PandoraPartyProject

シナリオ詳細

貴方のために、一針一針

完了

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●幸せのための一針
 印をつけた上を糸が通る。
 それはいつかくる、幸せのための一針。
 真っ白な布と言うキャンバスの上に、針と糸で幸せを呼ぶ刺繍を施す。
 それは女の子なら誰もが通る道。
 だけどナターシャは刺繍が好きではなかった。
 だって一針一針、黙々と縫い続けるなんて面白くない。
 唇を尖らせながらも針を動かすが、その動きは遅い。
「やっぱり一人で刺繍何てつまんない!!」
「仕方ないだろ。姉さんはもう嫁いでいったんだから」
「分かってるわよ……!」
 窓から顔を覗かせた兄をねめつけると、ナターシャは不貞腐れながらまた布に針を通す。
 一針一針思いを込めて施した刺繍は、受け取った相手に幸運と運ぶとも、災いを跳ねのけるとも言われている。
 母が夫や子へ。
 娘が家族や好きな人へ。
 大切な人を思って一針一針縫い進めていく。
 まぁ、ナターシャのような、飽きて癇癪を起す人も時にはいるが。
「でも、今まで姉さまとお喋りしながらやってたんだもん。一人でずっと刺繍なんてつまんないわ」
「じゃぁ友達誘えば?」
 軽い気持ちで言った後、兄はバツの悪そうな表情で肩を竦めた。
「今のはごめん。軽率だった」
 ナターシャは体が弱く、療養のためにこの穏やかな場所にやって来た。
 気が強く、口も達者だけど普通の子のように長時間走ったりすることは難しい。そんなナターシャがこの地で友達を作るなんて、一晩でハンカチ3枚に刺繍を施すようなものだ。つまり、難しい。
「ナターシャの刺繍付き合ってくれそうな人探してくるから、大人しくしとけ」
「……ついでにお茶をお願いするわ。今日のおやつは桃のタルトを頼んであるの」
 不貞腐れながらも刺繍を再開したナターシャを見て、兄は手が空いている、ナターシャの刺繍とお喋りに付き合ってくれる人を探し始めた。

●ハンカチとお喋り
 あの世界では、素敵な刺繍がさせる女性はモテる。
 ナターシャも体が弱いが刺繍はとても上手だ。
 もし刺繍に興味があって、でも自信がない人は教わりながら簡単な刺繍をしてみるといいだろう。
 自信がある人は凝った刺繍を刺してみるのも良いだろう。
「お茶とタルトで一息ついたり、楽しくお喋りながらみんなもどうかな?」
 ちなみにフェリーチェは、余り上手ではない。

NMコメント

 ホストクラブが男性向けだったし、今度は女性向けにしようか!
 なんて軽い理由で刺繍です。
 気軽に楽しくおしゃべりしながら刺繍をしましょう!
 あ、勿論男性も大歓迎です!!

●やること
・楽しく刺繍を刺す。
 おしゃべりしたりしながらハンカチに刺繍をしましょう!
 好きな柄を刺して貰って大丈夫です!
 何を刺したらいいか分からない人は、イニシャルとか、簡単な花が良いかもしれません。

●やりかた(初心者向け)
・刺す柄を決めます。
・チャコペンでハンカチに刺す柄を描きます。
・仕上がりと同じ色の糸で仕上がりの線を縫います。
・後はひたすら針を刺して刺繍を施します。

●その他
・ナターシャ:体が弱いけど気が強い12歳。刺繍は得意。
 最近嫁いだ姉と一緒に刺繍をしていたので、一人でする刺繍がつまらない。
 こっそり一緒にお喋りしながら刺繍をしてくれる人を探している。
・刺繍は一人何枚でも大丈夫です。でも時間は二時間程度なので、慣れた人でも簡単な柄で2,3枚が限度でしょうか。
・フェリーチェも刺繍に挑戦! お茶とタルトが目的何て言ってないんだからね!
・楽しいひと時を過ごせるようにお待ちしております。

  • 貴方のために、一針一針完了
  • NM名ゆーき
  • 種別ライブノベル
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2020年07月13日 22時05分
  • 参加人数4/4人
  • 相談4日
  • 参加費100RC

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(4人)

リゲル=アークライト(p3p000442)
白獅子剛剣
クロエ・ブランシェット(p3p008486)
奉唱のウィスプ
只野・黒子(p3p008597)
群鱗
グリーフ・ロス(p3p008615)
紅矢の守護者

リプレイ

●こつこつちくちく
「まぁ、それではお兄様に頼まれてわざわざここに……」
 呆れ半分、嬉しさ半分でため息をつくナターシャに、『波枕の鳥』クロエ・ブランシェット(p3p008486)が微笑む。
「いえ、元々刺繍に興味があったんです。でもやり方が良くわからなくて……。お話を聞いて、良い機会だと思ったんです。
 あ、私はクロエ・ブランシェットと言います。気軽にクロエと呼んでくださいね」
 にっこりと微笑むクロエに、ナターシャも微笑みを浮かべる。
「ナターシャです。今日は宜しくお願いします」
「1人で刺繍を行うのは、確かに忍耐が必要だろうな。今日は皆で刺繍を楽しもう!
 宜しくな、ナターシャ!」
 『白獅子剛剣』リゲル=アークライト(p3p000442)が笑顔を向ければ、ナターシャも嬉しそうに笑う。
「刺繍、お上手ですね」
「え? あぁ、刺繍? 他に出来ることがないもの。お世辞は必要ないわよ?」
「お世辞ですか? いえ、客観的事実を述べただけですが」
 ナターシャの縫いかけのハンカチを見て、グリーフ・ロス(p3p008615)が真顔で首を傾げる。
 感情を色で捉えるグリーフの目から見たナターシャの感情の色は明るかった。

「なんだかこう……切った張ったが多い中で、こういうコツコツした作業って癒されますよね……」
 ちくちくと針を進めながら、『群鱗』只野・黒子(p3p008597)がしみじみと呟く。
 平凡な一公務員として生きてきた黒子が、急にファンタジー溢れる世界にやって来たのだ。元居た世界との違いや、続く戦いは静かに彼の心を疲弊させていたのだろう。こうして、ゆっくりとした時間の中、コツコツとした作業はかつての仕事を思い出しほっとする。
「黒子さんは刺繍の経験がおありなのですか?」
 女性だらけになるかと思っていたが、黒子以外にも男性がいたのも嬉しい誤算だ。
 最も、ぱっと見女性に見えるグリーフも、彼女を作成したドクターが愛した女性の外観を模しているだけで性別はないのだが。
「いえ、初めてです。なので簡単に、クローバーを選びました」
 初心者向けの模様の中から黒子が選んだのはクローバー。分かりやすくて、男性が使っても可笑しくない模様だ。
「リゲル様は手慣れているように見えますが、経験がおありですか?」
 リゲルが縫っているのはジャガイモの花と、金色の糸で縫われたP.Aというイニシャル。
「いえ、俺も初めてです。ただ、妻に贈るつもりなので気合は入ります」
 一針一針、丁寧に、繊細さと優美さを描いて。
 天性の器用さを生かして縫われていくジャガイモの花は、ナターシャからも合格を貰える出来だった。
「リゲルさんは奥様に贈るのですね、素敵です!」
 お年頃らしく色恋に目を輝かせるクロエの刺繍はスカーフを付けたうさちゃん。
 アイボリーの毛並みが温かい印象を与えてくれる(予定)だ。
 順調に思えたクロエの刺繍だが、途中で躓いてしまう。
「ん?」
 まだ糸に余裕はあったはずなのに動かない。おかしいと思ってひっくり返すと、裏は大変なことになっていた。
「あ、あれ? 糸が裏で絡まってしまいました。どうしよう?」
 あわあわと慌てるクロエに、ナターシャは絡まった糸のほぐし方を教える。
「無理矢理引っ張ると糸が切れるから気を付けてね?」
「有難う! 今度は気をつけるねっ! 対処法がわかれば落ち着いてできるはず!」
 また糸が絡む可能性は高いけど、対処法が分かればきっと大丈夫!
 絡んで解すために弱った糸を上手く処理して、新しい糸で縫い始めたクロエを見て、ナターシャも自分の刺繍に戻った。

「ナターシャは、普段どんな模様を刺繍しているんだい? お姉さんを思ってとか?」
「お姉さまに渡すのは出来ているわ」
 リゲルの言葉にそう言って見せてくれたのは見事な薔薇が施されたハンカチ。
「今度手紙と一緒に届けて貰うの」
 嬉しそうなナターシャの言葉に、クロエたちもハンカチを見る。
「これは見事ですね……。お兄さんの分はないのですか?」
「一応あるけど……」
「けど?」
 ついオウム返しになってしまった黒子の言葉に、ナターシャは唇を尖らせる。
「お兄さま、意地悪ばっかりなんだもん」
 作ったは良いが渡す機会がなく、こっそり兄のハンカチに足しているのだというナターシャに苦笑するしかない。
 きっと兄は気づいている。というか、実際有難うと言われるが、面向かって渡して欲しいと言われると渡せないのだ。
「お兄さんに直接渡してあげないのですか?」
 グリーフに首を傾げられ、ナターシャは言葉に詰まる。
 渡したいけど、いざ渡そうとすると揶揄われて沸点の低いナターシャはすぐに怒って渡せない。
 跡取りとして期待され、それに応えられる兄への妬みと、少し走るだけで悲鳴を上げる自分の体への情けなさで素直になれないのだ。
「感情の機微は大体男は判らんので、気づいてほしいことは口で言った方が通じるよ」
 諭すような黒子の言葉にナターシャの手が止まる。
「少なくとも君のお兄さんは君のことを大切に思っている。見ず知らずの私達に助けを求めるぐらいはね」
 そうだ。今日黒子たちがこの場にいるのは、兄がナターシャのためにと声をかけてくれたから。兄も、意地悪でちょっかいかけてくるわけではなく、ナターシャに元気を出して欲しくてちょっかいをかけてくるのだ。
 わかっている、分かっているけど……。
「男女問わずだけど、人の関係は感情、心情、制約で刺繍のように絡み合っている。
 この色の糸は好きだけど、この糸は嫌い、のように同じ人に対して複雑な感情を抱くのは当然だよ。
 でも、その感情を口にしないと気付かないことがほとんどだ。特に彼ぐらいの年頃は余計にね」
 優しく言い聞かせる黒子の言葉に、ナターシャは唇を尖らせる。
「言って通じるのかしら」
「それは人によるけど、言わなきゃまず通じないよ」
 その言葉はナターシャの胸にすとんと入った。
「言って通じなかったら?」
「その時は素直な気持ちを伝えてみると良い」
 少し説教くさかったかな。と苦笑する黒子に、ナターシャは裁縫道具から一枚のハンカチを取り出す。
 家紋と兄のイニシャルを縫ったハンカチ。
 またそっと足しておこうかと思ったけど、今日のお礼と一緒なら、ちゃんと渡せるかもしれない。ついでに、ちょっと不満をぶつけてみようか。
「ううん。有難う。おかげでこれはちゃんと渡せそう」
 ハンカチを戻して笑うナターシャに、ほっと一息つく黒子だった。
「人の感情は難しいです」
 二人のやり取りを――感情の色の変化を見ていたグリーフは静かに呟いた。

●休憩も大事です
「そろそろ休憩しましょ」
 ナターシャのその言葉で、各々糸を処理してハンカチを置く。
 リゲルは綺麗に優美に刺繍されたジャガイモの花と妻のイニシャル。
 クロエは可愛いスカーフを付けたうさちゃん。
 黒子はシンプルなクローバー。
 グリーフは瞬間記憶を生かして、ナターシャが見本に見せてくれた鳥。
 そしてフェリーチェは……。
「フェリーチェ、それ、なんだい……?」
 フェリーチェの手元には何度も刺しなおしたのか、ボロボロになったハンカチ。そしてそのハンカチには――。
「え、林檎だよ!」
 どや顔を見せるフェリーチェ。だがそれは、爆発しかけの赤い物体にしか見えなかった。
「……後でもう一回頑張りましょう」
 勿論ナターシャ先生は、やり直しを要求するのだった。
 とは言えその前に休憩だ。
「あ、飲み物は珈琲があればそっちでお願いします。ないならストレートティを。甘いのはちょっと苦手なんですよ……。とまれスコーンは2つほど欲しいです。折角なので」
 黒子の言葉にメイドがコーヒーとスコーンを準備しに行き、その間にリゲルが紅茶を淹れる。
「基本食事は不要ですので、お菓子は特別お好きな方がいれば自分の分は差し上げます」
 その言葉にグリーフのタルトは目を輝かせたクロエとフェリーチェが半分こ。
「紅茶はどうします?」
「紅茶は……これは、嫌いではないかもしれません。よい香りですね。一般的な意見……いえ、これは私の意見でしょうか? わかりません」
 無表情のまま悩むグリーフにどこか懐かしい物を感じつつ、リゲルはグリーフの前に紅茶を置いた。

「ナターシャさんは刺繍はお好きなんでしょうか?」
「え? まぁそうね。刺繍なら、私でも出来るし好きよ」
 和やかな雑談をしながら、今日縫っているハンカチはどうするのかという話になる。
「俺は妻と娘に渡すつもりです」
「私は自分で使うつもりです」
 さらりとした男性陣の言葉に、クロエが手を上げる。
「完成した物はナターシャさんと交換しあいたいです。
 もしよかったらですけど、そういうの友達同士みたいじゃないですか?」
 その言葉に「鈴蘭で良いなら」と快諾すると、クロエはナターシャの好きな色をきく。どうやらスカーフの色はその色になりそうだ。
 明るい色を見ながら、グリーフは自分も交換を申し出る出来だったかと考えるのだった。

●世界で一つだけの贈り物
「出来たー!」
 休憩の後、一からやり直しとなったフェリーチェのリンゴだったが、先生がつきっきりだったおかげか今度は一応林檎に見える仕上がりに。
 リゲルは娘の分として、可愛い猫に銀糸でN.Aの刺繍を施した物も完成させていた。
「初めてなのにこの出来で二枚は凄いわ」
 これにはナターシャ先生もびっくり。
「愛ですね」
「愛ですか……」
 黒子の言葉にグリーフが微かに首を傾げる。
 感情を色でしか判断できないグリーフに、愛はまだ難しかったようだ。
「えへへ、嬉しいなぁ」
 ナターシャとハンカチを交換して笑顔を浮かべるクロエを見て、リゲルは頷く。
「成程、手製の刺繍のハンカチは、世界に一つだけのものとなる。心を込めた贈り物として良いな」
 ハンカチを渡した時、どんな笑顔を見せてくれるかと思うと心が温かくなるリゲルだった。

成否

成功

状態異常

なし

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