PandoraPartyProject

シナリオ詳細

さまよへる ふるつはものら

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 カタカタカタカタ……。
 それは全身の骨と身に纏う鎧が擦れ、震動によって鳴らす音。
 全身が骨となった4体の武者が刀を、槍を手にし、あちらこちらの集落を彷徨っている。
「骨武者が来たぞ……!」
「早く家の中に隠れて!!」
 鬼人種達がその襲来に、慌てて家屋へと避難していく。
 窪んだ双眸の中の光は、ただ捉えた者だけに刃を振るう。
 物陰へと隠れさえすれば、それらは襲ってくることはないようだが……。
「…………!」
 骨武者達の手前を駆け抜けたイタチがひょこっと首をもたげ、武者の方を見る。
 その直後、イタチは体を寸断され、血飛沫を上げて地面に転がってしまう。
 それだけでない。新鮮な血肉を食い漁ろうとやってきた数羽のカラスまで、骨武者達は全てを切り裂いてしまった。
 カタカタカタカタ……。
 骨武者達は語るすべを持たず。
 ただ、自分達の障害を切り裂くだけの歩く骸へとなり果てている。
 その強さゆえに鬼人種達にも止める術は無く、命が惜しければ物陰に隠れることした対処法はない。
 その存在はまるで、台風、嵐といった印象だ。
 だが、当の骨武者達の歩みは遅く、ゆっくりと獲物を求めてあちらこちらを彷徨う。
「早く去ってくれ……」
「どうか、皆無事で……!」
 それらが通り過ぎるのを、人々は祈りながらじっと待つのである……。


 豊穣郷カムイグラでの依頼がローレットの掲示板に並ぶ。
 今、情報屋もそちらで起きる事件の情報を求め、現地へと足を運んでいるようだ。
「怨霊退治の依頼をお持ちしました」
 『穏やかな心』アクアベル・カルローネ(p3n000045)が依頼を探すイレギュラーズ達へと声をかける。
 複数の集落を跨く地域で、刀と槍を持つ4体の骨武者の群れが確認されている。
 怨霊に憑りつかれた白骨化した武者達はただ、あちらこちらを歩くだけ。
 しかし、目の前に生物が現れれば、有無を言わさず生前を思わせる武技で切りかかり、命を奪ってしまうのだという。
「おかげで、人々はペットや家畜も家や小屋から出せぬ状況が続いており、神経をすり減らしています」
 それらは空を飛ぶ雀や、竹垣に張り付いたトカゲをも切り裂いているのだとか。
 人的被害も出ており、近場に骨武者の目撃証言が出れば、老人子供は家から出ることすらできない。
 日中働く人々もこれでは満足に仕事もできず、ただ骨武者達が通り過ぎるのを祈るようにして待つのみだ。
「この骨武者の群れ、出現するようになってからしばらく経っているようですね」
 人々のストレスもかなりのものだろう。できるならば、この骨武者達を倒し、平穏な日々を取り戻してあげたい。
 武者達としても、こうした形で後世の人々に迷惑をかけることなど望んではいないだろう。彼らを再び眠りにつかせてほしい。
「それでは、よろしくお願いいたします」
 この怨霊事件のいち早い解決を、アクアベルはイレギュラーズ達へと望むのだった。

GMコメント

 イレギュラーズの皆様こんにちは。GMのなちゅいです。

●概要
 全ての敵の討伐。

●敵
○骨武者×4体(刀2体、槍2体)
 それぞれ、刀と槍を使います。
 元々優れた武者だったと思われますが、その死体が怨霊に乗っ取られ、生前に修めた武術を悪用されてしまっております。
 刀の武者は至近での戦いを得意とし、素早く間合いを詰めて切りかかってきます。
 槍の武者は近~中距離の間合いを得意としており、直接の斬撃だけでなく、衝撃波などを飛ばして攻撃も行います。

●状況
 何者かによって死体が掘り起こされ、怨霊を憑依させた骨武者達が獲物を求めて複数の集落をあちらこちらへと彷徨っております。
 それらは生物を見つけると、有無を言わさず攻撃を仕掛けてくるようです。
 日常生活に支障が出るだけでなく、状況によっては死者も出かねない状況です。 
 これ以上、武者の尊厳が亡骸が怨霊によって貶められてしまう前にその身体を休ませてあげてくださいませ。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はAです。
 想定外の事態は絶対に起こりません。

 それでは、よろしくお願いいたします。

  • さまよへる ふるつはものら完了
  • GM名なちゅい
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2020年07月04日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談5日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ヘイゼル・ゴルトブーツ(p3p000149)
旅人自称者
リゲル=アークライト(p3p000442)
白獅子剛剣
銀城 黒羽(p3p000505)
ティア・マヤ・ラグレン(p3p000593)
穢翼の死神
コラバポス 夏子(p3p000808)
八百屋の息子
ジェイク・夜乃(p3p001103)
『幻狼』灰色狼
水瀬 冬佳(p3p006383)
水天の巫女
篠崎 升麻(p3p008630)
童心万華

リプレイ


 豊穣郷カムイグラ。
 この地へとローレットのイレギュラーズ達が降り立ってから少し経つが、初めてやってきた者もまだまだ多いようで。
「何かな……? 何処とない懐かしさ、みたいな? なんでだろ。カカ様の故郷が近しいのか……な?」
 旅人と人間種のハーフである『今日も良い日だ』コラバポス 夏子(p3p000808)は豊穣の地に何かを感じていた様子だ。
「それにしても、絶望の青の先にはこんな世界があったとは」
 閉鎖的な天義の国で育った『白獅子剛剣』リゲル=アークライト(p3p000442)だが、これほどに世界は広がっていたのかと驚きを隠せずにいる。
 また、リゲルはこの地へとたどり着くことができなかった仲間達に、豊穣の地を見せたかったとしんみりしていた。
「果ての先にもまた、人の営みがあるものなのですね。そして、人が居ればまたトラブルも生ずる……」
 スレンダーな容姿をした長い黒髪の女性、『旅人自称者』ヘイゼル・ゴルトブーツ(p3p000149)は確認するように独り言を呟く。
「ローレットとはまあ潰しの利く生業なのですよ。……今回の裏が人だとは限らないでしょうが」
 実際、ローレットを通し、事件の解決の為にとやってきた者も少なくない。
「豊穣での初仕事だ。ここは気合を入れて俺達の名を豊穣に売り込まねえとな」
 渋さ漂わす白スーツの男性、『『幻狼』灰色狼』ジェイク・太刀川(p3p001103)は最近結婚したばかりとあって仕事に飢えており、かなり気合が入っていた。
「新しい領土というか、他にも国があったんだね」
『思った以上にこの世界は広い様だな』
 独り言かと思いきや、2対の黒翼を持つオッドアイの女性、『穢翼の死神』ティア・マヤ・ラグレン(p3p000593)が語り掛けているのは、胸元の十字架。
 そこに、ティアを操る神様が存在しているのだ。
「そうみたい? とりあえず、豊穣では初仕事になるし、今後の信頼関係を得る為にも頑張ろうかな」
 現状はティア本人に体の主導権があるらしく、彼女は依頼に前向きな態度を示していた。
 改めて、今回の事件が怨霊退治と聞き、ジェイクが胸を叩く。
「まかせなさい! こういう仕事こそ、俺達ローレットにもってこいの話じゃねえか」
 彼が言うようにイレギュラーズとしては、他の地域起きた近しい事件は解決してきているのだが、話を聞いたメンバー達の反応はやや重い。
「恐ろしくも、悲しい事件だな……」
「……こんな綺麗な国にも、えげつない事をするヤツってのはいるもんなんだな」
 リゲルの言葉を受け、中性的な印象を抱かせる長い紫の髪の『特異運命座標』篠崎 升麻(p3p008630)が素直な感想を口にする。
 今回の事件を引き起こす骨武者が何者かに死体を掘り起こされたという情報が升麻にきな臭さを感じさせていた。
「この4体、自然発生した訳でも無さそうです」
 妖怪の実在する世界からやってきた『水天の巫女』水瀬 冬佳(p3p006383)が見るに、術で遺体に怨霊の類を封じて動かす死霊の兵、とのこと。
「制御もされていないようですが……下法、ですね」
「怨霊の出所ってーのも気にならねぇか? 近場で何かあったんかな」
 少しだけ顔を顰める冬佳に続き、升麻も疑問を口にする。
「罰当たりな奴も居たもんだね」
 そこで、夏子が小さく首を振る。
 近隣集落の人々も当然のことだが、死体も怨霊も皆可哀想だと。
「何処の土地でも被害者は常にある。状況の当事者見つけてやりたいモンだよ」
 夏子の意見に、升麻が同意して。
「どこのどいつの真似かは知らねぇが、もし見つける事が出来たら、相応のお仕置きを喰らわせてやらねぇと」
 『死者の尊厳は、如何なる理由があっても奪ってはならない』というのが升麻の双子の姉の言葉なのだそうだ。
「骨だけになった兵達か……」
 隻眼、オールバック、全身傷だらけの銀城 黒羽(p3p000505)がぼそりと呟く。
 折角眠っているところを無理やり起こされ、どこの誰とも知らない怨霊まで入れられて。誰が、何の目的でこんなことをしているのか、黒羽には皆目検討もつかない……が。
「……胸糞悪い。それに……いや」
 これ以上は依頼に関係ないと、黒羽は瞳を伏せる。
「俺は俺の役目を果たす。ただそれだけだ」
「集落の人々の平穏の為に。そして、武者達の魂を鎮める為にも、怨霊には速やかに御退場願おう」
 リゲルもまたこの1件において、被害に遭った全ての者の為に解決をと気概を見せると。
「……まぁ、まずは目下の敵をブッ潰すとするかね」
 升麻も同調し、状況打開の為に動き出すのである。


 さて、今回の作戦について、升麻が簡単に纏める。
「まずは俺達が有利に動ける広い場所を探したいな」
 骨武者が現在どこを徘徊しているのかを、ローレット勢は情報収集する。
 ヘイゼルが近隣集落の住人から地図を貰って話を聞いて回り、骨武者達の歩く道筋……動線を纏めていく。
「なるほど、でしたら……」
 地図と実地検分を元に、ヘイゼルは被害に遭っている集落それぞれの広場を主戦場とし、そこに敵を引き込むことにする。
「ここならヨシ! だ!」
 夏子も戦略眼的にチラ見してマークし、保護結界で周囲をフォローする。
 戦闘の余波を受けて家屋や村の設備が破壊されぬよう、リゲルもまた保護結界を使って守護する構えだ。
「次は、スキルを使ってできるだけ早期に発見したいな」
 升麻が続けて言うように、皆総力を挙げて骨武者の居場所を探す。
「まずは標的を探さねぇとか」
 黒羽は依頼へと取り組む前に、ネガティブな感情の一切を封印してしまう。
 その上で黒羽はエネミーサーチを行って骨武者の敵意を感知し、奇襲にも備える。
 ある程度固まって移動はしているが、複数集落を跨いで動き回っている相手だ。
 それもあって、飛行で高度を取った冬佳は高所から骨武者の捜索を行い、ティアは透視の力で索敵を手伝う。
 ジェイクもハイセンスで五感を総動員させ、辺りを捜索。地図で広い場所は仲間が抑えてくれているので、彼は索敵に尽力する。
 近くに何かを切り裂いた骨武者がいるのであれば、彼の獣の嗅覚が反応するかもしれないと、鼻を鳴らしていた。
 同じく、升麻もスキルこそ利用できるものがなかったものの、資格を補う形で周囲を警戒する。
 升麻は視覚として、血、死骸、腐臭、足跡といった痕跡がないか注意を払っていた。
 そんな中で、発見したのは、空を舞っていた冬佳だ。
「こちらの集落に向かっています」
「獲物は絶対に逃さねえ」
 降りてきた冬佳の知らせを受け、獣の如く瞳を光らせるジェイクを始め、一行は敵が向かってくる方向へと駆け出す。
「後はこちらの存在を気づかせて囮を殿において引き撃ち、広場へと誘導だな」
 作戦の肝について語る升麻。今回は人気のない場所への誘導が難しいこともあり、集落中央へと引き付けることに。
「作品開始だな」
 そう告げた黒羽が殿となって敵を誘導すると、動く生物に気付いた骨武者がゆらりと視線を彼へと走らせる。
「どんなダイエットをすりゃそうなるんだい? 骨しかねえじゃねえか」
 ジェイクも名乗り口上で敵を煽り、敵の注意を引く。
 すると、カタカタと音を鳴らし、イレギュラーズ達へと視線を向けた骨武者達は歩みを動き出す。振るった槍から衝撃波を撃ち出す骨武者もいたようだ。
 他のメンバーは誘導の間の行動は様々。
 ヘイゼルはステルスを活かして隠れつつ黒羽達について動き、ティアも覚えていた誘導場所へと移動する。
「ヨシ!」
 引き撃ちの様に敵寄せて動く夏子は、上手く骨武者を誘導できていると思わず掛け声を上げていた。
 リゲルは最悪、抜き身で切りかかろうとも考えていたが、住民である鬼人種達はすでに屋内へと避難しており、気兼ねなく戦うことができそうだ。
「我は異国の騎士なり! カムイグラにおける勇敢な武士達よ! いざ尋常に、勝負!」
 カタカタと近づいてくる骨武者達は素振りし、有無を言わさずこちらへと斬りかかってくるのである。


 カタカタ、カタカタ……。
「…………!!」
 刃を抜けば、素早い動きで切りかかってくる骨武者達。
 狙うは、相手の気を引くジェイクだ。
「今宵の俺は猟犬だ。片っ端から獲物を狩ってやるぜ」
 名乗りを上げ、誘導を行っていた彼は引き続き、骨武者達の挑発を続ける。
 堂々と身をさらし、ジェイクは堂々たる振る舞いで切りかかられても避けるどころか、臆する素振りすら見せない。
 なぜなら、すぐさま黒羽がカバーに当たっており、彼のことをジェイクは信用しきっていたからだ。
「太刀川が気を引き、それを俺が守り、その間に他の奴等が骨武者を叩く。シンプルだが効果的な策だ」
 纏鎧の闘気法【剛毅の型】を展開し、ジェイクを庇い続ける黒羽。
「…………!!」
 全身の骨を鳴らす骨武者達は声帯が無くなっており、喋ることはない。
 そいつらの飛ばす斬撃はかなりの衝撃を与えては来るが、黒羽は微動だにせずカバーに当たり続ける。
 幸い、相手のスキルで吹っ飛ばされることはない。
 黒羽も囮を買って出るジェイクをしっかりと守り、場合によっては縛鎖状にした闘気で骨武者の体を絡めとり、その注意を強引に自身へと向けていた。
「さぁて、お仕置きタイムの始まりだ」
 そこに、升麻が攻撃の為にと一気に相手の懐へと飛び込み、勢いを威力に転化して血を啜る妖刀、血蛭(妖)の刃を浴びせかけていく。
「武者……侍か」
 改めて、骨武者達を1体ずつ見回すリゲル。
 槍を持つ武者もいるが、彼が注目するのは刀を持つ2体。天義出身のリゲルとは違う文化圏で技を培った戦士達だ。
 混沌の地にも日本に似た地があるとはと、リゲルの友である神宮寺 巽も駆けつけていて。
「リゲル、お前の一助となろう」
「負けるなよ?」
 刀術を使う骨武者は巽と同様の剣術を使うのかとリゲルは興味示しながらも、彼を挑発して。
「相手が武士とあらば、尚更遅れを取るわけにはいかない!」
 すると、巽は軍刀を抜き、リゲルとタッグを組んで相手へと対する。
 そこへと槍を突き付けてくる敵に対し、夏子が相手へと近づいてから軽槍と騎士盾で不動の構えをとって。
「もう休もうな。手伝うからさ」
 黒羽から注意をそらそうとした相手には、夏子がしっかりと身を挺して後方の仲間達へと骨武者達の攻撃が流れるのを防ぐ。
「一応、まあ、タンクなもんで……ね!」
 彼は軽槍グロリアスを全力丁寧に横薙ぎし、骨武者2体の体を叩きつけた。
 バババババババ……!!
 その瞬間、鳴り響く爆裂音。
 僅かに怯む骨武者目がけ、一気に他のメンバー達が攻撃を畳みかける。
 優先撃破対象は中距離でも攻撃可能な槍持ちから。
 ティアはくるくると回転しながら相手を恍惚とさせ、魔術を籠めた打撃を叩きつけつつ相手を翻弄していく。
 倒すのであれば、1体ずつ集中して。
 自分の周囲に陣を展開した冬佳は無数の氷刃を生み出し、すでに命の灯が消えた骨武者達の体を凍てつかせようとしていく。
 ヘイゼルも一気に近づき、蝕みの術を込めてそっと相手の身体へと触れて。
 そこから骨武者の身体へと伝わる呪い。
 怨霊に操られた遺体を無駄に損傷させぬようにと、ヘイゼルは配慮していたのだ。
「………………」
 カタ、カタ……。
 徐々に槍を持つその骨武者の動きが鈍り出すと、升麻はさらにその敵へと掌打を叩き込む。
 次の瞬間、骨武者は糸が切れたように、乾いた音を立てて全身を崩す。
「さっさと数を減らすに限る」
 地面へと転がる相手を確認した彼は、さらに次なる槍持ちの対処への対処へと移るのである。


 カタ、カタ……。
 全ての生物を切り裂かんとする凶刃を操る骨武者達。
 それらの攻撃力は抵抗せぬものなら、一撃で寸断してしまうほどの威力。恐ろしきその刃は受けることすら叶わない。
 だが、タンク役となるメンバー達は骨武者等の攻撃をしっかりと受け止める。
「てめえらを倒しても、スープの出汁にもなりゃしねえか」
 ジェイクが骨武者達へと罵声を浴びせる中、黒羽が彼を守り続ける。
 その身体に刻まれる傷は決して浅くなく、ヘイゼルらがすかさず回復に入り、調和の力による癒しへと当たっていたようだ。
 升麻はタンク役の仲間の抑えから漏れた敵を見つければ、すかさず名乗りを上げて。
「成仏させてやんよ!」
 骨武者達の凶刃を一時的に引きつけ、仲間達の身の安全をはかっていた。
 その間に、同じくタンク役となっていた夏子も大きな動きを見せる。
「せめてアンタ等の生きた証を、この盾に刻む!」
 敵が黒羽以外に近寄らぬよう、夏子は相手を槍で吹っ飛ばし続けていたが、自らに引き付けられている状況ならばと、彼は槍持ちの骨武者が振るってきた一撃に対してカウンターを叩き込む。
「後は我々に任せて眠……れッ!」
 強烈な一閃を受け、動きを完全に止めた骨武者は人の形を保てなくなり、地面へと転がってしまった。

 黒羽のスタンスは依然変わらない。
 彼はただジェイクを守り続けるのみ。攻撃は行わない彼だが、闘気で縛り付けてその場に留めることは厭わない。
 そこで、刀で切りかかる敵へ、ティアがそいつの未来を奪うように先手を取り、相手の背後から魔力を込めた一撃を叩き込む。
 相手の虚を突いた一撃に、ティアは確かな手応えを覚える。
 カタ、カタカタカタ……!
 だが、トドメには至らず、骨武者は素早く刃を振るってきた。
 その一撃はやはり黒羽に遮られることとなるが、合わせて攻撃に転じたジェイクが仕掛け、直死の一撃を繰り出す。
 それは大きな黒いアギトととなり、ジェイク自身にも衝撃を与えながらも、骨武者の体を噛み砕かんとして。
 大いなる天の使いによる祝福をタンク役メンバーへともたらしていた冬佳が一転、攻撃に出る。
 清冽なる穢れ無き水を操った彼女は、不浄なる怨霊を洗い流してしまう。
 オオオオオオォオォオォォォオォ…………。
 冬佳の発した水の中から呻き声が聞こえたかと思うと、骨武者は刀を振り上げた体勢のまま止まり、すぐにただの骸へと戻っていった。

 残る1体はタンク役メンバーが抑えながらも、リゲルが相手を行っていた。
 彼は敵全体へと真一文字の刃を浴びせかけ、骨武者達の体力を削る。
 その刃はタンク役に向けられていてほとんどリゲルには及んでいないが、彼は異国の剣の太刀筋をしっかりと見極めていた。
「死体を掘り起こしたのは誰だ? 黒幕は誰だ!」
 攻撃しながらも、リゲルは次なる惨劇を止める為の足掛かりにしようと、骨武者……いや、怨霊へとダメ元で問いかける。
 カタ……、カタ……。
 だが、相手は何も返答しない。答えたくないのか、それとも答えられないのか……。
 すでに骨武者は残り1体となっており、イレギュラーズの攻撃はそいつに集中していた。
 合間にヘイゼルが呪いの力で骨武者を侵食し、残る気力を奪いつくさんとする。
 相手の態勢が少しでも崩れたなら、ヘイゼルの思惑通り。
「死後、不本意にも体を操られるのは辛いだろう」
 相手にそう呼び掛けたリゲルは共に戦っていた友へと僅かに視線を向けて。
「武士の情けとして、一刻も早く終わらせる!」
 頷いた巽が軍刀による小技で牽制を行う間に、気を集中させたリゲルが空気すら凍てつかせる寒気を纏わせた一撃をその胸部へと打ち込む。
 オオォオォオ…………。
 消え去っていく悪しき気配。
 ようやく、骨武者達は怨霊から解放され、歪に動かされていた体を止めることができたのだった。


 全ての骨武者を倒し、イレギュラーズ達は骨武者の骸を弔う。
 升麻や冬佳が怨霊を確実に祓えていることを確認して、4体それぞれを分けて遺骨を集めていく。
 ヘイゼルも掘り起こされた墓穴のある墓地を特定し、合わせて武器装束によって個人を特定しようとした。
 出来るなら、遺体の家族に弔ってもらえばと思ったようだが、相当時間が経っているらしく、残念ながら1体以外は身内を確認することすらできなかった。
 後は豊穣の作法で弔いをと皆で意見が一致したこともあり、呼ぶことのできる鬼人種の神主を呼ぶことに。黒羽もカムイグラのやり方に合わせることができて、安堵していたようだ。
 改めて、お焚き上げを行い、ティアは儀式のお手伝い。
「今度こそ、安らかに眠れよ」
 升麻が武者達を弔い直すと、成仏を祈り刀を鞘に納めたリゲルもまた供養を手伝い、安らかに眠れるようにと胸元で十字を切る。ヘイゼルや冬佳も豊穣の作法を学びながらも、無念の武者達に祈りを捧げていた。
「怒らせるために酷いことを言ったが許してくれよ。俺達のお陰でお前達はやっと眠れるんだからさ」
 2度と魂が迷い出ることが無いように、ジェイクは墓前に花を供えて手を合わせる。
「悪いのは君等じゃない。彼等でもない。仕向けた奴でしょ」
 この土地風俗に合わせたやり方で弔いを終えた夏子は、まだ戦いが終わっていないことを示唆して。
「仕向けた奴退治出来れば、最善なんだろうケドなー」
「あんた達の仇を取る……って訳じゃねぇが、今回の事件の首謀者は俺達が必ず捕まえる」
 決意を口にする黒羽は、武者達へと語りかけるように続ける。
「だから……よ……ゆっくり休んでてくれ」
 一通り、祈りを終えたイレギュラーズ一行。
 そこで、夏子が大きく息をついて。
「さぁて……、豊穣での我々は どうなることやら……」
 まだまだ知らないことの多いカムイグラの地を、彼はゆっくりと仰ぎ見るのだった。

成否

成功

MVP

ジェイク・夜乃(p3p001103)
『幻狼』灰色狼

状態異常

なし

あとがき

リプレイ、公開です。
MVPは仲間を信じて敵の引き付けを行っていた貴方へ。
今回はご参加、ありがとうございました!

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