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シナリオ詳細

<月蝕アグノシア>白いヴォルペを何度でも殴れる依頼

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●白いヴォルペを何度でも殴れる依頼だよ
「やあ、おいたをしてるニンゲン君たちはここかな? 一応その子達を閉じ込めておくのがおいたんの仕事なんでね……」
 古い古い廃墟街。木と石の中間めいた素材でできた建築物が並ぶ大通りの一角で、赤いシャツを着た伊達男が馬車の前へゆらりと現れた。
 サングラスに白いカジュアルネクタイ。イタリアンな帽子にロングコート。そして黒い革靴。拳銃を指でくるくると回し、どこかひょうひょうとした笑みでこちらを見ている。
「さ、妖精を渡してもら――」
 ふんぬ、らしくない声をあげてヴォルペの拳が男の顔面に入った。
 砕け散るサングラス。
 血を吹いて飛んでいく男。
 いや、サングラスがとれたことでよく分かった。
「こいつまさか……ヴォルペ、なのか?」
「偽のおにーさんってとこかな……?」
 ハアハアと息を荒くして汗を拭うヴォルペ(p3p007135)。
 対する白ヴォルペ(推定)は口元の血を拭いながら起き上がり、くつくつと独特の笑みを浮かべた。
「いいねえ……面白くなってきたぜ!」
 胸元に手をかけただけで、一瞬にして上半身の服を脱ぎ捨てる白ヴォルペ(確定)。
「ヴォルペだ!」
「間違いなくヴォルペさんですね」
「みんなおにーさんのことどんな目で見てたの?」
「そんなことより――」
 馬車に飛び乗った仲間が、ヴォルペを大きく手招きした。
「さっさと逃げる!」

 妖精郷アルヴィオンの危機に、イレギュラーズたちが駆けつけた。
 悪しき錬金術師によって侵略され散り散りににげた妖精たちも次々と捉えられる今。妖精たちの友として、または依頼を受けたギルド員として、錬金術師の作り出した怪物たちへと挑むのだ。
「よしきた!」
 ヴォルペたちが担当したのは、妖精たちの町から大きく離れた古代遺跡。人間サイズの建物らしきものがならぶ大通りである。
 複数の道が入り組み、ぐねぐねとまがりくねった道の先、アルベドと呼ばれる人工生命体が攫った妖精たちを眠らせて保管していたのである。
 ならば取り返すまでよと突入し、妖精たちを馬車につみこみいざ逃げようとしたその時。
「逃がすかよ!」
 白ヴォルペことアルベド(ヴォルペタイプ)が出現したのだった。
 彼は車輪のついた木馬とデッサン人形めいた騎士による兵隊群を呼び出すと、自らも木馬へと騎乗。走り出すヴォルペたちの馬車へと追いついてきた。
「悪いが、俺はだいぶしつこいぜ」
 再生したサングラスを親指でくいっとやると、白ヴォルペは拳銃を馬車へと向けてくる。
 ヴォルペは深く深く呼吸を整えると、自らも胸元を掴んで早脱ぎした。
「ああ、ああ、分かったよ! おにーさんが遊んであげようか!!!!
 ――追いかけるのを諦めるまで、ね」

GMコメント

■オーダー
・依頼目的:妖精たちを奪われないように馬車で逃げ切ること
 皆さんは眠らされ囚われた妖精たちを透明な棺型ケースごと馬車に二十体分ほど積み込み、現場から撤収するところでした。
 ですがアルベド(白ヴォルペ)率いる部隊に見つかり、今まさにチェイスバトルが始まろうとしています。

 馬車の御者担当は二人ほど必要です。
 彼らの馬車に乗ったり、自らの軍馬やそれ相当の騎乗アイテムにのって追いついてくる敵と戦闘することになります。

■チェイスバトルについて
・移動速度
 こちらの速度は使用者の機動力その他にかかわらず大体一定であるものとします。
 馬車に関しては、車体にダメージを受けると走行能力が徐々に低下し、これが停止してしまうと実質依頼失敗扱いとなります。
 そうならないように馬車への攻撃を自分自身に引きつけ、実質的に庇う必要が出るでしょう。
 (馬車を転がしたりバリケードにしたりといったメタ利用はお控えください)

 敵の木馬は一時的にスピードアップができ、たびたび何体かの木馬が追いついてきます。
 これと戦い、追い払い続けるのがチェイスバトルの基本です。
 敵木馬はHPが低いので、割と簡単に破壊が可能です。ただし割と分散するので複数体をまとめて破壊しづらいかも知れません。
 味方をできるだけ分散させ、木馬の対処にあたらせましょう。

・木馬
 木馬と人形の騎士。錬金術によって作られた人形兵士です。
 魔法のマスケット銃や剣などによって攻撃してきます。
 個体ごとの耐久力は低いですが、とにかく数がどんどんきます。
 あと多分使う機会がないでしょうが、一応飛行戦闘能力もあります。

・白ヴォルペ
 木馬を使ってガンガン追いついてくる白いヴォルペです。
 びっくりするくらいタフなため、何回吹っ飛ばしても起き上がって追いついてきます。
 戦闘能力はこちらの固体戦闘力より多分上なので、がっつり戦うことは避けたい相手でもあります。
 依頼中もっとも重く対応すべき敵となるでしょう。

■補足情報
・アルベド(白ヴォルペ)
 人工生命体にヴォルペの遺伝子情報と『フェアリーシード』をあわせたことで完成した、強力なホムンクルスです。
 なんだかすごくヴォルペっぽいですが、彼の経験や記憶をひきついでいるわけでありません。姿が似てるのと、なんか魔術的に刻まれていた癖のようなものでヴォルペらしさを発揮しています。それが最も良く出てるのはタフさです。

 『フェアリーシード』は妖精を格納した核のような物体で、これを破壊するとアルベドを死亡させることが可能です。ですがその場合中の妖精ごと死んでしまいます。
 助け出す方法として、正攻法でアルベドを倒してからフェアリーシードだけ抜き取る方法が過去に成功しています。(そして今回はそれはだいぶ無理そうです)

■■■アドリブ度■■■
 ロールプレイをよりお楽しみいただくため、リプレイにはキャラクターのアドリブ描写を用いることがございます。
 プレイングやステータスシートに『アドリブ歓迎』『アドリブなし』といった形でお書きくだされば、度合いに応じて対応いたします。ぜひぜひご利用ください。

  • <月蝕アグノシア>白いヴォルペを何度でも殴れる依頼完了
  • GM名黒筆墨汁
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2020年07月15日 22時10分
  • 参加人数8/8人
  • 相談6日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ベーク・シー・ドリーム(p3p000209)
防戦巧者
フルール プリュニエ(p3p002501)
夢語る李花
ミニュイ・ラ・シュエット(p3p002537)
救いの翼
茶屋ヶ坂 戦神 秋奈(p3p006862)
音呂木の蛇巫女
ヴォルペ(p3p007135)
満月の緋狐
マヤ ハグロ(p3p008008)
鷹乃宮・紅椿(p3p008289)
秘技かっこいいポーズ
グリーフ・ロス(p3p008615)
紅矢の守護者

リプレイ

●脱衣は戦闘開始の合図
 宙を舞う『満月の緋狐』ヴォルペ(p3p007135)の服をぼうっと見上げていた鷹乃宮・紅椿(p3p008289)は、馬のたずなを握って追いついてくる木馬騎士へと身体を傾けた。
 黒毛の馬(轟天黒藤号)が彼女に応えて木馬に体当たりをかけると、勢いでぐらついた騎士めがけて紅椿の剣がはしる。
 首を切断された騎士はしかし、首など飾りだといわんばかりに反撃を繰り出してくる。
 そこへ突っ込んでくる『海賊見習い』マヤ ハグロ(p3p008008)の馬車。
 車体を割り込ませ、その荷台部分で構えた『鉄壁鯛焼伝説』ベーク・シー・ドリーム(p3p000209)が騎士の攻撃を引き受けた。
 その間に、マヤが御者席から身体をひねって銃撃。騎士を馬上から落とすと、ついでに木馬を車体をこすりつけることで追いやった。
「役目を終えてあとは帰るだけだというのに、こういう時に厄介な敵と遭遇するのね。
 本来ならば相手の戦闘能力とやる気を奪いたいところだけど……」
「あの白いの、戦闘時の面倒くささというか、鬱陶しさみたいなのも一緒なんでしょうかねぇ。
 今回は撃破ではなく耐久なのでストレスがたまる戦いになるかもしれませんねぇ……僕はこの程度の危険なら日常茶飯事なので良いんですが。先日なんか限界の綱渡りでしたしね」
 ベークの語りに肩をすくめるマヤ。
「まぁいいわ。三十六計逃げるに如かず。どこかの偉人が言った言葉らしいけど、ここは逃げることに集中しましょ」
「承知した」
 紅椿はちらりと馬車に積み込まれた妖精たちを見た。
 透明なケースの中で眠る、まるでお人形のように小さな存在。
「かような小さく愛らしい者を狙うとは許せぬな。妾が指一本触れさせぬぞ!」

 その一方。
「おい偽物。その姿はちょーっと頂けねぇな。
 引っ込んでろワイルド系男前野郎! 今は綺麗系イケメンの時代なんだよ!!
 早脱ぎもパンイチも負けねぇかんな!!」
「おっと、流行に囚われるたあオリジナル――さてはお前、『満たされてない』な?」
 白ヴォルペの銃撃を、ヴォルペは己のボディで受けた。肉体に弾丸が何発もめりこむが、それを気合いでこらえる。
「余計なお世話だ伊達男」
「なんだ、あれは……」
 そんな光景を上空から見ていた『救いの翼』ミニュイ・ラ・シュエット(p3p002537)は翼を操作して低空飛行モードへシフト。
 ヴォルペの馬車へと着地する。
「敵と分かっていても自分のコピー。躊躇は――」
「ないな!」
 珍しく殺意のこもった目でビッて立てちゃいけない指を立てるヴォルペ。
 『JK』茶屋ヶ坂 戦神 秋奈(p3p006862)がヒャッハーといって小指と親指を立てた。
「ローレットでも屈指のヤッベーやつがオマケ付きで追いかけてくるとか、マジムリなんですけどぉ!
 とりま白ペぶっ飛ばしたあとついでに黒ペもぶっ飛ばす方向でFA?」
 ハンバーガーをもしゃあって頬張りつつ振り返る秋奈。
「ふふふふふ……」
 馬車を操作する『夢語る李花』フルール プリュニエ(p3p002501)が笑顔だけでそれに応えた。
「白黒そろってどっちが本物のヴォルペおにーさんかしら? なんて……全然燃えてくれなさそうで困るわね。それでも燃やすけど」
 立てた人差し指の爪にボッと赤い炎を燃え上がらせるフルール。
 医療鞄を抱えたグリーフ・ロス(p3p008615)がどこか困った顔でミニュイを見た。
「あの……なぜ皆さん、こうも乗り気なのでしょうか」
「なぜだろうね。私も実はわからない」
 そうこう言っている間に、フルールは早速御者席から立ち上がって鳥型の炎精霊を呼び出した。
「さあ、パーティーを始めましょう」
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!?」
 突如として燃やされて馬上から転げ落ちる白ペであった。
 今日この手の流れ連続するから何回あるか数えておいてね。

●木製チェイス
 黒毛の馬が低い塀を跳び越え、反対側からマスケットを構えていた人形へと突撃した。
 黒い狐面を被った紅椿の剣がマスケットの銃身を切断。
 反動であがった銃が天空に空撃ちしたのをやりすごすと、紅椿は相手の腕を掴んで馬上から無理矢理引きずり落としていく。
 転落した人形がバウンドしながらはるか後方に遠のいていく。
「首を落としても止まらないようじゃが、追いつけなくなればそれでよい」
 と言いながら身体を傾けて別の塀の向こうへとシフト。彼女を狙った銃撃が壁に吸われ、壁がなくなったタイミングで紅椿に剣が空を払った。
 パープルカラーの光が斜めに走り、木馬と人形たちがバラバラになって散っていく。
「……が、倒すのもそう難しくないようじゃな」
「いいなあ、あの木馬」
 一方。馬車の風を受けて翼を広げた『救いの翼』ミニュイ・ラ・シュエット(p3p002537)は滑走路なしで急速上層をかけると、空中でターン&ロール。
 彼女を追ってゆっくりと上昇してきた木馬たちとそれにまたがった人形たちのライフルがミニュイを狙うが、ミニュイの上昇速度のほうが遙かに上だ。
 相手が射程に収めるよりも早く彼らの間を斜めにすり抜けると、ナイフのように鋭い羽根を人形たちへと突き立てていった。
 Z字を描くようにターンして馬車の上へと戻るミニュイ。ふと振り向くと、砕けた木馬の上で人形だけがふわふわ浮いてもがいていた。
「…………あれ、木馬が飛んでるわけじゃないのか……」
 元々表情がうすいミニュイだが、そんな彼女でも露骨にわかるほどものすごくがっかりしていた。
 その様子に小首をかしげるグリーフ。
「ご愁傷様……です」
 二両編成で併走するマヤの馬車とフルールの馬車。
 そこへ。
「やあ、おいたんはしつこいぜ!」
 白ヴォルペが現れた。
 木馬を加速しながら突っ込んでくる彼めがけ、ミニュイが馬車の上から固定砲台化しつつ羽根ガトリングを発射。
 白ヴォルペはというと――。
「フ、当たってないぜ」
 サングラスをちゃきってやりながら不敵に笑った。
 あと額に羽根が突き刺さっていた。
「わ、わからない……攻撃が当たっているのに空ぶっている気分だ。苦手なタイプかもしれない」
 ふるふると首をふるミニュイ。むりからぬ。
 マヤは眼帯をしていない方の目で振り返ると、手綱を握りながら片手で射撃。
 数発連射したうちの一発が白ヴォルペの額に直撃し、『グハァ!?』といいながら落馬。回転しながら遠ざかっていく。
「ふう、やってみるもんね」
 スキットルの蓋をひらいて、中身のラム酒を飲み干した。
「なるべく安全運転で行くけど、多少荒っぽくなるかも知れないから注意してね?」
「あの、早速いいですか」
「なあに」
 荷台にのっていたベークが、荷台の淵をぎゅっと掴みながら馬車前方を指さした。
「壁です」
「――!?」
 前方を二度見。
 直後、壁を無理矢理突き破っていく馬車。
 吹き飛んでいく建材。髪にひっかかった欠片をはらい、マヤは『ハハッ!』と笑った。
「無事ね! OK、ボルテージ上げていくわよ!」
「安全運転とは?」
 ベークがぼやあっとした顔で荷台につっぷしていたが、そこへ木馬を無理矢理側面から突き込ませた人形が荷台へと転がり込んできた。
 うわあといって押し倒されたベークだが、相手が剣を抜く前に腹を蹴り上げて馬車から転落させる。
 建物らしきものの壁にぶつかって遠ざかっていく人形。
「数が多いですけど、なんとかしましょうか」
「なんとかって?」
「さあ。なんとかはなんとかです」
 などと言っていると、前方にバリケードが見えてきた。
 木の板をいいかげんにはって道をふさぎ、木馬と人形を整列させた手作り検問である。
「どうします。止めて戦いますか?」
 御者席のフルールへ身を乗り出し、耳元で問いかけるグリーフ。
 フルールはどこか艶っぽく髪をかき上げると、前方めがけて精霊を解き放った。
「冗談。こういうときはどうするんだったかしら?」
「はい先生! 強行突破でありまーす!」
 馬車から身を乗り出した秋奈が抜刀――したかと思うと、そのうち一本を思い切りバリケードの兵達へとぶん投げた。
 人形の一人に突き刺さり、同時に襲いかかった炎がバリケードを燃やしていく。
 慌てたような動きで人形たちがマスケットで射撃を浴びせてくるが、フルールの横へと乗り出したヴォルペが自ら弾よけになった。というかその後ろに秋奈たちが隠れた。
「はっはっは! 楽しくなってきた!」
「あなたもなんか撃って、ほらほら」
「撃てといわれましても――」
「なんでもいいから投げる!」
「なげる?」
 グリーフはとりあえず医療鞄に手を突っ込むと、たまたま手に当たったものをバリケードめがけて投擲した。
 砕け散るガラス瓶。
 飛び散るゲル状の物体。
 人形の顔面に張り付いて暴れる謎の物体。
「…………なにあれ」
「すみません。実はワタシも分かりません」
 燃えさかるバリケードを馬で無理矢理踏み潰し、通りすがりに刀を回収していく秋奈。
 そんな彼女たちに――。
「おいたんはしぶといって言ったよね!」
 側面の建物を破壊しながら白ヴォルペが現れた。
「命を取ろうなんてつもりはないんだ。妖精たちだけ置いてい゛っ――!?」
 グリーフの鞄から出てきた謎のディスクがヴォルペの顔面にはりついた後、ジェット噴射をかけて馬車の外へと吹き飛ばしていった。ついでに爆発もした。
「……だからなにあれ」
「たまたまありました」
 真顔でいうグリーフである。
 かと思えば。
「おいたんはめげない!」
 パンイチになった白ヴォルペがどういう理屈なのかおいついた上、馬車の淵にガッて手をかけてよじ登ってきた。
 スゥっと刀を抜く秋奈。
 その姿を見て、白ヴォルペはにやりと笑った。
「いいのかい? 仲間の顔をした敵をそう簡単に殴ぶは!?」
 刀の柄のあたりでゴッてやる秋奈。
 ついでにヴォルペが白ヴォルペの顔面を蹴りつけた。
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!?」
 馬車から落ちて転がりながら遠ざかっていく白ヴォルペ。
 ビッて下げちゃいけない指を下げる秋奈。
「やったか!」
「……やったのですか?」
 その顔をのぞき込むグリーフ。
 そしてその肩を叩くヴォルペ。
「そこはツッコミいれてあげるところだよグリーフ君」

●過去なんてやつは踏み潰せ
 指でくるくると拳銃を回し、ロングコートをなびかせる白ヴォルペ。
 キザな笑みを浮かべ、どういうわけか馬車の進路上へと立ち塞がっていた。
「やあ、ここは通行止めd――」
 それをマヤの馬車が轢いていった。
「我は海賊マヤ・ハグロ! 恐れを知らぬ無法者ならばかかってくるかかってくるいいわ!」
「マヤさん、右! 右!」
 ビッと指さすベークに応えて振り返ると、右側面から無数の木馬がおいついてきていた。
 彼らはマスケットをマヤめがけて乱射してくる。
 割り込んで防御するベーク。
 彼に当たらなかった分は馬車の車体や馬をかすめていったが、マヤはまるで恐れずにベークの肩越しに銃を突き出した。
「本当は親玉とやり合いたいけど、今は逃げることに必死なのでね。悪いけど貴方の雑魚から片付けさせてもらうわ!」
 木馬部分をねらって撃ちまくるマヤ。
 先頭の木馬が着弾によって転倒すると、その後ろの木馬を巻き込んで集団クラッシュ。
「たどり着けるまで、どうにかして被害を軽減きって守り抜きたいところですね……」
 ベークはため息をついて、さらなる攻撃にそなえた。

 一方、フルールの馬車は上空を大量の木馬に覆われていた。
「おお……簡単に追いつけないと思っておかしな手にでたわね」
「まとめて吹き飛ばしたら良いのかしら?」
 揃って上を向いたフルールと秋奈。
「何か考えがありそうだけれど……」
 フルールは黙って指先にボッて炎を灯し、秋奈は『いいからやったれ』と言わんばかりに親指を立てた。
 空へと飛び上がる巨大な紅蓮の炎精霊。
 木馬たちを破壊すると、またがっていた人形たちが『木馬を盾にして』馬車へとフリーフォールアタックをしかけてきた。
「あらあら、無茶するわねえ」
 フルールはそれでもくすくすと笑う余裕を崩さなかった。なぜかといえば。
「――!」
 馬車の足場を蹴って大きく跳躍した秋奈が激しく縦回転をかけて人形を切り裂いた後、今度は横回転をかけて周囲の人形を鼻歌交じりに切り裂き始めた。
「無傷で迎撃する手が整っていたのですか」
「え、無傷?」
 すたんと着地した秋奈が、感心したように頷くグリーフの後ろを指さした。
 頭にめっちゃ剣の突き刺さったヴォルペがいた。
 自分のシャツで血塗れの額を拭うと、爽やかなスマイルと共に振り返る。
「グリーフ君、バンソーコーくれる?」
「はい」
 グリーフは医療鞄から絆創膏を取り出すと、血塗れの額にペッてはってあげた。
「すご。塩対応だわ」
「わかってないだけじゃない?」
 と。
 そんな具合で木馬兵たちをついにまいたと誰もが安堵の空気に包まれたとき。
「言ったはずだよね」
 馬車の中。
 当たり前のように白ヴォルペは座っていた。
「――」
 秋奈が表情を全く変えずに剣を繰り出すが、白ヴォルペはそれを指先でつまむようにして停止させた。
「悪いね。そろそろ遊んでいられないんだ。みんなと遊ぶの、楽しかったけどさ」
 御者席から振り返って炎を放とうとするフルールの手首を素早く掴み、ねじり上げる白ヴォルペ。
「おっと、下手にうごかないほうがいい」
 白ヴォルペは優しすぎるほど優しく笑いながら、ヴォルペへと振り返る。
「大好きな誰かのもとに、帰れなくなるかも知れないぜ」
「お前が――」
 目を大きく見開いて掴みかかるヴォルペ。
 その瞬間。
 馬車の両サイドから紅椿とミニュイが急接近をかけた。
 馬から飛んだ紅椿の剣が白ヴォルペの腕を切断。
 と同時にミニュイの翼が真空の刃をもって白ヴォルペの片足を切断した。
「――お前がそれを言うんじゃねえ!」
 フリーになった白ヴォルペを首を掴んだまま、ヴォルペは馬車から自ら飛び降りた。
 地面に相手の頭を叩きつけ、自らも激しく転がっていく。
 マウントをとって拳を振り上げ――た途端、ミニュイに掴んで引っ張り上げられた。
「目的を見失うな。逃げるぞ」
 歯がみし、しかしされるがままになるヴォルペ。
 馬車は積み上がった木馬兵たちの残骸をのこし、遺跡をあとにした。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 ――目的達成
 ――妖精たちを救出しました

 ――白ヴォルペが生存しています

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