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シナリオ詳細

豊穣あじさい小唄

完了

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●雨に唄えば
「新天地、でしたが……何とか、なりましたね」
「基本的には他とそう変わらずで、魔物退治みたいに考えておけばいいのかもな。……今の所は、だが」
 マギーとフレイ、紫月とジルの四名が、小雨でぬかるむ豊穣の地をゆるりと歩く。彼らは先ほど、あやかしの討伐を終えたばかり。辺りには、草のにおいとーー
「アジサイ、いっぱい咲いてるっすねぇ。さすが本場? って感じっす」
「せやねぇ。この感じ、何となく懐かし気がするわぁ」
 薄い青、青紫から赤紫、うっすら黄色を帯びた白まで。紫陽花のそれと似た色を持つジルや、豊穣に近しい異界より降り立った紫月は、雨に濡れながらも不思議と心地よく思う。
「と、とりあえず傘が欲しいね。羽根が濡れると、重くて敵わん」
「同感やわぁ。大降りになったら、大変やものねぇ」
 フレイの翼が文字通り、烏の塗れ羽となって艶めく。六枚もの翼を持つ紫月にとっても、水の重さは少々問題だ。

「そういえば……」
 討伐に向かう途中、通り過ぎた町で沢山の傘やのぼりが立っていた様子をマギーが思い出す。平時にしては、随分と賑やかな様子だったと。
「あー、あれ! お祭り! かも、知れないっすね」
「うん。傘が出てるって事は……傘も買える、といいんだが」
 まだだいぶ余裕があるし、行ってみようかとフレイが言う。この豊穣の地は、まだ知らない事ばかり。人々の暮らしぶりや土地の空気に触れておくのも良いだろう、と。

 夏至の頃が過ぎ、気が付けば雨季の終わり、小暑から大暑へ。紫陽花を愛でられる時期もあとわずか。せっかくだからと、一行は雨の中賑わう町を訪れる事にした。

GMコメント

リクエストありがとうございます!
ちょうど今、カムイグラがアツかったので本場(?)でのお祭りになりました。

・・・・・・・・

●目標
豊穣の紫陽花祭りを楽しもう!

●ロケーションなど
豊穣の自然豊かなある町で、紫陽花を愛でるお祭りが行われています。
町の至るところに紫陽花が咲いていますが、山あいの路には特に多く咲いており、
少し離れて眺めたり、ゆったり歩くのにも向いています。

●スポットなど

 〇出店(食べる方)
  飲み物に食べ物、それっぽいもの色々飲み食いできます。
  お酒とノンアルコールの甘酒もあります。雨で冷えた身体に優しいです。 
  お疲れの際は、和傘のある休憩所でお休みください。

 〇出店(食べる以外)
  和雑貨を買ったり、射的などで遊んだりできるお店もあります。
  紫陽花のような色とりどりの蛍石や、それを使った紫陽花モチーフの装飾品なども。

 〇茶屋
  赤い布敷きの椅子に腰かけ、向こうの紫陽花を眺めつつのんびり一杯。
  お抹茶と和菓子、軽食が出ます。寒天と白餡を使い、紫陽花をかたどった一品も。

 〇紫陽花小路
  山の斜面に紫陽花が咲き乱れている道です。進んだ先には小さな社があります。
  祭神や由緒、ご利益などは不明ですが、町を守ってはいるようです。

 〇他
  小さな町のお祭りにありそうなものは大体あります。

・・・・・・・・

楽しんでいただけましたら幸いです。よろしくお願いいたします!

  • 豊穣あじさい小唄完了
  • GM名白夜ゆう
  • 種別リクエスト
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2020年07月26日 22時10分
  • 参加人数4/4人
  • 相談11日
  • 参加費---RC

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(4人)

ジル・チタニイット(p3p000943)
薬の魔女の後継者
フレイ・イング・ラーセン(p3p007598)
紅楼夢・紫月(p3p007611)
呪刀持ちの唄歌い
マギー・クレスト(p3p008373)
マジカルプリンス☆マギー

リプレイ

●雨の日だけに咲く花がある
「紫陽花のお祭りなんて素敵やわぁ」
「雨が似合うお祭りって、いいっすねぇ」
 生憎の雨模様だが、白い雲の下、淡い紫陽花と鮮やかな傘の色彩がお互いにがよく映える。『呪刀持ちの唄歌い』紅楼夢・紫月(p3p007611)と『薬の魔女の後継者』ジル・チタニイット(p3p000943)は、その風情に嘆息を漏らした。
「でもその前に、まず傘を買うっす! 僕らがずぶ濡れになってしまうのはまずいっす!」
「そうしましょうっ!」
『小さな決意』マギー・クレスト(p3p008373)とジルは、駆け足で傘売り場へと向かった。緋色に菖蒲、模様入りと選り取り見取り。無数の骨が張られた形自体も装飾的で、ついつい目移りしてしまう。そんな中、ジルが選んだ傘はこの日と同じ薄紫、紫陽花の色。
「雨の紫陽花祭りに和傘を差して……と。これは良い雰囲気ではないかな」
『Unbreakable』フレイ・イング・ラーセン(p3p007598)は濃紅の傘を選び、紫月は京紫色を選んでさっそく広げる。
「マギーは迷ってはるのぉ?」
「と、そ、そうですね……」
 ひとりで何かをする事に慣れないマギーが、なかなか傘を選べずにいると。
「あ……」
 赤や紫といった色が多い中で、ひときわ目立つ萌黄色。
「あれ、ええんやないのぉ? 元気が出る色やわぁ」
「そ、そうですね……じゃあ、『ボク』はこれで!」
 傘を受け取って広げれば、頭上がぱっと明るく晴れたようで。慣れないながらも自分で考え自分で選ぶ、当たり前のようで難しいこの事を、マギーはとても嬉しく思う。
「そ、それから、それから……!」
 マギーが続けて指さした先には、山の斜面にたくさんの紫陽花がひしめく小路がある。近くの案内板を見るに、『紫陽花小路』という名の場所か。
「なるほどな。あの小路には、マギー以外も行くつもりなのだろう?」
「そうやねぇ。あそこが一番の見どころやと思うわぁ」
 紫月とジル、そしてフレイ本人も興味があるようだ。しかし、賑やかな出店も気になる。どうしようかと迷う仲間たちを、フレイの提案が纏める。
「じゃあ、そこに行くまでは各々で好きなように観て回って、あとで小路で合流という感じでどうだろうか?」
「了解っす。おいしい出店を探してくるっすよー」
 お仕事の後ははらぺこだと、ジルは早足で屋台へ向かった。

●カムイグラの紫陽花めぐり
「さぁて。ゆったり楽しむとするかねぇ」
 頭上、時々それよりもっと高い場所で京紫の傘がくるくる回る。紫月はひとり、ゆったりと祭りを見て回り。空から見下ろす紫陽花祭りは、傘や建物、花のひとつひとつが大きな紫陽花の花弁のようで。この眺めは、翼持つ者の特権だ。
 傘があるとはいえ、雨の中の飛行はやはり疲れる。休憩すべく、茶屋へと降り立つ。茶屋の中では、フレイが既に腰を落ち着けていた。
「おやおや、フレイも居てはったかぁ。何頼んだのぉ?」
「ああ、紫月か。俺はこれ……紫陽花を象った和菓子だ」
 フレイの趣味は食べ歩き。寒天と白餡に色を付けて紫陽花を形作ったもので、透き通った淡い紫と緑の葉は蛍石のようでもあり。本場に来たからには本場のものを、と迷わず頼んだものだ。
「可愛らしぃなぁ。食べるの勿体ないかもねぇ」
「俺もまだそれで手付かずだが、菓子である以上は食べないとな」
 せやねぇと笑い、紫月も同じものを頼んでフレイの近くに腰を下ろす。
「お抹茶と和菓子。和風な雰囲気があってええねぇ。混沌に来る前を思い出すわぁ」
 豊穣の地には、紫月の世界とよく似た空気がある。しとしと雨に傘を差し、雨に濡れていっそう鮮やかに映える紫陽花を眺め、久しくのんびりとした時間を過ごす。内なる修羅も、今日はまったり。
「紫陽花を眺めながら紫陽花を食う……うん、結構美味いな。茶の渋みも良い感じだ」
「ほんまやわぁ。甘いのに苦いのが良く合って……フレイはお誘いありがとうねぇ」
「どういたしまして、だ。楽しんでいこう」

「落ち着いて、こういう時は、まず温かいものを……」
 雨での冷えは万病のもと。何か無いかと店を回るジルの前、甘い香りがふとよぎる。香りのもとは、大きな鍋で湯気を立てるスープのようなものを扱う店だ。
「いらっしゃい! 美味しい甘酒だよ」
「あまざけ……っていうと、甘いんすか? おさけ?」
「ああ、いれぎゅらーず? さんか。てっきりここの鬼さんかと……ええ、甘くて美味しいんですよ。お酒飲めない人でも飲めます」
 それじゃあ一杯、と受け取ったそれには、何かつぶつぶしたものも浮かんでおり、それも興味深い。
 休憩所で腰を下ろし、慎重に一口。
「あちっ、す!」
 落ち着いて飲もう。ふーふー吹いて冷ましながら、二口、三口目へ。
「あまーい……」
 だけでなく、疲れた身体の芯まで染みわたるような。薬師の勘が、これは身体によいと告げている。実際、豊穣の地では寒い時期や暑気あたりの際などに、薬として飲まれる事もある逸品だ。
「ふうぅ、ほっこりするっす」
 つぶつぶを舌で噛んでみるのも楽しい。雨で冷え込む空気の中、傘の下でいただく温かい飲み物、そして紫陽花の花。贅沢な時間だなぁと、ジルは大いに羽根を伸ばした。

 マギーが『私(わたくし)』だった頃、祭りの類に行く事は叶わなかった。
 あれも珍しい、これも初めて。きょろきょろと出店を見渡す。こまごましたものが並ぶ通りで、艶々と赤くてまるい物が目を引く。
「これは……林檎飴、ですか? りんごの?」
「ええ! とっても美味しいわよ」
「で、では、それを一つ」
 表面は文字通り、飴だ。では、中身は何だろう? 飴部分が薄くなったところに、思い切って齧りついてみる。
(わっ、本当に林檎だ! それも丸ごと!)
 ぱりぱりとして甘い表面の飴と、中の林檎の瑞々しさと甘さ、ほんの少しの酸っぱさが合わさって――
「とっても美味しいです!」
 もっと味わいたいと、思い切り口を開けてがぶりと齧る。そんな彼女の後ろから――
「マギーさん。それ、美味しそっすね」
「ジ、ジルさん!?」
 はしたない所を、と咄嗟に詫びるが、ジルを含め、マギーの所業をはしたないと咎める者はこの場に一人として居ない。
「美味しいものに出会った時は、自然とそうなるっす。それに、美味しそうに食べる人を見るのも、ボクは好きっす」
 という訳で自分もと、林檎飴を買いに行くジル。戻ってきた彼女の手には三本ほどの飴以外にも、色々な食べ物がぶら下がっていた。
「え、それ全部おひとりで……?」
「腹ぺこっすからね。それに、林檎があれば医者いらず、とも言うっす……あれ、ボク要らないっす?」
「ジ、ジルさんは要りますよ……!」
「あはは。ボクのお仕事って、無きゃ無いで良いものなんすけどね。マギーさんも色々食べるっす?」
「ちょ、ちょっとボクは一個食べるまで様子見で……」
 二人並んで林檎飴を頬張る。誰かと食べるとより美味しい、という事で、二人の意見は一致した。

「よう。どうだった、ここの祭りは?」
 集合場所、紫陽花小路の入口にいち早く着いたフレイが、同じく早めに着いたマギーを出迎える、
「と、とっても楽しかったです! 初めて食べたりんご飴とか、紫陽花モチーフの小物なんかも色々あって……」
「小物か。なるほど……まだ時間はあるし、そこまで案内頼めるか?」
「は、はいっ!」
 確か、林檎飴の並びだったか。記憶を頼りに歩いてみる。程なくして、雑貨や装飾品の並ぶ通りへと出る事が出来た。
「付き合わせて悪いな」
「い、いえ、ボクもお土産買いたかったので! ボクだけが楽しんだら悪いですし」
「俺も土産物を探したいんだが、あまり交友は広くないし、何を選べば良いか分からなくてな……」
「ボ、ボクも何を選べばいいのか分からなくてっ」
 乳兄弟へのお土産を選びたいが、異性の持ち物はさっぱり分からない。そういえば、今は傍らに男性が居る。大人の男性はちょっぴり怖いけど、フレイなら大丈夫そうだ。ほんの少し勇気を出して、質問してみる。
「あの、フレイさん。男性に贈るお土産といったら、どんなのが良いでしょうか?」
 マギー本人は紫陽花のピアスが気になったが、一人では決め切れなかった、と。
「男性宛てとしては、ちょっと可愛過ぎるでしょうか……?」
 むむむ、と唸るマギーと彼女が選んだピアスを交互に見やり、あまり迷わずフレイが返す。
「そう悩まなくても良いんじゃないか? 贈りたいものがあるなら、それで」
 マギーが似合うと思うなら大丈夫、と付け加え。
「俺みたいなのだったら、可愛らしいのは似合わないだろうが……ほら。贈り物っていうのは、気持ちも贈るものだしな」
「な、なるほど……!」
 大人の男性の助言をもとに、マギーが選んだものより少し大人っぽく、濃い紫のピアスを探して手に取る。
「決めましたっ!」
 主張し過ぎない小ぶりなデザインはどんな場面にも合わせやすく、フレイのような男性が付けても違和感がなさそうだ。
「良いセンスだな」
 自分で選ぶ練習を、またひとつ。
「そうだ。俺の土産物も選んでくれないか。出来るだけ嵩張らないものが良いんだが……」
「よ、喜んで! お任せください!」

●歩いた路を振り返り
 各自、個人での買い物を終えて。それぞれ選んだ傘を差し、雨の小路をそぞろ歩く。
「ここはやはり、紫陽花が見応えあるな」
「見ても良し、食べても良し……やねぇ。ジルは何を食べてきたのぉ?」
「小麦粉の中にタコを入れて丸く焼いたものとか、ふわふわの綿みたいな飴とか食べたっす! どれも美味しかったっすよ」
 紫月の質問に対して、路の散策のため八分にはしておいたとジルは胸を張る。
「マギーはどぉ? 何か、掘り出し物とかあったぁ?」
「はい! ボクはこれ、買いました!」
 先ほど選んだピアスを、紫月に差し出して見せる。
「あらぁ。大人かわいい、って言うやつやねぇ」
 大人だって可愛いものは好きだし、身に着けたっていい。紫月のような美しい女性にも、このピアスは似合いそうだ。
「俺もいい買い物が出来たぞ。マギーのお陰だな」
「えへへ……」
 それぞれの収穫を報告し合いながら、のんびりと路を行き。路の終わりの鳥居を潜れば、小さな社に辿り着く。
「あらぁ。神様が居らっしゃるねぇ」
 紫月が鳥居の端を潜り、社に向かってゆっくり二度頭を下げ、拍手を二回。もう一回礼を行う。
「紫月さん、何やってるっす?」
「二礼二拍手一礼、お参り……お祈りのお作法よぉ」
「お祈りっすか。ボ、ボクもやってみるっす」
 ジルとマギー、フレイも一緒に見よう見まねで手を打ってみる。
「どうかこの土地で、楽しいことが沢山有りますようにっす!」
 新天地に寄せる気持ちは、みな同じ。紫陽花に囲まれた神域の中、しっかりと想いを確かめ合った。

 折り返しの帰り路。今日の記念に、皆でお揃いの物を買いたいとジルが言う。
「ええねぇ。皆で持てるものといったら、お守りとかどやろかぁ?」
「なるほど、それなら、皆で持てるな」
 小路の終わり、鳥居の近くに出店があった。丁度良くお守りの類が並んでいる。
「わぁ、可愛い……!」
 その中で、刺繍糸で編まれた紫陽花のお守りをマギーが見つける。どうやら、この時期限定の品物のようだ。
「いいんじゃないのぉ。可愛いわぁ」
 ブレスレットとして身に着けたり、持ち物にぶら下げたりしても良い形状で、これも持ち主を選ばない。満場一致で、このお守りを買う事にした。
「いい思い出になったねぇ」
 紫月とマギーが、早速腕に巻いてみる。ジルは角にぶら下げてみて、やっぱり違うかと腕に巻き直す。
「皆、楽しかったようだな。俺も楽しかった」
 折角だからと、フレイも腕に巻いてみる。これで皆、お揃いだ。どうか皆、無事でいて欲しいと願いを込めて。

 祭りを後に、町を立つ前。紫月がもう一度、紫陽花の社を振り返り。
「とっても素敵な場所だったわぁ」
 いつもそうして来たように、即興の唄を口ずさむ。

 ――なつのはじまり ひすいのあめに あざやかなきみと こみちをあるこう――

「これからも此処をしっかり護ってあげてねぇ。手伝える事があれば手伝うわぁ」
 祭神が居ようが居まいが、この場所そのものに感謝を込めて。

 やさしい時間に、やさしい唄を――

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

り、りんごあめ私も食べたい……!

雨の日のお祭りも良いなぁと思いつつ、色々解釈も入れつつで楽しく書かせていただきました。
カムイグラでのひととき、楽しんでいただけましたら幸いです。

この度はリクエストとご参加、誠にありがとうございました!
またご縁がありましたら、よろしくお願いいたします。

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