PandoraPartyProject

シナリオ詳細

えいごうの、さいわい

完了

参加者 : 2 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 ――足取りを追うのは屹度、困難を伴うよ。エーリカ。
 蒼鷹の名を、しるべとして歩めばいい。
 それが何処に向かっているかは分からないけれど。
 おまえさんの故郷に行かねば分からぬ事もあるかもしれない。
 ……それでも、行くのかい?

 進みましょう。
 進みましょう。
 それが、どれだけ、困難であろうとも。
 受け継がれた、このいのちを辿る為に。

『蒼鷹』の、その名を持つぬばたまの幻想種。
 彼の足取りを追う為に、目を向けたのは『熱砂の恋心』――ふたつの国を繋ぐうた。
 時の流れを違えてしまった二人と一人。
 伝承歌が、どうしても人ごとに思えずに深き森より日輪のもとへと歩み出す。
 照り付ける太陽が、その姿を、輪郭を、捉えようともエーリカ・メルカノワ (p3p000117)は、ぬばたまの娘は畏れることはない。
 傍らにはラノール・メルカノワ (p3p000045)がいる。
 怖いなんて、言ってはいられないから。

「エーリカ」
「……うん」

 頷いて、そっと、指先を絡めとる。逸れぬ様に、砂が攫ってしまわぬ様に。
『蒼鷹』が、彼が、ひととあいを交わしたのならば。
 伝承歌を辿り、定命のものを救う手立てを求めたのではないか――
 僅かでもいい、応えるものが欲しい。

 ――ふたりは、”父”のもとに足を運んだ。
 父は、『白牛』マグナッド・グローリーは新たな『娘』を歓迎した。
 よく来たと言って、その武骨な掌がそっと頭に乗せられる感覚が、擽ったい。
「ははあ。成る程な、力になれるかもしれんぞ。ついでに一仕事頼まれちゃくれねえか?」
「仕事……?」
 ラノールの言葉にマグナッドは大きく頷いた。
 伝承歌を護る一族がいるらしい。各地の様々な歌を、呪いを束ねては言の葉を力とする旭日の一族。
 その巫女が拐かされたらしい。
 美しい陽のいろをもった伝承歌の巫女。
 彼女をならば、きっと、何か答えを知っているだろうと――そうマグナッドは予測した。
「巫女を、助ければいい?」
「ああ。でも、気を付けろよ。俺達も別の仕事を終えたら、お前達に直ぐ追いつく。
 それまでは――深追いをするな。同時に、巫女を見失わねェようにしてくれ」
 彼女が、その身を『売り払われないように』。
 そう告げた父の言葉に不安を浮かべたエーリカの掌をそっとラノールは撫でる。
「大丈夫?」
「……だいじょうぶ」
 砂楼を越え、そして、辿り着く。ある悲恋のうたに纏わる一つの伝承。
 屹度、それが――あなたに辿り着く方法を、教えてくれるのでしょう?

GMコメント

 リクエストありがとうございます。
 お二人の、せかいをつくるお手伝いができましたらば。
 当シナリオは『とこしえの、いのち』の流れを汲んでおります。

●成功条件
 捕らわれの巫女の救出

●砂の生涯(ゆくさき)
 エーリカさんの故郷、『タオフェ』より遠く離れた砂の街、ラサ。そのブラックマーケットが舞台です。
 父マグナッドは『熱砂の恋心』の伝承歌を祀る一族の巫女ならば、きっと何かヒントを知っていると言いました。異種のこいごころ、それに纏わるいのちの長さという命題。
 きっと、『蒼鷹』もそれを考え、彼女らの一族を頼ったであろうと。
 攫われた巫女を、どうか、救ってほしいのです。

●伝承歌の巫女
 旭日の一族。伝承歌を祀る巫女。その名を、ドゥッラ。
 彼女は奴隷商人に攫われてしまいました。
 陽の色の髪を持った美しい女性だそうです。
 彼女ならばきっと、『蒼鷹』へと近づくヒントを持っているでしょう。

●奴隷商人*4
 ラサのブラックマーケットに出入りする奴隷商人です。
 戦闘能力はそれなりであり、基本は『商売』を中心にしているようです。
 旭日の一族の娘という大目玉を商品とするべくブラックマーケットに向かっています。
 出来る限り足止めをするように頑張ってください。
 倒し切れなくても父が、みんなが――助けてくれます。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

 あなたの、いのちのみなもとへと
 すこしでも、たどりつけますように。

  • えいごうの、さいわい完了
  • GM名日下部あやめ
  • 種別リクエスト
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2020年07月15日 22時10分
  • 参加人数2/2人
  • 相談7日
  • 参加費---RC

参加者 : 2 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(2人)

ラノール・メルカノワ(p3p000045)
夜のとなり
エーリカ・メルカノワ(p3p000117)
夜のいろ

リプレイ


 たくさんの家族は、いとしい息子に。そして、新たにそのこころといのちを、共にと願った娘に。歓迎言葉を述べた。『夜のとなり』ラノール・メルカノワ(p3p000045)にとっては馴染んだ、『夜のいろ』エーリカ・メルカノワ(p3p000117)にとってはまだ慣れない砂漠のくに。
 『白牛の雄叫び』。その砦の一角、談話室にて父の――『白牛』マグナッド・グローリーの言葉を聞いた後、エーリカは神妙な面立ちで頷いた。急ぎ、たたかいに出向かねばならぬという父が自身が力を貸せぬ事を悔やむその声が妙に心地よい。家族になったという事を、実感させるからエーリカは「だいじょうぶ」と父を安心させる様に笑みを浮かべた。
「あぁ、任されたよ父さん。皆が来るまでの時間稼ぎをしよう。
 尤も……あまり遅いと皆の分の獲物は残っていないかもしれないが」
「言うようになったなこいつ!」
 揶揄うラノールの声音へ、父は豪快に笑って見せる。ぴん、と僅かに耳を立てて驚いた素振りを見せたエーリカに父はおっと、と口を押えて『わざと』らしく静まり返る。それがラノールのかぞくで、エーリカのあたらしい居場所なのだ。

 いのちには源がある様に、リミットが存在している――脈々と受け継ぎ続けるいのちが、そう教えてくれたから。
『熱砂の恋心』
 御伽噺として綴られた、物語。あかい、あかい、こいのいろ。
 その詩(うた)はあまりにも、悲しく、砂上の楼閣が如くいともたやすく崩れ去る。
 ――ながい、ながい。えいごうのはて。
「……時間の流れは止まらない。種が違う限り必ずいつか時間はずれる。
 ……不老不死を願う者達の気持ちも分かってしまうよ。自分の命の短さを痛感する」
 ラノールはエーリカのぬばたまの髪一房へと口付けた。これ程に近い場所に居るというのに。
 何時か、いのちが離れてしまうのではないかという不安が首を擡げる。指先を絡めとり、往こうと歩みだしたその道がいつもより覚束なく感じられたのは、物語を辿るその最中だからだろうか。
 自身が死を受け入れた時、その時はこの長耳の娘は麗しい姿の儘で微笑んでいるのだろう。老いて、朽ち往く自身の身をその横で眺め花の盛りの様に過ごしているのかと、感じられる。
「……私達の"終わり"はせめて笑顔であってほしいと、そう願っているんだ」
 そのいのちのおわりは誰だって変えられなかった。けれど、『蒼鷹』だって――きっと、求めたのだと、思う。
 時の流れを違えてしまった二人と一人。伝承歌が、どうしても人ごとに思えずに深き森より日輪のもとへと歩み出す。
 確かめる様に、一歩を。もう一歩と。覚悟なんて、とうに――あなたと歩むと決めたその日から、出来ていると告げる様に確りと。
 サンドバザールへと向かう最中、エーリカの唇がディルクと緋色の傭兵の名を諳んじた。ずきりと、痛む胸に唇が戦慄く。

 ――――ああ、主よ、感謝致します! 我らの安寧を祈る為の、贄を!

 ディルク。忘れる筈もない。その名は。それが意味する音は、

「エーリカ」
 ラノールの声が、降った。優しい、音を響かせて。
 わたしの、はじまり。きえないもの。なくしたかったもの。
 わすれられない、音が意味をするものが何かをしっている。
 けれど――

「過去が消えることはない。だけど、君が受けてきた傷はきっと。
 これから歩む『未来』が埋め合わせてくれるはずだ」
 あなたと、共に在れば。あなたが、微笑んでくれれば。この傷も癒えていくから。


 いのちをいのちとして扱わぬその場所に訪れた刹那にずきりと胸が痛んだ。根本から、どうにか、と――そう願えども届く範囲は決まっている。だからこそ、出来る限りを精一杯とエーリカはラノールをちら、と見遣った。
「……父さんたちもいる。大丈夫だ。少しだけ……嫌な役を引き受けてくれるかい?」
「……うん。だいじょうぶ。ラノールを、しんじてるから」
 何が有ったって、守ってくれるという信頼がこれ程までに心地よいとは思ってはいなかった。
 そして――旭日の巫女、捕らわれた彼女であれば共に在る為の『かけら』が落ちているのでは、と願っては已まない。
 永劫の倖いを。永久の祝福を。エーリカとラノールが共に在れる永遠(いのち)を分かち合えるようにと、ぎゅう、と手を握りしめた。それから、離れる。奴隷商と『商売道具』になるために。
 夏空に、ふたつのあおが重なった海の果て。星の煌めく冬の空。巡る季節を追いかけて、ひかりを見つめて、いとおしいその時間に寄り添っているのは少しだけおしまいに。
「ラノール、つめたい、とうもろこしのスープがたべたいな。すきだっていってた、羊の香草焼きも」
「はは、終わったら父さんたち、家族と食べよう。やりたいことは沢山だ」

 手枷を繋ぎ、黒き外套を身に纏った長耳の乙女を連れて、ラノールはしずしずと歩き続けた。クフィーヤが靡き彼の顔を隠す。ブラックマーケットの中を行く彼を不振がる者はいない。この場所は誰も彼もが自身の身の許さえ証明位せずに息を潜めて蠢いている。父より聞いていた旭日の巫女を捕らえ『伝承歌の伝え人』として商いの道具としようとせん奴隷商人の許へと近寄っていく。
「やあ、噂の『伝承歌の伝え人』とは彼女の事かい?」
 フランクに笑みを浮かべたラノールへと「そうだ」と奴隷商人は頷いた。こんな場所だ、商売道具の『情報交換』は良く行われるのだろう。同業の世間話の様な口調で、そして――『自慢したくて堪らない』と言った様子でラノールは身を揺らす。
「聞いてくれ。夜の民を知っているかい? 美しく艶やかな黒い髪の幻想種。
 外に怯え身を隠すこいつ等を捕まえるのには苦労したよ。市にあふれる奴隷とは違う、この希少価値はさぞ『お客様』の目に留まるだろう」
「夜(ニュイ)って――あの、森の奥に住まうやつらか? そりゃまたぁ……」
 ラノールの背後で手枷をじゃらり、と鳴らした幻想種は怯えた様にフードで益々その髪を隠してしまう。夜の色をした美しい黒髪の幻想種の話は奴隷商人たちの間でも伝えられているのだろう。
 ラノールとエーリカの間のかりそめが音を立てた。儚き薄氷の瞳は不安げに揺らぎ、怯えて身を竦め乍ら陽の色の娘を『自身と同じ境遇』だとでも言うように夜の娘は縋りつく。
「すっかり怯えたものだな……さて、こちらだけ話しても得のない話だ。
 そちらが何を手に入れ、それがどんな商品なのか、見せてもらいたいものだな。『伝承歌の伝え人』とは? ……ここで話すには惜しい話だ。もう少し端に寄らないかい」
 にい、と口角を釣り上げて三日月を作ったラノールの言葉に興味をそそられた様に奴隷商人たちが道の端へとより相談を続ける。
「……あなた、だいじょうぶ?」
 そっと、陽の色の娘が囁く声に、エーリカはゆっくりと頷いた。
「ああ、おそろしい……どうしましょう。このまま、売られてしまうのだわ」
「――だいじょうぶ」
 そっと、風の精霊がエーリカの声を運んだ。ぱちり、と瞬いた美しい太陽のいろはエーリカをまじまじと見つめた。
「わたしたちは、あなたをたすけにきたんです」
 自分と、ラノールは味方であると。信頼して欲しいと願うようにエーリカは『自身を奴隷として扱い此処へと連れてきた青年』の背を眺めた。
 路地裏へ、商品と共に訪れ居た商人たちはラノールの煮え切らない様に痺れを切らしていた。どこで夜<ニュイ>の娘を手に入れたのだ、と問うているのだ。夜の名を持つ彼女たちは深い森の集落で警戒して過ごし続けている。美しいエーリカは上物だとして高く売れると商人たちは口々に言うのだ。譲れ、と。そして買い叩いた後の金銭は僅かであるが渡そう、と。
「ふむ……成程。しかし、旭日の巫女――伝承歌を口遊む巫女か。
 夜の民と同じくらいの価値はあるだろう? 『いい仕事をしているな』」
 それは、合言葉。

 かしゃん――と。 

 エーリカのかりそめが落ちる。手枷を落とし、ナイフは巫女の、ドゥッラの戒めを断った。
「なっ――!」
 背負っていたマトックを直ぐ様に構えたラノールが『先ほどと同じように』笑う。
 致命的失敗など概念としても否定する。失敗してはいとしいひとが脅かされることを知っているからだ。滑り込む様にマトックを打ち落とせば地が唸る。衝撃は血の深くへと浸透し、地中よりその力を押し返す。
「何だ、お前ら――どういう!」
「わたしは、商品じゃない」
 静かに、エーリカはそう言った。ドゥッラを庇う様に願星を煌めかせる。『あい』がこの心を強くしてくれるから。このいのちなど惜しくはないと支援を行えば、ラノールは頷いた。
 彼は、守ってくれる。それがどれ程に心地よいのか。戦いに駆り立てる。こんなところで、負けてなどいられない。
 父は、来ると言っていた。それまで――それまでの時間。
 それは瞬く間であった。エーリカとラノールの二人。その手を取り合い、将来を誓い合った二人は巫女を護り、父が駆け付けたその時まで戦いを続けた。
 よくやった、とその大きな掌がエーリカを撫で、ラノールの頭をばしり、と叩いたその様子にドゥッラは安堵したように涙を流した。


「いたむ……?」
 傷の手当てを行いながらエーリカの掌はかたり、と震えた。遅れてきた恐怖が、傷つけることも傷つくことも恐れる自分を包み込む。頽れそうになるからだを叱咤して、ドゥッラにゆっくりと問いかける。
「大丈夫……ありがとう。その、どうして……?」
 陽のいろは、美しい。ドゥッラがまじまじとエーリカを見つめ、震わせた声へと答える様に、ゆっくりと、唇を開く。
「わたしは、エーリカ。ヒトとヒトの間に生まれた、夜(ニュイ)の末娘です。
 ……伝承歌の、旭日のドゥッラさま。
 嘗てあなたのもとに訪れた蒼鷹と名乗ったひとのことを、そして……彼が望んだものを――」

『熱砂の恋心』

 そう、口にしたとき、旭日の巫女は、エーリカとラノールの関係を知り、泣いた。
 美しい涙であった。ぽつり、ぽつりと。毀れる雫の意味を、おそらく父は分かっていた。
 美しい陽のいろをもった伝承歌の巫女。チープに語られる御伽噺ではない、真実のあいを、語るべくして生き続けた乙女。
 ドゥッラへとエーリカは、息を飲んだ。どんな、結末があっても。
 屹度、彼となら受け止められるから。
「……その、さいはてを、どうか、お教えくださいませんか。
 わたしは、かなうなら……愛するひとと、時を分かち合いたいのです」
「……過去を知り、未来を歩むため、君の知識を賜りに来た。どうか、教えてはくれないだろうか」
 愛しい人と共に在る為に。エーリカは、ラノールはゆっくりとドゥッラへと問いかけた。
 鮮やかな色彩を纏う、エーリカの夜の色とは相性的な陽の色の娘。
「ドゥッラよ。話してやってくれないか。息子と――娘の願いなんだ」
 父は、そう言って頭を下げた。赤く色づいた唇が戦慄いた。懼れる様に、言葉を紡ぐ事を、酷く怖がるような強張った声音で。
「あの人も、蒼鷹もそう言っていたと聞いたのです。おかあさまが……云っていたの。
 愛しい人といのちが別たれることが恐ろしい、と。『蒼鷹(かれ)』は哀しんでいたのだと」
 いのちとは、どうしてこうも儚くて、種族とは、そして、その定命とは、どうして――
 とこしえに伴いる為の永劫の倖せと祝福。
「あきらめたく、ないの。求めれば、手を伸ばせば、手は届くと。
 あきらめてばっかりだった、わたしは。かれからそれを教えてもらったから」
「……ええ、ええ。彼も、そう言っていた。けれど――わたしはうたを、しらべを伝えるだけなのです。
 命はどのような魔法を、呪いを、何を使ったって、返ることは出来ない。
 わたしたちは『いのち』というのろいに常に蝕まれているのですね。死は、どうしても、逃れられなくて」
 ――けれど。蒼鷹は諦めなかったという。
 伝承のうたではいのちを伸ばすことは出来なかった。
「……伝承では、いのちの長さなど、決して、変わらないと伝えられていました。
 けれど――『永劫の祝福』を。まぼろしの如き、夢を蒼鷹は、彼は求めたのです」
 静かに、ドゥッラは告げた。
「貴女は、貴方たちは求めるの?」
「ああ、求めるさ。彼女が生きる永い、長い時間に。
 少しでも寄り添えたらそれでいい。……本当に『ともに在る時間が永遠に』などとは思ってはいないさ」
 ――ただ、彼女が寂しくないように。
 長い時間のかけらでも、自身の存在を覚えていてくれればそれでいい。
 柔らかに告げたラノールの手を取ってエーリカは、頷いた。それ以上のさいわいなど、どこにもないのだから。
「蒼鷹の、いのちを辿っているのです。わたしは、彼のいのちを受け継いだから。
 だから……行く先を、旅の涯てを知りたい。ドゥッラさま、次にわたしは、どうすればいい?」
「この道を、真っ直ぐ、真っ直ぐ辿るのです。
 寒々しい山でも、長閑な平和でもいい。けれど、彼は――蒼鷹は、往くと言っていました。
 愛しい人と、少しでも時を過ごすために。閉じたまちへ。……あなたは、酷くおびえた顔をするのね」
 ドゥッラはそっと、エーリカの頬へと触れた。その白い指先が、どこか緊張したように強張る。
「行かないで、とは、わたしは言えないのです。
 困難な道を行くというならば、エーリカ。
 屹度、あなたにも永劫の倖いが訪れるでしょう――蒼鷹が秘術たる『えいえん』を求めたように」
 けれど、辛くなっても傍らにいとしいひとがいるなら、大丈夫ですね、と。
 そうドゥッラは微笑んだ。
 振り返った二人を父は抱きしめた。きつく、きつく。愛を込めて。
「行くのか」と静かに問いかけて。
「辛いことがあれば、帰ってこい。お前達の家は、ここだ――」

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 この度はリクエスト誠にありがとうございました。
 ご結婚、おめでとうございます。共に在る為に、その手を取ったのですね。
 貴女が、そして、貴女が共にと願った方と立たれた旅路の涯がありますよう。

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