シナリオ詳細
からくりゴーストホテル
オープニング
●ある殺人鬼のおはなし
幻想はアーベントロート領北部。雪季になれば膝が埋まるほどの雪が積もるというこの地域で、ひとりの男が逮捕された。
男の名はドクターHHH(トリプルエイチ)。
容疑は殺人。
立件数は50を超えるシリアルキラーである。
だが着目すべきはその件数ではない。
彼の作り上げた『殺人ホテル』である。
さあ、これから語るのは噂話や証言から推測したお話だ。
後に背骨だけが見つかったという被害者の、記録といってもよい。
雪の深い夜。ホテルの扉を叩いた。
ドンドンドン。だれかいませんか、だれか!
はじめから明かりの灯っていた部屋である。すぐに応対する声がした。
ガチャリ。おやこんな夜更けにお客様とは、寒いでしょうどうぞ中へ。
通されたのはホテルのフロント件ロビーだった。暖炉の音が暖かく、扉を閉じれば吹雪く音も聞こえなくなった。
安堵に息をつきマフラーを脱いだ頃、相手がこのホテルのオーナーだと分かった。
なぜなら、彼は鍵を目の前にぶら下げてこう言ったからだ。
お客様、お部屋へご案内しましょう。手もかじかんでいる頃でしょうから、お題は明日の朝にでも頂きます。
ホテルは大きく三階建てになっていた。
従業員の姿は見えず、オーナーが自分で案内するという。
こんな夜更けに押しかけてしまってすみません。従業員も眠ってしまったのでしょうか。
そう尋ねると、オーナーはひょうきんな顔でおどけた。
ご安心ください。我がホテルのオーナーは眠らないのです。
それがどういう意味かはわからなかったが、少なくともサービスが行き届いていることは確かだった。
部屋は綺麗に整えられ、吹雪から逃れるべく急におしかけたというのに充分な準備がしてあった。
オーナーに礼を言い、ベッドに腰掛ける。それだけで、不思議と眠気に支配された。
カン、カン、カン。何かを砕いて割る音がする。
目を覚ますと、縄で両手が縛られていた。
風景もホテルの部屋ではない。石で覆われた冷たい部屋だ。ランプの光だけが揺れ、テーブルでオーナーが何かを金槌で砕いていた。
おやおやもう目覚めてしまいましたか。オーナーはひょうきんな顔でおどけた。
ふと横を見れば、逆さに吊られた男が殆ど半分に割かれている。首が落とされ、大きな木桶に浮いていた。
今は血抜きの最中なのです。これが終わればあなたの番だったのに。
オーナーが大型動物を解体するためのナイフを手に取った。
痛いのはお嫌でしょう? ですが我慢してくださいね。睡眠薬を無駄遣いできない。
叫ぶ声は地下室を反響したが、吹雪く外に漏れることはなかった。
逮捕後、ドクターHHHは重すぎる罪によって死罪となり、その翌日には処刑された。
残ったホテルは取り壊すこととなり、役人が解体業者を引き連れてホテルを訪れたのだが……。
そう、覚えているだろうか?
ドクターHHHがひょうきんな顔でおどけて話した、あの話を。
このホテルの従業員は眠らないという、あの話を。
●怪談は現実となりて
「翌朝やってきたらびっくり!
役人と解体業者たちはバラして揃えてお庭に綺麗に並べられていたってわけさ。
ドクターHHHは確かに死んだ。従業員だって一人もいない。
けれどね、残っているのさ。
あのホテルを動かしていたからくりが。
そして、『囚われた悪霊(ゴースト)』がさ」
ろうそくの炎を顔のそばで消して、『黒猫の』ショウ(p3n000005)はそんな風に語った。
ローレットに依頼されたのはこのホテルの解体……ではなく、その一歩手前。
解体業者を積み木みたいに崩した連中の(ある程度の)排除と、からくりの構造を書いた設計図の入手である。
「外から燃やせばいいやと業者がトライしたみらいだけど、どうにも厄介な呪術で守られてるみたいでね。壁や窓の破壊もうけつけないみたいだ。
正面の扉から入って、ホテルを動き回ってるゴーストを退治して、殺人トラップをくぐり抜け、ホテルのどこかにあるっていう『設計図』をゲットする。これが手順さ」
設計図にはホテルにかけられた呪術の仕組みも(暗号化してはいるが)記してあるという。これさえ手に入れば、解体業者にお仕事をパスできるのだ。
「持ち主が死んでもまだ殺し続けるホテルなんてね……まさにゴーストホテルって感じだと思わない?」
- からくりゴーストホテル完了
- GM名黒筆墨汁
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2018年04月23日 21時25分
- 参加人数10/10人
- 相談7日
- 参加費100RC
参加者 : 10 人
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参加者一覧(10人)
リプレイ
●殺人鬼の箱
看板に書かれた文字は汚れてにじみ、元の文字は読めない。
どこからか生ぬるい風が吹き、カラスの声とはばたきが耳に付いた。
足を止め、防止をぬぐ『無道の剣』九条 侠(p3p001935)。
「普通のダンジョンよりも厄介そうな所に邪魔する事になった訳だが……ゴーストよりも残ってる罠の方が面倒そうだな」
「これ自体が巨大な罠のようなものだろう」
マフラーを押さえ、ホテルを見上げる『ストレンジャー』アート・パンクアシャシュ(p3p000146)。
「殺人鬼の作品じゃなきゃ、いいお化け屋敷なんだろうけどね」
「私の記念すべき初お仕事がおばけ退治だなんて腕が鳴るわね!」
『特異運命座標』Женя(p3p005080)は胸を張って先頭に立ったが、吹き付ける生臭さに頭の先まで震え上がった。
「こ、恐くないわよ!? むしゃぶるいなんだからね!」
「ね! ぶっちゃけ初仕事でゴーストとか、めっちゃ滾るっちゃけど!」
ハードカバーの本を抱いて同意を求めてくる『空想JK』縹 漣(p3p004715)。
いつもならこういったテンションに乗っかる『梟の郵便屋さん』ニーニア・リーカー(p3p002058)は、しかしどこか悲しげな表情だ。
「こんな建物を作ろうと思うなんて、僕には全然理解できないよ……」
外観からはまだピンとこないが、ここは凄惨な殺人の現場なのだ。いや、そのためにあった場所と言ってもいい。
犠牲者たちは今もホテルにとらわれ、新たな仲間を求めている。
それこそ、巨大なトラップボックスだ。
うんと背伸びをして見せる『ダークハンター』リーゼロッテ=バーゼルト(p3p005083)。
「悪霊なー。リゼちゃんのいた世界にもいたよ、悪い事するやつ。全くもう、悪霊とか悪魔が悪い事するからリゼちゃんみたいな善良で健全なアクマまで厳しい目で見られるんだよ、許せないね!!」
腰に手を当てて怒ってみせる。
「ボディタッチやイチャイチャまでは良いとしても殺しちゃダメでしょー!
もったいない!! 人間ってのはこう押し倒してこう……」
「……」
同意しようとしたら途中から別の路線に入っていったので、見送ることにする『幻想乙女は因果交流幻燈を夢見る』アイリス・ジギタリス・アストランティア(p3p000892)。
「持ち主が死して尚、終わらないのですね。安らかに送る事は出来ませんが、せめてその魂が安らかに眠れますように」
「殺人の犠牲者の魂が、ホテルに囚われているのかしら~? 解体することで、囚われた魂を解放してあげられたらいいのだけれど……」
扉へと進む『夢色観光旅行』レスト・リゾート(p3p003959)たち。
レストは日傘を折りたたみ、すとんと地面に足を突いた。
一方で、地面に刺さっていたシャベルをひっこぬく『トラップ令嬢』ケイティ・アーリフェルド(p3p004901)。
「ミステリーかと思ったらホラーでしたのね。本にすると読みごたえがありそうですわ。でも――」
シャベルを掲げ、ケイティはホテルへと向かっていく。
「最終章は、私たちが大活躍する冒険活劇でしてよ!」
●からくりゴーストホテル
いざ突入、と見せかけて。
意気揚々と進む仲間たちを侠とアートが止めた。
「ドアノブの傾き方が変だ。ちょっと待ってくれ」
アートはドアを少しだけ開くと、反対側のドアノブを覗き込んだ。
「やっぱりだ」
ドアノブにはワイヤーが結びつけられ、近くの柱を経由してドアの上へと続いている。
この位置からは見えないが、ドアを開いた者に何かしらの打撃を与えるトラップだろう。
「黒板消し落とし?」
「最悪死ぬタイプのな」
漣が目を細めて透視してみると、薪を割るような斧がドアの上に仕込まれていた。うっかり開けると額にあれが入るという仕組みだ。
「上手い事対処出来れば良いんだが、やれるだけやってみますかね……」
バトンタッチを受けた侠が『やれるだけはやっとくぜ』と剣を差し込み、ワイヤーを斬る。途端、斧が扉を突き破って下りてきた。
「これで大丈夫だ」
そう言って、剣をもう一度縦に振る。
すると通路にはられていた細いワイヤーが断ち切れた。斧をかわして勢いよく飛び込んだら首を切るという、二重のトラップである。
「危険な罠ですね……」
アイリスは盾を構え、身長に進む。
すると、彼女たちを迎え入れるかのように一階が明るくなった。あちこちのろうそくに火が灯る。
しかしうかつに走ったり、窓枠を飛び越えたり、壁抜けのようなことをするのは危険だ。
話しかけられる植物はないかと見回してみたが、花の枯れた鉢植えがあるばかりだ。小さく首をふって、更に進む。
その後ろでは、ニーニアがメモにさらさらと地図を描いていた。
「一度通った場所なら僕のギフトの出番だよ! 迷わずに進めるんだ!」
ニーニアが書いているのは地図というより見取り図だ。玄関、フロント。ホテルを管理するための事務机が一つ。通路は左右に伸び、正面には螺旋階段。
机を調べてみたが、めぼしいものは無かった。
強いて言えば各客室用のマスターキーがあったので、ニーニアはそれをもぎ取った。
「これで部屋の探索ができますね」
「うん!」
「地下室はありませんの? そこから探索を始めたいですわ」
ケイティの提案に頷いてみたが、ぱっと見た限り地下へ続く階段は無い。
話に聞く限り地下は隠すべき場所の筈。まずは入り口を探すことにした。
「隠し部屋……隠し部屋とか、浪漫じゃないですか!?」
漣は真下を透視してみるが真っ暗で何も見えない。ならばと、レストと一緒に管理人の部屋へと入ってみた。
「あら~、不思議ね~」
部屋に入って、すぐにレストは奥の棚へと触れた。
扉の並びを見る限り、不自然に管理人室が狭く思えたのだ。
「きっとこの辺りに……」
ぺたぺたとあちこちを触ってみると、棚が奥へと押し込まれた。レールに沿って引き戸のように動き、通路が開く。
ひとつは地下への階段。もうひとつは細くて薄暗い通路だ。
カンテラを掲げてみると、小窓が点々と設置されているのがわかる。
「なにかしら~」
そっと小窓を覗いてみると、客室のひとつが見えた。
どうやら客室を監視するための小窓であるようだ。
「悪趣味ですわね」
誰もが抱くような印象だ。しかしそれは、地下へ侵入して更に増すことになる。
あちこちに置いてあったのは、不気味に黒ずんだ大きな桶や、不自然に汚れた石造りの床。そしてどうしても避けようのない、むっとした腐敗臭だ。
明かりで照らすと、ひとつところに肉の付いた骨が積まれている。
乾燥した血液の色だと気づいて、さすがに顔をしかめた。Женяあたりは喉の奥から声ならぬ声を出しながらカタカタしている。
最後尾で耳を立て、敵の奇襲に備えるシュリエ。
「しかし一番後ろってあれだにゃ。いつの間にか連れ去られていなくなってるやつ」
「そ、そんなわけないじゃない」
「そうだにゃあ、あはは」
「あはははは」
「ははは……」
笑い声も空回り。
「ちょ、ちょっとだけ皆にひっついて歩こうかにゃー?」
暫く進んでみたが、地下にあったのは『処理場』だけだ。
血や水の流れ落ちる排水溝が不気味に口を開けている。
一同は気分の悪いまま外に出て、深く息を吸いなおした。
「はい、チョコレート!」
もうすっかり気分が悪くなった仲間たちに、リーゼロッテがおやつを手渡す。
「長期戦になると思うけどガンバローね。リゼちゃんは……こう、気合で探索手伝うから!」
ここがどういう場所かは知っていたことだ。覚悟がある分ショックも少ない。リーゼロッテに励まされるようにして、一同は再び探索を開始した。
「では、部屋を一つずつ調べますわね」
部屋に入ると、そこはこぎれいな一人用客室だった。
しかし休憩しようという気にはなれない。なぜなら、先程覗いた小窓がすぐそばにあるのだ。女性の絵画という形で。
ケイティが近くを調べてみると、毒ガスの噴出口が見つかった。何かのタイミングで吹き入れるのだろう。念のため濡らしたシーツで塞いでおく。
「…………もう少し探索を続けましょう。何か、つかめそうですわ」
暫く罠や隠し部屋の構造を観察していたケイティは、この館の持ち主……ドクターHHH(トリプルエイチ)について考えることにした。
●ドクターHHH
「焦るなよ。そのうちそっちには行ってやる」
アートはベッドの下から這い出てきたゴーストを引きつけると、戦旗を盾にして攻撃を引き受けた。精神が直接えぐられるような感覚。それに伴って肉体がもろく崩れるような錯覚に陥る。
「ゴーストだろうがなんだろうが、俺の剣で叩き斬る!」
そこへ飛び込んだ侠が、ロングソード二刀流でゴーストを切りつけた。
袈裟斬りにされたゴーストだが、上半身だけで更に手を伸ばしてくる。
アイリスはSPDを使って回復を試みるが、侠の首に掴みかかったゴーストはまだ離れない。首にくっきりと指の跡がついていく。
「受け取って!」
ニーニアがポーションを放り投げ、シュリエがゴーストに手を翳す。
「死んだからって道連れとか性格悪いにゃー? すぱっと成仏しとけにゃ!」
ゴーストに向かってにゃんにゃんメルシーボム。ゴーストは無理矢理浮き上げられ、地面に無理矢理叩き付けられた。
かききえるゴースト。しかしその一方で、部屋の外である通路側から別のゴーストが駆け込んできた。
背後に迫られ悲鳴をあげるЖеня。
「キャーイヤー!」
「てぇぇい!! ブルーファンタジアァー!!」
漣は適当に技名を叫んで衝撃の青を発射。飛び込んできたゴーストに直撃し、壁へと叩き付ける。
更にЖеняが杖を振り回し、威嚇術を叩き込んだ。
余った衝撃で壁に軽いヒビがはいり、ゴーストがもがくように手を伸ばす。
がしりと掴まれたЖеняがぶんぶん腕を振って払おうとするが離れない。
しわがれた老婆の手がハッキリと浮かび、手首を掴んでいる。手は氷のように冷たく、Женяから体温となにかを奪っていく。
そこへレストがそっと地下より、肩に手を当ててそっと撫でてやった。
「大丈夫よ、おばさんがついてるわ~」
「あとでリゼちゃんが良い事してあげるっ」
腕を引きはがし、よしよしと頭を撫でるリーゼロッテ。
代わりに突っ込んだケイティが、シャベルでゴーストを吹き飛ばした。
「ゴーストの数が増えてますわ。一度に沢山出るように……」
「焦ってるのかな」
リーゼロッテは元気そうなテンションとは裏腹に、どこかしんみりとした目でゴーストの消えた壁を見つめていた。
探索は既に二階を終え、三階を探索している途中だ。
道中には沢山の罠があり、たびたびゴーストが襲いかかることがあったが、漣が敵を感知したりシュリエが物音を聞きつけたりと奇襲に悩まされる心配は少なかった。
しかし一方で、ゴーストの出現頻度や一度に現われる数が増えている用にも思えた。
侠やレストたちのスタミナも枯渇し始め、消費のいらない技でしのぐ状態になりつつあった。
逆にそうならなかったのはアイリスやニーニアのように、常時スタミナが回復し続けるメンバーだ。
だがいつまでも全員が無事でいられるというものでもない。通路を進む途中、漣がぴたりと立ち止まった。
「いかん、敵が……」
「どっちだ、前か!」
「後ろか?」
それぞれに展開して構えるアートたち。
漣は首を振って、本能的な恐怖で歯を鳴らした。
「ぜ、ぜんぶ」
三階にある全ての扉が一斉に開いた。
二階の階段を駆け上がる音がした。
天井を這いつくばる赤子が猛烈な速度で近づいてくる。
壁から顔を出した女が口を1mほど開いて迫ってくる。
大量のゴーストが、襲撃を仕掛けてきたのだ。
長く探索をしすぎたか。いや、方針上戦闘の激化は覚悟していたことだ。
「若者より先に倒れるのは望むところだが……守りきってからにするのが、老人の矜持ってものだろう」
アートはしっかりと身構え、通路の先から来るゴーストへと身構えた。
殺到するゴースト。無数の腕がアートを貫いていく。
衝撃によって吹き飛ばされ、階段の手すりを破壊して二階へと転がり落ちる。
それを追いかけていくと、アートは血を吐きながらも意識を保っていた。
「出口へ」
この場で戦闘不能者を出せば深刻な損傷を受けるリスクがある。
アートは二階通路を四つん這いで迫る老人のローストを引き受けるように立ち塞がると、早く進むように促した。
「きゃあああっ!」
階段を下るЖеняの足首が掴まれる。
派手に転倒したЖеняに迫るゴースト。
「い、いやー! これは記録しないでー!」
最後にとても個人的なことを言いつつ、ゴーストに意識を奪われるЖеня。
彼女を回収すべく駆け寄った漣が、ゴーストを画集の角で殴りつけた。
「しっかり! 終わったら絵に残しますから!」
「やめてー」
仲間を担いで走る漣。
彼女の腕や足にすがりつくゴーストたち。
意識がもぎ取られそうになるのをギリギリでこらえ、漣は走り抜けた。
扉を抜け、一度ホテルの外へと転がる。
最後の力を振り絞ったのか、漣はぐったりと脱力していた。
「休んだ方がいいです。ここからの探索は私たちが」
アイリスがそう言うと、漣は『あとで皆さん描かせてくださいね』といって、眠るように目を閉じた。
大きなダメージを負った仲間たち。
しかし探索は大詰めの所まで来ていた。
ヒントはЖеняとケイティがギリギリまで探索していた時に見つけたヒントだ。
曰く『ドクターHHHは秘密主義』『普段取り出す必要がなく、人の目から隠したい設計図があるとしたら誰も立ち入らない場所』『地下から三階までのどこでもない』
「つまり……」
ケイティは、Женяのメモを手にホテルの地面に目をやった。
メモには『地下の地下』という文字にマルがつけられていた。
ゴーストの警戒状態は解けたのか、見る限りゴーストの姿は無い。
しかし再びの侵入に気づいたらしいゴーストがあちこちの部屋や地下室からあふれてくる。
「突破しましょう」
「ここは任せて!」
死骸盾を展開するアイリス。ニーニアも大量のポーションを取り出して手に握り込んだ。
リーゼロッテが両手を翳し、上階からせまるゴーストたちにウィンクする。
「さ、いくよっ!」
反対に、侠とシュリエは地下室へのルートを走った。
管理人室の階段を駆け下りると、身体の接続がおかしくなったゴーストが地中から這い上がるかのように次々と現われ襲いかかってくる。
「生憎と成仏させてやれる様な徳はもっちゃいないが……祈ってはやるよ」
侠が心で祈り、斬りかかる。
「未練の塊みたいな奴等に関わるのは参るにゃあ」
シュリエは霊力を乱射し、ゴーストをはねのけていく。
レストは持っていたカンテラを地面に投げた。
それまであまり照らされることの無かった足場がくっきりと照らされ、いくつもの排水溝の影が現われる。
そのうちの一つが、石のプレートでふさがれているのに気づいた。
プレートを引っぺがすと、そこには土。
だが、ここまで探索を終えた彼女たちには確信があった。
「ここですわ!」
「時間を稼ぐわね~」
レストが立ち塞がり、邪魔しようとするゴーストを旅行鞄やパラソルで打ち払う。
ロックの外れた鞄の中から青いバラの花が散り、まるで死者に備えるかのように舞っていく。
「できるだけ早くね~」
「心配いりませんわ。私――」
ザンッ、と土にシャベルを突き立てるケイティ。
「穴を掘るのは得意ですの」
●呪いのスポット
ホテルから飛び出した一同。満身創痍。
しかし彼らの手には、一本の筒型ケースが握られていた。
開くと中には設計図。しかし間取りや図面があるのではなく、奇妙な記号が複雑に羅列されたものだった。Женяはその暗号形式が分かったらしいが、解読にはものすごく時間のかかる品だそうだ。
「そういえば、ホテルにかけられた呪術ってなんなんだろう」
と、誰かが言った。
「解き方もわかるのですか?」
とも。
意識を取り戻し、設計図を読んでいたЖеняは。
「解けるけど、難しそうね。だって……」
彼女には読めていた。
大量の殺人が行なわれたホテルの、意味が。
それが、なんのためにあったのか。
「これは呪術。それも……『封印の呪術』」
封じられたものが、やがて地を割り現われる。
成否
成功
MVP
なし
状態異常
なし
あとがき
――mission complete!
true end 1――『封印の呪術』
GMコメント
【オーダー】
成功条件:設計図の入手
正面のフロントからスタート→ゴーストやトラップをかいくぐって探索→どこかに隠されている設計図を入手→撤収
これが一連の流れとなります。
10人1組で挑めば安全ですが探索が長引きます。戦闘でひたすらごり押しするパーティー向け。
極端に1人10組まで散らすと戦闘で不利になる代わりに探索が早くなります。探索に強いメンバーばかりそろったらこんなのもアリかもしれません。
●依頼概要
・殺人トラップ:あちこちにダメージ量の多いトラップが仕掛けられています
・突発遭遇(霊):接近に気づきにくい霊が戦闘をしかけてきます。奇襲されると様々な不利的状況が発生します。
・要搬送:戦闘不能者が出た場合、直ちに外へ搬送してください。重傷の危険があります。
・探索重要:重要なアイテムを探索します。探索が長引けばそれだけ失敗リスクが増すでしょう。
【探索判定】
・探索パートでは新しい空間に訪れたところでロールし、
ロール値に応じて以下のうち1種のイベントが発生します。
A:エネミー遭遇
戦闘状態に突入。
発生対象はエネミー表からランダム。
B:トラップ発動
メンバー一括で回避ロールを行ない、失敗したら重いダメージが入る。
罠解除や探索関係の技術を上手に行使すると全員の回避にボーナスがつく。
ホテルのトラップは音や臭いの出る物理系とほぼ無音で発動する神秘系が混合されています。
C:目的のアイテムを発見(激レア)
設計図を発見する。工夫次第で遭遇確率を上げることができる。
【エネミー表】
越境図書館では以下のエネミーが発生します。
甲:ゴースト
ホテルに囚われた悪霊。人間を見つけると仲間に引きずり込もうと襲いかかってくる。
短所:クリティカル、機動力、反応
長所:EXF
→使用スキル
死まねき(神近単【足止】【窒息】):対象の生きる気力を減退させます
死霊の爪(神近単【毒】【連】):精神を直接破壊します
【アドリブ度】
ロールプレイをよりお楽しみいただくため、リプレイにはキャラクターのアドリブ描写を用いることがございます。
プレイングやステータスシートに『アドリブ歓迎』『アドリブなし』といった形でお書きくだされば、度合いに応じて対応いたします。ぜひぜひご利用くださいませ。
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