとい危機にまだ気付いていないようです。
 皆さんはこれから接触しても構いませんし、何かの理由(例えば直前まで依頼を受けていたから)で一緒だった事にしてもOKです。

 なお『とある街』は、場所(国家)を指定できるものとします。つまり名声は指定された国家のを入手できます。ただ、シチュエーション上国家は『一つ』だけをお選びください。

 ヴォルペさんは、えー。そうですね!
 突如襲い掛かって来る面々への反応や逃亡……おにーさんとしての……責任のプレイングを……!

■女性陣
 須らくヴォルペと何かしら関わりがあった人物達です。
 彼に抱いている感情はお察しください。戦場、もとい街でヴォルペを探しています。
 包丁やらなんやら色々持ってます。わぁ危険。

 この中に彼を投げ込んでもいいです。
 もしくは自分でオーダー通り刺してもいいです。いぇいいぇい。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はEです。
 無いよりはマシな情報です。グッドラック。

  • 縺れは刃の束と成りて完了
  • GM名茶零四
  • 種別リクエスト
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2020年07月26日 22時10分
  • 参加人数8/8人
  • 相談6日
  • 参加費---RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ヨタカ・アストラルノヴァ(p3p000155)
楔断ちし者
武器商人(p3p001107)
闇之雲
フルール プリュニエ(p3p002501)
夢語る李花
ルミエール・ローズブレイド(p3p002902)
永遠の少女
赤羽・大地(p3p004151)
彼岸と此岸の魔術師
斉賀・京司(p3p004491)
雪花蝶
茶屋ヶ坂 戦神 秋奈(p3p006862)
音呂木の蛇巫女
ヴォルペ(p3p007135)
満月の緋狐

リプレイ


 花は綺麗さ。ああ愛でたくなるさ。
 誰だってそうだろう? 美しいものはつい手に取って抱擁したくなる。
 例えば幻想の遊楽伯爵辺りならこの気持ち、きっと分かってくれるんじゃないかな――

「拾子ちゃん、どうしたのかな? 今日はちょっと上の空だね。
 心配事があるならおにーさんに相談してごらん?」
「……ああ、いやなんでもないよヴォルペさん」

 だから今日も花を愛でるのさと『満月の緋狐』ヴォルペ(p3p007135)は、にこやかなりし笑顔を豊穣の地でも紡ぐ――こ、この男、海を越えた先でもやらかしてやがる……!
 拾子とは『雪中花蝶』斉賀・京司(p3p004491)の事。
 今日もまた昨日とは違う花をその手に、甘く優しく囁くは水を滴らせるかの如く。可愛い彼に似合いの簪でも贈ろうかと店を眺めている真っ最中だ。しかし明日はどうなるか。また新しい花でも愛でているかもしれない……
 ああこれか。これがヴォルペさんの『業』かと京司は小さく吐息一つ。
「いや、なに…………実は、近くにある絶景の場所を知ってるんだ、見て帰ろう」
 ん、そうなのかい――と呟くヴォルペを他所に、京司の視線は天へと。
 そこにいるはカラス。己がファミリアーの術で創り出した手足――
「――まったく、クズのRTAでもしてたのかな」
「さて。まぁ、ヴォルペの自業自得と言えばそうなのだろうが」
 そのカラスの視線越し。『闇之雲』武器商人(p3p001107)と『小鳥の翼』ヨタカ・アストラルノヴァ(p3p000155)が襲撃ポイントへと配置へ着く。
 ヴォルペを探していたが故に、特にヨタカは空を飛翔していたのだ。合図があった事を皮切りに紫月――つまり武器商人の事だが――にも連絡を取り、場所へと急ぐ。全くヴォルペは息を吐くように一体何をしているんだか。
 彼はまだ知らぬ。これから起こる喜劇……じゃない悲劇……いや、うーん……
 ともかく怨嗟の出来事を。
 ここは豊穣、その街の一角。ヴォルペをさぁこれからどうするか。
「ったく、よりによって同じ日に、同じ用件の女性がこんなに集まるのか……
 怒るタイミングがあるにしても、こんな奇跡の様な事があるとはナァ……」
 頭を掻きながら、しかし仕事であればやむなしと『双色クリムゾン』赤羽・大地(p3p004151)はついに。京司と共に歩く、ワインレッドの服に身を包むヴォルペの姿をその目に捉えて。
「ま、下手に庇い立てして女達の逆恨みを買いたくないからナ」
 息を合わす。タイミングは目立つモノが発生してから。
 一歩、二歩。ヴォルペらが道を進み、そして――

「すまないね、ヴォルペさん。これも仕事なのだよ」

 瞬間。ほんの一歩後ろに下がった京司が魔術を展開する。
 炸裂せしは鮮やかな火花――音と光を派手に撒き散らし、思わずかなヴォルペの身を勢いで前へ。
「拾子ちゃん……? どうしたんだい、今日は一段と激しいね。一体何を――」
「んふふ、つまりこういう事なのです!!」
 直後物陰より飛び出したは『JK』茶屋ヶ坂 戦神 秋奈(p3p006862)。
 バランスを崩したヴォルペを逃がさぬ様なタイミングで。
「白いヴォルペを殴る。そして黒いヴォルペは刺す。
 『両方』やらなくっちゃあならないってのが『特異運命座標』のつらいところねっ!」
 覚悟はいいかい? 私はできてる! ――と、彼女は喜々として。
 捜索の果てに見つけ出したヴォルペへと刃を一閃ヴォルペ危機一髪!!
「わぉこれは」
「うふふふふ、おにーさんこんにちは。今日もいいお天気ね」
「あらあらあらあら? ヴォルペおにーさんたら、いつの間にこの土地のおねーさん達に手を出したの? 相変わらず手が早い人ねぇ」
 囁く様な笑みと共に『永遠の少女』ルミエール・ローズブレイド(p3p002902)と『夢語る李花』フルール プリュニエ(p3p002501)の両名もまた戦場――戦場――? とにかく現場へと馳せ参じ。
「おにーさんはいつも格好良くて素敵だけど、可哀想な彼女達もおにーさんのみっともない姿を見たら……あの人達も泡沫の様な夢から覚めるかもしれないわね? うふふ」
 ルミエールは『まぁそういう事なの』と言わんばかりの笑顔を向ける。
 事態把握。思考重ね、導き出した当の本人の結論は。

「成程ね――ふふ。皆して可愛いんだから、仕方ないなぁ」

 憤怒も絶望の色も無し。
 ただただ只管『花』達が愛おしい。
 皆しておにーさんを見てくれるなんて、太陽を追うヒマワリかな? ああそういえばこの豊穣の地ではその花を道端で時折見たりしたけれど、そっかぁ。あれはこれからの事を予兆していたのかな。うふふ。
「こんなサプライズがあるだなんて思ってもいなかったよ――
 え、なに? おにーさんが悪い事をしたから……? 何の話だろう。
 おにーさんはただ花を愛でただけさ――いつものことだ、知ってるだろう?」
 向こう側からけたたましく鳴り響く複数以上の足音達に対して。
 ヴォルペは変わらず――喜の感情だけで皆を照らしていた。


 さて大方の事態は分かった――いや本当の意味でヴォルペが『分かった』のかはいまいち自信がないが――ともかく。『そういう事』ならばヴォルペにも考えがある。
 まずは逃げるのだ。
 いや、なに。花達が恐ろしい訳では無い。しかし花達の感情を受け止めるのも時には面白い事だろう。それにさっきまで拾子ちゃんと買い物デートをしていた真っ最中なのだ――拾子ちゃんはあくまで『そちら側』である事を狂乱の花達に示す為にも、己は逃げの姿勢を見せた方がきっと良い。
「鬼ごっこなんて楽しいね。いつぶりかなぁ」
 過去を思い起こしながらヴォルペは駆ける。ああ空はいい天気だ。
 しかし勿論の事これは彼も確実に分かっているが――逃げ切れる筈がない。
 空には京司のカラスやヨタカの鷹星。ルミエールの白鳩もいるのだ。どこまで行っても追いかけられるし、更には。
「追いかけるのは面倒ね。フィニクス、どうか彼を追ってちょうだいな」
 ルミエールが周囲の自然から情報を得て、近道を見つけ出したりもするのだ。
「大丈夫よ、ヴォルペおにーさん。私は味方ですからね♪
 私を抱き締めて、お尻を突き出してたらすぐに終わりますよ♪」
 どーしてお尻なの? と思うがフルールの狂気的な感情が見え隠れすれば楽しくもなるものだね、うん。空から追い詰められ、先回りされるかのように動かれ、人数でも分が悪い――結末の決まった鬼ごっこ。テンションが上がって来るなぁ。
「乙女の勘はいつでもフルスロットル!! 逃がさないのです!!」
 特に秋奈のテンションも凄いものである。油断すれば深々と刃をめり込ませんと。
「いや別に油断して無くてもお尻を刺しますけどね。
 深々と刺してって、何でーてー氏が言ってたし。
 それにキッチリめりめり刺すのがヴォルペスレイヤーとして嗜み!」
 ピキーンとまるで超能力者の様に直感を働かせてヴォルペを追いつめんと。
 同時。更に背後からは大量の依頼人たちもヴォルペの姿を見据えて駆けている。
 手にはいくつもの危険な数々。物騒なのが愛の深さか?
「本当に、自業自得と言えばそうなのだろうけど。随分と激しいね」
「まぁそれだけじゃあないけどね――ちょっとばかり『仕込み』も入れたしね」
 京司は射撃を繰り返しつつ、紡いだ武器商人の方へと視線を。
「なぁに簡単な事さ。『赤狐の君は番(フィアンセ)がいるうえでキミ達と楽しんでいたんだよ』――ってね。いやいや本当にちょっとばかり油を撒いたというか、なんというか」
 赤狐の君……つまりヴォルペの事だが、彼の立場がより悪くなるように。
 敵意は扇動され、信仰すら集める彼の気質はより深く彼女らへと寄り添う様に。より苛烈へと彼女らを導く。なに、如何な感情を燃やそうが相手は赤狐の君だ――どれだけクズであろうとも被害が及ぶ可能性はない。断言してもいい。
「それよりもこの先が勝負だ。多分、追い詰められるよ」
「ああ――おっと。後ろからの殺気に巻き込まれないように気を付けておかないとね」
 同時。周辺を探索しておおまかな地図を作っていた武器商人が追い込めると確信し。
 その様子を見ながら――ヨタカは段々と距離を縮めている依頼人の女性達を見据える。
 先述したが、武器商人により先導された彼女達は、その、凄い。いや始めはまさか尻にナイフを刺す依頼が来るだなんて想像だにしていなかった。というか未だに何かの間違いなのではという感覚がなくもない。
 しかし包丁をヴォルペへと投げてくるあの姿勢、ガチだ。
「……まったく。いつの間に俺はこんな激流の中に巻き込まれたのだろうか」
 苦笑しながらヨタカは空を舞い、件のヴォルペへ視線を向ける。
 色々おかしな疑問は思い浮かぶ依頼だが――これもうら若き乙女達の為と思い。
「ひぃーやべーやべー。
 ……まさカ、女達の怨み辛みが集まっテ、生き霊になってたりしないよナ?
 この国は結構そういう、負の淀みとかあるらしいけど、違うよナ?」
 自身が持ち込んだ、一定時間で消えるインク――煌めく洋墨を彼女達の一部にも持たせておいて良かったと、赤羽は安堵する。流石に全員には無理だったが、一部の包丁が隅になっただけでも、まあなんか、その、ねぇ?
 ヴォルペは美しきものを好むのだ。上手い事服が汚れれば表通りは歩かなくなるかもしれないし、そうでなくてもまぁ追う側にとってマイナスに働く事はない。何よりインクの色は目立つものだ。
「……落書きみてぇで気が引けるガ、そのうち消えるからサ。勘弁してくれヨ?」
 鬼ごっこをして、確実に追い詰められながらもその顔色は煌めているヴォルペだ。
 心配する事はないだろうが、自らの気持ち的にも、ほんのり言を呟いて。
 そして――ついに運命の時は訪れようとしていた。

「ありゃ。ここまでかな?」

 袋小路。追い詰められたおにーさん。
 後ろからは大量の殺意。大量の暴力。逃さん、お前だけは。
「うふふふふふふ。私ね、かっこいいおにーさん、好きよ?」
 言うはルミエールだ。それは真実、嘘ではない。嘘ではない――が。
「でもね。偶には惨めな姿も見てみたいの。お尻にナイフが刺さった姿なんて、とっても可哀想で愛しいと思うわ! あぁ、ホントよ! ホントに見てみたいの! ねぇ――さぁ! 私の愛を受け取って!!」
 構えるナイフ。にじり寄る依頼者達――
 ルミエールもまた『愛でられる者』の一人として。
 彼女らと同様確かな感情が此処にあったのだ。


 豊穣の街の一角にて『色』が吹き荒れる。
 花は千差万別だ。白い花があれば紅い花もあり多種多様。
 素晴らしい素晴らしい。やっぱり花は愛おしい! おにーさん感激しちゃうよ!
「さあ今日もやって参りました、乙女によるおにーさんへ送る、ワンツーブスリーなお時間。ヴォルペ危機一髪後半戦!! さぁはい。画面の前のそこの貴方もよーく聞いてね。それでは第一問。ででん。身体が昂ったかと思えば一気に急降下、浮遊感を感じてドキドキするけどスカッとするやつといえば……!」
 ちくたくちくたく秋奈のドキドキクイズタイム。
 刃が舞う中出題し、失敗したらおにーさんが一つぶすり。
 さぁがんばって。大きな声で! 身体が熱々で浮遊感を感じるさぁそれは――!
「答えはジェットコースターよ! ジェックコースターじゃないからねっ! ジェック……そんなジェットコースターだけど、実は冬より夏の方がレールのグリスの滑りが良くて速度が増すの! よりスリリングに楽しめるという訳ね。秋奈ちゃん豆知識、おぼえたかなー?」
 覚えた貴方にはボーナスタイム。また一つぶすりと出来ます!
「ひでぇ。クイズ感覚でヴォルペの刺す権利が売られてやがル……
 だがこいつもこんな事態にまでなってしまった故か……」
 赤羽と大地は秋奈のリズムに合わせて往く依頼人たちを見据えながら天を仰ぎ。
 本当に酷い光景になっている。その中でも以前、ヴォルペは微笑んでいるが。

「あぁ――麗しく愛しい花、磨かれて輝く宝石(レディ)たち」

 その時、彼が紡いだ声は周辺に透き通り。
「美しいと認められて甘やかされて気持ちよかっただろう? けれどもしも、おにーさんが特別な誰かを選ぶとしたら、選ばれる自信はあるかい――おにーさんの周りにいる花はあんなにも――美しいのに」
 指差す先に居るのは麗しの銀の君――武器商人。
 小鳥ちゃん、拾子ちゃん、青薔薇ちゃん――
 愛するだけならいくらでも与えてあげる。お水が欲しいならそう幾らでも。
 何も返す必要なんてないんだよ。与えられる側が気にする事じゃあない。
「それはいつか出会う本当の運命に向けるべきものだ」
 その愛情も殺意も全部受け止めてあげるから。
 今後は自分の足で自由に歩き出してごらん。

 流れる言に淀みはない。全て彼の本心、全て彼の真心からの一つ一つ。
 語るべき交渉の術が彼女らの耳に清らかに届き。
 信仰を集めるかの如き気迫がより一層に眩しさを伴い、誘惑せんとする。
 その心を。そのすべてを。
 人に説き伏せ伝える才知がより洗練と彼女らの怒りを誘い――あ、痛い痛い痛い。あれれ~? 小鳥ちゃんまで刺してきたなんで~?
「誰か、もっと余った剣を持った人は居ないか……? 急に突き刺したくなった……ので。途中参戦でも……特に問題はない、よね?」
 ヴォルペが幾千の花を愛でようが折ろうが構いはしないが、紫月を誑かす様な言を弄すのだけは絶対に許さない。この父より受け継いだアストラルノヴァ公の短剣でその尻を――いややっぱ流石にこれは駄目だ。不貞を正す為の尻刺しの短剣ではない。誰かなんでもいいから刃を貸しておくれ。
「ヒヒッ、まぁそれなりな程度で許してあげなよ? 本気と言う訳でもあるまい――しかしまァ、腹に包丁が刺さらないなら、上は顔が良いし尻しかないと思っていたけれど、こいつァ凄いねぇ」
 感情の奔流。とても実況できかねる光景。
 赤狐の君よ――これで万一パンドラが削れでもしなかったら『尻穴の強い男』とか呼んであげようか。なに遠慮することはない。これは名誉の称号だよ名誉名誉。
「うう~ん。あいた、アイタタ。今まで何度か刺された事はあるけれど、今回は勢いが強いね」
「ふふ、おにーさん痛い? つらい? それともこれが気持ちいいのでしょうか?
 あぁ、痛かったら癒してあげましょうね。大丈夫、治癒術はまだまだ沢山使えるわ」
 ヴォルペ危機一髪続行中。ならばとフルールが紡ぐは治癒の力。
 これだけでは終わらせない。これだけで終わってなるものか。
「ほらこれで、まだたくさん刺せるわ? 1日かけても、ずっと刺せるのよ?
 ふふ、うふふ♪ あぁ、可愛らしい顔、可哀想な声……クセになっちゃいそうね♪」
 癒して刺して癒して刺して。慈悲と怨嗟と優しさと怒りと。
 ああ。私達は貴方から愛を貰ったのです。
 愛は心に刻むモノ。愛は永遠を及ぼす一時の刃――
「貴方が愛を刻んでくれたように」
 私達も貴方に愛を刻み込みたいの。だってあんなに心地良かったのだから。
 愛しい貴方にも同じ感覚を味わってもらいたい。
「愛してるわ、おにーさん」
 願わくば、これが一生残る傷にならんことを。彼の確かな跡にならんことを!
 ルミエールの願いは誰しもに共通していた。女性たちは怒りに呑まれているが――それは言うなれば愛情の裏返しだ。愛でられる者として、時折一夜を共にした者もいるかもしれない。
 愛したのだ。愛でられただけかもしれないが、こちらは貴方の手に包まれたのだ。
 その温もりをもう一度――いややっぱでも、それはそれとしてもう一回刺しておこう。うん。

「この! この! ヴォルペ、ヴォルペ!!」
「赤く染めてあげるわ、貴方を!!」

 凄まじい景色だ。これはいけません。
 豊穣の大地に奇々怪々。海向こうから齎された災厄を女性たちは刺して――
「……さて、そろそろいいかな」
 同時。往くのは京司だ。
 拾子ちゃんと呼ばれ、今日共にデートをした仲の彼――
「すまんな、ここからは教育に悪いから」
 一部の者は眼を塞いだ方がいいと。京司はヴォルペへ寄り添う様に。
「さて。痛みの罰はどうだった?」
「罰……? 何の話かな、罰を受けるような事をした覚えはないよ。
 おにーさんは、いつだっておにーさんだからね」
「はぁ」
 吐息一つ。やっぱりこれしかないかと、口の中で遊ばせているのは。
「なにそ」
 れ、と彼が呟く前に。
 移すのはたった一つ。桃の味を携えた甘味の一球。
 舌を転がり甘く蕩ける。されど、ヴォルペは普段『味』というモノが理解出来ぬ身なのだが。
 甘い味だけは、背筋を鼠が走るかのようにぞわりとする。
 アレルギー。身体が受け付けぬ、それは、ああ。

「――美味しかったかい? 桃味の喉飴は」

 罰の味か。
 今日、初めて。
 ヴォルペの色が――ほんの少し、淀んだような気がした。

成否

成功

MVP

ヴォルペ(p3p007135)
満月の緋狐

状態異常

なし

あとがき

 リクエストどうもありがとうございました!!!

 なんだこの……なんだこの依頼!?
 ずっとなんだこれ? と思いながら滅茶苦茶書いてました。とっても楽しかったです!

 おにーさんはとってもおにーさんでした。
 それでは、ありがとうございました!!
 

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