PandoraPartyProject

シナリオ詳細

絶対にしないでください

完了

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●絶対にしないでください



 絶対にしないでください。



●風通し

「やあ。君たちを呼んだのは他でもない──ちょっと僕たちの仕事を手伝ってもらおうと思ってね」
 境界案内人、カストルは人好きのする笑みを向けた。
「何、そんな難しい作業じゃないよ。割り振られた区画にある本──異世界──のページを一枚ずつ、ゆっくりめくっていくだけでいい。ちょっと数が膨大でね。クレカやポルックス、それに他の境界案内人だけじゃとても終わらなくてね。手伝ってくれると助かるよ」
 それだけ? それだけ。
 どうやら随分と楽な仕事らしい。
 気を遣う事も無く、淡々と作業すればいいだけの仕事。
 だが。
 
 ──ああ、そうそう。

 カストルが、静かに前置きした。

「作業中、絶対に声を発しない事。そして、誰かに話かけられても答えてはいけないよ。僕たちや他に作業をしている者が、君たちに話しかける事は絶対にない。絶対に」
 ……何故? イレギュラーズのひとりが声を上げた。
「風通しは、異世界に巣食おうとする淀みを祓うためのものでね。やらないと異世界の中に入り込み、様々な悪影響を及ぼす。そう、それら自身はこの図書館の中ではとても弱い存在だ。でも、誰かに憑りつく事で力を得てしまうかもしれない。『声』は淀みが憑りつく為の手段なんだよ」
 ──成程。
「もう一度言おうか。全員が無言で作業する事。話かけられても絶対に答えてはいけない事。そして、この作業は何があっても必ず完遂させる事。いいね?」

NMコメント

 りばくると申します。
 絶対にしないでください。

●成功条件

 与えられた区画の『風通し』作業を完了させる事。
 作業の途中放棄は失敗となります。絶対にしないでください。

●シチュエーション
 
 境界図書館の一角。イレギュラーズは4つの区画を割り振られました。
 1区画につき1人の配置をお願いします。
 『淀み』は力が弱く、幻影や幻覚等を見せる事はありませんが様々な声を操って話しかける場合があります。
 しかし、反応したり答えたりしたりは絶対にしないでください。

・Aブロック
 カストルが作業を中断するように話しかけてきます。
・Bブロック
 あの手この手でPCの気を引き、反応を得ようとしてきます。
・Cブロック
 PCが言われたくない事・気にしている事を感知し、罵声を浴びせたり、侮蔑の声を放ちます。
・Dブロック
 それらは泣いて許しを請い、PCに助けを求めます。
 
 何があっても声を上げる事、物理的に反応する事は絶対にしないでください。

●サンプルプレイング

 ①
 俺はCブロックに行くぜ。
 何? 俺の事をハゲだとお~~~!!??
 こっ、この野郎!!! ハッ、ダメだ。此処は我慢の時だろうが。
 感情封印と平常心を発動し、この作業を終わらせるッッ!

 ②
 私はCブロックに行くわ。
 ……そう。この声は……ええ。
 そうよ。私は化物。ヒトの血を啜らないと生きていけない化物。
 でもね、私の知る『あなた』は、私の事をそんな風に言わないわ。
 不快よ。消えて頂戴。
 
 「」(カギカッコ)なしで記載されたセリフは全て『心情や内面の言葉』として扱います。
 リプレイ中に会話や言葉を発したい場合はカギカッコを使用してください。
 会話や言葉を発することは絶対にしないでください。

 以上。
 絶対にしないでください。
 宜しくお願いいたします。

  • 絶対にしないでください完了
  • NM名りばくる
  • 種別ライブノベル
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2020年06月27日 22時05分
  • 参加人数4/4人
  • 相談3日
  • 参加費100RC

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(4人)

ダナンディール=アーディ=シェーシャ(p3p001765)
はらぺこフレンズ
ミディーセラ・ドナム・ゾーンブルク(p3p003593)
キールで乾杯
ニア・ルヴァリエ(p3p004394)
太陽の隣
ハナ(p3p008591)
もうイケメンに恋なんてしない

リプレイ

●淀みの囁き

 Aブロックにあるずらりと並ぶ本棚を見上げ、『風断ち』ニア・ルヴァリエ(p3p004394)は、ほう、と感嘆の息を吐いた。
(境界図書館に来るのは始めてなんだけど……なんていうか、不思議なトコだね。ま、仕事はキッチリやらせて貰うさ。さほど難しい事を要求されてるワケでもないし)
 ニアは早速、一冊の本に手を伸ばす。中を開くと、自身の理解を超えたナニカが並んでいる。つまり、記載された中身を理解することは不可能だった。
(声を出しちゃいけない、って事だし……)
 すう、と息を吐いて頭の中の雑念を取り払う。瞬間、少女の纏う『音』が消える。少女の声も、音も、呼吸の吐息に至るまで、周囲にはもう届かない。
(万が一があるもんね。備えられる所は備えとかないと)
 ……そうして、数時間が経った。着実に作業を進めるニアの耳がぴこんと揺れた。
「おーい」
 先ほど会った、カストルの声が耳の中に響いた。
「そっちはどうだい? そろそろ休憩しよう。美味しいお茶を淹れてあげるよ」
(──境界図書館の淀み、か)
 成程、彼そっくりの声である。予め言われなければ、確かに騙されてもおかしくは無い。
(流石に、惑わされやしないよ。知ってるヤツの声だけが聞こえてくるってのも妙な気分だけど……ま、あたしだってこういう手合いとの付き合い方を知らないワケじゃないしね)
 彼女の知る『精霊』とは余程比べるまでも無い低俗で下級な存在なのだろうが──。
「おーい。気分でも悪いのかい?」
 カストルの声を模した淀みは声がまた心配そうに声を掛けた。長時間の作業にくわえ、投げかけられる声にすっかり集中が途切れてしまい、彼女の纏う音が周囲にも届いてしまっている。
 彼女のため息が漏れた。余計な事を言ってしまわないよう、とりとめもない事に思考を巡らせながら。
(この手の悪戯を避けるには付き合わないのが一番効果的、ってね。いっそ実体があるならボコボコに出来ちまえばラクなのになあ)
「──僕を無視するなんてね。今に後悔するよ」
 開いているページから、黒い靄がふわふわと噴き出して、そのまま消えていった。
(何というか……悪戯というより、生存戦略みたいだね。そりゃ必死だ。お疲れさん)
 靄の消えていった虚空を暫し見上げていたが、ニアははっとしたように本棚の方に目をやった。
(いや、うん。声がどうこうよりも、ちっとばかし残量が多いのが億劫だね……)
 もう、淀みの声は聞こえなかった。

 同時刻、Bブロックを任された『キールで乾杯』ミディーセラ・ドナム・ゾーンブルク(p3p003593)も、風通し作業を始めようとしていた。
(まあ、まあ……境界世界について、また一つ詳しくなりました。手入れが必要なのですねえ。ひとつの世界が広がっている本──不思議で興味深いものですこと)
 その長い指ですい、とさっそく一冊の本を手に取った。読書を好む彼は本の内容も楽しめるかもと期待していたようだが、理解できない何かの羅列を眺めて静かに首を振った。
 ぱらり、ぱらりと一枚ずつページをめくる。一冊終われば、また一冊。
(混沌世界も、管理している何かしらの存在がいたりするのかも──)
 ふと抱いた疑問に、答える者はいない。考えてばかりでは終わらないと雑念を払い、作業に没頭するミディーセラ。
(声は媒介としても、それ単体でも力になりますからねえ。恐ろしさも然り──!?)
「はい! どーもー!」
 ──彼の大きな耳がびくりと揺れた。活発そうな若い男の大声が唐突に響き、思わず作業の手が止まる。
「えー、本日はね、一人漫才やってみようかなと思うんですけれども」
(確か、何かしら気を引いてくる、とかなんとか……)
 しかし、彼は冷静を失わない。落ち着き払った所作でページをめくった。
「いやあ静かですね! 僕ぁこの場所をドッカンドッカン言わせるのが夢でしてね! そりゃもう爆発みたいに! ね!」
 彼は音として流し聞きしているものの、決して声を発することは無かった。興味は捨てられないようで、時折作業スピードが落ちる事はあっても、その手を止めることは無い。
「そう、爆発で思い出したんですけど、この前ね、ヤカンに火をかけてたらね、忘れて寝ちゃって、僕の家燃えちゃったんですよ。ついでに僕のケツも燃えました」
 彼の師匠達のしでかしを思えば、この程度では動じる訳もなく。こっちは声だけだが、あっちはしゃべり倒す上に派手に動くわ、ちょっかいというレベルでは無かったのだ。
(暇に任せてわたしの尻尾に火をつけられたり、突然よくわからない薬をかけられたり、目の前で脱ぎ出したり……)
 そんな彼も、淀みの話で今までの出来事を思い返していた。
「え、てかこの話面白くない?? っかしいなー、この前はメッチャウケたんだけど……」
(いえ……尻尾を燃やしたのはいまだに許せていませんね。こんな事で思い出してしまうなんて)
 漫才もどきを繰り返す淀みだが、彼はくすりともしない。強靭とも言える精神を前に、とうとう淀みも匙を投げた。
「くっそー! 次は笑わせてみせるからな!」
 ミディーセラがあるページを開いた瞬間、黒い靄がページから飛び出し、捨て台詞と共に消えていった。

 その頃。『もうイケメンに恋なんてしない』ハナ(p3p008591)がCブロックの区画に到着した。
 被った紙袋には視界を確保する穴などは存在しないが、一応見えているようだ。
(混沌に召喚されてきたというだけでも夢見心地なのに、境界とやらは元の世界の常識が通用しないらしい。ともあれ──本のページをめくっていけばいいわけだな?)
 手近な本を手に取って、表紙をしげしげと眺めた後、本を開いた。
(……うん。なんのこっちゃサッパリだ)
 早々に本の内容を理解する事を諦めたハナは、素直に風通し作業を進めていく。
「──クスクス」
 静まり返った図書館に、その囁きのような笑い声はよく響いた。だが、肝心の内容がよく聞こえない。何か。誰かの声。ひとの声。
(聞き覚えのあるような。ないような──)
 嗚呼、これは、そうだ。
「おい、アレ見ろよ。ハナちゃんじゃん、名前『だけ』は可愛いって、ホラ」
 耳元で聞こえた声に思わず、手が止まる。
 咄嗟に拳を握り──静かに下ろした。物理的に殴れる相手は、何処にも居ない。
「お前と違って、妹や姉貴は可愛いよな。なあ、俺に紹介しろよ」
 ハナに声を掛ける者は、どれもこれも彼女を見ていなかった。美人の姉や妹を己から透かして見ている、下劣な瞳。
 そうして最後には、誰もが同じ言葉で締めくくる。
「ホンット、似てないよな」
 その言葉を聞くたびに、噛みついて、逃げて──その後は決まって、嫌な事を忘れるようにギターを弾いた。
「どうしてかしらね。あの二人とこんな『違っちゃった』のは」
 頭脳明晰で優しくておっとりした姉。運動神経が良く、活発でいつも元気な可愛い妹。母が自慢げに語るのは二人ばかり。自分の事は見てもくれない。
(本当に姉妹なの、って。そんなの私が聞きたいよ。どうしてって、育てたのはアンタだろ。うるさいんだよ! おまえら偽物の声なんか響かない。この世界に、あいつらは居ないんだから)
「なんで偽物だってバレて……くそ、あと少しだったのに……」
 じくじく痛む胸を押さえて、紙袋の下の唇をぎゅっと噛み締めた。勢いよく次のページを開くと、黒い靄が飛び出して床に落ち、口惜しそうに消えていった。
(ばーか。『本物』っていうのはさ、いつまでも耳から。心から離れないんだよ)
 ハナが淀みの嘆きを振り払うと、もう図書館は元の静寂を取り戻していた。

 一方、『はらぺこフレンズ』ダナンディール=アーディ=シェーシャ(p3p001765)が、Dブロック区画の本を退屈気にぱらりぱらりと開いている。
(万が一があるもんね。お口チャック!)
 と最初は意気込んでいたものの、同じ作業の繰り返しにすっかり飽きていた。
「助けて……お願い……私たちは静かに暮らしたいだけなの……」
(いやーなんかシクシクうるさいけど聞こえないもんねー。ぜんぜん気にならないもんねー……ってあれ? 耳栓とかしてきたらよかったのかな、これ)
 実際、耳栓が効果があるかどうかは定かではないが、やれる案は試したいものである。不覚、とばかりにあちゃーと頭をぺしっと叩いた。
「お願い、本を閉じて……殺さないで……」
 淀みの命乞いなど意に介さず、ダナンディールの手は止まらない。
 と思ったけど止まった。
(あっ、眠いぞこれ。ねむ……)
「やめて……助けて……」
 こくり、こくり。そしてがくん、と揺れたあと、ハッとしながら首をもたげる。
(フフ、最後の敵は自分自身……って故郷のお姉ちゃんも言ってたっけ……うるさいなあ泣きたいのはこっちだよまったく……いや絶対にしないけどね)
 シクシク泣く淀みに同情など微塵もしない。今考えるべきは、余計な失敗をして名声を傷つけてしまう事で、まだ見ぬタダ飯イベントに呼ばれる機会が減る事である。
 剛毅な彼女は容赦しない。怒涛の勢いで作業を進めていく内、たまたま開いた本のページから黒い靄がぶわりと飛び出し、宙ではじけて消えた。
(これ終わったら寝よ)
 退屈気に欠伸をかます彼女が、その黒い靄の行方など追う訳も無い。

●絶対にしなかったね

「みんな、お疲れさま。どうやら約束は守ってくれたみたいだね。お蔭で助かったよ、ありがとう」
「……本物? だよね」
 笑顔で迎えるカストルに微妙そうな顔を向けるニア。
「楽しかったですわ」
 ほくほく顔のミディーセラ。
「はいはい、お疲れサマ」
 素顔は伺い知れないが、なんだか機嫌の悪そうなハナ。
「ぐう」
 業務が終わるなりグースカ寝てしまったダナンディール……。

 ──かくして、4人のイレギュラーズは無事に業務を果たし、混沌世界へ帰還を果たすのだった。

成否

成功

状態異常

なし

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