PandoraPartyProject

シナリオ詳細

三行で

完了

参加者 : 8 人

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オープニング


 へっちで!
 見張りを!!
 惑わせろ!!!

●せつめいっ
 厄い依頼、というものがある。
 依頼書を見ただけで、あるいは情報屋から話を聞いただけで、はたまた現地へ到着した瞬間、あっ(察し)ってなるやつだ。
 だから雨宮 利香 (p3p001254)が持ってきた依頼書を読んだとき、クレマァダ=コン=モスカ (p3p008547)は、「うー」と「んー」の中間の声を出した。
「『経験不問、生死不問、簡単な潜入捜査と盗賊退治! ラサまで日帰り旅行気分!』じゃと?」
「そうなんですよー。もうすぐ夏祭りでしょう? だから稼いでおきたいんですっ」
 と、利香はにっこり笑った。たしかに難易度に対してまあまあのお値段……の、わりにはこの依頼、詳細が書いてない。だけどまあ今年の夏祭りは新大陸と海洋王国の合同であるし、規模も大きいだろう。『雨宿り』的にも稼ぎ時なのは間違いない。ただでさえ浴衣だの水着だの新調したくなる季節なのだし。と、クレマァダは自分を納得させようとした。実家(控えめに言って大貴族)を出て以来、自分の事は自分でをモットーにやってきたクレマァダだが、そろそろ懐さびしくなってきた。この妙な胸騒ぎさえなければ一も二もなく乗っかりたいのが本音だ。
「盗賊! ということは燃やしてもいいということですね!?」
 横から首を突っ込んだクーア・ミューゼル (p3p003529)の手には既にヤバ気なものがある。
「やーだ、クーアさん、やる気花丸じゃないですかー、いひひっ! 行きます?」
「行くに決まってるじゃないですか、こんなおいしそうな依頼、行きますとも、行ってすべてを燃やし尽くしてやります!」
「燃やすのは盗賊だけにしてね」
 微笑みながら釘をさすリウィルディア=エスカ=ノルン (p3p006761)。おお、この集まりの良心か?
「放火は否定しないけど、同じやるならちまちまじゃなくて最後にバーッとのほうが楽しくない?」
 ちがった。
「いいですねそれ! 捕縛して身動き取れない盗賊もろともアジトをくくっ、くくくく……」
「ついでに血を吸ってもいいでしょうか?」
 アリシア・アンジェ・ネイリヴォーム (p3p000669)が身も蓋もないことを言った。
「いいんじゃないですかね。生死不問とありますし」
「でも臭いんじゃねえか? 盗賊だしな。ヘンな病気とかもってそうだしよ」
 なんてまぜっかえすスティーブン・スロウ (p3p002157)。悪気はまったくもって、ない。
(持ってなければ、いいというものでは、ないよう、な……)
 エクスマリア=カリブルヌス (p3p000787)はほんのりそう思ったが、盗賊の健康状態なんて心底どうでも良かったので黙っておいた。
「なんだかよくわからないけど、ラサは久しぶり! 行ってみたーい!」
 クレマァダが「あわわ」なんて思ってる間にアウローラ=エレットローネ (p3p007207)がごりごり話を進めていく。
(ええい、この、ああーっ! うまくっ! 言えぬ! 我に予知の力がもう一欠でも残っておれば!)
 真面目な彼女は手をわっきわっきさせながら歯をギリギリ噛んだ。これがアウローラなら「なんかいや」の一言で片付けちゃうところだが、そんな器用さを彼女は持ち合わせてなかった。言語化できないもやもやを胸に、でも最終的にはお値段に釣られて同行を申し出たのだった。

●悪い予感ってのは当たるもので

「な に こ れ 難 易 度 詐 欺」

 意気揚々と繰り出した一行は、見事に返り討ちにあった。
 さすがのイレギュラーズと云えどステルスやらアノニマスやらブロッキングで強化されさらに暗闇で待ち伏せされたうえ袋叩きにあったらこうなる時もある。じつは掴まされた依頼書は、かのザントマン派閥に属していたタチの悪い奴隷商人が極秘裏に出した餌だったのだ。このへんじっくり書こうと思ったんだけど、とっとと結論につっぱしったほうがいいっぽいんでやめときますね。イレギュラーズは武器も防具も取り上げられ、かろうじてすっぽんぽんは免れた状態でアジトへ放り込まれた。
(これは……もしかしなくてもヤバイんじゃないか?)
 スティーブンが今更のようにささやく。
(もしかしなくてもヤバイよ?)
 他人事のようにリウィルディアが返事した。
「おい、奴隷のくせに余計な口をきくな!」
 ごろつき風の男が酒瓶を手にがなる。一行は周囲をぐるりと奴隷商人の手下に取り囲まれ、酒の肴にされていた。
「ふへへ、いくらになるかな。久しぶりの大捕物。しかも全員イレギュラーズときたもんだぜ」
「しばらくは遊んで暮らせるなあ」
(おしまいじゃ……もーおしまいじゃ……)
 真っ青になってカタカタ震えてるクレマァダ。彼女のネガティブな頭はこれから市場で競りにかけられ、いい感じにブタいお貴族かなんかにゲハゲハ笑いながらひんむかれる未来を、くっきりこっきり想像していた。
(だいじょーぶ! とにかくだいじょーぶ! 運は我らにあり!)
(そうですよ、イレギュラーズに闇討ちは二度も効きませんっ。武器さえ取り返せば、あんなやつらただの雑魚です雑魚!)
 アウローラと利香が励ますが(で、どうやって、武器を取り戻す、のだ?)というエクスマリアの呟きに明後日の方角を向いた。
(血を吸うつもりが吸われる側になるとは……)
 アリシアが深刻な面持ちでうつむく。
(そうですよ、これじゃ放火ができません!)
 あくまで火付けにこだわるクーア。
 そこへ足音を響かせ、伝令の男が入ってきた。男は奴隷商本人らしき男へ耳打ちをする。イレギュラーズたちはいっせいに聞き耳を立てた。
「ボス。お耳に入れたいことが……」
「なんだ」
「……」
「なにっ」
 奴隷商人は目をかっぴらいた。
「このイレギュラーズは全員『神ってる』だと!?」
 なんだと、バカな! 奴隷商人とその手下どもに激震が走る。もちろんこれは、帰ってこないイレギュラーズの事態を察知した古株情報屋ショウとプルーが流したデマなのだが、商品価値を大事にする奴隷商人たちにとってこうかはばつぐんだった。
「そ、そんな、あんなに清純そうな子が……!(利香を見ながら)」
「冗談はよせ! ちびっ子が神ってるわけないだろ!(エクスマリアを見ながら)」
「ネコミミメイドさんは萌え萌えキュンがせいぜい……そうだと言ってくれ(クーアを見ながら)」
「あんな高貴な子が神ってるわけない(アリシアを見ながら)」
「あんなかわいい子が男の子なわけないしましてや神ってなんかない(リウィルディアを見ながら)」
「あんないかにもな男が神ってるなんて逆にありえない、後ろの経験はともかく(スティーブンを見ながら)」
「ハァハァ僕と神りませんか指名料倍払いますから(アウローラを見ながら)」
「クレマァダさん、こんな依頼でなにやってるんすか(第一印象)」
 広がる動揺。ざわつくアジト。
「ええい静まれ!」
 ボスの奴隷商が立ち上がり両手を広げた。
「わしはこれから事の真偽を確かめに行ってくる! いいか? くれぐれもわしが戻るまで妙なことはするんじゃないぞ、神ってるかどうか確かめようなぞもってのほかだ!」
「イエッサー!」
 なーんて答えてるけど、みんな目が泳いでいる。よく見れば見張りの彼らの後ろには自分たちの武器防具が。あれを取り戻すには、見張りをなんとかするしかない。そして、ボスが立ち去った今、この場にいるのは御しやすそうな見張りの男たちだけ! これはもうなんとかするしかない。なんとかするしかないよね。武器とか防具とかとりあげられてるからここは、体一つで。なんとかしようじゃないか!
(……てゆーか、見張りの皆さん、イレギュラーズに夢見すぎなんじゃない?)
 あなたはそう思った。

GMコメント

みどりです。リクエストありがとうございました。光栄です。

Q:今どんな状況?
A:服は着てますよ?

さて、皆さんは武器も防具も取り上げられた状態で、とある洞窟へ放り込まれています。ステがガタ落ちしてますので、ご注意ください。お約束の縄やら枷やらはあったことにしてもいいしなかったことにしてもいいです。ふっしぎー。

そして周りには奴隷商人の手下である見張りがいます。人数はテキトーです。
光源は十分、壁にかけられたいくつもの松明です。きっと皆さんをなまめかしく彩ることでしょう。

という状況を脱するために、皆さんは奴隷商人が戻ってくる前に体一つで(大事なことなので)力を合わせて(これも大事ですねえニチャア)、見張りを何とかしなくちゃなりません。なんとかすることに気合を入れたプレをお待ちしてます。ここでクソ真面目に非戦の~~と~~を使って、素手で〇〇を打ち、移動の必要がなければ攻撃集中とか書かれても、私が困っちゃうのでよろしくお願いします。
 
最後に、何をとは言いませんが、よろしくお願いいたします。
 

  • 三行で完了
  • GM名赤白みどり
  • 種別リクエスト
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2020年07月22日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談8日
  • 参加費---RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

アリシア・アンジェ・ネイリヴォーム(p3p000669)
双世ヲ駆ケル紅蓮ノ戦乙女
エクスマリア=カリブルヌス(p3p000787)
愛娘
リカ・サキュバス(p3p001254)
瘴気の王
スティーブン・スロウ(p3p002157)
こわいひと
クーア・M・サキュバス(p3p003529)
雨宿りのこげねこメイド
リウィルディア=エスカ=ノルン(p3p006761)
叡智の娘
アウローラ=エレットローネ(p3p007207)
電子の海の精霊
クレマァダ=コン=モスカ(p3p008547)
海淵の祭司

リプレイ


 利香は愛らしい顔を恐怖に染め、いやいやと首を振り後じさりをした。その様子が見張りたちを煽っているなど、わかりもしないといった風情で。
「……お願い、こないで」
 小さな声で哀願する。その体へやらしい目を向ける見張りたち。ああ、どうなってしまうのか……。
(なーんてね、殺す殺す必ずコロース! この私にクーアの前で恥かかせた事をじっくり後悔させながら殺してやる……!)
 ともすれば溢れ出しそうな殺気を押し殺し、演技演技、がんばるぞい。ここでしっかりたらしこんでおけば見張りのほとんどを引きつけておける。そうなれば仲間も動きやすかろう。そこまで計算しての行動だ。
(武器も防具もないけど、霊石はあるわ。画竜点睛、これだけあれば何とかなるわよ……ふふ)
 利香はこっそり舌なめずりをした。
 クーアは怒りの頂点を通り越して冷たい瞳で見張りを見つめている。それもまた、見張りたちの嗜虐心をくすぐった。なにせクーアは手枷で動きを封じられているのだ。
(妙な噂を信じて人質を放り出すような間抜け共に、よりによって利香共々、ここまで良いようにされるとは。どんな手段を使ってでも、報いを受けてもらうのです……)
 赤黒いオーラを吹き上げながら、クーアは頭を忙しく働かせる。
(何やら情報屋達が色々撹乱してくれているようなので、それに便乗しましょうか)
 クーアは舌打ちしつつ見張りたちへ体を向けた。
「皆さん、私たちに随分ご執心のようですね」
「クーア、だめよ、この人達を刺激しちゃ……!」
 利香の制止が飛ぶけれども、もちろん盛り上げのためだ。自称恋人ごっこをしているふたりは、いろいろとツーカーだった。
「ええ、確かに巷では神ってるとかどうとか言われてますとも。その証拠を皆さんにお見せしましょうか?」
 ざわっと見張りが動揺する。
「利香、お願いします」
「そんな、クーア……!」
「いいのです、見ての通り私は枷で身動きが取れません。お願いします」
 寄り添う利香に、クーアは体を委ねた。利香は今にも泣き出しそうな顔で、クーアのメイド服の裾に手をかけ、戸惑いながら引き上げていく。クーアのふくらはぎがあらわになる。ニーソックスに包まれた丸くてかわいいひざ、スレンダーだが形の良いふとももまで、ごくりと生唾を飲み込む見張りたち。そしてついに、可愛いフリルの付いた白のぱんつが……! 見張りたちは固まったまま興奮の絶頂だった、しかしさらに利香はそのぱんつの内側へ手を差し入れた。スカートでうまく隠しながら、ぱんつをするするとおろしていく。ふとももにひっかかったままのぱんつを視線で指差しながら、クーアは言った。
「私のぱんつです。相応の価値がつくと思いませんか? どうせあなた方の取り分なんて高が知れてるでしょう。今ここにある私のぱんつが、正しく一攫千金の好機なのですよ? 私の話を聞いてもらえるなら、差し上げても良いのです」
 見張りたちは突然の好機とスカートの奥の暗がり、そしてクーアのぱんつとを天秤にかけている。
「こうなったら、私のぱんつも売る!」
「利香!?」
「クーアにだけ、そんな思いさせるわけにはいかないもの!」
「……利香」
 クーアを強く抱きしめ、涙をこぼす利香。美少女二人の絡みに桃色のエフェクトが出た。それが利香の瘴気だと誰が気づけただろうか。利香は恥ずかしげに形の良いヒップを突き出した。
「あの、誰か、脱がせてくれない? その代わりクーアには手を出さないで」
 ここまでお膳立てされては男がすたるというものだ。鼻の下を伸ばした見張りがさっそく利香のお尻をがっちり掴む。
「あ、あっ、そんな乱暴にしないでください……っ。や、ぱんつ、無理やりっ、脱がされ、ぁ、あん……!」
 利香は前のめりに倒れた。霊石が光り、リカの胸が膨れ上がっていく。白い肌は青へ、服は破れ、たっぷりした尻があらわになる。
「え、えへへ、ふふ……その気になっちゃったぁ……お兄さん達……遊んでぇ……♪」
(うっわ、三文芝居。やってらんない)
 見張りたちがいっせいに利香へ群がる。
「あっ、ひゃん、いいわあ、求められるってすてき……」
(鍵、鍵、鍵! あった、こいつね!)
 利香は狙いをつけた見張りの腰から鍵束を抜き取るとクーアへ投げた。クーアはそれで枷を外し、ダッシュして武器と防具を取り戻すと同時に、助走をつけて利香へたかる見張りを全力グーで殴った。乱打乱打乱打。ラッシュの嵐。
「外道共に焔色を用意して差し上げるほど、私はお人好しではないのですよ?」
 利香が喉を鳴らして笑う。
「良い顔してるわよ……ま、この私の隣に立つべき子ですもの。そのくらいはね? んじゃ死になさい虫けらども。たっぷりと苦しめてアゲル?」


(ねーよ、ねーよ、アートがねーよ)
(今そんなこと気にしてる場合?)
(あるだろ、もっと。荒縄には荒縄のよさってもんが、連中何もわかっちゃいねえ)
 この状況下で余裕綽々なのはスティーブンとリウィルディア。小声で声を掛け合っている。
 スティーブンはさっきからずっと、縄のかけ方が甘いだの下手くそだの美が感じられないだのぼやいている。ちなみに自分の腕を縛る縄などさっさと解いてしまって、再度念入りに縛るという凝りっぷりだ。ちなみにこれもすぐに縄抜けできるよう仕掛けを施してある。
 器用だなあと、リウィルディアはのんきな感想を抱いた。
(さて……騙して悪いがなんて、舐めた真似をしてくれたわけだ。たっぷりと利子を付けてお返ししてあげないとね?)
(こえーよおめえ、いやぁ運の悪いやつも居るもんだ。どっちがとは言わないが。それじゃ段取り通りに行くぜ、柔軟はよくしとけよー?)
(わかってる)
 スティーブンはちょいちょいっと見張りの一人を誘い出した。
「なぁ、あんた……ちょっといい話があるんだが」
 食いついてきた見張りに耳打ちする。
「どうだい俺が話をつけてやるからあいつと……」
「ま、まさか、神……」
「おう、存分に神ってこいよ。ただ、あんた相手なら良いって言ってるんだが、他に見られるのは恥ずかしいってさ、だから奥で……」
 チラリとリウィルディアへ視線をやると、見張りも血走った目を向けた。
(OK、かかった)
(ん、釣れたみたいだね)
 アイコンタクトをとったふたりは次の段階へ進むことにした。つまり……。
「とはいえ、あんたも何かと不安だろう。だから俺があいつをしっかり縛り上げといてやるよ。なぁに任せな。縛りには自信があるんだ」
 スティーブンはわざと見張りの返事を聞かず、リウィルディアのもとへ戻った。
「おい」
「たっ!」
 スティーブンはリウィルディアを軽く蹴り飛ばした。リウィルディアは地面へ転がり、大げさに痛がってみせる。
「というわけで俺は奴隷商の側につくぜ。おっと、歯向かっても無駄だぜ。おとなしく縛られな」
「……く、卑怯な」
(いやまあガチで殴り合ったらおめえのほうが強いけどな)
(いいから早くしなよ、恥ずかしいのは主に僕なんだからな)
 へいへい、とスティーブンは手に入れた荒縄をしごいてなじませた。輪と瘤をいくつか作り、輪をリウィルディアの首にかける。ギチ、と荒縄がリウィルディアへ食いこんだ。
「……んっ」
「いい顔するなよ。これからが本番だぜ」
 パァン! スティーブンがリウィルディアの尻を音高く叩く。
「あっ、つぅ!」
「お、おい、あまり商品に傷は……」
「おいおい、これからあんたがキズモノにするんだろ、しっかり包装しとくからじっくり見て行けや」
 スティーブンはリウィルディアの背後にまわり、さらに縄をかけていく。荒縄が肌へ這うたびにリウィルディアは小さく声を上げた。
「ん……ふ、うぁ……」
 そして出来上がったのは、王道ゆえに人気が高い亀甲縛りだった。三重にかけられた縄目は美しく、倒錯した色気を醸し出し、没落貴族の斜陽すら感じさせる。リウィルディアはまさしく服を着た芸術品だった。このままオークションへ出したら目の色変えた貴族たちが競りあうのは間違いない。それを、自分が、ひとりで思うがままにできる……。見張りは完全にハニートラップにやられていた。
 引きずるようにリウィルディアを奥へ連れ込み、そこで、神秘ワンパンKOされた。
「これね、ここひっぱると一瞬で解けるようになってるんだ。って解説してあげるのも馬鹿らしいや。さて、武器と防具も手に入ったし……虐殺させもらおうか……」
 うすら寒い笑みを見せるリウィルディア。その頃、スティーブンが二人目、三人目に話をつけていた。下心丸出しの見張りたちは、ひとりまたひとりとその蟻地獄へ入っていく……。


(ラサまで日帰り旅行気分が、人生どん底ツアーになりそうね。)
(うー、アウローラちゃん捕まえたって何にもないよー? とりあえず装備回収しないと……)
(大丈夫ですよ、アウローラ様。なんなら私ひとりでこの事態を抑えてみせる覚悟。)
(ええー、アリシアにだけそんなことさせられないよ! アウローラちゃんもがんばるっ)
 なにをがんばるというのだなにを。いやがんばらせてたまるものか、こんな無垢な娘に。アリシアは決意を新たにした。そうと決まれば状況開始だ。
 アリシアが選んだのは、ストレートに色・仕・掛・け。
(『神っている』、神がかっているの略称だけど、身体ひとつしかない今、これで魅せるしかないわね。)
 アウローラを守るように片手で肩を抱き、もう片方の手でぱたぱたと自身を扇ぐ。
「それにしても奴隷商人様の配下は男しかいないのかしら、暑苦しいわね……水浴び出来ないかしら。汗かいてきたわ。」
「汗ぐらい我慢しろメスどもが!」
「メスってなに! 言い方ってものがあるでしょー!」
(アウローラ様、抑えて。)
 アリシアだってかちんと来たが、まだ表に出す段階じゃない。平静を装ってアリシアは演技を続けつつ、エネミースキャンで怒鳴りつけてきた見張りをチェックする。
(なんだ、たいしたことないじゃないの。自分より弱そうな相手には居丈高になるタイプね。)
 つくづく残念な男だとアリシアは内心ため息をつく。周りの見張りを視ておくと、似たり寄ったりのステータス。武器と防具さえ取り戻せば敵ではない。がるるるっと毛を逆立てているアウローラをよしよしすると、アリシアはさらに一歩踏み込んだ。
「乙女の水浴びならそちらは手を出さずに見ていられるし、私も汗や汚れを流せる。良い案だと思うけど?」
「し、しかし……」
「それならここでいっそのこと脱いでしまうわ。どうしようもなく暑苦しくてたまらないのだもの。飲み水を頂戴と言いたいところだけど、何が入ってるか分かったものじゃないし、脱ぐしかないわね。商品価値を尊重しないのかしら?」
 声高に訴えると、アリシアは胸元に手をかけた。ぷつり、最初のボタンをはずす。
「おい、どうする、もしボスが今帰ってきたら」
「俺たちお咎め抜きじゃすまされねぇぞ。水浴びってことにしてやれ、たらいと水を用意しろ!」
 じきにたっぷりと水の入ったたらいが用意された。
「あうー、アウローラちゃんも水浴びしたい。このままじゃ熱中症になるんだよー……あーつーいー……」
 アウローラがころりと地面へ転がった。そのまま仰向けになったり、またころりと転がり、丸くなったり。
「はあ、床がひんやりして気持ちいい……。暑いんだよー」
 水色の髪がさらりとこぼれ、胸元へ。幼くみえて立派なそこは、見えそうで見えないギリギリのラインが決壊寸前。ふっくらしたそこが地面でつぶれて逆にどれだけ柔らかいかを示している。見張り達はアウローラに釘付けになった。
(幼い体を邪念にまみれた目つきで! やはりこいつら、殺すしかないようね)
 義憤をおさえつけ、アリシアはアウローラを抱きとめる。
「ならいっしょに浴びましょうか。アウローラ様。」
「うんっ!」
 アウローラが喜んで近寄ってきた。
(私が引きつけるので、アウローラ様は武器をお願いします。)
(りょうかいっ)
 言うなりアリシアは立ち上がるとするりとドレスを脱いだ。おおっと見張りから声が上がる。スレンダーながらも出るところは出ている肢体。張り出した胸元とキュッとしまったヒップラインを彩る黒薔薇意匠の下着。アリシアは見せつけるように軽く尻を振った。色んな意味で前かがみになる見張り達の合間をすり抜け、アウローラは背後に置いてあった武器と防具を身に着けた。
「よくもアウローラちゃん達みんなにひどいことしたなー! 徹底的に懲らしめてあげるんだよ!! 絶対に許さないんだからっ!!!」
 アウローラは大きく息を吸い込んだ。
「吹き飛んじゃえーっ!!!」
 魔砲のすさまじい勢いが見張りたちを巻き込み地をえぐっていった。


 手枷をかけられたまま、エクスマリアは真剣な顔でクレマァダへ問うた。
(神ってる、とは、なんだ?)
(なんなんじゃろ……我にもわからぬ)
(クレマァダ、にも、わからない、ことはある、のだな)
(しかし、今の状況、神なるワードで一応小康状態なのでは……? なれば積極的に肯定するべき、なのか? どう思う?)
(神ってるかどうか、というのが、マリアたちの、商品価値に、重要らしい、となれば……)
 ふたりはやおら見張りの方を向いて宣言した。
「「我々は神っている」」
「うそだろおおおおお!!!」
 反応は様々だった。泣き崩れる者、茫然自失の者、地面をゴロゴロころがってうあーとかいう者。
(よ、よし、なんか知らんが効いておるようじゃ!)
(なんだろうか、なんとなく、嫌な予感が、するのだ、が)
 そのうちゆーらゆーら揺れながら見張りの一人が近寄ってきた。見るからに尋常ではない。
「へ、へへ、もう神ってるなら、いいよな。ふふふ、へへへへっ」
 エクスマリアの金髪が揺らめいた。歴戦の彼女のセンサーが緊急警報を発している。
「クレマァダ、下がれ、こいつは、ヤバイ、ぞ」
「いいや、きっとこれは神がくれたもうた交渉の機会。誠意を以ってあたれば相手も答えてくれるはず!!」
「いや、たぶん、ちが……」
「真面目にお願いするのじゃ。我は人の善性に期待する!!」
「まあ、そこまで、言うなら……」
 エクスマリアはそっと身を引いた。クレマァダが見張りの男の前に出る。
「言葉の通じる相手とお見受けしてお願いする。その……な? この拘束がきつうて、我は……んっ、少し、辛いのじゃ……。お頼み申し上げる。この縄をほどいて我に優しゅうしてくれぬか……って、んんっ?」
 クレマァダはガッツリ両肩を掴まれた。男は荒い息を吐いている。
「クレマァダちゃああああん、ボクと神りましょうねえええ」
「ギャーーーー! なんじゃ気持ち悪いよせやめろ、今のナシ! 今のナシじゃ!! 来るなボケェアホォ!!」
 必死になるクレマァダを、背後から金の髪が包み引き寄せられた。男がひるむ。エクスマリアがクレマァダを抱き寄せ、透明な表情で男を見上げた。
「待て。話を、聞いてほしい。じつは、神っていれば、助けてもらえるかもと、思ったに、過ぎない。本当は、意味も、知らないん、だ。『神っている』とは、なんだ?」
「う、それは……」
「『神ってる』かどうか、調べれば、わかるのだろう……? それと、その。言いにくいの、だが、お手洗いに、連れて行って、欲しい。この手枷、だと、一人では難しいゆえ、手伝って、もらえたら……」
 エクスマリアはぎこちなく体を動かし、時折ふるりと震えた。もじもじと細いふとももをすりあわせる。
「しかたねぇ、垂れ流せとも言えねぇしな。いいだろう。ただし手枷は外さんぞ」
「それで、いい。頼む、早く」
「エクスマリア!」
 自分を守ってくれた金髪が引いていく。クレマァダは、立ち上がった彼女の頼りない後ろ姿に思わず声をあげた。
「……あとは、頼ん、だ」
「……エクスマリア……」
 儚げな微笑を浮かべ、エクスマリアは乱暴に引きずられていった。残されたクレマァダは悔しさでいっぱいだった。
(くっ、今頃エクスマリアは破廉恥なことをされておるに違いない! 我のせいじゃ、ええい、いつもの装備さえあれば、かような奴らに好きさせることなど……!)
 と、そこへ、どごん、感傷をふっとばす破式魔砲がぶちこまれた。唖然としたクレマァダの前に、砂煙からエクスマリアが姿を表す。
「無事じゃったか! あの見張りは!?」
「こう、ギフトで、首をコキッと」
「さすがじゃ!」
「それでは、粉砕、制圧、殲滅、だ」
「徒手空拳の恐ろしさ、貴様らの身に叩き込んでくれるわ! 絶海拳『砕波段波』!」


 奴隷商人がアジトへ戻った時、そこは完全に壊滅しており、見張りはずらっと並べてケツにローレットの旗をぶっさされていた。
「こ、これは……」
「見てのとおりじゃ」
「ここは、マリアたちが、もらった」
 クレマァダとエクスマリアがそろって戦闘態勢に入る。
「生きてるかどうかは調べなくていいですよ」
「だってすぐ後を追うことになるんだもの」
 クーアがすごみ、利香がサキュバスの本性を曝け出す。商人が回れ右をした先には、既にアウローラとアリシアが回り込んでいた。
「あの程度じゃ気がすまないんだからっ!」
「全面的に賛成します。」
「さてデザートをいただこうか」
「いいもの持ってるんでしょう? 分けてくれたって良いよね?」
 スティーブンとリウィルディアがじりじりと距離を狭める。悲鳴があたりに響き渡った。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

いかがでしたか?
奴隷商人から金品を巻き上げた皆さんはラサの酒場で豪遊したと報告が入りました。
あんまりえっちっちにならなかったなあ……文字数め。

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